Friday, November 29, 2019

当事者の声を聞いて! 法務省に申し入れ 収容・送還について


 入管の収容長期化問題が社会的に注目されるなか、出入国在留管理庁(入管庁)は「収容・送還に関する専門部会」において、収容長期化の防止策などの検討をはじめました。専門部会は、10月21日の第1回からこれまで3回の会合が開かれたようです。


 法務省がウェブサイトで公表している情報やマスコミ報道などから考えて、専門部会は、つぎのような点の法制化にむけて議論をおこなっていくとみられます。

(1)難民申請中の者の強制送還を可能にすること
(2)送還拒否に対する刑罰の創設

 いま以上に強引な送還を可能にする政策議論が、当事者の声を聞くことなしに進められようとしていることに、私たちは仮放免者の当事者団体として強い危惧をおぼえています。過酷な長期収容をへても送還に応じられないのは、帰国しようにもできない事情を当事者それぞれがかかえているからです。

 本ブログでもこの間お伝えしてきたように、どうしても帰国できない事情のある被収容者・仮放免者(※注)に対し、法務省は、強硬かつ強引に送還を推し進めてきました。今、各地の入管収容施設で勃発しているハンストは、その矛盾が極点に達したことを示すものです。

 このような、当事者の命を賭したたたかいに対して、法務省は、この状況をまねいたみずからの政策の誤りを認めようとせず、そればかりか、いったん仮放免許可を出しておいて、2週間後に再収容するという、人命をもてあそぶような、虐待、拷問とも呼ぶべき挙に出ました。このようなやり方は、当然のことながら、当事者のみならず、社会からの広汎な批判をまねいています。この間の経緯にかんがみれば、法務省の政策は完全に失敗していることは、もはや明白です。にもかかわらず、当事者の必死のたたかい、社会からの広汎な批判などなかったかのように、平然と「収容・送還に関する専門部会」が立ち上げられ、上のような政策がまたもや押し通されようとしています。

 しかし、当事者の声、社会の批判を全く顧みない政策は誤っています。

 そこで、専門部会の第3回の会合がおこなわれた11月25日に、検討にあたって当事者(仮放免者と被収容者)から状況・意見を聞く場をもうけてほしいとの申し入れを仮放免者の会としておこないました。

 申し入れに先だって、「収容・送還問題を考える弁護士の会」「仮放免者の会」の共催で記者会見をおこないました。


 記者会見のあと、仮放免者当事者と支援者、弁護士で法務省をおとずれ、申入書を手渡そうとしましたが、職員が受け取らなかったため、以下の申入書を郵送しました。



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申 入 書

20191125

法務大臣 森まさこ 殿
出入国在留管理庁長官 佐々木聖子 殿
「収容・送還に関する専門部会」部会長 安冨潔 殿
同部会委員各位

仮放免者の会


 1021日より、第7次政策懇談会「収容・送還に関する専門部会」が開かれています。この専門部会は、収容の長期化を防止する方策などを議論し検討するために、法務大臣が設置したものです

 私たちは、収容の長期化が問題として取り上げられ、その対策が議論されること自体は歓迎します。しかし、マスコミ報道によると、この専門部会では、「迅速な送還」のための難民認定制度の改変や送還拒否に対する罰則の創設などが検討されているとのことです。収容長期化問題への対策が、もっぱら「送還忌避者」を日本からいわば追い出すという方向でのみ議論されること、またその議論が当事者の声を聞かないまま進められていることに、私たちは強い危惧をいだいています。

 私たち仮放免者の会は、退令仮放免者の当事者団体です。退去強制令書発付処分を受けた私たちの多くは、入管施設に収容された経験があります。また、私たちの仲間の多くが現在長期収容に苦しんでいます。過酷な収容をへても私たちが帰国しないのは、帰るに帰れない事情をそれぞれにかかえているからです。難民であること、あるいは日本に家族がいること、長期間日本に滞在してきて国籍国にはすでに生活基盤がないことなどです。帰るべき「国籍国」自体がなく、事実上の無国籍状態の者も私たちの仲間にはいます。

 こうした当事者たちの日本での在留を求める事情を委員の方々が聞き取りするなどして具体的に知っていただけば、「迅速な送還」という方向からのみ収容長期化問題の対策を考えることがはたして妥当なのか、問われることになるでしょう。また、長期収容が人間の心身にどのような影響をあたえるのか、収容の経験がいかに過酷なものなのか、当事者から直接に話を聞くことも、収容長期化の防止策を検討するうえで重要であるはずです。

 収容と送還は、当事者である仮放免者および被収容者の基本的人権にかかわることです。入管施設で被収容者が病死する、あるいは自殺するという事件は現にくり返し起こっており、国籍国に送還されれば命が危険にさらされる者もおります。収容・送還は、当事者にとって命にかかわる問題と言っても過言ではありません。当事者たちの実情を具体的に知らずに軽々しく議論してよい問題ではありません。

 法務省や入管庁が「送還忌避者」という言葉でひとくくりにする当事者ひとりひとりに、送還をこばんでいる理由・事情があり、過酷な長期収容にも耐えざるをえない苦悩があります。もちろん当事者の全員にのこらず面会してその訴えを聞いてほしいなどと求めているわけではありません。しかし、収容・送還に関して政策に反映される議論をする以上、何人かでも当事者から直接の聞き取りをおこない、収容や送還が人間にどのような影響を与えうるのか(また現に与えているのか)を具体的に知ることは、最低限の責任と言うべきでしょう。「送還忌避者」という観念ではなく、ひとりひとりの人間の生命・健康や人生に影響する議論をおこなっているのですから。

 どうか、当事者である仮放免者・被収容者から状況・意見を聞く場をもうけてください。



以 上

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※注:このようにどうしても帰国できない事情のある被収容者・仮放免者を、法務省は「送還忌避者」とラベリングし、 かつて「治安への懸念」として煽ったやり方を さらに全面的に展開したキャンペーンを張ろうとしています。法務省のこのようなやり方は、許されるべきものではありません。今後、本ブログで批判を加えます。


Thursday, November 28, 2019

今年もやります 大阪入管前キャンドルアクション 12月25日

被収容者を励ます
12・25キャンドルアクション

今年もやります。声、交わそう!
ペンライトやケミカルライトなど、灯りを持って集まろう!

2019年 12月25日(水)
18:00~

大阪出入国在留管理局前集合(→MAP
大阪市営地下鉄中央線「コスモスクエア駅」下車 徒歩3分

主催・共催:TRY、仮放免者の会、WITH、難民支援コーディネーターズ関西
連絡先:try★try-together.com (★をアットマークにかえてください)






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Friday, November 8, 2019

大阪入管で10名がハンガーストライキ(10/5-)


 すでに共同通信による報道が出ていますが、11月5日から大阪出入国在留管理局(大阪入管)の被収容者10名が、ハンガーストライキをおこなっています。


 被収容者との面会等をつうじて確認したところ、開始から3日目になる7日時点で10名がハンストを継続しています。ハンスト参加者の国籍はウガンダ、カメルーン、ブラジル、スリランカ、イラン、タンザニアなど。難民申請者や家族が日本にいる人、長期間日本で働いてきて出身国にはすでに生活基盤がないなど、それぞれに帰国しようにもできない事情のある外国人たちです。

 ハンストをとおして被収容者たちが抗議しているのは、収容の長期化、仮放免申請の不許可理由が説明されないこと、劣悪な医療処遇、購買品目の値上げと品目減少などに対してです。

 とくに収容の長期化は深刻で、今回のハンスト参加者のなかにも、2年をこえる「超長期」というべき被収容者が3名、うち1名は収容期間が5年におよびます。入管法で規定された収容の位置づけは、強制送還が可能になるまでのあいだ身体を拘束するというものです(「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項)。収容が長期化するということは、送還という収容の法的に位置づけられた目的を達する見込みがたたないにもかかわらず、入管が収容の継続に固執することから生じる現象です。その意味で、1年や2年をこえるような収容は、法の趣旨を逸脱した、被収容者の心身を痛めつけるだけの有害でまったく無益な行為なのです。

 医療処遇の問題も深刻です。ハンスト参加者のひとりは、左ふとももに直径20cmぐらいの範囲で皮膚の感覚がなく、つまようじで刺しても痛みを感じないという症状が出て、医師の診察を求める申出書を大阪入管に提出しました。ところが、4日後に入管側から受けた返答は「不許可」でした。この人は、「医師免許のない人がどうして判断できるのか」といきどおり、ハンストを開始しました。医療の専門的知見をもたない職員が診療の可否を判断し、被収容者の医療へのアクセスを不当にさまたげる。こういったことが横行しているのが、入管施設における医療の重大な問題点といえます。

 大阪入管の被収容者たちがこうした人権侵害に抗して声をあげていることに注目してください。

 また、報道関係者のかたは、収容されている当事者に取材し、報道していただけるとさいわいです。取材を希望されるかたは、以下の支援団体で受け付けておりますので、ご連絡ください。

TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
ウェブサイト http://try-together.com/index.html
メールアドレス try(a)try-together.com
 ※(a)は@にかえてください。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


追記)

 大阪入管に対しては、9月18日に5団体の連名で申入れをおこないました。以下の記事に申入書を掲載しているので、参照してください。



 また、大阪入管の職員から暴行を受けたトルコ国籍の元被収容者が国を相手取って裁判をたたかっています。こちらもご注目ください。




その他 関連記事(大阪入管に関して)


Wednesday, November 6, 2019

【傍聴呼びかけ】大阪入管暴行事件(第9回口頭弁論)


 大阪入管職員による集団暴行事件の被害者Mさんが国に損害賠償をもとめて裁判をたたかっています。

 事件についての詳細については、以下の記事をごらんください。

 次回(第9回)の弁論は、以下の日時にておこなわれます。

 日時:2019年11月13日(水) 13:15~
 場所:大阪地方裁判所810号法廷(→地図


 都合のつくかたは、ぜひ法廷で傍聴をお願いします。


 また、公判後には、原告Mさんと弁護団も出席しての報告集会もおこないます。こちらもご参加ください。

 今後ともこの裁判にご支援・ご注目をお願いいたします。

Tuesday, November 5, 2019

10月30日 大村入管センターに抗議・申し入れ(被収容者死亡事件とハンスト者の再収容等について)


 10月30日、長崎県にある大村入国管理センターに対して仮放免者の会として申し入れをおこないました。

 大村センターでは、6月24日にナイジェリア人被収容者(以下「Aさん」とします)が死亡しました。この死亡事件について、出入国在留管理庁(入管庁)は10月1日に「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について」と題する報道発表をおこなったところです。

法務省:大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri09_00050.html )

 入管庁の調査報告は、Aさんへの「大村センターの対応が不相当だったと評価することは困難」とし、また「仮放免を行うべきであったということはできない」とも述べています。ところが、この調査報告であきらかにされている事実経過をもとに評価してさえ、大村センターの人命軽視の姿勢はあきらかであり、人命を二の次にした同センターの対応がAさんを死に追いやったと言わざるをえません。申し入れでは、この点を指摘するとともに、大村センターが今後 被収容者の生命を最優先する対応をとるよう、以下2点をもとめました。

  1. 2週間といった短期間での再収容はしないこと。また、9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること
  2. 超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 大村入管センターにおいても、東日本入管センターなどとともに、収容の超長期化とも言うべき状況が深刻化しております。また、長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなった被収容者2名が2週間ほどの仮放免ののち再収容されており、2名とも再収容後にふたたびのハンストをおこなっています。入管の非人道的な対応が被収容者のハンストをあおり助長しているのであり、こうした対応をあらためるよう、大村センターに対してもとめました。

 以下、申入書の全文を掲載します。




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申 入 書

20191030

大村入国管理センター所長殿

仮放免者の会


 624日に大村入国管理センターに収容されていたナイジェリア人男性(以下「Aさん」とする)が死亡した。101日、その死因について出入国在留管理庁は拒食による飢餓死とする報告書を公表した。報告書は、Aさんが「ここから出して下さい」と要求して拒食をおこなっていたことをあきらかにしている。

 報告書によると、Aさんが拒食をおこなっていることを貴職は530日には把握していたのであり、これを放置すればAさんが死亡する危険があることを貴職は十二分に予測できたはずである。

 しかも、貴職は、Aさんの要求の内容を認識していたのであるから、拒食をやめるようにAさんと交渉しうる余地はあった。「ここから出して下さい」という要求にこたえる姿勢を貴職が示せば、Aさんは拒食と治療拒否をやめたはずなのである。

 貴職にとって、収容施設の運営上考慮すべきことがらがさまざまにあるにしても、第一に優先すべきは被収容者の生命であることは、言うまでもない。食事と治療を拒否していたAさんの死亡は事前に十分すぎるほど予測しえたことであり、かつ、Aさんが拒食・治療拒否をやめる条件があきらかだったにもかかわらず、飢餓死という最悪の結果をまねいてしまったのは、貴職がほかのなにをおいても優先すべき被収容者の生命を二の次にしたということにほかならない。

 現在、大村入国管理センターをふくむ各地の入管施設において、長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなう被収容者があとをたたない。ふたたび死亡者を出すことがあってはならない。貴職が被収容者の生命を最優先する対応をとるよう、以下、申し入れる。



1.2週間といった短期間での再収容はしないこと。また、9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること

 現在、入管は、収容中にハンストをおこなうなどして健康状態が深刻に悪化した人について、仮放免を約束して摂食を再開させてしばらく経過したのち仮放免し、2週間といった短期間で再収容するということをくりかえしている。大村センターにおいても、少なくとも3(注)が同様のかたちで再収容されている。

 このうち2名は、大村センターから仮放免されたのち、居住地が関東地方であったため東京出入国在留管理局に出頭したところ、関東にも収容場・収容所があるにもかかわらず、わざわざ大村センターまで航空機で移送されて再収容された。このことからも、一連の再収容が、ハンストをおこなう被収容者たちに対する見せしめ・恫喝を目的としたものであることは、あきらかである。

 ハンストの広がりと長期化が被収容者たちの生命・健康を危険にさらすものである以上、これを収束させる必要があることは言うまでもない。しかし、ハンスト後に出所した人を短期間で元の収容所にもどし、これを他の被収容者への見せしめにして「ハンストしてもムダだ」と恫喝するようなやり方が許されるわけがない。法は貴職らに対し、見せしめに使用するために人間の身体を拘束する権限を与えているのではない。

 しかも、一連の再収容は、ハンストを収束させるという目的からみても、失敗はあきらかである。大村・東日本両入管センターに再収容された人の多くが、再収容後にふたたびハンストをおこなっている。見せしめの再収容は被収容者の怒りを呼び、ハンストを収束させるどころか、これをあおり助長する結果にしかなっていない。

 拒食をくりかえすことは、心身への負担がきわめて大きく、生命の危険をもたらす行為である。入管が見せしめのための再収容を今後もつづけるならば、被収容者たちをこのような危険な行為に駆り立て、また新たに死亡者を出す危険がきわめて高い。

 人命尊重を最優先する観点から、大村センターから仮放免されたのち9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること、また、ハンストをおこなったのちに仮放免した人を再収容しないことを求める。



2.超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 私たちは従来より6か月以上の収容を「長期収容」と位置づけ、これに反対してきた。6か月をこえるような収容は、高血圧・不眠等の拘禁を原因とするとみられる症状を発症させるなど、被収容者の心身への負担がいちじるしく、人権・人道上の問題が大きい。また、こうして収容が長期化することは、送還の見込みが立たないにもかかわらず収容が継続されていることの証左でもある。送還という、収容のそもそもの目的を達する見込みがないのに長期にわたり収容をつづけるのは、いたずらに被収容者の心身に苦痛を与え、その健康をそこなわせることにしかならない。

 こうした観点から、私たちは6ヶ月をこえる長期収容に反対してきたが、こんにちでは2年を超える「超長期」とも言うべき度をこした長期収容が各入管収容施設において常態化している。大村センターでも、収容期間が3年、あるいは4年超の被収容者がめずらしくなくないのが現状である。

 超長期の収容が横行しているということこそが、帰るに帰れない事情をかかえる被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいる。この絶望が、多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、また被収容者たちのあいだにあいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのである。さらに、抗議を意図したハンストをしているわけではないのに、心因性とみられる症状で食事がとれなくなって体重が激減し、自力では歩行できないほどに衰弱している被収容者も、複数いる。

 とくにハンストをおこなう被収容者があとをたたない現状を放置すれば、また新たな死亡者を出す危険はきわめて高い。すでに述べたとおり、ハンスト者をいったん仮放免したうえで短期間で再収容して見せしめにするという、人間の命をもてあそぶようなやり方では、ハンストを収束できないばかりか、ハンストもしくは自傷行為を助長することにしかならない。被収容者の生命を守るための緊急の必要として、まずは2年をこえる超長期の被収容者たちを全員仮放免することを求める。新たな犠牲者をこれ以上出さないために、収容の長期化を仮放免制度の弾力的活用によって回避していくという方針を貴職が行動によって被収容者全体に示す以外にない。

以 上


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注:申入書ではハンストをして仮放免されたのち再収容されている人を「3名」と述べましたが、申し入れ前日(1129日)にこのうち1名が再度の仮放免を許可されたので、申し入れ時点での再収容者は正しくは「2名」でした。



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