また、12月19日に東京入国管理局、同20日に東京入国管理局横浜支局、同24日に東日本入国管理センターに出向き、以下に掲載する申入書を提出し、このたびの送還につよく抗議しました。
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申 入 書
2013年12月19日
法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿
東京入国管理局長 殿
東京入国管理局横浜支局長 殿
関東仮放免者の会(PRAJ)
法務省は、12月8日、タイ人46名(4歳児1名をふくむ男性26名と小学生2名をふくむ女性20人)をチャーター便により強制送還した。この一斉送還の実施につよく抗議する。
当会としては、同意なき送還そのものに反対するが、今回の一斉送還は以下のような重大な人権侵害をともなっていた点でも看過できないものである。
1.送還による家族分離
法務省は12月9日の記者会見において、今回の送還にあたり「家族をばらばらにしていない」との発表をおこなったようである。ところが、家族が分離されたケースが多数あることが確認されている。
当会の調査によると、日本人の配偶者(日本およびタイでの婚姻が成立している)、永住者の配偶者(日本での婚姻手続きは準備中であるもののタイでの婚姻が成立している)がそれぞれ複数、また定住者の配偶者(日本およびタイでの婚姻が成立している)が今回の被送還者にふくまれていることがあきらかになっている。さらに、法的な婚姻はととのっていないものの、事実婚にある夫婦の一方が送還されたケース、血縁関係がないものの同居していた子(配偶者の子)と送還により分離されたケースもあり、実質的に家族として生活していたことが明確であるにもかかわらず、今回の送還により分離された家族は多数存在している。
このたびの一斉送還は、「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する」(第二十三条第1項)とさだめた「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)に違反し、家族を分離するきわめて非人道的なものであった。
2.長期滞在者の送還
今回の被送還者には、7月6日におこなわれたフィリピン人一斉送還時と同様、2004年よりまえに来日した長期滞在者が多数ふくまれている。なかには、滞在期間が20年以上におよんだ者も複数いる。
バブル期に製造、建築等いわゆる3K職場と呼称される労働現場で当時の日本の若者がこれを忌避した事から人手不足が深刻であった。当時それを埋め、日本の発展を底辺で支えていたのは非正規滞在外国人であった。こうした現実、またこれらに依拠しなければ日本の中小企業、労働市場は立ち行かなかったという現実があるのだから、とくに2003年10月の法務省入国管理局、東京入国管理局、東京都及び警視庁による「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」、2003年12月の犯罪対策閣僚会議による「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」等により国として非正規滞在外国人の労働力に依拠しないと明確に打ち出す以前に来日し、結果として定住するにいたった者を送還することは、社会的公正という見地からも容認できない。
3.仮放免者を再収容しての送還
今回の一斉送還においては、仮放免者を再収容して送還したケースが複数あった。そのなかには、前述の日本人の配偶者もふくまれている。
当会がこれまでくりかえし申し入れてきたとおり、過酷な収容にたえぬき仮放免された者たちは、帰国すると危険が予想されるため難民申請をしている、帰国によって家族が分離される、長期間の滞在によりすでに国籍国に生活基盤がないなど、それぞれ帰るに帰れない事情をかかえた者たちである。
2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンガーストライキ、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理やり送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者によるあいつぐデモ、被収容者によるあいつぐハンスト等は、入管がどうしても帰国出来ない外国人の問題に対し収容や再収容、送還といった暴力的方法に対処しようとすることの限界を示している。いまや3000人を超える仮放免者をこうした暴力的方法によって帰国させることは事実上不可能なのであって、また人道上の観点から言っても、こうした帰るに帰れない仮放免者に在留資格をみとめる以外に解決の道はありえない。
4.行政訴訟の機会を不当にうばうかたちでの送還
送還されたなかには、12月6日(金曜)夕方に難民不認定に対する異議申し立て棄却が通知され、週明けを待たずに8日(日曜)に強制送還された者があった。これは、難民不認定処分取消訴訟の出訴期間内(処分内容を知ってから6ヶ月以内)での送還であり、また、難民認定の再申請をはばむために送還直前の金曜夕方に異議申し立て棄却を通知するという姑息なやり方による送還であった。
また、今回の被送還者のなかには、退去強制令書発付処分取消訴訟の出訴期間内(処分内容を知ってから6ヶ月以内)であるにもかかわらず強制送還された者が多数おり、そのなかには、提訴にむけて準備中の者もすくなからずいた。
難民不認定処分、あるいは退去強制令書発付処分など行政処分を不服として裁判所の判断をあおぐことは、当然の権利であって、出訴期間内の同意なき送還は、裁判の機会をうばう不当なものである。
5.学齢期の児童の送還
法務省は、今回の被送還者に小学生2人がふくまれていることをあきらかにしている。7月のフィリピン人一斉送還ではなされなかった学齢期の子どもを送還したわけである。
当然ながら、不法残留や不法入国といった入管法違反について、こうした子どもの責任を問えるような道理はいっさい存在しない。日本で育ち、学校教育を受けている子は、一般的にタイ語をほとんど話せないことが多く、送還先社会への適応には困難が予想される。彼女たちを通っていた学校から引きはがした行為は学習権の侵害であり、学校や地域の友人たちと引き裂く行為の非人道性もあきらかである。
以上のとおり、このたびの一斉強制送還に正当性がないことはあきらかであり、以下申し入れる。
(1) 送還した46名について、本人の申請があれば、すみやかに上陸特別許可をみとめること。とくに、日本に配偶者がいる被送還者については、早急に上陸特別許可をみとめ、非人道的な家族分離の状態を一刻もはやく解消するようつとめること。
(2) 今後、チャーター機によるものもふくめ、本人の同意なく送還することはやめること。別途、申し入れるとおり、東京入国管理局執行部門の入国警備官による、暴力行為・恫喝行為が横行し、行政訴訟や難民申請を取り下げさせようとした圧迫行為すらおこなわれている。このような状況にあっては、送還の正当性はなおさらないと言わざるをえない。
以 上
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同意なき送還について、今後とも継続して、法務省および東京入国管理局をはじめとする各入国管理局地方局、入国管理センターにたいし抗議と反対の声をあげていきましょう。
抗議先
(1)東日本入国管理センター 総務課
tel: 029-875-1291
fax: 029-830-9010
〒300-1288 茨城県牛久市久野町1766-1
(2)東京入国管理局
tel: 03-5796-7250(総務課)
Fax: 03-5796-7125
〒108-8255 東京都港区港南5-5-30
(3)東京入国管理局横浜支局 総務課
tel: 045-769-1720
Fax: 045-775-5170
〒236-0002 神奈川県横浜市金沢区鳥浜町10-7
なお、関西で入管問題と難民支援に取り組んでいるRFIQ(在日難民との共生ネットワーク)が、今回の一斉送還について法務大臣あての抗議署名をよびかけています。
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