Monday, April 23, 2018

収容長期化の回避等をもとめる被収容者連名申入書(東日本入管センター)



 直前の2つの記事で、東日本入国管理センターで4月日に起こったインド人被収容者死亡事件、これを受けての120名超の被収容者による集団ハンガーストライキについて報告してきました。


 今回の記事では、時間をさかのぼって、これら事件が起こる1か月以上前の3月5日に東日本センターの5A, 5B両ブロックの被収容者25名が連名で入管側に提出した「申入書」を紹介します。この2つのブロックのうち、5Aは、13日に亡くなったDさんのいたブロックでもあります。

 いたましい死亡事件とこれを契機として広がったハンガーストライキが、どういう背景で起きているのか。この点を理解する上で、この「申入書」が手がかりのひとつになるものと思います。

 記事の末尾には、このたびの事件であらわになった入管の収容と送還をめぐる問題の背景を考えるうえで参考になればと思い、このブログの過去記事をいくつか紹介させていただきました。


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申 入 書
平成30年3月5日

法務大臣殿
法務省入国管理局長殿
東日本入国管理センター所長殿
5A, B寮被収容者
私達は以下要望し、かつ面接にて回答を求める。
1.長期収容は人権侵害であり、収容長期化の回避を求め、再び仮放免の弾力的運用をされることを強く求めます。
2.再収容の中止と再収容された者への即時仮放免を求める。
3.被収容者への医療放置をやめ、診療を求める者は直ちに診療させ適切な処置をとることを求める。
4.帰国忌避者に対する個別の送還やチャーター機による集団送還執行の中止を求める。
5.以上のもとで現在、東日本入国管理センターに収容されている人の中で、余りに長期間収容されている人や深刻な体調不良者等、直ちに仮放免許可等の措置をとるべき人達が居ます。
以 上

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【関連記事の紹介】

 上に紹介した「申入書」提出からすこしたった3月中旬に、東日本センターのべつのブロック(8A, 9A, 9B)で、長期収容をやめるよう求めた嘆願書が提出されています。こちらもあわせてごらんください。


 Dさんは亡くなる前日の4月に仮放免申請の不許可を知らされておりました。Dさんの死が自殺だったのだとすれば、ここ数年において顕著になっている入管施設における収容の長期化がその死に関係している可能性は高いといえます。入管施設における収容とはなにか、また長期収容がなぜ問題なのかについては、以下の記事で解説しております。


 今回紹介した5A, 5Bブロックの「申入書」は、「再収容の中止と再収容された者への即時仮放免」を求めています。「仮放免許可」と呼ばれる手続きで出所した人をふたたび収容することを「再収容」といいます。この再収容を急増させる運用を東京入管がとりはじめたのが、2016年の1月ごろでした。この再収容急増への反発として、昨年2017年の5月に東京入管で被収容者による大規模ハンストがおこりました。東京入管や名古屋入管で再収容されて東日本入管センターに移収されたひとが、今回のハンスト参加者にもすくなくありません。入管当局が再収容を急増させた意図・目的はなにか、またそうした運用変更がどういう点で問題なのか、解説したのが以下の記事です。


 5A, 5Bブロック「申入書」が3点目にもとめているのが医療処遇の改善です。東日本センターでは、被収容者が診療を求める申し出を書面で提出してから、医師の診察にいたるまで通常1ヶ月ほどかかるといいます。被収容者に必要な医療を提供できる能力が被収容者数に追いついていないわけです。そのうえ、収容の長期化傾向は体調不良をきたして診療を必要とする被収容者を増加させるわけですから、収容人数にセンターの収容能力がまったく追いついていないという事態にますます拍車がかかるわけです。

 こうして医師の診療を提供できる能力をこえて多すぎる被収容者をかかえてしまった施設では、どういうことがおきるでしょうか? 「医師による診察が必要か必要でないか」あるいは「どの人を優先的に受診させるか」の判断を、医療の専門的訓練を受けていない職員がおこなうことが横行する結果になります。以下の記事では、入管施設において、医療放置による被収容者の死亡事件があいついでいることの構造的な要因を考察しています。


 以下は、入管が医療放置によって被収容者を死に追いやった最近の事例についての記事です。



 上記「申入書」の4つめの要求項目に関連して。無理やりの送還、とりわけチャーター機を使った集団送還の問題については、以下の記事などで述べています。

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