Tuesday, August 27, 2019

再収容および長期収容について抗議の申し入れ(8/21、東日本入管センターに)

1.見せしめ目的の再収容

 5月以来、東日本入国管理センターでは長期収容への抗議のハンストが広がっています。同センターは7月上旬からハンストで衰弱した被収容者を仮放免というかたちでつぎつぎと出所させています。

 ところが、7月22日、東京入管(東京出入国在留管理局)はたった2週間前に仮放免されたばかりのイラン人2名を再収容し、ただちに東日本入管センターに移収しました。長期収容とハンストによって疲弊した心身が回復するいとますらあたえず、わずか2週間の仮放免ののち再収容するというような措置は、前例のない異常なものです。また、この再収容は、東日本入管センターなどで広がっているハンストをおさえるための見せしめ・恫喝を目的としていることはあきらかであって、こうした入管当局のやり方に対しては、問題視する報道がいくつか出ており、弁護士会や支援者・支援団体からも批判があいついでいるところです。

 私たちとしても、7月29日に抗議声明を発表するとともに、同日、東日本入管センターに対して抗議・申し入れをおこないました。




 しかし、このような異常な再収容を、入管当局はいまだ中止せずくり返しています。

 長崎県にある大村入国管理センターから仮放免されていた人も、8月8日に名古屋入管(名古屋出入国在留管理局)で再収容され、ただちに入管の車両に乗せられて大村センターに移収されました。この人も、長期収容に抗議して50日間ほどのハンストをおこない、1か月前に大村センターから仮放免されたばかりでした。

 関東でも、ハンストをおこなったあとに東日本入管センターから仮放免で出所していた2名を、8月14日と16日に東京入管があいついで再収容し、その日のうちに東日本入管センターへと移収しました。



2.入管の姿勢が命がけのハンストを助長している

 こうした一連の再収容に対して、私たちは前回の7月29日にひきつづき、8月21日にも東日本入管センターに対して抗議の申し入れをおこないました。今回の申し入れは、当会の事務局から3名のほか他団体等の支援者ふくめ6名でおこないました。

 申し入れした内容については、当日東日本入管センター総務課に提出した申入書をこの記事の末尾に掲載しておりますので、参照してください。

 ハンストをしての仮放免後に再収容された人は、今回の申し入れの時点で東日本入管センターに5名収容されていましたが、その全員が再収容後ただちにハンストを再開しています。再収容された人びとのいきどおりと絶望感はすさまじいものです。なかには、水を飲むことすら拒否し、支援者の懸命な説得でようやく水と塩分だけは摂取することにしたという人もいます。一連の再収容は、命がけともいえる強い覚悟のもとでのハンストを助長する結果になっています。ハンストをおさえこもうという意図とは反対に、入管の強硬な姿勢が危険なハンストをまねいているのです。

 現在の強硬姿勢を入管がとりつづければハンストによる死亡者が出かねない危機的な状況であることを述べ、7月22日以降に再収容した5人全員をただちに仮放免することを求めました。



3.重病の被収容者への対応がますますおろそかに

 今回の申し入れでは、ハンストをおこなっていない人もふくめて、重病人と超長期の被収容者をただちに仮放免することも求めました。

 ハンストをしていない重病者としては、被収容者2名の事例を具体的に説明しました。

 ひとりは、カメルーン国籍のLさんです。Lさんの収容期間は2年10ヶ月。6月9日以来、食事がとれなくなり、固形食はもとより牛乳やおかゆ、液体の栄養補助食品(エンシュアリキッド)すら摂取しても吐いてしまう、ポカリスエットがかろうじて飲めるぐらいという状態が現在までつづいているそうです。ストレスが原因の神経性胃炎と診断されたLさんは、6月上旬に88kgあった体重が2か月あまりのあいだに67.1kgと20kg以上落ちており、現在では自力で立ち上がるのも困難なほど衰弱しています。

 このような状態の人の収容を継続しているということ自体が不当ですが、職員らがハンストへの対応におわれることで、Lさんら病人への対応がいっそう行き届かなくなっているのではないかと思われます。Lさんは、7月24日にシャワー室でめまいがして昏倒しましたが、以後ようやく医者の診察を受けられたのは8月19日になってのことでした。これほど重篤な病人が、4週間ちかくも診療を受けられずに放置されたのです。

 申し入れでは、もうひとりの重病者として、スリランカ国籍のSさんの事例を示しました。Sさんは2年超の収容期間。入管施設に収容されてから左目がほとんど見えなくなり、昨年3月に白内障と診断されました。このときに眼科医からいずれ手術をしないと失明するおそれがあると言われましたが、その後1年半ほどにわたって目の治療をなんら受けられず放置されています。

 また、Sさんは10年ほど前から心臓に持病があり、ニトログリセリン(狭心症の胸痛時に服用する薬)を常備し使用してきました。収容後も、この薬を職員があずかり、必要なときに職員を呼んで薬を出してもらうというかたちでこれを使用しています。昨年4月末には心臓が苦しくなって病院に救急搬送されており、その後もこの症状のためにニトログリセリンを服用する機会が何度もありました。

 Lさんにしても、Sさんにしても、超長期にわたる収容のなかで、きわめて深刻な病状にあります。しかも、ハンストをおこなう被収容者があとをたたないなかで、こうした重病人への職員らの対応はますますおろそかにならざるをえません。こういった点でも、被収容者が死亡する危険性は高まっているのであって、状況が大変に危機的であるということを入管当局は認識すべきです。

 以下に、東日本入管センター所長あてで今回提出した申入書を掲載します。



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申 入 書

2019821

東日本入国管理センター所長 殿

仮放免者の会(関東)


 以下、申し入れる。


1.722日以降に再収容した人の全員をただちに仮放免すること

 722日に、貴職らはイラン人男性2名を再収容した。2人は長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこない、わずか2週間前の79日に東日本入国管理センターから仮放免されたばかりであった。

 以降、入管はハンストをおこなった人を仮放免し、2週間といった短期間で再収容するという同様のやり方をくり返している。貴職が仮放免した人たちは、ハンストによって衰弱しているばかりでなく、貴職がおこなった2年や3年をこえる超長期収容のために心身に深刻な健康問題をそれぞれにかかえている。そういった人びとを、回復するまもなく再収容するのは、前例のない異常なやり方であるだけでなく、人間の命と健康をいちじるしく軽視してもてあそぶ、許しがたい人権侵害である。

 このたびの一連の再収容は、5月以降東日本センターなど入管収容施設で広がっている被収容者のハンストを鎮静化・抑止するための見せしめ・恫喝を目的にしたものであることは、あきらかである。ハンストの広がりと長期化が被収容者たちの生命・健康を危険にさらすものである以上、これを収束させることが必要であるにしても、今回のような見せしめとも言うべき入管当局のやり方が許されるはずもない。

 そして、これら一連の再収容は、おそらくは入管当局の意図には反して、危険なハンストを助長する結果になっている。今回再収容された人の多くは、再収容されてただちにハンストを再開している。この結果は、そもそもなぜ現在東日本センターなどでハンストが拡大・長期化しており、またなぜなかなか収束しないのかという原因の本質をみるならば、十分に予想できたことである。

 201516年以降に顕著になった収容の超長期化と言うべき状況が、退去強制令書発付処分を受けながらも帰るに帰れない切実な事情をかかえている被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいる。この絶望が多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、また、あいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのである。こうした状況のなかでこのたびの再収容をおこなったことは、被収容者たちに入管当局はこれまでの常軌を逸した長期収容を今後とも続けるつもりなのだというメッセージを与えることになったのである。こうした強硬方針の継続は、危険なハンストをますます助長し、被収容者を死亡させる事件を今後またくり返させるおそれがある。

 死亡事件をこれ以上くり返さないために、ハンストをおこなったのちに仮放免した人を再収容することをやめ、またすでに再収容した人の全員をただちに仮放免すべきである。



2.重病人および超長期の被収容者をただちに仮放免すること

 東日本センターでは、ハンストへの対応に職員らが追われることにより、病人に対する対応に十分に人手がまわらなくなっているとの報告を、複数の被収容者たちから受けている。ある被収容者は、ストレス原因の神経性の胃炎のため食事をとっても吐いてしまう状態が続き、通常の収容区画から病室に移されていたが、自身の病状が改善していないにもかかわらず元の通常の収容区画に戻された。職員からは、ハンストをしている人が増え、これに対応しなければならないからだと説明されたとのことである。

 もとより平時から、東日本センターは300人をこえる数の被収容者の生命・健康をまもるために必要な医療体制をそなえているとはとうてい言いがたい。そのうえハンストが拡大・長期化している現状では、その対応に多くの職員らをさかなければならないぶん、病人への対応がますますおろそかにならざるをえない。平時以上に被収容者を死亡させる危険が高まっているのであって、この現状を放置するわけにはいかない。

 死亡事件の再発をふせぐことを最優先すべきであり、重病人をただちに仮放免するべきである。

 また、717日にも貴職に対して文書で申し入れたとおり2年をこえるような超長期と言うべき収容の常態化が、多くの被収容者たちを絶望させ、命がけの危険なハンストに向かわせている。超長期の被収容者たちから仮放免することをもって、長期収容を回避していくという意思を貴職は行動で示すべきである。


以 上

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Monday, August 26, 2019

【傍聴呼びかけ】大阪入管暴行事件(第8回口頭弁論)

 大阪入管職員による集団暴行事件の被害者Mさんが国に損害賠償をもとめてたたかっている裁判です。

 次回公判は、以下の日時にておこなわれます。

 日時:2019年9月13日(金) 11:00~
 場所:大阪地方裁判所809号法廷(→地図

 事件についての詳細は、以下の記事をごらんください。


 都合のつくかたは、ぜひ法廷で傍聴をお願いします。


 また、公判後には、原告Mさんと弁護団も出席しての報告集会もおこないます。こちらもご参加ください。

Tuesday, August 6, 2019

東日本入管センターに抗議しました――仮放免2週間ののちの再収容について

 7月22日、入管は2名のイラン人を仮放免期間わずか2週間ののち再収容しました。2人は東日本入管センターで長期収容対して抗議のハンストをおこなったのち、仮放免許可により出所しましたが、その2週間後に東日本センターに再収容し、ふたたびその自由をうばったのです。



 抗議声明で述べたように、この2名(Aさん、Bさん)に対する再収容は、ハンストなどで長期収容に抗議する被収容者たちに対する見せしめ・恫喝を目的としたものであることはあきらかで、私たちとしても絶対に容認できません。

 私たちは、7月29日(月)に、再収容されたAさんに面会したうえで、東日本入管センターに対して、抗議の申し入れをおこないました。




Aさんとの面会
 
Aさんは、22日の再収容直後からふたたびハンストを始めており、この日(29日)、すでに1週間経過したところでした。

 「自分の事は考えていない。入管のやり方は許せないから闘う」ということを語っていました。また、22日に逃げずに東京入管に出頭し再収容されたことについて、「再収容されるかもしれないと思ったが、一緒に闘った仲間や、保証人になってくれた人への裏切りになるので、逃亡はしなかった」とも話していました。



 もちろん、長期収容と再収容によって人の生命と人生をもてあそび、虐待をつづける入管当局のあまりに常軌を逸したやり方こそが非難されるべきであって、再収容におびえて「逃亡」したからといって責められるいわれはありません。ただ、一緒に闘ってきた仲間への裏切りになるからと「逃亡」はせず、再収容されてふたたびハンストを始めたというAさんの言葉を聞くと、これと対照的に入管の今回やっていることの浅ましさ・卑劣さがきわだちます。

 Aさんの体調はかなり悪そうに見えました。 表情もさすがに生気を欠いているように見え、面会終了後に立ち上がって部屋を出ていく足取りもふらついていました。




抗議の申し入れ
 Aさんら被収容者と面会したのち、当会の事務局員2名をふくむ支援者5名で、東日本入管センターの総務課におもむき、抗議の申し入れをおこないました。

 Aさんらの状況はきわめて深刻であってけっして放置できないと考えたので、総務課の部屋に入るなり私たちは「所長さんを出してください。(所長室のほうを向き)所長さん、いないんですかー? 出てきてくださいよー!!」などと大声を出しました。人命にかかわる緊迫した事態であるということをセンターの責任者である所長に直接つたえ、抜本的な方針転換をもとめたかったのですが、所長は出てきませんでした。渉外担当の職員が「大声は出さないでください」と言い、私たちは別室に通され、そこで話をすることになりました。

 私たちは、仮放免2週間での再収容について、これまでになかったような異常なやり方であり、許されない人権侵害であり、この状況が継続すれば、万が一のことも起きかねないのではないかといったことを述べました。

 東日本入管センターに7月17日に提出した申入書でも述べたとおり、収容の超長期化と言うべき状況が、被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいます。この絶望が、多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、またあいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのです。Aさんらに対する再収容は、入管はこれまでの強硬方針を今後もつづけるつもりなのだというメッセージを被収容者たちにあたえ、そのことによって危険なハンストを助長しかねないものです。

 これ以上人命がそこなわれることをふせぐためには、仮放免制度を活用することで長期収容を回避していくのだという意思を、入管は行動によって明確に示すことが不可欠です。超長期の被収容者から、ハンストをしているかどうかにかかわらず、無条件に仮放免していくことをあらためて求めます。




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Monday, August 5, 2019

大村入管センターからの手紙 ハンストをめぐって


 以下の記事などでもお知らせしたとおり、大村入国管理センターでも、被収容者によるハンストが続いています。


 大村入管センターでは、長期収容への抗議として、またナイジェリア人被収容者死亡事件(6月24日)の責任をとって同センター所長荒川満が辞任することを求めて、20名が7月15日にハンストを開始しました。これに先立って、7月10日からハンストを始めていたひといます。ハンストの期間はすでに22日から27日におよんでおり、その健康状態がきわめて憂慮されます。

 本日(8月5日)、大村でハンストをおこなっているペルー国籍とブラジル国籍の被収容者から手紙を受け取りました。8月1日時点で16人がハンストを続けているとのことです。

 おふたりの手紙には、「遺書」と題された文書が同封されていました。「遺書」には、仮放免がいっこうに許可されず長期収容されていること、体調が悪い治療してくださいと何度うったえても入管からは無視されていることがつづられ、「死ぬ覚悟」で絶食していると述べられています。

 ペルー国籍の方からは、この「遺書」とはべつに、「どうか、この手紙を日本社会に知らせて下さい」と記された文書を送ってもらいました。このお手紙の全文を以下に紹介します(手紙に記されている筆者の実名は、イニシャル表記にあらためました)。

 なお、このお手紙と「遺書」は、報道機関各社にも郵送したとのことです。文字どおり、命がけで入管施設における人権侵害を告発した手紙です。報道関係者のみなさまには、ぜひともこの告発に耳を傾けていただくよう、お願いいたします。


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拝啓
 いつもお世話になっております。Sです。
 この長期収容に堪えきれなくなりました、大村入国管理センターがあまりにもひどい、仮放免許可をしない上 その長期収容のせいで病気になったり精神不安定になっている収容者多数出ています。まともな治療してもらわないのです。
 大村入国管理センターが人権を軽視しています。
  • 仮放免許可されないこと
  • 長期収容されつづけていること
  • まともな治療を受けられないこと
  • 亡くなられた仲間のナイジェリア人の死因についての説明がないこと
  • 死亡事故を二度と起こさせないために改善されそうにないこと
  • 人殺しの荒川満所長の辞任
  私と19人の収容者が人権侵害を受けていることから大村入国管理センターに対して抗議するかたちでハンガーストライキしています。
 どうか、この手紙を日本社会に知らせて下さい。
 よろしくお願い致します。

令和元年8月1日(木)
ペルー国・S
大村入国管理センター隔離房2A-19号室 より。

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