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Monday, February 16, 2015

東京入管での行動予定3つ――ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容に対し抗議・申し入れ


  2月に、東京入管での抗議や申し入れなどの行動が3つあります。

  昨年の東京入管での被収容者の死亡事件、また昨年末のチャーター機によるスリランカ・ベトナムへの一斉送還などへの抗議行動です。

  東京入管では、昨年11月22日に、心臓の痛みをうったえて病院への搬送をもとめたスリランカ人被収容者を放置して死亡させるという事件がありました。
  東京入管では、このおよそ1年前にも、急病人を放置して救急搬送が遅れ、その後、被収容者が死亡するという事件をひきおこしており、さらに去年3月には東日本入管センターでも2人の被収容者があいついで病死するという事件があったばかりでした。
  11月のスリランカ人ニクルスさんが死亡した事件は、被収容者から3人もの死亡者を出した入管が、これをじゅうぶんに検証し再発防止策を講じるのをおこたったことによるものと言うべきであって、この点でもきわめて重大な事件であるはずです。ところが、東京入管は局長はじめ幹部が解任されることなくいまもその役職にとどまりつづけ、法務省も、事件の経緯説明や再発防止策をみずから公表するといった行動をとっていません。たてつづけに死亡事件を起こした公的機関の対応として、異常と言うほかありません。

  また、12月18日に、法務省はスリランカとベトナムにチャーター機をつかって32人を強制送還しました。

  この送還は、難民認定を申請していた人や日本に配偶者と子どものいる人を、しかも行政訴訟の機会を不当にうばうかたちで送還した、という点で非常に問題のあるものでした。また、人身取引の被害者2人も無理やりに送還され、雇用主・ブローカーから未払い賃金・損害金を回収するのが困難になりました。
  こうした一連の事件を受け、東京入管において緊急での抗議行動の予定が2月中に3つ組まれています。いずれも平日の昼間の行動ですが、都合のつく方はぜひご参加ください。

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

(1)仮放免者の会による抗議行動と申し入れ
日時:2月19日(木)
集合:13:00に東京入管前集合
ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容への抗議


(2)全国の学生諸団体の企画による抗議行動
日時:2月25日(水)
集合:12:30に東京入管前集合
ニクルスさん死亡事件およびチャーター機送還への抗議
呼びかけ団体:BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)、START、TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)、仮放免者の会


(3)仮放免者の会(PRAJ)家族会による申し入れ
日時:2月27日(金)
集合:14:00に東京入管集合
在留特別許可、再収容の停止、再収容者の仮放免をもとめる申し入れ


詳細については、以下までお問い合わせください。

【問い合わせ先】
大町(おおまち)
電話:090-3549-5890
eメール:praj1031☆yahoo.co.jp (☆を@にかえてください)


【東京入管へのアクセス】
map(入国管理局のホームページ)

Friday, February 13, 2015

【転載】大阪入管に支援5団体が申入書「死亡者がいつ出ても不思議ではない危機的な状況」


  大阪入国管理局の医療処遇の問題をめぐり、支援5団体が1月27日に申し入れをおこないました。大阪入管局長あての申入書を転載します(転載にあたって、被収容者の名前を匿名にし、国籍のわかる記述を削除しました)。

  申入書は、大阪入管において、医師の診察なしでの投薬や医療行為の横行、被収容者への懲罰的な隔離処分(この人は隔離後、200をこえる血圧の数値が測定されたにもかかわらず、大阪入管は隔離を続行した)、医療放置などの事例を指摘しています。そのうえで、申入書は、事例としてあげた被収容者3名について外部診療機関での受診を早急にみとめること、また、支援者側との協議・意見交換に応じることを、大阪入管にもとめています。


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申  入  書

大阪入国管理局長 伊東勝章様
2015年1月27日


  入国管理局の収容所・収容場で、被収容者が病死する事件があいついでいる。

  東京入国管理局では、2013年10月14日にロヒンギャ民族の男性が、2014年11月22日にはスリランカ人男性が、いずれも入管局の医療放置によって死亡した。東日本入国管理センターでは、2014年3月29日にイラン人男性が、翌30日にカメルーン人男性が、あいついで病死している。

  私たちは、被収容者との面会等を通じて貴局の医療面での処遇・診療の実態について調査をおこなってきたが、大阪入国管理局の収容場もまた、現状を放置するならば死亡者がいつ出ても不思議ではない危機的な状況にあると認識している。本申入書で具体的に指摘しているとおり、病人に対する医療放置、医師による診察を経ない医療行為の横行、医師の職業倫理の退廃など、貴局の医療体制は破綻していると言ってよい現状である。昨年より西日本入国管理センターへの移収が停止し、貴局での収容が長期化している傾向も考えると、現状の医療体制を早急に見直しその改善に着手しなければ、貴局でも被収容者の死亡事件が起こる蓋然性が高いと危惧している。

  医療に関する処遇の改善に取り組み、取り返しのつかない事件を未然に防止することは、貴局にとっても重大な課題であるはずだ。われわれ支援者側としても、情報提供・意見提示等を通じてこれに協力する用意がある。われわれ支援者側との協議・意見交換に応じるよう求める。

  以下、私たちが調査した貴局の医療について報告する。



1  Aさんのケース

  Aさんは高血圧症である。2014年6月25日の入所以来、血圧の測定値が上で200をこえることもたびたびである。

  ところが、貴局はAさん本人の再三の要請にもかかわらず、外部診療期間での診療をみとめず、内勤医による診察なしに処方された投薬治療がなされているのみである。そのうえ、上が200をこえる血圧が測定されているにもかかわらず、Aさんに対し懲罰的な隔離をおこなうなど、貴局は被収容者の生命を最優先に配慮しているとはとうてい思えない措置すらおこなっている。


1-1  医療放置および無診療投薬

  保有個人情報開示請求によって貴局が開示した資料によると、Aさんについて2014年6月26日から同10月21日まで14通の「被収容者診療簿」が作成されている。このうち、外部診療機関での2回の診療をのぞいた12回が、局内での診療に関するものである。Aさん本人からの聞き取りによると、この12回分の「被収容者診療簿」のうち、実際に診療があったのは4回(7月1日、7月8日、8月12日、10月7日)である。ほかに診療簿の作成されている8回分(8月5日、9月2日、9月5日、9月12日、9月26日、9月30日、10月10日、10月21日)については、Aさんは「医者に会っていない」と証言している。

  第1に、医師による診療のおこなわれていない日付についてなぜ「診療簿」が作成されているのか、不可解である。

  第2に、これらの資料およびAさんの証言から、医師法第20条の禁止する無診療投薬にあたる行為がおこなわれているものとおもわれる。上記の医師による診療の実態がないにもかかわらず作成されている8通の診療簿のうち7通に、「内服薬継続」(8月5日、9月5日および9月26日)「内服薬処方」(9月2日)「内服薬変更」(9月12日)「内服薬中止・追加」(9月30日)「吸入薬継続」(10月21日)との記載がある。これらは、医師が患者を直接診ることなく、投薬の処方・継続・中止の判断がおこなわれている実態を示している。

  10月8日の診療記録「経過・処方および措置」の欄には、 看護師のものとおもわれる筆跡で服薬や血圧測定値についての記述があり、「上記、医師に連絡。現在の3剤処方からアムロジピンの1剤のみの投与との指示。」と記載されている。患者の状態について看護師から「連絡」を受けた医師が投薬の「指示」をおこなっている、つまり医師による診察なしに投薬がなされていることはあきらかである。

  さらに、Aさんの証言によると、昨年6月下旬の入所以来、今年1月9日時点で、看護師と面会したのは1回きりであるという。血圧測定値や患者本人の訴えを、医療従事者ですらない処遇担当の職員(入国警備官)が看護師または医師に報告し、これを受けて医師が投薬の判断をおこなうということが、貴局では横行している証左である。

  こうして医師が診察をせずに投薬のみを続けている状況にあって、Aさんの症状は改善されておらず、血圧が200をこえる数値をたびたび測定されている。最近でも、1月8日の10時16分の血圧および脈拍の測定値は、197/102(92)であった。高血圧の原因についての説明もないため、Aさん本人としても非常な不安を感じている。

  症状についての説明もなく、ただ薬だけが出てくる、しかもその投薬は診察なしでなされているということでは、貴局の医師を信用・信頼するわけにいかないのは当然である。適切な治療方針を定めるためにも、また、Aさんの生命の安全の観点から本当に問題ないと言えるのか判断するためにも、貴局の医師ではなく、まっとうな職業倫理をもった医師による診察が不可欠である。貴局は、Aさんの再三の申し出を受け入れ、外部診療機関での診察を受けさせるべきである。


1-2  懲罰としての隔離処分

  貴局は、Aさんに対し、2度の隔離処分をおこなっている。
1度目は、2014年10月6日から同9日までの4日間である。Aさんによると、6日の14時30分ごろに職員から、隔離するむねを告げられ、その理由として「勝手に部屋から荷物を出したこと」「大きな声を出したこと」であるとの説明を受けたという。また、職員は隔離に際して「懲罰だ」との発言をおこなったという。

  Aさんは、隔離後、血圧が上昇し、17時ごろに具合が悪くなり倒れている。このときの感覚を、Aさんは「手の中指、薬指、小指3本の感覚がなくなり、体から魂がぬけていく感じがした。これで自分は死ぬのだと思った」と述べている。

  Aさんの作成したメモによると、10月6日の独居房に隔離された後の血圧(上/下)および脈拍の測定値は以下のとおりである。

①15:31計測  186/94(102)
②17:08計測  181/97(92)
③17:10計測  201/122(133)

  きわめて血圧の高い状態であり、しかもAさんは上記の症状を職員にうったえたにもかかわらず、貴局は隔離を中止する措置をとらなかった。

  2度目の隔離は、11月6日から8日の2日間である。その経緯は、Aさんの証言によると、以下のとおりである。

  高血圧症について外部診療機関での診療をもとめて提出していた申出書に関し、6日の朝、取調室において「認めない」との回答が口頭でなされた。Aさんは、診療を認めない理由の説明を職員に求めたが、職員は「これ以上説明しない」と述べるのみで、いっさいの理由の説明を拒否した。Aさんはこれに納得できなかったので、「なんでや?」「ここの医者はやぶ医者や」などと抗議した。すると、取調室の外で待機していた者たちをふくめ20人ほどの職員が、Aさんの足・腰・手をつかみ、体を高く持ち上げて、連行した。Aさんは「あなたたちには懲罰をする権利はありません」と職員たちにむかって述べたが[後述のように、この主張は完全に正当なものである]、職員たちは無理やり連行し、Aさんを独居房に閉じ込めた。

  開示請求によって開示された「隔離言渡書」には、「隔離理由」がつぎのとおり記載されている。

平成26年11月6日9時12分、A区域調室(2)において、同人に対し、××[墨塗り]警備士が診療に関する申出書の不許可告知を行った。同人は「なんでや。なんでや。頭痛いって言っている。あの医者はやぶ医者や。」などと大声で話し続けたため、同19分、看守責任者が「大声を出すな。下の階に行くことになる。警告だ。」と申し向けて同行為の中止を命じたが、同人はこれに従わず、「あなたに懲罰する権利はない。」などと大声を出し続け、もって、職員の職務執行に反抗したものである。

  1回目の隔離時と同様、隔離後にAさんの血圧はきわめて高い数値が測定されている。11月6日に9時19分の隔離後、血圧(上/下)および脈拍の測定値は同日17時10分の測定で214/110(119)、この直後に測りなおした数値も218/115(116)、同21時43分の測定値が204/119(90)と、いずれも200を超える測定値が出ている。貴局は、「隔離言渡書」に記載された11月10日までの隔離期限より早い8日に隔離処分を解いたとはいえ、このような生命にもかかわる危険な数値の出ている人を、2日間にわたって隔離し続けた。

  2回の隔離において、いずれも隔離後にAさんの血圧は200をこえるほどに上昇している。貴局がこのような状態を認識しながらも、ただちに隔離処分を中止する措置をとらなかったことは、いちじるしい人命軽視と言うべきである。

  また、貴局は、Aさんに対してあきらかに懲罰的に2度の隔離をおこなっており、これら隔離処分には正当性はない。

  法務省令「被収容者処遇規則」は、被収容者の隔離について、次のように定めている。

第十八条  所長等は、被収容者が次の各号の一に該当する行為をし、又はこれを企て、通謀し、あおり、そそのかし若しくは援助した場合は、期限を定め、その者を他の被収容者から隔離することができる。この場合において、所長等は、当該期限にかかわらず、隔離の必要がなくなつたときは、直ちにその隔離を中止しなければならない。
  一  逃走、暴行、器物損壊その他刑罰法令に触れる行為をすること。
  二  職員の職務執行に反抗し、又はこれを妨害すること。
  三  自殺又は自損すること。
2  前項に規定する場合において、所長等の命令を受けるいとまがないときは、入国警備官は、自ら当該被収容者を他の被収容者から隔離することができる。
3  入国警備官は、前項の規定による隔離を行つたときは、速やかに所長等に報告しなければならない。

「隔離言渡書」は、Aさんに対する2度の隔離処分について、その適用条文は第18条第1項第2号であるとしている。つまり、Aさんの行為が、「職員の職務執行に反抗し、又はこれを妨害すること」にあたるとしている。また、「隔離言渡書」は2回の隔離いずれについても、Aさんが「職員の職務執行に反抗した」ことを「隔離理由」としている。

  収容場内の秩序と被収容者および職員の安全を守るために、被収容者の「反抗」に対する実力行使が一定程度みとめられるべきなのだとしても、そうした権限が無制限・無条件にみとめられるものではないはずである。被収容者が職員にたんに「反抗」したという事実、あるいは職員が被収容者の行為を「反抗」とみなしたという事実のみによって、隔離という被収容者の身体への暴力行為が正当かつ必要なものとみとめられるとは、とうてい考えられないからである。

  Aさんは、2度の隔離処分のいずれにおいても、これに先立って職員に対する物理的な暴力をいっさいふるっていないし、また、物理的暴力が予想されると判断しうる言動もおこなっていない。「隔離言渡書」の「隔離理由」にも、Aさんが「大声」を出したこと、職員の職務執行に「反抗」したこと等についての記載はあっても、隔離が必要とみとめられる理由は書かれていない。

  したがって、貴局によるAさんに対する2度の隔離処分は、Aさん本人への威圧・威嚇と他の被収容者への見せしめ、ひいてはAさんを含む被収容者全体を萎縮させ屈服・服従させることを目的とした懲罰的・制裁的行為であると考えるよりほかない。この疑念は、1回目の隔離において職員が「懲罰だ」との発言をおこなった事実、また、2回目の隔離においては、物理的な暴力をいっさいふるっていないAさんひとりを独居房に連行するのに約20人もの職員を動員している事実によって、いっそう強くいだかざるをえないものである。

  入国警備官は、法令によって被収容者を収容してその身体を拘束し、また、被収容者に対して違反行為の中止を命じ、従わない場合は制止・隔離等の措置をおこなう権限をあたえられている。いわば、法令によって一定の物理的暴力をふるう権限がみとめられているのである。こうした強い立場にある入国警備官に対し、被収容者はその物理的暴力がただちに違法行為にあたるとみなされるのであって、言うならば武装した警備官に丸腰同然で対峙しているようなものである。したがって、入国警備官が実力行使の権限をふるうにあったっては、慎重のうえにも慎重さがもとめられるのである。

  収容場の処遇等について抗議するにあたって、Aさんが大声を出したり、私物を居室外に出して帰室を拒否する姿勢を示していたとしても、それらはあくまでも非暴力的な手段による抗議である。また、先にとおり、「被収容者処遇規則」は、「懲罰」目的での隔離の権限を入国警備官にみとめていない。

  2度にわたるこのたびの隔離処分は、非暴力的なAさんの抗議に対して物理的な暴力をもちいて制圧におよんだものであって、過剰な対応である。また、あきらかに懲罰・制裁を目的とした行為であり、そこに正当性はない。



2  Bさんのケース

  Bさんは2014年8月6日に入所し、同9月ごろから膀胱の痛み、足のむくみ、残尿感の症状が出ている。同11月以来、右足のひざの裏にしびれがあり、右足をひざから曲げるのが困難な状態である。投薬治療のほか、看護師の指示のとおり、食事において塩分摂取をひかえているが、症状は改善していない。12月の初旬には、イスに座るのが困難なほどの膀胱付近の強い痛みをうったえている。同20日ごろには、膀胱に針を刺しているような痛みがあったとうったえている。


2-1  医師抜きでの診療行為

  Bさんは、再三、診療の申し出をおこなっているが、上記の症状についての診察は11月14日の1回のみである。

  医師による診察に先立ち、9月24日に看護師がBさんに面会をおこなっている。看護師は「問診」と尿検査をおこない、Bさんに対し、塩分摂取をひかえるようにとの指示をおこなっている。個人情報開示請求により開示された「診療記録」には、看護師のものと思われる筆跡で血圧測定値・尿検査結果・体重測定値が記録され、さらに以下の記載がある。

むくみの原因は、塩分摂取↑↑が大きいと説明。
1wk減塩食、スープ、みそ汁抜きにて経過観察。
むくみ消退しなければ診療へ。
問診時、本人『ラーメン食べたことない』

  以上の「診療記録」の記載内容から、貴局の医療の問題をいくつか指摘できる。

  第1に、看護師が事実上の診療行為をおこなっていることである。医師抜きで看護師によって「問診」がおこなわれ、検査等の結果が解釈され、患者に対して症状の原因の「説明」がなされ、さらに当面の治療方針(食事療法)が決定されている。

  第2に問題なのは、看護師が「むくみ消退しなければ診療へ」として、医師による診療の可否・要不要を判断していることである。これによって、患者本人が医師に自身の症状を説明し、自身の意思で診察を受ける権利が侵害されている。診療が必要かどうかは、患者が決めることであって、看護師が勝手に決めてよいことではない。

  このように、医師の診察なしに事実上の診療行為がおこなわれることは、誤った判断のもと医療がおこなわれたり、また、患者が深刻な病気にかかっている場合にその発見が遅れたりといった危険がある。患者の心理的な不安も大きい。


2-2  患者の利益を考慮しない医師

  上記の看護師による「問診」があった日から51日経過した11月14日に、ようやくBさんに対して医師による診察がおこなわれた。Bさんによると、このとき、医師は問診のほか尿検査をおこない、「腎臓はわるくない」「太っているからそれが原因」としたうえで、「出てから自分で病院に行かないといけない」「ここでは[治療は]できない」と発言したとのことである。

  医師からBさんの症状について原因は説明されていない。「太っているからそれが原因」というだけでは、一般的すぎて原因の説明にはまったくなっていない。「太っている」人の大多数は、同様の症状が生じていないからである。

  原因がわからず、必要な治療手段が講じられないのであれば、医師は適切な診療機関・専門医を紹介し、患者をこれにつなぐべきである。医師が最優先に考えるべきなのは、患者の健康上の利益であって、入国管理局側の退去強制執行等の業務上の都合ではないからである。局内での診療でできることに限界があるならば、医師は入管に対して外部診療を進言すべきであるし、なんらかの事情で外部受診すら困難だというのであれば、仮放免等によって出所させるよう入管に意見すべきなのである。

  ところが、医師は「出てから自分で病院に行かないといけない」「ここでは[治療は]できない」などと言って、Bさんがいま必要とする治療を受けられるようとりはからう責任を放棄し、それどころか、そうした治療の中断した現状をあきらめて甘受するよう患者にうながすことさえしている。もはや、医師というよりも入管業務の下働きとでも言うべき行為で、医師としての適性・資質を強く疑わざるをえない。


2-3  医療放置と無診療投薬

  上記の症状に関して、11月14日の診察時にサワダロン錠200mgが貴局診療室より処方されている。Bさんがこのとき受け取った「あなたのお薬リスト」によると、このとき処方されたのは14日分である。ところが、以後、一度も医師の診察がなくこの薬の投薬が続いていると、Bさんは証言している(2015年1月16日現在)。これは、この間、医師の診察なしに投薬継続の判断がなされているということである。

  Bさんは、くりかえし外部診療の申出書を提出している。最近では、2014年12月12日に申出書を出し、同16日に不許可の告知がなされた。不許可告知をおこなった職員は、「何もできない、病院に連れていかない」との発言をおこなったという。

  同22日にBさんがまた外部診療の申出書を出したところ、職員はこれを受け取る際に「書いても意味はない、変わらない」と発言したとのことである。さらに、このとき同職員はBさんに対し「これ以上、治療はできません」と述べたうえで、病名を「前立腺肥大」であると告知したという。

  病名の告知が、医師の診察時になされず(すくなくとも、Bさんが理解できるかたちでの告知はなされていない)、診察から1ヶ月以上経過してから、医療従事者ではない職員によってなされたという事実は、どう理解したらよいのだろうか。11月の診察時に「前立腺肥大」との診断がすでになされていたのだとすれば、医師がBさんにこれを説明することをおこたったということである。11月の診察時にまだこの診断がなされていなかったのだとするならば、(その後、診察はおこなわれていないわけだから)医師は直接の診察をおこなうことなく、職員または看護師からの報告のみをもとに診断をくだしたことになる。

  さらに、泌尿器科の診察・検査なしに、「前立腺肥大」との診断がなされていることも不可解である。旭化成ファーマ株式会社のウェブサイトの「前立腺肥大症の検査と治療」と題されたページ( https://www.asahikasei-pharma.co.jp/health/prostate/inspection.html )によると、「必ず行う検査」として、以下7つの検査項目があげられている。

【1】自覚症状の評価、【2】直腸内指診、【3】尿検査、【4】尿流測定、【5】残尿測定、【6】血清PSA(前立腺特異抗原)測定、【7】前立腺超音波検査


  このうち、Bさんは少なくとも【2】【4】【5】【6】【7】の5項目の検査を受けていない。「前立腺肥大」との診断を確定するにあたって必要な診察・検査が十分になされたとは、とうてい思えない。それとも、職員が告知した「前立腺肥大」との診断は、確定された診断ではなく、「その疑いがある」ということなのだろうか。いずれにしても、泌尿器科での診察・検査は不可欠であり、これをおこたっている貴局は、診療の必要な患者を放置し続けているものと言わざるをえない。

  貴局は、Bさんに対し、「前立腺肥大」という病名を職員を通じて伝えたのみで、その診断の詳細・根拠・必要とされる治療などの説明をいっさいおこなっていない。そのうえ、今以上の治療をおこなわないむね宣告している。これらの行為は、体調不良を訴え、診療をもとめる被収容者に対し、病状についての医学的評価を具体的に伝えることなく、現在にいたるまで症状の改善のみられない投薬以外には、なんら診察も治療もおこなう意思がないと宣告しているにひとしく、身体的・精神的な拷問をくわえているのと変わらない。



3  Cさんのケース

  Cさんは、2014年8月27日に入所。入所前から、胸焼け、吐き気、激しい胃痛の症状になやまされ、治療を受ける予定であった。しかし、大阪入管に収容された後、貴局が本人の外部診療機関での受診の申出を拒否し続けているために、本人の望む治療を受けられていない。症状がひどいときには、胃の中をバンドで引っ張られているような感覚がし、1日に4回はいたこともあったという。嘔吐したときに、職員が写真を撮りに来るが「ちゃんと[上に]伝えておきます」と言うのみで、この症状について外部診療機関での受診は1度も認められていない。局内での受診もこれまで2回のみである。投薬による治療はなされているが、症状は改善していないと本人は言う。


3-1  「手術が必要」な患者を放置
  Cさんは、上記の症状をうったえ、9月ごろに貴局の診療室で医師による診察を受けている。Cさんによると、このとき医師は問診をおこない、またCさんをベッドに寝かせ、腹部等の触診をおこなった。医師はCさんに対し「これは薬ではなおらへん」「ここではむり、治らない」「なおそうと思ったら手術が必要」と述べたが、病名や病状、原因の説明はまったくおこなわなかったという。

  まず、重要な問題は、医師は「ここではむり、治らない」と判断したにもかかわらず、医師は外部の専門医を受診させるなど、患者の治療・治癒に必要な手段を講ずることをみずから放棄している点である。患者に最善の医療を提供する、あるいは患者がそれを受けられるように適切な専門医・診療機関につなぐという、医療従事者としての責任を公然と放り投げているのである。

  また、この医師は、Cさんに対し病状の深刻さをほのめかすのみで、原因や病状について具体的な説明をおこなっていない。患者にとって、一応の診察を受けながらも、自身の病状についての医学的評価を知らされずに放置されるのは、当然ながら大変に不安なものである。医師がこうしたことに想像がおよばないのであれば、医師としての資質・適性にいちじるしく欠けると言わざるをえないし、これを意識しながら患者をこのような状態に置いているのであれば、その仕打ちは意図的な虐待と言うべきものである。


3-2  診察もせずに詐病あつかい

  胸焼けや胃痛の症状について2回目の診療は、12月9日である。このとき、医師はCさんの話を聞くこともせずに、一方的に詐病と決めつけた。

  Cさんによると、医師は、Cさんが診療室に入るなり、一言を発する間をあたえずに以下のようにまくしたてたという。「胃が悪いのに体重が増えた」「きみはもう半年で10kg増えていますね。これは医学的にありえない」「I'm professional」。さらに医師は、Cさんがたびたび嘔吐していることについても、「吐こうと思ったら[口に手をつっこむなどすれば]だれでも吐ける」と、Cさんが詐病をおこなっていると決めつける発言をしたという。

  医師がCさんは詐病だと判断するなら、9月の診察での「これは薬ではなおらへん」「なおそうと思ったら手術が必要」などの発言はなんだったのか。いいかげんな出まかせをしゃべっていたのか、誤診であったのか、いずれかである。

  12月9日の診察において、医師は触診や検査はおろか、Cさんの話を聞いてすらいない。体重が増えているということのみを根拠に、Cさんが体調不良をいつわっているとしているのである。Cさんと面会してきたわれわれ支援者には、かれが苦痛を訴えているのがウソだとは思えないが、かりに詐病が疑われるのだとしても、医師がまずなすべきなのは、診察をすることであろう。医者としてプロフェッショナルだとの自負があるならば、患者の話を聞き、必要に応じて検査などをしたうえで、もし健康面で深刻視すべき状態にないことがあきらかならば、そのことをていねいに説明して患者の不安をとりのぞくようつとめるべきである。問診すらせずに、患者にむかって頭ごなしに詐病だと決めつけるような者は、医師として不適格である。



4  まとめ

  以上をふまえ、以下、申し入れる。

(1)上で事例にあげた3名(Aさん、Bさん、Cさん)について、早急に外部診療機関で受診させること。これができないのであれば、早急に仮放免等により出所させ、本人が自分で受診できるようにすること。

(2)上にあげた事例について調査をおこない、私たちの指摘した事実関係に誤りや調査で確認できないた事項等があれば、文書もしくは口頭にて説明されたい。説明そのものをいっさい拒否するのであれば、貴局は本申入書が述べた事実関係について異議がないものとみなす。

(3)医療問題をはじめ被収容者の処遇について、貴局とわれわれ支援者側とのあいだで協議・意見交換の場をもつことを求める。



申し入れ団体
WITH(西日本入管センターを考える会)
強制送還と人権を考えるネットワーク
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民支援コーディネーターズ・関西
難民支援団体ピースバード



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  転載は以上です。
  支援団体の申入書に対して大阪入管からは、2月6日に、口頭で局としての以下のような回答がありました。


  • 医療等の処遇に対する問題があれば、被収容者本人が申し出る仕組みがある。申し出のための用紙も用意している。
  • 収容場にもうけられた意見箱に投書することで、担当の職員に見られないかたちで申し出ることもできるし、また、男性の職員に見られたくないということであれば、女性の職員が対応する仕組みもある。
  • さらに第三者機関である入国者収容所等視察委員会の調査もあり、実際に委員が被収容者に自由に意見を聞き取りし、その報告・勧告をもとに処遇を改善してもいる。
  • これらの仕組みの中で、処遇はしっかりやってる。特定の支援者・支援団体の申し入れに回答したり、協議・意見交換の場をもったりすることはしない。


  ところが、こうしたもろもろの仕組みが十分に機能していない、あるいは仕組みそのものが十分でないからこそ、被収容者たちは面会などをとおして支援者たちに対し、申入書に述べられているような問題をうったえていると言えるのではないでしょうか。

  大阪入管の収容場の医療は、切迫した危険な状況にあるといえます。大阪近郊にお住まいのかたで、不定期にでも大阪入管(大阪市住之江区)まで足をはこべるかたは、収容された人との面会活動に参加していただければと思います(面会申請できる時間は平日の9:00~16:00まで)。この、外部からの目が届きにくい施設に収容された人々と、外にいる者がもっとつながりをつくっていくことが必要です。問い合わせは、以下までおねがいします。

問い合わせ先
  ながい(仮放免者の会)  電話:090-2910-6490



【関連】
  関東でも面会活動への参加者をつのっています。

  昨年11月にも、支援団体が大阪入管に申し入れをおこなっています。

Thursday, January 29, 2015

医療問題の抜本的改革をもとめる緊急申し入れ(東日本入管センターに)

  東日本入管センターの医療問題等について、1月28日に、仮放免者の会(関東)とBOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)の連名で、申し入れをおこないました。

  同センターでは、昨年3月末に被収容者2名があいついで亡くなるという事件がありました。


  このあいついだ死亡事件を受けて、法務省は昨年11月に報道発表をおこない、カメルーン人Wさんの死亡については医療態勢の問題を認めたものの、イラン人Sさんへのセンターの対応については適切だったとの評価を発表しました。

  しかし、この連続死亡事件についての法務省による検証・教訓化が十分なものだったとは、とうてい言えません。11月20日の法務省発表のわずか2日後の22日に、東京入国管理局でスリランカ人男性が胸にはげしい痛みをうったえたものの診療を認められずに放置され、亡くなりました。

  今回の申し入れでは、東日本センターでのSさん・Wさんの死亡の経緯をあらためて問題にするとともに、診療問題の抜本的改革と、長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者へのすみやかな仮放免をもとめました。

  以下、28日に提出した申入書の全文です。



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申  入  書
2015年1月28日
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東日本入国管理センター所長  殿
仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
一、  診療(医療)問題の抜本的改革
  昨年3月末の東日本入国管理センターでの連続死亡事件について、昨年11月20日、法務省入国管理局は記者会見をおこなった。記者会見では、イラン人男性については対応は適切だった、カメルーン人男性については医療態勢に問題があり、診療を受けていたら助かった可能性は否定できないと発表した。

  イラン人・Sさんへの対応が適切だったとの評価について、私たちは到底容認できない。33歳の若者が、官給食を喉に詰まらせて窒息死するなど通常、考えられない。Sさんは東京入管横浜支局から通算で1年2ヶ月に及ぶ長期収容であり、精神安定剤など大量の薬を服用していた。収容場、収容所における収容は拘禁的収容であり、被収容者は拘禁反応に苦しめられる。私たちは、9寮Bブロック201の同室者や彼をよく知る同ブロックの被収容者たちから、Sさんが官給食を普通に咀嚼・嚥下できず、無理して丸飲みしたり、水を口に含んで流し込むようにしていたりだったと聞いている。また、Sさんは薬を飲んだ後、ふらふらしていたとか、ろれつが回らなくなっていたとも聞いている。私たちは、Sさんは、長期収容と、劣悪な医療処遇の犠牲者であると認識している。
  カメルーン人・Wさん死亡については、法務省入管は医療態勢の問題があることを認めた。Wさんの容態悪化の経緯について、同じ9寮Aブロックの被収容者たちから聞き取りしたところ、人によって証言に違いがあったが、遅くとも亡くなる3週間前には居室に閉じこもり、明らかな衰弱が認められる状態であったと思われる。Wさん自身は、他の被収容者に自分は糖尿病であると話していた。また3月27日(木)の午前中、目が見えなくなり、歩くことができなくなったWさんの容態悪化に、同ブロックの被収容者たちは、このままではWさんが死亡すると危機感を持ち、即時の受診を求めた。昼食時間の正午になっても彼らは居室に戻らずWさんの即時の受診を求め、12時半ころに、職員が「病院に連れていく」と言ってWさんを連れ出した。法務省入管の説明によれば、Wさんは16日に脚の痛みを訴えたが、医師の診察は27日だったとの事だが、同ブロック被収容者から聞いたところでは、脚の痛みという範囲ではなく、糖尿病への治療が何もおこなわれず、また官給食も他の被収容者と同じ物が支給されており、糖尿病の進行が疑われる。少なくとも27日の午前から正午過ぎにかけて同ブロックの被収容者たちが要求したものは、脚の痛みに限定した診療ではない。
  なぜ東日本センターは、27日に至るまでWさんを受診させなかったのか、また27日以降にしてもなぜWさんの諸症状に対する総合的な診察を受けなせなかったのか。28日にはWさんは知人と面会しているが、その時は、Wさんは職員に両脇を抱えられて面会室に入って来、極度に衰弱した状態だったと聞いている。27日以降に限定して考えても、28日、29日と、一日一日、死へと向かうWさんを救急搬送していれば、30日の死亡は回避できたかもしれない。
  27日にWさんが受診していたことからもわかるように、問題は、常勤医が存在するかどうかにあるのではない。貴職らが被収容者の生命と健康に責任を持つのかどうかである。
  昨年7月24日にも私たちは申入れをおこなったが、貴職らが、被収容者の多くは長期収容となっており、日本での継続的治療が想定されるという事実を承認し、「良質かつ適切な医療」(医療法第一条の四)を施せるよう、抜本的な診療問題改革をおこなわれるよう、改めて申し入れる。

二、  長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者への速やかな仮放免
  長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者への仮放免は、これまでも繰り返し申入れてきた。この一年強の間に、東京入国管理局、東日本センターで四人もの死亡者を出しており、今後の医療処遇の改善を図るにしても、出せる者は早期に出所させ、まずは被収容者総数を減少させていただきたい。東日本センターにおいては、昨年9月期は、被収者総数が230人前後で推移していた。その時期にあっても、被収容者が診療申出をしてから受診するまで2週間から4週間ほどかかっていた。新たな症状が発症した場合は初診として速やかな診察がされるケースもあったが、そのような速やかな診察はまれであった。
  私たちは長期収容、再収容について人権侵害としてこれまでも反対してきたが、本日の申入れにおいては、次なる犠牲者を出さないための緊急性を持っての申入れである。昨年3月末、すなわち年度末において、なぜ連続死亡事件が発生したのか、私たちとしてはあれこれと想像してみるしかない。そこでの検証と検証結果の公表を貴職らが真摯におこなわない以上、また今年度末にも悲劇が繰り返されるのではないかと私たちは危惧せざるを得ない。
  被収容者は持病が悪化し、拘禁反応を発症しており、誰もが病人だと言っても過言ではない。現在の東日本センターの組織体制、予算の範囲において死者を出さない状況を作るためには、被収者総数=患者数を減らすしかないと考える。
  仮放免許否審査にあたっては、昨年7月24日にも申入れた通り、地方局収容場からの退令収容期間を通算で収容期間として計上して審査していただきたい。
以  上

Sunday, January 25, 2015

暖房時間・電話可能な時間の延長をもとめる連名意見書(東日本入管センター被収容者から)

  東日本入国管理センター被収容者40名が、1月15日と17日に、同センター所長あてに、処遇改善をもとめた申出書を提出しました。

  2通の申出書は、いずれも8Aブロックの被収容者の連名によるもので、それぞれ、暖房の入る時間帯の延長、夜間の電話できる時間帯の延長を要求しております。

  どちらの要求も、申出書の文面を読んでいただければわかるとおり、切実なものです。と同時に、自分の判断で必要なときに暖房を入れるとか、都合のよい時間に電話をかけるとか、そういった被収容者のごくごく基本的な自由すら入管はうばっているのだということも、あらためて認識させられます。

  入管は被収容者に対して、こうして専制的な統治・管理をおこなっているわけですが、いっぽうの被収容者たちは、申出書を提出するにあたり、討議をとおして全体の要求をとりまとめ、その結果として40名の署名のもとこれを提出しているのです。つまり、被収容者による申出書の提出は、入管の圧政のもとでの民主的な自治の取り組みとしても理解できるものなのです。

  ところで、先月の記事「東京入管でスリランカ人被収容者が死亡――くりかえされる医療放置による死亡事件」で述べたとおり、入管は1年あまりのあいだに、4人もの被収容者を医療ネグレクトにより病死させております(「4人」というのは、収容中の死亡に限定した場合であって、ほかに出所直後に病死している人も複数名います)。そのうち、2名は東日本入管センターの被収容者でした(「【抗議のよびかけ】東日本入管センターで被収容者2名があいついで死亡」)。

  2014年3月30日に同センターが死亡させたカメルーン人Wさんが収容されていた9Aブロックの仲間たちは、急激に体調悪化して歩くのも困難になっていたWさんを心配し、センターに対してかれを外部の病院に連れて行くよう、文書や口頭でくりかえし要求していました。Wさんが亡くなる3日前の27日の午前には、9Aの被収容者たちは職員に「[Wさんが]もう死にそうだ。待てない」とうったえ、みんなで帰室拒否をおこないました。にもかかわらず、センター側はWさんを病院に搬送せず、死亡というとりかえしのつかない事態をまねいたのでした。

  2013年10月に東京入管に収容されていたロヒンギャ難民フセインさんが死亡させられた事件も、おなじです。痙攣(けいれん)し嘔吐しているフセインさんの状況を同室の仲間たちはただちに職員に報告し、医者をすぐに呼ぶこと、また病院に搬送することを要求しました。ところが、東京入管はフセインさんを50分近くものあいだ放置したのです(「急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書」)。

  入管収容施設であいついでいる死亡事件について、入管の管理責任がきびしく問われるべきなのはもちろんです。が、同時に、入管が被収容者たちの自由・自治を軽視し、これをいちじるしく制限していることが、死亡事件の頻発という事態をまねいているのだということも、指摘しておかなければなりません。

  Wさんの9Aブロックの仲間たちは、その自由が制約されてなければ、Wさんを早期に病院に連れて行ったはずです。また、フセインさんの同室の仲間たちも、もしその自由があったならば、フセインさんが倒れたあと、ただちに電話をかけて救急車を呼んだことでしょう。50分ものあいだ、ただ様子をみているとか、上司の判断・命令を待っているなどということは、けっしてなかったはずです。言うならば、入管は、助けることのできる仲間たちの自由をうばい、かれらが仲間を助けようとするのを邪魔したのです。

  4人の命は、入管が被収容者たちの相互の助け合いをさまたげ、自治の能力・権利を抑圧するなかで、うばわれました。

  そしてまた、こうも言えるでしょう。入管の専制的な管理・統治に対する、被収容者たちの自治的な取り組みと抵抗がなかったならば、もっと多くの命がうばわれていただろう、と。じっさい、被収容者たちが協力して要求した結果として、入管が重病人の受診を許可したケースは多数あり、また処遇等の改善がみられた部分もあります。東日本センターの歴代所長などは、本来、収容所に足をむけて寝られないはずなのです。

  以下に紹介する、このたびの8Aブロック40人による申出書も、そうした自治的な取り組みとしてあるのであって、センターはこれを軽視すべきではありません。要求に真摯に向き合い、誠意をもって回答するようもとめます。

  なお、当ブログがこれまで紹介してきた、被収容者による申出書・意見書は、つぎのリンクでまとめて表示することができます。






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所長宛
申出書
平成27年1月15日
  私達8A BLOCKは、ここでの生活が少しでも緩和されればと思い書かせて頂きました。
  私達8A BLOCKのみんなは、最近かぜが多くいます。そこで以前カゼ薬がほしいという願い事きました。
  現在は、朝のAM:7:00~PM:10:00まで暖房が付いていますが、それ以外はものすごく寒くもう少し暖房の時間を伸ばしてほしいと思い書きました。特に朝はすごく寒い時季なのでよろしくお願い致します。
  暖房の時間が少しでも増えればカゼを引く人数が減ると思います。
  下記のものはみなこの意見賛成する者です。
[省略――8Aブロック40名の署名(13の国籍・民族:ブラジル、カメルーン、スリランカ、ガーナ、ベトナム、フィリピン、クルド、ネパール、バングラデシュ、中国、イラン、インド、インドネシア)]


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所長宛
申出書
平成27年1月17日
  私達8A BLOCKは皆、夜の電話は今現在、3日に一回と2日に一回の週で電話を回したり借りたりしていますが、日本時間と海外では時間が全くことなり、家族と話せない人達がたくさんいる状況です。日本での家族、友人いる人達も夜のPM7:00~9:00の2時間では多くの人達が帰宅時間(仕事関係)で9:00以降が多く、9:00まででは、つながらない人達がたくさんいます。 
  この中(入管)では、自分の家族、友人に話す時間がとても大事な時間なのでもうすこし時間を増してほしいです。どうか、よろしくお願い致します。 
  下記の者は、この意見賛成する者です。

[省略――8Aブロック40名の署名(13の国籍・民族:ブラジル、カメルーン、スリランカ、ガーナ、ベトナム、フィリピン、クルド、ネパール、バングラデシュ、中国、イラン、インド、インドネシア)]

Wednesday, January 7, 2015

1・11緊急説明会(スリランカ人男性死亡事件、チャータ機強制送還について)


  昨年11月22日に東京入管で起きたスリランカ人男性死亡事件、また12月18日に法務省がおこなったチャーター機強制送還について、緊急説明会を東京でおこないます。


日時:2015年1月11日(日曜日)、13:00~16:00ごろ
会場仲宿地域センター(→MAP)、東武東上線大山駅に12:30 集合で会場まで案内します。
連絡先:大町(おおまち)  090-3549-5890

  会の前半では、スリランカ人男性死亡事件とチャーター機強制送還について、経過等の説明と情報共有をおこないます。後半では、これらについて対応策・対抗策を話し合います。



【関連記事】

Tuesday, December 30, 2014

【抗議声明】スリランカ・ベトナムへの集団送還について


  12月18日(木)、法務省は、スリランカおよびベトナムにチャーター機をつかった強制送還をおこないました。

  翌19日の法務省自身の発表によると、今回の被送還者の概要は以下のとおりです。



被送還者総数 32人

内訳
  • スリランカ人26人(男25性人、女性1人)
  • ベトナム人6人(男性6人)


年齢階層別内訳
  • 21歳~30歳 男性6人
  • 31歳~40歳 男性12人
  • 41歳~50人 男性8人
  • 51歳~60歳 男性4人、女性1人
  • 61歳以上  男性1人
      (最年少25歳、最年長64歳)



  法務省によるチャーター機をもちいた集団送還は、昨年7月のフィリピン同12月のタイにつづき、今回で3度目になります。

  本人の同意なしに暴力によって無理やり送還するということそのものにわれわれは反対しますが、集団送還は、いわば被送還者の人数確保が目的化したなかでおこなわれるため、個別の送還以上に、送還される個々人の事情がかえりみられることなく、人権侵害と人道上の問題がはなはだしいものになるよりほかありません。じっさい、今回のスリランカ・ベトナムへの集団送還は、「人権に最大限配慮した」(12月10日付『日経新聞』)という法務省発表とうらはらに、日本に配偶者と11ヶ月の子のいる人を送還したばかりか、被送還者に反政府活動を活発におこなってきた亡命者や人身取引の被害者もふくまれるというものでした。

  仮放免者の会としては、各支援団体と連携しつつ、被送還者について、また送還のありようについて、調査をすすめているところです。

  調査をつうじて現時点であきらかになっているもろもろの事実からみても、送還翌日19日の法務省発表は、誠実なものとはとうてい言いがたいと評価せざるをえません。

  法務省は「日本に配偶者がいたり、難民認定を申請しているケースは含まれていないという」と発表しています(12月20日付『毎日新聞』)。この点についてまずは検証し、さらに今回の送還での人権侵害のはなはだしい事例を紹介していきます。



1.法務省発表「難民認定を申請しているケースは含まれていない」について

  たしかに、今回の集団送還で、われわれは申請者の送還は確認していません。そのかぎりでは、被送還者に「難民認定を申請しているケースは含まれていない」という法務省発表が「ウソ」であるとまでは私たちとしても現時点では言いきれません。しかし、この法務省の発表には、今回の集団送還の問題性を隠蔽しようとするゴマカシがあると言わざるをえません。というのも、私たちが把握しているだけでも、法務省・入管が、難民不認定処分を受けての行政訴訟や難民認定の再申請を妨害するかたちで強引に送還したケースが多数含まれているからです。

  下の図は難民認定の手続きを図解したものです。法務省のページから引用しました。



  図のとおり、難民認定の審査は2段階でおこなわれます。第1次の審査で法務大臣による「不認定」、つまり、難民として認めないという判断がなされた場合、申請者はこれを不服とし、異議申し立てをおこなうことができます。異議申し立てをおこなうと、申請者は第2次の審査を受けることになります。この第2次の審査においては、法務大臣はその諮問機関である難民認定参与員の意見を参考にして、ふたたび認定・不認定の判断をくだすことになります。

  私たちの調査では、今回の被送還者のなかに、多数、難民認定を申請していた人がふくまれていることがあきらかになっています。そして、送還された当事者からの聞き取りで、かれらが送還の直前に上記の異議申し立て、つまり第2次審査の棄却を通知されていたこともわかりました。

  法務省の理屈からすれば、難民認定の異議申し立てを棄却したあとで強制送還したのだから、「難民認定を申請しているケースは含まれていない」ということになるのでしょう。なるほど、難民認定の異議申し立ての棄却前に送還すれば「難民認定を申請しているケース」にあたるが、送還直前にこれの棄却を通知しておけば、形式上、送還の時点では「難民認定を申請しているケース」にはあたらないということに、理屈上はなります。

  入管法上は、難民の認定・不認定の決定をおこなうのも、また強制送還を執行するのも、ともに法務省(正確には法務大臣)にその権限があたえられています。現行の法制度自体がいわば「胴元がバクチを打っている」あるいは「競技に参加するプレーヤーの一部が審判をもつとめている」という状況をみとめているわけで、入管法そのものが難民認定審査の公正さを担保しえない欠陥立法であると言うこともできます。

  こうした立法上の問題点はここではおくとしても、今回の法務省の強制送還執行および難民認定異議申し立て棄却の手続きには、きわめて重大な問題があるといえます。

  私たちは、今回の被送還者について、異議申し立て棄却の通知がなされていない難民認定申請者が送還の直前に収容されたケースを多数確認しています。そのうちのAさんは、入管に収容された直後に外部への電話連絡を禁止され、「弁護士に電話をしたい」と職員に申し出たものの、許可されませんでした。こうして弁護士などの外部との連絡・通信手段を暴力的にうばわれた監禁状態で、Aさんは入管から異議申し立て棄却を通知されたといいます。

  異議申し立てを棄却された場合、申請者はその行政処分の取消しをもとめて訴訟をおこなう権利があります。入管は、棄却の通知にあたり、行政事件訴訟法にもとづき、その決定を知った日から6ヶ月以内に国を相手に決定の取消しをもとめて訴訟を提起することができるむねを、書面および口頭で教示することになっています。Aさんによると、棄却の通知時に入管は、きめられた形式どおりにこの教示をおこなったといいます。そこで、Aさんはその場で「裁判をします」と即座に言いましたが、入管職員は「いまはできません」などと言い、直前におこなったばかりの教示の内容をみずから反故にする発言をしたとのことです。入管は、Aさんの行政訴訟をおこなう意思を認識しながら、その機会をあたえず妨害し、無理やりに送還したわけです。

  難民認定申請者に対する法務省・入管のこのような送還のやりくちは、裁判を受ける権利(日本国憲法第32条)に対する明白な侵害であり、また、難民認定制度をますます形骸化させ、その公正さを決定的に破壊する暴挙というべきです。



2.送還によって配偶者・子どもと引き裂かれたケース

  さきにみたように、法務省は記者会見で、被送還者のなかに日本に配偶者がいるケースは含まれていないと発表しています。この発表もまた、言葉どおりに受け取るわけにはいかないものです。

  Bさんは、婚姻手続きは済んでいないものの、永住者の資格をもって滞在するフィリピン国籍の女性Cさんと事実上の婚姻関係にあり、Cさんとのあいだに生後11ヶ月の子がいます。Bさんは、送還されて、妻子とのあいだを引き裂かれてしまいました。また、Bさんが送還されたことで、Cさんと子は、夫・父と引き裂かれてしまいました。

  BさんCさん夫妻の婚姻手続きがおわっていないのは、婚姻制度が障壁になっているためです。外国人が日本で婚姻届を受理されるためには、原則として国籍国の政府の発行する婚姻具備証明書類(独身であることを証明する書類)の提出をもとめられます。フィリピンには制度上「離婚」がないため、Cさんが婚姻具備証明の発行を受けるためには、フィリピンの裁判所に前夫との婚姻の無効確認をもとめる訴訟を提起し、これを認められなければなりません(すでに成立した婚姻関係を「離婚」によって事後的に解消することができないため、婚姻の成立した時点にさかのぼってその「無効」を確認するという手続きが必要なのです)。この「アナルメント」と呼ばれる裁判には、多額の費用もかかりますし、時間もかかります。

  入管は、当然、フィリピンの婚姻制度に関する諸事情についても熟知しています。BさんとCさんが実質的に婚姻関係にあること、ふたりのあいだに子がいること、したがって、Bさんを送還すれば、夫婦・親子をむりやり引きはがす結果になることも認識したうえで、Bさんを送還したのです。さらに、Bさんは、夫婦のあいだに子がうまれ、退去強制令書の発付を受けた当時との事情が変化していることもあり、行政訴訟を提起しようとしていました。当会の支援者が入管への収容中にBさんと面会していたさいに、入管は立会官をつけて会話を聞いていましたから、Bさんに行政訴訟を提起する意思があることも把握していたはずです。

  法務省は、これらの事実をすべて認識したうえで、形式的に婚姻手続きが済んでいないのをよいことにBさんを送還対象にえらび、報道発表ではぬけぬけと、被送還者に日本に配偶者がいるケースは含まれていないなど言ってのけたわけです。



3.人身取引の被害者も送還

  さらに今回の集団送還では、被害からの回復途中の人身取引被害者DさんとEさんもむりやりに送還されました。

  DさんとEさんは、母国で日本人のブローカーから、3年の在留資格で日給8,000円の仕事があるともちかけられて、来日。日本に来てみると、日給2,000円の仕事をさせられ、在留資格も短期滞在、仕事の内容もブローカーの事前の話とはまったくことなるものでした。

  ふたりは、未払い賃金の支払い等をもとめて提訴し、雇用主とのあいだに和解が成立、また、裁判所はブローカーの日本人に対しあっせん料の返還を命じていました。ところが、雇用主は8回に分割して支払うべき未払い賃金のうち1回分を支払ったのみで、残金の支払いにいっこうに応じていません。また、ブローカーは居所不明のため、判決に基づく損害金の回収もできていませんでした。DさんとEさんはこれらに対する法的措置を準備しているところでした。

  法務省は、「性的搾取,強制労働等を目的とした人身取引(トラフィッキング)は,重大な犯罪であり,基本的人権を侵害する深刻な問題です」として、その撲滅のための自分たちの取り組みを宣伝しています。


  しかし、今回のDさんとEさんの強制送還は、法務省・入管が人身取引の被害者の権利回復を妨害し、加害者側に加担しその片棒をかついだ、ということにほかなりません。



4.送還のための送還

  以上みてきたように、18日のスリランカ・ベトナムへの集団送還は、難民不認定処分に対する行政訴訟の機会をを不法かつ暴力的にうばったケース、夫婦・親子のあいだを引き裂いたケース、人身取引被害者の権利回復を阻害したケースなど、重大な人権侵害と人道上の問題を生じさせるものでした。昨年度にひきつづき今年度も、このチャーター機による集団送還のために法務省は3,000万円の予算を獲得していました。その予算消化のための被送還者の人数確保が目的化したなかで集団送還がおこなわれたことが、無理やりの送還に必然的にともなう人権侵害をますます甚大なものにしたといえます。

  法務省は今年度、フィリピンおよび中国にあわせて200人を送還する費用として合計3,000万円の予算を計上していました。ところが、この両国への送還が困難とみるや、送還先をスリランカとベトナムに変更。これにあわせて、送還対象者をいわば「かき集めた」ということでしょう。まさに「送還のための送還」であって、このような人権侵害しか生まないチャーター機送還は即刻やめるべきです。

  法務省は、記者会見で、今回の送還には4,000万円の費用がかかったとしています。予算として計上していた3,000万円に対し、1,000万円ほど超過したことになります。また、4,000万円という費用は、今回の32人の被送還者1人あたりの送還費用として、125万円になります。法務省は、チャーター機送還をはじめるにあたって、一般の旅客便で1人ずつ送還する方法にくらべ「費用と安全の両面で利点がある」とし、費用について「送還対象者1人当たりの費用は、最大で現在の約3割に抑えられる」と試算していました(2012年12月19日付『毎日新聞』。チャーター機による強制送還に反対する3月行動(3月6日、水曜日)の末尾に記事を転載しています)。この法務省の試算の前提は、3,000万円の予算で200人を送還するという計画だったわけですから、被送還者1人あたりにして15万円。とすると、法務省がこの試算で一般旅客便での送還費用として想定していたのは、およそ50万円ということになります。

  したがって、今回のチャーター機送還でかかった125万円という1人あたりの送還費用は、チャーター機送還における当初の想定の約8倍、一般旅客便での個別送還とくらべてもその「約3割」どころか2.5倍にのぼる計算になります。チャーター便での送還には費用の面で「利点」があるとした法務省の前提は、完全に破綻したといえます。



5.送還対象者リストはどのようにつくられたのか?

  ところで、今回、送還先として当初の計画であったフィリピン・中国にかわってスリランカ・ベトナムがえらばれた背景のひとつとして、日本政府と送還先の政府との関係という要因も無視できません。日本側が送還をおこなおうとしても、送還先の政府とのあいだで合意が成立し、その協力をえられなければ、送還は不可能なわけです。ですから、当然、日本政府と送還先政府のあいだで事前の協議がもたれたはずです。

  私たちとしては、とくに今回、スリランカ政府とのあいだでどのような事前協議がおこなわれたのかという点に、関心をよせています。

  スリランカに送還されたFさんは、本国でも、また来日後も、独裁政治に反対する活動を積極的にしていた人です。彼は、日本でも、在日スリランカ人に呼びかけて独裁政治反対のデモを在日スリランカ大使館に対しておこなうなど、活発な反政府活動をしており、送還後の動向が危惧されるひとりです。

  こうしたFさんの政治活動については、日本の入管・スリランカ政府双方とも事前に具体的に把握していたのは確実です。大使館前での抗議行動は、Fさんの難民申請の主張に含まれていたのですから、入管がこれを知らなかったということはありえません。スリランカ大使館も、抗議行動の写真撮影などで、Fさんの人物を特定していたとみてまちがいありません。

  したがって、法務省・入管は、Fさんの政治活動の内容を知りながら、かれを送還したということになりますが、これを日本側が独自の判断としておこなったとは考えにくい、ということもいえます。日本でのスリランカ人亡命者は強力なネットワークを形成しており、本国の野党諸政党の本部とのあいだにも密接な連絡がありますから、かりにFさんの身に危害がおよんだり行方不明にでもなるような事態があれば、その情報は日本にもすぐさまつたわることが予想されます。送還翌日の「人権に最大限配慮した」という報道発表が口先だけのものであるとしても、みずからの保身と組織防衛には最大限の配慮をするであろう法務省・入管の官僚たちが、自分たちの責任を問われる大問題にもなりかねない「リスク」の高い選択をすることは、考えにくいのです。法務省にとっての今回の送還の主目的のひとつが、さきに指摘したように予算消化であろうことを考えれば、なおさらそういえます。被送還者の人数確保という観点からすれば、Fさんでなければならない理由はかならずしもなかったはずだからです。

  となると、法務省・入管があえてFさんを送還対象のひとりにえらんだことには、年明けに大統領選挙の投票をひかえたスリランカ政府の思惑・意向が関係しているのではないかということ、また、かれの送還後の処遇について事前にスリランカ側から法務省・入管を「安心」させるようななんらかの条件提示がなされたのではないかということを、強くうたがわざるをえません。

  もちろん、本国で生命・身体に危害のおよぶおそれのある人を無理やりに送還することは、両国間での協議のうえでであれ、日本側の独自の判断の結果であれ、いずれにしても大問題です。しかし、前者の場合、Fさんの人権上の問題にくわえ、難民は保護するという日本の国際的な約束そのものが根底からくつがえされることにもなります。

  Fさんをはじめ、強制送還された人たちのなかには、政治的な迫害のおそれがあることを理由に難民認定をもとめていた人が多数含まれていました。このような集団送還が、送還する側と送還先の政府間での協議のもとおこなわれたということの問題もまた、きわめて大きいといわなければなりません。それは、難民としての保護をもとめようとする人たちからすれば、建前上は難民保護をうたい、難民認定申請を受け付けている日本政府が、自分を迫害する本国政府と通謀して強制送還について話し合いをもっているということを意味するのですから。



  12月18日に法務省がおこなった集団送還は、なんら正当化しうる根拠の存在しない暴挙と言うべきであり、これに強く抗議するとともに、被送還者の今後の状況を注視していきます。




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Thursday, December 4, 2014

東京入管でスリランカ人被収容者が死亡――くりかえされる医療放置による死亡事件

  11月22日(土)、またもや入管の収容施設で死亡者が出てしまいました。

  亡くなったのは、東京入管に収容されていたスリランカ人男性、Mihindukulasuriya Nickeles Emmanuwel Fernandoさん(ご遺族の同意のもと、実名と写真を公開します。以下、「ニクルス」さんといいます)です。57歳でした。

  当会では、亡くなったニクルスさんの親族、当会顧問の指宿昭一弁護士らとともに、12月1日(月)に記者会見をおこない、私たちが東京入管の被収容者との面会等をつうじて把握した事実関係などを、報道関係者に公表しました。




1.死亡日当日の状況――被収容者の証言

  被収容者の証言からあきらかになった、ニクルスさんが亡くなった当日の状況は、以下のとおりです。

  11月中旬から東京入管に収容されていたニクルスさんは、他の被収容者2人と雑居房にいましたが、22日の朝、胸の激しい痛みを訴え、7時半頃に同国人の日本語のできる被収容者の通訳で入管職員と面接をおこないました。このさい、ニクルスさんは、聖書を手に持ち職員に見せるなどして「私はクリスチャンだ。嘘は言わない。本当に心臓がひどく痛む。病院に行かせてほしい」等と泣きながら職員に懇願したといいます。職員は当日が土曜日で局内に医者がいないことなどをを理由にこれを聞き入れず、8時頃にはニクルスさんを雑居房から監視カメラ付きの単独房に移動させました。

  ニクルスさんは、単独房移動後も泣きながら病院に行かせてくれとうったえていましたが、職員はこれに取り合わなかったといいます。8時50分頃ニクルスさんの声は聞こえなくなったそうです。9時半から12時までは開放処遇といって被収容者は、各居室から共用部や他の部屋に移動することができるようになるのですが、ニクルスさんは開放処遇の間中うつ伏せの状態のままで姿勢は全く変わっていなかったようだと他の被収容者は証言しています。13時すぎに他の被収容者がニクルスさんの居室をたずねたところ、ニクルスさんは意識不明で脈がなく、体のつめたくなった状態でした。この被収容者はすぐに職員を呼び、職員は心臓マッサージや人工呼吸、AEDの使用などしたが、まるで反応がなかったといいます。救急車が到着し、13時30分頃にニクルスさんは単独室から運び出されたとのこと。

  その後、ニクルスさんは搬送先の病院で死亡が確認されました。警察で法医解剖(新法解剖)をおこない、病理検査中。死因については内因性のものである(外因性のものではない)という以上のことはまだわかっていません。



2.あいつぐ被収容者の死亡――その背景と問題

  入管の収容施設では、このところ、被収容者の死亡事件があいついでいます。この1年あまりのあいだに、収容中の死亡だけにかぎっても、入管は4人もの外国人を死なせています。

  昨年の10月9日には、東京入管でビルマ(ミャンマー)出身のロヒンギャ難民、アンワール・フセインさんが倒れ、搬送先の病院で10月14日に亡くなりました。死因は「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」。フセインさんは9日に東京入管で嘔吐(おうと)、体を痙攣(けいれん)させて倒れ、意識不明の状態におちいりましたが、東京入管は50分ちかくものあいだ救急車を呼ばないという信じがたい対応をとりました(急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書参照)。

  今年にはいって東日本入国管理センターで、3月29日(土)にイラン人男性のSさん、翌30日(日)にカメルーン人男性のWさんが、あいついで亡くなりました(【抗議のよびかけ】東日本入管センターで被収容者2名があいついで死亡参照)。このうちWさんは、1か月近く医療放置され、最後には自力で歩くのが困難な状態になっていましたが、センターはそれでも彼に診療を受けさせることをしませんでした。

  また、収容中の死亡ではないものの、東京入管から東日本入管センターに移収されたのち出所した中国人男性Hさんが、7月11日に肺ガンで亡くなりました(元被収容者が死亡――東日本入管センターに診療の抜本的改革等を申し入れ参照)。Hさんは、収容中、頭痛や腹痛をうったえていましたが、ガンの発見が遅れ、出所後に死亡したものです。

  今回のニクルスさんの件もふくめ、入管収容施設でこうもたてつづけに死亡事件がおきている背景には、緊急医療体制のいちじるしい不備、処遇のやはりいちじるしい不備、そして、外国人にたいする入管の人権無視の体質があるとみてまちがいありません。

  緊急医療体制の不備については、昨年のフセインさん事件でその問題があきらかになったはずであるにもかかわらず、法務省および東京入管はそれをじゅうぶんに教訓化することなく、またあらたな犠牲者を出すにいたったということになります。

  東京入管がニクルスさんをわざわざカメラ付きの単独室に移動させておきながらも、他の被収容者から知らされるまでニクルスさんの異変にまったく気づかなかったという点には、処遇の「不備」と言うにも軽すぎる、「ずさんさ」があらわれています。複数の職員がニクルスさんの居室を何度も通りがかっているはずであるのに、同じ姿勢で長時間動かないニクルスさんの異変に注意を払うことがなかったというのは、おどろくべきことです。12時の昼食の搬送時などもふくめ、異変に気づく機会は何度もあったはずなのです。ところが、職員がようやく事態の深刻さを認識したのは、ニクルスさんの体がすでにつめたくなった後で、しかも、その状態を発見したのは職員ではなく、おなじブロックの被収容者だったのです。

  そもそも、東京入管はなんのためにカメラ付きの単独室にニクルスさんを移動させたのでしょうか。以上の経過をみるに、結果的にニクルスさんは、他の被収容者とともに雑居房にそのままいたほうが、安全だったにちがいないのです。病状を心配し気にかけてくれる他の被収容者の目が届く雑居房のほうが、深刻な病状をうったえても病院に搬送しないばかりか、人が伏して動かなくなっていてもこれを深刻な異常と認識しないような入管職員の目しか基本的には届かない単独房よりも、はるかに安全であることはたしかです。

  こうした緊急医療体制および処遇のいちじるしい不備のさらなる背景には、入管の組織的な体質としての外国人にたいする人権無視の思考があると言うべきです。東京入管のみならず東日本入国管理センター等、入管施設には重篤な状態にある被収容者に対し救急車を呼ばない、または、重篤な状態にある者でも病院に行かせないといった医療放置がしばしばみられます。入管職員にしても、相手が家族や友人、あるいはそうでなくても、たとえば通りすがりの見ず知らずの他人が相手であっても、けっしてこのような対応はしないのではないでしょうか。ところが、被収容者に対しては、ニクルスさんにたいしておこなったような仕打をしているのです。ニクルスさんが病状をうったえ、聞き入られることなく亡くなるにいたるまでの入管の対応からは、いわば、外国人は死んでも構わないという外国人の人権を著しく軽視した姿勢を見て取らないわけにいきません。

  入管は外国人を収容する限りその人権、生命、安全、健康を守る義務、収容主体責任があります。それらを守ることができないならばそもそも収容をいっさいやめるべきです。

  当会としては、東京入管および法務省にたいし、ニクルスさんを死にいたらしめた経過や組織的構造的問題について、また事後の対応について、今後、抗議や申し入れをつうじて追及していきます。また、みなさまにも、抗議・意見提示をよびかけます。



【抗議先】

法務省



東京入国管理局

  • 東京入管総務課 電話  03-5796-7250
  • 東京入管代表ファクス  03-5796-7125



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