Tuesday, October 29, 2013

医療放置は「日常的に行なわれている」――東京入管被収容者による「要望書」

  東京入国管理局の被収容者(Iブロック)が、局長あてに10月22日付けで医療処遇を改善する「要望書」を提出しました。「要望書」は、19名10国籍(スリランカ、ブラジル、フィリピン、ナイジェリア、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、タイ、ガーナ、ペルー)の連名で出されております。

  東京入管では、収容されていたロヒンギャ難民のアンワール・フセインさんが、医療放置されたのち、10月14日に死亡する事件がありました。
  このフセインさんの死は、上の申入書でも述べたとおり、他の被収容者やその家族、友人の間に「自分も(自分の家族、友人も)病気になり倒れたときには医師に診せてもらえず、救急車も呼ばれないまま命を落とすのではないか」といった激しい動揺と恐怖、入管に対する不信感をひきおこしています。

  「要望書」は、外部からの監視の目の届きにくい入管収容施設の医療体制についての、きわめて具体的な報告にもなっており、その点でも非常に貴重なものと言えます。



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東京都港区港南5-5-30
東京入国管理局内
東京入国管理局長殿

平成25年10月22日
東京都港区港南5-5-30
東京入国管理局内
Iブロック内長期収容者


要  望  書

私達は、難民、日本人配偶者、日系人、家族の生活などさまざまな事情によって特別在留許可の申請、難民申請や退去強制令書の取消訴訟等などの理由によって収容されている者です。Iブロック内においては長い者で8ヶ月以上の長期間にわたって収容されている者もいて、現在東京入国管理局内において医療関係に関して、かくブロックの医療に関する何の知識も何の資格も持っていない素人の職員による身勝手な判断や、東京入国管理局内での勤務している医者による不十分な診断、又は病状にあった適切な診査をせずに薬を出すことによって、私達の病状は相当悪化しており、事実最悪の事態になっております。具体的には、私達の体調不良や病気になった時にかくブロックにいる担当職員に申し出をし医務診察してもらうことになっていますが、かくブロックにいる、介護又は看護などといった医療関係に関する何の資格も持っていない素人の職員の判断でわけわからない薬を飲ませるだけでなく、たとえ心臓の痛みを訴えてもすぐに診察させずに一、二週間放置させられます。

私達は体調不良を訴えてから二週間以上の時間がたったあとに医務診療を受けることになっても、医務室に連行される前に入管の職員に言われる症状以外の症状を医者に話さないようにと注意された上で医務室に連行され、医務室内においても医者が体にふれて診断したり、詳しい症状を聞いた上で診断したりすることはほとんどありません。又は病状にあった適切な診査を行なった上で薬を投与するのではなく医者と入管の話し合いで病状は何であろうと皆に同じ痛み止めを与えるだけで適切な治療してもらえないのは現在の状況です。

又は、緊急事態になっても医者でもない素人の職員の身勝手な判断によりいつ死んでもおかしくない状況になるまで何時間も放置させられているのは、現在東京入国管理局内において日常的に行なわれているとのことです。

東京入国管理局に収容させられている以上は、私達の健康状態や病気に関して適切な治療をさせる義務や責任が法的に東京入国管理局にあることは言うまでもないことなのですが、現時点で東京入国管理局側はその義務をはたしていません。

人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利であり、憲法25条の生存権の自由権的側面として保障される権利であることは明白である。こういった憲法で保障されている根本的な人権を東京入国管理局によって侵害されていることは一切許しません。

(1)かくブロックにいる介護、看護などと言った医療関係に関する資格を持っていない素人の職員による判断で薬を飲ませるのは止めさせ、申し出た者を直(ただち)に医務診療をさせること。

(2)医務診察を希望する者については少なくても一週間に一度、医務診察を行うこと。

(3)医務診察の際に医者が必ず患者から症状を聞き、患者の体にふれてきちんとした診察し、又は病状にあった適切な診査(レントゲンやM.R.Iなど)を行なった上で病状にあった薬を与え治療させること。

(4)東京入国管理局内で治療することが不可能な場合に、痛み止めなど投与し様子を見るなどと言って長びかせるのではなく、直(ただち)に外部の病院で治療させること。

(5)緊急事態になった場合、又は医者の不在の場合に救急車を呼ばずに医者でもない素人の職員の身勝手な判断により長時間放置されている行為を止めさせ、直に救急車を呼び病院に搬送させ治療させること。

私達は入所した時の健康な身体で出所することを強く望んでいる。
以上のところ改善させ、現在東京入国管理局内にある医療問題を直に改善せよ。

[以下、氏名・国籍等の欄――省略]

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【補足】
  以上、紹介したIブロックの被収容者の「要望書」からは、東京入管の医療処遇のきわめてずさんな実態がうかびあがってきます。
  • 診療が必要か不必要かという判断を、職員(入国警備官)がおこなっていること
  • 入国警備官の判断で、あるいは医師の十分な診察がおこなわれないままで、薬が出されていること(医師法が禁ずる無診療投薬*1の疑いあり)
  • 被収容者が問診で医師に話してよい内容について、入国警備官が制約をくわえていること
  東京入管の収容場をふくむ入管収容施設では、重病者が必要な診療を受けられずに何週間も放置されるという事例にこと欠きません*2。上記のような実態からみてとれるのは、各入管収容施設が質量両面で十分な医療体制をそなえておらず、それゆえ診療件数を抑制することが入国警備官の「任務」になっているという現状です。つまり、診療日(東京入管では医務診療は月・水・金のみ)や、外部診療のための連行の態勢といった医療体制の限界をこえて被収容者を受診させないようにすることが、現状において入国警備官の「仕事」になっているということです。亡くなったフセインさんが、意識不明の状態で約50分ものあいだ放置されたことの背景には、こうした入管収容施設の医療処遇の問題があったと考えざるをえません。

  「要望書」が述べるとおり、「人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利」にほかなりません。被収容者は入管によって身柄を拘束され、自由に病院まで行くこともできなければ、他の被収容者が病気やケガに苦しんでいても病院に連れていくこともできません。したがって、被収容者のうったえがあれば、すみやかに診療を受けさせることは、収容主体である入管の義務であって、それができないならば、収容をやめるべきです。

[注]
*1  医師法第20条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後24時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」

*2  同意なく一度に6本の抜歯/骨折を70日以上も放置(東日本入管センター)参照。




Saturday, October 26, 2013

急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書

  ロヒンギャ難民のアンワール・フセインさんが、東京入国管理局(東京都港区)に再収容され、医療放置されたのち、亡くなった件について、10月25日に文書での抗議・申入れをおこないました。申入書の全文を掲載します。

  なお、先日の記事ではフセインさんを「Aさん」と表記していましたが、ご遺族のご意向を受け、実名を公開することとしました。


  仮放免者の会としては、みなさまに東京入管への抗議をよびかけます。事実関係などについては、以下の申入書をご参照ください。

抗議先
  • 東京入管総務課電話  03-5796-7250
  • 東京入管代表ファクス 03-5796-7125 


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申 入 書

2013年10月25日

法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東京入国管理局長 殿
仮放免者の会(関東)

 

 2013年10月9日、12時20分すぎ頃、ミャンマー(ビルマ)人男性でロヒンギャ民族の、Anwar Hussinさん(1957年4月7日生まれ、以下「フセインさん」という。)が東京入国管理局(以下「東京入管」という。)のD-6号室で倒れ、搬送先の病院で「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」で10月14日、4時21分に死亡した。フセインさんは、ビルマで迫害を受け逃れてきたロヒンギャ民族であり、難民申請をしていた。フセインさんは、2006年12月28日以降、7年近く仮放免の状態にあり、2013年10月9日に再収容された。我々仮放免者の会は、フセインさんの再収容からフセインさんが東京入管で倒れ、搬送先の病院で死亡するに至った経緯における東京入管の対応に対し、強く抗議し以下申し入れを行う。


(1)フセインさんは、10月9日、12時20分すぎ頃、D-6号室で嘔吐し体を痙攣させ、意識不明の状態になった。12時22分には同室の被収容者達がブザーを押し東京入管職員を呼んだ。職員は1~2分後に同室に来て、フセインさんの血圧を測る等した。東京入管処遇部門が当会及び当会の支援するフセインさんの遺族に説明したところによると12時26分に職員が測定した際には、フセインさんの血圧は、上242下111であったという。フセインさんは、常識的に考えてもただちに救急車を呼び病院に搬送すべき状態であったにもかかわらず、東京入管はこうした措置を行わず、同処遇部門の説明によると、12時50分にはフセインさんをGブロックの単独房に隔離する等しており、最終的に119番して救急車を呼んだのは13時15分とフセインさんの血圧測定時からしても50分近くが経過してからであったという。フセインさんがD-6号室にて意識不明で倒れている間、同室の被収容者達によると、同室の者達が直ぐに医師に診せるか救急車を呼ぶように職員に対し繰り返し求めたにもかかわらず、職員達は「医者は食事中なので来れない。」「癲癇なので大丈夫。」等と言い、取り合わなかったという。東京入管側はこのような職員の発言は「なかったものと信じる」としているが、こうした発言が実際にあったかどうかはひとまず措くにしても、フセインさんがこの時点ですでに生命の危険のある重篤な状態にあったことは、上記経緯に照らしてみても明らかであり、一連の東京入管の対応は被収容者の人命を著しく軽視するものであったといわざるを得ない。現在、被収容者及びその家族、友人の間には「自分も(自分の家族、友人も)病気になり倒れたときには医師に診せてもらえず、救急車も呼ばれないまま命を落とすのではないか。」といった激しい動揺と恐怖、入管に対する不信感が広がっている。フセインさんのような重篤な状態にある者は速やかに医師に診せ、その判断を仰ぐ事、医師が不在の際にはただちに救急車を呼び病院に搬送する事はごく常識的な対応である。これら常識的な事が然るべく果たされるように強く申し入れる。

 一般的には嘔吐や痙攣、意識障害があれば脳の障害が考えられるので一刻も早く救急車を呼ぶべきであり、病院への搬送の遅れが生死に直結する事は当然である。病院への搬送の遅れと死亡の因果関係は、今後明らかにしていかねばならないが、これをひとまず措くにしても、今回の東京入管の対応の遅れには著しい人命軽視に基づく重大な誤りがあるといわざるを得ない。当会では東京入管に対し、なぜこのような非人道的対応がなされたのかに関する全面的な真相究明と再発防止策の徹底と公表を求めると共に、今回の事態を招くに至った責任を負う者への処罰、遺族に対して今回の対応がなぜ、誰によって取られたかに関する詳しい説明と謝罪を強く申し入れる。

 同室の被収容者達が、フセインさんを医師に診せるか救急車を呼ぶように求めた際、職員達が「癲癇なので大丈夫。」等と言い取り合わなかったという事に関してだが、これには医師でないものが診断を下していたという極めて重大な問題がある。この発言はなかったと東京入管は言うようであるが、この発言がもし万が一なかったにしても、同局処遇部門の説明によれば、同局では、月・水・金しか医師は来ておらず、医師不在時には、体調不良を訴える等する被収容者の健康面に関する判断は常習的に同局職員が行っているという。医師でない者が実際に医療的判断を行なっているという事実は動かしようがない。週7日終日医師が常駐する事が望ましいが、仮に医師が不在の場合であっても入管職員が被収容者の病状を過小に評価し医療的な処置が遅れるような事があってはならない。フセインさんのような痛ましい犠牲者を今後一人たりとも出す事のない様、救急医療体制及び通常の医療体制の整備を強く申し入れる。

 今回の東京入管による対応の背景には収容されている外国人に対する、人命軽視、差別、蔑視が入管内部に根深く存在するのではないかというのは、被収容者達の多くから聞かれる意見である。すなわち「もし外で日本人がこうした状況にあったならば直ぐに救急車が呼ばれるはずだ。そうならなかったのは外国人を差別し、死んでもいいと感じているからだ。」というものである。こうした感情を被収容者が持つに至った理由としては、今回の事件のみならず、日ごろの被収容者に対する職員の言動、態度、体調不良を訴えても病院に行かせないか、診察まで何週間も待たせるといった対応があげられる。このような感情を被収容者達に抱かせることのないよう、東京入管には、適切な医療体制の整備、職員への教育の徹底を求める。

 入国管理局には外国人を収容する以上、被収容者の生命、安全、健康を守る収容主体責任がある。フセインさんのような状態の者はただちに医師に診せ、医師が不在の際には即座に救急車を呼ぶことは当然であるが、体調不良を訴える者は医師に診せ、病気の者には適切な医療を提供する事、病状が重篤な者はただちに仮放免する事を求める。東京入管には収容する以上、被収容者の生命、安全、健康を守る責任を果たすよう重ねて申し入れる。


(2)ロヒンギャ民族がビルマで国籍を認められておらず、移動、就労、結婚等の自由を著しく制限される等、迫害を受けていることは周知の事実である。フセインさんは、ロヒンギャ民族であり、ビルマでの迫害を逃れて来日したものである。フセインさんの死亡に際しては、東京入管から遺体の送還を在日ビルマ大使館に打診するも拒否されたという話も聞いている。入管は、フセインさんを存命中のみならず、亡くなられた際にもビルマに送還する事が出来なかった。この事実は、フセインさんが難民認定されるべき、或いは難民認定されないにしても在留特別許可されるべき対象者であった事を明らかに示すものである。もしフセインさんが、入管により然るべく難民認定、或いは在留特別許可を付与されていたならば今回のような不幸は起こらなかった。フセインさんは、入管の極めて消極的な難民政策の犠牲者であると考える事が出来る。ロヒンギャ民族のみならず、難民申請者に対してはUNHCR難民認定基準ハンドブックに従って、難民認定或いは在留特別許可を付与して救済していく事を申し入れる。


(3)フセインさんは、2006年12月28日以降、7年近く仮放免の状態にあり、2013年10月9日に再収容された。再収容理由については、当会及び当会の支援するフセインさんの遺族に対して、東京入管から明確な回答は得られておらず判然としない。これについては当会及び遺族に対する明確な回答を求める。当会が掌握した情報の範囲では、フセインさんが再収容される前の状況からして東京入管はフセインさんが指定住居以外の場所に勝手に転居したと認識してこれを事由として再収容したと考えられる。しかし収容は生命にもかかわる重大事である。居住地の届出に関しては、届出に問題があるならば指導すればいいのであって、もし仮にこの事をもって収容したのならば明らかにいき過ぎであり、収容権の乱用である。フセインさんは逃亡したわけではなく、東京入管への出頭日には出頭しており、このような指導は充分に可能である。また、難民不認定異議申立棄却や行政訴訟での敗訴確定を契機とする退令仮放免者への再収容、また、行政訴訟での敗訴確定後、再審情願を申し立てている者等については、当人の帰国出来ない事情を十分に考慮した上、再収容を行わないよう強く申し入れる。行政訴訟等において敗訴が確定した場合でも、難民申請者や日本に家族がいる者等、どうしても帰国出来ない事情を抱えた者に対する収容、とりわけ再収容は被収容者、及び家族に人生を絶望させ、自殺未遂や疾病、或いは自殺といった最悪の事態に帰結する可能性のある重大な人権侵害である。フセインさんの件に関しても、再収容による極度のストレスが高血圧を引き起こし、脳の動脈瘤破裂に至った可能性は十分ある。再収容を行うにあたっては、細心の上にも細心の注意が払われるべきである。


(4)フセインさんを含めた仮放免者達は、自身の難民性のため、愛する家族との生活のため、病気の治療のため、または自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している者である。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在している。2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンスト、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理矢理送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者によるデモ、2012年におこった東日本入国管理センターでのハンスト等は、入管が退去強制手続きにおいて収容や再収容、送還といった暴力的方法に固執し対処しようとすることの限界を明らかに示すものである。仮放免者の問題についても、帰国出来ない退令仮放免者の事情を知りつつこれを斟酌することなくなお繰り返しの収容、送還に固執しようとすれば、そこには必ず無理が生じ、今回のような人の生命にかかわる事件を生じさせる原因ともなる。仮放免者問題に対し、入管が再収容、送還に固執することは退令仮放免者及びその家族の心身を収容によって単に痛めつけるためのものにしか過ぎず、退令仮放免者の抵抗や自殺や今回のような事件を含む痛ましい犠牲者を再び生み出すことにつながるのみで問題の解決には到底なりえない。我々仮放免者の会は、帰国出来ない退令仮放免者(①UNHCR難民認定基準にそった難民申請者②日本に家族がいる者③日本に生活基盤が移っている移住労働者)については本邦への在留を認めることで救済するよう強く申し入れる。



以 上
  

Thursday, October 24, 2013

東京入管被収容者の給食拒否ストライキについて続報

  おそくなりましたが、先日このブログで報じていました、東京入国管理局の被収容者による給食拒否ストライキ(以下のリンク先参照)について、その後の経過について報告します。


  前回の記事では、ストライキにはIブロックの被収容者30名近くが参加していると報告しましたが、これにくわえてJブロックの7名も同時に参加していたことがわかりました。

  これに対し、東京入管側は、職員が各部屋をまわって、給食にカレーピラフやわかめご飯などの新しいメニューを導入すること、購入できる品目を6種類増やすことなど、こんご改善をはかっていくことを説明したそうです。

  これを受けて、ストライキ参加者側は、「しばらく様子をみる」として、4日(金曜)の朝にストライキをいったん解除しました。

  私たちとしても、東京入管が実際に改善にとりくむのか、注目したいとおもいます。

  以下、ストライキに参加したIブロックの被収容者のみなさんが東京入管局長にあてた書面です。


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東京入国管理局局長殿

  東京入国管理局に収容されている者の代表として、食事等に関する改善要望でのご対応、働き掛けについて、心からお礼を申し上げます。

  平成25年9月24日付けで、東京入国管理局局長殿へ提出した食事に関する要望、それに対する具体的な説明や、少しずつではありますが改善の成果や変更の予定などのきざしが見られた事から、10月4日より、私達一同は10月1日から実施していた給食を拒否する事を一旦中止するとともに、今後とも引き続きより良い食事の改善、自弁物品の種類の増加などへのご要望を致します。

  つきましては、今月末までに自弁物品の増加をしていただく約束を、私達一同は、直接に担当職員(B602)からもすぐ変えられる物(飲むヨーグルト、大きい袋の砂糖、調味料の増加、カップラーメンやパン類の増加。)を今後変えて行くことや、更に皆の要望を聞いていただき、また他にも私達をご支援、サポートをしていただいている「仮放免者の会」の大町さんにも「自弁物品の増加について、前向きに考えています。具体的な日時は(大町さんに)教える事は出来ませんが、収容者にはお伝えしたいと思います。」と言っていた事から、私達一同は、ぜひくわしい日時を提示していただくようよろしくお願い致します。

  9月30日に私達は責任者の方から、ぜひ増やしたい物品の要望を記入するように言われていた事から、本来ならば茨城の牛久の入管と比較できるような自弁物品の改善をしなければ納得出来ないという意見や考えの人が多かったのですが、入国管理局の方の前向きな姿勢を見受けて、とりあえず最低限ですぐ用意が可能な自弁物品を別紙にて記入致しましたのでよろしくお願い致します。今月(10月末)までにその成果が見られるよう、注意深く見守っています。

  そして最後になりますが、私達の要望や願いに耳を傾けて頂いて、真剣に私達と向きあって頂いた事を深く感謝致します。色々と困らせたこともあったと思いますが、お互いにいい機会、きっかけになったのではないかと思います。今後とも、何かとご意見や要望がございましたら、提案箱や直接的に局長殿に手紙を送ることがあると思います。その都度、どうかよろしくお願いを申し上げます。

    平成25年10月8日
              東京入国管理局収容者一同

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(別紙)要望食品(Iブロック)

1、乳製品
  • ヨーグルトや飲むヨーグルト
  • チーズ(なければ、「さけるチーズ」や「粉チーズ」)
  • 牛乳(なければ粉末のもの)


2、調味料
  • ハチミツ
  • ラー油
  • タバスコ
  • にんにく(チューブのものですりおろし。)
    ※腐らない物は全て大きいサイズにして頂きたい事を一同は強く望んでいます。


3、レトルト食品
  • シーチキン
  • やきとり
  • さんまの蒲焼き
  • 鮭、鯖、鮪フレーク等
    ※パックのもの。温める物が困難ならば、温めなくても良い物。


4、嗜好品(生菓子)
  • あんこ
  • 大福
  • ロールケーキ

  以上で、これらのリクエストが一番多くの人が望んでいる最低限の自弁物品となりますので、可能な物から一日でも早く増加をお願い致します。







Wednesday, October 16, 2013

「医者は食事中なので呼べない」東京入管の被収容者が死亡

  10月14日(月曜)の早朝、東京入国管理局(東京都港区)に収容されていたAさん(57歳)が、入院先の病院でくも膜下出血のため亡くなりました。Aさんはミャンマー出身のロヒンギャ民族で、難民申請者でした。


1.Aさんが亡くなるまでの事実関係
  Aさんが東京入管で倒れてから東京都内の病院にはこびこまれるまでの過程で、およそ40分ものあいだ東京入管は医療的な処置をとらずにAさんを放置するなど、その対応がひじょうに問題あるものであったことが、仮放免者の会の調査から、わかりました。

  Aさんが東京入管に収容されたのは10月9日の午前でした。同日の午後12時15~20分のあいだに、Aさんが居室で手を痙攣(けいれん)させ口からアワをふいて倒れているのを同室のひとが見つけ、ただちにコール・ボタンを押して職員をよびました。

  すぐに職員たちはかけつけました。ところが、結果的に職員がAさんを居室から担架ではこびだしたのが、最初の職員がかけつけてから約40分後の13時直前。そして、ようやく東京入管が救急車の出動要請をしたのが13時15分でした。これらは、目撃していた多数の被収容者の一致した証言や、搬送先の病院の記録などによって裏づけられている、否定しようのない事実と言えます。

  では、Aさんの上記のような状態を認識したのちの東京入管の対応はどのようなものであったか。これについても、被収容者たちの目撃証言は一致しています。

  かけつけた職員たちは、Aさんの背中をさすり、体を横にするなどしましたが、いっこうに医者を呼ぼうとせず、体温や血圧をはかったりするばかり。同室の被収容者たちは、はやく医者を呼ぶように再三にわたり職員に要求しました。ところが、このとき職員は、なんと「癲癇(てんかん)[の発作]だろう。大丈夫」「医者は食事中」などと言って医者を呼びませんでした。

  Aさんは、入管の出動要請を受けて救急車が到着した時点ですでに意識不明の状態で、病院に搬送された後、昏睡状態がつづいていましたが、14日の早朝、かえらぬ人となりました。


2.東京入管への申し入れ
  こうしたの対応の問題点などについて、15日(火曜)、Aさんの親族のかたといっしょに、東京入管に対し、口頭での緊急の申し入れをおこないました。

  申し入れでは、まず第1に、Aさんの親族に対し、ことのいきさつをくわしく説明することをもとめました。親族のかたは、Aさんが入管に収容されて容態が悪化する経緯や、そのときの入管の対応などを、現場にいた職員から説明を受けることをつよく望んでおられます。Aさんが亡くなってしまった以上、その生前の最期の姿、見ることのかなわなかったAさんの亡くなる前の状況を聞きたいというのは、遺族にとって切実かつ当然の欲求であるはずです。この親族のかたの思いに誠実に応えようとすることは、Aさんを収容した入管の最低限はたすべき責任であるといえます。

  第2に、Aさんを病院に搬送するまでの入管側の対応について、入管が収容者責任をはたしているとは言えないことを指摘しました。

  まず、Aさんがアワをふいている、また痙攣もおきているというあきらかに切迫した状態で、ただちに救急車をよばなかったこと。このような状態の人を見た場合、まっさきに救急車を呼ぶのはごくごく常識的な判断であるはずで、そのような常識的判断がなされなかったということを、東京入管は重大な問題として受けとめるべきです。こうした対応の遅れ、また「医者は食事中」などという職員の発言が出てきたことには、被収容者・外国人の人命を軽視する入管組織の差別的な体質が背景になかったのか? あるいは、緊急医療の体制に根本的な欠陥があったのではないか? こういった点は、早急に点検・検証されなければなりません。

  また、Aさんを病院に搬送するまでの対応については、収容場で入国警備官が医療的な判断をしているということの問題についても指摘しました。「癲癇(てんかん)だろう。大丈夫」というような判断は、医療従事者ではない入国警備官がおこなってよい範囲を大きくこえています。「癲癇」うんぬんの職員の発言をぬきにしても、容態の異常がみられたら即座に医師の判断をあおぐこと、医師の不在等の事情でそれができない場合はただちに救急車を呼ぶことは、被収容者の身柄を拘束している入管の当然の責任です。入国警備官が被収容者の病状を過少に評価して医療的な処置が遅れるようなことは、あってはなりません。

  申し入れの3点目としては、Aさんが日本の消極的な難民政策の犠牲者であるということ。Aさんは、ミャンマーで迫害を受けるロヒンギャ民族でした。妻子もミャンマーと国境を接するバングラデシュに避難しています。このため、Aさんの亡骸(なきがら)をミャンマーに送ることもできなければ、妻子のいるバングラデシュに送ることもできません。亡骸となってすら、かれには帰るところがないのです。このような人に在留資格を認めない日本の難民政策とは何なのか。

  4点目として、再収容は絶対にすべきではないということをあらためて申し入れました。Aさんの死亡との直接的な因果関係があるかどうかは別にしても、Aさんのように一度収容されて仮放免になった人は、すでに心身に大きなダメージを受けていることがほとんどです。しかも、仮放免の状態では、健康保険に加入できず、また就労も許可されないため、心身の不調があっても思うように診療を受けられません。そのような人を再度収容することは、人道上ゆるされることでありません。Aさんは、上記のような帰るところのない難民でもあって、かれをふたたび収容することに、心身を痛めつける以外にどのような意味があったのでしょうか。Aさんに早期に在留資格がみとめられていれば、ということを、Aさんがもはやかえらぬ人となってしまったいま、考えずにはいられません。

Wednesday, October 2, 2013

これがニッポンの「お・も・て・な・し」? 東京入管被収容者が給食拒否

  10月1日、東京入国管理局(東京都港区)の被収容者たちが、集団で給食拒否のストライキを開始しました。

  入管が出す給食を拒否しているのは、東京入管のIブロックに収容されている30名近くです。Iブロックの被収容者は、2週間ほど前に東京入管局長あてで食事改善の要求書を提出しており、「9月30日までに何の変化も見られなければ10月1日付けに入国管理局から供給される食事を全て拒否致します」と通告していました。この要求書は、Iブロックの被収容者約30人のうち29名の連名で提出されており、そのうちほとんどが今回の給食拒否ストライキに参加しているとのことです。

  要求書(この記事の最後に全文と画像を掲載しています)は、栄養バランス、食事の量、調理のあり方などについて、入管側が被収容者に対する配慮と真剣さを欠いていることを問題にしています。

  なお、今回の要求書では直接言及されていませんが、東京入管では、給食に髪の毛や虫などの異物の混入があいつぎ、これまでも被収容者たち自身が入管への改善要求や保健所への通報をくりかえしてきた経緯があります。異物混入がたびかさなり、いっこうに改善がみられないといったことは、通常であれば業者が致命的な信用をうしなう重大な事態というべきところです。ところが、異物混入はやまず、入管側もこれに十分な対処をしてきませんでした。

  以上のような経緯もあり、被収容者からは「『外』だったら業者がつぶれるようなことが、『ここ』だから通用しているし、入管もちゃんと対処していない」「入管は私たちをバカにしている」といった声があがっております。

  たしかに、虫や髪の毛の入った食事を出し続ける給食業者が営業をつづけられる場所はほかにないでしょう。入管がそのような業者の実態を認識しながら有効な対処をとっていないのは、被収容者に対する根深い差別と蔑視が入管という組織をおおっているからではないのか。被収容者たちがそう受け取るのも、もっともなことです。

  栄養バランスや量、調理といった給食の内容についても、被収容者からの改善の要求や嘆願が出されたのは今回がはじめてではありません。しかし、くり返される要求・嘆願に東京入管側がまともにとりあってこなかったことが、今回の被収容者たちの行動につながっています。入管側は、「我慢の限界に達してい」るという被収容者の言葉の意味するところをよく考えるべきです。被収容者たちは、すでにいままで我慢をしてきたのです。

  Iブロックの抗議に、他の複数のブロックの被収容者たちも呼応し、D、E、J、Kの4つのブロックでもすでに同様の要求書を提出しており、改善がみられなければIブロックにつづき10月7日から給食拒否をおこなうと入管側に通告しています。要求書に署名した被収容者の人数は、Iブロックの29名のほか、Dブロック30名、Eブロック22名、Jブロック31名、Kブロック21名、合計すると133名にのぼります。署名者の国籍も、私たちが確認できているだけで、25国籍におよびます(スリランカ、タイ、ガーナ、バングラデシュ、ミャンマー、ベトナム、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、グアテマラ、フィリピン、ボリビア、ブラジル、中国、イラン、アメリカ、マリ、インド、韓国、モロッコ、ネパール、フランス、アルジェリア、セネガル、ウガンダ)。

  こうした被収容者たちの動きに対し、東京入管側も9月30日時点で、要求書の提出された各ブロックに今後の給食の改善方針について職員が出向いて説明しているようではあります。また、その改善方針について、全ブロックに文書を掲示しているようです。これに対し、被収容者側は、「食事がどう改善されるのか、実際に見てみてから、対応を考える」として、現在も(10月2日時点)給食拒否をつづけています。

  仮放免者の会としては、以下に掲載する被収容者の要求書の要求内容を全面的に支持します。要求書が述べるとおり、入管側には被収容者の「健康管理や食事の栄養バランスなどに付いての適切な管理をしなければならない」収容責任があります。東京入管が、被収容者たちの今回の要求を真剣に検討し、被収容者が納得するような改善方針を具体的に提示すること、また提示した改善方針を誠実に実行することを求めます。


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入国管理局局長殿

  東京入国管理局に収容されてる方々を代表してこの手紙を差し上げます。

  日々、閉ざされた空間で生活し、多種多様な人が集まって共同生活を送るのが、とても大変で苦に思う事がとても多いのであります。精神的、肉体的な負担は大きく、日々不安な身心状態です。しかし、致し方ない思いから、皆が我慢をし、現状を耐えてきました。

  でも、長期期間に渡り収容されていることで身体の衰えや体力の低下に皆が悩み、苦しみ、出所後の暮らしや生活を考えて健康的な身体は欠けてはならないものであり、日々の食事に現在当局から私達へ供給されている食事は、正直栄養バランスが悪く、揚げ物や脂物に偏っていて多国の方が集まるこの中にはあってない調理法や味付けです。

  酢物や味噌で味付けをしている物、薄味の煮物に副菜食(おかず)は多くの人の口に合わず、食べないで残してしまう人がほとんどです。ただでさえ、栄養の低い食事なのに、出された物を食べれなくて、残してしまえば更に栄養摂取が悪く、健康状態も悪化してしまいます。現状況は悪循環を生み、私達収容を余儀無くされている側として我慢の限界に達しています。もう少し私達の健康状態を真剣に考えて、私達の要望や願いにもっと耳を傾けて欲しいものです。

  まず一つは、食事(昼、夕食)の中身を気にして栄養バランスや、外国の方のことを配慮して、調理をして頂きたいです。冷凍食品だけを弁当箱に詰めたり、いい加減な分配で盛り付けをしたり、如何に適当に行っているかを強く改善を求めます。茨城県の牛久にある入国管理局の施設と比べれば、ここ品川の入国管理局の悪さの差が一目瞭然です。全く、同じようにして欲しいとは言いませんが、せめても味付けや成人男性が必要な栄養に見合った食事を出して頂きたいと思います。

  そして二つ目は、自弁で購入出来る食料品についても品数を増やして、レトルト食品や乳製品(チーズ、牛乳、ヨーグルト)、カップ麺類にパン数も是非とも増やして頂きたいです。調味料品(酢、コショー、ソース、ハチミツ、ラー油等)の増加もお願い致します。参考までに茨城県牛久市にある入国管理局の購入用紙のコピーを同封致しますので、ご参照下さい。

  最後三つ目ですが、代替食(アレルギー、宗教などの豚肉、油抜き等)も現状では代替食として成り立っていなくて、普通の食事がフライ物が出れば、油抜きの代替食は缶詰のフルーツの詰め合わせや茹でた一切れのれんこんやミニトマトサイズのナスが出されています。どう考えても代替食として成り立っていません。また、豚肉が食べれない人が多いことから一切豚肉料理が出ません。宗教に関係ない人をまで一緒にするのがおかしいと多くの人が不満に思っています。

  調理を真面目にせず、適当な献立で皆不満を募らして我慢の限界に達しています。

  以上、これまで書いて来た事を入国管理局の責任者である局長殿がどう思い、受け止め、判断をされるかを注意深く見守っています。法律に照らせても、入国管理局に収容され、余儀無く拘禁生活をされている以上は、私達収容者の健康管理や食事の栄養バランスなどに付いての適切な管理をしなければならない義務が付けられているにも関わらず、現時点ではその責務を果たしていません。その責務をちゃんと果たさなければいけない立場であることを自覚し、全ての要望をすぐには可能に出来なくても、せめても自弁物品(食料品)の改善、増加はすぐに出来ると思います。

  二週間の時間を置いて、9月30日までに何の変化も見られなければ10月1日付けに入国管理局から供給される食事を全て拒否致します。

  どうか私達の悩みや耐えがたい現状に目を向けて、真剣にお考えをして頂きたく、よろしくお願い致します。身体的な事、健康に関することなので、単なる我慢として受け止めないので、正しきご判断をお願い致します。

  以下、収容されている者の署名を記載致します。

[連名での氏名、国籍、生年月日、署名の欄(省略)]