Sunday, June 2, 2013

5・31「第1回仮放免者一斉再審申立」の報告


  5月31日に、前回記事で告知していた「第1回仮放免者一斉再審申立」を、「仮放免者に在留資格を!」弁護団と共同でおこないましたので、報告します。

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  東京入管への一斉申立にさきだって、10:00から弁護士会館で記者会見をおこないました。弁護団の弁護士、仮放免者の会の支援者とともに、今回の申立に参加した仮放免者当事者のうち4名もこの記者会見にのぞみました。

  このうち、ミャンマー出身で無国籍の男性は、自分は帰るべき「国自体がない」ので在留特別許可を得て日本に住みたいとうったえました。

  フィリピン国籍の女性は、1歳6ヶ月のやはり仮放免状態にある子どもを抱いて会見に出席しました。彼女は、帰国した場合、夫(永住者の男性)と離ればなれになってしまうため、「ファミリーで離れたくない」と述べ、また、子どもが健康保険に入れないことの苦境をうったえました。

  難民申請者であり、仮放免者の会のリーダーのひとりでもあるバングラデシュ国籍の男性は、「命があぶないから帰られない」といった自身の事情とともに、仮放免者には帰りたくても帰れない事情がそれぞれにある(難民であること、日本で結婚していること、滞在が長期間におよぶこと、重い病気にかかっていることなど)と語りました。

  日本滞在歴が23年におよぶイラン国籍の男性は、建築現場での落下事故の影響で外傷性てんかんになり、転倒の危険があるために杖を手放せませない状態ですが、9年ちかくものあいだ仮放免の状態にあります。かれは、仮放免者である自分たちは「この社会で、存在している? 存在していないの? どっちなんですか?」と問い、「われわれは存在していない感じですよ、いま。いるんだけど存在していない」と述べました。

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  記者会見のあと、13:00より東京入管に仮放免者20名の再審申立をおこないました。

  今回の仮放免者一斉再審申立は、4月13日に関東弁護士会連合会(関弁連)と仮放免者の会が共同で開催した「第1回被仮放免者臨時法律相談会」におとずれた仮放免者が対象になっています。相談会は相談者ひとりに担当の弁護士が2人ずつつくかたちでおこなわれ(参加した弁護士は計22名)、それぞれ担当した弁護士が再審申立の書面(難民申請者については意見書)を作成して、この日の一斉申立におよびました。

  東京入管では、申請者、弁護士、支援者のほか、今回の申請者ではない仮放免者たちも合流し、あわせておよそ70名が見まもるなか、申立書が提出されました。

  一斉申立については、TBS、共同通信などもこれを報じています。

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  一斉申立の後、仮放免者の会として、東京入管で以下の申し入れもおこないました。


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申  入  書
2013年5月31日
法務大臣  殿   
法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局長  殿


  我々、仮放免者の会は、これまでにも幾度もどうしても帰国する事の出来ない仮放免者達に在留資格を付与するよう申し入れてきました。仮放免者達はある者は愛する家族との生活のため、自身の難民性のため、病気の治療のため、または自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している者です。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在します。今回、「仮放免者に在留資格を!」弁護団と我々仮放免者の会が申立を行なった仮放免者達は何れもこのような帰るに帰れない理由を抱えた者達ばかりです。彼ら、彼女らに対して最大限の人道上の配慮を持って在留資格を付与していくことを我々は申し入れます。

  2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンガーストライキ、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理矢理送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者による相次ぐデモ、ハンスト等は、入管がどうしても帰国出来ない外国人の問題に対し収容や再収容、送還といった暴力的方法に対処しようとすることの限界を明らかに示しています。退令仮放免者についても、彼ら、彼女らはどうしても帰国出来ない事情があるからこそ過酷な収容にも耐え、仮放免となり、仮放免中の人権上の著しい制約下においてもなお本邦での在留を求めて生活しているもので、これら仮放免者に対し入管が繰り返しの収容、送還に固執することは、結局は再度の長期収容と仮放免といったサイクルを繰り返すことになります。このような無用のサイクルを際限なく繰り返すことは、退令仮放免者及びその家族の心身を収容によって単に痛めつけるためのものにしか過ぎず、退令仮放免者の抵抗や自殺等の痛ましい犠牲者を再び生み出すことにつながるのみで問題の解決にはなりえません。これら仮放免者の問題の解決には彼ら、彼女らの本当に帰国出来ない理由を斟酌し、在留資格を付与していく以外の方法はないのです。

  難民申請者については、現在日本では、難民認定に際して、認定基準においても申請者自身に課せられる立証責任においても極めて厳しい運用がなされ、本来帰国すれば生命の危険があり保護が必要な者達に保護を与えることを拒否する結果となっています。これらの者達については少なくともUNHCR難民認定基準ハンドブックの定める「灰色の利益」に鑑み、難民認定していく事で救済していくべきと我々は考えます。また入管では「迫害主体を当該国家としない者についてはこれを難民として認めない」という運用がなされているようですが、そのような文言はいわゆる難民条約にはなく、解釈の問題に過ぎません。難民条約の定める理由により迫害を受ける者で、当該国籍国の十分な保護を受けられない者に関しては、難民として認定する、あるいは人道的な配慮から在留を特別に許可する事でこれを救済するよう申し入れます。

  日本では、バブル期には製造、建築等いわゆる3K職場と呼称される労働現場で当時の日本の若者がこれを忌避した事から人手不足が深刻でした。当時それを埋め、日本の発展を底辺で支えていたのは非正規滞在外国人でした。階層性を成す日本の労働市場においてそれを底辺で支えていたのは貴職もご存知の通り紛れもなく外国人労働者達でした。こうした現実、またこれらに依拠しなければ日本の中小企業、労働市場は立ち行かなかったという現実があるのだから、2003年10月の法務省入国管理局、東京入国管理局、東京都及び警視庁による「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」、2003年12月の犯罪対策閣僚会議による「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」等により国として非正規滞在外国人の労働力に依拠しないと明確に打ち出す以前に来日し、結果として定住するに至った者に在留資格を付与していく事は社会的公正という見地からも重要であると我々は考えます。またこうした者を長期間にわたり非正規滞在のままにして労働力として搾取し続け、不要となれば排除する事は著しく道理と公正を欠いており、日本がそのような国であるという評価が国際的に定まることもまた望ましくありません。我々仮放免者の会は、これら長期滞在者については、彼ら、彼女らが日本の発展、繁栄を支えてきた事、職場で、地域社会で築いてきた人間関係等の豊かな社会関係資本を最大限考慮し、在留資格を付与していくことを求めます。

  仮放免者達の中には、日本人の配偶者、在留資格所持者の配偶者、一家全員仮放免者(異なる国籍を持つ者同士の婚姻で子供の仮放免者含む等)がいます。市民的及び経済的権利に関する国際規約(B規約)の第23条の2による「婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。」とあり、同規約の第23条の1には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とあります。さらには「児童の権利に関する条約」の第3条には「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定されています。愛する家族と共に暮らす事、家族と引き離されたくないという気持は誰しもが持つ切なる想いです。日本に家族(配偶者、及び扶養する子供、及び扶養すべき者)がいる者については、上記国際条約の規定にのっとり、家族統合に十分に留意し、然るべく在留資格を付与していくことを申し入れます。

  また仮放免者は特に医療の面において著しい排除を受けており、仮放免期間の長期化に伴い、生命の危機のある疾病に罹患する者も増加します。これら重病者に対しても早期の在留資格付与を望みます。

  今回申立を行った仮放免者達は上述してきたようなどうしても帰国する事の出来ない事情を抱えています。特に重病者、子供の仮放免者、仮放免期間の長期化等深刻な事例は多くあります。仮放免者の問題に関しては早急な解決が必要です。我々仮放免者の会は、今回申立の仮放免者及び帰国出来ない退令仮放免者について、人道的見地に立ち本邦への在留を認めることで救済し、早期にこれら仮放免者の問題を解決するよう申し入れます。



申し入れ団体    仮放免者の会

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