一部報道もでておりますが、大阪入国管理局(福山宏局長)の被収容者14名がハンガーストライキをおこなっています。
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『朝日新聞』(2016年7月9日付) |
14名のうち、1名は6月23日(木)以来、食事をとっておらず、7月4日(月)には6名が、さらに7月6日(水)に7名が、ハンガーストライキを開始しました。
ハンスト参加者の要求は、長期の収容をしないでほしい、仮放免許可を認めよ、ということです。
大阪入管では、昨年9月の西日本入国管理センター廃止のあたりから、収容の長期化がすすんでおり、今年2月にも、長期収容の回避や処遇改善等をもとめて40人以上によるハンガーストライキがあったところです。
ハンガーストライキがくり返される背景には、長期間の収容に適した施設とはとうてい言いがたい大阪入管において、収容が長期化している、ということがあります。とくに、診療を求めてもめったに許可されることがないという医療処遇の劣悪さに、被収容者たちは強い危機意識を持っています。つい先日、大阪入管で診療拒否されている被収容者が、適切な診療と損害賠償をもとめる訴訟を起こしたばかりです。
このAさんは、脳梗塞の疑いがあり、右半身のしびれ、ろれつがまわらないなどの症状を訴えてきたにもかかわらず、大阪入管は8か月以上にもわたって、診療をおこなわずにAさんを放置しつづけています。
問題は、たんに収容が長期化しているということではありません。人命をいちじるしく軽視しているとしか思えない施設にあって収容が長期化しているということが、問題なのです。被収容者たちは「このままでは殺される」という強い危機感をいだき、今回のハンストにいたったわけです。
今回のハンガーストライキに対する大阪入管側の対応は、以下に述べていくように、情報の隠蔽・秘匿と、ハンスト参加者に事実上の懲罰をくわえることで制圧をはかろうとするもので、断じて容認できません。
大阪入管は、7月4日(月)から、ハンスト参加者の一般面会を禁止しました。ハンストを理由に面会を許可しないというのは、入管収容施設の対応としてもきわめて異例です。さらに、7月7日(木)からは、ハンスト者14名をハンストをおこなっていない人と分離して別区画に移動させたうえで、電話を禁止しました。このために、ハンスト参加者が外部に連絡をとることができなくなり、支援者はハンスト参加者の状況を知ることができなくなりました。
さらに、14名を移動させるにあたって、大阪入管側は、ハンストをやめるまで、開放処遇を停止し、一般面会、電話を禁ずる、弁護士面会も場合によっては禁止する、買い物や喫煙も禁止、シャワー・洗濯も制限するとの通告をおこなったといいます。
こうした大阪入管の対応が、入管収容施設に認められていない懲罰を意図した違法なものであることは、あきらかです。心身に打撃を与えることで、ハンストをやめさせようとしているわけです。
そこで、私たちとしては、大阪入国管理局(福山宏局長)に対して、ハンスト者にかかわる情報の隠蔽・秘匿をやめること、また、ハンスト者への懲罰をただちにやめるよう、抗議等の働きかけをしていただくよう、呼びかけます。
【抗議先】
大阪入国管理局総務課
06-4703-2100
06-4703-2262(FAX)
以下に、最近の大阪入管収容場での動き・できごとを、被収容者たちからの聞き取りをもとに再構成したものを掲載します。密室でなにが起こっているのか。大阪入管が隠蔽しようとしている人権侵害の実態について、多くのひとが関心を向けてほしいと思います。
なお、報道関係者のみなさまなど、この件について取材されたいかたは、仮放免者の会・永井(090-2910-6490)までご連絡ください。
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6月22日(水)
Bブロックにて。収容場から建物の外に聞こえるような大声で「助けて」などと叫ぶ被収容者が複数。「入管わるい」などという声もあがった。
この日は、申出書を提出して診療を求めていた被収容者2人に、職員から「不許可」の通知があいついであった。そのうちのひとりは、脳梗塞を過去に発症したことがあり、大阪入管入所後も右半身のしびれや左耳の難聴・耳鳴りをうったえてきたイラン人Aさん。
その夜、べつのイラン人Bさんが居室で映画を見ていたところ、職員が居室に入ってきて、大声を出したことについて注意を受けた。大声を出していたひとは、この日、複数いたが、注意を受けたのはBさんのみ。
6月23日(木)
朝9:00ごろ、Bさんの居室に職員がやって来て、「ルール違反ですよ」「今日から5日間一人部屋に行ってもらう」と言って、「保護室」と呼ばれる部屋に連行して隔離。Bさんのいつのどの行為がなんのルールに違反するのか、入管側から納得できる説明はなかった。
保護室は、Bさんの表現では、コンテナのような、「部屋」というよりも「オリ」。天井の電灯がつけっぱなしで、夜も昼もわからないようなところ。便器と毛布2枚のほかには何もない(その毛布も夜の8時ぐらいまで入らなかった)。水の流れる溝が床にあり、職員がボタンを押すと水が流れる仕組み。2日目の夜にやっと職員がコップを持ってきたが、それまでは職員が「ここから飲め」と言って床の溝に水を流した。犬がするように床に口をつけなければ、水が飲めない。Bさんは、この日以来、食事をいっさいとっていない。
Bブロックでは、9:30の居室開錠後、Bさんの隔離に怒る被収容者が大きな声を出して職員に抗議。騒然としているあいだに職員が非常ベルを鳴らした。しばらくして40人ぐらいの職員(50~60名との証言もあり)がBブロックに入ってきた(入国警備官の服の職員だけでなく、事務員の服装の職員まで動員されていたという)。
入管側は「フリータイム[開放処遇]は中止にする。部屋に入れ」と命じたが、これに応じない被収容者側とのあいだで押し問答になった。入管側が「部屋に入ったらみんなの話は聞く」と言い、最終的には被収容者側は全員自分で居室に戻った。その間、職員のひとりが「無理やり入れろ」と他の職員たちに命じて強制的に居室に押し込もうとしたため、ガーナ人のCさんが「[「部屋に入ったら話し合いに応じる」とした]さっきの話はどうなった?」と強く抗議する場面もあった。
全員がみずから居室に入り施錠されたあと、職員が「話がある」と言ってCさんを調べ室に連れ出した。Cさんは職員に「最近みんなが大声を出すのは、仮放免許可が出なく、みんなストレスがたまっているからだ」と説明した。この場は職員とのあいだで口論になることもなく、Cさんは居室に戻された。
その後、10:30頃、Cさんが居室でコーヒーを飲んでいたところ、職員が来て、「隔離する」と言ってきた。Cさんは「いいよ。ただし、コーヒー飲みおわるまで待って」と答えた。Cさんは抵抗するそぶりをみせず、隔離を言い渡す職員に対して「いいよ」と従う意思を示していたにもかかわらず、指令役の職員が他の職員に「足をかかえて」と命じた。職員たちは、Cさんの体を5人がかりで持ち上げて連行。自分の足で居室から出る意思を示していたCさんを、わざわざかかえて無理やり連行したのは、Cさん本人への懲罰・制裁と、他の被収容者たちへの威嚇・見せしめといった意図があったのではないだろうか。
Cさんは、隔離の際、その理由を「[Cさんが職員に]『あっち行け』と言ったからだ」と説明された。そのような発言をしたかどうか、Cさんは「おぼえていない」。9:30すぎに職員に抗議した際、興奮していたので、何を言ったかは記憶がはっきりしないところもあるとのこと。ただし、職員の体にふれたり、服をひっぱったりという行為はしていない。
BさんとCさんは、この日から保護室に2日間隔離され、その後、単独室に3日間隔離された。
この日は、朝の開放処遇停止以降、終日、居室に施錠され、Bブロックの被収容者全員が電話、運動、洗濯、入浴などを禁じられた。
6月24日(金)
Bブロックは、開放処遇を制限。通常は、午前(9:30~11:30)と午後(13:30~16:30)にそれぞれある開放時間が、この日は居室ごとに午前のみ、または午後のみに制限された。職員は、同様の措置を日曜までは継続すると宣告。
Bブロックより19名の連名で以下の要求書を提出。長期収容回避を要求。
要 求 書
今私達がいる大阪入国管理局Bブロックには、難民の人達や家族が日本に住んでいる、もしくは今裁判で待っている人達もいて、私達の収容がたんなる裁判の妨げになっているとしか思いません。家族の苦しみや、精神的な苦痛などを考えると、私達の収容が不当であり、非人道的な収容を直ちに解くべきだと思い、受け入れ体制が整っている人だけでも、仮放免の制度を適用すべきだと思い強く希望致します。
私達が仮放免[申請]を提出する際、不許可になることを想定して仮放免を出しているのではなく、多くの方々の協力を得てやっとの思いで仮放免を提出しています。なのに不許可になった理由を明らかにしないのです。今後入管はこのことについてきちんと説明すべきだと思います。
現在私たちがいるBブロックに収容期間が長い人が多くいます。入管は私達を帰国に追い込むために長期収容していることは言うまでもありませんが、どんなに期間が長期化したとしても、やはり帰国できない正当な理由があり、認められるべきです。無意味な拘束を直ちに解くべきだと思い、最低限、仮放免の許可を認めるべきです。
尚この要求書を提出してから1週間以内に回答をお願いします。
6月25日(土)
Bさんは、「保護室は規則上48時間をこえて収容できない」と職員から説明され、畳の敷かれた単独室に移された。Cさんも同じく、隔離場所が保護室から単独室に変わった。
6月27日(月)
午前にCさんの隔離が解除された。
単独室のBさんのところに職員がやって来て、「反省しなければ隔離を延長することになる」などと言ってきた。Bさんとしては、納得する説明なくこのような懲罰的なあつかいを受けたこと、第三者の審査なく入管の一方的な意思でこのような懲罰的な扱いができる仕組み・制度、また入管から非人間的な扱いを受けたことは不当であって、Bさん側が反省すべきことではないと考え、これを拒否した。Bさんは職員に対して「一生、ここでいい」「説明ないことに納得できない」と述べた。
しばらくしたら、職員が来て、Bブロックに戻され、昼頃、隔離が解除された。
6月29日(水)
Aさんが、国家賠償請求訴訟を提起。夕方のNHKニュースなどで報じられた。
7月1日(金)
Bブロック要求書の回答期限をむかえたが、入管側からの回答はなし。
7月3日(日)
Bブロックでは、要求書に対する入管の回答がいまだないため、被収容者側から話し合いを持ちかけた。対応した職員が「上に伝える」と言ったので、被収容者側は「上」からの返答を待つことにした。
7月4日(月)
Aブロック6名が朝食から摂食を拒否。ハンガーストライキ開始。
以下、大阪入管に対するAブロックハンスト者からの声明。
Osaka immigration detention center hunger strike
We on hunger strike from Monday July 4 to protest against the reiterated refusal of our provisional release.
Application for reasons we are not told, we are being hold here in inhumane condition, some of us have been in this detention centerfor over a year and a half, because of prolonged confinement with very inadequate medical care.
We are suffering from illnesses both physical and mental.
2月のハンスト時の入管の対応と異なり、この日は開放処遇の停止などはなかった。電話も自由にできた。ただし、支援者らとハンスト参加者の面会は禁止された。
もういっぽうのBブロックでは、被収容者側が前日にひきつづき責任者との面談を求めた。
職員が「要求は何か?」と聞くので、被収容者側が「短期収容のための施設なのに収容が長期化している。[要求しているのは]仮放免のことだ」と述べた。入管側は、短期収容のための施設だということを認めつつも、「収容が長期になっても違法ではない」と説明した。また、職員からは、「ハンストしても何も変わらない。してもしなくても長く収容する」との発言があった。
7月5日(火)
前日の入管側との話し合いを受けて、Bブロック被収容者間でミーティング。
前日からハンガーストライキをおこなっているAブロックで、入管側はハンスト者のひとりであるDさんを呼んで、話をした。Dさんは、長期収容を回避すること、そのために仮放免を許可することを求めた。これに対して、職員は「ハンストをしても入管側の考えは変わらない。ムダだ。ここから出るための方法は[帰国する以外には]2つしかない。裁判で勝訴するか、難民認定されるかだ」。これは、裁判中であろうが、難民審査中であろうが、また、病気になろうが仮放免は許可しないということを事実上宣告したにひとしい発言で、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むことと」とした2010年7月の法務省入国管理局によるプレスリリースの趣旨を真向からくつがえすものである。
また、このとき入管側からはハンストを継続するならば、開放処遇を停止して、電話も禁止すると通告。
7月6日(水)
Bブロックでも、6月23日から摂食を拒否しているBさんにくわえ、あらたに7名がハンスト開始。
大阪入管は、先にハンストを開始していたAブロック6名にくわえ、Bブロックの8名についても、この日から、支援者らとの面会を禁止している。
Bブロックでは、午後の開錠前に職員が各部屋をまわり「ハンストを継続するならば、明日の朝から面会も電話も禁止する。薬も出さない」との警告をおこなった。
7月7日(木)
入管は、朝、ハンストを継続している全員(Aブロック6人、Bブロック8人)を居室から連行し、別の区画に収容。以降、電話も禁じられたため、ハンスト者と外部の連絡は不可能になった。
7月8日(金)
午前中に、永井(支援者)がハンスト中のCさんとの面会を申請したが、「保安上の理由」から大阪入管に許可されなかった(ハンストに参加していない被収容者との面会申請は許可された)。
午後になって、職員から永井に対し「面会を許可できない」「局長判断で、今後も当分は永井さんの面会は[ハンストをしてない人との面会もふくめ]不許可になると思います」との通告がなされた。入管側は、永井が午前中の面会において被収容者に対して「ここの局長は、人命を軽視しているとしか思えない」と発言したことが不許可の理由だと説明した。入国管理局に対する面会者の論評の内容を理由にして、以後の面会を不許可にするという措置は、入管収容施設の対応としてもきわめて異例と思われる。