10月28日(月)、東京入管はわずか2週間前の10月16日に仮放免したばかりのAさん(50歳代のイラン国籍の難民申請者)を収容し、同日中に茨城県の東日本入国管理センターに移収しました。Aさんが、仮放免期間2週間での再収容というきわめて非人道的な仕打ちを受けるのは、この7月に続いて2度目のことになりますから、これはいわば「再々収容」ということになります。
しかも、Aさんは、7月22日に再収容されたのち、長期収容や、わずか2週間の仮放免からの再収容という入管の仕打ちに抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなっており、長期の収容とハンストによって衰弱した身体が回復していない状態でした。 今回の「再々収容」は、このような状態のAさんにとり、単に非人道的な仕打ちというにはとどまらない、残酷きわまりない虐待、拷問というべきものです。
Aさんについては、以下の3つの記事でもおなじ「Aさん」というイニシャル表記で紹介してきたところです。
- 長期収容への抗議を!(東日本入管でのハンストをめぐって) - 仮放免者の会(PRAJ)(2019年6月14日)
- 【抗議声明】入管による見せしめ・恫喝を目的とした再収容について - 仮放免者の会(PRAJ)(2019年7月29日)
- 東日本入管センターに抗議しました――仮放免2週間ののちの再収容について - 仮放免者の会(PRAJ)(2019年8月6日)
仮放免者であったAさんが2017年に入管に収容され、今回の再々収容にいたるまでの経緯を以下にまとめておきます。
Aさんは難民申請者であり、自身が難民であることの立証作業をする必要があることから2010年から仮放免許可を受けて関東地方で暮らしていた。
2017年2月に難民認定申請が却下されたことを理由に東京入管に収容されたが、帰国すれば迫害される危険性が解消されたわけでないので、ふたたび難民申請した。同年10月に東京入管から東日本入管センターに移収された。
2019年6月上旬、この時点でAさんは収容期間が2年4か月という超長期におよんでおり、これに抗議してハンストを開始。同年7月9日に仮放免された。
ところが、このわずか2週間後の7月22日、仮放免期間更新申請のために東京入管に出頭したが更新は許可されずに再収容され、ただちに東日本入管センターに移収された。
再収容後にもAさんは抗議のハンストをおこなった。
10月16日にふたたびの仮放免。ところが、10月28日に仮放免期間更新申請が許可されず、東京入管に再々収容され、ただちに東日本入管センターに移収された。
2年5ヶ月間の収容→仮放免→2週間後の再収容→3か月後に仮放免→2週間後に再収容、というのが、この2年8ヶ月あまりのAさんの経験してきたことです。このくり返しの収容は、きわめて不当なものです。
まず、入管法が規定する収容の目的から完全に逸脱しています。入管法が入管当局に収容を認めているのは、あくまでも強制送還が可能になるまでの身体拘束としてです(「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項)。Aさんは送還の禁じられた難民申請者であり、入管にとって送還の見込みが当面たたない人です。2年半をこえるAさんの収容期間の長さは、入管が送還の見込みがないにもかかわらず、不当にも収容継続に固執してきたことの証左でもあります。しかも、Aさんの場合、「逃亡のおそれ」がなく、したがって身体拘束の必要がないことはあきらかです。というのも、Aさんは仮放免されていた2010年から17年までの期間、入管の指示する1~2か月ごとの出頭日に欠かさず出頭していましたし、再(々)収容が予測された今年7月と10月にも「逃亡」することなく出頭し、その結果、収容されたのですから。
入管にとって収容の目的をはたせる見込みがなく、しかも「逃亡」しないとわかりきっている相手を医療もまともに受けられないような施設に閉じ込め、自由をうばいつづける必要がどこにあるのでしょうか?
Aさんにかぎらず、7月以降、東日本と大村の両入管センターでハンストをおこなって健康をそこなった被収容者について、入管は2週間ほどの短期間だけ仮放免したのち再収容するということをくりかえしています。これら一連の再収容は、被収容者の抗議をおさえこむための見せしめ・恫喝を意図したものとしか理解しようがありません。このように人間の身体を見せしめの道具としてもちい、人の生命と尊厳をもてあそぶやり方は、けっして許されるものではありません。
また、このくり返しの収容は、入管当局の意図はどうであれ、被収容者たちのハンストをあおり助長する結果になっています。長期収容とハンストで衰弱・疲弊し、心身がぼろぼろになった人をいったん仮放免しては短期間で再収容するということを入管はおこなっていますが、Aさんふくめこうして再収容された人の多くが、ふたたびハンストを再開する結果になっているのです。
ハンストを何度もくり返すのは、心身にきわめて負担が大きく、言うまでもなく生命を危険にさらすものです。ところが、入管はAさんに対し、まるで魚釣りの「キャッチ・アンド・リリース」のような仕打ちを、1度ならず2度までもおこないました。こうしたくり返しの収容が、現に被収容者による危険なハンストを助長しているという事実があるにもかかわらずです。
Aさんの再収容は、入管施設において今後死亡者がまた出かねない状況を入管みずからが選んで作っているという点で、人命軽視もはなはだしく、絶対に容認するわけにいきません。
東日本入管センターに対し、10月28日に再々収容した人をただちに仮放免するようになどと抗議・意見提示をおこなうよう、よびかけます。また、多くの報道関係者にぜひともこの問題を取材・報道していただくようお願いします。
抗議先
東日本入国管理センター(総務課)
電話:029-875-1291
FAX:029-830-9010
なお、今回の問題に関しては、抗議の声、批判的な意見があるということを入管の組織のなかで共有・検討してもらうことが重要だとおもいます。電話で対応する職員に対し「所長につたえてください」「抗議の内容を文書にして上に報告してください」などと要請するかたちで、抗議として十分意義があると考えています。
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