12月27日(月)に大阪入管に申し入れをおこないました。6日に大阪入管が、裁判中の被収容者を遠方の茨城県の東日本入管センターに移収したことに抗議し、申し入れたものです。申入書の全文は、この記事の最後に掲載していますので、ぜひご参照してください。
デリックさん(タンザニア国籍)が移収された経緯と問題点を、以下に述べます。なお、ご本人からは、お名前・国籍、入管から受けた被害の内容について公表する許諾をいただいています。
裁判妨害の移収
デリックさんが東日本センターへの移収を大阪入管職員から告げられたのは、2日(木)でした。デリックさんは、難民不認定処分に対する取消しを求める裁判を大阪地方裁判所でしているところです。デリックさんの代理人弁護士は、裁判所にデリックさん本人への証人尋問をおこなうよう求めております。デリックさんが遠方の茨城県にある施設に移収されてしまえば、証人尋問が不可能になります。また、大阪にいる弁護士とのあいだで面会して裁判の打ち合わせをすることも事実上不可能になります。
したがって、翌3日(金)には、弁護士が大阪入管に対して、デリックさんの移収を取りやめるように申し入れをしています。複数の支援者も、この日に電話やファクシミリ、また大阪入管に直接出向いて、デリックさんを移収することは裁判の妨害であり、これを中止するように抗議・申し入れをおこないました。
5日(日)には、AWCYouthの主催で移収反対の抗議行動が大阪入管前で40名が参加しておこなわれました。
ところが、大阪入管は、こうした裁判を受ける権利を侵害するなという声を無視し、6日(月)にデリックさんの移収を強行しました。
視察委員会との面談も妨害
大阪入管がデリックさんの移収を強行したことには、もう1点みすごせない問題があります。
入管収容施設の適正な運営に資するため、視察等を行い、意見を述べる第三者機関として「入国者収容所等視察委員会」というものが設置されています。大阪入管がデリックさんを移収した6日は、この視察委員会による視察がおこなわれる日でした。
この日に視察があることは大阪入管収容場に事前に掲示され、デリックさんは視察委員との面談を申し込んでいました。デリックさんが茨城に向かって大阪入管を出発したのはこの日の22時でした。視察委員との面談は可能でしたし、他の被収容者はこの日に訪問した視察委員と面談しています。デリックさん自身、自分はいつ視察委員と会えるのかと大阪入管の職員に再三たずねています。ところが、大阪入管は、デリックさんを視察委員と面会させることなく、移収してしまいました。
デリックさんはこの日に先んじて、面会した複数の支援者に対して、自分が看守職員からセクシュアルハラスメントを受けていること、この被害を12月6日に視察委員に訴えるつもりであることを話していました。支援者との面会には、大阪入管は職員を立ち会わせてその会話の内容を記録しています。したがって、大阪入管は、デリックさんがセクハラ被害を訴える意思があることを知ったうえで、視察委員との面談をさせずに移収をおこなったということになります。
このことは、デリックさんが視察委員と面談して自身の被害を訴える権利をうばったものであり、同時に、視察委員会を愚弄しその存在意義を否定したものであるとも言えます。収容施設を運営する大阪入管側が、視察委員と面談させる被収容者を選び、自分たちにとって都合の悪い被収容者をそこから排除するということが認められるならば、視察委員会による視察は形骸化するほかないでしょう。大阪入管が今回やったのは、まさにそういうことであるわけです。
大阪入管に申し入れた内容
大阪入管の公権力を恣意的に使っての裁判妨害、また視察委員との面談の妨害はだんじて許すわけにはいきません。そういうわけで、7団体の連名で3点を大阪入管に対して申し入れました。
第1に、裁判妨害の移収をおこなったことについて局長がデリックさんおよび代理人弁護士に謝罪し、デリックさんを大阪入管に戻すこと。
第2に、視察委員に面談させなかったことを局長がデリックさんに謝罪すること。
第3に、第2の点について局長はこれを承知した上でデリックさんの移収を決定したのか、期日まで回答せよということ。この3点目は、以下の申入書には書いていませんが口頭で申し入れました。
以下に申入書の全文を掲載します。ただし、デリックさんのフルネームが記載されているところは、省略しました。
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抗議・申入書
2021年12月27日
大阪出入国在留管理局
局長 小出 賢三 殿
WITH(西日本入管センターを考える会)
AWC Youth(アジア共同行動関西青年部)
仮放免者の会
Save immigrants Osaka
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民支援コーディネーターズ・関西
PASTEL-難民支援・研究団体-
大阪出入国在留管理局は、2021年12月6日(6日の22時に大阪入管を出発、翌7日に移収先に到着。)、大阪地裁に訴訟中のデリック氏(タンザニア国籍)を東日本入国管理センター(茨城県牛久市)に移収した。デリック氏の裁判は証人尋問も近く、かつ弁護士がデリック氏と面会をして陳述書を作成しようとしていた矢先の移収である。
貴局は、裁判を公正に受けるために牛久に行きたくないという本人の意思を無視し、また牛久に移収されたなら打合せもできなくなり証人尋問を含めた十分な立証活動が阻害されるとの弁護士の移収反対の強い要請を無視し、さらに支援者の「裁判を起こす権利を侵害するな、訴訟妨害するな」との抗議を無視し、牛久への移収を強行した。今年の10月、貴局ら入管が難民不認定の取り消し訴訟を起こす機会をスリランカ人男性2人から奪い、強制送還したのは違憲とする東京高裁判決が確定した。その違憲判決の確定後の、何の反省もない今回の訴訟妨害、牛久移収強行である。
加えて、移収した当日は前々から本人の申請に基づく視察委員との面談が予定されており、本人も視察委員との面談を強く希望していた。にもかかわらず、貴局は面談の見通しについて本人の再三の問い合わせに回答することなく移収を強行し、視察委員と面談する被収容者の権利をはく奪した。
2016年、大阪入管の処遇の企画統括は、被収容者に「要求の権利はない」と口封じしようとした。そして今回の被収容者には裁判を起こす権利がないと言わんとばかりの貴局入管の訴訟妨害は、貴局ら入管は治外法権という特権を有するかのような思い上がりがあるとしか言いようがない。私たちは貴局入管の裁判を起こす権利の侵害、訴訟妨害を断じて許すことはできない。
私たちは貴局局長に対し、以下要求する。
記
大阪入管局長は、訴訟妨害をしたことをデリック氏本人及び同氏の弁護士に謝罪し、直ちにデリック氏を牛久から大阪入管に戻すこと。
大阪入管局長は、視察委員と面談させなかったことについて、デリック氏本人に対し謝罪すること。
以上