Tuesday, June 28, 2016

6.20「仮放免者に在留資格を!」デモと東京入管・大阪入管での動き



  6月20日に「仮放免者に在留資格を!」デモをおこないました。



  デモについては後日あらためて報告したいと思いますが、今回は、東京入管などの被収容者の動きを紹介します。

  今回のデモは、品川駅前を出発して、最後に東京入管を1周するというコースでした。東京入管のまわりでは、デモ参加者が路上から上階の収容場にむかって声をあげ、収容場からもこれに答える声が聞こえました。

  また、このデモにあわせて、この日、東京入管に収容されたおよそ100人がハンガーストライキをおこないました(その一部は翌21日までハンストを継続しました)。

  以下は、東京入管Jブロックの被収容者30名が、局長あてに提出した連名要求書です(日付は「6月20日」になっていますが、提出されたのは22日の午前だとのことです)。

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【東京入管Jブロック要求書】

平成28年6月20日
  • 強制送還反対!
  • 再収容反対!
  • 長期収容反対!
  • 被収容者にまともな医療を!
(要求)
  1. 6ヵ月以上収容されている人を、速やかに仮放免を許可してもらいたい。
  2. 仮放免許可申請の回答を1ヵ月以内に出してほしいこと。
  3. 現在支給されている入国管理局の食べ物についてですが、とても外国人の口にはあわないので、食事の変更をしてもらいたい。
  4. 茨城の施設[東日本入国管理センター]と同じく自分の国の食べ物が入るようにしてもらいたい。
  5. 再収容をもう絶対しないこと。
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  デモをおこなった東京から遠く離れた大阪入管でも、長期収容に反対する被収容者のたたかいが起こっています。大阪入管では、最近でも2月に、医療をはじめとする劣悪な処遇の改善と長期収容の回避をもとめて大規模集団ハンガーストライキがおこなわれたところでもあります。

  以下は、6月20日に大阪入管Bブロックの被収容者19名が提出した連名要求書です。

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【大阪入管Bブロック要求書】

28年6月20日
要  求  書
  今私達がいる大阪入国管理局Bブロックには、難民の人達や家族が日本に住んでいる、もしくは今裁判で待っている人達もいて、私達の収容がたんなる裁判の妨げになっているとしか思いません。家族の苦しみや、精神的な苦痛などを考えると、私達の収容が不当であり、非人道的な収容を直ちに解くべきだと思い、受け入れ体制が整っている人だけでも、仮放免の制度を適用すべきだと思い強く希望致します。
  私達が仮放免[申請]を提出する際、不許可になることを想定して仮放免を出しているのではなく、多くの方々の協力を得てやっとの思いで仮放免を提出しています。なのに不許可になった理由を明らかにしないのです。今後入管はこのことについてきちんと説明すべきだと思います。
  現在私たちがいるBブロックに収容期間が長い人が多くいます。入管は私達を帰国に追い込むために長期収容していることは言うまでもありませんが、どんなに期間が長期化したとしても、やはり帰国できない正当な理由があり、認められるべきです。無意味な拘束を直ちに解くべきだと思い、最低限、仮放免の許可を認めるべきです。
  尚この要求書を提出してから1週間以内に回答をお願いします。


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  難民であったり日本に家族がいたり、あるいは長期間日本に滞在していて日本以外に生活基盤がないなど、帰るに帰れない事情をかかえる人たちに対して、入管がいたずらに収容を長期化させている現状は、まさに「無意味な拘束」と言うべきです。長期収容、また仮放免されたひとの再収容は、ここで指摘されているとおり、あきらかに、「帰国に追い込む」ことを目的としたものです。心身に極度の苦痛を与える収容・監禁(入管収容施設に収容されたひとは例外なく入所後数ヶ月で高血圧・不眠・頭痛等の拘禁症状をうったえる。また、体調をくずしても入管はまともな診療を受けさせない)を、入管は被収容者を「帰国に追い込むため」の手段としてもちいているわけです。これは「拷問」による帰国強要と言っても過言ではなく、人権・人道上けっしてゆるされないことです。

  なお、デモをおこなった20日には、私たち仮放免者の会と各地の6支援団体共同で、法務省入国管理局長のほか、収容場をもつ各地方局・支局と東日本入国管理センターに対して、以下の共同申入書を提出しました。申入れした項目としては、長期収容・再収容をおこなわないこと、医療放置・診療拒否をしないこと、食品差し入れの基準の緩和の3点です。


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共 同 申 入 書
2016年6月20日
法務省入国管理局長 殿
東京入国管理局長 殿
名古屋入国管理局長 殿
大阪入国管理局長 殿
東京入国管理局横浜支局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿
全国仮放免者の会
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
START(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民支援ボランティアWITH
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民コーディネーターズ
ピースバード
一、 6ヶ月を越える退令収容は甚大な人権侵害であり、該当者を直ちに仮放免することを申し入れる。退令収容6ヶ月を越える長期収容のみならず、貴殿らは難民不認定異議申立棄却通知、指定住居をめぐる揚げ足取りのような条件違反などを理由として、あるいは一切理由を示すことなく、再収容を行なっている。これは収容権の濫用としか受け取られない。今後一切、再収容を行なわないことを申し入れる。
一、 医療放置、とりわけて診療拒否をしないことを申し入れる。2013年から翌年にかけて頻発した収容場・収容所での死亡事件に鑑みても、現在の貴殿らが行う診療態勢は、抜本的改善がないばかりか、診療拒否の事例に至っては人命軽視と受け取らざるを得ない。
一、 食品の差し入れの許可基準の緩和を申し入れる。長期収容を前提としたセンター、大村と閉所された西日本においては食品の差し入れについて便宜が図られてきた。東日本においても限定性はあるものの一定の品目の差し入れができる。現在、とりわけて問題となっているのは、以前と違って収容期間が長期化している各収容場である。何らの合理的理由説明がないまま、いたずらに食品の差し入れを制限する各収容場の運用は、行政による恣意的運用との批判を免れ得ない。
以 上

Wednesday, June 15, 2016

ウソだらけの入管広報


  法務省入国管理局のウェブサイトに、「収容施設について(収容施設の処遇)」と題されたページがあります。収容施設(入国者収容所や地方入管局の収容)の設備や食事、健康管理について、写真つきで紹介したものです。

http://www.immi-moj.go.jp/tetuduki/taikyo/shisetsu.html

  このページによると、「[被収容者は]保安上支障がない範囲内において,できる限りの自由が与えられ,その属する国の風俗習慣,生活様式を尊重されてい」るのだといいます。ここでの説明文や写真のとおりなのだとすれば、入管は被収容者の人権を尊重しようとしているようにはみえます。

  ところが、実際に各収容施設に収容されている方々に面会などをとおして私たちがふだん聞いている話は、この入管の広報とはだいぶ食い違っているのです。実際のところはどうなのでしょうか。

  そこで、収容されている方々に聞いてみることにしました。今回、調査に協力していただいたのは大阪入国管理局(大阪市住之江区)の被収容者34名です。

  法務省入国管理局の先のページを印刷したものを大阪入管の2つのブロック(A, Bブロック)に差し入れました。法務省の説明・写真のどこが正しく、またどこが実態とはちがうのか、被収容者間で話し合って、具体的に指摘してもらうためです。その討議した内容を、それぞれのブロックの代表者がまとめたメモを、以下に公表していきます。



1.食事について

  まず、食事についてはどうでしょうか。Bブロックの回答は、給食の分量・カロリーが実際はすくないといいます。(写真はクリックすると大きくなります)

  ここで出ている食事は写真とまったく違います。
  入管はウェブサイトで食事は2200~3000キロカロリーの弁当を出していると書いていますがそんなのはまったくうそです。弁当のおかずはいつもインスタントのおかずでカロリーはとても低いです。このような弁当を長期間にわたって食べているととても健康的に不安です。ここの弁当のカロリー低いのが機械が無くてもおなかの具合でわかります。
  私たちは一社会人として外で生活をしていたから、ここの弁当がカロリー低いのが自信をもって言えます。あとここの担当さんにこの弁当はなんキロカロリーですかってたずねても絶対に教えてくれませんでした。(Bブロック)

  Aブロックの回答は以下のとおりです。


朝食について
  じっさいはあさごはんにはこのパンはでていません。ここにでているパンはまずいかたい食パンです。
昼食について
  この昼食もぜんぜんちがいます。ここのごはんはかたいです。サラダも毎日同じです。サラダはキャベツだけ。
夕食について
  これも[昼食と]一緒です。(Aブロック)


  収容されているある男性にこの入管のサイトの写真を見てもらったところ、そこに写っているサケの切り身についてこう言っていました。「入管に来てからこんなに大きな魚を見たことがない。大阪入管では、[写真の]この大きさの魚は4人ぶんです」「ハンバーグもずっと小さい」と。

  食事が足りなくておなかがすく、お金がある人は自費でカップラーメンなどを買って食べられるからまだよいが、お金がないひとはずっとおなかをすかせている。こういった声は、複数の、とくに男性被収容者から聞きます。現代の日本社会において、総体としては食糧はあまっており、毎日大量の食品が廃棄されているわけです。ところが、その日本で国が運営している施設が、入所者にひもじい思いをさせているのです。



2.診療について

今までだれ1人診察を受けていないからここがどこだかわかりません。医師や看護師が常駐しているんですか。
もうどこまで入管がうそを書けば気がすむのですか。(Bブロック)
レントゲン室がないです。(Aブロック)


  ここで指摘されているとおり、「医師及び看護師が常駐し、被収容者の診療に当たっており」というのは「うそ」です。大阪入管(被収容者数約70~90名)の場合、医師が診療をおこなっているのは週2回のみで、被収容者が希望しても、診療を受けられることはほとんどありません。

  大阪だけでなく、各地の入管収容施設で医師を常駐させている施設はそもそも存在しません。「常駐」という言葉の意味をかりに非常にせまくとって、「土日祝日以外の平日の昼間のみ常駐している」というふうに解釈したとしても、どの施設もこの条件をみたしていません。なにしろ、常勤医のいる施設なんかないのです。

「被収容者の心情安定を図るため、臨床心理士によるカウンセリングを実施しています」というのも、真っ赤なうそです。大阪入管では、収容が長期化している3人(約1年~1年半)が、それぞれ強い不安感や情緒の大きな起伏をうったえてカウンセリングの実施を求める申出書を出しましたが、先月3人とも大阪入管からあいついで「不許可」の告知を受けました。告知のさい、職員から「ここはそういう場所ではありません」との説明があったそうです。つまり、大阪入管は、カウンセリングの必要性自体を認めておらず、これを実施する準備もなければ、その意思すらまったくないのです。

  ここまで言っていることと実際にやっていることがぜんぜんちがうのは、おどろくよりほかありません。医師の常駐や臨床心理士によるカウンセリングの実施といった、まったく実態のともなっていないことを、あたかもやっているかのように公式サイトでは宣伝しているわけです。法務省は、「どうせだれも検証することのない密室でのこと、ウソを書いてもばれることはない」とタカをくくっているのでしょうか。



3.運動場などについて

  大阪の入管はL形で8m×8mの運動場です。もちろん多目的ホールはありません。こんな小さい運動場で30人の人でどうやって運動すればいいですか。運動場が小さすぎて廊下で運動をする人もいます。運動不足が原因で病気になる人もいます。(Bブロック)
  うんどうじょうもこんなに広いものじゃない。6人ぐらい人いたらもういっぱいです。けがもしやすいです。
  ここのろうかはこのしゃしんにうつっているものとぜんぜんちがいます。ここのろうかはこれ[写真]のはんぶんもない。たっきゅうのテーブルもない。(Aブロック)


  大阪入管の運動場については、つぎのような話もあります。

  大阪入管は施設内の一部を公開する司法修習生むけの見学会を、毎年実施しています。局内の診療室などとともに運動場に司法修習生たちを案内したのが、当時処遇部門企画担当統括という役職にあったYという人物です(このY氏は、1月に被収容者にむかって「あなたたちには[処遇等の改善を]要求する権利がない」との暴言をはいた職員でもあります)。

  Y氏は、運動場に司法修習生たちを案内すると、被収容者たちが十分に運動ができるよう、こういう立派な運動場を用意しておりますと、自慢げに言い放ったそうです。6人ぐらいが入ったらもういっぱいになるようなせまい運動場を前にしてです。その場にいた司法修習生のひとりは、あきれはてて「ああ、この人は人権侵害するだろうな」と確信したといいます。

  せまくるしい運動場でも、収容されている外国人にはこんなもので十分だろうという感覚なのでしょう。そこにはぬきがたい差別意識がかいまみえます。また、現状における設備のあきらかな不備・改善すべき課題を直視しようとせずに、自画自賛に徹して恥じない独善性。こうしたY氏の姿勢・態度は、医師の常駐やカウンセリングの実施などとまったく実態にそくしていないウソ・デタラメの宣伝を掲載しつづけている入管の組織的な体質そのものを反映しているものとも言えます。






関連記事

  大阪入管では、今年2月に、劣悪な処遇への抗議として被収容者による集団ハンガーストライキがおこなわれました。




  収容施設にかんする法務省入管のサイトの記述が実態をただしく反映しているのかについては、2011年に東日本入国管理センター被収容者に聞いてみたことがあります。





Tuesday, June 7, 2016

診療問題の改善等、東日本入管センターに申入れ(2016.5.11)

  5月11日に、東日本入国管理センターに申入れをおこないました。

  4月中に、同センターの被収容者が連名での要求書を提出していたのを受け、私たちとしても、診療問題の改善、および長期収容者・再収容者や重病者の仮放免などを申入れたものです。




  以下に申入書を掲載します。

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申 入 書
2016年5月11日

法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿

            仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
一、 診療(医療)問題について
 4月8日に1寮Bブロック同25日に8寮Aブロックの被収容者が東日本入国管理センター(以下、貴センター)所長に対し要求書を提出し、その両方において医療体制の改善が求められている。ことに、医療専門家ではない貴センター職員により恣意的に医療上の判断がなされているという指摘が共通してなされている。この指摘に対し貴センターは、1寮Bブロックに対する回答において、投薬を含む医療的措置については医師等の医学的知見に基づき行われているものであり、入管職員の勝手な判断で行っているものではない旨、述べている。
  しかし、本当に貴センターの医療体制の運用は、この回答どおりに行われているだろうか。2014年7月24日付で貴センターに提出した申入書において、私たちは、貴センター職員が貴センター診療室や外部の医療機関にて医師に対し「この人はもうすぐ帰国する人ですから」などと話して適切な医療が施されることを妨害している旨の訴えが被収容者からなされていると指摘した。そしてその後も私たちは、医師の医療上の判断に対し貴センター職員が介入している事実を、被収容者からの聞き取りにおいて確認している。このようなことは決してあってはならない。貴センターは収容主体として被収容者の移動の自由、ひいては医療機関において適切な医療を受けることにより自らの生命と健康を維持するよう努める自由を奪っている。そうである以上、貴センターには当然に被収容者の生命と健康を守る義務があり、医師の医療行為に介入したり、(8寮Aブロック要求書にあるように)医師の診療を受けさせるか否かを本人ではなく非医療専門家である職員が勝手に判断したりするようなことは許されない。貴センターは収容施設として、職員に人権教育、管理責任義務についての教育を施し、今後、医師の医療行為に介入したり、診療を求める被収容者の意思を妨げたりといったことが決して起こらないよう、申し入れる。
  また、1寮Bブロック要求書における、常時医師がいないこと・医療体制の不十分さの指摘に対し、貴センター回答は、非常勤医師による診療が実施されている、休日等の医師不在時には外部病院への連行を実施している等と述べている。たしかに、私たちが面会における被収容者からの聞き取り等に基づいて把握する限りでは、土・日曜日、祝日等以外は基本的に非常勤医師が輪番体制で貴センターに詰めて診療にあたっていることを確認している。しかし、土・日曜日に負傷した被収容者を、月曜日まで外部医療機関での受診をさせずに待たせるケースも確認されており、到底回答のとおりに適切な医療体制が運用されているとはいいがたい。適切な人員の配置により、このようなことが二度とないよう、申し入れる。
  もう一点、1寮Bブロック要求書は、長期収容や帰国を強く求められることによる精神的苦痛などの原因により多くの被収容者がうつ病を患うなど精神的ケアを必要とする状態に陥っていることを指摘し、精神科医や心理カウンセラーによる施術により被収容者の心のケアに努めるよう貴センターに求めている。これに対し貴センターは、臨床心理士によるカウンセリングや精神科医師による診療を実施していると回答している。
私たちも、被収容者との面会において、1寮Bブロック要求書が訴えるような事実について少なくない数の報告を受けており、これは座視すべきでない異常な状況であると考えている。そこで、被収容者の精神疾患等に対するケアのさらなる充実を求めるとともに、より根本的な対策として、かかる状況の元凶というべき長期収容を改め、退令収容6ヶ月を超える者に対しては直ちに仮放免をすることを申し入れる。
 また、高血圧症、糖尿病、心臓疾患等の患者に対しては、収容状態の継続自体がその患者の健康ないし生命に対し著しい悪影響を及ぼすものである。したがって、被収容者のうちこれらの患者については直ちに仮放免をすることを申し入れる。

二、 長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者への速やかな仮放免
 1寮Bブロック及び8寮Aブロックの要求書が指摘しているように、長期収容は被収容者に対し過酷な精神的・肉体的苦痛を与える非人道的なものである。私たちも、これまでの申し入れにおいて、貴センターが外界との関係を一切遮断し、人間の時間的、空間的感覚を奪う密閉施設であり、このような施設への無期限長期収容は人間的精神を破壊し、健康を著しく害するものであること、したがって長期収容が著しい人権侵害であることを繰り返し指摘してきた。すでに述べたとおり、退令収容6ヶ月を超える者に対しては直ちに仮放免をすることを申し入れる。
 同じくすでに述べたとおり、高血圧症、糖尿病、心臓疾患等の患者を把握し、その患者については直ちに仮放免をすることを申し入れる。
 さらに、いったん仮放免となった後に再収容されるものが後を絶たない。このような再収容、また再収容後の長期収容はいたずらに本人たちの心身を痛めつけるだけのものであり、裁量の範囲を著しく超えた権限濫用としか言いようがない。再収容者への即時の仮放免を申し入れる。
以 上

重病者の仮放免・医療の改善を求めて――被収容者から要求書(東日本入管センター)



  東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の被収容者による連名要求書を4通、公開します。それぞれ、2月10日、3月5日、4月21日、4月25日に8Aブロックの被収容者が所長あてに連名で提出したものです。

  要求書は、心身を破壊する長期収容をやめること、また劣悪な医療処遇の改善などをおもに求めています。医療について要求書が問題にしているのは、診察にいたるまで時間がかかりすぎる(申請してから数週間から1ヵ月以上もかかる)ことや、職員(入国警備官)が病人について「様子をみる」などと称して勝手な医療判断をおこない、医師や医療機関につなぐという職務をおこたっていること、各人の病気におうじた治療や病因の精査がおこなわれず鎮痛剤や精神安定剤を場当たり的に投与するのみであることなどです。

  これらの要求書は、人間を収容する資格を完全に欠いているとしか言いようのない、東日本入管センターのずさんな医療処遇の実態を具体的に伝えております。法務省・入管当局はこうした収容施設での人権侵害を温存してきており、その結果、収容中あるいは出所後まもなく命を落とす人も少なくありません。マスコミ報道などで問題化された死亡事件だけにかぎっても、2013年以降に4件もあります(「入管収容施設の医療問題について――ロイター記事の紹介とリンク集」のリンク先のページなどを参照してください)。ただし、この4名は、この間に入管がその収容施設の劣悪な処遇によって死に追いやった犠牲者の「一部」と言うべきです。

  いっぽうで、これまで各地の入管収容施設では、被収容者たちが、自身や仲間の命を守るために団結して闘ってきたという事実もあります。8Aブロックによる一連の要求書も、その闘いの歴史のなかに位置づけられるものです。3月5日と4月21日提出の要求書は、それぞれ重病人の名前をあげて、早期に出所させるよう8Aブロック被収容者が連名で一致して入管側に要求したものです(ここであげられた2名の重病の被収容者は、この後、仮放免を許可されてすでに出所しました)。

  こうした仲間の被収容者たちによる強力な抗議をふくめた働きかけのおかげで、ぎりぎりのところで入管に殺されずにすんだ、少なくない数の被収容者が存在するであろうことは、確実です。それは、入管側からみれば、被収容者たちが抗議してくれたおかげで「殺さずにすんだ」ということにほかなりません。

  入管は、被収容者の抗議、とくに集団的(かつ非暴力的)な抗議に対して、しばしば暴力的な制圧をもってこれにこたえてきました。しかし被収容者たちによる抗議がなければ入管はもっと多くの被収容者を死にいたらしめてきただろうということは、まちがいありません。東日本入管センターや東京入管、大阪入管など収容施設の歴代の所長・局長をはじめとする幹部のみなさんは、そのあたりを正しく認識し、自分たちの自発的意思と能力によっては被収容者たちに必要な医療を提供してその生命と健康を守る努力をしてこなかったこと(また、「被収容者が死なないようにつとめる」という、本来はみずからが果たさなければならなかったはずの仕事を被収容者たちに肩代わりさせてきたこと)を大いに恥じるべきです。

  以下に、8Aブロック被収容者による4通の要求書を掲載します。
  [  ]内は、引用者による注釈・補足などです。掲載にあたって誤字・脱字などを改めたところがあります。本文中で実名で表記されていた人名は「Aさん」「Bさん」と匿名表記にあらためました。

  同じ東日本センターの1Bブロック被収容者が4月8日にやはり連名で提出した要求書、また、1Bと8A両ブロックの要求書提出を受けて仮放免者の会(関東)としても同センターに申し入れをおこないました。こちらもあわせてごらんください。





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【2月10日付  8A要求書】
所長へ。
  こんにちは。収容施設に収容されている収容者たちのここから元気で出られるように診察のこと、病気のこと、医療のこと、ちゃんとやってもらいたいです。みなさん法律に従っていろいろ考えてやっていると思います。それでももっとやらなければならないことがいっぱいあります。

1.診察のこと。
  皆さんは病気になった時はいつでも病院行って診察を受けることができますが、ここで収容されている収容者たちは何一つできません。
  診察を受けるためにアプリケーション[注:申請書]書いて何週間も待たなければならない。待つ間に痛み止めしかありません。できるだけ診察を早めに受けたいです。
  皆さん血液検査の時は前日に検査を受けたい人からサインをもらって次の日に朝一番に先生が来て一人一人呼び出してすぐやっています。それと同じようにやればできると思います。収容者たちが皆一斉にアプリケーション書いてるわけでないんだから、一日で20-30人アプリケーション書いても十分に診察することができると思います。医者の仕事は何なんですか。病人を診るのは仕事でしょう。何週間待たせれば気がすむんですか。

2.病気のこと。
  いつだれがどんな病気になるか誰にも分かりません。いつか誰かが病気で死ぬかもしれません。だから診察を早めにちゃんと受け[させ]てもらいたいです。何週間後にようやく診察を受けた時には治っているように見えるんですが本当はどんな病気がどんな進化しているかわかりません。早く診察を受けてその病気に合う薬を出してもらいたいです。何でもかんでも痛み止めじゃ大変苦しいです。痛み止め飲んで何一つ治りません。このままじゃここにいる人たち病気になるだけです。
  あとは薬の説明書がほしい。外の病院はちゃんと説明書がついて来ますが、入管の薬はついて来ないです。これはなぜですか。薬の名前書いた紙一枚もらっています。それで何の薬を飲んでいるかが分かりません。信用できません。もうちょっとちゃんとやってもらいたいです。

3.医療のこと。
  診察を早めにうけることでその病気に合う薬を飲むことで早く治すことができると思います。どんな重い病気か、診察を受けないと分かりません。それでその病人の病気が自分たちの手に負えないようになるとすぐ仮放免で出るようにしています。
  その人は外に出てどうやって治療しますか。仮放免で出て仕事もできない。保険にも入れない。どうやって治療しますか。
  皆さんは何もしてくれないでしょう。ここから出たらあなたたちには関係ないからどうでもいいでしょうね。
  あなたたちにもあなたの帰りを待っている家族、子どもたちもいるはず。それと同じようにここから元気に出て来る日待つ家族、子供がいる人たちいっぱいいます。
だからこそ皆が元気に出られるようにちゃんとやってもらいたいです。
  よろしくお願いします。
8Aブロックみなさん
28・2・10
[被収容者39名の署名――(省略)]



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【3月5日付  8A要求書】

所長へ。
  こんにちは。Aさんのことをお願いしたいです。
  彼の病気のこと、収容されてから病気になって今は歩くこともできないので、できれば彼を早めに出所させてもらいたいです。ここ東日本入国管理センターの医療では彼の病気を治療することが多分できないと思います。なぜなら病気になってから何か月経っていますが何一つ変わってません。色々な薬、鎮痛剤飲んでいるんですが何一つ治ってません。治るより悪化しています。色々な薬、鎮痛剤のせいで(6-7種類の薬)今胃が痛むようになりました。本当に大変苦しいです。
  私達には何もできません。彼のために手紙を出しています。
  彼は仮放免の申請を申出しているんですが、一日でも早く出所させて欲しい。ブロック8A皆さんの希望です。
  よろしくお願いします。
28・3・5

[被収容者36名の署名――(省略)]



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【4月21日付  8A要求書】

東日本入国管理センター所長殿。
  こんにちは。Bさんのことをお願いしたいです。
  彼は病気で大変苦しんでいます。できれば彼を早めに出所させてもらうことを私達が強く希望しています。私達彼の病気のことをあまり知りませんでした。以上病気あること、薬を飲んでいることを知っていましたが、そこまで重症と思いませんでした。それである日のできごとで(2015・4・3)私達が彼の病気の症状と病気で苦しんでいることを知ることになりました。その日の午前中に彼が体調不良を訴え担当さんに報告し、担当さんたちが彼を車椅子に乗せて連れて行きましたが、ただブロックから出して担当さんたちの事務室の前に行ってそこで2人の担当さんが対応していました。強い安定剤飲んでもらって肩に毛布をかけて背にマッサージしていました。もう一人の担当さんが話をかけている様子が本当に馬鹿みたいに見えました。彼は日本語、英語が話せません。何を話しているかを分かりませんが、どうやって通じ合っているかを理解できませんでした。通訳出来る人がいるのに[注:8AブロックにBさんと同じ言語を話す被収容者が当時いた]本当にひどいです。貴方たちと同じ人間です。やるべきことをちゃんとやってほしい。
  それで私達一人の担当さん呼び出して話を聞いてみました。何で救急車を呼ばないのですかと聞きました。担当さんが今ちょっと様子を見ていますと答えました。もう一回聞きました。もし担当さんたちの誰かが体調不良を訴えた時はすぐ救急車を呼びますよねと聞きました。担当さんが「はい」と答えました。収容されている私達は貴方たちと同じ人間です。動物ではありません、人間と同じ扱いしてほしい。もしその様子を見ている間にその人が死んだらどうなるんですか。入管は責任を取りますか。その人の家族はどうなるんですか。彼は牛久に来てから深夜の時間に今までに20何回も同じことを、体調不良を訴えていますが何もしてくれないです。強い安定剤を飲ませてマッサージをして部屋にもどすだけです。このままだと彼はいつ死んでもおかしくない状況であります。入管のやり方は本当にひどすぎると私達が感じています。私達には何もできません。みんなで話し合って手紙を出しています。だから彼のために早く出所させてほしいと私達が強く希望しています。よろしくお願いします。

8Aブロック皆さんより。
28・4・21
[被収容者43名の署名――(省略)]


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【4月25日付  8A要求書】

東日本入国管理センター所長殿。
要  求  書
  こんにちは。ここは東日本入国管理センターに収容されている収容者たち私達はあなたたちと同じ人間であることを忘れないで欲しい。世界人権宣言の第一条、第二条、第三条、第五条、第六条、第七条などなど世界人権宣言に公布していますが、人権のこと何一つ守っていません。私達は動物ではありません。あなたたちと同じ人間です。人間と同じ扱いして欲しいと改善を強く希望しています。

1.仮放免について。
東日本入国管理センターに収容されている外国人私たちは一人一人がそれぞれの理由で帰国できない、帰国しない、日本に長い年住んでいる、家族が日本にいる、妻、子供が日本に住んでいるなどなどの理由で日本に残りたい気持ちでいっぱいです。それでも入管は収容されている私たちを長期間収容しています。私たちは収容施設の収容生活が本当に大変苦しいです。一番大変なのは病気になっている人たちです。だから私たちは普通の生活がしたいです。そのために仮放免の申請を提出しています。私たちは仮放免の申請を提出するためには不許可ではなく、許可を得るために多くの方々の努力を得て仮放免の申請を提出していますが、不許可になったときはなぜ不許可になった理由を何一つ教えてくれません。私たちと仮放免に係わる多くの方々が不愉快に思っています。なぜ教えてくれない[のか]今一意味が分かりません。
  それは私たちの問題であります。何がだいじょうぶ何がだめ、それを個人個人にきちんと教えることを望んでいます。それでもし配偶者日本人の場合は[入管は]速やかに手続きを進めて4-5ヵ月(もっと早いかもしれない)[で]出所させています。
  これはなぜですか。日本人なら人間、日本人じゃない外国人なら人間じゃないですか。入管にとっては私たち外国人は何に見えるんですか。私たちはあなたたちとおなじ人間であります。
仮放免許可申請書には、
  1. 申請理由
  2. 身元保証人作成の身元保証書
  3. 身元保証人の住民票
  4. 身元保証人の納税及び収入に関する証明書
  5. 身元保証人の資産関係に関する証明書
  6. 許可後の予定住居、関係者の連絡先
などなどの種類を多くの方々の努力を得て仮放免の申請を提出していますが、結果の報告が2ヶ月ぐらい待たせるのは長すぎると思っています。70日過ぎて結果が出る人も結構います。たしかにいろいろな審査、確認することがいっぱいあると思います。それでも一日でも早く2ヶ月ならその2ヶ月以内に必ず結果を報告して欲しいと希望しています。収容施設に収容されている私たちは何でこんな長期間に収容されないといけないんですか。収容されてから一年過ぎている人は結構います。
      私たちは容疑者ではありません
      ここは刑務所ではありません
      ここはあくまで一時的収容する単なる施設であります
  それでも入管は収容されている外国人私たちに対しこの収容施設は
  • 世界人権宣言の条約
  • 難民の地位に関する条約
  • 被収容者処遇規則
などの条約、規則を無視し、私たちを帰国させるための長期間収容し、体力的に精神的に追い込むための収容施設であります。
  私たちはただ家族と、妻、子供たちといっしょに普通の生活がしたいです。
収容施設の生活が本当に大変苦しいです。いつ病気になっていつ死ぬか分かりません。
  だから仮放免の申請を提出しています。

2.医療と治療について。
  収容施設に収容されている私たちには一番大切なことは健康でいられること元気にここから出られることと思います。私たちはあなたたちと同じ人間であることを絶対に忘れれないで欲しい。あなたちにもあなたの帰りを待っている家族と夫、妻、子供がいるはず。それと同じように収容されている私たちにも、健康で元気に出てくる日を待っている家族と、妻、子供がいる人たちがいます。それなのに入管の医療体制が不十分であること。前回も診察、病気、医療ついて要求書を提出してます。その提出の回答は
今後も外部病院連行や看護師による健康相談を実施するなど充実した医療の提供に努めます。
と言っているんですが何も変わっていません。何も感じる所がありません。何に努力しているんですか。まったく分かりません。この中に病気になった人たちは大変苦しんでいます。入管は収容することができているならそれなりに面倒をきちんと見るべきと思います。被収容者処遇規則の第二条1,2、第八条などなど色んな規則がありますが、その規則を自分たちでちゃんと守って規則どおりにやって欲しい。
  病気になった人たちには何一つ治療を行ってません。病気が色々ありますが、みなさんにだいたい同じ薬を処方しています。痛み止め、鎮痛剤、安定剤、不眠剤など、この薬を誰でももらうことができます。
  頭が痛い、よるねむれない、など担当さんに言えばすぐ持ってきます。
  それでかぜ薬をもらう時はアプリケーションを書かないといけない。
  先週のことかぜ薬をお願いしたらせき止めもってきました。かぜ薬がないと[言って]何日も同じせき止めをもって来ました。それでアプリケーション書いてくださいとようやくもらうことができました。ちょっと前までは普通にもらうことができてました。今はだめです。なぜだろう。痛み止め、鎮痛剤、安定剤を飲んでも何一つ治療になりません。何一つ治りません。治るより病気がどんどん悪化しています。
  薬が効かなくなると量を増やすだけ、薬が強くなるだけです。それで自分たちの手に負えなくなると入管の方から早く仮放免の申請を提出してくださいと言って来る。なぜならここ収容施設の中に死んだら大変なことになるから仮放免で出所させるようにしています。その人たちは出所後は仕事することができない、保険にも入れない。どうやって治療しますか。入管の収容施設に収容されたから病気になりました。入管の長期収容したせいで病気になりました。入管はここから出所させたら何も関係ないからどうでもいいと思っているでしょう。
  今月の出来ごと。一人が体調不良を訴え担当さんに報告し、担当さんたちは彼を車椅子に乗せて連れて行きました。連れて行った場所が私たちにも見える事務室の前で対応していました。それで何で救急車を呼ばないんですかと聞くと担当さんが様子を見ていますと答えました。だからあなたは医者じゃないんだから何の様子を見ているんですか、あなたその様子を見ている間にその人が死んだらどうするんですか。死んだあとは救急車を呼んでも意味がありません。動物ならその辺であなを掘って埋めれば終わりなんですが、私たちは人間です。担当さんたちも当たり前のことができないんです。何のために制服を着て給料もらっているんですか。やらなければならないことがいっぱいあります。やるべきことをきちんとやって欲しい。
  最後に医療、治療、仮放免について全ての改善を強く希望しています。
[中略]
8Aブロックより。
28・4・25