Tuesday, November 5, 2019

10月30日 大村入管センターに抗議・申し入れ(被収容者死亡事件とハンスト者の再収容等について)


 10月30日、長崎県にある大村入国管理センターに対して仮放免者の会として申し入れをおこないました。

 大村センターでは、6月24日にナイジェリア人被収容者(以下「Aさん」とします)が死亡しました。この死亡事件について、出入国在留管理庁(入管庁)は10月1日に「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について」と題する報道発表をおこなったところです。

法務省:大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri09_00050.html )

 入管庁の調査報告は、Aさんへの「大村センターの対応が不相当だったと評価することは困難」とし、また「仮放免を行うべきであったということはできない」とも述べています。ところが、この調査報告であきらかにされている事実経過をもとに評価してさえ、大村センターの人命軽視の姿勢はあきらかであり、人命を二の次にした同センターの対応がAさんを死に追いやったと言わざるをえません。申し入れでは、この点を指摘するとともに、大村センターが今後 被収容者の生命を最優先する対応をとるよう、以下2点をもとめました。

  1. 2週間といった短期間での再収容はしないこと。また、9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること
  2. 超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 大村入管センターにおいても、東日本入管センターなどとともに、収容の超長期化とも言うべき状況が深刻化しております。また、長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなった被収容者2名が2週間ほどの仮放免ののち再収容されており、2名とも再収容後にふたたびのハンストをおこなっています。入管の非人道的な対応が被収容者のハンストをあおり助長しているのであり、こうした対応をあらためるよう、大村センターに対してもとめました。

 以下、申入書の全文を掲載します。




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申 入 書

20191030

大村入国管理センター所長殿

仮放免者の会


 624日に大村入国管理センターに収容されていたナイジェリア人男性(以下「Aさん」とする)が死亡した。101日、その死因について出入国在留管理庁は拒食による飢餓死とする報告書を公表した。報告書は、Aさんが「ここから出して下さい」と要求して拒食をおこなっていたことをあきらかにしている。

 報告書によると、Aさんが拒食をおこなっていることを貴職は530日には把握していたのであり、これを放置すればAさんが死亡する危険があることを貴職は十二分に予測できたはずである。

 しかも、貴職は、Aさんの要求の内容を認識していたのであるから、拒食をやめるようにAさんと交渉しうる余地はあった。「ここから出して下さい」という要求にこたえる姿勢を貴職が示せば、Aさんは拒食と治療拒否をやめたはずなのである。

 貴職にとって、収容施設の運営上考慮すべきことがらがさまざまにあるにしても、第一に優先すべきは被収容者の生命であることは、言うまでもない。食事と治療を拒否していたAさんの死亡は事前に十分すぎるほど予測しえたことであり、かつ、Aさんが拒食・治療拒否をやめる条件があきらかだったにもかかわらず、飢餓死という最悪の結果をまねいてしまったのは、貴職がほかのなにをおいても優先すべき被収容者の生命を二の次にしたということにほかならない。

 現在、大村入国管理センターをふくむ各地の入管施設において、長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなう被収容者があとをたたない。ふたたび死亡者を出すことがあってはならない。貴職が被収容者の生命を最優先する対応をとるよう、以下、申し入れる。



1.2週間といった短期間での再収容はしないこと。また、9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること

 現在、入管は、収容中にハンストをおこなうなどして健康状態が深刻に悪化した人について、仮放免を約束して摂食を再開させてしばらく経過したのち仮放免し、2週間といった短期間で再収容するということをくりかえしている。大村センターにおいても、少なくとも3(注)が同様のかたちで再収容されている。

 このうち2名は、大村センターから仮放免されたのち、居住地が関東地方であったため東京出入国在留管理局に出頭したところ、関東にも収容場・収容所があるにもかかわらず、わざわざ大村センターまで航空機で移送されて再収容された。このことからも、一連の再収容が、ハンストをおこなう被収容者たちに対する見せしめ・恫喝を目的としたものであることは、あきらかである。

 ハンストの広がりと長期化が被収容者たちの生命・健康を危険にさらすものである以上、これを収束させる必要があることは言うまでもない。しかし、ハンスト後に出所した人を短期間で元の収容所にもどし、これを他の被収容者への見せしめにして「ハンストしてもムダだ」と恫喝するようなやり方が許されるわけがない。法は貴職らに対し、見せしめに使用するために人間の身体を拘束する権限を与えているのではない。

 しかも、一連の再収容は、ハンストを収束させるという目的からみても、失敗はあきらかである。大村・東日本両入管センターに再収容された人の多くが、再収容後にふたたびハンストをおこなっている。見せしめの再収容は被収容者の怒りを呼び、ハンストを収束させるどころか、これをあおり助長する結果にしかなっていない。

 拒食をくりかえすことは、心身への負担がきわめて大きく、生命の危険をもたらす行為である。入管が見せしめのための再収容を今後もつづけるならば、被収容者たちをこのような危険な行為に駆り立て、また新たに死亡者を出す危険がきわめて高い。

 人命尊重を最優先する観点から、大村センターから仮放免されたのち9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること、また、ハンストをおこなったのちに仮放免した人を再収容しないことを求める。



2.超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 私たちは従来より6か月以上の収容を「長期収容」と位置づけ、これに反対してきた。6か月をこえるような収容は、高血圧・不眠等の拘禁を原因とするとみられる症状を発症させるなど、被収容者の心身への負担がいちじるしく、人権・人道上の問題が大きい。また、こうして収容が長期化することは、送還の見込みが立たないにもかかわらず収容が継続されていることの証左でもある。送還という、収容のそもそもの目的を達する見込みがないのに長期にわたり収容をつづけるのは、いたずらに被収容者の心身に苦痛を与え、その健康をそこなわせることにしかならない。

 こうした観点から、私たちは6ヶ月をこえる長期収容に反対してきたが、こんにちでは2年を超える「超長期」とも言うべき度をこした長期収容が各入管収容施設において常態化している。大村センターでも、収容期間が3年、あるいは4年超の被収容者がめずらしくなくないのが現状である。

 超長期の収容が横行しているということこそが、帰るに帰れない事情をかかえる被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいる。この絶望が、多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、また被収容者たちのあいだにあいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのである。さらに、抗議を意図したハンストをしているわけではないのに、心因性とみられる症状で食事がとれなくなって体重が激減し、自力では歩行できないほどに衰弱している被収容者も、複数いる。

 とくにハンストをおこなう被収容者があとをたたない現状を放置すれば、また新たな死亡者を出す危険はきわめて高い。すでに述べたとおり、ハンスト者をいったん仮放免したうえで短期間で再収容して見せしめにするという、人間の命をもてあそぶようなやり方では、ハンストを収束できないばかりか、ハンストもしくは自傷行為を助長することにしかならない。被収容者の生命を守るための緊急の必要として、まずは2年をこえる超長期の被収容者たちを全員仮放免することを求める。新たな犠牲者をこれ以上出さないために、収容の長期化を仮放免制度の弾力的活用によって回避していくという方針を貴職が行動によって被収容者全体に示す以外にない。

以 上


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注:申入書ではハンストをして仮放免されたのち再収容されている人を「3名」と述べましたが、申し入れ前日(1129日)にこのうち1名が再度の仮放免を許可されたので、申し入れ時点での再収容者は正しくは「2名」でした。



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