Tuesday, October 7, 2014

東京入管で集団ハンスト:被収容者76名が参加

  報告がおそくなりましたが、9月9日の記事でお伝えしていた、東日本入国管理センター8Aブロック被収容者6名によるハンガーストライキは、すでに解除されました。ハンスト参加者によると、9月6日(土)に始められたハンストは、その後、センター側からの一応の回答を受けていったん中断することとし、9日の朝から摂食を再開したとのことです。

  被収容者の申出書に対するセンターからの口頭での回答は、具体的実際的な中身のあると言えるものではありませんでした。仮放免申請から審査結果告知までの期間をみじかくするようにとの要求にたいして、センター側の回答は「みじかくするよう努力しているし、今後も努力する」というものでした。医療改善の要求に対しても、同様に「努力しているし、今後も努力する」。仮放免不許可の理由を申請者本人に知らせることという要求にたいしては、「おしえられない」と。

  8Aのハンスト参加者たちにとって、こうした回答はじゅうぶんに満足できるものではありませんでしたが、参加者どうしの話し合いの結果、今後の入管側の行動を注視することにし、 6日に開始したハンストは「いったんやめる」こととしたそうです。

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  いっぽう、東京入国管理局では、9月のなかばから10月のあたまにかけて、3つのブロックであいついで集団ハンストがおこなわれ、総計76名の被収容者が参加しました。それぞれのブロックの被収容者がかかげた要求をみると、入管収容施設の処遇の劣悪さにとどまらず、入管という組織の外国人に対する人権無視・人権侵害の体質を、あらためてうきぼりにしております。

  今回、東京入管で集団ハンストをおこなったのは、E, F, Jの3つのブロックの被収容者です。それぞれの要求をここで紹介させてもらいます。

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  Eブロックでは、9月16日朝から18日夜にかけて、ハンストがおこなわれました。24名12国籍(パキスタン、バングラデシュ、ベトナム、セネガル、フィリピン、ギニア、ガンビア、インド、パラグアイ、スリランカ、ブラジル、中国)の被収容者がハンストに参加しました。

  被収容者たちは、口頭で以下4つの問題を入管側につたえ、その改善を要求しました。

  1. 収容の長期化。仮放免を何度申請しても不許可になる。1年近く収容されている人もいる。
  2. 仮放免の不許可理由がわからない。説明がいっさいない。
  3. 食事の量が少ない。毎日同じ食べ物。栄養に配慮されていない。
  4. 在留資格所持の妻子がいるのに在留資格が出ない。自身が収容されたことで家族は経済的に困窮している。心理的打撃も大きい。

  さらに、Eブロックに収容されているフィリピン人男性Aさんの妻が5月に流産したことが、Aさんだけでなく、Eブロックの他の被収容者の強いいきどおりと抗議を引き起こしました。

  Aさんは入管法違反の容疑で東京入管に収容され、4月末に口頭審理を受けました。この口頭審理には、Aさんの妻のBさん(フィリピン国籍、永住者の資格)が立会人として同席しましたが、東京入管は、妊娠中のBさんが同席するなか、この日に途中5回の休憩をはさみつつも、朝9時半から夜9時にわたって尋問をおこないました。Bさんはその後、病院に行きましたが、10日後に流産しました。医者からは、「極度のストレスが原因」と説明されたとのことです。

  Bさんにとっては、夫に退去強制命令が出るかどうか、今後も夫が自分や子どもたちといっしょに日本で暮らせるかどうか、という、それ自体で非常な緊張をしいられる取調べを夫とともに受けなければならなかったわけです。そうした場に、妊娠中の女性を事実上強制的に呼び出して朝から夜おそくまで拘束し、長時間にわたって尋問するという、東京入管のやり方は、母子の健康や人権を考慮していたとはおよそ考えられない、非常識きわまりないものです。

  外国人が相手となると、生命の安全や人権の観点などおかまいなし、行政手続きを優先するという、入管のこの体質こそ、入管によって収容され、あるいは取り締まられ審査を受ける立場におかれた外国人の多くが、日ごろから強い不満や怒りを表明しているところでもあります。そういうこともあって、Eブロックのたちの被収容者たちもAさんやBさんの怒りや悲しみに共鳴したのだといえます。

  今回のEブロックのハンストには、これまでの入管の被収容者のハンストにはみられなかった顕著な特徴があります。それは、退去強制命令の出ていない審査中の被収容者の参加がめだったということです。審査を受ける側からすれば、こうした抗議行動に参加するということで入管から不利益なあつかいをうけるのではないかというおそれをいだくのは、当然のことです。そうしたおそれの気持ちを超えるほどの怒りや理由が、このEブロックでは共有されていたのだと思われます。

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  Fブロックでは、9月20日から26日までハンストがおこなわれ、24人が参加しました。

  要求の具体的な内容については、連名で出された局長あての要求書をこの記事の下に転載しておりますので、そちらを参照してください。

  長期収容をしないことや、食事や自由時間などに関する処遇の改善をもとめています。「私達動物園に入れられてる動物ではありません」という一文が、入管の被収容者にたいするあつかいのありようをものがたっています。

  また、要求書は、仮放免許可申請の審査基準や審査期間、あるいは処遇等についての規則の根拠が不明確・不透明であることも、問題にしています。「入管にはルールがない」とは、被収容者や仮放免者からしばしば聞くことばです。じっさい、仮放免の審査にせよ、処遇等の規則にせよ、入管の運用はきわめて不透明です。さらに、このブログでもくりかえし指摘してきましたが、退去強制令書を発付された人について、その収容期間の限界はさだめられていないこと(無期限の収容・監禁)も大問題です。

  入管側はことあるごとに「われわれは法と規則にのっとってやっている」ということを強調しますし、それはたしかに入管組織内部の人の意識において、かならずしもいつわりとは言えない発言なのでしょう。恣意的に権限をふるっているのではないのだ、と。

  しかし、重要なのは、組織外部の者にとって、入管の規則やその運用が不透明きわまりないという事実です。とくに、入管の規則によって管理される被収容者や仮放免者にとって、どのようなルールにもとづいているのか、あるいはそのルールの根拠はなんなのか、ほとんど明かされないままルールに従うことをもとめられるのは、「おとなしくしていろ、不平を言うな、さもなくばお前に不利益をあたえるぞ」とおどされているのとなんら変わりません。

  こうした、規則や運用の不透明さこそが、被収容者による集団ハンストがくりかえしおこなわれてやまない本質的な原因のひとつであることを、入管側は肝にめいずるべきですし、Fブロックの要求書が、責任者との「話し合いの場を設けてほしい」とむすばれていることの意味をよくよく考えるべきでしょう。

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  Jブロックのハンストは、9月24日に開始され、10月2日までつづけられました。28名9国籍(フィリピン、イラン、スリランカ、ナイジェリア、中国、ペルー、インド、ネパール、ベトナム)の被収容者が参加しました。

  要求書は、この記事の最後に転載しています。

  要求内容は、仮放免者の再収容をやめること、長期収容や無理やりの送還をしないこと、病人に治療を受けさせることなどです。

  要求書の冒頭では、「一人一人色んな理由で母国に帰れない」事情があるということが述べられ、その事情について2つの類型が示されています。ひとつは長期間、日本に滞在して生活の基盤がすでに日本に移っているということ、もうひとつは、難民であるため母国から離れざるをえないということです。いずれか一方がおもな理由となって帰国できない人もいれば、両方の理由で帰国できない人もいます。  「母国に帰れない」のは、「一人一人色んな理由」があり、このJブロックでも、そうしたいろいろな背景をもったひとびとによる団結のもと、ハンストがおこなわれました。

  そして、こうした「母国に帰れないこと」は、「一人一人」の当人のそれぞれの個別的事情であるばかりではなく、総体として、入管行政、もっといえば日本社会が生み出した問題なのだという点は、あらためてふりかえっておきたいところです。

  ひろく指摘されているとおり、日本は、難民申請者に対する難民認定率は難民条約加盟国のなかでも段違いに低く、また難民認定以外のかたちでの難民申請者の在留資格取得もなかなか認められていません。

  いっぽうで、日本政府・日本社会は、外国人を労働力等として利用(日本政府ごのみの用語でいえば「活用」でしょうか?)し、そこに深く依存してきたにもかかわらず、彼ら・彼女らを不安定な地位のまま放置してきました。というより、不安定な地位に置きつづけることで、外国人を安価な労働「力」として利用することを可能にしてきた、と言うべきでしょう。

  こうして在留資格に値打ちをつけて出しおしみし、そのかわりに退去強制令書を濫発してきたことのツケとして、おびただしい数の(法務省用語で言うところの)「送還忌避者」をうみだし、3,000人以上の仮放免者を生じさせるにいたっているのが現状なのです。その経緯については、以下の記事も参照してください。



  入管が直面しているのは、「不法滞在者」の存在などではありません。日本政府・日本社会が支払いをおこたってきたみずからのツケ・負債にこそ直面している、と言うべきなのです。くり返しの収容(再収容)や長期収容によって肉体的・精神的に痛めつけたり、無理やりの送還によって「送還忌避者」や仮放免者を帰国させて減らす、という方針に法務省・入管が固執しつづけるかぎり、この問題に終わりはありません。問題解決の最善かつ迅速な方法は、このJブロックの要求書が最後のほうで明確に示してくれています。



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【Fブロック 要求書】 

東京入国管理局長殿

1.仮放免不許可の明確な理由
1-1 仮放免不許可になるにあたって一人一人個人の仮放免不許可の理由を明確化してほしい。
1-2 仮放免許可申請に必要な書類一式の明確化
現在仮放免許可申請に必要な書類は、「住民票」「預金残高証明書」「源泉徴収票」の3点ですが、この3点と別に必要な書類があれば明確化していただきたい。
1-3 仮放免許可後、何故、仕事をしてはいけないのか?
外に出る以上、収容されている時とは違い、自分自身で生計を立てなければいけません。そのうえで仕事をするという事は、生活するうえで一番大切な事です。その仕事を許可出来ない理由を明確にしていただきたい。
1-4 仮放免許可申請の結果日数の明確化、短期化
現在、色々な仮放免許可申請を出している中で、結果が出るまでに45日以上と長期な為、20日以内結果を出す事。
1-5 仮放免許可に際して明確な理由がない人達が仮放免許可されている理由を明確にしていただきたい。
1-6 入管に収容されている期間の明確化
現在、収容されている人達の収容期間が6カ月以上と長期に渡っている。なのに、仮放免を許可しない理由と、何時まで収容されているのか、明確化していただきたい。
1-7 茨城、大阪入管は短期で仮放免許可しているのに、東京入国管理局は何故、東京は長期にも関わらず、仮放免は不許可になるのか、理由を明確化していただきたい[注:東日本入管センター(茨城県牛久市)や大阪入管(大阪市)において、短期で仮放免許可が出る傾向にあるという事実はないので、ここで引き合いに出されているのは大阪府茨木市にある西日本入管センターのことと思われます]。

2.ビザに関して
2-1 どの様な状態で私たちはビザは許可になるのか?
同じような状況の人がビザが出る人と出ない人の違いを明確化、ビザが出ない人の理由の明確化していただきたい。

3.一日のフリータイム(自由時間に関して)
3-1 現在のフリータイムの時間は、AM9:30~AM12、PM13~PM16:30までと、なっていますが、私達動物園に入れられてる動物ではありません。私達要求は、AM9:30~PM21の点呼まで。その間、部屋のドアの施錠しない事。

4.食事に関して
4-1 現在の東京入国管理局の食事は、精神的苦痛を与えるものであり、栄養面も、期待できるとは思えません。茨城、大阪入管は、食事面で、満足出来るものであり、不満等ありません。私達の要求はこの東京入国管理局の食事の改善、私たちの意見を取り入れたメニュー作りをしていただきたい。

5.差し入れに関して
5-1 何故、東京入国管理局は食品関係差し入れを許可していないのか? 茨城、大阪入管が許可しているのに、何故東京入管は不許可なのか。私達の要求は、食品関係の差し入れを許可していただきたい。

  現在、私達は外に家族を待たせています。
  待たせている身として、とても心苦しく精神的にまいってしまっていますし、私達を早く入管の外に出してください。
  この中に長期収容されていて、精神的苦痛により、健全だった人が長期収容により、心身を害して、仮放免で外に出たとしても、心身を害した人が完治しなかった場合、誰が責任を取るのですか? 明確にしてほしいです。
  私たちは、この東京入管のNo.2の荒川さんと話し合いの場を設けてほしい、出来ない場合辞職していただきたい。
平成26年9月22日
東京入管Fブロック一同









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【Jブロック 要求書】 

我々は収容者たち一人一人色んな理由で母国に帰れないことがあります。

一つ:長期間で日本に滞在して、生活基盤を出来て日本の社会に馴染んでまして、その他、大切な家族を出来て、豊かではない生活けども、幸せな家庭を持つ人もいる。我々にとって大切な家族には急に離れる事は出来ません。

二つ:自身や家族の命を守るために母国から離れなければならない理由もあり、だから日本に来ました(日本政府は難民条約に賛成してると知ってからです)。でも、この組織は我々に対し人間としての扱いで我々はものすごく不安、不満感じ、日々に実感してます。人権と言う権利この組織のやりかたや人間扱いでうばわれてます。色んな意味で人権しんがいを感じてます。我々もう我慢の限界です。同じ人間として人権と言う権利をこの組織に我々を要求します。

1)仮放免者達の再収容はやめて下さい。特に病いに抱えてる人達。通院してる人、再審情願の結果通知出ずに、理由を教えないままに突然再収容されるのがやめて下さい。

2)病いに抱えてる人達、特に手術を必要な収容者達、早く許可を出して治療をさせて下さい。患者のかかえてる病気によって専門の医師に徹底的に治療を行うようにして下さい。

3)長期間の収容をやめて下さい。我々も人間です。ストレスも溜まる精神的に不安に成ります。日本人と同じ赤い血体に流れてます。同じ空気を吸ってます。動物扱いで我々も野生化に進化させないで下さい。

4)無り矢りに強制送還をやめて下さい。我々も命をかけて抵抗します。

5)仮放免申請した人達の審査を徹底的短期間で行うようにして下さい。早めに結果を出して下さい。

 この組織(入国管理局)のやり方十分人権侵害であります。この間、9月20日午後4:30、テレビ6局で放送されたニュースで無り矢りに強制送還された外国人のケースに対し、何故死んだのか、不十分な説明と解答であり我々を感じます。

 我々を帰らせるより在留資格を与え......それも一つの方法でもあります。そして、日本と言う国は世界で一番心広い国でも言えます。


 我々の要求に早めに解答を下さい。もし解答は無いであれば我々はこの行動を続けます。







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