すでに掲載しているように、8Aブロックでは今年3月9日に所長あての要求書を出し、その後も継続的に仮放免や処遇の問題について改善を求め続けています。
趙さんの長期収容反対、仮放免不許可理由の開示要求という闘いは、被収容者全体の意見を代弁してのもの。しかし趙さん自身としてはより深く、収容、仮放免制度などについて根本的なところから考えています。以下に掲載する趙さんの文書は、収容や仮放免制度について被収容者自身が根本的なところから問いかけた訴えであり、私たちも学ぶべき点が多々あるように思われます。
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日弁連人権擁護委員会 人権救済申立てについて
2012年8月1日
牛久入管被収容者 趙××
2011年9月26日、品川から東日本入国管理センターに移送されてきて初めて感じられた事は、人間として扱いは受けられない所なのかなという印象でした。施設ごとに違いがあっても、こんなに違うのかなと、初めて感じさせてくれました。これから、この施設に収容されている者の立場として、言える範囲内で具体的にいくつか分けて話したいと思います。
1.この施設の本来の目的は何でしょうか?
入管側の説明によりますと、(1)退去強制出国命令が出ている限り国に帰るために準備をする所、(2)難民・家族・裁判等いろいろ手続きがある人は、一時的放免し済ませるため。
(2)番の場合は、仮放免制度に該当するのですが、施設がある以上、付属ものとして考えられます。ほかにもあるのか分かりませんが、まともに説明してくれる担当官がいないので、自分なりに解釈します。
(1)(2)をあわせても、個人の事情により帰ることができない人がいます。そういう人にはどういう対応をするのか疑問です。日本に住むことを、説得して諦めさせるのは見てきました。それでも帰らない人たちも沢山見てきています。こういう人たちのせいで、「長期収容」という言葉が出てきたと思います。つまり、結論から言いますと「長期収容」するために、この施設があるのと何ら変わりません。では、どのくらい収容されると「長期収容」になるのか気になりますね。担当官に聞くと、ちゃんと答えてくれる人は一人もいません。
なぜなら、この施設は無期限収容所だからです。今の時代、無期限収容所が許容されていいのかどうか、国連の人権団体に問いかけてみたい気持ちです。
2.仮放免制度は何でしょうか?
「無期限収容所」でありながら、無期限収容されている者はいません。その理由は、この仮放免制度があるからでしょう。ここで一つ、入管側に聞きたいのは、人道的な配慮で仮放免制度があるのか、人権的に「長期収容」ができないからあるのか教えてほしいです。しかし、どっちにしろ、中途半端な運用は人を欺くような事となりかねますので、ここでは人権侵害とも言えると思います。現在の仮放免制度の中途半端な運用では、「無期限収容所」というレッテルは消すことができないでしょう。
一つ例を挙げて具体的に説明します。
仮放免のマニュアルはありますが、ここで話したいのは、収容されている者としてもっとも基本的な事についてです。仮放免を申請するには、保証人、保証金、社会での住む場所が必要となります。帰れない人達の中では、これらが用意できない人達もいるのが現状です。つまり、仮放免の申請ができない限り、この施設から出るには、自分自身をすてて、あるいは自分の人生をすてて、すべてをすてて自分の国に帰るという究極の選択をしなければならなくなります。これが、本来のこの施設の目的なら、仮放免制度は必要ないし、そもそも初めから人道的な配慮はなかった事になります。では、住む場所もない、お金もない人をどうやって社会に出すのかという疑問が生じるでしょう。しかし、こんな疑問を持つのが不思議でしょう。解決するまで出さないのが人権的にも十分理由になると思います。本当の問題は、仮放免にあります。マニュアル通り書類を備えて申請しても、不許可になるのは当然のようにあります。審査の基準というのは、マニュアルに書いてありますので、収容されている者なら誰もが知っていると思います。つまり、申請する本人はマニュアルに書いてある事はクリアしたと思い申請しているので、不許可の理由が分からないのです。きちんとした不許可の説明もなしに、不許可の通知だけするので普通の人間なら納得できるはずがないでしょう。不許可の説明を求めても無視されるのがこの施設の現状です。「ビザがない人は人間として価値もなく人間失格だ」というのを強く感じさせてくれました。確かにビザがないことは反省する所だと思います。しかし、この施設の運用のやり方のおかげで生きる価値を失くした人は恐らく私だけではないでしょう。こんな理不尽な仮放免のシステムは、人間社会で許されるものではないと思うのが私の考えです。
3.日本の入管法は一つであるのに、なぜ入管の施設は統一性がないのでしょうか。
入管法に基づいて立てられた施設なら、東日本だろうが西日本だろうが同じになるはずです。最初に立てられた時から保安を優先してしまったために、人権は無視されたというのは肌で感じられます。施設内での生活の面で違いがあっても、愚痴や不満が出るのは当たり前でしょう。まして、その違いが「収容期間」にあるとしたら、大きな問題になると思います。何が根拠で、東日本入国管理センターと西日本入国管理センターは、「収容期間」をもって差があるのかきちんと示してほしいです。虐待だけが人権侵害ではありません。きちんとした理由もなく、差別をするのも人権侵害だと思います。理由があっても説明がないなら人権侵害と何ら変わりません。
4.収容されている者としてではなく、一人の人間として私の意見を聞いてほしいです。
入管の立場から言いますと、帰らない人達を人道的にもっと効率的に国に帰す方法を考えるべきではないでしょうか。中途半端な仮放免のシステムでは、私のように不満を持つ人も出てくるし、ビザを出すまで収容所から出て行かないと意地を張る人も出てきます。それから先が見えないことで命まで諦める人も出てくるのです。どう見ても現在の施設の運用は、人道的にも効率的にも見えません。かえって逆効果をもたらしているのだと思います。それで、私は「満期制度」はどうかと思います。無論、「満期制度」は初めて収容される人に限ります。それから帰らない、帰られない人達限定です。今の施設の運用だと、先が見えないようにして、日本に住みたい気持ちを諦めさせるのが目的のように感じます。しかし、どんな形であれ社会に出しているのが現状ではないでしょうか。それなら、「満期制度」にして一回チャンスを与えるのが一層人道的ですし、収容されている人にとっても大事にすると思います。それから一番大事なことは、収容されている間に被収容者たちは教育を受けることです。満期を終えて施設から出る時にも必ず誓約書を書くことです。誓約書は、もう一回収容されることがあったら必ず国に帰りますというものです。これで社会に出て日本に住むため自分なりにいろいろ手続きすると思いますが、ビザもしくは難民として認めてもらえなかった場合は帰る覚悟ができるでしょう。ここで「逃亡」については私なんかが語る必要はないと思うのでやめさせていただきます。今の不良外国人たちを皆各自の国に帰したとしても、新たな外国人労働者は受け入れると思います。もっと強化された管理システムで外国人労働者を受け入れたとしても、今と同じ事が繰り返されない保障はないと思います。
一人の人間の意見として聞いてくれる事を強く願っています。
以上です。
〇名前:趙××
〇国籍:韓国
〇生年月日:19××年×月××日(××歳)
〇来日した日:198×年×月××日
〇来日した理由:×××××大学に入学するため
〇最初に収容された所:品川入国管理局(2011年6月2日)
〇茨城県牛久の東日本入国管理センターに収容された日:(2011年9月26日)
〇帰らなかった理由(ビザが切れてから):
当時、韓国は開発途上国だったので国民の認識は海外に留学するようになると半分成功した目で見る時代でした。経済事情で大学を途中でやめた私は到底帰る勇気がなかったと思います。
〇帰られない理由:
一言で言いますと帰る場所が無いからです。韓国は住民登録制度です。国民すべてが住民登録証を持っていて生活全般をするようになっています。仕事は勿論、家を買う、借りるにも必要となります。26年間、韓国に帰っていない私は抹消されているので新たに申請するとお金と時間がかかります。一般の人には大した事ではないと思うかも知れません。しかし、何もない私にとっては、 ただ一日の生活も不安なので帰ることは考えられません。
家族のことを話しますと、韓国には高齢の母と弟がいると思います。日本には息子がいます。しかし、両方とも13年くらい連絡を取ってないので、向こうも私も生死さえ分からない状態です。息子の場合は、息子が5歳の時に日本人だった私の妻が病死して妻の実家に預けたままになっています。父として何もできなかった私です。息子に会う面目はありません。でも死ぬ前に一目見るのが私の希望です。
駄文ですが宜しくお願い致します。
「私はクリスチャンです。すべてを神様に委ねます。」
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