Friday, March 4, 2011

続報――東京入管でのAさんのハンストと Hブロックの要求書


  すでにお知らせしたとおり、東京入管では、Aさんが、2月24よりハンガーストライキをつづけています。Aさんが求めているのは、いったん「仮放免」になった人を2回3回と収容する「再収容」の廃止などです。
  また、これも上にリンクした記事でお知らせしましたが、これも東京入管で、収容されたひとたちが、連名で入管に要求書をつきつけています。これに対する、入管側の動きがありました。
  ハンストの件と、要求書の件、この2件について、今日(3月3日)それぞれ当事者と面会して話を聞いてきましたので、報告します。


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(1) Aさんのハンガーストライキ

  「こんにちは。元気いっぱいだよ」
  Aさんは、はりのある声でそう言いながら、笑顔で面会室にあらわれました。ハンストをはじめて7日めになりますが、足どりもしっかりしていましたし、話し方もしっかりしていました。
  しかし、ハンスト前とくらべて、だいぶ顔色はわるくなっています。ハンスト開始当初は、水とお茶しか飲んでいなかったそうですが、きのうからはスポーツドリンクも飲むようにしているとのこと。塩も入管職員にたのんであるので、きょうからとりはじめると言っていました。
  こちらからは Aさんに、つぎの2点をつたえました。

  • もう7日間も食べていない Aさんの体が心配なのでなるべく早くハンストを解除してほしいこと。
  • ほかの被収容者からも「心配している。ご飯を食べてほしい」という伝言をたのまれたこと。
これにたいし、Aさんは「ハンガーストライキは、ずっとつづける。外に出られるまで、なにも食べない。もし、それがだめなら、水を飲むのもやめる」と、ハンスト継続の強い意志をしめしました。
  3度目に収容されるまえには 72キロあった体重が、収容後1ヶ月あまりで 67キロまでおちていたそうです。それが、さらに7日間のハンストで61キロまでおちたとのことです。
  Aさんは「ハンストをやると、健康によい」と冗談にしていましたが、ハンスト以前に入管での収容自体が、体への大きな負担になっていることがわかります。かれにかぎらず、収容によって大幅に体重がへってしまう被収容者には、しばしば出会います。
  刑務所ですら「刑期」というものがきまっているのにたいし、入管ではいつ「仮放免許可」がでて外に出られるのか、めどが立ちません。このような文字どおりの「無期限」の収容がもたらすストレスは、はんぱなものではありません。しかも、ひとを傷つけたり、ひとのものを盗んだりしていない、ただ生活していただけのひとが、入管ではまるで犯罪者であるかのようにあつかわれるのです。
  1度の収容でさえ、ひじょうにきついのに、Aさんのように3度も収容されては、心も体もずたずたにされてしまいます。Aさんは難民ですが、難民にかぎらず、くりかえしの収容、入管による虐待にたえてきたひとたちはみんな、国にかえれない事情があるのです。かえれるものなら、とっくにかえってるはずです。
  前回の記事で紹介した Aさんの発言のとおり、再収容によって、アパートや家財道具など、「仮放免」中にきずきあげてきた「すべてを失う」のです。再収容されて仮放免になることについて、今日の面会で Aさんは「外に出てマイナスになる」と表現していました。再収容で「すべてを失った」うえに、仮放免に必要な保証金を借金して用意しなければならないからです。
  Aさんの「再収容はやめてほしい」という要求は、人間として生活していくための、きわめてあたりまえの、それどころか、ごくごくささやかな要求です。
  また、かれはつぎのことももとめています。
  • 難民をつかまえるのは、やめてほしい。
  • 仮放免中に仕事をする許可を正式にみとめてほしい。
  • 仮放免の保証金をさげてほしい。

  これもまた、あたりまえの、なんら無理のない要求であるはずです。このようなことをいちいち「要求」しなければならないという状況そのものが、あまりにおかしいです。
  以上の要求は、Aさんが収容されているブロックの担当者にすでにつたえたそうです。東京入管の誠実な回答と行動をもとめます。
  Aさんは、面会者にこんなことばをかけてくれました。
  「あなたが面会にきてくれることは、うれしい。でも、そのことであなたの生活にめいわくがかかってしまうことは、のぞんでいない」
  入管には、こうした Aさんの他人にたいする心づかいのほんの1パーセントでも、Aさんたち被収容者にむけてほしいものです。

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(2) Hブロックの共同要求書

  入管は、被収容者を「ブロック」と呼ばれる単位にわけて「管理」しています。ことなるブロックの被収容者どうしでは、ふだん会って話したりすることはできなくされているわけです。とくに、おなじ国・地域の出身者や、母語のつうじる仲間がじぶんのブロックにいない被収容者にとって、これはおおきなストレスの原因になっています。
  そうした「ブロック」のひとつ、東京入管の Hブロックの7人が、共同で要求書を入管につきつけました。
  共同要求書の内容は、冒頭のリンク先の記事を参照してください。
  その7にんのうち、イラン人の Eさんとコロンビア人の Mさんのおふたりと面会をしました。
  Eさんと Mさんによると、かれらの要求書にたいし、入管側は意味のわからないおかしな対応をしてきたようです。
  昨日(3月2日)に、要求書にサインした7人が、ひとりずつに別室につれていかれ、職員のとりしらべを受けたそうです。そうした取り調べが、昨日1日じゅう続いたのだそうです。
  入管職員が7人にしつこく聞いてきたのは、つぎの2点だとのことです。

  • 要求書はだれが書いたのか?
  • なんのために要求書を出したのか?

  いったいどういうつもりで入管職員はこんな質問をするのでしょうか? わけがわかりません。
  Eさんは、言います。
  「だれが書いたのかって? 7人のサインがちゃんとありますよ。みんなで話しあって文章をきめたんだよ。『なんのために?』という質問の答えも、要求書にきちんと書いてある。読めばすぐにわかることです」
  Mさんは、わらいながらつぎのように語りました。
  「職員がわざわざ『なんのためか?』と聞いてきたので、わたしたちはみんなが自分の気持ちをしゃべれて、よかった」
  入管の職員(Eさんは「Hブロックのボス」と呼んでいました)は、おそらくだれが「首謀者」なのかをつきとめようという考えで、「だれが書いたのか?」と尋問したのでしょう。この「ボス」には、「みんなが平等な立場で話しあってひとつの文書をつくる」という民主的なプロセスが理解できなかったようです。だから、「首謀者」をみつけだして、かれを仲間から引きはなしてしまいさえすれば、かれらの要求をつぶすことができると考えたのでしょう。そのために、ひとりひとりをばらばらに別室に連れていって尋問するという方法をとったのでしょう。
  しかし、「ボス」にとっては残念なことでしょうが、それはムダなことだとおもいます。なぜなら、「首謀者」なんていないのだから。
  「なんのために要求書を出したのか?」という質問も、マヌケすぎます。Eさんが言うとおり、要求書の目的は要求書にそのまま書いてあるのであって、「読めばすぐにわかること」です。
  「ボス」にとっては、被収容者たちが、共同で「ボス」にむかって要求をしてくるということ自体が、「信じられない、思いもよらないこと」だったのでしょうか?
  しかし、収容されて自由をうばわれているひとたちが、かれらの自由をうばっている入管にたいして、自分たちの生活をよくするための要求をつきつけるのは、あたりまえの権利です。
  まえの記事でも書いたとおり、「仮放免者の会」は、Hブロック7人の要求を、全面的に支持し、東京入管には誠意ある回答をもとめます。
  こうした要求書提出のうごきは、Hブロックのほかのブロックでもあるようですし、すでに提出したブロックもあるようです。要求書の内容があきらかになりしだい、またこのブログで報告します。

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