おつたえしているとおり、6月18日と19日東日本入管センターの被収容者が、入管側との話し合いをもとめて、集団で帰室拒否のストライキをおこないました。
この集団帰室拒否に対する入管センターの対応について、仮放免者の会として抗議の申し入れを所長の川村修行さんあてでおこないました。
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申 入 書2013年6月25日
東日本入国管理センター所長 川村修行 殿
仮放免者の会
6月18日、19日の両日、貴センター被収容者が、貴センター側との話し合いをもとめて帰室拒否のストライキをおこないました。18日には3つのブロックで約50名が、19日には1つのブロックで約20名が、ストライキをおこないました。
両日のストライキに対する貴センターの対応に関して、私たちは以下の2点について、看過することができないと考えております。
第1に、貴センターが大人数の入国警備官を動員して威嚇し制圧しにかかり、被収容者側の話し合いの要求を拒否したことについてです。
第2に、制圧の過程で貴センターの入国警備官による、被収容者の人権を公然と否定する暴言があったことについでです。
1.対話の拒否と制圧について
貴センターは、18日の7Bブロックのストライキ(参加者7名)に対して50~60名程度の入国警備官を投入しました。19日の9Bブロックのストライキ(参加者約20名)に対しても約50名の入国警備官を投入しています。後者においては、入国警備官がストライキ参加者の腕や足をつかんで、むりやり居室に押しこむといった実力行使をともなった制圧もおこなわれました。
対話をもとめた被収容者の非暴力的な抗議行動に対し、貴センターがこのような大人数での威嚇と暴力の行使でのぞんだ点をまず非難します。
被収容者たちは、これまでも連名での嘆願書・申出書の提出や、集団でのハンガーストライキ等をつうじて、処遇改善や仮放免申請の審査を透明化することなどを貴センターにもとめてきました。そうしたたびかさなる被収容者側の行動は、貴センターへの対話の呼びかけと言うべきものでもありました。貴センター側がこれらに対して十分に誠意をもって回答してこなかったと被収容者たちは受けとめており、このことがこのたびのストライキにいたった大きな要因であると私たちはとらえております。今回のストライキにしても、被収容者側は、貴センターへの意見や疑問をつたえ、これに対する回答をもとめるという、あくまでも貴センターとの対話を志向した行動をとっております。
ところが、貴センターは、対話を拒否し、制圧でもってこたえるという、きわめて不誠実な対応をとりました。とくに、9Bブロックでは、18日に被収容者側はいくつかの意見と質問を貴センターにつたえており、これらに対する翌日の返答を期待してこの日は帰室に応じたのでした。ところが、被収容者側がもとめた返答期限の翌日に貴センターは、制圧をもってこれに答え、被収容者との対話を一方的に打ち切ったのです。
さらに、19日に9Bブロックの全員が帰室に応じたあと、貴センターはストライキ参加者のうち1名を他のブロックへの移室処分にしておりますが、この過程でも入国警備官らの不適切な行動がありました。
まず、移室処分に際して、処遇部門の伊藤統括はつぎのように発言しております。
「移室します。あなたにはなにを言う権利もない。言うことを聞かないと公務執行妨害とみなす」。
こうして伊藤統括は、当該被収容者の弁明や意見をまったく聞かず、文字どおり有無を言わせずに、移室処分を執行したわけですが、この処分が具体的にどのような法的根拠にもとづくものなのか、当該被収容者への説明はいっさいありませんでした。職権を行使するならば、その職権の根拠について説明するのは、公務員として当然の義務です。
また、法務省令の被収容者処遇規則第四十一条は、事後にであれ被収容者が不服の申出および異議の申出ができることを定めております。伊藤統括がこうした規定に言及せずに「あなたにはなにを言う権利もない」と発言したことは、被収容者の正当な不服および異議の申出の可能性をみずからの力の誇示によって封じようとする恫喝と評するほかないものであって、職権の執行の仕方としても不適切と言わざるをえません。
上記移室処分執行の過程では、複数の入国警備官たちが、当該被収容者に対し「なに見てるんだよ?」などと攻撃的な発言をくり返したうえ、にらみつけるなど、あきらかに職権の範囲を逸脱した挑発行為をおこなっております。
また、上記移室処分に際して、当該被収容者は連行する入国警備官に腕をつかまれたために右ひじを痛めてしまいました。
以上について、以下の5点を申し入れます。
(1)18日、19日両日の被収容者のストライキにおいて、貴センターがストライキ参加者との対話に応じず、制圧をもってこれにのぞんだことを不適切と認め、被収容者との対話を再開すること。とくに、18日に9Bブロックのストライキ参加者が貴センター側につたえた意見と質問について、誠意ある回答をおこなうこと。
(2)19日における、9Bブロック被収容者に対する移室処分について、職権の法的根拠につき、当該被収容者に説明したうえで、執行時にその説明がなされなかった点について当該被収容者に謝罪すること。
(3)同移室処分執行時における伊藤統括の「あなたにはなにを言う権利もない」との発言が適切なものであったかどうか、検討し、これについて貴センターとしての見解を当該被収容者につたえること。また、検討の結果、不適切な点があったとみとめるならば、その点について当該被収容者に謝罪すること。
(4)同移室処分執行時に当該被収容者が負った負傷について、早急に外部の診療機関を受診させ、診断証明書の発行を診療機関に国費で請求したうえで、発行された診断証明書を当該被収容者に手渡すこと。
(5)同移室処分執行時の入国警備官たちの暴言と挑発行為について、当該被収容者への聞き取りもふくめて公正な調査をおこない、その調査結果を当該被収容者につたえること。
2.入国警備官HC131の暴言
19日の9Bブロックの帰室拒否者を帰室させるに際して、入国警備官HC131が被収容者の人権を公然と否定する暴言をおこなったことを、複数の被収容者が証言しております。 居室に入ることを求めた入国警備官に被収容者が「ぼくたちは人権を尊重されたいんです」と述べたところ、HC131は「人権は関係ないから」と発言したとのことです。
これは、人権の尊重をもとめて話し合いを呼びかけている被収容者側に対し、言うならば、“あなたたちの人権については話し合うに値しないし、われわれにとってあなたたちはその人権について考慮されるべきような存在などではなく、たんなる管理の対象にすぎないのだ”と述べているにひとしいものです。この発言について、あるストライキ参加者も、「自分たちは入管に動物と思われている。人間としてみてほしい」と語っています。
この、HC131による、被収容者の人権を当の被収容者たちの目の前で公然と否定し、尊厳を侮辱する差別的な発言は、私たちとしても、とうてい容認できるものでありません。
この被収容者の人権を否定する入国警備官の発言は、公務員の憲法尊重擁護義務を規定した日本国憲法第99条への違反が明確であります。また、「この規則は、出入国管理及び難民認定法により入国者収容所又は収容場に収容されている者の人権を尊重しつつ、適正な処遇を行うことを目的とする」と定めた被収容者処遇規則第一条からみても、HC131の発言は、入国警備官としての資質を疑わざるをえない重大な問題発言と考えます。
入国警備官HC131による「人権は関係ないから」との発言について、以下のとおり4点申し入れます。
(6)入国警備官HC131の「人権は関係ないから」という発言について、適切なものであったと考えるのか、貴センターとしての見解を示すこと。
(7)貴センターとして入国警備官HC131に対し厳正な処分を科し、その処分内容を公表すること。
(8)入国警備官HC131に、19日の9Bブロックのストライキ参加者たちのもとに出向かせ、自身の発言について謝罪させること。
(9)HC131の発言は、貴センターの全被収容者の人権を否定したものと言うことができ、これ自体が深刻な人権侵害である。入国警備官による人権否定発言があったことについて経緯と事実を説明した文書を貴センターの被収容者全体にむけて掲示し、所長としての謝罪をおこなうこと。
以 上
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申入書では、入国警備官の暴言をふくめた人権軽視の言動を問題にしています。もちろん、ここにあげた言動について、かれら入国警備官の責任はきびしく追及されなければならないと考えます。
ただ、現場の入国警備官だけを非難すればすむ問題ではないということも、たしかです。
「リアルタイムな収容所!」というブログがあります。このブログは、東日本入管センターに現在収容中の私たちの仲間が執筆しております(収容所内は、パソコンや携帯電話の使用がいっさい禁止されているため、郵便や面会時の宅下げをとおして支援者が原稿をうけとり、更新作業をしています)。
このブログの4月30日の日記で、執筆者のBig_Papaさんは、収容所内の騒動を制圧したあとに入国警備官が発した「しんどい」という言葉を書きとめています。
今回のような入国警備官の暴言などを見すごすわけにはいかないのは、いうまでもありませんが、こうした過酷で「しんどい」職務を入国警備官たちに負担させているのはだれなのか、という点も同時に問わなければならない問題です。
上記のBig_Papaさんのブログなどからうかがうに、入国警備官たちの職務が、場合によって入国警備官たち自身の精神を疲弊させ、すさませてしまう結果をもたらしうるものだということは、確信できます。
2年ほどまえ、おなじ東日本入管センターの入国警備官が「外国人をイジメるのが楽しい」との暴言事件をおこしており、センター側は非をみとめ、暴言をはかれた被収容者に謝罪をおこなっています。こうした事件がありながら、入国警備官による暴言がまた今回くり返されたことについて、かれの責任をきびしく問うと同時に、その背景も考えなければならないところでしょう。
東日本入管センターでは、若い入国警備官がその職務に嫌気がさして、つぎつぎと職場を去っていくとも聞きます。
さらに、現在、法務省は100人ほどをチャーター機をつかって一度に送還することを計画しております。その送還対象者の大部分は東日本入国管理センターに集められていると私たちは分析しております。この一斉送還の方針に、私たちはなによりもまず被送還者の人権と人道上の観点から反対しておりますが、この一斉送還がおこなわれた場合に現場の入国警備官の心身にとりかえしのつかない傷をもたらすだろうという点も憂慮されるところです。
職務を現場で執行している入国警備官にみずからは安全な場所から指示を出し、かれら・かのじょに「しんどい」職務を一方的に負担させているひきょう者はだれであり、どこにいるのでしょうか?
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帰室拒否ストライキについて、『読売新聞』(茨城版)が報じております(2013年6月22日付)。以下、転載します。
入管で外国人 帰室拒否
法務省「東日本入国管理センター」(牛久市久野町)で、収容されている非正規滞在外国人の一部が18、19日、自由時間の終了時刻を過ぎても広間から自室に戻ることを拒否していたことがわかった。
外国人労働者や難民の支援団体「BOND」によると、18日に約50人、19日に約20人の入所者が、規定の時間を過ぎても約1時間半、広間に座り込むなどし帰室を拒否したという。仮放免申請の審査の早期化や医療処遇の改善などについて、同センター側との対話を求めたストライキだとしている。一方、同センターは「両日とも帰室するよう説明し、比較的短い時間に全員応じた。ストライキではない」と説明している。
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