Wednesday, July 27, 2016

被収容者36名が連名要求書(東京入管に)――長期収容回避、処遇改善など


  前回記事でお伝えしたとおり、大阪入国管理局での被収容者ハンガーストライキは、7月16日に解除されました。しかし、大阪入管による被収容者への人権侵害はいまも継続中であり、人命をいちじるしく軽視する大阪入管の体質も変わっておりません。そういうわけで、ひきつづきの抗議をお願いいたします。





《抗議先》

  大阪入国管理局
    電話番号 06-4703-2100

  法務省入国管理局
    電話番号 03-3580-4111
    FAX  03-5511-7212


◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇


  さて、今回の記事では、東京入国管理局の被収容者たち自身による連名での「上申書」を全文掲載し、紹介します。「上申書」は7月5日に被収容者36名(Cブロック)の署名をつけて東京入管あてに提出されたものです。

「上申書」を掲載する前に、すこし補足をしておきます。

  入管による収容には、2通りあります。

  ひとつは、「退去強制事由」(入管法第24条に列挙されています)に「該当すると疑うに足りる相当の理由があるとき」にその「容疑者」を収容することができるというものです(入管法第39条)。つまり、オーバーステイや不法入国など入管法の定める「退去強制事由」にあたるという「容疑」の段階で、人を拘束・監禁する権限を入管法は認めているわけです。なんと裁判所の令状もなしに、です。

  もうひとつは、その「容疑者」を入管が取り調べた結果、「退去強制令書」発付処分が決定された場合の収容です。入管法第52条第5項は、「入国警備官は、第三項本文の場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる」としています。

  なお、前述の「容疑」段階での収容が最大60日間と期限が定められているのに対し、「退去強制令書」発付後の収容は「送還可能のときまで」とあるようにその期限が定められていません。この無期限収容については、国連の拷問禁止委員会がくり返し日本政府に対して是正の勧告をおこなっているなど、国際社会からも厳しい批判があります。

  さて、これら2通りの収容のいずれにも、裁判所は関与していません。「容疑者」をつかまえて、取り調べて、「退去強制令書」を発付する、というこの一連のプロセスは、司法審査なしにおこなわれているのです。入管法上の規定はともかく、入管が現実におこなっていることがらを見てみましょう。入管は、裁判所の許可なしに、もっぱら入管自身の判断にもとづいて人間を監禁しつづける、という行為をおこなっているわけです。人間を逮捕して監禁するという、きわめて深刻に基本的人権にかかわる行政機関の行為が、司法の事前のチェックなしにおこなわれているのです。

  こうした状況をふまえながら、以下に紹介する「上申書」の2つめの項目「裁判中の人々に『仮放免』を下さい」を読んでください。入管は、司法審査なしに入管独自の判断で人間を拘束し、取り調べをおこない、退去強制(強制送還)するかどうかの決定をくだします。この決定は入管という、いち行政機関の決定にすぎませんから、当然、この行政処分の取り消しを裁判所に訴えることができます。ところが、その裁判中においてすら、入管はすぐに仮放免許可によって出所させずに、長期間にわたって拘束をつづけているのです。被収容者の側からすると、自身が裁判で争っている相手方によって身柄を拘束され自由をうばわれている、ということになります。

  長期収容が心身におよぼす影響についても、「上申書」は具体的に述べております。入管は収容やその継続が法にもとづいていると主張します。しかし、入管法にもとづいているのだとしても(むろん、入管法「だけ」に照らして適法/違法を判断できるものではありませんが)、長期収容が収容された人の心身を現に傷つけ、むしばんでいるのは事実です。入管が「法にのっとってやっております」といくら繰り返し述べたところで、人権侵害が人権侵害でなくなるわけではありません。

  収容施設の処遇についても、合理的な理由があるとは思えないさまざまな制約が「上申書」では指摘されています。なぜ、夜の映画の放送の途中でテレビが消されるのか。なぜ、24時間のうち、デイルームに出られるのが6時間だけで、残りの18時間も居室に施錠されて閉じ込められなければならないのか。また、なぜ、外界からの情報が厳しく遮断されなければならないのか。このような、不条理とも思える厳しい制約を被収容者に負わせる入管の「収容」とは、いったい何なのでしょうか。


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上  申  書
2016年7月5日
東京入国管理局御中

  私たち、外国人収容施設の改良、改善をお願い致します。

1.長期収容をやめてください。
  私たちは、一旦収容施設に入ったら、理由があるとしても、ほぼ半年から一年以上収容される人が多いです。なかで、奥さんがにんしん中、もうすぐ出産する人もいます。また、家族の人が体調不良、病気などして、収容者が必要としているにもかかわらず、なかなか仮放免をみとめてくれませんでした。その為に、私たち日々多くのストレスを抱えています。いつ精神がほうかいしても、おかしくありません。実際に、長期収容により、精神状態が悪くなり、おかしくなった人も多くいるそうです。また、半年以上の収容により、多くの人が拘禁症にかかります。最初は不眠、心悸高進、頭痛、食欲不振、下痢などの症状が出てきます。
  私たちは、一日でも早く外に出たい欲望が日々増えつつありますが、長期収容による現実が極端に乖離しています。その為、収容者たちが自殺する可能性は高くなります。実際にも自殺又は自殺未遂もいたそうです。私たち日々こういった極限状態におかれているので、長期収容をもうやめてください。これ以上悲しい事件がおこらないようにお願いします。

2.裁判中の人々に「仮放免」を下さい。
  収容者の中で、「退去強制令書」取消訴訟をしている人もいます。その人たち、多くはビザの取り消し、また不許可で裁判をしています。そういった人々は本来裁判中は、「嘆願書」を集めたり、証拠を集めたり、裁判資料を集めたり、弁護士とうち合わせをしたりするのが普通で当たり前だと思われます。しかし、現実的には裁判やっているにもかかわらず収容されつづけています。それどころか「あなたがいなくても裁判はできる、自分の国に帰って下さい」といったようなことを言われたこともあります。民事裁判は原告がいなければ、意味は全くありません。その為、裁判中の人々に本来あるべき権利、人権を下さいますように、「仮放免」を下さい。

3.仮放免者にアルバイト許可を下さい。
  既に仮放免されている人の中で、十年以上の人もいます。仮放免中は仕事が出来ない為、彼たちの生活も非常に困っています。その結果、犯罪に手をそめる人もいるでしょう。その為、日本の治安も悪くなりますので、どうか、仮放免者に限られた時間でアルバイトの許可をお願いします。

4.収容施設の改善をお願いします。
1) 収容中は限られた電話カードしか使用できない為、電話料金がとても高くなります。1ヵ月5,6万円かかっている人も少なくありません。それらすべて家族に負担がかかりますので、料金が安くなるように、公衆電話を設置して下さい。
2) 娯楽項目を増やしてください。私たちのストレスを少しでも減るように、品川入国管理局に卓球を設置して下さい。また、その他のボードゲームを増やして下さい。
3) テレビの時間を延長してください。毎週金、土、日曜日3日だけ映画がある為、この3日間だけでいいので、テレビを1時間延長して下さい。最後まで映画をみさせて下さい。
4) 私たち、毎日18時間部屋にとじこめられている為、外で活動できる時間を増やして下さい。少しでもストレスが減るようにフリータイム午前中30分、午後90分延長して下さい。
5) 果物を増やして下さい。収容中の食事の多くは揚げもので、購入できる果物はリンゴ、オレンジだけです。その為、収容中は便秘がちになりますので、どうか果物を増やして下さい。
6) 本、雑誌を購入させてください。
警察署、拘置所、刑務所ですら購入できるのに、犯人ではない私たちにも購入させて下さい。
7) インターネット検索できるようにして下さい。
私たち収容者は社会から遮断されているため、情報が極端に少なく、不安な事が多くあります。その為、情報が調べられるようにインターネット検索のみできる設備を設置して下さい。

  以上、どうか、ご検討、改善していただくようにお願いします。

[以下、被収容者36名の署名――省略]

Tuesday, July 19, 2016

大阪入管でのハンスト解除――引き続きの抗議をお願いします



  本日7月19日(火)の午前に、大阪入管でハンガーストライキを続けていた人とようやく連絡がとれました。最大14名が参加していたハンガーストライキは、16日(土)に、この時点でまだ継続していた12名全員が解除し、この日の夕方から食事を再開しているということです。

  そして、ハンスト参加者に対して大阪入管がとっていた電話禁止の措置が、ようやく今日19日の朝になって解除され、われわれ支援者はハンスト参加者全員が無事であるとの報告を受けることができました。

  懲罰房に拘禁されて拷問を受けたイラン人男性が摂食を拒否し始めた6月23日から数えて24日間、これに呼応して集団でのハンガーストライキが始まった7月4日から13日間をへて、被収容者14名によるハンストは一応は解除されました。

  法務省入管や大阪入管への抗議の呼びかけにこたえてくださったみなさま、また、情報拡散に協力してくださったみなさま、ありがとうございます。

  しかし、状況はなにひとつ改善されていないのも事実です。ハンスト者が求めていた長期収容の回避についても、入管はなんら前向きな回答をしていません。ハンスト中においてさえ、診療を求める体調不良者に「食べたらなおるよ」などと言い放つなど、医者でない職員の勝手な素人判断での診療拒否が横行する状況も以前と変わっていません。7月23日から2日間、懲罰房に拘禁されて拷問を受けたイラン人とガーナ人に対しても、いまだ大阪入管からの謝罪はありません。

  ハンスト開始直後、支援者に電話してきたハンスト者のひとりはこう言いました。「何もしなければ私たちは入管に殺される。だから、命がけでハンガーストライキをします。入管はハンストを続けるならば明日から電話も禁止すると言ってきた。これが最後の電話になるかもしれません」。

  非常に深刻な症状を長期間にわたってうったえながら大阪入管によって診療拒否され続けている人も、今回のハンストに参加しました。この人は、ハンストによる病状悪化を心配する支援者につぎのように語りました。「体のことを心配してくれるのはありがたいけど、ハンガーストライキをしてもしなくても、ぼくは毎日毎日がほんとにしんどい。入管は銃は使わないだけで、私をゆっくり殺しているんです」と。

  局長の福山宏以下、大阪入国管理局は、ハンストが解除されても、今日も被収容者を「ゆっくり殺している」ことに変わりません。病人を放置して、診療しない。診療や健康管理という収容主体としての最低限の責任すら果たさないくせに、長期にわたり収容を続けて出所させない。ハンスト者たちにむかって、入管側は「裁判で勝訴するか、難民認定される以外にここから出る方法はない」「2年、3年経ってもここから出さない」と言い放ちました。これは病気になっても死ぬまで出さないと言っているのとおなじで、2010年7月に法務省入国管理局が報道発表で示した「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組む」との方針をひっくり返すものでもあります。

  ハンスト解除後も、大阪入国管理局に対する抗議と監視の必要性はいささかも減じておりません。ハンストをした人が体調をくずしたときに、大阪入管はきちんと診療等をおこなって収容主体としての責任を果たすでしょうか。これまでの「実績」をみるに、信用も期待もまったくできません。大阪入管の苛烈な人権侵害状況はなにひとつ変わっていないのです。ただひとつ以前と変わった点があるとすれば、14名のハンガーストライキを通じて、大阪入管収容場における人権侵害の一端があかるみに出たこと、密室の人権侵害に少しでも関心を向け問題意識をいだく人が増えたであろうことです。

  そういうわけで、引き続いてみなさまに、法務省入管ならびに大阪入管に対して、抗議の声を届けていただくよう、呼びかけます。


  • 長期収容は止めろ
  • 病気の人は誠実に診療しろ
  • 職員の素人判断で診療の可否を決めるな
  • 懲罰房(保護房)への隔離収容はやめろ
  • 6月23日に懲罰房で拷問をおこなったことについて、被害者に謝罪しろ
  • ハンスト者の体調管理に責任をもち、異常がみられればただちに診察をおこなうこと


《抗議先》

  大阪入国管理局
    電話番号 06-4703-2100
    FAX    06-4703-2262

  法務省入国管理局
    電話番号 03-3580-4111
    FAX  03-5511-7212


  大阪入管収容場の人権状況について、今後もこのブログやTRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)のホームページなどを通じて、問題化してきます。抗議行動の呼びかけなどもやっていきますので、これからもご注目のほどよろしくお願いします。



  また、大阪入管の苛烈な人権侵害状況をなるべく多くの方に知っていただきたいと思います。TRYホームページより、以下の文書(日本語と英語それぞれあります)の拡散にご協力ください。







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Monday, July 18, 2016

ハンスト者3名が倒れたとの情報(大阪入管)



  大阪入国管理局での被収容者ハンガーストライキについて、続報です。

  入管側は依然としてハンスト者の面会や電話を禁止しています。ハンスト者がこうして外部との通信・情報交換の手段を遮断されているため、支援者としてもその安否を直接確認する手段はありません。

  ただ、7月15日(金)夕方の時点で、1名が倒れてハンストを中止したほかは、13名が継続しているという情報が支援者に入っています。また、この15日に中止した1名のほかに、2人がハンスト中に倒れたという情報もあります。

  14名のハンスト開始日は、つぎのとおりです。1名が6月23日、6名が7月4日、7名が7月6日。今日18日(月)の時点でハンスト開始から13~15日目、最長の人で26日目をむかえることになります。倒れたという人をふくめ、ハンスト者全員の体調が非常に気がかりです。

  ハンストの始まる前から、大阪入管は、脳梗塞の再発のおそれがある被収容者をふくめ、深刻な症状の出ている被収容者を診療せずに放置してきました(大阪入管の人命をいちじるしく軽視した医療処遇の実態については、「ご支援・ご注目のお願い――診療拒否された被収容者(大阪入管)が国賠訴訟を提起しました」およびその文末にリンクした一連の記事を参照してください)。

  このような組織が、ハンスト者の外部との面会・電話を遮断して、情報の隠蔽をはかっているのです。そういうわけで、依然として、ハンスト者の生命・健康が非常な危険にさらされていると言わざるをえません。みなさまには大阪入国管理局および法務省入国管理局に対して、引き続いての抗議をお願いします。


  • 長期収容は止めろ
  • 病気の人は誠実に診療しろ
  • 職員の素人判断で診療の可否を決めるな
  • ハンスト者と面会させろ
  • ハンスト者の電話禁止の措置を解除しろ
  • 情報を隠蔽するな
  • 懲罰房(保護房)への隔離収容はやめろ



《抗議先》

  大阪入国管理局
    電話番号 06-4703-2100

  法務省入国管理局
    電話番号 03-3580-4111
    FAX  03-5511-7212


◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇


  今回のハンストの経緯や背景、大阪入管の問題について、くわしくは以下の記事を参照してください。




  また、ロイター通信がこのハンストをくわしく報じています。こちらも、拡散してもらえるとありがたいです。




  大阪入管でいま起きているきわめて深刻な事態について、ひとりでも多くの人に知ってもらいたいと思います。問い合わせや取材などは、支援団体のTRY(→メールアドレス)、もしくは、仮放免者の会(永井:090-2910-6490)までお願いします。

Thursday, July 14, 2016

大阪入管前、あす(7月15日)も抗議行動やります


  大阪入管では、被収容者14名によるハンガーストライキがおこなわれています。

                                                                     
  昨日お知らせしていたとおり、本日、支援者一同で大阪入管前にて抗議行動をおこないました。


  入管前の歩道から、ハンスト者に対しては、みんなの体調のことを支援者としてとても心配しているということなどを伝え、「必ず生きて外に出よう」と激励しました。また、入管に対しては、ハンスト者の電話や面会を禁止していることに抗議するとともに、診療もろくに受けさせないまま長期間にわたって収容している入管のやり方は拷問・虐待と言うべきものであると非難しました。

  上階の収容場からは「ありがとう」といった声があがりました。

  この後、支援者一同で被収容者と面会しようとしましたが、ハンストに参加していない被収容者との面会もふくめ、面会申請した支援者5人とも面会は許可できないとの告知を受けました。職員に不許可理由を説明するよう求めたところ、「保安上の理由」「局長判断です」「今日みなさんが抗議行動をされたことも含めての判断」との回答でした。

  このような対応には、大阪入国管理局(福山宏局長)の幼稚な無責任体質がよくあらわれていると思います。今回のハンガーストライキの原因が、大阪入国管理局による人権・人命を軽視した劣悪な処遇と収容の長期化にあることはあきらかです。ところが、大阪入管側は、かれらのとっての今回のいわば混乱・騒動がみずからに原因があるという事実を直視できずに、また、自分たちの責任を回避したいあまりに、支援者に責任を転嫁しようとしているわけです。あたかも、支援者と被収容者の連絡・通信を断ち切ってしまえば、混乱・騒動の要因も消えてなくなるとでもいうかのように。

  こうして、支援者としては、ハンスト者の安否確認すらできないうえに、ハンストに参加していない被収容者との面会もできない、という状況にあります。とくにハンスト者の体調が非常に心配です。

  そういうわけで、ひきつづいて、以下リンク先にある大阪入管の現状について、情報拡散へのご協力をお願いするとともに、大阪入国管理局および法務省入国管理局への抗議・意見提示を呼びかけます。





《抗議先》

  大阪入国管理局
    電話番号 06-4703-2100

  法務省入国管理局
    電話番号 03-3580-4111
    FAX  03-5511-7212



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  大阪入管前での抗議行動を、今日(7月14日)に続いて、明日(7月15日)もおこないます。お近くにお住まいでご都合のつく方は、ぜひご参加ください。


大阪入管前  抗議行動

  • 日時:7月15日(金)  14:00~
  • 集合:大阪入国管理局の前


Wednesday, July 13, 2016

7月14日(木)、大阪入管前で抗議行動をおこないます




大阪入国管理局での被収容者のハンガーストライキについて、すでに抗議をおこなってくださったみなさま、ありがとうございます。ひきつづき、大阪入国管理局または法務省入国管理局への抗議をお願いします。


  • 長期収容は止めろ
  • 病気の人は誠実に診療しろ
  • ハンスト者と面会させろ
  • 懲罰房(保護房)への隔離収容はやめろ


抗議先

大阪入国管理局
  電話番号 06-4703-2100
法務省入国管理局
  電話番号 03-3580-4111
  FAX  03-5511-7212

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  また、直前のお知らせになってしまいましたが、大阪入国管理局への抗議行動をおこないます。

日時:7月14日(木曜) 9:30~
集合場所:大阪入国管理局前

  急なお知らせですみませんが、都合のつく方はご参加ください。大阪入管に対し、「長期収容やめろ」「拷問やめろ」「ハンスト者と面会させろ」と声をあげましょう。


Tuesday, July 12, 2016

【転載】大阪入管への抗議行動の緊急要請


  前回記事でお知らせしたとおり、大阪入国管理局(福山宏局長)で、被収容者14名がハンガーストライキをおこなっています。

被収容者14名がハンスト――大阪入管はハンスト者全員の面会・電話等を禁止

  ところが、大阪入管は、ハンスト者全員を隔離し、面会・電話を禁止しているため、支援者にも14名の状況がわからなくなっています。

  以下に、掲載する文書は、「大阪入管で面会する支援者一同」からの緊急要請です。

  転載は自由です。SNS、ブログ、メーリングリストなどで拡散していただけるとありがたいです。

  また、大阪入国管理局、法務省入国管理局への抗議をお願いします。


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【転載】


抗議行動の緊急要請 2016,7,12  「大阪入管で面会する支援者一同」

大阪入管収容場で、今、大変なことが起こっています。
皆さん!大阪入管、法務省入管への抗議をお願いします。

大阪入管の局長指示によって窓の無い、電灯が点きっぱなしの監視カメラで見張られた、しかも汚い床に掘られた小さい溝に流される水を犬のように這いつくばってしか飲めない、コンクリートの懲罰房に丸二日間も拘禁されるという拷問を受けたイラン人男性は「私は犬じゃない、大阪入管局長は謝罪しろ。私は人間か、動物か答えろ」と6月23日から抗議のハンガーストライキを開始しました。これに男性被収容者13名が合流し、7月4日、及び7月6日からハンガーストライキを決行しています。
裁判を起こしている人、難民申請している人を含め「2年、3年経ってもここから出さない」と言われ、また脳梗塞が再発するおそれのある難民申請者さえも診療を拒否する大阪入管の非情な扱いに対し、14名のハンスト者は「このままなら死体にならないとここから出られない。無期限収容はやめろ。病気の人をちゃんと治療しろ」と抗議のハンストを続行しています。
大阪入管はハンスト者を隔離し、支援者や家族とさえも面会させない、電話もさせないばかりか、「弁護士とも面会させない」と脅し、1週間に2回(計2時間)だけシャワーを使わせるために居室から解放する以外は居室に閉じ込めている、これが私たち支援者に入った最後の情報でした。ハンストに参加していない収容外国人は「ここは独裁国家の収容所だ。皆さん助けて欲しい、支援して欲しい」と呼びかけています。またハンスト者の一人が救急車で搬送されたという情報も入っています。
私たち支援者は、ハンスト者との面会が禁止され、ハンスト者の安否の確認さえできない状態です。非常に心配です。大阪入管の強硬な姿勢が続けば、次々と倒れる人が出るおそれがあります。この「自由で民主主義」の国で、ハンスト者に対し、独裁国家のような野蛮な弾圧が大阪入管によって行われています。
良識ある皆さん!以下の抗議を大阪入管と法務省入国管理局に抗議をお願いします。

・長期収容は止めろ
・病気の人は誠実に診療しろ
・ハンスト者と面会させろ
・懲罰房(保護房)への隔離収容はやめろ

抗議先
大阪入国管理局  電話番号 06-4703-2100
法務省入国管理局 電話番号 03-3580-4111
         FAX  03-5511-7212

Sunday, July 10, 2016

被収容者14名がハンスト――大阪入管はハンスト者全員の面会・電話等を禁止

  一部報道もでておりますが、大阪入国管理局(福山宏局長)の被収容者14名がハンガーストライキをおこなっています。





『朝日新聞』(2016年7月9日付)
  14名のうち、1名は6月23日(木)以来、食事をとっておらず、7月4日(月)には6名が、さらに7月6日(水)に7名が、ハンガーストライキを開始しました。

  ハンスト参加者の要求は、長期の収容をしないでほしい、仮放免許可を認めよ、ということです。

  大阪入管では、昨年9月の西日本入国管理センター廃止のあたりから、収容の長期化がすすんでおり、今年2月にも、長期収容の回避や処遇改善等をもとめて40人以上によるハンガーストライキがあったところです。




  ハンガーストライキがくり返される背景には、長期間の収容に適した施設とはとうてい言いがたい大阪入管において、収容が長期化している、ということがあります。とくに、診療を求めてもめったに許可されることがないという医療処遇の劣悪さに、被収容者たちは強い危機意識を持っています。つい先日、大阪入管で診療拒否されている被収容者が、適切な診療と損害賠償をもとめる訴訟を起こしたばかりです。




  このAさんは、脳梗塞の疑いがあり、右半身のしびれ、ろれつがまわらないなどの症状を訴えてきたにもかかわらず、大阪入管は8か月以上にもわたって、診療をおこなわずにAさんを放置しつづけています。

  問題は、たんに収容が長期化しているということではありません。人命をいちじるしく軽視しているとしか思えない施設にあって収容が長期化しているということが、問題なのです。被収容者たちは「このままでは殺される」という強い危機感をいだき、今回のハンストにいたったわけです。

  今回のハンガーストライキに対する大阪入管側の対応は、以下に述べていくように、情報の隠蔽・秘匿と、ハンスト参加者に事実上の懲罰をくわえることで制圧をはかろうとするもので、断じて容認できません。

  大阪入管は、7月4日(月)から、ハンスト参加者の一般面会を禁止しました。ハンストを理由に面会を許可しないというのは、入管収容施設の対応としてもきわめて異例です。さらに、7月7日(木)からは、ハンスト者14名をハンストをおこなっていない人と分離して別区画に移動させたうえで、電話を禁止しました。このために、ハンスト参加者が外部に連絡をとることができなくなり、支援者はハンスト参加者の状況を知ることができなくなりました。

  さらに、14名を移動させるにあたって、大阪入管側は、ハンストをやめるまで、開放処遇を停止し、一般面会、電話を禁ずる、弁護士面会も場合によっては禁止する、買い物や喫煙も禁止、シャワー・洗濯も制限するとの通告をおこなったといいます。

  こうした大阪入管の対応が、入管収容施設に認められていない懲罰を意図した違法なものであることは、あきらかです。心身に打撃を与えることで、ハンストをやめさせようとしているわけです。

  そこで、私たちとしては、大阪入国管理局(福山宏局長)に対して、ハンスト者にかかわる情報の隠蔽・秘匿をやめること、また、ハンスト者への懲罰をただちにやめるよう、抗議等の働きかけをしていただくよう、呼びかけます。

【抗議先】
  大阪入国管理局総務課
  06-4703-2100
  06-4703-2262(FAX)


  以下に、最近の大阪入管収容場での動き・できごとを、被収容者たちからの聞き取りをもとに再構成したものを掲載します。密室でなにが起こっているのか。大阪入管が隠蔽しようとしている人権侵害の実態について、多くのひとが関心を向けてほしいと思います。

  なお、報道関係者のみなさまなど、この件について取材されたいかたは、仮放免者の会・永井(090-2910-6490)までご連絡ください。




◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇




6月22日(水)

  Bブロックにて。収容場から建物の外に聞こえるような大声で「助けて」などと叫ぶ被収容者が複数。「入管わるい」などという声もあがった。

  この日は、申出書を提出して診療を求めていた被収容者2人に、職員から「不許可」の通知があいついであった。そのうちのひとりは、脳梗塞を過去に発症したことがあり、大阪入管入所後も右半身のしびれや左耳の難聴・耳鳴りをうったえてきたイラン人Aさん。

  その夜、べつのイラン人Bさんが居室で映画を見ていたところ、職員が居室に入ってきて、大声を出したことについて注意を受けた。大声を出していたひとは、この日、複数いたが、注意を受けたのはBさんのみ。



6月23日(木)

  朝9:00ごろ、Bさんの居室に職員がやって来て、「ルール違反ですよ」「今日から5日間一人部屋に行ってもらう」と言って、「保護室」と呼ばれる部屋に連行して隔離。Bさんのいつのどの行為がなんのルールに違反するのか、入管側から納得できる説明はなかった。

  保護室は、Bさんの表現では、コンテナのような、「部屋」というよりも「オリ」。天井の電灯がつけっぱなしで、夜も昼もわからないようなところ。便器と毛布2枚のほかには何もない(その毛布も夜の8時ぐらいまで入らなかった)。水の流れる溝が床にあり、職員がボタンを押すと水が流れる仕組み。2日目の夜にやっと職員がコップを持ってきたが、それまでは職員が「ここから飲め」と言って床の溝に水を流した。犬がするように床に口をつけなければ、水が飲めない。Bさんは、この日以来、食事をいっさいとっていない。

  Bブロックでは、9:30の居室開錠後、Bさんの隔離に怒る被収容者が大きな声を出して職員に抗議。騒然としているあいだに職員が非常ベルを鳴らした。しばらくして40人ぐらいの職員(50~60名との証言もあり)がBブロックに入ってきた(入国警備官の服の職員だけでなく、事務員の服装の職員まで動員されていたという)。

  入管側は「フリータイム[開放処遇]は中止にする。部屋に入れ」と命じたが、これに応じない被収容者側とのあいだで押し問答になった。入管側が「部屋に入ったらみんなの話は聞く」と言い、最終的には被収容者側は全員自分で居室に戻った。その間、職員のひとりが「無理やり入れろ」と他の職員たちに命じて強制的に居室に押し込もうとしたため、ガーナ人のCさんが「[「部屋に入ったら話し合いに応じる」とした]さっきの話はどうなった?」と強く抗議する場面もあった。

  全員がみずから居室に入り施錠されたあと、職員が「話がある」と言ってCさんを調べ室に連れ出した。Cさんは職員に「最近みんなが大声を出すのは、仮放免許可が出なく、みんなストレスがたまっているからだ」と説明した。この場は職員とのあいだで口論になることもなく、Cさんは居室に戻された。

  その後、10:30頃、Cさんが居室でコーヒーを飲んでいたところ、職員が来て、「隔離する」と言ってきた。Cさんは「いいよ。ただし、コーヒー飲みおわるまで待って」と答えた。Cさんは抵抗するそぶりをみせず、隔離を言い渡す職員に対して「いいよ」と従う意思を示していたにもかかわらず、指令役の職員が他の職員に「足をかかえて」と命じた。職員たちは、Cさんの体を5人がかりで持ち上げて連行。自分の足で居室から出る意思を示していたCさんを、わざわざかかえて無理やり連行したのは、Cさん本人への懲罰・制裁と、他の被収容者たちへの威嚇・見せしめといった意図があったのではないだろうか。

  Cさんは、隔離の際、その理由を「[Cさんが職員に]『あっち行け』と言ったからだ」と説明された。そのような発言をしたかどうか、Cさんは「おぼえていない」。9:30すぎに職員に抗議した際、興奮していたので、何を言ったかは記憶がはっきりしないところもあるとのこと。ただし、職員の体にふれたり、服をひっぱったりという行為はしていない。

  BさんとCさんは、この日から保護室に2日間隔離され、その後、単独室に3日間隔離された。

  この日は、朝の開放処遇停止以降、終日、居室に施錠され、Bブロックの被収容者全員が電話、運動、洗濯、入浴などを禁じられた。



6月24日(金)

  Bブロックは、開放処遇を制限。通常は、午前(9:30~11:30)と午後(13:30~16:30)にそれぞれある開放時間が、この日は居室ごとに午前のみ、または午後のみに制限された。職員は、同様の措置を日曜までは継続すると宣告。

  Bブロックより19名の連名で以下の要求書を提出。長期収容回避を要求。



要  求  書
  今私達がいる大阪入国管理局Bブロックには、難民の人達や家族が日本に住んでいる、もしくは今裁判で待っている人達もいて、私達の収容がたんなる裁判の妨げになっているとしか思いません。家族の苦しみや、精神的な苦痛などを考えると、私達の収容が不当であり、非人道的な収容を直ちに解くべきだと思い、受け入れ体制が整っている人だけでも、仮放免の制度を適用すべきだと思い強く希望致します。
  私達が仮放免[申請]を提出する際、不許可になることを想定して仮放免を出しているのではなく、多くの方々の協力を得てやっとの思いで仮放免を提出しています。なのに不許可になった理由を明らかにしないのです。今後入管はこのことについてきちんと説明すべきだと思います。
  現在私たちがいるBブロックに収容期間が長い人が多くいます。入管は私達を帰国に追い込むために長期収容していることは言うまでもありませんが、どんなに期間が長期化したとしても、やはり帰国できない正当な理由があり、認められるべきです。無意味な拘束を直ちに解くべきだと思い、最低限、仮放免の許可を認めるべきです。
  尚この要求書を提出してから1週間以内に回答をお願いします。



6月25日(土)

  Bさんは、「保護室は規則上48時間をこえて収容できない」と職員から説明され、畳の敷かれた単独室に移された。Cさんも同じく、隔離場所が保護室から単独室に変わった。



6月27日(月)

  午前にCさんの隔離が解除された。

  単独室のBさんのところに職員がやって来て、「反省しなければ隔離を延長することになる」などと言ってきた。Bさんとしては、納得する説明なくこのような懲罰的なあつかいを受けたこと、第三者の審査なく入管の一方的な意思でこのような懲罰的な扱いができる仕組み・制度、また入管から非人間的な扱いを受けたことは不当であって、Bさん側が反省すべきことではないと考え、これを拒否した。Bさんは職員に対して「一生、ここでいい」「説明ないことに納得できない」と述べた。

  しばらくしたら、職員が来て、Bブロックに戻され、昼頃、隔離が解除された。



6月29日(水)

  Aさんが、国家賠償請求訴訟を提起。夕方のNHKニュースなどで報じられた。



7月1日(金)

  Bブロック要求書の回答期限をむかえたが、入管側からの回答はなし。



7月3日(日)

  Bブロックでは、要求書に対する入管の回答がいまだないため、被収容者側から話し合いを持ちかけた。対応した職員が「上に伝える」と言ったので、被収容者側は「上」からの返答を待つことにした。



7月4日(月)

  Aブロック6名が朝食から摂食を拒否。ハンガーストライキ開始。

  以下、大阪入管に対するAブロックハンスト者からの声明。


Osaka immigration detention center hunger strike
We on hunger strike from Monday July 4 to protest against the reiterated refusal of our provisional release.
Application for reasons we are not told, we are being hold here in inhumane condition, some of us have been in this detention centerfor over a year and a half, because of prolonged confinement with very inadequate medical care.
We are suffering from illnesses both physical and mental.

  2月のハンスト時の入管の対応と異なり、この日は開放処遇の停止などはなかった。電話も自由にできた。ただし、支援者らとハンスト参加者の面会は禁止された。

  もういっぽうのBブロックでは、被収容者側が前日にひきつづき責任者との面談を求めた。

  職員が「要求は何か?」と聞くので、被収容者側が「短期収容のための施設なのに収容が長期化している。[要求しているのは]仮放免のことだ」と述べた。入管側は、短期収容のための施設だということを認めつつも、「収容が長期になっても違法ではない」と説明した。また、職員からは、「ハンストしても何も変わらない。してもしなくても長く収容する」との発言があった。



7月5日(火)

  前日の入管側との話し合いを受けて、Bブロック被収容者間でミーティング。

  前日からハンガーストライキをおこなっているAブロックで、入管側はハンスト者のひとりであるDさんを呼んで、話をした。Dさんは、長期収容を回避すること、そのために仮放免を許可することを求めた。これに対して、職員は「ハンストをしても入管側の考えは変わらない。ムダだ。ここから出るための方法は[帰国する以外には]2つしかない。裁判で勝訴するか、難民認定されるかだ」。これは、裁判中であろうが、難民審査中であろうが、また、病気になろうが仮放免は許可しないということを事実上宣告したにひとしい発言で、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むことと」とした2010年7月の法務省入国管理局によるプレスリリースの趣旨を真向からくつがえすものである。

  また、このとき入管側からはハンストを継続するならば、開放処遇を停止して、電話も禁止すると通告。



7月6日(水)

  Bブロックでも、6月23日から摂食を拒否しているBさんにくわえ、あらたに7名がハンスト開始。

  大阪入管は、先にハンストを開始していたAブロック6名にくわえ、Bブロックの8名についても、この日から、支援者らとの面会を禁止している。

Bブロックでは、午後の開錠前に職員が各部屋をまわり「ハンストを継続するならば、明日の朝から面会も電話も禁止する。薬も出さない」との警告をおこなった。



7月7日(木)

  入管は、朝、ハンストを継続している全員(Aブロック6人、Bブロック8人)を居室から連行し、別の区画に収容。以降、電話も禁じられたため、ハンスト者と外部の連絡は不可能になった。



7月8日(金)

  午前中に、永井(支援者)がハンスト中のCさんとの面会を申請したが、「保安上の理由」から大阪入管に許可されなかった(ハンストに参加していない被収容者との面会申請は許可された)。

  午後になって、職員から永井に対し「面会を許可できない」「局長判断で、今後も当分は永井さんの面会は[ハンストをしてない人との面会もふくめ]不許可になると思います」との通告がなされた。入管側は、永井が午前中の面会において被収容者に対して「ここの局長は、人命を軽視しているとしか思えない」と発言したことが不許可の理由だと説明した。入国管理局に対する面会者の論評の内容を理由にして、以後の面会を不許可にするという措置は、入管収容施設の対応としてもきわめて異例と思われる。

Friday, July 1, 2016

ご支援・ご注目のお願い――診療拒否された被収容者(大阪入管)が国賠訴訟を提起しました



  6月29日(水)、大阪入国管理局に収容されているイラン人男性(「Aさん」とします)が、大阪地方裁判所に国賠訴訟を提起しました。Aさんは、右半身のしびれなど脳梗塞を疑われる症状をうったえて職員にくりかえし診療を求めたものの、大阪入管がこれを拒否しつづけてきたことから、精神的苦痛に対する国家賠償と医師の診察の義務付けを国に求めたものです。






1.大阪入管による診療拒否・医療ネグレクトの実態

  Aさんは、1969年生まれの男性で、大阪入管に入所するまえに、脳梗塞を発症したことがあります。

  大阪入管入所後の昨年10月11日、Aさんは右半身がしびれ、ろれつがまわらないという症状があらわれ、動くこともしゃべることもできない状況になり、病院に搬送されました。搬送先の病院では、「脳梗塞疑い、一過性脳虚血発作疑い、視床痛」と診断されています。

  「一過性脳虚血発作」とは、「脳梗塞の前兆」とも言われ、これを治療せずに放置した場合、脳梗塞を発症する可能性が高いとされます。この病院に搬送された日は、さいわい後遺症など残らずにすみましたが、この後もAさんは右半身のしびれなどの症状にくり返し悩まされることになります。

  ところが、大阪入管は、その後現在ににいたるまで8か月以上にわたってAさんの診療をおこなわず放置しつづけています。2月末には、これも脳梗塞との関連の疑われる左耳の難聴と耳鳴りを発症。しかし、こうした新たな重要な症状が出ているにもかかわらず、大阪入管はAさんの診療要請を拒否しました。

さらに今年3月、Aさんが入所前に脳梗塞を発症して以来、7,8年間服用をつづけてきたバイアスピリン(血栓をできにくくする作用があり、脳梗塞を発症したことのある人に処方されることのある薬です)の処方が医師の診察もなしに突然中止されました(「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し」てはならないと規定する医師法20条に違反する可能性があります)。Aさんは処方再開を求めましたが、大阪入管はこれも拒否しました。



2.たびかさなる職員による暴言とその背景

  診療やバイアスピリンの処方再開を求めるAさんに対して、職員による問題発言・暴言もくりかえされています。

  診療の申し出が不許可になった際、Aさんが職員に「私はどうしたらいいのか」と尋ねると、「私たちには関係がない」「あなたの問題だ」と突き返されました。

  また、左耳が聞こえなくなったと訴えるAさんに対して、「片方の耳が聞こえなくても生活できるだろう」との職員の暴言もありました。さらに、その後も、「電話しているから耳は聞こえているはずだ」と暴言をはいた職員もいました(Aさんは聞こえるほうの耳を受話器にあてて電話していたのです)。

  もちろん、これらの職員の発言は許しがたいものですが、問題の本質は、大阪入国管理局が局としてAさんの診療を拒否しつづけていることにあります。大阪入管には週2回診察をおこなっている医師がいますが、Aさんが右半身のしびれなどの症状を訴えて以降、この医師は1度もAさんを診察しておりません。

  では大阪入管は、どうやってAさんの診察について「必要ない」と判断しているのでしょうか。医療従事者ではない入管職員が勝手に判断しているのか、あるいは、医師が職員らから症状等について報告を受けて判断をくだしているのか。いずれにしても、問題です。右半身のしびれや耳が聞こえなくなったという重大な症状をうったえている被収容者について、専門的な知見を有する医師が一度も直接診ることなしに、大阪入管は「診察不要」と判断しつづけているわけですから。

  Aさんは、入管に身体を拘束されているため、自分で病院に行って診療を受けることはできません。つまり、入管が「診療が必要である」との判断をしないかぎり、治療を受ける機会を得られないわけですが、大阪入管は医師による初診すらなしに診療不要との判断を下し、8か月あまりにわたってAさんが治療を受ける機会をうばっているのです。

  このように、あきらかに診察を必要としている被収容者にすら大阪入管はこれを許可しないのですから、現場の職員が目の前にいる被収容者の病状を軽く評価しようとするようになるのも不思議ではありません。入管の職員も、耳が聞こえなくなったとうったえているのがかりに自分の家族や友人だったならば、これを放置してよいとは考えないだろうし、「片方の耳が聞こえなくても生活できるだろう」などという暴言を平気ではくとも考えられません。「電話しているから耳は聞こえているはずだ」という、Aさんのうったえを詐病あつかいする発言も、そうであってほしいという職員の願望を反映したものではないでしょうか。

  常識的に見て病院に連れて行くべきだと思えるひとが目の前にいても、そのひとに診療を受けさせることを上司は許可しない。あるいは、症状の深刻さを報告書にまとめ、診察が必要だと思われるとの意見をそえても、診療は許可されない。このような組織で働いていれば、職員が被収容者の病苦のうったえや症状を軽くみつもったり、あるいは、詐病とみなしたりと、自身の認知のほうをゆがめるようになるのは、ある意味「自然」ではあります。

  以下の記事でもふれたように、2013年10月から翌14年11月の1年あまりのあいだに、東京入管および東日本入国管理センターでは、4人の被収容者を病死させています。


  このうち、ロヒンギャ難民フセインさんの死亡事件では、同室の被収容者によると、あわを吹いて痙攣(けいれん)しているフセインさんを前に職員が「癲癇(てんかん)なので大丈夫」と発言しています(フセインさんは結果的に癲癇ではなく「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」で亡くなっています)。また、翌年のスリランカ人ニクラスさんの死亡事件でも、心臓の痛みをうったえるニクラスさんを前に、職員が「立ってるし、歩けるから大丈夫じゃないの」と発言したとの同室の被収容者の証言があります。

  これらのケースは、医療の専門家ではない職員が医療判断をおこなっているという点でまず問題ですが、被収容者の病状を軽く評価したいという、収容場の現場にいる職員の心理的傾向をあらわした事例にも思えます。

  病状が深刻なものかどうか、医者ではない素人には判断できないことですから、異常がみられればただちに専門家(=医者)にみせることが必要です。ところが、現場の職員がそうしようとしてもできないような職場であれば、職員は、病状が深刻かもしれないという可能性を打ち消す方向に自分の認知を操作しようとするでしょう。自分が重病人を助けずに放置しているかもしれないという可能性を認識するのはたえがたいものですから、目の前にいるひとの病状は「たいしたことはないはずだ」、あるいは「詐病にちがいない」と思い込もうとするわけです。

  もちろん現場職員の暴言は非難されなければなりませんが、なにより問題にすべきなのは、被収容者の生命を軽視していると言うよりほかない入管の診療体制ならびに組織的体質です。



3.Aさんの裁判、ならびに被収容者の人権状況にご注目を!

  入管によって退去強制の対象とされているひと、しかも収容中で入管に身体を拘束されているひとが、国賠訴訟をおこなうのは、きわめて異例です。提訴への報復として、入管が恣意的な不利益処分をおこなう可能性を考えないわけにはいかないからです。

  Aさんが今回提訴を決意するまでには、少なからず葛藤があったようです。かれが国・入管を相手に、法廷でみずからの権利を主張していくために、多くのひとの関心と支援が必要です。今後、裁判の傍聴など支援をここで呼びかけることになると思います。裁判の推移、また大阪入管の状況にご注目のほどよろしくお願いいたします。


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*この件について問い合わせ等は、仮放免者の会・永井(ながい) 090-2910-6490 までお願いします。


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