昨年9月の関西、10月の関東に続き、9月18日に名古屋入管管轄地域在住の仮放免者が団結して東海地区仮放免者の会が結成されました。アジア・アフリカ・南米諸国出身の仮放免者、在留理由も難民、日本人の配偶者、日系人などさまざまな仮放免者が一堂に会し、これからの闘う方針、組織作りなどを討議して決め、国別のリーダーを選出し、在留資格取得に向けた力強いシュプレヒコールで閉会しました。
名古屋入管に収容され、退去強制令書の発付を受けた人たちは主に西日本入国管理センター(大阪府茨木市)に移収されます。関西在住の仮放免者や支援者とは西日本センター収容中につながりができており、東海地区の仮放免者はこれまで関西仮放免者の会から支援を受けながら再収容に反対する闘いを進めてきました。名古屋入管も東京入管と同じく、難民手続きや退令取消訴訟敗訴確定時などに再収容していましたが、今年4月6日の全国一斉面会・一斉申入れ以降、再収容は基本的にストップしています。4月下旬から5月初めにかけては、再収容者の即時仮放免などを求めるハンガーストライキも名古屋入管内で闘われました。国籍、宗教、言語、在留理由などの違いを越えて、自ら団結して闘ってきた東海地区の仮放免者は、ついに自らの団結を形に現す組織を手にしました。
結成大会には、関東、関西からもリーダーや支援者が参加しました。これは、全国的な仮放免者の団結と闘いが必要だからであり、また、この東海地区での結成は、全国的な仮放免者の団結と運動が開始されるという重要な意味があるからです。それは、仮放免者が在留資格を取得するため、法務省入管に政策変更を要求する必要があり、これは各地方局レベルの運動ではできないからです。全国の仮放免者と言っても、そのほとんどは関東、東海、関西に集中しています。この三つの地域で組織が作られれば全国的な運動と言えます。そのため、関西や関東の仮放免者や支援者も、この東海での仮放免者の会結成に期待し、注目していました。
長期収容を経てやっとの思いで仮放免になったものの、仮放免状態では就労資格がなく、移動の自由も制限され、さらには在留資格がないために国民健康保険に加入できず治療費は「10割負担」です。医療機関によっては15割、20割を請求される場合もあります。安定した収入も無く、医療費は極めて高額になるため、病院に行きたくても我慢せざるを得ません。いくら入管から脅されても、難民であったり日本に家族がいたりするなど、帰国できない事情があるから長期収容にも耐えざるを得ませんでした。しかし仮放免になったとしても自らの人権や生命は守られるわけではありません。こうしたひどい状況から脱するには、在留資格の付与を入管に求めて行くしかありません。そのためにはどうしても、全国的な仮放免者の団結と運動が必要でした。
参加した関西、関東の仮放免者の会のリーダーからは、東海地区での結成を祝うと共に、団結することの重要性が強調されました。関西のあるリーダーは、「これからは『私は』と考えるのではなく、いつも『私たちは』と考えてください」と大会参加者に訴えました。大変な状況に置かれているのはリーダーも同じであり、同じ苦しみを抱える仮放免者が自分の事だけに精いっぱいになる状況・気持ちも良くわかっています。しかしそこで、自分の事だけを考えたり、私は難民なのにとか、私のところは本当の結婚なのにとか、狭い枠にとらわれていたら団結は作られず運動は発展していきません。関西のリーダーが訴えたのは、仮放免者自身の立場の転換です。関東のリーダーからは、関東での長期収容と再収容に反対する運動の経緯を報告し、全国的に団結して闘えば、私たちの要求は必ず実現できると訴えました。
三つの地区のリーダーたちは、お互いに連絡先を交換し、今後の全国的な連携を誓いました。
Wednesday, September 21, 2011
Tuesday, September 20, 2011
「外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄」する――退去強制令執行の実態
わたしたち「仮放免者の会」の仲間であり、これまでこのブログに2度「意見書」を掲載させていただいた鈴木啓三ロベルトさんが、8月15日にブラジルに「帰国」しました。不本意ながらの帰国とのことです。
鈴木さんが「帰国」前に寄せてくださった「意見書」を公開します。ウソをついてだます、脅迫する、外国人の人格や法的権利をふみにじる、そうした入管による帰国強要の実態の一端をかいまみることのできる内容です。ぜひ、お読みください。あわせて、鈴木さんの過去の「意見書」にもリンクをはっておきます。
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【補足】
鈴木さんが「意見書」の最後で報告している、職員による「外人を苛めるのが大好き」発言については、被害者である趙星晨さん自身の告発をすでにこのブログに掲載しております。
この事件については、暴言をはいた職員 HC115 と上司が、趙さん本人に直接面会して謝罪し、HC115 が趙さんたちの収容されている 9Bブロックの担当をはずれたとのことです。東日本入管が HC115 の差別的暴言の事実をみとめ、これを問題と認識しているようであることは評価できます。しかし、この謝罪について、被害者である趙さんがどう考えているかということが、なにより重要です。近日中にこのブログで、趙さんにご自身の認識・意見を書いていただく予定です。
さて、鈴木啓三ロベルトさんについては、上にリンクした意見書で鈴木さんご本人が書かれているとおり、ある違法行為により実刑判決を受けて服役したことがあります。これを理由に、入管から在留許可を取り消され、退去強制令が発付されたわけです。
もちろん、退去強制令の発付自体は、入管法(出入国管理及び難民認定法)にさだめられた手続きにのっとっておこなわれたものです。しかし、有罪判決を受け入れ、刑期をつとめあげたひとは、その違法行為について法的には決着ずみなのであって、行政によってこれ以上のペナルティを科されるのは、あきらかに不当です。
入管はなにさまのつもりなのでしょうか? 裁判所のきめた刑罰をすでに終えたひとにたいし、さらに事実上の刑罰にひとしい退去強制を命じているのですから。これは裁判所や刑務所の役割と存在意義をすら否定しているようなものです。行政権の一部をになうにすぎないはずの入管が、司法を超越した存在としてふるまっていると言ってよいでしょう。
そして、この司法をすら超えた存在であるかのような入管の横暴ぶりは、有罪判決を理由とした退去強制令の発付(これは入国審査官の仕事)だけでなく、その執行(こちらは入国警備官の仕事)においても、みられます。
まず、指摘しておきたいのは、鈴木さんが上の「意見書」で報告している入国警備官 HC050 のついたウソは、あきらかに意図的で自覚的なウソであるという点です。今回、鈴木さんは「帰国同意書」にサインし、自分の意思でブラジルに「帰国」したわけですが、退去強制令が発付された状態での「帰国」は、私費で「同意」にもとづいたものであっても、入管法上の「退去強制」にあたります。入国警備官たる HC050 がこのような基本的な事実を知らないなどということは、まず考えられません。 HC050 はそれを知っておきながら、鈴木さんに「帰国同意書」へのサインをさせるためにウソをついたのです。したがって、この「同意」は強制されたものと言えます。
外国人にたいしてはウソをついてだましてもよいという、入国警備官のごうまんな差別意識にもおどろかずにはいられませんが、HC050 のウソがさらに問題と言えるのは、これが鈴木さんの正当な司法手続きを受ける権利を侵害するウソだという点です。
鈴木さんは、退去強制令取消訴訟を提起しており、その裁判中でした。退去強制令そのものは、入管によって発付されるものであり、すなわち行政権の範疇にあります。こうして退去強制令を発付されたひとは、司法の場に異議を申し立てる権利があります。鈴木さんはその正当な権利の行使として、退去強制令を不服とし、これを取り消すための裁判を提起していたわけです。
日本国憲法には「何人(なんびと)も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(第32条)と書かれています。日本国憲法は、生存権などの重要な人権について「国民」の権利としていたりして、あいまいなのが難点ですが、裁判を受ける権利については「何人も」「奪われない」人権であると、明確に規定しております。
東日本入管センターの入国警備官 HC050 はウソをつき、その結果、鈴木さんは裁判を取り下げました。入管は、憲法によって保障された「裁判を受ける権利」を不当に侵害したことになります。したがって、このたびの鈴木さんの帰国、入管側から言えば退去強制令の執行は、現行の法制度に照らしてさえ正当性がなく、入管による違法行為と言うべきです。
法務省のサイトの「入国警備官採用試験」というページには、入国警備官の仕事が「日本の安全を守る重要な使命」だと紹介され、つぎのように書かれています。
まるで、在留や就労の資格のない外国人の一部が「日本の安全と国民生活」「社会秩序」への脅威になっているかのような書きぶりですが、司法制度をふみにじり、平気でウソをつき、社会秩序を破壊しているのはいったいどちらでしょうか?
このように入管は、鈴木さんがおっしゃるように「外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄して」帰国へと追いこもうとします。
ウソをつくということも、入管組織内では必要な手段とみなされているフシがあります。たとえば、日本国籍者や永住者との結婚を理由に在留資格を申請している外国人を帰国に追いこむために、その夫や妻に本人のネガティブな情報やウソをふきこむといった事例も、よく聞きます。「あなたの夫(妻)は浮気をしている」あるいは「財産めあてであなたに近づいた」など。そう言って、カップルをひき裂き、「帰国するしかない」と思わせようとするわけです。
また、鈴木さんが報告しているように、収容者にたいする恐喝。複数の収容者・収容経験者たちが口をそろえて言うには「威圧的な態度をとる職員と、いっけんやさしそうな職員が、役割分担をして収容者を帰国させようと圧力をかけてくる」とのことです。
これは、テレビの刑事ドラマでしばしば描かれている取り調べのやり口に似ていますね。まず、いかにも暴力的な若い刑事が容疑者をなぐったり、暴言をはいたりして、おどす。つぎに、温厚で年輩の刑事がカツ丼かなにかをもってきて「おふくろさんに心配かけるなよ」などと言って容疑者をおとしにかかる。この人のよさそうな年輩刑事は、やさしそうにみえても、それは容疑者に「自白」を強要するために暴力的な刑事と役割分担しているにすぎません。
こういう安っぽくて下品な刑事ドラマと同様の手法を入管が採用していることは、鈴木さんの報告からもみてとることができます。一方では HC050 が「これで帰らなかったらもう二度と帰れないぞ!」などとどなり、恐喝する。他方で、HC012 がわざとらしい声と顔で「どうかしましたか?」などと言ってあらわれる。このように、こわもての職員とやさしそうな職員がチームをくんでいるという話は、他の収容者などからもしばしば指摘されます。
ウソや暴言にくわえて、硬軟とりまぜた圧力。入管は組織的にこうした暴力をひとりひとりの収容者に日々くわえて、帰国への「同意」をさせようとします。これが退去強制の執行の実態にほかなりません。
鈴木さんは、「帰国」してブラジルですでにあたらしい生活をはじめています。しかし、日本の入管で見聞きしたさまざまな人権侵害・外国人差別の実態を公開し、告発していくつもりだとおっしゃっています。
かれは、収容されているあいだも、国籍や立場のさまざまな他の収容者たちのための助力・助言を精力的におこない、それゆえ信望をあつめておりました。面会におとずれる支援者にたいしても、「自分のことよりも、ほかの罪のない外国人を入管がいじめていることが許せないし、支援してあげてください」といつもおっしゃっていました。
鈴木さんは、いまも仮放免者の会の大切な仲間であります。外国人差別をなくすために今後とも鈴木さんと連携していきます。
鈴木さんが「帰国」前に寄せてくださった「意見書」を公開します。ウソをついてだます、脅迫する、外国人の人格や法的権利をふみにじる、そうした入管による帰国強要の実態の一端をかいまみることのできる内容です。ぜひ、お読みください。あわせて、鈴木さんの過去の「意見書」にもリンクをはっておきます。
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意見書
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外国人人権保護団体
仮放免者の会:団体長殿
SYI:団体長殿
私は、以前から何回か意見書を書かせて頂いて居ります鈴木啓三ロベルトと申します。何度も私の書いた意見書を公開して頂き心から感謝して居ります。誠に有り難うございました。
この度自身の私的な都合により帰国せざるを得ない状況が発生し、本心ではありませんが帰国は已(や)むを得ない事と存じます。誠に身勝手ではありますがどうかお許し頂きたく存じます。皆様のご支援があるにも拘わらず帰国してしまう自分をどうか許して下さい。
今回で入管のなかからの最後の意見書になると思います。ですが、どうか良くお読みになって頂きたく存じます。
私は平成23年7月19日、帰国手続きに入って居ました。私は、何回かに渡り帰国する準備の為、何度か担当職員HC050と話し合いをしました。
そのなかで私が何度も尋ねたのですが、「臨時旅券に DEPORTATION または強制退去に類似したものが書かれてしまうか、または、スタンプの様なものを捺されてしまうのか」と何度も尋ねましたところ、「それは絶対にありません」と担当が言ったのです。
何故私がそこまで担当に訊ねたか、というのは、自分は自身の意志で帰国するだけでなく実費で帰国するからです。
担当は「DEPORTATION または強制退去に類似したものは書かれませんし、またそれ等に類似したもののスタンプは絶対に捺されません」と断言しました。
私は帰国するのは本意ではありませんが、担当の言う事を信じて臨時の旅券を待って居りました。
そして先日8月4日、私の臨時旅券が届きました。
良く見てみたらポルトガル語でこう書かれて居りました。
「RAZÃO DE DEPORTACÃO」
これを日本語に翻訳すると「強制退去による理由である」
私の怒りは爆発しました。私はすぐに担当を呼び付け、これは何だと問い詰めましたが、担当は惚(とぼ)けて居ました。私は問い詰め続けましたが、何の進展もありませんでした。
そこで私は「この旅券では帰国しません」と切り出したところ、担当が本性を現した。怒鳴りつけるように言ったのです。
「これはお前の最後のチャンスだ! これで帰らなかったらもう二度と帰れないぞ!」(これは HC050 の発言である)
私はこの人のペットでも奴隷でもないので、怒りをこめて「黙れ!」と言ったのです。「しゃべるなら低い声で喋れ!」
誠に信じ難い出来事である。法務省が管理する施設のなかで脅迫されるとは思いもしませんでした。私はそこでその職員に「あんたとでは話にならないのであんたの責任者を呼んできて」と言ったところ、担当は「ボスを呼んでも言われる事は同じだぞ!」と言ったので、私は「あんたの言う事などどうでもいい! 早くあんたの責任者を呼んで来い」と怒鳴ったところ、やっと責任者が現れた。ID番号 HC012 が部屋のなかに入って来ました。
「どうかしましたか」と態(わざ)とらしい声と顔で虫唾が走りました。HC012はドアの向こうで全てを聞いていた筈(は)ずだからである。この入管の遣り方、誠に汚らわしい!
私はその HC012 に問い詰めました。「お前ら何故嘘ばかり吐くんだ? そこに居るチケット担当(HC050)はパスポートに何も書かれないと言ったけど、どうなんだ?」
HC012 は「これは強制退去手続きに則ってこうなりました」と言うだけでした……。もう話になりませんでした。その HC050 が責任者が来た途端、深刻な顔をして黙ってしまった……。
説明も無く、反省も無く、謝罪も無く、何も無し!
ただ時間だけが過ぎて行きました。極論から申し上げますと入管という組織は外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄して居るのです。誠に遺憾であり許し難い! 公務員としては言語道断! 法務省管轄内では有るまじき行為である!
最初から本当の事を言ってもらったなら帰国しない事も考えたと思います。併(しか)し HC050 は私を巧みに騙して、そして仮放免申請と強制退去命令取り消し裁判を取り下げさせてから、こんな酷い仕打ちをしたのです。外国人を愚弄するのはもう止めて欲しいものです。
私は8月15日に帰国しますが、自分自身で購入したチケットと自分の意志で帰国するにも拘わらず、パスポートには強制退去が書かれてしまって居るのです。他国ならばこれは自主退去に当たるので、パスポートには何も書かれません。こんな事をするのは日本国入管ぐらいと私は思って居ます。私と致しましては一生許すことはないと思います。
最後になりますが、先日、同室に居られる中国国籍の趙星晨さんが職員 HC115 に「外人を苛めるのが大好き」と言われるのを私はこの目で見ました。3月4日 PM10:00頃でした。私は自分の耳を疑いました。しかし同室のラオス国籍のサイペンシーモンコンサオーさんも聞いて居りました。誠に信じ難いのですが、これが現在入管という組織の実情であります。
この文書をお読みになられた皆様にお告げしますが、全て真実の告白でございます。
今まで本当に有り難うございました。
以上平成23年8月8日収容者: 鈴木啓三ロベルトJailed: ROBERTO KEIZO SUZUKI
【補足】
鈴木さんが「意見書」の最後で報告している、職員による「外人を苛めるのが大好き」発言については、被害者である趙星晨さん自身の告発をすでにこのブログに掲載しております。
この事件については、暴言をはいた職員 HC115 と上司が、趙さん本人に直接面会して謝罪し、HC115 が趙さんたちの収容されている 9Bブロックの担当をはずれたとのことです。東日本入管が HC115 の差別的暴言の事実をみとめ、これを問題と認識しているようであることは評価できます。しかし、この謝罪について、被害者である趙さんがどう考えているかということが、なにより重要です。近日中にこのブログで、趙さんにご自身の認識・意見を書いていただく予定です。
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さて、鈴木啓三ロベルトさんについては、上にリンクした意見書で鈴木さんご本人が書かれているとおり、ある違法行為により実刑判決を受けて服役したことがあります。これを理由に、入管から在留許可を取り消され、退去強制令が発付されたわけです。
もちろん、退去強制令の発付自体は、入管法(出入国管理及び難民認定法)にさだめられた手続きにのっとっておこなわれたものです。しかし、有罪判決を受け入れ、刑期をつとめあげたひとは、その違法行為について法的には決着ずみなのであって、行政によってこれ以上のペナルティを科されるのは、あきらかに不当です。
入管はなにさまのつもりなのでしょうか? 裁判所のきめた刑罰をすでに終えたひとにたいし、さらに事実上の刑罰にひとしい退去強制を命じているのですから。これは裁判所や刑務所の役割と存在意義をすら否定しているようなものです。行政権の一部をになうにすぎないはずの入管が、司法を超越した存在としてふるまっていると言ってよいでしょう。
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そして、この司法をすら超えた存在であるかのような入管の横暴ぶりは、有罪判決を理由とした退去強制令の発付(これは入国審査官の仕事)だけでなく、その執行(こちらは入国警備官の仕事)においても、みられます。
まず、指摘しておきたいのは、鈴木さんが上の「意見書」で報告している入国警備官 HC050 のついたウソは、あきらかに意図的で自覚的なウソであるという点です。今回、鈴木さんは「帰国同意書」にサインし、自分の意思でブラジルに「帰国」したわけですが、退去強制令が発付された状態での「帰国」は、私費で「同意」にもとづいたものであっても、入管法上の「退去強制」にあたります。入国警備官たる HC050 がこのような基本的な事実を知らないなどということは、まず考えられません。 HC050 はそれを知っておきながら、鈴木さんに「帰国同意書」へのサインをさせるためにウソをついたのです。したがって、この「同意」は強制されたものと言えます。
外国人にたいしてはウソをついてだましてもよいという、入国警備官のごうまんな差別意識にもおどろかずにはいられませんが、HC050 のウソがさらに問題と言えるのは、これが鈴木さんの正当な司法手続きを受ける権利を侵害するウソだという点です。
鈴木さんは、退去強制令取消訴訟を提起しており、その裁判中でした。退去強制令そのものは、入管によって発付されるものであり、すなわち行政権の範疇にあります。こうして退去強制令を発付されたひとは、司法の場に異議を申し立てる権利があります。鈴木さんはその正当な権利の行使として、退去強制令を不服とし、これを取り消すための裁判を提起していたわけです。
日本国憲法には「何人(なんびと)も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(第32条)と書かれています。日本国憲法は、生存権などの重要な人権について「国民」の権利としていたりして、あいまいなのが難点ですが、裁判を受ける権利については「何人も」「奪われない」人権であると、明確に規定しております。
東日本入管センターの入国警備官 HC050 はウソをつき、その結果、鈴木さんは裁判を取り下げました。入管は、憲法によって保障された「裁判を受ける権利」を不当に侵害したことになります。したがって、このたびの鈴木さんの帰国、入管側から言えば退去強制令の執行は、現行の法制度に照らしてさえ正当性がなく、入管による違法行為と言うべきです。
法務省のサイトの「入国警備官採用試験」というページには、入国警備官の仕事が「日本の安全を守る重要な使命」だと紹介され、つぎのように書かれています。
国際交流の活性化の中で,世界各国から多くの人々が日々我が国を訪れています。その目的はさまざまですが,中には観光などの目的を装って入国し,犯罪に走る外国人や、不法就労を行う外国人もいます。
入国警備官は,これら法律に違反する外国人に対して厳正に対処し,日本の安全と国民生活を守り社会秩序を維持するという重要な使命を担っています。
まるで、在留や就労の資格のない外国人の一部が「日本の安全と国民生活」「社会秩序」への脅威になっているかのような書きぶりですが、司法制度をふみにじり、平気でウソをつき、社会秩序を破壊しているのはいったいどちらでしょうか?
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このように入管は、鈴木さんがおっしゃるように「外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄して」帰国へと追いこもうとします。
ウソをつくということも、入管組織内では必要な手段とみなされているフシがあります。たとえば、日本国籍者や永住者との結婚を理由に在留資格を申請している外国人を帰国に追いこむために、その夫や妻に本人のネガティブな情報やウソをふきこむといった事例も、よく聞きます。「あなたの夫(妻)は浮気をしている」あるいは「財産めあてであなたに近づいた」など。そう言って、カップルをひき裂き、「帰国するしかない」と思わせようとするわけです。
また、鈴木さんが報告しているように、収容者にたいする恐喝。複数の収容者・収容経験者たちが口をそろえて言うには「威圧的な態度をとる職員と、いっけんやさしそうな職員が、役割分担をして収容者を帰国させようと圧力をかけてくる」とのことです。
これは、テレビの刑事ドラマでしばしば描かれている取り調べのやり口に似ていますね。まず、いかにも暴力的な若い刑事が容疑者をなぐったり、暴言をはいたりして、おどす。つぎに、温厚で年輩の刑事がカツ丼かなにかをもってきて「おふくろさんに心配かけるなよ」などと言って容疑者をおとしにかかる。この人のよさそうな年輩刑事は、やさしそうにみえても、それは容疑者に「自白」を強要するために暴力的な刑事と役割分担しているにすぎません。
こういう安っぽくて下品な刑事ドラマと同様の手法を入管が採用していることは、鈴木さんの報告からもみてとることができます。一方では HC050 が「これで帰らなかったらもう二度と帰れないぞ!」などとどなり、恐喝する。他方で、HC012 がわざとらしい声と顔で「どうかしましたか?」などと言ってあらわれる。このように、こわもての職員とやさしそうな職員がチームをくんでいるという話は、他の収容者などからもしばしば指摘されます。
ウソや暴言にくわえて、硬軟とりまぜた圧力。入管は組織的にこうした暴力をひとりひとりの収容者に日々くわえて、帰国への「同意」をさせようとします。これが退去強制の執行の実態にほかなりません。
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鈴木さんは、「帰国」してブラジルですでにあたらしい生活をはじめています。しかし、日本の入管で見聞きしたさまざまな人権侵害・外国人差別の実態を公開し、告発していくつもりだとおっしゃっています。
かれは、収容されているあいだも、国籍や立場のさまざまな他の収容者たちのための助力・助言を精力的におこない、それゆえ信望をあつめておりました。面会におとずれる支援者にたいしても、「自分のことよりも、ほかの罪のない外国人を入管がいじめていることが許せないし、支援してあげてください」といつもおっしゃっていました。
鈴木さんは、いまも仮放免者の会の大切な仲間であります。外国人差別をなくすために今後とも鈴木さんと連携していきます。
Friday, September 9, 2011
【転載】今再びの牛久ハンガーストライキ
入管の収容施設である東日本入管センターの処遇と収容者のハンガーストライキについて、きょう発売の『週刊金曜日』(862号)に読者からの投書がのっています。以下、転載します。
なお、 8月22日にはじめられた7Aブロックのハンストは、29日にいったん解除されています。ハンスト解除までの経緯については、以下にリンクした記事を参照してください。
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なお、 8月22日にはじめられた7Aブロックのハンストは、29日にいったん解除されています。ハンスト解除までの経緯については、以下にリンクした記事を参照してください。
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【転載】今再びの牛久ハンガーストライキ
8月22日より、現時点で1週間以上にわたり茨城県牛久市の「東日本入国管理センター」において、昨年5月のハンガーストライキに続いて、外国人被収容者33人による無期限のハンガーストライキが行われている。
昨年も同様だったが、被収容者たちは、再収容の問題、半年以上の長期収容、仮放免の申請から審査結果が出るまで3ヶ月もかかる例があること、仮放免時の保証金が依然高額であり、それを納付できず、ようやく決まった仮放免が取り消しになる例が続発していること、共用廊下の窓が、「嵌め殺し」になっていて外の景色が全く見えないこと、依然として改善されない医療の問題、食事の問題などを入管当局に要求したが何らの回答もなかったことから必死の思いでハンストに決起した。
以上の要求は、全て昨年のハンスト時に参加者全員が入管に要求したものであり、これらの問題が依然として入管が誠意を持って応えないために、喫緊の課題として浮かび上がっていることを明白に示している。
そもそも、入管は、東日本入国管理センターだけで、200人以上収容されている難民・移民を中心とする被収容外国人に対し、正面から向き合おうとせず法務省の入管政策そのまま、劣悪な状況の中に外国人を放置してきた。戦後直後にも遡る入管政策の下に、「傲慢な」日本人が「恣意的に」外国人政策を行ってきたのが現実である。この法務省の根本的な外国人差別政策が変わらない限り、今回のハンスト参加者が最低限の要求として、特に要求している大震災以後極端に改悪された食事の改善を始めとする諸政策は変わる事がないだろう。入管当局の猛省を強く求めたい。
「牛久入管収容所問題を考える会」 増田博光
Thursday, September 1, 2011
「外国人をイジメるのが楽しい」(入管職員CH115の発言)
東日本入管センターに収容されている趙星晨(チョウ シンチェン)さんから、意見書をあずかりました。インターネットで公開してほしいとのご依頼でしたので、ここにその全文を公開します。職員の収容者にたいする差別的・侮蔑的な言動を告発する内容で、PRAJ(仮放免者の会)、SYI(収容者友人有志一同)、BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)あてに書かれております。
趙さんは、以前、わたしたちに入管による人権侵害の実態を報告・告発する文書を寄せてくださった鈴木啓三ロベルトさんの友人でもあります。
なお、鈴木さんからは、もう1通、入管批判の文書をあずかっております。これも近日中にこのブログで公開する予定です。
では、まず趙星晨さんの意見書をお読みください。
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外国人保護団体
PRAJ: 団体長殿
SYI: 団体長殿
BOND: 団体長殿
私は中国籍の趙星晨(チョウ シンチェン)と申します。私は、鈴木啓三ロベルトさんから、皆様の多大なご活動を聞きました。私も心から賛同致しました。
何回かに渡って意見書をインターネットに公開をしましたことを存じております。前回、鈴木さんの意見書を読ませていただきました。自分も是非自分の意見書をネットに公開していただきたいと思ってます。
つきましては、2011年8月4日、午後10時頃、東日本入国管理センターの担当者CH115番は、私に対して、外国人をイジメるのが楽しい、とくにチョウさんをイジメるのが楽しいとはっきり言ったのです。私は中国籍であり収容者でもあります。担当の職員からこの様なことをなぜ言わなければならないのか、すごく怒りを持っています。この担当者(CH115)の発言は、私と同室に居る、ブラジル国籍の鈴木啓三ロベルトさんや、又、ラオス国籍のサイペンシモンコンサオーさんもはっきりと担当者(CH115)が発言した所、彼ら二人は、はっきりと、聞いていたのです。ですから、担当者(CH115)の発言は間違いなくされたものであります。
私は、外国人として、このような発言をされたことにより、今現在、心がひどく傷付けられています。又、私だけではなく、同室に居る皆も大変な不愉快で、私のブロック全体がそう思ってます。私と同じ気持ちで日々を過ごしています。
これは、私だけの問題ではありません。この東日本入国管理センターに収容された外国人を差別した行為で、現在に至るまで、何の謝罪もありません。自分としては、誠に許す事が難しいことと存じます。
この様な行為は法務省の管理下にある東日本入国管理センターで起きた事は、全く信じ難い事実であり、又、人間性が欠落しています。誠に遺憾であり、許し難い行為であると存じます。今なお憤りを感じずには、おられません。私はこのような発言された担当者(CH115)に対し、一生心から許すことが出きないと存じます。
私といたしましては、すべての外国人に書面にて、謝罪文を提出すべきと存じます。これは、公務員としてではなく、一人の人間として、やらなければならない事であると思います。
彼(CH115)がやった事は、誰が考えても、人種差別の行為である。これは明らかに大変な問題であります。法務省の管理の下でこの不祥事が黙認されないことを、心から、信じたいと思います。又、このような不祥事を、しかるべきの対応をとっていただきたいと存じます。
その又、次の当直日、又、CH115が、私の薬の使い方に対しバカと言われました。私といたしましては、この担当者(CH115)の発言は、ぼう言であり、公務員としては、あるまじき発言と存じます。又、2回連続され、本当に心に怒りが溜っております。
私と致しましては、誠に許し難い発言であり、外国人を差別していると強く感じました。誠に遺憾であり、私としましては、断じて許しません。
私は、8月9日診察を希望しましたが、その日私は、診察をしっかりと受けました。同室のサイペンシモンコンサオーさんは、診察を受れなく、看護師に呼び出され、サイペンシさんに対し、医師のH先生が休み中と言われまして、断られました。その後、サイペンシさんは、夜寝れず、苦しんでおります。私は、受けたのに、サイペンシさんは受けられないのか、不審です。これは、あきらかに、入管は、私たちにうそをついています。本当に許せることではありませんと思っています。
私が書いた事は、すべて事実であります。ぜひインターネットに公開をしていただきたいです。全国の外国人に知って欲しいです。
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【補足】
以下、趙星晨さんの意見書について、いくつか補足説明などをします。
まず、「CH115」というのは、問題の担当職員のID番号です。収容者と直接せっする入国警備官は、名札をつけずに、かわりに、こうしたID番号をしるしたプレートを首からさげています。警備官のなかには、この番号のプレートすら、上着やシャツのなかに隠しているひともよくいます。収容者、あるいは面会におとずれるその家族や支援者にID番号を知られるのが、よほど後ろめたいのでしょうか。
番号すら見えないようにかくすという一部職員の行為の意味を考えると、入管という組織(職員にとっての職場)の荒廃ぶりを想像せずにはいられません。もしかりに、ほかの役所と同様に、入国警備官が名札をつけることを義務づけられており、その名札を収容者や面会者に見られたくないというのであれば、まだ理解はできます。在留資格のない外国人を収容し、国籍国へと送還するという、かれら・かのじょらの仕事は、いわば「うらみを買う」という可能性を排除しきれないものだろうからです。
ところが、「名前」ではなく、「番号」をかくすということになると、その意味あいはかわってくるようにおもいます。ID番号から職員個人の名前を容易に特定することができるのは、法務省という組織の内部にいる人間だけです。したがって、かれ・かのじょがおそれているのは、「自分の言動について、収容者や面会者から、上司に報告されること」なのだろうと推測できます。
もちろん、入管収容施設内での人権侵害の責任は、それぞれの収容施設および法務省全体に(もっといえば、現在の日本国の入国管理制度をさまざまなかたちでささえている者たちそれぞれにも)あります。ところが、IDプレートをかくす職員たちは、職務中のじぶんの言動について告発・非難を受けたときに、上司や組織がその負うべき責任を負わずに逃げ出すことを予想しているのではないでしょうか。いわば、自分たちは「現場」のいわば「にくまれ役」を担いながらも、いざというときには上司や組織から「トカゲのしっぽ」のように切り捨てられる存在である、と。
すくなくとも、現場の警備官の一部がID番号を見られないようにしながら仕事をしていることに、上司や組織を信頼しきれないという心情をよみとることはできるようにおもいます。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、趙さんが報告しているCH115による「外国人をイジメるのが楽しい」という発言ついては、わたしたちも複数の収容者から、たしかな事実であるとの証言をえています。当然ながら、CH115の責任を追及していく必要があります。
同時に、こうした暴言やおなじCH115による「バカ」という発言、みえすいたウソを言ってはばからない看護師のふるまいには、かれとかのじょ個人の資質や性格には還元できない、東日本入国管理センター全体の体質が背景にあると考えざるをえません。CH115にしても、面会におとずれる日本人支援者などにたいしては、面とむかっての「バカ」などという発言は、さすがにひかえるのではないでしょうか。そうだとすれば、「収容者にたいしては公然と侮辱しても許容される」という差別意識、見くだした意識が、CH115のみならず、かれのまわりの同僚たちにも共有されているということでしょう。
したがって、東日本入管センターには、CH115はもちろんのこと、所長からも、趙さんに誠意をもって謝罪するよう、わたしたちとしても求めていきます。
また、意見書で趙さんがおっしゃっているように、CH115の「外国人をイジメるのが楽しい」という暴言は、趙さんのみならず、東日本入国管理センターに収容されているすべての「外国人」、また今後あらたに収容されるすべての「外国人」むけられたものと言えます。しかも、こうした外国人にたいする虐待の意思を公然と表明するような行為が、組織のなかで黙認されつづけるのだとすれば、それはすべての収容者にとっての脅威にほかなりません。
したがって、東日本入管センターには、つぎの2点ももとめていきます。
ところで、 趙さんの意見書中の「医者のH先生」は、原文では実名が明記されていましたが、公表にあたってイニシャル表記にあらためました。
この「H先生」についても、わたしたちは非常に問題があると認識しております。東日本入管センターの収容者や収容経験者に「収容中の医療はどうでしたか?」と聞くと、ほとんど例外なく、みなさん「H先生」のさまざまなおどろくべき言動をまっさきにお話ししてくれます。医師としての診療技術のみならず、医療従事者としての倫理をうたがわざるをえないような証言を多数すでにえております。
今後も改善がみられないようであれば、このブログで「H先生特集」をくむことも検討しているところです。
趙さんは、以前、わたしたちに入管による人権侵害の実態を報告・告発する文書を寄せてくださった鈴木啓三ロベルトさんの友人でもあります。
なお、鈴木さんからは、もう1通、入管批判の文書をあずかっております。これも近日中にこのブログで公開する予定です。
では、まず趙星晨さんの意見書をお読みください。
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意見書
外国人保護団体
PRAJ: 団体長殿
SYI: 団体長殿
BOND: 団体長殿
私は中国籍の趙星晨(チョウ シンチェン)と申します。私は、鈴木啓三ロベルトさんから、皆様の多大なご活動を聞きました。私も心から賛同致しました。
何回かに渡って意見書をインターネットに公開をしましたことを存じております。前回、鈴木さんの意見書を読ませていただきました。自分も是非自分の意見書をネットに公開していただきたいと思ってます。
つきましては、2011年8月4日、午後10時頃、東日本入国管理センターの担当者CH115番は、私に対して、外国人をイジメるのが楽しい、とくにチョウさんをイジメるのが楽しいとはっきり言ったのです。私は中国籍であり収容者でもあります。担当の職員からこの様なことをなぜ言わなければならないのか、すごく怒りを持っています。この担当者(CH115)の発言は、私と同室に居る、ブラジル国籍の鈴木啓三ロベルトさんや、又、ラオス国籍のサイペンシモンコンサオーさんもはっきりと担当者(CH115)が発言した所、彼ら二人は、はっきりと、聞いていたのです。ですから、担当者(CH115)の発言は間違いなくされたものであります。
私は、外国人として、このような発言をされたことにより、今現在、心がひどく傷付けられています。又、私だけではなく、同室に居る皆も大変な不愉快で、私のブロック全体がそう思ってます。私と同じ気持ちで日々を過ごしています。
これは、私だけの問題ではありません。この東日本入国管理センターに収容された外国人を差別した行為で、現在に至るまで、何の謝罪もありません。自分としては、誠に許す事が難しいことと存じます。
この様な行為は法務省の管理下にある東日本入国管理センターで起きた事は、全く信じ難い事実であり、又、人間性が欠落しています。誠に遺憾であり、許し難い行為であると存じます。今なお憤りを感じずには、おられません。私はこのような発言された担当者(CH115)に対し、一生心から許すことが出きないと存じます。
私といたしましては、すべての外国人に書面にて、謝罪文を提出すべきと存じます。これは、公務員としてではなく、一人の人間として、やらなければならない事であると思います。
彼(CH115)がやった事は、誰が考えても、人種差別の行為である。これは明らかに大変な問題であります。法務省の管理の下でこの不祥事が黙認されないことを、心から、信じたいと思います。又、このような不祥事を、しかるべきの対応をとっていただきたいと存じます。
その又、次の当直日、又、CH115が、私の薬の使い方に対しバカと言われました。私といたしましては、この担当者(CH115)の発言は、ぼう言であり、公務員としては、あるまじき発言と存じます。又、2回連続され、本当に心に怒りが溜っております。
私と致しましては、誠に許し難い発言であり、外国人を差別していると強く感じました。誠に遺憾であり、私としましては、断じて許しません。
私は、8月9日診察を希望しましたが、その日私は、診察をしっかりと受けました。同室のサイペンシモンコンサオーさんは、診察を受れなく、看護師に呼び出され、サイペンシさんに対し、医師のH先生が休み中と言われまして、断られました。その後、サイペンシさんは、夜寝れず、苦しんでおります。私は、受けたのに、サイペンシさんは受けられないのか、不審です。これは、あきらかに、入管は、私たちにうそをついています。本当に許せることではありませんと思っています。
私が書いた事は、すべて事実であります。ぜひインターネットに公開をしていただきたいです。全国の外国人に知って欲しいです。
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【補足】
以下、趙星晨さんの意見書について、いくつか補足説明などをします。
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まず、「CH115」というのは、問題の担当職員のID番号です。収容者と直接せっする入国警備官は、名札をつけずに、かわりに、こうしたID番号をしるしたプレートを首からさげています。警備官のなかには、この番号のプレートすら、上着やシャツのなかに隠しているひともよくいます。収容者、あるいは面会におとずれるその家族や支援者にID番号を知られるのが、よほど後ろめたいのでしょうか。
番号すら見えないようにかくすという一部職員の行為の意味を考えると、入管という組織(職員にとっての職場)の荒廃ぶりを想像せずにはいられません。もしかりに、ほかの役所と同様に、入国警備官が名札をつけることを義務づけられており、その名札を収容者や面会者に見られたくないというのであれば、まだ理解はできます。在留資格のない外国人を収容し、国籍国へと送還するという、かれら・かのじょらの仕事は、いわば「うらみを買う」という可能性を排除しきれないものだろうからです。
ところが、「名前」ではなく、「番号」をかくすということになると、その意味あいはかわってくるようにおもいます。ID番号から職員個人の名前を容易に特定することができるのは、法務省という組織の内部にいる人間だけです。したがって、かれ・かのじょがおそれているのは、「自分の言動について、収容者や面会者から、上司に報告されること」なのだろうと推測できます。
もちろん、入管収容施設内での人権侵害の責任は、それぞれの収容施設および法務省全体に(もっといえば、現在の日本国の入国管理制度をさまざまなかたちでささえている者たちそれぞれにも)あります。ところが、IDプレートをかくす職員たちは、職務中のじぶんの言動について告発・非難を受けたときに、上司や組織がその負うべき責任を負わずに逃げ出すことを予想しているのではないでしょうか。いわば、自分たちは「現場」のいわば「にくまれ役」を担いながらも、いざというときには上司や組織から「トカゲのしっぽ」のように切り捨てられる存在である、と。
すくなくとも、現場の警備官の一部がID番号を見られないようにしながら仕事をしていることに、上司や組織を信頼しきれないという心情をよみとることはできるようにおもいます。
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さて、趙さんが報告しているCH115による「外国人をイジメるのが楽しい」という発言ついては、わたしたちも複数の収容者から、たしかな事実であるとの証言をえています。当然ながら、CH115の責任を追及していく必要があります。
同時に、こうした暴言やおなじCH115による「バカ」という発言、みえすいたウソを言ってはばからない看護師のふるまいには、かれとかのじょ個人の資質や性格には還元できない、東日本入国管理センター全体の体質が背景にあると考えざるをえません。CH115にしても、面会におとずれる日本人支援者などにたいしては、面とむかっての「バカ」などという発言は、さすがにひかえるのではないでしょうか。そうだとすれば、「収容者にたいしては公然と侮辱しても許容される」という差別意識、見くだした意識が、CH115のみならず、かれのまわりの同僚たちにも共有されているということでしょう。
したがって、東日本入管センターには、CH115はもちろんのこと、所長からも、趙さんに誠意をもって謝罪するよう、わたしたちとしても求めていきます。
また、意見書で趙さんがおっしゃっているように、CH115の「外国人をイジメるのが楽しい」という暴言は、趙さんのみならず、東日本入国管理センターに収容されているすべての「外国人」、また今後あらたに収容されるすべての「外国人」むけられたものと言えます。しかも、こうした外国人にたいする虐待の意思を公然と表明するような行為が、組織のなかで黙認されつづけるのだとすれば、それはすべての収容者にとっての脅威にほかなりません。
したがって、東日本入管センターには、つぎの2点ももとめていきます。
- CH115にたいして厳正な処分をくだすこと
- CH115にたいする処分内容と処分にいたった経緯(問題の暴言の内容もふくむ)を東日本入管センター内すべてのブロックに掲示し、すべての収容者に告知すること
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ところで、 趙さんの意見書中の「医者のH先生」は、原文では実名が明記されていましたが、公表にあたってイニシャル表記にあらためました。
この「H先生」についても、わたしたちは非常に問題があると認識しております。東日本入管センターの収容者や収容経験者に「収容中の医療はどうでしたか?」と聞くと、ほとんど例外なく、みなさん「H先生」のさまざまなおどろくべき言動をまっさきにお話ししてくれます。医師としての診療技術のみならず、医療従事者としての倫理をうたがわざるをえないような証言を多数すでにえております。
今後も改善がみられないようであれば、このブログで「H先生特集」をくむことも検討しているところです。