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関東仮放免者の会「宣言」/賛助会員募集とカンパのおねがい

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Sunday, December 29, 2019

【傍聴報告】スリランカ人強制送還国賠 次回判決言い渡し


 12月10日(火)、東京地方裁判所にてスリランカ人強制送還国賠訴訟の弁論が開かれました。この裁判は、2014年12月にチャーター機によって集団送還されたスリランカ人のうち2名が、強制送還によって裁判を受ける権利をうばわれたとして国に損害賠償を求めているものです。

 原告のふたりは、東京入管に身体を拘束された状態で難民不認定処分への異議申し立て棄却を通知され、そのまま入管がチャーターした飛行機に乗せられて、送還されました。

 今回の弁論では、原告弁護団の駒井知会弁護士による意見陳述がおこなわれました。駒井弁護士は、Bさんが入管職員から難民異議棄却を告げられたときの様子を描写・再現することから意見陳述をはじめました。Bさんは、これから自分が強制送還されようとしていることを知り、恐怖のあまり床に座りこみ身体をふるわせ、「スリランカで殺される」「弁護士呼んで」と訴え、裁判をする意思を伝えました。東京入管が保有するこの場面の映像は、5月に法廷で上映されました。

 入管の職員はこのときBさんに、難民異議棄却の決定に対して不服がある場合は取消請求訴訟をおこなうことができることを説明しています。にもかかわらず、入管はBさんの裁判の意思を無視して強制送還を実施しました。入管の決定に対しては不服ならば裁判の場でこれを争うことができるということを口では説明しながら、強制送還してそれを封じてしまう。入管という行政機関の職員たちが、自分たちの今まさに発した言葉をその場で裏切る行動をしている様子が、映像にうつっているわけです。どうしてこんなむちゃくちゃがまかりとおっているのだろうか、と思わずにはいられません。

 そして、Bさんが床にへたりこみ恐怖におのきながら懇願する映像は、冷静に見られるものではありませんでした。

 駒井弁護士は意見陳述の最後に、「難民申請者も人間です」と述べ、「日本が基本的人権を尊重される国であること、手続保障が適正に行われる国であることを示してください」と裁判官たちにうったえました。

 難民申請者が人間であるのは、あたりまえです。しかし、この裁判の原告たちに対する入管の仕打ちを目にしたとき、「難民申請者も人間です」という、わざわざ言葉にするまでもないあたりまえの事実をうったえざるをえません。

 人間について「○○も人間である」などと言明しなければならないような社会であってはなりません。難民申請者があたりまえに人間としてあつかわれるような社会へと日本がかわっていくために、この裁判は重要な意義をもっているとあらためて思いました。

 この日の弁論で裁判は結審となりました。次回は、判決の言い渡しとなります。都合のつくかたは、ぜひ、傍聴をお願いします。


日時:2020年2月27日(木曜)、13:10
場所:東京地方裁判所 705法廷


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Wednesday, December 4, 2019

【傍聴呼びかけ】スリランカ人強制送還国賠 12月10日次回弁論 東京地裁


 入管庁は、収容長期化問題への対策などを検討するとして、有識者などからなる「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げました。この専門部会では、「当事者の声を聞いて! 法務省に申し入れ 収容・送還について」で述べたように、難民申請中の者の強制送還を可能にすることをふくめた、送還強化のための制度変更などが議論されていくとみられます。

 難民申請者を強制送還することは、日本も加盟する難民条約に違反するのはもとより、現行の入管法(難民認定及び出入国管理に関する法律)でも禁止されています。難民条約との整合性をどう考えているのか知りませんが、入管庁が専門部会をつうじて難民申請者の強制送還を可能にする法改定をねらっているのはまちがいありません。部会での議論に注視しつつ、難民認定制度をいま以上に骨抜きにする法改悪に反対の声をあげていく必要があります。

 さて、すでに入管当局は、現行法のもとでもきわめて脱法的なやり方で(というよりも、「違法」と言うべきだと私たちは考えますが)難民申請者を強制送還した例があります。入管施設に監禁して身体を拘束した状態で難民申請の却下を通知し、そのまま空港に連行して航空機にのせるというやりかたでの送還です。

 ここで重要なのは、現行制度において、難民認定審査と退去強制業務の2つが、「入管」という1つの組織のなかでおこなわれているという点です。このため、入管は、ある人を強制送還する日時をまず決めたうえで、その日時の直前に難民申請の却下を本人に通知する、ということが可能です。つまり、難民不認定という入管がくだした行政処分に対して、裁判所にうったえて争うという時間をあたえずに強制送還してしまうという、いわば「裁判封じ」が入管にとって可能なのです。

 これは、難民審査が、退去強制(強制送還)ふくめた出入国管理から独立しておらず、それどころか従属していると言うべき事態です。そしてこの手法での送還は、形式上は難民申請者を強制送還したことにはならない(難民申請を却下したあとに送還がおこなわれているので)かもしれませんが、行政処分を受ける者に保障されるべき裁判を受ける権利を奪うものであり、きわめて問題があります。

 こうした難民申請者に対する「裁判封じ」の強制送還がおこなわれたのが、2014年12月のチャーター機を使った集団送還(スリランカ人26人とベトナム人6人)においてです。このときに送還されたスリランカ人のうち2名が原告となって、国に損害賠償をもとめる裁判をたたかっています(2017年10月19日提訴)。次回の弁論が、以下の日時・場所にておこなわれます。

日時:12月10日(火曜) 16時45分
場所:東京地方裁判所 522号法廷

 これがおそらく結審となるとみこまれます。ご都合のつくかたは、ぜひ法廷にて傍聴をお願いします。


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 前回弁論の傍聴を呼びかけた記事もあわせてごらんください。





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Sunday, December 1, 2019

入管庁が仮放免者による「殺人未遂事件」をでっちあげ 資料捏造問題

 出入国在留管理庁(入管庁)が、入管施設に収容している外国人について虚偽の事実を掲載した資料を公表していたことがわかりました。石橋通宏参議院議員が11月28日の国会質疑(厚生労働委員会)であきらかにしました。

 問題となっているのは、「送還忌避者の実態について」と題された資料で、10月1日の法務大臣記者会見において記者に配布され、法務省のウェブサイトにも公開されていたものです。この資料は、「送還忌避被収容者の実態」「被退令仮放免者の実態」といった項目からなり、送還を拒否している人の難民申請の状況、過去の犯罪歴などについての情報をのせています。

 石橋議員が追及したのは、この資料の5ページ、「送還忌避者の実態②~被退令仮放免者が関与した社会的耳目を集めた事件~」にあげられている「事例4」です。



 資料は「警察官殺人未遂事件」となっていますが、これは虚偽です。

 私たちは、ここで「警察官殺人未遂事件」の「加害者」とされている方が現在入管施設に収容されているCさんであることを、資料に記された事件発生年月・場所などから特定し、ご本人と面会して話を聞くことができました。たしかにCさんは殺人未遂・銃刀法違反・公務執行妨害の容疑で逮捕されていますが、殺人未遂については起訴にもいたらず、公務執行妨害については無罪、銃刀法違反についてのみ有罪・執行猶予という判決が確定しています。

 つまり、この事例において、「殺人未遂事件」という事実はありませんし、被害者の存在しない銃刀法違反についてCさんを「加害者」と呼ぶのもまったく不適切です。

 さて、石橋議員の追及に対して、宮﨑政久法務大臣政務官は、資料の問題の箇所は、捜査機関から入管当局になされた通報にもとづいて(つまり、Cさんが逮捕・勾留された時点での情報をもとに)書かれたということを述べています。刑事裁判開始前に資料は作成されており、その後の確定した判決結果の確認をこころみることはしていなかったのだ、と。そのうえで政務官は、事実を歪曲したり、犯罪事実を誇張する意図はなかったとしています。

 しかし、入管庁が資料の作成・公表にあたって、確定した判決の内容(銃刀法違反のみで有罪)を確認していなかったとはとうてい考えられません。

 逮捕から半年後の2018年2月に判決が言い渡され、Cさんの身体は検察から入管局へと引き渡されます。このとき以来、Cさんは入管施設に収容されており、資料が公表された2019年10月においても、入管によって身体を拘束されていました。入管庁がみずからの施設で身体を拘束しているCさんについて、確定した判決の内容を知らず、逮捕当時の容疑のひとつであった「殺人未遂」では起訴すらされていなかった事実を知らなかったわけがないのです。

 とすると、石橋議員が指摘するように、入管庁は、仮放免者が悪いことをしているかのような誘導・宣伝をするために、虚偽の事実を書き込んだ資料を公表したと考えるほかありません。

 かりに、ありえないことですが、百歩ゆずって入管庁の職員が、確定した判決の内容を知らずにこの資料を作成したのだと仮定しましょう。そうだとしても、裁判開始前のまだ捜査中の段階で「殺人未遂」の容疑がかけられていたという事実をもって、まるで仮放免者が凶悪事件の「加害者」となったかのように宣伝する資料を作成するなど、決定的に人権意識を欠いたきわめて悪質な行為であって、けっして容認できるものではありません。

 前回の記事で述べたように、現在、入管庁は「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げ、いま以上に強引な送還を可能にする制度変更を議論しようとしています。当事者である被収容者・仮放免者の声を聞く機会をもうけることなしにです。

 専門部会の第1回会合(10月21日)では、この「送還忌避者の実態について」が入管庁より部会のメンバーに配布されたということです。送還をこばんでいる人びとについて、虚偽の事実によってネガティブな印象をはりつけようとする資料をもとに議論がすすめられるのは許されることではありません。入管庁の配布した資料の捏造があきらかになったことについて、専門部会の部会長と委員諸氏がどのように対応するのか、注視していきたいと思います。


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 石橋議員による質疑の動画は、以下のリンク先でみれます。

参議院インターネット審議中継
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=5524#4481.4
(1:52:15ごろから入管庁資料についての質疑がはじまります)

 入管庁資料「送還忌避者の実態について」は、法務省サイトの以下リンク先でPDFファイルで公開されていましたが、28日の石橋議員の質問のあと、その日のうちに削除されたもようです。

法務省:送還忌避者の実態について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri09_00053.html

 法務省が理由の説明なしで資料を削除したことは、問題追及をさけるための隠蔽を意図したものとみなさざるをえません。入管庁が事実を捏造した資料を作成・公表したという事実は重く、問題の資料「送還忌避者の実態について」は広く批判的に検証される必要があると考え、参照できるように以下のリンク先からコピーをダウンロードできるようにしておきます。

https://bit.ly/2q1PHT5

 なお、一見して分かるように、この資料では、「送還忌避者」がいかに法に従わず、凶悪な犯罪を行い、円滑な行政の運用を妨げる存在であるか、といったことがこれでもかと強調されています。法務省がこの資料を公開した意図はあきらかだと言っていいでしょう。

 このたび発覚したのは、あたかも「送還忌避者」が日本社会にとって危険な存在であるかのように喧伝するこの資料において、法務省が虚偽の事実をでっちあげることすらしていたということであって、これは行政機関としての信頼を失墜させるきわめて重大な問題です。法務省・入管庁は、世論を誘導するために事実を捏造した資料をばらまくようなことをしたわけです。それでいて外国人に対しては「偽造旅券はダメ」だとか「申告内容に虚偽が含まれていたから在留資格を取り消します」だとかどの口で言えるのでしょうか?

 法務省は、虚偽の資料が作成・公表されるにいたった経緯を徹底的に調査するとともに、責任者を厳正に処分すべきです。


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Friday, November 29, 2019

当事者の声を聞いて! 法務省に申し入れ 収容・送還について


 入管の収容長期化問題が社会的に注目されるなか、出入国在留管理庁(入管庁)は「収容・送還に関する専門部会」において、収容長期化の防止策などの検討をはじめました。専門部会は、10月21日の第1回からこれまで3回の会合が開かれたようです。


 法務省がウェブサイトで公表している情報やマスコミ報道などから考えて、専門部会は、つぎのような点の法制化にむけて議論をおこなっていくとみられます。

(1)難民申請中の者の強制送還を可能にすること
(2)送還拒否に対する刑罰の創設

 いま以上に強引な送還を可能にする政策議論が、当事者の声を聞くことなしに進められようとしていることに、私たちは仮放免者の当事者団体として強い危惧をおぼえています。過酷な長期収容をへても送還に応じられないのは、帰国しようにもできない事情を当事者それぞれがかかえているからです。

 本ブログでもこの間お伝えしてきたように、どうしても帰国できない事情のある被収容者・仮放免者(※注)に対し、法務省は、強硬かつ強引に送還を推し進めてきました。今、各地の入管収容施設で勃発しているハンストは、その矛盾が極点に達したことを示すものです。

 このような、当事者の命を賭したたたかいに対して、法務省は、この状況をまねいたみずからの政策の誤りを認めようとせず、そればかりか、いったん仮放免許可を出しておいて、2週間後に再収容するという、人命をもてあそぶような、虐待、拷問とも呼ぶべき挙に出ました。このようなやり方は、当然のことながら、当事者のみならず、社会からの広汎な批判をまねいています。この間の経緯にかんがみれば、法務省の政策は完全に失敗していることは、もはや明白です。にもかかわらず、当事者の必死のたたかい、社会からの広汎な批判などなかったかのように、平然と「収容・送還に関する専門部会」が立ち上げられ、上のような政策がまたもや押し通されようとしています。

 しかし、当事者の声、社会の批判を全く顧みない政策は誤っています。

 そこで、専門部会の第3回の会合がおこなわれた11月25日に、検討にあたって当事者(仮放免者と被収容者)から状況・意見を聞く場をもうけてほしいとの申し入れを仮放免者の会としておこないました。

 申し入れに先だって、「収容・送還問題を考える弁護士の会」「仮放免者の会」の共催で記者会見をおこないました。


 記者会見のあと、仮放免者当事者と支援者、弁護士で法務省をおとずれ、申入書を手渡そうとしましたが、職員が受け取らなかったため、以下の申入書を郵送しました。



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申 入 書

20191125

法務大臣 森まさこ 殿
出入国在留管理庁長官 佐々木聖子 殿
「収容・送還に関する専門部会」部会長 安冨潔 殿
同部会委員各位

仮放免者の会


 1021日より、第7次政策懇談会「収容・送還に関する専門部会」が開かれています。この専門部会は、収容の長期化を防止する方策などを議論し検討するために、法務大臣が設置したものです

 私たちは、収容の長期化が問題として取り上げられ、その対策が議論されること自体は歓迎します。しかし、マスコミ報道によると、この専門部会では、「迅速な送還」のための難民認定制度の改変や送還拒否に対する罰則の創設などが検討されているとのことです。収容長期化問題への対策が、もっぱら「送還忌避者」を日本からいわば追い出すという方向でのみ議論されること、またその議論が当事者の声を聞かないまま進められていることに、私たちは強い危惧をいだいています。

 私たち仮放免者の会は、退令仮放免者の当事者団体です。退去強制令書発付処分を受けた私たちの多くは、入管施設に収容された経験があります。また、私たちの仲間の多くが現在長期収容に苦しんでいます。過酷な収容をへても私たちが帰国しないのは、帰るに帰れない事情をそれぞれにかかえているからです。難民であること、あるいは日本に家族がいること、長期間日本に滞在してきて国籍国にはすでに生活基盤がないことなどです。帰るべき「国籍国」自体がなく、事実上の無国籍状態の者も私たちの仲間にはいます。

 こうした当事者たちの日本での在留を求める事情を委員の方々が聞き取りするなどして具体的に知っていただけば、「迅速な送還」という方向からのみ収容長期化問題の対策を考えることがはたして妥当なのか、問われることになるでしょう。また、長期収容が人間の心身にどのような影響をあたえるのか、収容の経験がいかに過酷なものなのか、当事者から直接に話を聞くことも、収容長期化の防止策を検討するうえで重要であるはずです。

 収容と送還は、当事者である仮放免者および被収容者の基本的人権にかかわることです。入管施設で被収容者が病死する、あるいは自殺するという事件は現にくり返し起こっており、国籍国に送還されれば命が危険にさらされる者もおります。収容・送還は、当事者にとって命にかかわる問題と言っても過言ではありません。当事者たちの実情を具体的に知らずに軽々しく議論してよい問題ではありません。

 法務省や入管庁が「送還忌避者」という言葉でひとくくりにする当事者ひとりひとりに、送還をこばんでいる理由・事情があり、過酷な長期収容にも耐えざるをえない苦悩があります。もちろん当事者の全員にのこらず面会してその訴えを聞いてほしいなどと求めているわけではありません。しかし、収容・送還に関して政策に反映される議論をする以上、何人かでも当事者から直接の聞き取りをおこない、収容や送還が人間にどのような影響を与えうるのか(また現に与えているのか)を具体的に知ることは、最低限の責任と言うべきでしょう。「送還忌避者」という観念ではなく、ひとりひとりの人間の生命・健康や人生に影響する議論をおこなっているのですから。

 どうか、当事者である仮放免者・被収容者から状況・意見を聞く場をもうけてください。



以 上

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※注:このようにどうしても帰国できない事情のある被収容者・仮放免者を、法務省は「送還忌避者」とラベリングし、 かつて「治安への懸念」として煽ったやり方を さらに全面的に展開したキャンペーンを張ろうとしています。法務省のこのようなやり方は、許されるべきものではありません。今後、本ブログで批判を加えます。


Thursday, November 28, 2019

今年もやります 大阪入管前キャンドルアクション 12月25日

被収容者を励ます
12・25キャンドルアクション

今年もやります。声、交わそう!
ペンライトやケミカルライトなど、灯りを持って集まろう!

2019年 12月25日(水)
18:00~

大阪出入国在留管理局前集合(→MAP
大阪市営地下鉄中央線「コスモスクエア駅」下車 徒歩3分

主催・共催:TRY、仮放免者の会、WITH、難民支援コーディネーターズ関西
連絡先:try★try-together.com (★をアットマークにかえてください)






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Friday, November 8, 2019

大阪入管で10名がハンガーストライキ(10/5-)


 すでに共同通信による報道が出ていますが、11月5日から大阪出入国在留管理局(大阪入管)の被収容者10名が、ハンガーストライキをおこなっています。


 被収容者との面会等をつうじて確認したところ、開始から3日目になる7日時点で10名がハンストを継続しています。ハンスト参加者の国籍はウガンダ、カメルーン、ブラジル、スリランカ、イラン、タンザニアなど。難民申請者や家族が日本にいる人、長期間日本で働いてきて出身国にはすでに生活基盤がないなど、それぞれに帰国しようにもできない事情のある外国人たちです。

 ハンストをとおして被収容者たちが抗議しているのは、収容の長期化、仮放免申請の不許可理由が説明されないこと、劣悪な医療処遇、購買品目の値上げと品目減少などに対してです。

 とくに収容の長期化は深刻で、今回のハンスト参加者のなかにも、2年をこえる「超長期」というべき被収容者が3名、うち1名は収容期間が5年におよびます。入管法で規定された収容の位置づけは、強制送還が可能になるまでのあいだ身体を拘束するというものです(「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項)。収容が長期化するということは、送還という収容の法的に位置づけられた目的を達する見込みがたたないにもかかわらず、入管が収容の継続に固執することから生じる現象です。その意味で、1年や2年をこえるような収容は、法の趣旨を逸脱した、被収容者の心身を痛めつけるだけの有害でまったく無益な行為なのです。

 医療処遇の問題も深刻です。ハンスト参加者のひとりは、左ふとももに直径20cmぐらいの範囲で皮膚の感覚がなく、つまようじで刺しても痛みを感じないという症状が出て、医師の診察を求める申出書を大阪入管に提出しました。ところが、4日後に入管側から受けた返答は「不許可」でした。この人は、「医師免許のない人がどうして判断できるのか」といきどおり、ハンストを開始しました。医療の専門的知見をもたない職員が診療の可否を判断し、被収容者の医療へのアクセスを不当にさまたげる。こういったことが横行しているのが、入管施設における医療の重大な問題点といえます。

 大阪入管の被収容者たちがこうした人権侵害に抗して声をあげていることに注目してください。

 また、報道関係者のかたは、収容されている当事者に取材し、報道していただけるとさいわいです。取材を希望されるかたは、以下の支援団体で受け付けておりますので、ご連絡ください。

TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
ウェブサイト http://try-together.com/index.html
メールアドレス try(a)try-together.com
 ※(a)は@にかえてください。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


追記)

 大阪入管に対しては、9月18日に5団体の連名で申入れをおこないました。以下の記事に申入書を掲載しているので、参照してください。



 また、大阪入管の職員から暴行を受けたトルコ国籍の元被収容者が国を相手取って裁判をたたかっています。こちらもご注目ください。




その他 関連記事(大阪入管に関して)


Wednesday, November 6, 2019

【傍聴呼びかけ】大阪入管暴行事件(第9回口頭弁論)


 大阪入管職員による集団暴行事件の被害者Mさんが国に損害賠償をもとめて裁判をたたかっています。

 事件についての詳細については、以下の記事をごらんください。

 次回(第9回)の弁論は、以下の日時にておこなわれます。

 日時:2019年11月13日(水) 13:15~
 場所:大阪地方裁判所810号法廷(→地図


 都合のつくかたは、ぜひ法廷で傍聴をお願いします。


 また、公判後には、原告Mさんと弁護団も出席しての報告集会もおこないます。こちらもご参加ください。

 今後ともこの裁判にご支援・ご注目をお願いいたします。

Tuesday, November 5, 2019

10月30日 大村入管センターに抗議・申し入れ(被収容者死亡事件とハンスト者の再収容等について)


 10月30日、長崎県にある大村入国管理センターに対して仮放免者の会として申し入れをおこないました。

 大村センターでは、6月24日にナイジェリア人被収容者(以下「Aさん」とします)が死亡しました。この死亡事件について、出入国在留管理庁(入管庁)は10月1日に「大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について」と題する報道発表をおこなったところです。

法務省:大村入国管理センター被収容者死亡事案に関する調査報告について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri09_00050.html )

 入管庁の調査報告は、Aさんへの「大村センターの対応が不相当だったと評価することは困難」とし、また「仮放免を行うべきであったということはできない」とも述べています。ところが、この調査報告であきらかにされている事実経過をもとに評価してさえ、大村センターの人命軽視の姿勢はあきらかであり、人命を二の次にした同センターの対応がAさんを死に追いやったと言わざるをえません。申し入れでは、この点を指摘するとともに、大村センターが今後 被収容者の生命を最優先する対応をとるよう、以下2点をもとめました。

  1. 2週間といった短期間での再収容はしないこと。また、9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること
  2. 超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 大村入管センターにおいても、東日本入管センターなどとともに、収容の超長期化とも言うべき状況が深刻化しております。また、長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなった被収容者2名が2週間ほどの仮放免ののち再収容されており、2名とも再収容後にふたたびのハンストをおこなっています。入管の非人道的な対応が被収容者のハンストをあおり助長しているのであり、こうした対応をあらためるよう、大村センターに対してもとめました。

 以下、申入書の全文を掲載します。




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申 入 書

20191030

大村入国管理センター所長殿

仮放免者の会


 624日に大村入国管理センターに収容されていたナイジェリア人男性(以下「Aさん」とする)が死亡した。101日、その死因について出入国在留管理庁は拒食による飢餓死とする報告書を公表した。報告書は、Aさんが「ここから出して下さい」と要求して拒食をおこなっていたことをあきらかにしている。

 報告書によると、Aさんが拒食をおこなっていることを貴職は530日には把握していたのであり、これを放置すればAさんが死亡する危険があることを貴職は十二分に予測できたはずである。

 しかも、貴職は、Aさんの要求の内容を認識していたのであるから、拒食をやめるようにAさんと交渉しうる余地はあった。「ここから出して下さい」という要求にこたえる姿勢を貴職が示せば、Aさんは拒食と治療拒否をやめたはずなのである。

 貴職にとって、収容施設の運営上考慮すべきことがらがさまざまにあるにしても、第一に優先すべきは被収容者の生命であることは、言うまでもない。食事と治療を拒否していたAさんの死亡は事前に十分すぎるほど予測しえたことであり、かつ、Aさんが拒食・治療拒否をやめる条件があきらかだったにもかかわらず、飢餓死という最悪の結果をまねいてしまったのは、貴職がほかのなにをおいても優先すべき被収容者の生命を二の次にしたということにほかならない。

 現在、大村入国管理センターをふくむ各地の入管施設において、長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなう被収容者があとをたたない。ふたたび死亡者を出すことがあってはならない。貴職が被収容者の生命を最優先する対応をとるよう、以下、申し入れる。



1.2週間といった短期間での再収容はしないこと。また、9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること

 現在、入管は、収容中にハンストをおこなうなどして健康状態が深刻に悪化した人について、仮放免を約束して摂食を再開させてしばらく経過したのち仮放免し、2週間といった短期間で再収容するということをくりかえしている。大村センターにおいても、少なくとも3(注)が同様のかたちで再収容されている。

 このうち2名は、大村センターから仮放免されたのち、居住地が関東地方であったため東京出入国在留管理局に出頭したところ、関東にも収容場・収容所があるにもかかわらず、わざわざ大村センターまで航空機で移送されて再収容された。このことからも、一連の再収容が、ハンストをおこなう被収容者たちに対する見せしめ・恫喝を目的としたものであることは、あきらかである。

 ハンストの広がりと長期化が被収容者たちの生命・健康を危険にさらすものである以上、これを収束させる必要があることは言うまでもない。しかし、ハンスト後に出所した人を短期間で元の収容所にもどし、これを他の被収容者への見せしめにして「ハンストしてもムダだ」と恫喝するようなやり方が許されるわけがない。法は貴職らに対し、見せしめに使用するために人間の身体を拘束する権限を与えているのではない。

 しかも、一連の再収容は、ハンストを収束させるという目的からみても、失敗はあきらかである。大村・東日本両入管センターに再収容された人の多くが、再収容後にふたたびハンストをおこなっている。見せしめの再収容は被収容者の怒りを呼び、ハンストを収束させるどころか、これをあおり助長する結果にしかなっていない。

 拒食をくりかえすことは、心身への負担がきわめて大きく、生命の危険をもたらす行為である。入管が見せしめのための再収容を今後もつづけるならば、被収容者たちをこのような危険な行為に駆り立て、また新たに死亡者を出す危険がきわめて高い。

 人命尊重を最優先する観点から、大村センターから仮放免されたのち9月以降に再収容された被収容者をただちに仮放免すること、また、ハンストをおこなったのちに仮放免した人を再収容しないことを求める。



2.超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 私たちは従来より6か月以上の収容を「長期収容」と位置づけ、これに反対してきた。6か月をこえるような収容は、高血圧・不眠等の拘禁を原因とするとみられる症状を発症させるなど、被収容者の心身への負担がいちじるしく、人権・人道上の問題が大きい。また、こうして収容が長期化することは、送還の見込みが立たないにもかかわらず収容が継続されていることの証左でもある。送還という、収容のそもそもの目的を達する見込みがないのに長期にわたり収容をつづけるのは、いたずらに被収容者の心身に苦痛を与え、その健康をそこなわせることにしかならない。

 こうした観点から、私たちは6ヶ月をこえる長期収容に反対してきたが、こんにちでは2年を超える「超長期」とも言うべき度をこした長期収容が各入管収容施設において常態化している。大村センターでも、収容期間が3年、あるいは4年超の被収容者がめずらしくなくないのが現状である。

 超長期の収容が横行しているということこそが、帰るに帰れない事情をかかえる被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいる。この絶望が、多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、また被収容者たちのあいだにあいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのである。さらに、抗議を意図したハンストをしているわけではないのに、心因性とみられる症状で食事がとれなくなって体重が激減し、自力では歩行できないほどに衰弱している被収容者も、複数いる。

 とくにハンストをおこなう被収容者があとをたたない現状を放置すれば、また新たな死亡者を出す危険はきわめて高い。すでに述べたとおり、ハンスト者をいったん仮放免したうえで短期間で再収容して見せしめにするという、人間の命をもてあそぶようなやり方では、ハンストを収束できないばかりか、ハンストもしくは自傷行為を助長することにしかならない。被収容者の生命を守るための緊急の必要として、まずは2年をこえる超長期の被収容者たちを全員仮放免することを求める。新たな犠牲者をこれ以上出さないために、収容の長期化を仮放免制度の弾力的活用によって回避していくという方針を貴職が行動によって被収容者全体に示す以外にない。

以 上


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注:申入書ではハンストをして仮放免されたのち再収容されている人を「3名」と述べましたが、申し入れ前日(1129日)にこのうち1名が再度の仮放免を許可されたので、申し入れ時点での再収容者は正しくは「2名」でした。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



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Tuesday, October 29, 2019

【抗議のよびかけ】人命をもてあそぶ入管による再々収容について


  10月28日(月)、東京入管はわずか2週間前の10月16日に仮放免したばかりのAさん(50歳代のイラン国籍の難民申請者)を収容し、同日中に茨城県の東日本入国管理センターに移収しました。Aさんが、仮放免期間2週間での再収容というきわめて非人道的な仕打ちを受けるのは、この7月に続いて2度目のことになりますから、これはいわば「再々収容」ということになります。

 しかも、Aさんは、7月22日に再収容されたのち、長期収容や、わずか2週間の仮放免からの再収容という入管の仕打ちに抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこなっており、長期の収容とハンストによって衰弱した身体が回復していない状態でした。 今回の「再々収容」は、このような状態のAさんにとり、単に非人道的な仕打ちというにはとどまらない、残酷きわまりない虐待、拷問というべきものです。

 Aさんについては、以下の3つの記事でもおなじ「Aさん」というイニシャル表記で紹介してきたところです。




  仮放免者であったAさんが2017年に入管に収容され、今回の再々収容にいたるまでの経緯を以下にまとめておきます。
 Aさんは難民申請者であり、自身が難民であることの立証作業をする必要があることから2010年から仮放免許可を受けて関東地方で暮らしていた。
 2017年2月に難民認定申請が却下されたことを理由に東京入管に収容されたが、帰国すれば迫害される危険性が解消されたわけでないので、ふたたび難民申請した。同年10月に東京入管から東日本入管センターに移収された。
 2019年6月上旬、この時点でAさんは収容期間が2年4か月という超長期におよんでおり、これに抗議してハンストを開始。同年7月9日に仮放免された。
 ところが、このわずか2週間後の7月22日、仮放免期間更新申請のために東京入管に出頭したが更新は許可されずに再収容され、ただちに東日本入管センターに移収された。
 再収容後にもAさんは抗議のハンストをおこなった。
 10月16日にふたたびの仮放免。ところが、10月28日に仮放免期間更新申請が許可されず、東京入管に再々収容され、ただちに東日本入管センターに移収された。

 2年5ヶ月間の収容→仮放免→2週間後の再収容→3か月後に仮放免→2週間後に再収容、というのが、この2年8ヶ月あまりのAさんの経験してきたことです。このくり返しの収容は、きわめて不当なものです。

 まず、入管法が規定する収容の目的から完全に逸脱しています。入管法が入管当局に収容を認めているのは、あくまでも強制送還が可能になるまでの身体拘束としてです(「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項)。Aさんは送還の禁じられた難民申請者であり、入管にとって送還の見込みが当面たたない人です。2年半をこえるAさんの収容期間の長さは、入管が送還の見込みがないにもかかわらず、不当にも収容継続に固執してきたことの証左でもあります。しかも、Aさんの場合、「逃亡のおそれ」がなく、したがって身体拘束の必要がないことはあきらかです。というのも、Aさんは仮放免されていた2010年から17年までの期間、入管の指示する1~2か月ごとの出頭日に欠かさず出頭していましたし、再(々)収容が予測された今年7月と10月にも「逃亡」することなく出頭し、その結果、収容されたのですから。

 入管にとって収容の目的をはたせる見込みがなく、しかも「逃亡」しないとわかりきっている相手を医療もまともに受けられないような施設に閉じ込め、自由をうばいつづける必要がどこにあるのでしょうか?

 Aさんにかぎらず、7月以降、東日本と大村の両入管センターでハンストをおこなって健康をそこなった被収容者について、入管は2週間ほどの短期間だけ仮放免したのち再収容するということをくりかえしています。これら一連の再収容は、被収容者の抗議をおさえこむための見せしめ・恫喝を意図したものとしか理解しようがありません。このように人間の身体を見せしめの道具としてもちい、人の生命と尊厳をもてあそぶやり方は、けっして許されるものではありません。

 また、このくり返しの収容は、入管当局の意図はどうであれ、被収容者たちのハンストをあおり助長する結果になっています。長期収容とハンストで衰弱・疲弊し、心身がぼろぼろになった人をいったん仮放免しては短期間で再収容するということを入管はおこなっていますが、Aさんふくめこうして再収容された人の多くが、ふたたびハンストを再開する結果になっているのです。

 ハンストを何度もくり返すのは、心身にきわめて負担が大きく、言うまでもなく生命を危険にさらすものです。ところが、入管はAさんに対し、まるで魚釣りの「キャッチ・アンド・リリース」のような仕打ちを、1度ならず2度までもおこないました。こうしたくり返しの収容が、現に被収容者による危険なハンストを助長しているという事実があるにもかかわらずです。

 Aさんの再収容は、入管施設において今後死亡者がまた出かねない状況を入管みずからが選んで作っているという点で、人命軽視もはなはだしく、絶対に容認するわけにいきません。

 東日本入管センターに対し、10月28日に再々収容した人をただちに仮放免するようになどと抗議・意見提示をおこなうよう、よびかけます。また、多くの報道関係者にぜひともこの問題を取材・報道していただくようお願いします。


抗議先
東日本入国管理センター(総務課)
 電話:029-875-1291
 FAX:029-830-9010


 なお、今回の問題に関しては、抗議の声、批判的な意見があるということを入管の組織のなかで共有・検討してもらうことが重要だとおもいます。電話で対応する職員に対し「所長につたえてください」「抗議の内容を文書にして上に報告してください」などと要請するかたちで、抗議として十分意義があると考えています。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇





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Friday, October 18, 2019

10月15日 東京入管への申し入れと抗議行動 再収容の中止などもとめて


 10月15日(火)、仮放免者の会とBOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)とで東京出入国在留管理庁(東京入管)に対し、申し入れと抗議行動をおこないました。

 申し入れた内容は、以下の3点です。

  1. 2週間といった短期間での再収容はしないこと
  2. 超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること
  3. 被収容者への医療放置をやめ、診療を求める者は直ちに診療させること

 抗議行動は、東京入管への抗議と被収容者への激励をこめて、仮放免者と支援者あわせて10名ほどでおこないました。参加者全員で「長期収容をやめろ」「再収容をやめろ」「病人を病院につれていけ」「外国人への差別をやめろ」などとシュプレヒコールをあげるとともに、仮放免者たちがそれぞれ英語・フランス語・スペイン語で収容されている仲間を激励するスピーチをおこないました。東京入管の8から11階に収容されている仲間たちからもこれに答える声や指笛があがりました。

 この日に東京入管に提出した申入書を以下に掲載します。



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申 入 書
 
2019年10月15日

東京出入国在留管理局長 殿
東京出入国在留管理局主任審査官 殿


仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)


一、2週間といった短期間での再収容はしないこと

 現在、入国者収容所の両センターは、収容中にハンストをおこなうなどして健康状態が深刻に悪化した人について、仮放免を約束して摂食を再開させ、2週間といった短期の仮放免期間を与えて仮放免している。そして貴職らは、2週間後に再収容してセンターに戻すということをくりかえしている。

 ハンストの広がりと長期化が被収容者たちの生命・健康を危険にさらすものである以上、これを収束させる必要があることは言うまでもない。しかし、ハンスト後に出所した人を短期間で元のセンターにもどし、これを他の被収容者への見せしめにして「ハンストしてもムダだ」と恫喝するようなやり方が許されるわけがない。法は貴職らに対し、見せしめに使用するために人間の身体を拘束する権限を与えているのではない。

 拒食をくりかえすことは、心身への負担がきわめて大きく、生命の危険をもたらす行為である。両センターと貴職らが、見せしめのための再収容を今後もつづけるならば、被収容者たちをこのような危険な行為に駆り立て、本年6月の大村センターでの犠牲者につづき、また新たに死亡者を出す危険がきわめて高い。人命尊重を最優先する観点から、短期間での再収容をしないことを求める。



二、超長期の被収容者をただちに全員仮放免すること

 私たちは、6ヶ月以上の収容を「長期収容」と位置づけ、これに反対してきた。6ヶ月をこえるような収容は、高血圧・不眠等の拘禁を原因とするとみられる症状を発症させるなど、被収容者の心身への負担がいちじるしく、人権・人道上の問題が大きい。また、こうして収容が長期化することは、送還の見込みが立たないにもかかわらず収容が継続されていることの証左でもある。送還という、収容のそもそもの目的を達する見込みがないのに長期にわたり収容をつづけるのは、いたずらに被収容者の心身に苦痛を与え、その健康をそこなわせることにしかならない。

 こうした観点から、私たちは6ヶ月をこえる長期収容に反対してきたが、こんにちでは2年を超える「超長期」とも言うべき度をこした長期収容が各入管収容施設において常態化している。

 超長期の収容が横行しているということこそが、帰るに帰れない事情をかかえる被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいる。この絶望が、多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、また被収容者たちのあいだにあいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのである。

 私たちはこれまで通り、6ヶ月を越える長期収容には反対だが、超長期収容が増大する中、まずこうした人たちから仮放免許可することを求める。



三、被収容者への医療放置をやめ、診療を求める者は直ちに診療させることを求める

 2013年から国費による強制送還(帰国忌避者への力ずくの送還)が再開され、同年よりチャーター機による帰国忌避者の集団送還も開始された。こうした退令執行の厳格化は、同時に入管収容施設での死亡事件も連続させている。2013年の東京局でのミャンマーのロヒンギャ難民(死亡は搬送先の病院)、翌14年の東日本センターでのイラン人、カメルーン人連続死亡事件、同年の東京局でのスリランカ人、17年には東日本センターでのベトナム人死亡と続いた。さらに昨年の東日本センターでのインド人自殺、本年の大村センターでの飢餓死がおこってしまった。この過程では、仮放免・放免直後の死亡もある。被収容者の生命や健康については、収容主体である貴職らが責任を負わなければならない。しかし実際には、上記の亡くなった7人のなかでも、カメルーン人、スリランカ人、ベトナム人については明らかな医療放置が見られる。本人が体の痛み、異常を訴えているにも関わらず、医者に受診させず、はなはだしきは職員が仮病であると勝手に医療判断していた。現在の東京局の被収容者から面会で聞いても、診療を求めて申出書を要求してもなかなか渡してもらえない、東京局診療室の医師は自分たちの病状の訴えを聞いてくれない、専門医に外部受診して診断がされても「お金がかかるから」と治療してもらえないなどの訴えを聞く。このようなひどい状況に置かれ、被収容者は病状を悪化させていく。いつまた死亡者が出ても不思議ではないような状況が続いている。医療放置は明白な人権侵害である。直ちに改め、病人を受診させ、治療することを申し入れる。

以 上

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入管収容施設での死亡事件および仮放免・放免直後の死亡に関して
1.東日本センターでのインド人自殺事件(2018年4月)
2.東日本センターでのベトナム人死亡事件(2017年3月)
3.東京入管でのスリランカ人死亡事件(2014年11月)
4.出所直後の中国人死亡(2014年7月)
5.東日本センターでのイラン人、カメルーン人連続死亡事件(2014年3月)
6.東京入管でのロヒンギャ難民死亡事件(2013年10月)

Thursday, September 26, 2019

【傍聴呼びかけ】スリランカ人強制送還国賠「裁判受ける権利を侵害」


 10月1日に東京地裁にてスリランカ人強制送還国賠の弁論がおこなわれます。

 2014年12月に入管当局は、スリランカ人26人とベトナム人6人をチャーター機で一斉に強制送還しました。このときに強制送還されたスリランカ人2名が、送還によって裁判を受ける権利をうばわれたとして、国に損害賠償をもとめる裁判を起こしています(2017年10月19日提訴)。

 原告のうちひとりは、送還される直前、弁護士に連絡しようとしましたが、収容されていた東京入管にこれをはばまれ、弁護士と相談する機会をうばわれました。次回の弁論では、このときの弁護士の意見陳述がおこなわれます。

 弁論は、以下の日時と場所でおこなわれます。法廷での傍聴を呼びかけたいと思います。

日時:2019年10月1日(火曜) 11時30分
場所:東京地方裁判所 522法廷



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



 チャーター機を使った集団送還は、2013から17年度にかけて7度にわたっておこなわれ、そのつど私たちとしても抗議・批判をおこなってきました(注)。集団送還にともなう問題点はさまざまにありますが、そのひとつは、難民申請者に対してその裁判を受ける権利を侵害するかたちで送還が強行されてきたことです。つまり、入管施設に監禁して身体を拘束した状態で難民申請の却下(難民不認定処分に対する異議申立の棄却)を通知し、そのまま空港に連行して航空機にのせるというやりかたでの送還です。

 2014年のスリランカ・ベトナムへの集団送還についての抗議声明で私たちはつぎのように述べました。

 私たちは、今回の被送還者について、異議申し立て棄却の通知がなされていない難民認定申請者が送還の直前に収容されたケースを多数確認しています。そのうちのAさんは、入管に収容された直後に外部への電話連絡を禁止され、「弁護士に電話をしたい」と職員に申し出たものの、許可されませんでした。こうして弁護士などの外部との連絡・通信手段を暴力的にうばわれた監禁状態で、Aさんは入管から異議申し立て棄却を通知されたといいます。
 異議申し立てを棄却された場合、申請者はその行政処分の取消しをもとめて訴訟をおこなう権利があります。入管は、棄却の通知にあたり、行政事件訴訟法にもとづき、その決定を知った日から6ヶ月以内に国を相手に決定の取消しをもとめて訴訟を提起することができるむねを、書面および口頭で教示することになっています。Aさんによると、棄却の通知時に入管は、きめられた形式どおりにこの教示をおこなったといいます。そこで、Aさんはその場で「裁判をします」と即座に言いましたが、入管職員は「いまはできません」などと言い、直前におこなったばかりの教示の内容をみずから反故にする発言をしたとのことです。入管は、Aさんの行政訴訟をおこなう意思を認識しながら、その機会をあたえず妨害し、無理やりに送還したわけです。
 難民認定申請者に対する法務省・入管のこのような送還のやりくちは、裁判を受ける権利(日本国憲法第32条)に対する明白な侵害であり、また、難民認定制度をますます形骸化させ、その公正さを決定的に破壊する暴挙というべきです。
【抗議声明】スリランカ・ベトナムへの集団送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2014年12月30日)

このように、身体を拘束した状態で難民申請の却下を通知してそのまま無理やり送還してしまうという手法が違法であると裁判所がきちんと断罪するのかどうかという点で、今回の裁判はきわめて重要です。

 なお、送還手法の強引さもさることながら、入管が政治難民を国籍国へと無理やりに送還したということそのものが、ゆるしがたい行為です。この裁判の原告も、スリランカに送還されたのち、現在にいたるまで自宅に帰ることはできず、国内各地を転々とする逃亡生活をよぎなくされているとのことです。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


《注》【抗議声明】ベトナムへのチャーター機での集団送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年3月6日)など


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


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Saturday, September 21, 2019

9・18大阪入管申し入れ

 9月18日(水)に、大阪出入国在留管理局(大阪入管)にて5団体で申し入れをおこないました。

 申し入れた内容は、おもに以下の2点です。

 ひとつは、長期被収容者および体調不良者を仮放免すること。とくに収容期間が超長期と言うべき2年以上になっている人、あるいは深刻な体調不良・病気のある人8名をリストアップして、即座に仮放免するよう求めました。

 2点目は、仮放免者の仮放免延長申請をむやみに不許可しないこと。このブログでもくり返し問題にしてきたとおり、東日本入管センター・大村入管センターで長期収容への抗議のハンストが広がっており、ハンストで衰弱した人をおよそ2週間だけ仮放免したのち東京入管・名古屋入管が再収容するという事例があいついでいます。こうして再収容された人たちは、東京・名古屋の収容場にとめおかれずにただちに元いた東日本センター(茨城県牛久市)や大村センター(長崎県大村市)まで移収されています。これら再収容がハンストをおさえこむための恫喝・見せしめを目的としたものであることは、あきらかです。このような人の命をもてあそぶような行為はだんじて認めることはできないということを、申し入れました。

 大阪にも、大村入管センターで25日間にもおよぶハンストののちに仮放免されたばかりのイラン人仮放免者がいます。この人は、大阪入管と大村センターで通算4年をこえる収容をへて9月10日に仮放免されました。わずか2週間後の9月24日に出頭するよう大阪入管から指示されています。東京や名古屋の最近の事例をみるかぎり、この人も出頭日に再収容されてふたたび大村センターに移収される可能性が高いです。この人の仮放免延長を不許可にして再収容するならば、申入書に述べた収容権の恣意的な濫用と言うべきものであり、けっして容認できません。

 申し入れのあとは、支援者ら約10名で、大阪入管前で抗議行動をおこないました。

 以下、この日に提出した申入書の全文です。


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申 入 書
2019年9月18日

出入国在留管理庁長官 殿
大阪出入国在留管理局長 殿
WITH
仮放免者の会
Save Immigrants Osaka
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民支援コーディネーターズ関西

以下の通り、申し入れる。


1、     長期収容者および体調不良者を即座に仮放免すること

貴庁は収容施設における収容の運用について、大きく誤認している。本来収容施設での収容は送還するまでの一時的なものである。裁判中、難民申請中、その他の理由で送還することができない被収容者を人間の時間的、空間的感覚を奪う密閉施設にむやみに長期間閉じ込めてよいということではない。貴庁は被収容者を密閉された収容施設に自由を奪い、長期間閉じ込め、拘禁によって心身を痛めつけ、拷問としか言えないような状態に置いて帰国を強要するために収容権を行使している。

2019年6月24日には、貴庁は大村入国管理センター内で3年以上の長期収容に抗議し、水分も摂取しないでハンガーストライキを続けるナイジェリア人を隔離して放置し、死亡させた。貴庁の調査チームは、2か月以上たった今でもその死因を公表していない。

貴庁は、出入国在留管理庁管轄の収容施設の運用について、「収容に耐えられないものは仮放免する」と公言しているが、その実態は人間の生死の限界が来るまで収容を継続し、貴庁が管理都合上から責任を問われ負担となるような事態になってから仮放免しているのが現状である。

貴局においては、裁判係属中のため当面の期間は送還の目途が立たない者や、高血圧等の慢性的な体調不良者などの収容に耐えられない者が長期間にわたって収容されている。前述のような、別紙に記載の被収容者については、即座に仮放免することを強く申し入れる。


2、     仮放免者の仮放免延長申請をむやみに不許可しないこと

東京出入国在留管理局、名古屋出入国在留管理局において、東日本入国管理センターや大村入国管理センターから仮放免となった者が、約2週間後に仮放免延長許可申請をしたところ、延長が不許可となり再収容となる事例が相次いでいる。当該仮放免者の中には東日本入国管理センターに収容されているときに長期収容に対する抗議のハンガーストライキを行い、体調を崩している状態で仮放免許可されたものもいる。仮放免については、貴庁は仮放免許可証にその条件を明記している。よって、延長の不許可においては、仮放免者が仮放免の条件を違反したり、明確な送還の予定がある(もちろん、我々支援者はすべての強制送還を容認しているわけではない)といった相応の理由がない限り、延長不許可を前述以外の要素をもって恣意的に濫用することは本来認められないはずである。

上記の仮放免者に対する仮放免の延長不許可が全国的に乱発するようであれば、「ハンガーストライキを回避させ」、「入管に対して抗議した者に対する見せしめ」といった恣意的な要素によって、不許可を判断されたものであると認識せざるを得ない。
貴局においては、今後上記のような恣意的な再収容を行わないよう、強く要請する。


3、     被収容者の同時面会を許可すること

貴局では、2014年から被収容者の同時面会を認めていないが、その根拠を説明すること。また、貴局以外の収容施設では認められている同時面会が、貴局において認められない理由について、具体的かつ法的な根拠が明確になければ、即刻同時面会を認めるよう申し入れる。

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Tuesday, August 27, 2019

再収容および長期収容について抗議の申し入れ(8/21、東日本入管センターに)

1.見せしめ目的の再収容

 5月以来、東日本入国管理センターでは長期収容への抗議のハンストが広がっています。同センターは7月上旬からハンストで衰弱した被収容者を仮放免というかたちでつぎつぎと出所させています。

 ところが、7月22日、東京入管(東京出入国在留管理局)はたった2週間前に仮放免されたばかりのイラン人2名を再収容し、ただちに東日本入管センターに移収しました。長期収容とハンストによって疲弊した心身が回復するいとますらあたえず、わずか2週間の仮放免ののち再収容するというような措置は、前例のない異常なものです。また、この再収容は、東日本入管センターなどで広がっているハンストをおさえるための見せしめ・恫喝を目的としていることはあきらかであって、こうした入管当局のやり方に対しては、問題視する報道がいくつか出ており、弁護士会や支援者・支援団体からも批判があいついでいるところです。

 私たちとしても、7月29日に抗議声明を発表するとともに、同日、東日本入管センターに対して抗議・申し入れをおこないました。




 しかし、このような異常な再収容を、入管当局はいまだ中止せずくり返しています。

 長崎県にある大村入国管理センターから仮放免されていた人も、8月8日に名古屋入管(名古屋出入国在留管理局)で再収容され、ただちに入管の車両に乗せられて大村センターに移収されました。この人も、長期収容に抗議して50日間ほどのハンストをおこない、1か月前に大村センターから仮放免されたばかりでした。

 関東でも、ハンストをおこなったあとに東日本入管センターから仮放免で出所していた2名を、8月14日と16日に東京入管があいついで再収容し、その日のうちに東日本入管センターへと移収しました。



2.入管の姿勢が命がけのハンストを助長している

 こうした一連の再収容に対して、私たちは前回の7月29日にひきつづき、8月21日にも東日本入管センターに対して抗議の申し入れをおこないました。今回の申し入れは、当会の事務局から3名のほか他団体等の支援者ふくめ6名でおこないました。

 申し入れした内容については、当日東日本入管センター総務課に提出した申入書をこの記事の末尾に掲載しておりますので、参照してください。

 ハンストをしての仮放免後に再収容された人は、今回の申し入れの時点で東日本入管センターに5名収容されていましたが、その全員が再収容後ただちにハンストを再開しています。再収容された人びとのいきどおりと絶望感はすさまじいものです。なかには、水を飲むことすら拒否し、支援者の懸命な説得でようやく水と塩分だけは摂取することにしたという人もいます。一連の再収容は、命がけともいえる強い覚悟のもとでのハンストを助長する結果になっています。ハンストをおさえこもうという意図とは反対に、入管の強硬な姿勢が危険なハンストをまねいているのです。

 現在の強硬姿勢を入管がとりつづければハンストによる死亡者が出かねない危機的な状況であることを述べ、7月22日以降に再収容した5人全員をただちに仮放免することを求めました。



3.重病の被収容者への対応がますますおろそかに

 今回の申し入れでは、ハンストをおこなっていない人もふくめて、重病人と超長期の被収容者をただちに仮放免することも求めました。

 ハンストをしていない重病者としては、被収容者2名の事例を具体的に説明しました。

 ひとりは、カメルーン国籍のLさんです。Lさんの収容期間は2年10ヶ月。6月9日以来、食事がとれなくなり、固形食はもとより牛乳やおかゆ、液体の栄養補助食品(エンシュアリキッド)すら摂取しても吐いてしまう、ポカリスエットがかろうじて飲めるぐらいという状態が現在までつづいているそうです。ストレスが原因の神経性胃炎と診断されたLさんは、6月上旬に88kgあった体重が2か月あまりのあいだに67.1kgと20kg以上落ちており、現在では自力で立ち上がるのも困難なほど衰弱しています。

 このような状態の人の収容を継続しているということ自体が不当ですが、職員らがハンストへの対応におわれることで、Lさんら病人への対応がいっそう行き届かなくなっているのではないかと思われます。Lさんは、7月24日にシャワー室でめまいがして昏倒しましたが、以後ようやく医者の診察を受けられたのは8月19日になってのことでした。これほど重篤な病人が、4週間ちかくも診療を受けられずに放置されたのです。

 申し入れでは、もうひとりの重病者として、スリランカ国籍のSさんの事例を示しました。Sさんは2年超の収容期間。入管施設に収容されてから左目がほとんど見えなくなり、昨年3月に白内障と診断されました。このときに眼科医からいずれ手術をしないと失明するおそれがあると言われましたが、その後1年半ほどにわたって目の治療をなんら受けられず放置されています。

 また、Sさんは10年ほど前から心臓に持病があり、ニトログリセリン(狭心症の胸痛時に服用する薬)を常備し使用してきました。収容後も、この薬を職員があずかり、必要なときに職員を呼んで薬を出してもらうというかたちでこれを使用しています。昨年4月末には心臓が苦しくなって病院に救急搬送されており、その後もこの症状のためにニトログリセリンを服用する機会が何度もありました。

 Lさんにしても、Sさんにしても、超長期にわたる収容のなかで、きわめて深刻な病状にあります。しかも、ハンストをおこなう被収容者があとをたたないなかで、こうした重病人への職員らの対応はますますおろそかにならざるをえません。こういった点でも、被収容者が死亡する危険性は高まっているのであって、状況が大変に危機的であるということを入管当局は認識すべきです。

 以下に、東日本入管センター所長あてで今回提出した申入書を掲載します。



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申 入 書

2019821

東日本入国管理センター所長 殿

仮放免者の会(関東)


 以下、申し入れる。


1.722日以降に再収容した人の全員をただちに仮放免すること

 722日に、貴職らはイラン人男性2名を再収容した。2人は長期収容に抗議してハンガーストライキ(ハンスト)をおこない、わずか2週間前の79日に東日本入国管理センターから仮放免されたばかりであった。

 以降、入管はハンストをおこなった人を仮放免し、2週間といった短期間で再収容するという同様のやり方をくり返している。貴職が仮放免した人たちは、ハンストによって衰弱しているばかりでなく、貴職がおこなった2年や3年をこえる超長期収容のために心身に深刻な健康問題をそれぞれにかかえている。そういった人びとを、回復するまもなく再収容するのは、前例のない異常なやり方であるだけでなく、人間の命と健康をいちじるしく軽視してもてあそぶ、許しがたい人権侵害である。

 このたびの一連の再収容は、5月以降東日本センターなど入管収容施設で広がっている被収容者のハンストを鎮静化・抑止するための見せしめ・恫喝を目的にしたものであることは、あきらかである。ハンストの広がりと長期化が被収容者たちの生命・健康を危険にさらすものである以上、これを収束させることが必要であるにしても、今回のような見せしめとも言うべき入管当局のやり方が許されるはずもない。

 そして、これら一連の再収容は、おそらくは入管当局の意図には反して、危険なハンストを助長する結果になっている。今回再収容された人の多くは、再収容されてただちにハンストを再開している。この結果は、そもそもなぜ現在東日本センターなどでハンストが拡大・長期化しており、またなぜなかなか収束しないのかという原因の本質をみるならば、十分に予想できたことである。

 201516年以降に顕著になった収容の超長期化と言うべき状況が、退去強制令書発付処分を受けながらも帰るに帰れない切実な事情をかかえている被収容者たちの多くを絶望に追い込んでいる。この絶望が多数の被収容者をハンストという危険な抗議手段に向かわせ、また、あいつぐ自殺未遂・自傷行為を引き起こしているのである。こうした状況のなかでこのたびの再収容をおこなったことは、被収容者たちに入管当局はこれまでの常軌を逸した長期収容を今後とも続けるつもりなのだというメッセージを与えることになったのである。こうした強硬方針の継続は、危険なハンストをますます助長し、被収容者を死亡させる事件を今後またくり返させるおそれがある。

 死亡事件をこれ以上くり返さないために、ハンストをおこなったのちに仮放免した人を再収容することをやめ、またすでに再収容した人の全員をただちに仮放免すべきである。



2.重病人および超長期の被収容者をただちに仮放免すること

 東日本センターでは、ハンストへの対応に職員らが追われることにより、病人に対する対応に十分に人手がまわらなくなっているとの報告を、複数の被収容者たちから受けている。ある被収容者は、ストレス原因の神経性の胃炎のため食事をとっても吐いてしまう状態が続き、通常の収容区画から病室に移されていたが、自身の病状が改善していないにもかかわらず元の通常の収容区画に戻された。職員からは、ハンストをしている人が増え、これに対応しなければならないからだと説明されたとのことである。

 もとより平時から、東日本センターは300人をこえる数の被収容者の生命・健康をまもるために必要な医療体制をそなえているとはとうてい言いがたい。そのうえハンストが拡大・長期化している現状では、その対応に多くの職員らをさかなければならないぶん、病人への対応がますますおろそかにならざるをえない。平時以上に被収容者を死亡させる危険が高まっているのであって、この現状を放置するわけにはいかない。

 死亡事件の再発をふせぐことを最優先すべきであり、重病人をただちに仮放免するべきである。

 また、717日にも貴職に対して文書で申し入れたとおり2年をこえるような超長期と言うべき収容の常態化が、多くの被収容者たちを絶望させ、命がけの危険なハンストに向かわせている。超長期の被収容者たちから仮放免することをもって、長期収容を回避していくという意思を貴職は行動で示すべきである。


以 上

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