6月28日(日)、東日本入国管理センターで、収容されているフィリピン人のBさんが、二段ベッド上段から降りようとして梯子段から足を踏み外し、約1.6メートルの高さから落下しました。Bさんは背中(腰部)を強打し、脊椎の一部にひびが入り、またずれて曲がる重傷を負いました。
ところが、同センターはBさんをすぐに病院に連れていくなどして診療を受けさせることなく、腰の激しい痛みに苦しむBさんをおよそ24時間放置しました。このときかけつけた職員は、「今日は日曜日なので病院に連れていくことはできない、明日まで待ってくれ」などと意味不明なことを述べたといいます。
けが人を病院に連れていくのには、タクシーを呼ぶなり、場合によっては救急車の出動要請をするなり、さまざまな手段があるはずですが、東日本入管センターの職員たちはこれらを思いつかなかったのでしょうか。また、同センターの所長はじめ職員たちは、歩くことができないほどの重傷を負ったのが自分の家族や友人だった場合にも、「今日は日曜日なので病院に連れていくことはできない」などと言うのでしょうか。
このような医療処遇上の義務懈怠(けたい)を非難し、あわせて休日における医療処遇体制の不備の改善を求める申し入れを同センター総務課に対しおこない、同時に申入書を差し入れました。
内容は以下のとおりです(申入書に記載した被害者の実名は、イニシャル表記にかえました)。
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申 入 書
2015年7月10日法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿
仮放免者の会(関東)BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
私たちが本人及び同室又は同ブロックの被収容者に聴き取りを行ったところによれば、6月28日(日)午前10時ころ、貴センター9寮Bブロックにて収容されているB氏が二段ベッド上段から降りようとして梯子段の高さ1.6メートルほどの高さのステップで足を滑らせ、手でいずれかの箇所をつかんで体を保持することにも失敗し、そのまま背中から落下し、腰部を床に激しく衝突させ、また梯子段に右膝を打ち付けることによって腰部と右膝を負傷した。特に腰部の激しい痛みのため歩くことも出来なくなったB氏は、下段で寝ていた被収容者に頼んで処遇職員を呼んでもらい、職員にすぐに病院に連れて行ってくれるよう頼んだが、駆けつけた職員から、「今日は日曜日なので病院に連れていくことはできない、明日まで待ってくれ」と言われ、その言葉通り、翌日6月29日(月)の午前10時ころまで痛みに耐えてベッドに横になったまま待つことを余儀なくされた。医師の診断によれば、脊椎の一部がずれて曲がっており、またひびが入っているということであり、全治するまでどれほどの期間を要するかは医師にも分からないとのことであった。B氏は入院することなく、診察後は貴センターに返されている。B氏によれば、歩くことが全くできなくなったわけではないものの、腰の痛みが激しく、立って歩くことにより通常の生活を送ることは全く不可能になった。腰の痛みだけでなく、両足に痺れもある、とのことである。また、処方されている痛み止めの薬が強すぎるせいで目まいに悩まされており、服用した直後に左胸心臓の下あたりから左わき腹にかけて息もできないほどの強い痛みが生じたこともあった。
事故当日、激痛で歩けないB氏に代わって、同ブロックの被収容者から私達に電話が来た。それは、事故の状況、B氏の容態、B氏が診療を要求して拒否されたことを私たちに伝え、早く病院に行けるようにしてほしいとの必死の要請の電話であった。
私たちは、上記の経緯に強い遺憾の意を表明せざるを得ない。B氏のような重傷者を24時間医療を受けさせずに放置することは、被収容者の身体及び生命に関する人権への重大な侵害である。貴センターはB氏の移動の自由を奪って収容しているのであり、これにより自ら医師のもとを訪ねたり救急車を呼ぶことによって医療サービスを受けることができなくなっているB氏の身体の健康を保つ義務を負っているのである。この観点からすれば、貴センターはこの義務について重大な懈怠がある。
そもそも、去年3月の貴センターにおける2人の被収容者の連続死亡事件、及び同11月の東京入国管理局における被収容者の死亡事件は、いずれも土曜日・日曜日に発生したものであった。医師不在時の急病者・重傷者の扱いは、被収容者の生命を預かる貴センターにとって喫緊の課題であったはずである。今回のB氏に対する処遇を通じ、貴センターがこの課題に何らの対応策を講じていないことが白日の下にさらけ出されてしまったと私たちは見ている。この観点からも、私たちは貴センターに対し、強い遺憾の意を表明するものである。
可及的速やかに何らかの対策を講じ、被収容者及び私たちを含む一般市民に対し、その内容を明らかにしていただきたい。
以 上
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