Thursday, September 28, 2017

大阪入管の現状について


  9月12日(火)、大阪入国管理局において一斉面会がおこわなれました。支援者ら17名がそれぞれ被収容者に面会するとともに、大阪入管に対して抗議・申し入れをおこなったものです。

  当日の様子と大阪入管に提出した申入書については、一斉面会を主催した支援団体のTRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)のブログをごらんください。




  申入書(この記事の下にも転載しております)にくわしく述べられているとおり、大阪入管ではさまざまな問題が立て続けに起こっています。

  6月29日には、大阪入管の職員5名がベトナム人夫婦の自宅を裁判所の令状なしに違法に侵入し捜索するという事件がありました。この事件は、NHKなどでも報道されたとおり、被害者が9月1日に大阪地方検察庁に刑事告訴したところです。




  7月12日には、職員による「制圧」行為(手首をつかまれ背中の後ろでひねりあげた)で、トルコ人被収容者が右肩を骨折する重傷をおわされました。

  食事(官給食)についても、賞味期限切れの食品が出されたり、朝食のゆで卵について火が通っておらず生のものが何人かに配食されたり、イスラム教徒の食事にあやまって豚肉が混入されていたり、といった事案が続いています(賞味期限切れの食品と卵の件では、被収容者の抗議を受けて、給食業者が入管職員とともに被収容者たちのもとに出向いて謝罪しました)。

  こうした問題に対し、大阪入管では被収容者たちの抗議もそのつどくり返しおこなわれており、9月14日にはAブロックの被収容者31名が連名での要求書を大阪入国管理局局長あてで提出しました。




  このように被収容者たちから激しい抗議の声があがっている背景には、大阪入管において顕著になっている長期収容問題があります。先述の申入書は、つぎのように指摘しております。

  大阪入管収容場において収容が長期化している。1年を越える被収容者が24名、その内2年を越える被収容者が7名もおり、その中には約3年になる被収容者もいる。大阪入管収容場の被収容者の3分の1が1年を越えるという異常状態となっている。
  このように、人間の時間的・空間的感覚を奪う外界と遮断され密閉収容施設に無期限長期収容(無期限拘禁)し、被収容者の心身を痛みつけることは拷問に該当する。

  申入書に述べられているように、日本政府は国連の拷問禁止委員会に対し「仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいる」と回答しています。ところが、大阪入管は、この国連への公約とはまったく異なって、2年間以上にわたって仮放免許可がほとんど出ていないという実態にあります。

  さて、この収容長期化傾向は、大阪ほど顕著ではないものの、他の地方入管局(東京および名古屋)や両入管センター(東日本および大村)においても深刻な問題となっています。また、各地方入管局は仮放免者の再収容を強化させています。こうした各施設での長期収容・再収容の背景に、3,000人以上にまで増加した仮放免者数を減少させるとの法務省入国管理局の方針があるとみられます。このことは、5月におこなわれた東京入管被収容者による大規模ハンストによせた以下の記事で述べてあります。




  仮放免者数の増大に対する現時点での入管の対応が、収容長期化と仮放免者の再収容の強化であるわけです。しかし、上記の記事をふくめこのブログでくり返し述べてきたように、そもそも仮放免者数の増大をもたらしているおもな要因は、難民認定率のいちじるしい低さとあわせて、バブル期から現在にいたる、日本政府の外国人労働者政策の矛盾にあるというべきなのです。

  そして何より問題なのは、送還の見込みのたたない人びとをもいたずらに長期間にわたって収容しつづけていること(収容が長期にわたっていることそのものが、送還の見込みのなさを示してもいます)です。2年も3年ものあいだ身体を拘束して自由をうばい、被収容者を拘禁症状で苦しめつづけることは、人権・人道上の観点から言って、たんなる「送還のための身柄確保」などという理由によって正当化されるものではありません。大阪入管は苦痛を与えることで在留の意思をくじき帰国においこむために収容を長期化させているのではないか。拷問を帰国強要の手段としてもちいているのではないか。そのように勘ぐられても、しかたがないのではないでしょうか。

  今後とも、大阪入管をはじめ入管施設の収容の問題への注目をお願いします。




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申 入 書
2017年9月12日

申し入れ団体
 WITH(西日本入管センターを考える会)
 TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
 難民支援コーディネーターズ・関西
 難民支援団体 ピースバード

1.大阪入管収容場において収容が長期化している。1年を越える被収容者が24名、その内2年を越える被収容者が7名もおり、その中には約3年になる被収容者もいる。大阪入管収容場の被収容者の3分の1が1年を越えるという異常状態となっている。
 このように、人間の時間的・空間的感覚を奪う外界と遮断され密閉収容施設に無期限長期収容(無期限拘禁)し、被収容者の心身を痛みつけることは拷問に該当する。
  
  日本政府は2011年に国連拷問禁止委員会に対し、以下報告した。
収容中の難民認定申請や,難民認定申請を繰り返し行う場合などにより,近年,収容が長期化する傾向にあることを踏まえて,2010年7月から,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過しても送還に至っていない被収容者については,仮放免の請求の有無にかかわらず,入国者収容所長又は主任審査官が一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討の上,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいる。

  上記報告は2010年7月30日、法務省入管局がプレスリリースした「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこととし,より一層の適正な退去強制手続の実施に努めてまいります。」という声明に沿ったものである。
 
  しかるに貴局の「仮放免は極めて例外的な措置に過ぎない」(長期収容を回避せず無期限収容する)という被収容者に対する回答は、上記日本政府の国際における、及び法務省入管局の国内における公約を踏みにじるものである。
 私たちは、以下、要望し、かつ回答を求める。
①日本政府が国際において、また法務省入管局が国内において公約した「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避」に沿って仮放免するよう求める。
②「仮放免は極めて例外的な措置に過ぎない」というBブロックの被収容者に回答内容は、法務省入管局としての見解か、それとも大阪入管局としての見解か否か。

2.処遇問題等について
 ①2017年7月12日、貴局入管職員らがトルコ人男性をうつ伏せに倒し、両手を背中に回して手錠を掛ける際、肩の骨を骨折させるという重傷を負わせた。理由がどうであれ、被収容者に重症を負わせる制圧行為は正当化できない。トルコ人男性は一人であり、それに対し5,6人の職員が正当な職務行為と称して、制裁を加えることは到底許されるものではない。
 ②2017年6月19日より、法務省入管局管理下の収容施設において全面禁煙となった。タバコを被収容者から取り上げ領置しておきならが、禁煙措置後、隔離房のあるフロアで貴局職員が喫煙をしていた。
 ③2017年8月20日の夕食において支給された味噌汁が賞味期限切れの味噌汁であった。このことがAブロックで発覚した。このことは、食事の選択権を奪われた被収容者にとって、賞味期限切れの味噌汁を貴局によって食わされたということである。このこと対し、収容場職員と給食業者が謝罪したが、その際「味は落ちるが、摂取しても問題はない」という趣旨の発言をした。これは被収容者に対し、安全管理責任義務のある貴局の責任を自覚した発言ではない。
 ④2017年9月4日、Aブロックの7号室の被収容者の大半に湿疹が発生し、同室全員がDブロックに移動された。湿疹の原因は、ダニの発生と思われる。居室の定期消毒は、被収容者に対する安全管理責任義務を果たすために必要不可欠である。
 ⑤2017年6月29日、ベトナム人女性の住居に、貴局警備職員5名が不法侵入し、同女性の夫のパスポートを捜索した。同女性の所持品も含め、職員らは勝手に捜索し、部屋の中をさんざん散らかして帰った。
  以上は、全てあってはならないことである。制圧と称して暴行を加えて重症を負わせ、タバコの喫煙を禁止して自分達はタバコを吸い、賞味期限切れの食事を食わせ、不衛生な居室に拘禁し、さらに外国人だからと住居に不法侵入する。これら全ては許されるものではない。上記項目の全てに対し、貴局に厳重に抗議するとともに、二度の同様のことが起こらないよう、適切な措置を講じるよう求める。
以 上

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