Wednesday, September 16, 2015

9.9法務省デモ「申入書」



「仮放免者に在留資格を!」 9.9法務省デモにて、以下の申入書を法務大臣および法務省入管局長あてに提出しました。

  9月9日におこなったデモについては、おってこのブログで報告します。


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申  入  書
2015年9月9日
法務大臣  殿  
法務省入国管理局長  殿
  我々、仮放免者の会は、どうしても帰国する事の出来ない仮放免者達に在留資格を付与するようあらためて強く申し入れる。仮放免者達は自身の難民性のため、自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため、自身の病気の治療のため、愛する家族との生活のため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在する。これらの者達に入国管理局(以下、「入管」という。)が帰国を強制することは、当人たちにとって死刑にも等しい甚大な損害をもたらす場合がある。これら仮放免者に対し、最大限の人道上の配慮を持って在留資格を付与していくことを我々は申し入れる。

再収容、送還は仮放免者問題の解決策とはなりえないこと
  入管では2010年、3月及び5月の西日本・東日本両入国管理センターでの大規模ハンガーストライキ、2月及び4月の東日本入国管理センターでのブラジル人・韓国人被収容者の自殺、3月の国費無理矢理送還中におけるガーナ人男性の死亡といった事件が次々に起こった。また、2013年10月の東京入管におけるロヒンギャ男性を皮切りに、入管の収容所における死亡事件が頻発している(2014年3月の東日本入国管理センターにおけるイラン人男性とカメルーン人男性、同年11月の東京入管におけるスリランカ人男性)。この間現在に至るまで、被収容者によるハンストや退令仮放免者によるデモが繰り返し行われている。
  これらの事実は、どうしても帰国出来ない外国人に対し、入管が収容や再収容、送還といった暴力的方法をもって対処することの限界を明らかに示している。退令仮放免者らの多くは、どうしても帰国出来ない事情があるからこそ過酷な収容にも耐え、仮放免者となってからも人権上の著しい制約を受けつつ、なお本邦での在留を求めて生活している。仮放免者の送還に固執する入管が、際限なく再収容を繰り返すことは、退令仮放免者及びその家族の心身を無用に痛めつけるものであり、当事者の自殺といったような痛ましい犠牲を生み出すことにつながるのみで、問題の解決にはなりえない。入管行政からみても、非効率、不経済であろう。仮放免者の問題の解決には、彼ら、彼女らの本当に帰国出来ない理由を斟酌し、在留資格を付与していく以外の方法はない。
  難民不認定異議申立棄却や行政訴訟での敗訴確定を契機として行われる再収容や、行政訴訟の敗訴確定後、事情の変化等により再審情願を申し立てている者等に対して行われる再収容については、当人の帰国出来ない事情を十分に考慮した上、これを行わないよう強く申し入れる。再収容を行うにあたっては、細心の上にも細心の注意が払われるべきであり、入管法第55条1項規定の仮放免の取消によるものや、犯罪行為等の新たな退去強制事由によるもの以外の再収容は原則的に行わないでいただきたい。
  また、前述してきたようなどうしても帰国できない事情を抱えた者たちに対する強制送還は、刑罰にも比すべき重大な不利益処分である。難民申請者であれば文字通り生命への危機をもたらすものである。長期滞在者であれば長年にわたり築いてきた生活基盤を根こそぎにするものであり、送還先の本国において生活の手段がなく、生存すら困難な場合も少なくない。本邦に配偶者、子供等の家族がいる者に関しては、家族と暴力的に引き離され、長期間、場合によって永久に会うことの出来ないものもいるだろう。このように、強制送還は、時として死刑にも等しい苦しみを仮放免者達にもたらす。当会は、本人の意思に沿わない強制送還は個別、チャーター機によるものいずれもこれを行わないよう申し入れる。
  とりわけて当会は、チャーター機による集団送還にはいかなる場合も絶対に反対である。またすでにチャーター機送還は、その導入趣旨からして破綻していると言わざるを得ない。入管は、個別送還に比して安全かつ安価であるとして2013年度からチャーター機送還を開始した。チャーター機送還では、同国人を一定人数かき集めなければならないことから、個別送還事例に比しても人権侵害の度合いが高い送還ケースが出てきている。昨年12月のスリランカ人・ベトナム人同時送還においては、難民を送還し、かつ難民不認定処分異議申立棄却告知と共に収容し翌日のチャーター機で送還し、裁判を受ける権利を侵害した。また、夫婦・父子を分離するケースもあった。個別送還についても当会は反対だが、極めて深刻な人権侵害のケースを招くチャーター機送還についてはとりわけて強く反対し、これまでのチャーター機送還に抗議する。しかも、昨年12月のチャーター機送還では、一人当たり125万円という高額の送還経費となった。人権問題を金額の多寡で云々することはできないが、入管が自ら主張したチャーター機による集団送還の導入趣旨の「安価」という側面からは大きく逸脱して決行された。かつて集団密航者などを船舶を利用して集団送還した時代とは、あまりに国際的・社会的状況が変化し、非正規滞在者、とりわけて退令仮放免者の状況が変化している。当会としては、あくまで人権擁護の立場からチャーター機送還に反対するものであるが、入管として、総合的見地からチャーター機送還方針は取りやめていただきたい。

難民申請者について
  難民申請者については、現在日本では、難民認定に際して、認定基準においても申請者自身に課せられる立証責任においても、国際的基準からかけ離れた極めて厳しい運用がなされ、例年極めて低い認定率で推移してきている。これらは、国内外からの厳しい批判にさらされているところである。現在の運用は、帰国すれば生命の危険があり保護が必要な者達に保護を与えることを、実質的に拒否する実態となっている。日本の難民認定制度は、少なくともUNHCR難民認定基準ハンドブックの定める「灰色の利益」に鑑み、国際的基準に沿う形で運用を改善すべきである。仮放免者の中にも多くいる上記基準に該当するものに対しては、難民として認定することを求める。また迫害主体が政府ではない場合にも、UNHCR難民認定基準ハンドブックで定められているように政府がこれら迫害を容認している場合、あるいは効果的な保護を与えない、与えられない場合には、難民として認定する、あるいは人道的な配慮から在留を特別に許可する事でこれを救済するよう求める。
  近時、難民申請をしつつ就労する外国人を「偽装難民」と決めつけるがごとき報道が散見されるところである。入管は、このような「偽装難民」によって「真の難民の迅速な庇護に支障が生じる」とし、これへの対応と称して審査の簡素化や再申請等に関する各種の制約等の難民認定の厳格化策を打ち出し、これにより適正な難民保護を図っていく等と述べている。こうした厳格化はすべての難民申請者に関して及ぶものであるだけに、当会としても看過出来ない。
  そもそも、難民申請者が生存のため就労することは全く責められるべきことではないし、就労の意思を有することと難民であることが重なり合うことがあっても何ら不思議はない。既述のとおり、入管の難民認定制度は国際的基準とかけ離れたもので本来保護すべき者に適正に保護を与えているとはいいがたい。まずは、本来保護すべき者に然るべき保護を与えることが先決である。繰り返すがUNHCR難民認定基準ハンドブック、国際的基準に則って、難民認定、あるいは在留特別許可を付与していくことで適正な難民保護を図っていくべきである。
  さらに、実習先から「逃亡」し難民申請を行う技能実習生たちが、「偽装難民」としてことさらに問題視されている。しかし、技能実習制度そのものが、技術移転を通した国際貢献といった建前とは裏腹に、適正な賃金での雇用が困難となった業種に低賃金で働く労働力を導入するための制度となっていることはもはや明白である。以前から研修生・技能実習生制度は、外国人を安価な労働力として酷使し使い捨てにする現代の奴隷制度であるとして国内外からも大きな批判を浴びてきたものである。問題は明らかに「偽装難民」にではなく、こうした「偽装受け入れ」にある。このような欺瞞的で人権を無視した外国人政策をあらためることが肝要である。技能実習生制度は廃止し、然るべき在留資格を付与したうえで外国人を労働者として受け入れるべきである。自らの制度の欠陥を改めずして難民申請者自身にのみ責任を転嫁することは社会的公正、道理を著しく欠いている。

長期滞在者について
  1980年代後半からのバブル景気時、さらにはバブル崩壊後も余韻が残る数年間は、製造、建築・土木、廃棄物処理業等いわゆる3K職場(キツイ、キタナイ、キケン)と呼ばれた労働現場では、日本の若者がこれを忌避し、新規の就労は少なく、すでに就労している者は他の職場に転職して行った。特にバブル景気時には人手不足が深刻であり、仕事はいくらでもあるが労働者がいなくなって会社が潰れるという「労務倒産」も多発して社会問題化していた。この異常事態は、需要に供給がまったく追いつかないという状況を生み出しかねなかった。当時その労働者不足を埋め、日本の産業構造を底辺で支えた一翼が、非正規滞在の外国人労働者、あるいは短期滞在中に就労する外国人労働者であった。現実に外国人労働者が社会的生産力として力を発揮する中、さらなる、かつ正規の外国人労働者導入策として、1990年に改正入管法が施行された。そこでは主に中南米の100万人と言われた日系人社会をターゲットとして、その二世には「日本人の配偶者等」、すでに稼働年齢に達しつつあった三世には「定住者」の在留資格を付与することにした。同時に、外国人研修生を中小企業も活用できるように団体監理型受け入れが新設され、続く1993年改正入管法では技能実習制度(一年間)が設けられ、さらに1997年には技能実習期間が最大二年に延長された。
  正規滞在か非正規滞在かを問わず、日本の労働市場の需要に応えて外国から供給されたのが外国人労働者であり、入管法上はともかくとして、日本社会が受け入れたのである。日本の経済的繁栄がその血の滲むような労働の上に成り立っていたことを忘れてはならない。以前、入管職員はしばしば、「不法就労が日本の労働者の職場を奪う」と発言することがあった。それは明らかな事実誤認である。上述の通り、日本の労働者が抜けた穴を非正規滞在外国人と、日系人が埋めたのである。日本の労働者を駆逐したというならば、「時給300円の労働者」とも呼ばれて文字通り奴隷労働に置かれた研修生であろう。研修生制度においては、すでに本国でプロの技術を身に着けた若い労働者が、違法な低賃金状態で雇用され、それまでいた日本人労働者や正規滞在の外国人労働者を駆逐する例がしばしば見られた。
  一方、2003年10月の法務省入国管理局、東京入国管理局、東京都及び警視庁による「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」、2003年12月の犯罪対策閣僚会議による「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」等により、国等は、非正規滞在外国人の労働力に依拠しないことを明確化した。少なくともそれ以前に入国し、結果として定住するに至った非正規滞在外国人、とりわけて退令仮放免者に在留資格を付与していく事は社会的公正という見地からも人道上の配慮からも重要である。
  我々仮放免者の会は、これら長期滞在の仮放免者については、彼ら、彼女らが日本の発展、繁栄を支えてきたことを率直に認め、職場で、地域社会で築いてきた人間関係等の豊かな社会関係を最大限考慮し、在留資格を付与していくことを求める。
  2020年東京オリンピック、パラリンピック開催に向け、労働力の不足を埋めるため、政府は技能実習生の拡充を決めた。国際貢献を建前とする技能実習生制度で労働者不足を補おうというのである。こうした政策は、バブル期の労働力不足を非正規滞在外国人、日系人、研修生などで補った当時の繰り返しであり、外国人を都合のいい労働力として利用したいだけ利用し、用が済んだらば帰ってもらうといったものである。このようなご都合主義的、偽装受け入れ的なやり方はもはや許されない。外国人労働者が必要ならば、技能実習生といった小手先の方法でなしに労働者として然るべき在留資格を付与したうえでこれを正面から受け入れるべきである。長期滞在の仮放免者に対しては、前述してきたようなバブル期の外国人政策の清算、社会的公正の観点からも在留資格を付与していくことを重ねて求める。
  長期滞在の仮放免者の中には、日本語能力も高く、日本での生活習慣にもなれ、日本社会にとけこんでいて、仕事にも習熟し稼働してきた労働現場において専門的な高い技術を習得している者もいる。こうした者達は長い経験の中で学んだ技術を、後進に伝え継承していくことができる。日本社会にとって非常に貴重な存在でもある。こうした仮放免者は日本社会を昔も今もそしてこれからも支えて来、支えてくれる存在であり、良き友人、仲間、家族でもありうる。彼ら、彼女らを正規化していくことは日本社会にとって有益であり、社会的公正にもかなう。
  また、仮放免者は特に医療の面において著しい排除を受けているが、仮放免期間の長期化に伴い、生命の危機のある疾病に罹患する者も増加していく。労働災害によって回復不能な障害を負った者もいる。これら重大な病気・ケガを抱えた長期滞在仮放免者に対しても、日本経済を底辺で支え続けてきたことを考慮し早期の在留資格付与を求める。

家族統合について
  仮放免者達の中には、日本人の配偶者もいれば、在留資格保持者の配偶者もおり、一家全員が仮放免者(異なる国籍を持つ在留資格を持たない男女が子をなした場合等)というケースも珍しくない。
  市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)の第23条2項には「婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。」とあり、同規約の第23条1項には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とある。さらには「児童の権利に関する条約」の第3条1項は「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定する。愛する家族と共に暮らす事、家族と引き離されたくないという気持は誰しもが持つ、当然かつ切なる想いである。日本に家族(配偶者、及びその子ほか扶養すべき者)がいる者については、上記国際条約の規定に則り、家族統合に十分に留意し、然るべく在留資格を付与していくことを申し入れる。未成年の仮放免者にもその他仮放免者と同様に医療、行動範囲の制限等、様々な制約、制限がある。これらは児童の健全な生育を著しく阻害するものとなっている。これら未成年者の仮放免者及びこれを扶養する親等に対しては、早期に在留資格を付与し救済することを求める。

結語
  我々、仮放免者の会は、前述してきたようにどうしても帰国できない理由のある退令仮放免者達に対して、再収容や強制送還ではなく、在留資格を付与していくよう求める。難民申請者に関しては難民認定制度の適切な運用が望まれる。在留特別許可をすべき積極要素として、配偶者、扶養すべき子供等、家族統合については最大限これを評価することはもちろんであるが、とりわけ長期滞在の項目について、前述してきたような10年、20年、30年と長期にわたり本邦で生活している者達のどうしても帰国できない事情を斟酌し、在特付与にあたり特に重視するよう申し入れる。また、重要な積極要素のあるものに関しては、本人の反省の度合い、家族統合等、退令発付後の期間、仮放免期間等、諸般の事情を考慮し、消極要素に関しては過度に重く見ることのないように申し入れる。
  仮放免期間の長期化と仮放免者の増大といういわば仮放免者問題は、これまで述べてきたように、労働市場の要請に応えるために採られた、ご都合主義的なゆがんだ外国人政策の果てに出現したものというべきである。しかし、経済的要請のみにかまけて、社会的公正や人権擁護が忘却されることがあってはならない。入管行政の執行と、どうしても帰国できない退令仮放免者達の苦しみ、要求のあいだに大きな溝があるとしても、これらを架橋すべく、日本政府、入管には外国人の人権保護の見地に立ち必要な対応をとることを求める。
以上
申し入れ団体    仮放免者の会

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