Wednesday, June 27, 2018

入管にとって長期収容の目的はなにか?


1.はじめに

 ひとつ前の記事で、大村入国管理センターに収容されている72名が連名で提出した要望書を紹介しました。


 この「要望書」では、入管施設における長期収容に関して、入管が公表しているパンフレットの文言、また、国連拷問禁止委員会の質問に対する日本政府の回答などが引用されています。また、「要望書」では、長期収容問題について、大村入管センターの被収容者たちの意見提示や要求に対して、入管側がどのように回答してきたのかということが、くわしく記録されています。

 今回のこの記事では、これらの資料にくわえ、法務省入国管理局長が入管センターおよび各地方局に出している通達の文書などを参照しながら、現在の収容長期化問題がどのようにして生じてきたのか、みていきたいと思います。

 収容長期化問題は、なによりもまず、それぞれの施設に収容されている人びとに対する人権侵害という観点から問題化しなければならないことは、言うまでもありません。入管施設における長期収容がなぜ問題なのかということについては、たとえば以下の記事などで述べてきました。


 今回の記事では少し角度をかえて、その収容長期化問題が、入管行政と現実のあいだの矛盾によって、あるいは入管行政そのもののはらんでいる矛盾によって生じていることを見ていきたいと思います。



2.収容長期化を回避するとした2010年法務省通達

 2009年から10年にかけて、現在と同様に長期収容と仮放免者の再収容が問題になっていました。収容が長期化するなか、東日本入国管理センターでは、2010年2月にブラジル人被収容者が、4月に韓国人被収容者が自殺するという事件がありました。また、3月には東京入管横浜支局から強制送還のために成田空港へと連行されたガーナ人男性が、職員による「制圧」の過程で死亡するという事件も起こりました。

 ところが入管の強制送還についてのこうした強硬方針は、被収容者たちの強力な抵抗をまねくことになりました。2010年の3月には西日本入管センター(2015年に閉鎖)で、5月には東日本入管センターで被収容者による大規模なハンガーストライキがおこなわれました。

 これらの事件が報道され、入管収容が社会問題化されるなかで、法務省入国管理局は、7月27日に「退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について」と題した通達を出しました。同月30日には、法務省入管はこの通達をふまえた同じ標題のプレスリリースを発表しています(注1)

 このプレスリリースで法務省入管は、「近年,種々の理由から,収容が長期化する被収容者が増加する傾向」にあることを認め、収容が長期化している被収容者について「入国者収容所長又は地方入国管理局主任審査官が,一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討すること」としました。その「検証・検討」の結果をふまえて、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこと」とするとしたのです。

 この後、入管の各収容施設において、あきらかに仮放免についての運用が変化しました。長期収容されていた人たちがつぎつぎと仮放免されていったのです。こうして収容を解かれた仮放免者が2010年10月に当事者団体として結成したのが、仮放免者の会です。

 仮放免者の会は、長期収容とともに再収容にも反対する取り組みをしてきました。会を結成した2010年は、収容されている仲間たちがつぎつぎと仮放免される一方で、せっかく仮放免されていた仲間たちが、難民申請の却下や行政訴訟の敗訴を契機につぎつぎと再収容されていきました。そうしたなかで、仮放免者の会は他の団体とも連携しながら、2011年2月に2.25デモ Stop “Re-Detention”! を、また同年4月には長期収容と再収容に反対する全国統一一斉面会をおこないました。

 こうした取り組みの過程で、東京入管は、それまでおこなっていた機械的な再収容をストップしました。従来、東京入管では、難民申請却下(難民不認定に対する異議申立棄却)や行政訴訟(退令取消訴訟等)の敗訴を契機として、機械的に(=例外なしに)仮放免者を再収容していました。この機械的な再収容は、2011年2月にいったんはおこなわれなくなりました。



3.退令仮放免者数の増加

 2010年から11年にかけて長期収容が社会問題化し、また仮放免者の再収容が大幅に減っていくなかで、以降、仮放免者数が増大していくことになります。下図のように、2009年に1336人だった退令仮放免者(退去強制令書を発付された仮放免者)は、2011年に2000人を超え、2013年以降は3000人台で推移するにいたっています。


 また、この間、法務省・入管当局は、収容の長期化について、これが回避すべき問題であるとの認識をくり返し公式に表明している点は重要です。たとえば、大村入管センター被収容者の「要望書」でも引用されている国連拷問禁止委員会への日本政府の回答は、その一例です。

 拷問禁止委員会の「申請が却下されたあるいは未決定の庇護申請者の収容の長さについての懸念に対処するためにとった措置につき説明されたい」との質問に対し、日本政府は2011年7月に以下のように回答しています。

 入管法上,難民認定申請中の者の送還は禁止されているところ,収容中の難民認定申請や,難民認定申請を繰り返し行う場合などにより,近年,収容が長期化する傾向にあることを踏まえて,2010年7月から,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過しても送還に至っていない被収容者については,仮放免の請求の有無にかかわらず,入国者収容所長又は主任審査官が一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討の上,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいることから,長期収容者は,減少傾向にある。

 国連機関に対する、この日本政府の回答が、さきにみた2010年7月の法務省入管による通達およびプレスリリースにもとづいたものであることは、あきらかでしょう。

 入管法上の収容の位置づけは、送還までの身柄の確保ということにすぎません (入管法第52条第5項)。したがって、収容期間が半年を超えたり、それどころか2年や3年超におよんだりすることを正当化できるような理屈は、入管当局にとってすら、見いだしようがないものなのです。




4.2015年通達と再収容・長期収容の急増

 入管当局は、収容の長期化は回避すべき問題であるという見解を公式には保持しています。それは、現在も変わりません。ただし、それはあくまでも表向き・公式上はそう表明しているということにすぎません。実際は、入管は仮放免申請の審査、また仮放免者の再収容に関して、運用を変化させました。

 2015年9月18日に法務省入管局長から「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題する通達が出されました。

 この通達は、長期収容はさまざまな問題を生じさせるとする見解は維持しつつも、退去強制令書を発付された仮放免者および被収容者に対してより厳しい対処をとることを通達したものです。通達は仮放免者について、次のように述べています。

 一方で、適正な仮放免の運用を担保するためには、今まで以上に仮放免中の動静を注視し、被退令仮放免者の生活状況等を常に把握する必要があり、仮放免許可条件違反、送還に支障がある事情の解消など仮放免理由の解消、不法就労事実の認知等、引き続き仮放免を継続することが適当でないことが判明した場合には、仮放免の取消し又は延長不許可として再収容し、仮放免の適正化を図るとともに、速やかな送還に向けて準備を進めることも必要です。

 ここで、法務省入管局長は、「仮放免中の動静を注視」するように指示していますが、これは要するに仮放免者の生活を監視せよということです。入国警備官が、仮放免者の届け出ている住居におもむいてその所在を確認したり、行動を監視したり、外出する仮放免者を尾行したり、といったことをするわけです。仮放免者に聞くと、とくに東京入管管内では、この時期から入管職員による「動静監視」が目に見えて強化されたようです。

 この2015年9月の通達が出て以降、仮放免者が再収容されるケースが次第に増えていきました。こうして頻繁におこなわれるようになった再収容がきわめて恣意的なものであることについては、以下の記事でくわしく述べたとおりです。


 通達が出た直後の10月1日から、全国の入管施設で一斉に、仮放免許可書に就労不可の記述を書き入れるようになりました。入管当局は、それまで仮放免者の就労について事実上黙認してきましたが、これを禁止するということを明示したわけです。以後、就労を理由とした再収容がおこなわれるようになりました。だれに危害をくわえているわけでもなく、自身や家族の生活のためにアルバイトに出かける仮放免者を、入管職員はわざわざ尾行して就労の事実をおさえ、「仮放免許可条件違反」であるとして再収容し始めたのです。

 また、上にリンクした記事でも述べたとおり、住居変更許可の申請が数日遅れたといった、以前であれば職員が口頭での注意にとどめていたような些末な「仮放免許可条件違反」を理由にした再収容も始まりました。

 さらに、難民申請の却下や行政訴訟の敗訴確定を契機とした再収容もひんぱんにおこなわれるようになりました。

 こうした一連の経緯からあきらかなのは、入管当局は、仮放免者数を減らしたいという明確な目的意識のもと、その手段として再収容をおこなっているということです。つまり、再収容によって仮放免者数を減らしたいということが入管の意図であって、就労や住所についての「仮放免許可条件違反」はそのための口実にすぎないのです。

 一方、この2015年通達は、仮放免の弾力的活用によって収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組むとした2010年7月の通達について「本通達をもって廃止」するとしています。

 こうして、入管は2015年通達をへて、再収容・長期収容を送還の手段として積極的にもちいる強硬方針へと運用を変化させました。



5.「仮放免者の逃亡・犯罪・就労」が問題?

 さて、大村入管センター被収容者による連名の「要望書」によると、大村の職員は「最近仮放免を得た者が逃亡したり、犯罪を犯したり、不法就労する者が沢山居るから、現在大村入管は仮放免を許可しなくなった」と説明しているとのことです。「仮放免を許可しなくなった」ということ、つまり入管が収容を長期化させている理由を、仮放免者の逃亡・犯罪・就労のためであるとしているのです。

 しかし、以上みてきたところからあきらかなように、この入管側の説明はウソと言ってよいものです。

 大村入管センターの複数の被収容者によると、2017年1月ごろから、重病人もしくは送還を受け入れて帰国準備を理由として認められた人以外には、仮放免で出所した人は1名だけだとのことです。難民申請をしていたり、あるいは家族が日本にいる等の理由で在留を希望しているひとの仮放免許可はほぼ皆無であるという状況が、1年以上にわたって続いているのです。つまり、犯罪歴のいっさいない人も、就労を理由に再収容されたのではない人も、仮放免が許可されずに長期間にわたり収容されているのです。

 東日本入管センターや東京入管、大阪入管においても、許可条件違反によって再収容された人、犯罪歴のある被収容者だけではなく、被収容者全体として収容期間が非常に長期化しています。仮放免者の逃亡・犯罪・就労を理由に仮放免審査を厳しくしているという入管の説明は、事実と照らし合わせて整合性を欠くものです。

 また、「逃亡」に関しては、こうした入管の説明は、原因と結果をすりかえています。入管局が求める定期的な出頭をせずに「逃亡」する仮放免者が増加しているから、仮放免審査が厳しくなっているのだと入管は説明しているようですが、事実はその逆です。再収容の増加と度を越した長期収容が、「逃亡」の増加を生んでいるのです。

 同様にして、許可条件に違反して就労する仮放免者がいるから仮放免審査を厳しくしているのだという説明も、意図的に事実を誤認させようとするものです。先述の2015年9月の法務省入管局長通達で再収容をふくむ強硬な方針が示され、これに応じて各入管局が再収容する基準を下げる運用を始めた、というのが順序です。つまり、従来であれば再収容しなかったケースを再収容するようになったということであって、それまで黙認していた仮放免者の就労や、以前はとりたてて問題視していなかった些末な「違反」(転居とその許可申請が前後した、といった「違反」)を、再収容すべき理由としてあらたにみいだしたということにすぎません。入管は許可条件違反がみられるから再収容をさかんにおこなうようになったのではありません。再収容件数を増加させるために、許可条件違反をきびしく問うようになった(=再収容の基準を変更した)のです。



6.「脅威」の創出

 大村センターの職員は、「入管が仮放免制度を厳しくしているのは、2020年のオリンピック・パラリンピックを控え日本政府は、より安全・安心社会を実現するためである」とも説明しているようです。他の施設に収容されている人からも、同様の説明を現場の職員から聞かされたという話を聞きます。

 収容が長期化していることについての、こうした治安にからめた説明は、現場の職員が勝手にしゃべっているというものではなく、法務省からの指示にもとづいているようです。2016年4月7日に、法務省入管局長は、入国者収容所長と地方入管局長にあてて、「安全・安心な社会の実現のための取組について」と題した通知をおこないます。

 この通知は、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックにふれたうえで、以下のように述べています。

安全・安心な社会の実現のためには,国内の安心を確保することが重要な要素となるところ,近年増加傾向にある不法残留者及び偽装滞在者(以下「不法滞在者等」という。)のほか,退去強制令書が発付されても送還を忌避する外国人(以下「送還忌避者」という。)など我が国社会に不安を与える外国人を大幅に縮減することは,円滑な出入国審査,厳格な水際対策,適正な難民認定審査などとともに,当局にとっての喫緊の課題となっています。

 この通知は、長期の収容や再収容について直接言及しているわけではありませんが、未摘発のいわゆる「不法滞在者」とともに、「送還忌避者」が「我が国社会に不安を与える外国人」と位置づけられている点に注意が必要です。「送還忌避者」とは、具体的には、退令仮放免者と、退去命令を受けながら在留を求めている被収容者を指します。こうした存在を、入管当局は「我が国社会」をおびやかす脅威であると決めつけ、「大幅に縮減する」べき対象と位置づけているのです。

 「送還忌避者」が送還を忌避しているのはたしかに事実でしょう。しかし、送還を忌避することと、「安全・安心な社会」をおびやかすということは、まったく次元の異なる話です。この両者を混同させて、あたかも「送還忌避者」が安全をおびやかす存在であるかのように言い立てるのは、差別的な偏見を煽動する行為であるというべきです。上の通知をとおしておこなわれているのは、差別的な偏見をあおることによって、ある社会的なカテゴリー(この場合は「送還忌避者」)を「脅威」に仕立て上げるということにほかなりません。

 このように、差別煽動を通して「脅威」を創出することは、国家がみずからの暴力を正当化しようとするさいの古典的な手法であります。国家機関みずからが、こうした差別的な偏見にまみれたプロパガンダによって、「送還忌避者」に対する長期収容・再収容を正当化しようとしているわけです。まさにこの事実が、長期収容・再収容の正当性のなさを示していると言えるのではないでしょうか。



7.収容長期化は入管にとってすら正当化できない

 以上みてきたように、入管は、一方では収容の長期化は回避すべき問題であるとの見解を保持しつつ、他方でとくに2015年以降、収容の長期化をおしすすめる運用を現実にはとってきました。

 入管法上、収容の目的は、送還が可能になるまでのあいだの身柄の確保にすぎません。送還の見込みがないのに収容するのは、いたずらに人を監禁して自由をうばい、無意味に苦痛を与えることにしかなりません。収容が長期化するという事態は、結果的に送還の見込みがないにもかかわらず収容を継続してしまっているということになりますから、その収容には正当性がないということを意味するのです。

 現に大村入管センターふくめ各地の入管施設において収容のいちじるしい長期化が生じているわけですが、入管当局にとって、長期収容の目的とはいったい何なのでしょうか? なぜ、入管は長期収容をおこなっているのでしょうか?

 入管当局は、東京オリンピック・パラリンピックにむけての治安対策であるかのように言いますが、端的に言ってこれがウソであることはすでにみてきたとおりです。仮放免者が仮放免許可条件に違反する就労などの行為をおこなうから仮放免審査が厳しくなっているのだといった説明も、すでに否定したとおりです。

 長期収容は、入管にとってすらその正当性を主張しうる根拠をみいだせないものなのです。その正当性を主張できないからこそ、仮放免者は「我が国社会に不安を与える外国人」であるなどというプロパガンダを発して、その拘禁を正当化しようとしているのでしょう。

 入管は収容が長期化している事実をできるだけ小さく見せようという、ごまかしすらおこなっています。長期収容問題を報じた『毎日新聞』の記事から引用します(注2)

法務省によると、17年12月19日時点で、全国の施設には1386人が収容され、長期収容者は36.8%の510人。16年末は収容者1133人のうち長期は313人で27.6%だった。

 ここで「長期収容」といわれているのは、6カ月以上の収容です。これについては後日、あらためて検証した記事を公開しますが、ここでの510人(36.8%)という数字は、収容期間が6カ月以上の被収容者を少なくみせようという意図のもと、特殊なしかたで算出された数字です。

 入管は複数の収容施設をもっており、その施設間での被収容者の「移収」をしばしばおこなっています。たとえば、ある被収容者が、東京入管に9ヵ月間収容されたあと、東日本入管センターに移収され、そこに2ヶ月間収容されているとします。この場合、この人は通算で11ヶ月間収容されていることになります。

 このように通算での収容期間で計算した場合、昨年末の時点で6カ月以上収容されている人が510人(36.8%)しかいないということは、面会等をつうじて私たちが各施設の被収容者たちから把握している実態からみて、ありえません。もっと大きな数字になるはずです。「510人(36.8%)」という法務省の発表している数字は、移収によって収容期間がキャンセルされる計算方法でみちびきだされたものと考えられます。つまり、さきにあげた通算で11ヶ月間収容されている人の例でいえば、移収後の「2ヶ月」だけが収容期間としてカウントされるような計算方法をとっているのだろうということです。この点は、後日あらためて検証したものを公表します。

 上の毎日新聞が報じているデータは、法務省がこれに先立って国会議員に報告している資料にのっているものとも同じものです。つまり、法務省は、収容長期化の実態について、新聞記者と国会に対し、問題を小さくみせようとして操作したデータを報告した、ということになります。こういったことからも、収容の長期化は、入管当局にとってすら、その実態をできるだけ隠しておきたい問題であり、正当化のしようのないものなのだということがわかります。



8.結語

 とりわけ2015年以降について、入管が収容長期化をおしすすめている目的は何なのか、という問いにもどりましょう。

 オリンピック・パラリンピックや治安対策といった論点は、本質ではありません。

 入管が長期収容、あるいは再収容をつうじておこなおうとしているのは、仮放免者をはじめとする「送還忌避者」を送還によって減らす、ということにほかなりません。長期間にわたって無期限に監禁することで心身を痛めつけ、在留を断念させて送還に追い込む、ということです。これこそが、入管が収容を長期化させている本当のねらいにほかなりません。

 このように身もふたもない、正当化のしようもない目的によって長期収容がおこなわれているからこそ、入管当局は、治安対策といったニセの論点を煙幕のように提示したり、収容の長期化を小さくみせるような操作をおこなったりしているのだと言えます。

 入管行政にたずさわっている人もふくめ、私たちに突きつけられている論点は、単純なものです。すなわち、長期収容・再収容によって他者の心身に打撃を与えるという暴力的な方法を、送還に同意させる手段としてもちいることについて、私たちはこれを許すのかどうか、ということです。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


《注》

注1 法務省入管によるプレスリリースの全文は以下のとおり。

退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について
法務省では,退去強制令書が発付されてから相当の期間収容が継続している被収容者について,今後,一定期間ごとにその仮放免の必要性,相当性を検証・検討し,個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用しつつ,より一層適正な退去強制手続の実施に努めていくこととしました。
 出入国管理及び難民認定法においては,退去強制令書が発付された者について,直ちに本邦外に送還することができないときは,送還のための身柄の確保及び在留活動を禁止することを目的として,送還可能のときまで収容することができるとされており,その一方で,身柄の拘束をいったん解く必要が生じた場合に備えて,仮放免制度が設けられています。
 その仮放免については,これまでも,各地方入国管理官署において適正な運用に努めてきましたが,近年,種々の理由から,収容が長期化する被収容者が増加する傾向にあります。
 そのため,今般,仮放免制度が設けられている趣旨にかんがみ,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過してもなお送還に至っていない被収容者については,仮放免申請の有無にかかわらず,入国者収容所長又は地方入国管理局主任審査官が,一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討することとしました。
 そして,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこととし,より一層の適正な退去強制手続の実施に努めてまいります。
平成22年7月30日    法務省入国管理局


注2 「入管施設:不法滞在、長期収容急増 国、「仮放免」抑制」 - 毎日新聞 2018年5月21日 07時00分(最終更新 5月21日 07時00分)

Tuesday, June 26, 2018

大村入管被収容者から仮放免を求める「要望書」

 各地の入管の収容施設において、収容の長期化が問題になっています。

 長崎県大村市にある大村入国管理センターでも、収容が長期化しており、被収容者から同センターあてに再三にわたって連名での要求書が出されていることは、以下の記事で紹介したとおりです。




 被収容者たちによると、大村センターでの仮放免審査は昨年の春ごろから極端に厳しくなっており、以来、数人の重病人をのぞいては、難民申請者など日本での在留を望んでいるひとの仮放免許可は1名にしか出ていないとのことです。

 大村センターでの収容長期化問題については、6月21日に九州弁護士会連合会が理事長声明を出しています。




 大村の被収容者たちは、5月1日に72名の連名で長期収容に抗議する「要望書」を提出しました。この「要望書」の全文を、以下に掲載します(「要望書」本文では、「4月20日」との日付が付されていますが、5月1日に収容所内に設置された意見箱に投函したとのことです)。

 なお、以下のリンク先の記事では、この「要望書」にもふれながら、とくに2015年以降に顕著になった全国の入管施設における長期収容問題がどのようにして生じてきたのか、また、入管のそのねらいは何なのか、解説しました。こちらもあわせてごらんください。





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平成30年4月20日

入国者収容所大村入国管理センター所長殿

全ブロックの被収容者

要 望 書

 この度、所長様には、大村入国管理センターに所長として就任になされましたこと、おめでとうございます。お目に掛かったこともございませんのに一筆差し上げる失礼をご容赦下さい。

 さて、被収容者に対する収容期間が長期的に継続されていること、いわゆる収容長期化に伴い、現在収容所内における被収容者の生活の環境改善の需要が高まっています。取り分け、この外界と完全に隔離された密閉環境の下での長期収容生活ですから、日々私達の心身に付き纏われるストレスは、大変過酷で本当に耐え難いものです。そのお蔭で現在、1年以上の長期収容者の殆どは、次々と拘禁症状を発症しています。主に、目まいや食欲不振や不眠などといった症状が典型的ですが、中には、バセドウ病という専門的かつ長期の治療が必要になる程、重病を発症している者も居ます。長期収容・拘禁の過酷なストレスによって持病のある者には、その症状が悪化し新たな病気が発症することに繋がります。長期収容・拘禁のみならず24時間体制の下で監禁・監視されることによって、月日と共に私達の心身が衰弱され、元々はとても健康だった人間であっても、どんどん病気になり苦しい、辛い長期収容生活が強いられているのは現状です。この収容所において、私たちが病気になったところで、たとえ薬が与えられても、治療を受けても、この収容・拘禁状態が継続されているままのでは、どんな薬でも効き目がありません。つまり、収容・拘禁される状態のままでは、治療には意味がないのです。この観点からも一日も早く長期収容の中止や仮放免制度の緩和が必要です。

 さらに、近年大村入管も含めて日本全国の入管収容施設で被収容者が病死している事件が多数起こっていることも考慮すれば、大村入管には、医療体制を含め、入管運用方針そのもの全体の改善も必要になります。言うまでもない話ですが、現在貴センターにおいて身柄が拘束されている100名以上の私たちの中には、収容期間が2年から3年の者は、大半を占めており、その中、収容期間が3年半を越えている者も居るのです。それにも拘らず、私たちの仮放免請求に対する許否の判断基準が大変厳しく設けていて、昨年(2017年)では、仮放免が許可されたケースは、殆どありません。このような事態は、拷問や人権侵害とも言うべき異常なものでありながら未だに続いており、改善される目処が立っていません。上記のように、これまで貴センターが行なって来たその運用方針は、この上なく非人道的なものであるとして、私たちは納得できません。一刻も早く改善して頂きたいと望んでおります。

 長々しい文書になってしまいますが、この異常事態・この現状を早めに改善して頂くためにも下記の事実に基づいた記述をご参考になって頂きたいと思います。



1.「収容中の被収容者については、仮放免の請求の有無にかかわらず、入国者収容所長又は主任審査官が一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討の上、その結果を踏まえ、被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し、収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいる」。上記1の内容は、これまで法務省入国管理局が毎年ごとにパンフレット等を用いて一般世間に対し、声明を出している、そのパンフレット等から引用したものです。

2.「入管法では、退去強制令書の発付を受けた外国人を直ちに送還できないときは、その外国人の身柄の拘束を一時的に解く仮放免という制度を規定しており、被収容者等から仮放免の申請があった場合には、被収容者の情状及び仮放免の申請の理由となる証拠並びにその者の性格・資産等を考慮し、その許否を決定することとされている」。

3.「入管法上、退去強制手続きは外国人の身柄を拘束し進めることとされているところ、退去強制令書を発付された者で長期に渡っても送還できない場合や収容期間の長短を問わず、年齢、健康状態、その他の人道上配慮を要する場合には、個々の事案に応じて仮放免制度を弾力的に運用し、一次身柄を解く措置をとっており、収容が長期間に渡らないように配慮している」。上記の2と3の内容は、これまで日本政府が拷問禁止委員会の質問に対し、回答した資料等から引用したものです。

 このように、これまで日本政府は、国民や拷問禁止委員会や国際社会に対し、退去強制令書の発付を受けた外国人については、入管収容施設等において、長期に渡っても送還できない場合には、仮放免と言う制度を弾力的に活用し、収容の長期化をできるだけ回避します。又、仮放免の請求の有無にかかわらず、入国者収容所長、又は主任審査官が一定期間ごとに被収容者のその仮放免の必要性や相当性を検証・検討して頂けることや人道的な配慮・措置などをとっています、などなどと情報を公開しています。

 しかし、現下において、大村入国管理センターの運用方針は、上記1ないし2の日本政府が説明した内容とは完全に逆のものになっています。政府の言ってることと入管のやってることは、全く違うものになっています。貴センターの私たちに対する扱い方は、どうなっているのですか。

 本年2月に私たち全ブロックの被収容者は、連名で要望書を提出し、大村入国管理センターに対して、これまで日本政府のこうした公式見解と現下の入管の仮放免許可実務と全く異なることを指摘し、話し合いを求めました。そして、3月15日に3Aブロックをはじめ全ブロックで説明会が開かれました。ご参考になって頂ければと、以下に当時の説明内容をまとめて来ました。

「これまで大村入管は、被収容者から仮放免の申請があった際には、その申請の理由を総合的に考慮の上、結果を下している。それは昔も今も同じやり方でやって来ている。しかし、最近仮放免を得た者が逃亡したり、犯罪を犯したり、不法就労する者が沢山居るから、現在大村入管は仮放免を許可しなくなった。実は、大村入管も常に他の入管と情報交換しています。例えば、東京入管や牛久入管や名古屋入管などで今もなお、仮放免が許可されているケースがあるという事実は、確かであるが、しかし、他の入管では、収容者数が多いため、仮放免を出しているのであり、一方、大村入管においては、収容者数が少ないため、仮放免を出す必要はない。又、基本的に入管というのは、同じ組織であり、どこの入管でどういうケースが仮放免されているのかも、当然我々大村入管は把握している。続けて、病気のある被収容者については、被収容者が入管の中で病気を発症した場合には、まず医者に診断してもらい、その結果を踏まえて仮放免を許可するか否か総合的に判断している。被収容者が病気がある、あるいは、入管収容施設の中で病気を発症したからといって、必ず仮放免の対象となるものではない。つまり、病気は、仮放免審査の一つの要素にすぎない。又、色んな種類があるため、一概には言えないが人道的な配慮が必要かどうかも審査の一つの要素として仮放免を判断している」。

 これでは、私たちは納得できません。どう理解すれば良いのでしょうか。

 まず、入管法上、退去強制の手続きは、退去強制令書(退令)の発付を受けた外国人の身柄を拘束し、進めることと規定されている。しかし、入管法上では、退令の発付を受けた者で入管収容施設等において、長期に渡っても送還することが不可能な場合に備えて一時的にその者の身柄の拘束を解くという仮放免の制度も設けられている。というふうに分析しておきます。

 この点において、貴センターにご理解して頂きたいのは、私たちには、確かに退令の発付を受けましたが、しかし、現在長期収容されている私たちの殆どは、退令に対する取消し訴訟裁判を行なっており、これと同時に退去強制手続の執行停止という部分も裁判官に認められています。退令の取消し訴訟裁判というのは、もし最高裁まで訴訟を継続させる場合では、その期間が4年又は5年に及ぶことも珍しくありません。入管は法律に則って被収容者の収容期間の長短を問わず一定期間ごとに仮放免の必要性や相当性を検証・検討して頂けるか否かは、別においといても構いませんが、まずご理解して頂きたいのは、私たちがまだ退令の取消し訴訟裁判を行ない続けている以上は退去強制手続の執行停止部分の効力が継続されていることになっています。この退去強制手続きに対する執行停止部分の効力がある以上、被退去強制対象者の身柄を強制的に送還することは、法律上では、基本的に不可能であります。従って入管は、裁判を行なっている被収容者で、なおかつ退去強制手続きの執行停止部分が認められている者の身柄を入管収容施設に長期間収容・拘禁させているのは、何の意味もないであることは、十分に考えられます。このような収容は、企画外の収容でしょうか、悪戯の収容でしょうか、それとも収容権の濫用でしょうか。私たちからすれば、どちらにも当たると考えております。

 さらに言えば、一年間で被収容者一人当たりの生活費・医療費・諸々の費用は、少なくとも70万円以上掛かると計算すれば、毎年、日本全国の各入管収容施設に、国庫から支出される経費は、莫大なものであることが分かります。そういう意味では、このような意味不明・悪戯の長期収容は、日本国民の税金を只只無駄遣いしているだけであることをご理解して頂きたいのです。これまで長期収容・拘禁されて来た者の殆どは、それぞれのケースは異なるものの、皆絶対に帰国することの出来ないという相当の理由・事情を抱えていて入管側もそれを承知した上で送還に踏み切れず、仕方なく、長期収容させているものであり、国民の税金を無駄遣いせざるを得ない状況にあります。そして、この先もこうした状況を継続させれば、さらなる税金の無駄遣いがエスカレートすることになると言えるのではないでしょうか。

 続けて、大村入管は、他の入管で収容者数が多いから仮放免が許可されているだけであって、一方大村入管において収容者数が少ないから仮放免を許可する必要はないとしています。この点について、どうしても道理にかなった説明であるとは思えません。入管法上、仮放免という制度が存在している以上、入国管理センターとしては、法律に則ってその仮放免制度を弾力的に活用し、長期収容を回避すべきであると私たちは考えておりますが、若しや、貴センターは、施設運営のために最低限の収容者数を確保しているのでしょうか。若し、本当にそうであれば、私たち被収容者一人ひとりは、貴センターにとっては、ビジネスの一つの商品として利用されていることになっている、というふうに考えなければなりません。如何なる弁解であろうと、少なからず私たちにとっては、貴センターが施設運用のために、皆、利用されているという印象が強く与えられています。本当にこの点の説明については、非常に残念に思います。又、大村入管は、人道的な配慮や措置などをとっていると言いながら他の仮放免者が仮放免者が逃亡したり、犯罪を犯したり、要するに仮放免の規則を順守しない者が多数存在するなどという理由から、現在私たちの仮放免請求に対して、一切認めず、むやみに長期収容・拘禁を継続させている、しかも被収容者の殆どは、仮放免許可というもの自体、一度も受けたことがない、また、仮放免許可されたものの入管は適切な理由もなく、好都合であれば何らかの難癖を付けては再収容させている。この様なやり方・扱い方は、不当・不公平なものであると言わざるを得ない。仮放免の規則を順守して生活して行かなければならないのは、当然ですが、しかし、どれだけ他人が仮放免の規則を順守しなかったとはいえ、法律上、私たちには、他人の犯した過ちに対して、その責任を負わなければならないという義務が存在するとは思えません。よって、これまで大村入管の行なって来たその運用方針、そのやり方というのは、不適切なものであり、むしろ、人道に反した行為であり、人権侵害に当たる行為であると言わなければならない。大村入管のこうした被収容者の私たちに対する悪質極まりない扱い方は、人道上看過できるものとは到底言えません。又、度々、大村入管の職員さんらが口を揃えては、「入管が仮放免制度を厳しくしているのは、2020年のオリンピック・パラリンピックを控え日本政府は、より安全・安心社会を実現するためである」などと私たちに説明しています。しかし、オリンピック・パラリンピックは、私たちに何が関係あるというのでしょうか。入管のこのようなやり方は、果して日本社会にとって本当に良いものであったのか、そしてこのままのやり方を続けることによって弊害が生じることはないのか、又、悪影響や不利益を負う人間は本当に誰も居ないのでしょうか。そもそも、オリンピック・パラリンピックというのは、国際交流・平和のために開かれる催しであると私たちは思います。では、何故、その平和のために罪のない、犯罪者でもない、日本政府の庇護を求めている難民認定申請者である私たちの身柄が拘束され入管収容施設に無期限の収容・拘禁という罰を受けることによって人生の大切な時間が奪われ、命まで犠牲にされなければならないのでしょうか。それだけではありません。私たちの中には、日本に配偶者・家族・幼い子供が居る者も多く、今もなお、私たちの社会復帰を待ってくれています。そうすると貴職らが言うより安全・安心社会作りやオリンピック・パラリンピックと言うもののために、犠牲・弊害を受けるのは私たち自身だけでなく、私たちのことを待ってくれている家族の方にも影響を及ぼしていることになります。幼い子供には、親が居なければ、教育に支障を来たしますし、子供にとって最善の利益や親からの教育機会が奪われるようなことは、絶対に許されるものではありません。強制送還によって家族の崩壊や家族と分離させるような行為も許せれません。これまで入管のやって来たことは、日本社会にとって利益になったかどうかはともかく、目前に確認できるのは、私たちが入管収容施設において、長期収容・拘禁されることによって、心身が衰弱され、次々に病気を発症しているのは、前述の通りです。しかし、入管は、残念ながら、被収容者が重病を患っているのが分かっているのにも拘わらず仮放免を一切許可せず、適切な治療を受けさせないことから、これまで多くの被収容者が病死しています。中には、長期の収容・拘禁による過酷なストレスに耐えられず、又、幾度もの仮放免請求が却下されることから精神に重大な打撃を与えることとなり、最終的には、被収容者が精神的に追い詰められてしまい、自殺を図り、命を失ってしまった事例も多数存在しています。本年4月13日に牛久入管で起こったインド人男性の自殺死亡事件も一つの悲惨な事例であるとして指摘したいところです。一体、入管は人の命は何だと思っているのですか。入管は、私たちが収容施設の中で何人が死んでも構わないと私たちの身柄を拘束・拘禁し続けているつもりなんでしょうか。入管はよく不法滞在者だの外国人だのと文句ばかり言っているようですが、この世の中は、外国人と日本人しか居ないじゃないでしょうか。例えば不法滞在者であれ、不法就労者であれ、その者の身柄を拘束し、入管の収容施設に入れて無期限の収容・拘禁という罰を与えてはいけません。その者の人生や命を軽視・無視してはいけません。どうか、ご理解して頂けないでしょうか。このままでは、もっと多くの死者が出てしまう恐れがあります。私たち被収容者全員は、これ以上黙ってはいられません。我慢も限界を越えている状態です。私たちには、確かに退令が発付されていますが、しかし私たちには、どうしても帰国してはならない、というそれなりの理由がありますので、命を掛けても、こうして日本に残ることを選択している訳です。長期収容が多数の死亡事件を生み出す原因になっているような事態になっているので、この現状、この異常事態を一刻も早く改善されるべきであることは、論を俟たないところです。どうか私たちの事情についてもう一度深慮して頂き、その上で現状のこの異常事態を改善して下さること、私たち被収容者一同、伏してお願い申しあげます。

 本年4月から、大村入国管理センターには、更迭[人事異動?]があり、所長も新しく入れ替わっていることなど、私たちは承知しております。そこで、これから大村入管の運用方針・ポリシーというものは、どう変わっていくのか、どのようなものになるのか、又今後私たちの人生はどのように扱われるつもりなのかなどについて、是非明らかにされたいところです。改めて話し合いの場を設けて頂き私たちに納得が行くような説明・回答を出して下さるようお願いしたいと思います。なお今回のこの要望書に付きましては、ご返事・ご回答をが行なわれる際には、書面をもって回答して頂きたいです。

 貴センターには、日々大変ご多忙とは存じますが、この要望書を回収後、2週間以内に返事して下さい。何卒宜しくお願い致します。
別紙にて、全ブロックの被収容者の署名・国籍・収容期間を記載しております。又、私たちは、別紙に記載されている自分の個人情報については、仮放免者の会や支援者の団体やメディアや国会議員さんに自分の個人情報を提供し、公開されることに同意します。

以上

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Sunday, June 24, 2018

【拡散願い】東日本入管センター被収容者からの手紙「入管に私達の命で遊ぶ権利はない」





 東日本入国管理センターの被収容者から6月中旬に受け取った手紙を公開します。

 この文書は、同センター8Aブロックの被収容者たちが討議して執筆したものです。同じ文書を、当会のほか、法務大臣、日本オリンピック委員会、複数の国会議員、報道機関・報道関係者、入管問題に取り組む支援団体などに、被収容者たちの署名をつけて送付しているところだとのことです。

 被収容者たちは、この手紙を「私たちの今おかれている状況を伝えたく」書いたといいます。入管収容施設における人権侵害の実態を広く伝えることが目的の文書だとのことですので、拡散にご協力いただけるとありがたいです。

 以下、文書の全文を掲載します。







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この手紙は、私たちの今おかれている状況を伝えたく書かせてもらいます。

私達は、今ここ東日本入国管理センターで入管による拷問を受けています。

私達、外国人は日本人にいじめられているのです。

2年も3年も人を収容して私達に精神的・肉体的苦痛をあたえているのです。

とても苦しいです。こういう拷問に耐えられなくなった人は、自殺をし、または自殺をしようとする人が、次から次へと出ています。入管は、私達の命で遊んでいます。

私達の家族の元から離して、これだけの多くの時間、そして人生そのものを入管に奪れているのです。

入管に私達の命で遊ぶ権利はありません。私達には、人権はないのでしょうか。

この民主主義の国で非人道的、そして独裁的なことが今、ここで起きているのです。

私達は、見捨てられ、使い捨てられたのです。

今回、自殺したインド人が亡くなっても、日本にいる人は、あまり関心を持ってくれません。

関心を持たれないのは、亡くなったのが日本人じゃないからなのですか。

私達外国人の命はどうでもいいものなのですか。

なぜ、こんなにもひどいことが日本で起きているのに、何も変わらないのですか。

私達には理解できません。

私達の収容されている人は、ちゃんとした日本に残る理由があります。

奥さんや子どもが日本にいて自分の父や夫としての責任をしっかりと果たしたいだけの人や
日本でうまれて、日本しか知らず、自分の国の言葉も話せず、自分の国ですが、外国です。帰る場所はありません。

その他にも、自分の国で重大な問題があったり、宗教の関係で命まで危ない難民の人等、重大な理由があるのです。

ここに5年10年でも収容しても帰ることはできないのです。

ただ「日本に残りたい」というだけの理由なら、こんなにも長い長期収容に耐えられずすぐに帰っています。

私達は、今までこの長い時間、入管に頭を下げ「出して下さい」「お願いします」「すみません」とお願いし続けました。

ですが、入管に頭を下げ続けてもお願いし続けても何も変わらないのです。

それなら私達は、いったいどうしたらいいのか、わからなくなっています。

こういった結果に先が見えなくなり自殺をして大切な命が入管が原因で奪われたのです。

そしてその後も自殺をしようとする人が、次から次へと出ていて私達は怖くなっています。

私達の痛みだけではなく、外で待ってくれている人達、家族の痛みを理解して欲しいのです。

家族がどれだけ苦しいか、悲しいか、なぜこういうことが理解されないのでしょうか。

それだけではなく、長期収容によるストレスが原因で体はどんどんボロボロになり、色んな病気をここで発症する人が多くいるのです。

精神的だけではなく肉体的な苦痛を受けている証拠なのです。

日本の法律には、自由権の身体の自由について「犯罪により処罰される場合を除き、肉体的、精神的な苦痛を受けない」とあります。この法律には、私達は関係ないということでしょうか。

この法律がもし、私達が関係ないのであれば、つまりは、私達の人権はないということになります。

これが、グローバルリーダーで国連の模範的メンバーの日本がやることなのでしょうか。

外国に向けて「日本へようこそ」と伝えておきながら裏では、こんなにもひどく外国人を扱っているのです。

これは、私達外国人への差別なのです。外国人が嫌いで日本に受け入れたくないのであれば、そういう対策をとって下さい。ですが、表向きには、「ようこそ」と伝えている結果は、こんな悲惨な現実なのです。

私達の願いは、まず仮放免の許可を出して私達にビザを取得するチャンスを下さい。

本当ならすぐにビザを出して欲しいのが私達の願いです。なぜならここで2,3年収容されたあげく外に出たら仮放免では仕事がしたくてもできない、病院に行きたくてもいけない、行きたい場所にも行けない、何もできないのです。

この「仮放免」という制度が何の意味なのかもわかりません。不法滞在している人と全く状況が同じというのは、おかしいことではありませんか。

ここでこんなにも長い時間、耐え続けているのは、仮放免なんかのためではなくビザを取得するためなのです。

これらのことを私達はただただ理解して欲しいのです。

今のこの長期収容をやめて私達に仮放免の許可を出してチャンスを下さい。

これがここに収容されている皆の声と気持ちです。助けて下さい。

以上

平成30年6月1日

東日本入国管理センター収容者より

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関連記事
 あわせて以下の記事もご覧ください。
 1,2は、東日本センターのおなじ8Aブロックの被収容者が、3月と4月にそれぞれ同センター所長にあてて連名で提出した嘆願書・要求書を紹介した記事です。3は、2の嘆願書にふれながら、入管施設における長期収容問題について解説した記事です。

  1. 「東日本入国管理センターという場所は人の命を奪う場所」8Aブロック被収容者による要求書 - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年5月18日)
  2. 被収容者110名超が長期収容・再収容の中止を要求(東日本入管センター) - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年4月9日)
  3. 入管施設の収容長期化問題について――被収容者「嘆願書」によせて - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年4月10日)


Thursday, June 7, 2018

長期収容の回避等7項目を申し入れ(大阪入管に対して)

 6月5日(火)、大阪入国管理局に対し、難民支援コーディネーターズ関西、WITH、TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)、仮放免者の会の4団体で、申し入れをおこないました。今回の申し入れは、長期収容の回避や医療・食事・衛生環境等の処遇の改善などを求めたものです。

 大阪入管については、昨年7月に職員らの暴行によって骨折したトルコ人被収容者が、国家賠償請求訴訟を先日提起したところでもあります。


 この裁判の推移もふくめ、今後とも大阪入管の問題に注目のほどお願いします。



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申入書
2018年6月5日
法務省大阪入国管理局長 殿
難民支援コーディネーターズ関西
仮放免者の会
WITH
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)

1、長期収容問題
 大阪入国管理局入国者収容場(以下大阪入管)における収容の長期化が深刻となっている。
 村上史好衆議院議員を通じた入管からの資料によると、2017年12月19日時点の「各収容施設における収容期間別総被収容者数」は大阪入管において3ヵ月未満が42名、3~6ヵ月が24名、6~12ヵ月が19名、1~1年半が15名、1年半~2年が5名、2年~2年半が2名、2年半~3年が2名、3年以上が1名の、合計110名となっている。
 支援者が長期収容と呼んでいる半年以上の収容となる被収容者は、大阪入管では44名となり、40%を占めている。この割合は、他入国管理局と比較しても圧倒的に高い数字となっている。(東京入国管理局では約30%、名古屋入国管理局では約34%となっている。)
 東日本入国管理センターでは約56%、大村入国管理センターでは約52%となっており、長期収容を目的とした収容施設であるセンターほどではないものの、明らかに短期収容の目的を超えた期間の施設運用となっている。
 以上より、下記について申し入れる。
①収容期間が通算1年以上となる被収容者の仮放免申請を許可すること。
②病気などの体調不良者の仮放免申請を許可すること。
③日本人及び日本に在留資格がある配偶者や、子どもがいる被収容者の仮放免申請を許可すること。

2、大村収容所への移収について
 大阪地裁等で裁判中の被収容者、及び関西圏等に居住する家族がいる被収容者の大村収容所への移収を行わないこと。
 裁判中の被収容者の大村移収は、弁護士との面会を困難にさせる訴訟妨害である。また関西圏等に住む被収容者の家族は、大村移収されることで被収容者との面会が事実上出来なくなる。このような訴訟妨害、及び家族との面会を事実上不可能にさせる移収は、即刻中止すること。
 まして大村収容所に移収した被収容者の収容期間を大阪入管からの通算でなく、大村移収日から収容期間を計算することで、長期収容者の数、及び収容期間を低下させようとすることに大村移収を利用すべきではない。上記村上議員衆議院議員に提出した資料は、このような計算のごまかしがある。

3、隔離処分の問題
 上記同資料によると、2017年1月1日~同年11月30日までの「各収容施設における懲罰房の日数別運用件数」において、大阪入管の隔離件数は66件となっており、他入国管理局、入国管理センターの中でも最多となっている。
 隔離処分となった被収容者の話の中には、「食事に対して抗議したところ、突然6~7名の職員が動員されてきて、被収容者を引っ張ろうとした」など、過度の制圧行為ではないかと疑うような事例もある。また、2017年7月12日に起こった、トルコ国籍のM氏[申入書原文では実名掲載]に対する制圧行為も、保護室へ連行する際に起こっている。
 支援者が申請した行政文書開示請求においても、上記のような隔離処分の運用について、どのような判断と必要性があって隔離処分に至ったのかは明らかにならなかったため、説明を求める。

4、医療・衛生環境について
 1の長期収容化に伴い、体調不良者が増加している。そのためか、「受診希望を出してから、2週間近くたってからやっと受診できた」と言った声が聞かれている。また、歯科治療においても、「受診前に抜歯することに同意するサインを求められる」、「治療可能な病状であっても、抜歯や神経を抜くことしかやってもらえない」、「歯科外部受診において抜歯を拒否したら、隔離処分された。」等の声が聞かれる。
 貴局もご存知の通り、貴局の収容権は、被収容者の生命と健康を守るという事が前提にあって付与されている。よって、被収容者の診療希望については、最大限努力する義務が貴局にはあり、それが保障されないのであれば、収容を継続するべきではない。
 また、収容所内において、血液感染の恐れのある病気(HIV、B型肝炎等)を罹患している被収容者と、健康な被収容者が同じ髭剃り電気シェーバーを使用していた時期があった。このような衛生環境、設備について、感染リスクに対して最大限の注意を払うよう、申し入れる。
 さらに入管職員の見張り部屋等の換気口については業者に依頼して掃除しているが、被収容者の居室の換気口は掃除しないまま何年もほったらかしにしている。しかも被収容者が自ら換気口の掃除をするための掃除機の貸し出しを要求しても、それを拒否している。掃除機を貸し出すよう申し入れる。

5、同時面会を許可すべきである
 大阪入国管理局では、弁護士や支援者の面会において、被収容者の同時面会が許可されていない。通訳を目的とした同時面会も許可されず、訴訟準備等のための円滑なコミュニケーションの著しい障害となっている。
 他入国管理局では、同時面会が可能であるのだから、大阪入管でも当然、同時面会は許可されるべきである。

6、食事の問題
 被収容者に支給されている弁当の量と質について、これまで何度も被収容者が連名で改善要求を出している。2017年10月3日には、夕食時、イスラム教徒のスーダン人男性に支給された弁当のおかずに豚肉が混入されていたとして、被収容者が抗議し、ハンガーストライキを起こしている。これは、以前にも異物混入(腐ったゆで卵等)が度々あったことから、被収容者が不信を募らせて抗議したものである。
 このような異物混入だけでなく、日常的にも支給弁当については「ご飯の量が少ない。」「おかずの大きさが小さい。」「おかずがいつも同じ。(コロッケやから揚げなどの揚げ物に偏る)」「野菜が少ない。(キャベツばかり)」などの被収容者の声が多く聞かれる。
 支援者にて行政文書開示請求を行ったところ、大阪入管と給食業者との平成29年度の契約書において、「供給する食事の価格は、普通食及び特別食いずれも次のとおりとする
1人1日3食当たり 824円
(内訳 朝食274円 昼食275円 夕食275円)」と一定以上の質量を確保する
ためには安価な契約内容となっている。
 そのため、被収容者がこの契約内容に抗議したところ、今年度の給食業者と大阪入管との契約内容については、
「供給する食事の価格は、普通食及び特別食いずれも次のとおりとする
1人1日3食当たり 1200円
(内訳 朝食400円 昼食400円 夕食400円)」となった。
 しかしながら、4 月時点の新しい給食業者が支給する給食は、4月当初は質が高かったものの、徐々に質が下がっているとの被収容者の声がある。大阪入管は給食業者への業務改善の指導責任をきちんと果たすべきである。

7、収容場内での物品購入と食品の差し入れについて
 収容場内で購入できる食品、生活用品の価格と品目について、被収容者から大きな不満が上がり、被収容者は連名で要求を出している。すべての商品の価格がコンビニと同等価格であること。品目が限られ、しかも小さいサイズしかないことなどが問題となっている。
 ただでさえ、被収容者は限られた品目から購入しているのだから、購入品目については被収容者の要望を取り入れること。
 上記のような問題を起こすのなら、大阪入管をはじめとした各入国管理局においては、センターと同様に食品の差し入れを許可するべきである。
以 上

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