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Wednesday, May 27, 2015

【連載】「難民偽装問題」をめぐる読売報道の問題点(第1回)――偽装された関心としての「難民保護」


1.はじめに

  2月以来、『読売新聞』紙上において、難民認定審査のいわゆる「偽装申請」を問題とした記事がたてつづけに掲載されております。読売は一連の記事をとおして、「偽装申請」によって「救済されるべき難民」の保護に支障が生じるとしたうえで、難民認定制度の「乱用」を防止する制度改定の必要性を主張しています。

  しかし、読売の報道は、あきらかに入管当局からリークされたと思われる情報に大きく依存したものであり、公平な報道とは言いがたいものです。難民認定制度の改定にむけた読売の議論は、この制度がこれまでどのように運用されてきたのかについての批判的な検証をいっさい欠いたまま、法務大臣や入管幹部の発言をそのままなぞったものになっているのです。

  私たちとしては、法務省のめざす制度改定が、難民認定審査の手続きをますます骨抜きにしかねないものと危惧しており、また、そのような制度改定にむけて報道機関が世論誘導の役割をになおうとしているのを看過できません。

  そういうわけで、読売報道の問題点を指摘し、読売新聞社をはじめとする報道各社に、独立した報道機関としての公平かつ多面的な報道を期待したいと思います。


  最初に、「偽装申請」問題に関して、2月以来に読売新聞に掲載された記事の一覧をあげておきます。

[a]「難民申請 偽装を指南 ネパール人を摘発 就労制度を悪用」(2月4日付朝刊1面)
[b]「『申請 ウソでも受理』難民偽装 摘発の男 100人指南」(2月4日付朝刊社会面)
[c]「実習先を逃亡  難民申請 ブローカー指南  高い収入求め」(2月6日付朝刊1面)
[d]「難民偽装で『賃金3倍』  逃亡後に転職  人手不足  企業も依存」(2月6日付朝刊社会面)
[e]「難民認定『適正化図る』法相、偽装申請問題」(2月6日付夕刊15面)
[f]「ミャンマー33人難民申請  偽装問題  実習先を逃亡後」(2月7日付朝刊1面)
[g]「来日1年 全員逃亡  『東京で稼ぐ』難民申請  ミャンマー実習生 当初から計画か」(2月7日付朝刊社会面)
[h]「窮地の難民認定制度  改正で申請急増  就労目的で悪用か」(2月8日付朝刊3面)
[i]「難民偽装1  複数ブローカー暗躍」(2月11日付朝刊社会面)
[j]「難民偽装2  実習生 生活費2万円  『我慢限界』逃げ出し申請」(2月12日付朝刊社会面)
[k]「難民偽装3  外国人集め裏ビジネス  『派遣すれば3ヶ月500万円』」(2月13日付朝刊社会面)
[l]「難民偽装4  労働力 外国人頼み 「いなければ工場止まる』」(2月14日付朝刊社会面)
[m]「難民偽装5  制度改正 見通し甘く  申請激増『就労制限の検討も』」(2月15日付朝刊社会面)
[n]「難民偽装問題 悪用防ぐ制度見直しが必要だ」(2月22日付朝刊社説)
[o]「難民申請  就労許可厳格に  偽装防止  『一律に資格』見直し」(3月8日付朝刊1面)
[p]「技能実習制度維持に必要  偽装難民防止」(3月8日付朝刊2面)
[q]「難民認定申請  最多5000件  14年、2533件異議申し立て」(3月11日付朝刊2面)
[r]「難民申請『送還逃れ』か  不法滞在者 法改正後4倍 年800件」(3月29日付朝刊1面)
[s]「『帰りたくない』難民申請  不法滞在『送還逃れ』  施設内で手口『説明会』」(3月29日付朝刊社会面)




2.法務大臣・入管当局幹部・読売新聞の一致した見解

  それぞれの記事には、おいおい具体的にふれていきますが、まずは読売が難民認定制度について、どのような問題意識をもっているのか、みておきます。

  入管は現在、基本的にはつぎのような制度運用をとっています。すなわち、正規の在留資格を取得して日本に在留する外国人が、その在留期間内に難民申請を行った場合に、申請から6ヶ月を経過したあとに就労を許可するというものです。読売は、こうした制度運用が「悪用」されているといいます。つまり、「就労目的の外国人」が観光などを理由に在留資格を取得して来日し、難民申請をすることで就労許可を得て就労しているのだと、あるいは技能実習を理由に来日した者が、難民申請して実習先から逃亡し、より良い労働条件の企業に転職しているのだと。

  難民申請者が「就労目的」であることと、その人が難民に該当するのかどうかということは、べつの問題です。「就労目的」であるから、あるいはそうみえるからといって、その申請者が難民に該当しない、また「偽装難民」であるとは言えないのです。この点については、次回くわしく論じることにしてここではおきますが、読売は「就労目的の外国人」の難民申請は「偽装申請」であるときめつける前提にたっています。そのうえで、この「偽装申請」が審査の長期化をもたらし、ひいては「救済されるべき難民の保護の遅れ」([n]記事)をまねくから制度の見直しが必要だと主張するわけです。

  就労目的の外国人が安易に難民申請に流れるのを防ぐ手立ても必要だ。入管当局幹部は「明らかに難民に当たらない申請を速やかに退ける方法に改め、申請者の就労にも制限を設けるしかないだろう」と話す。([l]記事)

  『読売』の一連の報道は、全体としてこの「入管当局幹部」の主張に沿うものになっています。2月6日の[e]記事では、「[就労を目的とする]制度の乱用防止について、法改正も含めた形で検討している」との上川法相の発言を論評ぬきで報じ、さらに2月22日の社説ではこの法相発言と上記「入管当局幹部」の主張に完全に沿ったかたちで、以下のように述べます。

 審査の長期化は、救済されるべき難民の保護の遅れにつながる。看過できない状況だ。上川法相は記者会見で「適正化を図ることが重要だ」と述べ、制度を見直す意向を明らかにした。
  難民調査官などを増員する一方、申請理由が明らかに難民に該当しないケースは、早い段階で審査対象から外すなど、認定審査の効率化を図る必要がある。

  法務大臣、入管当局幹部、および読売新聞社によると、「偽装申請」は「救済されるべき難民の保護の遅れにつながる」から問題である、というわけです。こうした論拠にしたがって、難民審査の効率化と、申請者の就労制限が主張されています。




3.「救済されるべき難民」についての読売の支離滅裂な姿勢

  なるほど、「救済されるべき難民」をすみやかに保護しなければならないとの価値観を、法務大臣・入管幹部・読売新聞社の三者は共有しているかのようです。そのとおりだとすれば、まことに結構なことです。ところが、読売報道はこの点について、まったく一貫しない、つじつまの合わない姿勢をとってもいます。というのも、読売の一連の報道は、「救済されるべき難民の保護」の観点から「偽装申請」を問題視するいっぽうで、従来、日本政府が「救済されるべき難民」についてどのような政策をとってきたのかについて、ひと言もふれていないからです。

  読売記事の執筆者が「救済されるべき難民の保護の遅れ」を憂慮しているのがほんとうならば、つぎの点についての検証は欠かせないはずでしょう。すなわち、「偽装申請」の横行によって、日本の難民政策における「救済されるべき難民の保護」について、従来とのあいだにどのような変化が生じているのか(あるいは、生じつつあるのか)、という点です。「難民の保護」についての従来の実績・実情を多少なりとも参照することなしには、現在それが機能不全におちいりつつあるという評価などくだしようがないはずなのです。ところが、読売は、これまで「救済されるべき難民」がどのようにあつかわれてきたのかについて、まるで無関心であるかのように、言及をさけているのです。

  そもそも、「偽装申請」が取りざたされる以前に、日本の難民政策が「救済されるべき難民の保護」と言うにあたいする内実をそなえたものであったためしがあったでしょうか。

  たとえば、他の難民条約加盟国の多くが例年4~5ケタの難民認定数を出しているなか、日本のそれは2013年が6人、2014年が11人にとどまっています。この数字だけみても、「救済されるべき難民の保護」について、日本がこれまできわめて消極的な取り組みしかしてこなかったことはあきらかです。こうした冷淡ともいえる日本政府の難民保護についての実情はよく知られたことであって、日本の難民政策・制度について取材した経験のある記者が知らないはずがありません。

  昨年12月には、日本政府は、反政府活動家をふくむ多数の庇護希望者に対し、行政訴訟の機会を違法かつ暴力的にうばって一斉に強制送還するということすらおこなっています(【抗議声明】スリランカ・ベトナムへの集団送還について)。日本においては、「救済されるべき難民」と言うべき難民の大多数がそもそも難民と認定されていないのであって、その一部が強制送還されている事実さえあるのです。

「救済されるべき難民」がほとんど救済されていない実態についてはいっさい沈黙をきめこむいっぽうで、救済の「遅れ」をなにやら深刻ぶって憂慮してみせるという読売の報道姿勢は、支離滅裂としか評しようがありません。こうした姿勢は、「救済されるべき難民」に真剣に関心をよせているのだとすると、理解しがたいものです。この点を、以下にもうすこし具体的にみていきます。




4.難民申請者への就労制限

「入管当局幹部」は、読売の記者に対し、申請者の就労の制限と、「明らかに難民に当たらない申請を速やかに退ける」ための審査制度の改定の必要性を語ったとのことです。読売は、この「入管当局幹部」のコメントをそのままなぞるように、一連の報道で難民申請者の一部が合法的に就労を認められている現行の制度運用を問題視し、さらに社論として「認定審査の効率化」を主張しています。しかし、これらについても、「救済されるべき難民の保護」という大義名分を真に受けることはできません。

  まず、申請者の就労の制限について検討してみます。

  読売は、ネパール人ブローカーが、短期滞在ビザや留学ビザで来日した同国人たちに難民認定の「偽装」申請を「指南」していたという事例を取り上げています。また、このブローカーが難民申請を「指南」していたネパール人のなかに技能実習生がふくまれていたことや、実習先から逃亡したネパールやミャンマー出身の技能実習生が難民認定を申請して就労資格を得ている例などをあげています。そのうえで、「人道的配慮 逆手に」との見出しのもと、つぎのように述べます。

  難民認定申請の虚偽申請を指南していたブローカーの存在は、深刻な迫害から外国人を守るための制度を根底から揺るがすものだ。
  日本では1982年に難民認定制度が導入されて以降、続発する民族対立に人道的な対応を行うための改正が重ねられてきた。2004年、来日から原則60日以内としていた申請期限を撤廃し、10年以降は申請の6ヶ月後から就労を認めた。難民と主張する理由などが形式的に記載されていれば、全件審査するのも特徴だ。
  ブローカーの男はこうした配慮を逆手に取り、偽装申請を繰り返して「審査中」の状態を作り出し、合法的な就労を可能にしていた。([b]記事)

  さきにみたような、難民認定制度が「深刻な迫害から外国人を守るための制度」として運用されているとはとうてい言えない現状をふまえるならば、読売の姿勢はやはり非常に奇妙なものです。きわめて少ない難民認定数などの制度運用の実績にはいっさい触れることなく、しかし制度が「根底から揺るが」されることを憂慮してみせるのは、いったいどういうことなのでしょう。日本の難民認定制度に「根底から揺るが」されるほどの立派な「根底」があると言うなら、ぜひともその実績をあげて示してほしいものです。

  生活費の支給等の支援をするのでもなく、たかだか難民申請者の一部に「就労を認めた」ことを、「人道的配慮」と呼んでいるのもおかしな話です。公的な生活支援を受けられている難民申請者は、現状ごくごく一部に限られています。公的支援も家族などによるじゅうぶんな支援も受けられないほとんどの難民申請者は、就労資格のあるなしにかかわらず、就労しなければ生活していけない状況におかれているのです。就労が許可されるのは、読売記事にあるとおり「申請の6ヶ月後から」です。その「6ヶ月後」の就労許可も、難民申請した時点で在留資格をもっていることが要件とされるので、超過滞在であったり不法入国であった人が申請しても就労は許可されません(注)。

  つまり、難民申請者に就労を許可しないのが日本政府のとっている事実上の「原則」であって、一定の要件をみたす一部の申請者に「例外」として就労許可をあたえているにすぎないのです。生活保障が公的になされているわけでもなく、就労しなければ生活できない状態におかれたひとの就労が、言うならば制度的に「非合法化」「違法化」されているわけです。これはあきらかに基本的人権としての生存権が侵害された状態といえます。そうした人権侵害がノーマルとなっている状況において、入管は例外的に一部の申請者に就労を許可しているにすぎないのです。これを「人道的配慮」と呼ぶなら、日常的に他人をなぐっている者が一日だけなぐるのをやめたらそれも「人道的配慮」だ、ということすら言えてしまうでしょう。

  読売の報道は、一部の難民申請者に就労許可を認める「人道的配慮」が「就労目的」の「偽装申請」者に「悪用」されているとして、この制度運用をあらため申請者の就労に制限をもうける方向に世論を誘導しようとするものです。しかし、そこで読売が持ち出している「救済されるべき難民の保護」という大義名分は、言葉どおりに受け取れるようなものではまったくありません。読売は、難民申請者の一部についてその就労を「非合法化」「違法化」しないという現行の制度運用を攻撃しながら、その大義名分が難民保護だと言うのですから、こんな支離滅裂な話はありません。




5.認定審査の効率化

「認定審査の効率化」についても同様のことが言えます。読売はその「効率化」の具体案として、先に引用したように「申請理由が明らかに難民に該当しないケースは、早い段階で審査対象から外す」ことをあげています。

  難民弁護団連絡会議は、この点について「何をもって明らかに根拠のない申請とするかの判断には、明確な基準がなければなりません」として、読売が主張するような制度変更によって、難民該当性のある申請者がますます認定されなくなる危険性を具体的に指摘しています。


  ここで指摘されているように、法律知識をもたない難民申請者がほとんどであること、難民該当性を主張しうる事象に申請者自身が気づいていない場合があることなどをふまえると、「認定審査の効率化」は、難民認定されてしかるべき申請者をますますとりこぼす結果を生じさせかねないと危惧されます。ただでさえ、年間の難民認定数が2けたに達するかどうか、という惨憺たるありさまなのです。これは、国の方針として難民を保護する意思などないのだと理解するよりほかない現状です。

「救済されるべき難民の保護」などと口にするならば、むしろ必要なのは、申請者が自身ではじゅうぶんには立証しえないでいる難民該当性を、個別にていねいに拾い上げることを可能にする方向での審査プロセスの見直しであるはずで、それは「認定審査の効率化」とは正反対のものです。

  また、読売は、申請者の急増によって審査期間が長期化していることを指摘し、その急増の背景に「偽装申請」の横行がある可能性を示唆していますが、日本での難民申請数自体、他のいわゆる先進諸国とくらべて、けっして多いものではありません。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)によると、2013年の主要難民受け入れ国の難民申請数は、ドイツ10万人以上、アメリカ合衆国8万人以上、フランス6万人以上などとなっています(【プレスリリース】先進諸国における難民の庇護申請件数が28%増加)。これに対し、おなじ2013年の日本の難民申請数は3,260人です(平成25年における難民認定者数等について(法務省入国管理局))。翌2014年は大幅増とはいえ、5,000人(平成26年における難民認定者数等について(法務省入国管理局))。

  日本は認定数のみならず、申請数においても、ケタちがいに少ないのです。地理的条件などもろもろの条件がおなじではないので単純な比較はできないものの、日本は、政府の財政規模にみあった申請者数に対応できるような審査体制の拡充において遅れているからこそ、こんにち審査期間の長期化をまねいているとも言えるのです。たかだか5,000人という年間申請者数で「難民認定制度のゆらぎ」などと大さわぎするのは、そもそも難民の受け入れ・保護に取り組む意思がないものとみなされても、おかしくはありません。




6.入管による読売等をつかった世論誘導のねらい

  以上のように、読売は難民保護という大義名分をかかげていますけれど、これを真剣に考えているとはとても言えません。読売は、たんに難民申請者の就労制限や「認定審査の効率化」の口実として、自分たち自身で真剣に考えたこともないし考えるつもりもないであろう「難民保護」というお題目を都合よく持ち出しているにすぎません。これほど、難民をばかにした話もありません。

  同様に、入管当局が読売等の報道機関をつかった世論誘導をつうじてめざしている制度変更のねらいが、難民の保護・救済にあるのではないことも、こんにちまでの難民政策の「実績」からみてあきらかなのです。とすると、そのねらいは、難民認定審査の「効率化」そのものにあると考えるよりほかなく、つまりそれは、強制送還の「効率化」ということにほかなりません。

  国際法上も入管法上も難民申請者を強制送還することはできないのであって、入管にとって難民認定制度が送還の障壁となる局面が多く存在しているのは事実でしょう。入管からすれば、本来は日本に在留できないはずの外国人のうち少なくない人が難民申請等をしているために、思うように退去強制手続きに入れない、あるいは送還を執行できないという現状があって、その障壁を取りのぞく制度変更をおこないたいという意向があるのでしょう。読売の報道は、こういった意向を忠実になぞったものといえます。

  しかし、入管の直面しているこうした現状について、「認定審査の効率化」によって「偽装申請」を排除すればよいと考えるのは、一面的にすぎます。

  まず、審査を「効率化」する方向での難民認定制度の改定では、たとえこれによって「偽装申請」をある程度は排除できるのだとしても、すでに述べたとおり、難民に該当するはずの申請者をとりこぼす危険性も増大させます。

  そもそも、難民の保護をかかげ、難民認定制度をとる以上、これによって国の送還業務が一定の制約を受けることになるのは当然です。出入国管理上の関心のみにもとづいて送還がおこなわれるようでは、難民は保護されないのですから。難民保護の要請には、本質的に国家の送還業務と矛盾し、これを制約する面が存在するのだということを認識しなければなりません。

  難民の保護は、人権・人道上の観点から必要・重要なのはもちろん、国際的な約束にもとづいて国に課せられた義務でもあります。国家主権としての出入国管理行政がこれによって一定の制約を受けるのは、当然なのです。入管にとって思うように送還業務がすすめられないという現状を、難民審査の「効率化」によって打開しようとするのは、難民の保護という要請をますますないがしろにすることにほかなりません。

  そして、そもそもそのような現状がどうして生じているのかという背景をよくみる必要があります。つまり、送還業務が、入管側からみれば、いわば機能不全をきたしているという現状がなぜ生じているのか、ということです。

  これは、読売が言うところの「偽装難民」やこれを手引きする外国人に一方的に責任を転嫁すればたりるというほど単純な問題ではありません。むしろ、入管が直面している問題は、国の場当たり的な政策のツケと言うべきものです。

  日本政府は、1980年代のバブル期以来、国内産業の労働力不足をおぎなうために、脱法的な手法での外国人労働力導入策をくりかえしてきました。技能実習制度もその一例です。政府は、公式には受け入れを認めていない、いわゆる非熟練労働に従事する外国人労働者を、非公式的なかたちで導入してきたのです。このことが、次回以降くわしくみていくように、入管の送還業務に混乱と矛盾をもたらしています。

  読売の一連の報道は、この政策的な問題を掘り下げるかわりに、難民申請者の一部を「偽装難民」ときめつけ、これに一方的な責任転嫁をおこなうものになっています。こうした読売の論調は、必然的に人種差別をともなうものに行き着きます。本来は日本政府が責任を負うべき問題であり、また日本社会全体の構造的な問題でもあるはずのことがらについて、その責任を“不届きな”(と、入管および読売が世論に印象づけようとする)一部の外国人になすりつけようとするわけですから、かれらを悪魔化して描くためのレトリック・演出が必要になるのです。事実、読売の一連の記事には、実態はたんなる出稼ぎ労働者にすぎない者たちを、あたかも秩序から逸脱した、あるいは秩序を破壊する悪者であるかのように印象づけようとする、人種差別的な記述とレトリックが随所にみられます。

  こうした点を、次回、読売記事の技能実習制度と「偽装難民」をめぐる記述にみていきます。



《注》

「不法入国」について言えば、迫害のおそれがあって、あるいは実際に迫害を受けていて、出身国でパスポートの発給を受けられないような人は、正規の手段で外国に入国しようがないのです。



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Wednesday, March 11, 2015

なぜ入管の収容施設で死亡事件があいつぐのか?――医療処遇について仮放免者の会の見解


1  あいつぐ死亡事件

  入管の収容施設において、被収容者が病死する事件があいついでいます。1年あまりのあいだに4人もの死亡者を出すというきわめて異常な事態です。


  • 2013年10月14日  ロヒンギャ難民フセインさん死亡(東京入国管理局)
  • 2014年3月29日  イラン人Sさん死亡(東日本入国管理センター)
  • 2014年3月30日  カメルーン人Wさん死亡(東日本入国管理センター)
  • 2014年11月22日  スリランカ人ニクルスさん死亡(東京入国管理局)


  法務省入国管理局は、このうち東日本入国管理センターでの2件の死亡事件(昨年3月末にイラン人とカメルーン人が死亡)について、11月20日に記者会見をひらき、調査結果と改善策を発表しました。この法務省入管の報道発表の2日後、11月22日、こんどは東京入国管理局でまた死亡事件がおこりました。

  法務省入管は、東日本センターでの2件の死亡事件のうち、イラン人の死亡については「入国警備官らの措置は適切であった」と結論づけています(注1)。一方、カメルーン人の死亡については、法務省はセンター側の措置と医療態勢の問題点をみとめており、「改善すべき点」をいくつかあげています。ところが、あとで述べるように、報道発表で示された改善策をみるに、法務省入管の問題認識はあまりに甘すぎると言わざるをえません。

  私たちは、このたび死亡者を出した東日本センター、東京入管はもとより、東京入管横浜支局、大阪入管、名古屋入管等、どの収容施設でも、いつ被収容者の死亡事件が起きても不思議ではない状況にあるものと認識しています。入管の収容施設の医療についての根本的な欠陥の所在を、この間つづいた一連の死亡事件はあきらかにしています。これに手を打たないかぎり、第5、第6の死亡事件を今後ふせぐことはできないでしょう。




2  医療処遇の根本的欠陥

  仮放免者の会としては、一連の死亡事件をうけて、入管収容施設における医療処遇の根本的な欠陥として、以下の2点を重視しています。第1に、医師ではない職員による医療判断が横行していること。2点目は、医師の独立性が確保されず、その診療行為に入管が介入し、不当な制約をくわえていることです。


2-1 職員による医療判断がおこなわれていること

  昨年11月22日の東京入管でのニクルスさん死亡事件においては、心臓の痛みを訴え、病院への搬送を求めるニクルスさんに対し、職員が「立ってるし、歩けるから大丈夫じゃないの」と言ったとの同室の被収容者による証言があります。医者ではない職員が、ニクルスさんの病状について「大丈夫」だとの医療的な評価をおこない、病院に搬送する必要はないという判断をおこなったことになります。

  2013年10月9日にやはり東京入管でミャンマーのロヒンギャ難民、アンワール・フセインさんが倒れ、搬送先の病院で10月14日に死亡した事件についても、同室の被収容者による同様の証言があります。職員は、嘔吐し体を痙攣(けいれん)させているフセインさんについて、「癲癇(てんかん)なので大丈夫」だと発言したといいます。結果的に、職員がフセインさんの居室に到着してからおよそ50分のあいだ救急車は呼ばれず、フセインさんは5日後に「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」のため病院で亡くなりました。

  職員によって「立ってるし、歩けるから大丈夫じゃないの」「癲癇(てんかん)なので大丈夫」といった発言があった事実を、東京入管はみとめていません。しかし、百歩ゆずって、こうした発言がなかったのだとしても、2件の死亡事件において、「病院に搬送する必要はない」との判断を職員がおこなったという事実は疑いようのないことです。

  そして、被収容者に診療を受けさせる必要があるかどうか、病院に搬送する必要があるかどうかの評価・判断を、医療の専門家ではない職員が勝手にくだしているのは、死亡事件のあいついだ東京入管・東日本センター両施設にかぎったことではありません。本人の訴え・要求をさしおいて、職員が勝手な医療判断をおこなって診療や病院への搬送を拒否するということは、入管のどの収容施設でも横行し常態となっているのが現状です。

  したがって、一連の死亡事件は、偶発的な「事故」ではなく、入管の収容のあり方がまねいた必然的な結果、起こるべきして起こった結果であるというべきです。また、職員による医療判断が横行している現状では、今後、死亡事件が入管のどの施設で起こっても不思議ではありません。


2-2  医師の診療行為への入管による介入

  入管の医療処遇の根本的欠陥としては、医師の独立性が確保されていないという点も指摘しなければなりません。施設内の診療室での診療においても、外部診療機関での診療においても、入管が医師の診療行為に介入し、これを制限するという事例がしばしばみられます。

  たとえば、大阪入管では、外部診療において医師が患者にMRI検査をすすめたにもかかわらず、同行した職員が「(費用が)高い」からと言ってこれをさまたげた事例があります(注2)。東日本センターにおいても、外部診療で、職員が医師に「先生、この人はもうすぐ帰国する人ですから」などと口をはさみ、継続性をもった治療をさせないよう介入したという多数の事例について、被収容者たちによる証言があります(注3)

  本来、医師は、患者の意思にもとづいて、その医療上の最善の利益を追求する責任を負います。医師が患者に対する責任を果たすためには、医者と患者の関係に入管が介入しないこと、すなわち医師の独立性を確保することが必要です。(医療法第一条の二  「医療は、生命の尊重と個人の尊厳の保持を旨とし、医師、歯科医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と医療を受ける者との信頼関係に基づき、及び医療を受ける者の心身の状況に応じて行われるとともに、その内容は、単に治療のみならず、疾病の予防のための措置及びリハビリテーションを含む良質かつ適切なものでなければならない。」)

  医師が患者に負っている責任をはたすことと、入管の退去強制令書を発付し、執行するという業務とは、たがいに対立する局面があることは否定できません。やや極端な言い方をすれば、入管には、被収容者に適切な医療を提供せずに苦痛を与えるというインセンティブが存在します。収容生活がたえがたいものになるほど、被収容者が退去強制令書に服して送還に応じる可能性は高くなるからです。個々の職員の主観的な意識がどうであれ、組織としての入管には、医療処遇を劣悪・貧弱なままにとどめておく動機が客観的に存在します。

  当然ながら、優先的に尊重すべきなのは、入管の退去強制手続きにかかわる業務ではなく、被収容者の生命と健康です。入管の職務遂行が、患者の医療上の利益を追求すべき医師の職務と対立・矛盾する局面が存在しうる以上、被収容者の生命・健康をまもるためには、医師の独立性を確保し、医師と患者の関係に入管が介入することをふせぐ仕組みが不可欠です。




3  法務省の改善策では再発をふせぐことはできない

  さきに述べたように、法務省入管はカメルーン人の死亡については、東日本センターの対応に問題があったことをみとめています。しかし、法務省入管が具体的にあげている改善すべき課題をみると、その問題認識が十分なものとは、とうてい言えません。

  法務省入管は、「改善すべき点」として第1に、常勤医の確保に向けた努力を継続するとしています。第2に、重症事案の見落としを防止できるよう、診療申出から受診までの手続き・手順を見直すとしています。

  まずは2点目から検討していきます。

  「診療申出」というのは、被収容者が職員に対し、診療をもとめることです。法務省入管が「見直す」と言っているのは、被収容者が職員に診療をもとめ、職員が診療の要不要を評価し、受診が必要だと判断すれば、そこではじめて医師のもとに連れて行く、という一連の手続き・手順についてです。被収容者の「診療申出」に対して入管職員が許可を出さないかぎり、「受診」できないという仕組みそのものは、問題にされていないのです。つまり、法務省入管の改善策では、診療が必要か不要かという医療的な評価・判断を、職員にさせる、ということは前提になっているわけです。

  しかし、まさにこの、医療的な評価・判断を、医療の専門的知識・技能のない職員にゆだねてきたという点こそ、重大な問題だというべきなのです。職員が診療の可否を判断しているという仕組みそのものを根本的にあらためずに、その「手続き・手順」をいじっただけで「重症事案の見落としを防止」できるかのように考えている法務省入管の認識は、まったくまとを外したものと言うほかありません。医療従事者ではない職員に「見落としの防止」を要求するのは、限界があります。職員に能力をこえた職務を課している仕組みと、この仕組みの存続を現在までゆるしてきた入管の組織こそ、その問題を問われるべきなのです。

  法務省入管が「改善すべき点」としている常勤医の確保についても、これによって被収容者の生命・健康におけるリスクが大きく改善されるとは考えられません。常勤医がいても、受診にいたるまでのプロセスに職員が介在してその可否を判断するということでは、「重症事案の見落とし」が起きるのは必然的であるからです。

  また、常勤医が確保されたとしても、その医師の独立性が確保されないのであれば、根本的な改善はみこめません。入管が、医師と患者との関係に介入し、患者に対して医師が責任をもって診療にあたるのを妨害するようでは、常勤医がいても意味がありません。そのような環境では、医師は、患者に対して誠実に責任を果たせないことに苦悩して辞職するか、あるいは、入管との癒着関係に適応して医師としての職業倫理をなげうって勤務をつづけるか、ということになるでしょう。

  非常勤の医師ですが、入管と癒着して職業倫理をなげうった例を、大阪入管の医師にみることができます。この医師は患者にむかって「なおそうと思ったら手術が必要」と言いながら、「ここではむり、治らない」と言い放ち、外部の専門医につなぐことすらしていません(注4)




4  死亡事件の再発をふせぐために――改善すべき4項目

  以上をふまえて、当会としては、つぎの4点を改善すべき課題であると考えます。


(1)医師でない者、入管職員が被収容者の病状について判断し、予断にもとづく対応をしてはならない。

(2)各収容施設に勤務する医師が医道に基づいて良質かつ適切な医療をほどこせるよう、医師の独立性を尊重し、その診療を制約させるような介入をしてはならない。

(3)医師にはそれぞれの専門性、すなわち能力の限界がある。また収容施設内の診療機器・薬剤などの制約がある。そのため、医師が患者への責任を負ううえで、しばしば外部病院の専門科・専門医による受診の必要性があるとの判断が出る。その場合、速やかに被収容者(患者)を外部受診させなければならない。

(4)以上のために必要な予算を確保すること。



  (1)は、東京入管での2件の死亡事故の教訓から、急患発生時に医師不在であれば救急搬送することも含みます。

  (1)~(4)ができないならば、被収容者の健康、生命を守る責任を入管は果たすことができないということです。その責任を果たせない以上、入管は人を収容する資格がありません。

  私たちがもとめているこれら4項目は、ごくごくあたり前のことがらであるはずです。こうしたあたり前の処遇が入管の施設ではこれまで実現されてこなかったし、死亡事件を受けての法務省入管の調査にもとづいて発表された「改善すべき点」においてすら示されていません。そこには、入管組織の深刻な外国人差別・人種差別の体質があるのではないかと考えざるをえません。


◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

【注】

1.この「適切であった」という法務省入管の評価は、当会として、とうてい容認できるものではないことを、1月に法務大臣らにあてて提出した申入書において述べた。


2.【転載】大阪入管への申し入れ


3.外部診療機関の医師に対してしばしばなされているという東日本センター職員による「この人はもうすぐ帰国する人ですから」といった発言は、同センター被収容者の実態に合ったものではない。同センターの被収容者は、すでに退去強制令書が発付されているとはいえ、その多くは退去強制令書発付処分を不服として行政訴訟をおこなっているか、難民認定を申請している。そうでなくても、収容期間が1年をこえるのが通例になっており、2年をこえる者もめずらしくない。同センター被収容者の大多数において、「もうすぐ帰国する」から、継続的な治療ができない、またそれが必要でないと言えるような状況にはない。


4.【転載】大阪入管 に支援5団体が申入書「死亡者がいつ出ても不思議 ではない危機的な状況」


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Sunday, March 8, 2015

ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容、妊婦の収容などについて申入書(2月19日)

  前回の記事(「東京入管での行動予定3つ――ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容に対し抗議・申し入れ」)で告知していたように、2月19日(木)に、東京入国管理局にて抗議行動と申し入れをおこないました。

  スリランカ、パキスタン、フィリピン、中国、インド、ネパール、インドネシアなど出身の仮放免者を中心に約50人が参加して、東京入管の総務課、処遇部門、違反審査部門に抗議・申し入れをおこないました。

  以下、提出した申入書の全文です。


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申  入  書
2015年2月19日
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局長  殿
仮放免者の会(関東)


  2014年11月22日、土曜日、東京入国管理局(以下、「東京入管」という。)に収容されていたスリランカ国籍を有する男性、Mihindukulasuriya Nickeles Emmanuwel Fernando(1957年1月9日生、以下、「ニクルス」さんという。)が心臓の激しい痛み及び病院に行かせてほしいと職員に再三にわたり訴えるも聞き入れられず、同日死亡した。2014年12月18日には、スリランカ人男女26人、ベトナム人男性6人をチャーター機を使用して強制送還した。送還された者の中には、国籍国で、また日本国内において当時の政府に反対する活発な政治活動を行っていた活動家や日本で配偶者及び子供がいる者が含まれていた。また東京入管では、帰国すると迫害を受ける恐れのある難民申請者や家族が日本にいる者、長期滞在により生活基盤が本邦にしかない事等から帰国できない事情にある仮放免者に対する再収容がみられる。さらに東京入管では、2014年10月29日に妊娠中のインドネシア人女性を妊娠中であることを認識していながら、仮放免にして在宅審査とする等の措置を取らず収容した。我々仮放免者の会ではこれらの東京入管及び法務省入国管理局が行った人権侵害行為に対し強く抗議し、以下申し入れを行う。



(1)ニクルスさん死亡事件に関して

  ニクルスさんは、東京入管Gブロックに収容中の2014年11月22日7時19分、心臓の痛みを職員に対し訴えた。ニクルスさんは、「ホスピタル!」と繰り返し泣き叫んでいた。ニクルスさんは、G-4 の部屋にいたが、同じ部屋のペルー人がニクルスさんと簡単な英語でやり取りをして、職員に通訳して「病院に行きたい」と伝えたが職員は、「無理です。今日は土曜日」「立ってるし、歩けるから大丈夫じゃないの」と言ったという。東京入管処遇部門首席(以下、「首席」という)からの遺族及び当会に対する説明によると7時30分、職員は、ニクルスさんが日本語を話せず、英語もさほどできないことから、同じブロックのスリランカ人被収容者を通訳とし話を聞いた。通訳をしたスリランカ人Aによると、ニクルスさんは、聖書を手に持ち職員に見せる等して「私はクリスチャンだ。嘘は言わない。本当に心臓がひどく痛む。病院に行かせてほしい。」等と泣きながら職員に懇願したという。応対した職員二人は、「今日は土曜日だから救急車は来ない」等と言い取り合わなかったという。首席によるとニクルスさんが心臓に痛みを訴えたことに対して7時41分、「救心」2粒を与えニクルスさんがこれを飲んだ後、容体観察の為として8時16分、G単3のカメラ付き独居房に移動させたという。Gブロックの被収容者たちの話によると、ニクルスさんは、移動させられてから8時50分頃までGブロック全体に聞こえる声で「うーっ」という苦しそうな叫び声をあげていたという。首席によるとニクルスさんは、9時半頃から13時過ぎに意識不明の状態で発見されるまで、寝具にうつ伏せに横たわり就床しているように見える状態だったという。その後、東京入管としてはニクルスさんが寝ていると認識していたという。13時過ぎにAがニクルスさんの居室に行ったところ、ニクルスさんは、すでに意識がなく、体は冷たくなっていたという。Aを含む被収容者によるとニクルスさんは、よだれをたらし、尿を漏らして寝具に大きなシミができていたという。首席によると13時3分、職員が呼ばれ、意識不明、体の冷たくなっている事を確認。13時11分救急車が呼ばれた。13時20分救急隊が到着し、東京都済生会病院に搬入され心臓マッサージ、心肺蘇生法等の処置がとられたが、15時3分、死亡が確認されたという。遺体は警視庁東京湾岸警察署から11月23日、東京医科歯科大学附属病院において死因究明に関する解剖が実施され、約2か月後に死因が判明する見込みであり、判明次第遺族にも知らせるとのことだった。しかし、現在に至るまで東京入管から遺族に対し死因に関する説明の連絡等はない。

  ニクラス死亡事件に関しては医師でないものが医療的判断を常習的に下しているという東京入管に限らず入管施設全体に見られる極めて重大な問題がある。ニクルスさんが心臓の痛みを訴えた際、職員が「立ってるし、歩けるから大丈夫じゃないの」といったと被収容者は証言している。2013年10月9日にも東京入管でミャンマーのロヒンギャ難民、アンワール・フセインさんが倒れ搬送先の病院で10月14日に死亡しているが、嘔吐、体を痙攣させて倒れ、意識不明の状態になったフセインさんに対して被収容者の証言によると職員は「癲癇なので大丈夫」等といい、結果的に50分程度の長時間救急車を呼ばなかった。医師でないものが医療的判断を常習的に下しているという問題がこうした発言にも表れている。両方の事件での職員の発言に関して入管側は、そのような発言はなかったと考えている等としているが、これを真実と受け止めることは難しい。首席は遺族及び当会に対する説明の際、なぜ心臓の痛みを訴えるニクルスさんを病院につれていかなかったかとの問いに対する回答の一つとして、自身で立って歩いていたこと、独居房で手を洗っていたので大丈夫と思った等とした。病気を訴えているものに対して「大丈夫」であるかそうでないかといったような判断を下すことができるのは専門家である医師あるいは医療従事者であって入管職員ではない。また、ニクルスさんを容体観察するために独居房に移しておいて異常を発見できなかった怠慢は甚だしいものがあるが、容体観察すべき者が長時間動かないままでいる状態を寝ていると判断する事そのものが入管職員によってなされていいものではない。フセインさん死亡から1年近くの間に入管施設で四人もの命が失われたのは入管施設内の医師でないものが医療的判断を常習的に下しているという入管施設の根本的欠陥があるといえる。こうした欠陥が解消されない限り、第五、第六の犠牲者が生み出されるといっていい。週7日24時間医師が常駐することが望ましいが、これが無理でも、被収容者の状態を外部の医療機関に速やかに相談、判断を仰ぎその指示に従い速やかに救急車を呼ぶ等の仕組みを整えることが必要である。たとえこのような仕組みが現状で存在するにしてもこれらが機能していないことがフセインさんの件、ニクルスさんの件でもすでに明らかである事を踏まえて医療体制を整備することを強く申し入れる。

  首席はニクルスさん事件を受けて、原因究明、再発防止に向けたプロジェクトチームを作っていると説明したが、その一方でニクルスさんは「病院に行きたいとは言わなかった」「胸の痛みを訴えたのは1度だけ」等という。これらは複数の被収容者達の証言と大きく食い違う。また、被収容者達からは入管側からのヒヤリング等が一切なかったと聞いている。原因究明、再発防止をうたいながらこうした公正さを著しく欠く対応は問題である。入管は今回の事件を真摯に受け止め、なぜこのような非人道的対応がなされたのかに関する全面的かつ公正な形での真相究明と再発防止策の徹底と公表を行うと共に、今回の事態を招くに至った責任を負う者への処罰、遺族に対しての謝罪と補償をすることを強く申し入れる

  入国管理局には外国人を収容する以上、被収容者の生命、安全、健康を守る収容主体責任がある。東京入管には収容する以上、被収容者の生命、安全、健康を守る責任を果たすよう重ねて申し入れる。



(2)チャーター機強制送還について

  今回行われたチャーター機送還では、異議申し立て棄却の通知がなされていない難民認定申請者が送還の直前に収容され、そのうちの1人のスリランカ人男性は、入管に収容された直後に外部への電話連絡を禁止され、「弁護士に電話をしたい」と職員に申し出たものの、許可されなかった。こうして弁護士などの外部との連絡・通信手段を暴力的にうばわれた監禁状態で、彼は入管から異議申し立て棄却を通知されている。また彼は、その場で裁判をする意思を示したにも関わらず、職員は、今はできない等とし、裁判を受ける権利を事実上剥奪した。異議申し立てを棄却された場合、申請者はその行政処分の取消しをもとめて訴訟をおこなう権利がある。入管は、行政訴訟をおこなう意思を認識しながら、その機会をあたえず妨害し、無理やりに送還している。難民認定申請者に対する法務省・入管のこのような送還のやりくちは、裁判を受ける権利に対する明白な侵害である。また入管は配偶者のいる者は送還していないと公式には発表していながら、実際は永住者のフィリピン国籍所持の女性と事実上の婚姻関係にあり、2人の間に当時生後11ヶ月の子がいるスリランカ人男性を送還している。彼は送還されて、家族は引き裂かれることになってしまった。さらに今回の送還では、人身取引の被害者であるスリランカ人男性2人も送還された。2人は賃金未払いで日本企業を訴え、分割払いで和解が成立していたが、未払い賃金を一部しか回収できていない状態だった。人身取引の加害者に加担してその片棒を担ぐがごとき行為は決して容認できない。またスリランカで、日本国内においても当時の政府に反対する活発な政治活動を行っていた活動家のスリランカ人男性も送還された。男性は難民認定されるべきであり、送還は難民条約違反である。我々はこのようなチャーター機送還を含む強制送還を行わないよう申し入れる。



(3)再収容について

  難民不認定異議申立棄却や行政訴訟での敗訴確定を契機とする退令仮放免者、また、行政訴訟での敗訴確定後、再審情願を申し立てている仮放免者等については、当人の帰国出来ない事情を十分に考慮した上、再収容を行わないよう強く申し入れる。難民申請者や日本に家族がいる者等、どうしても帰国出来ない事情を抱えた者に対する収容、とりわけ再収容は被収容者、及び家族に人生を絶望させ、自殺未遂や疾病、或いは自殺といった最悪の事態に帰結する可能性のある重大な人権侵害である。本年2月にはスリランカ人男性の難民申請者で永住者女性と婚姻が整い、妻は妊娠5か月という状態の仮放免者が難民異議棄却をもって再収容された。彼は難民申請者であるのみならず、家族が日本にいるためにどうしても帰国できないものである。このような送還の見込みのない者を再収容してどうなるのか。彼のように仮放免者達の多くは、自身の難民性のため、愛する家族との生活のため、病気の治療のため、または自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している者である。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在している。2010年の西日本、東日本両入国管理センターでの大規模ハンスト、東日本入国管理センターでの被収容者の相次ぐ自殺、国費無理矢理送還中にガーナ人男性が死亡した事件、退令仮放免者によるデモ、2012年におこった東日本入国管理センターでのハンストや今なお繰り返されるハンスト等は、入管が退去強制手続きにおいて収容や再収容、送還といった暴力的方法に固執し対処しようとすることの限界を明らかに示すものである。入管が再収容、送還に固執することは退令仮放免者及びその家族の心身を収容によって単に痛めつけるためのものにしか過ぎず、退令仮放免者や被収容者の抵抗や自殺者等を出すのみで問題の解決には到底なりえない。我々仮放免者の会は、帰国出来ない退令仮放免者(①UNHCR難民認定基準にそった難民申請者②日本に家族がいる者③日本に生活基盤が移っている移住労働者)については本邦への在留を認めることで救済するよう強く申し入れる。



(4)妊婦の収容について

  2014年10月29日、東京入管では妊娠中のインドネシア人女性を妊娠中であることを認識していながら、仮放免にして在宅審査とする等の措置を取らず収容した。こうした行為は、母体及び胎児の生命よりも収容に固執するという非人道的行為であり容認できない。またこうした行為は2010年9月9日付けの日弁連と法務省入管との間で交わされた「出入国管理における収容問題等協議会」の設置についての合意とそこでの協議で確認された妊娠中の母子の生命・身体の安全に配慮すべきことを周知することの意義と2011年4月13日付け法務省入管警備課長作成事務連絡を無視するものである。妊婦の収容等絶対にあってはならないし、仮放免の延長出頭時に日本人の子供を妊娠している妊婦等に対し、執行部門が子供を産んで国に帰れとかいい、帰国を迫るがこうしたことは母体と胎児の安全を顧みない行為であり即刻やめるべきである。



(5)入管の外国人に対する人権無視の体質

  東京入管のみならず東日本入国管理センター等、入管施設には重篤な状態にある被収容者に対し救急車を呼ばない、または、重篤な状態にある者でも病院に行かせない等の医療放置がしばしばみられる。こうしたことからは極言すれば外国人は死んでも構わないという入管の外国人の人権を著しく軽視する姿勢が見て取れる。この姿勢には入管の抱える根強い外国人蔑視、差別の体質がある。ニクルスさんの死亡事件や妊娠中のインドネシア人女性の収容にこれらは如実に表れている。我々は、入管・東京入管に対し、入管自らの組織内部にこうした外国人蔑視、差別が根強く存在することを認識した上でこれと向き合い、それら意識に起因する我々の申し入れてきた問題に関し取り組むことを強く求める。



以  上



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Monday, February 16, 2015

東京入管での行動予定3つ――ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容に対し抗議・申し入れ


  2月に、東京入管での抗議や申し入れなどの行動が3つあります。

  昨年の東京入管での被収容者の死亡事件、また昨年末のチャーター機によるスリランカ・ベトナムへの一斉送還などへの抗議行動です。

  東京入管では、昨年11月22日に、心臓の痛みをうったえて病院への搬送をもとめたスリランカ人被収容者を放置して死亡させるという事件がありました。
  東京入管では、このおよそ1年前にも、急病人を放置して救急搬送が遅れ、その後、被収容者が死亡するという事件をひきおこしており、さらに去年3月には東日本入管センターでも2人の被収容者があいついで病死するという事件があったばかりでした。
  11月のスリランカ人ニクルスさんが死亡した事件は、被収容者から3人もの死亡者を出した入管が、これをじゅうぶんに検証し再発防止策を講じるのをおこたったことによるものと言うべきであって、この点でもきわめて重大な事件であるはずです。ところが、東京入管は局長はじめ幹部が解任されることなくいまもその役職にとどまりつづけ、法務省も、事件の経緯説明や再発防止策をみずから公表するといった行動をとっていません。たてつづけに死亡事件を起こした公的機関の対応として、異常と言うほかありません。

  また、12月18日に、法務省はスリランカとベトナムにチャーター機をつかって32人を強制送還しました。

  この送還は、難民認定を申請していた人や日本に配偶者と子どものいる人を、しかも行政訴訟の機会を不当にうばうかたちで送還した、という点で非常に問題のあるものでした。また、人身取引の被害者2人も無理やりに送還され、雇用主・ブローカーから未払い賃金・損害金を回収するのが困難になりました。
  こうした一連の事件を受け、東京入管において緊急での抗議行動の予定が2月中に3つ組まれています。いずれも平日の昼間の行動ですが、都合のつく方はぜひご参加ください。

◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇      ◇

(1)仮放免者の会による抗議行動と申し入れ
日時:2月19日(木)
集合:13:00に東京入管前集合
ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容への抗議


(2)全国の学生諸団体の企画による抗議行動
日時:2月25日(水)
集合:12:30に東京入管前集合
ニクルスさん死亡事件およびチャーター機送還への抗議
呼びかけ団体:BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)、START、TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)、仮放免者の会


(3)仮放免者の会(PRAJ)家族会による申し入れ
日時:2月27日(金)
集合:14:00に東京入管集合
在留特別許可、再収容の停止、再収容者の仮放免をもとめる申し入れ


詳細については、以下までお問い合わせください。

【問い合わせ先】
大町(おおまち)
電話:090-3549-5890
eメール:praj1031☆yahoo.co.jp (☆を@にかえてください)


【東京入管へのアクセス】
map(入国管理局のホームページ)

Friday, February 13, 2015

【転載】大阪入管に支援5団体が申入書「死亡者がいつ出ても不思議ではない危機的な状況」


  大阪入国管理局の医療処遇の問題をめぐり、支援5団体が1月27日に申し入れをおこないました。大阪入管局長あての申入書を転載します(転載にあたって、被収容者の名前を匿名にし、国籍のわかる記述を削除しました)。

  申入書は、大阪入管において、医師の診察なしでの投薬や医療行為の横行、被収容者への懲罰的な隔離処分(この人は隔離後、200をこえる血圧の数値が測定されたにもかかわらず、大阪入管は隔離を続行した)、医療放置などの事例を指摘しています。そのうえで、申入書は、事例としてあげた被収容者3名について外部診療機関での受診を早急にみとめること、また、支援者側との協議・意見交換に応じることを、大阪入管にもとめています。


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申  入  書

大阪入国管理局長 伊東勝章様
2015年1月27日


  入国管理局の収容所・収容場で、被収容者が病死する事件があいついでいる。

  東京入国管理局では、2013年10月14日にロヒンギャ民族の男性が、2014年11月22日にはスリランカ人男性が、いずれも入管局の医療放置によって死亡した。東日本入国管理センターでは、2014年3月29日にイラン人男性が、翌30日にカメルーン人男性が、あいついで病死している。

  私たちは、被収容者との面会等を通じて貴局の医療面での処遇・診療の実態について調査をおこなってきたが、大阪入国管理局の収容場もまた、現状を放置するならば死亡者がいつ出ても不思議ではない危機的な状況にあると認識している。本申入書で具体的に指摘しているとおり、病人に対する医療放置、医師による診察を経ない医療行為の横行、医師の職業倫理の退廃など、貴局の医療体制は破綻していると言ってよい現状である。昨年より西日本入国管理センターへの移収が停止し、貴局での収容が長期化している傾向も考えると、現状の医療体制を早急に見直しその改善に着手しなければ、貴局でも被収容者の死亡事件が起こる蓋然性が高いと危惧している。

  医療に関する処遇の改善に取り組み、取り返しのつかない事件を未然に防止することは、貴局にとっても重大な課題であるはずだ。われわれ支援者側としても、情報提供・意見提示等を通じてこれに協力する用意がある。われわれ支援者側との協議・意見交換に応じるよう求める。

  以下、私たちが調査した貴局の医療について報告する。



1  Aさんのケース

  Aさんは高血圧症である。2014年6月25日の入所以来、血圧の測定値が上で200をこえることもたびたびである。

  ところが、貴局はAさん本人の再三の要請にもかかわらず、外部診療期間での診療をみとめず、内勤医による診察なしに処方された投薬治療がなされているのみである。そのうえ、上が200をこえる血圧が測定されているにもかかわらず、Aさんに対し懲罰的な隔離をおこなうなど、貴局は被収容者の生命を最優先に配慮しているとはとうてい思えない措置すらおこなっている。


1-1  医療放置および無診療投薬

  保有個人情報開示請求によって貴局が開示した資料によると、Aさんについて2014年6月26日から同10月21日まで14通の「被収容者診療簿」が作成されている。このうち、外部診療機関での2回の診療をのぞいた12回が、局内での診療に関するものである。Aさん本人からの聞き取りによると、この12回分の「被収容者診療簿」のうち、実際に診療があったのは4回(7月1日、7月8日、8月12日、10月7日)である。ほかに診療簿の作成されている8回分(8月5日、9月2日、9月5日、9月12日、9月26日、9月30日、10月10日、10月21日)については、Aさんは「医者に会っていない」と証言している。

  第1に、医師による診療のおこなわれていない日付についてなぜ「診療簿」が作成されているのか、不可解である。

  第2に、これらの資料およびAさんの証言から、医師法第20条の禁止する無診療投薬にあたる行為がおこなわれているものとおもわれる。上記の医師による診療の実態がないにもかかわらず作成されている8通の診療簿のうち7通に、「内服薬継続」(8月5日、9月5日および9月26日)「内服薬処方」(9月2日)「内服薬変更」(9月12日)「内服薬中止・追加」(9月30日)「吸入薬継続」(10月21日)との記載がある。これらは、医師が患者を直接診ることなく、投薬の処方・継続・中止の判断がおこなわれている実態を示している。

  10月8日の診療記録「経過・処方および措置」の欄には、 看護師のものとおもわれる筆跡で服薬や血圧測定値についての記述があり、「上記、医師に連絡。現在の3剤処方からアムロジピンの1剤のみの投与との指示。」と記載されている。患者の状態について看護師から「連絡」を受けた医師が投薬の「指示」をおこなっている、つまり医師による診察なしに投薬がなされていることはあきらかである。

  さらに、Aさんの証言によると、昨年6月下旬の入所以来、今年1月9日時点で、看護師と面会したのは1回きりであるという。血圧測定値や患者本人の訴えを、医療従事者ですらない処遇担当の職員(入国警備官)が看護師または医師に報告し、これを受けて医師が投薬の判断をおこなうということが、貴局では横行している証左である。

  こうして医師が診察をせずに投薬のみを続けている状況にあって、Aさんの症状は改善されておらず、血圧が200をこえる数値をたびたび測定されている。最近でも、1月8日の10時16分の血圧および脈拍の測定値は、197/102(92)であった。高血圧の原因についての説明もないため、Aさん本人としても非常な不安を感じている。

  症状についての説明もなく、ただ薬だけが出てくる、しかもその投薬は診察なしでなされているということでは、貴局の医師を信用・信頼するわけにいかないのは当然である。適切な治療方針を定めるためにも、また、Aさんの生命の安全の観点から本当に問題ないと言えるのか判断するためにも、貴局の医師ではなく、まっとうな職業倫理をもった医師による診察が不可欠である。貴局は、Aさんの再三の申し出を受け入れ、外部診療機関での診察を受けさせるべきである。


1-2  懲罰としての隔離処分

  貴局は、Aさんに対し、2度の隔離処分をおこなっている。
1度目は、2014年10月6日から同9日までの4日間である。Aさんによると、6日の14時30分ごろに職員から、隔離するむねを告げられ、その理由として「勝手に部屋から荷物を出したこと」「大きな声を出したこと」であるとの説明を受けたという。また、職員は隔離に際して「懲罰だ」との発言をおこなったという。

  Aさんは、隔離後、血圧が上昇し、17時ごろに具合が悪くなり倒れている。このときの感覚を、Aさんは「手の中指、薬指、小指3本の感覚がなくなり、体から魂がぬけていく感じがした。これで自分は死ぬのだと思った」と述べている。

  Aさんの作成したメモによると、10月6日の独居房に隔離された後の血圧(上/下)および脈拍の測定値は以下のとおりである。

①15:31計測  186/94(102)
②17:08計測  181/97(92)
③17:10計測  201/122(133)

  きわめて血圧の高い状態であり、しかもAさんは上記の症状を職員にうったえたにもかかわらず、貴局は隔離を中止する措置をとらなかった。

  2度目の隔離は、11月6日から8日の2日間である。その経緯は、Aさんの証言によると、以下のとおりである。

  高血圧症について外部診療機関での診療をもとめて提出していた申出書に関し、6日の朝、取調室において「認めない」との回答が口頭でなされた。Aさんは、診療を認めない理由の説明を職員に求めたが、職員は「これ以上説明しない」と述べるのみで、いっさいの理由の説明を拒否した。Aさんはこれに納得できなかったので、「なんでや?」「ここの医者はやぶ医者や」などと抗議した。すると、取調室の外で待機していた者たちをふくめ20人ほどの職員が、Aさんの足・腰・手をつかみ、体を高く持ち上げて、連行した。Aさんは「あなたたちには懲罰をする権利はありません」と職員たちにむかって述べたが[後述のように、この主張は完全に正当なものである]、職員たちは無理やり連行し、Aさんを独居房に閉じ込めた。

  開示請求によって開示された「隔離言渡書」には、「隔離理由」がつぎのとおり記載されている。

平成26年11月6日9時12分、A区域調室(2)において、同人に対し、××[墨塗り]警備士が診療に関する申出書の不許可告知を行った。同人は「なんでや。なんでや。頭痛いって言っている。あの医者はやぶ医者や。」などと大声で話し続けたため、同19分、看守責任者が「大声を出すな。下の階に行くことになる。警告だ。」と申し向けて同行為の中止を命じたが、同人はこれに従わず、「あなたに懲罰する権利はない。」などと大声を出し続け、もって、職員の職務執行に反抗したものである。

  1回目の隔離時と同様、隔離後にAさんの血圧はきわめて高い数値が測定されている。11月6日に9時19分の隔離後、血圧(上/下)および脈拍の測定値は同日17時10分の測定で214/110(119)、この直後に測りなおした数値も218/115(116)、同21時43分の測定値が204/119(90)と、いずれも200を超える測定値が出ている。貴局は、「隔離言渡書」に記載された11月10日までの隔離期限より早い8日に隔離処分を解いたとはいえ、このような生命にもかかわる危険な数値の出ている人を、2日間にわたって隔離し続けた。

  2回の隔離において、いずれも隔離後にAさんの血圧は200をこえるほどに上昇している。貴局がこのような状態を認識しながらも、ただちに隔離処分を中止する措置をとらなかったことは、いちじるしい人命軽視と言うべきである。

  また、貴局は、Aさんに対してあきらかに懲罰的に2度の隔離をおこなっており、これら隔離処分には正当性はない。

  法務省令「被収容者処遇規則」は、被収容者の隔離について、次のように定めている。

第十八条  所長等は、被収容者が次の各号の一に該当する行為をし、又はこれを企て、通謀し、あおり、そそのかし若しくは援助した場合は、期限を定め、その者を他の被収容者から隔離することができる。この場合において、所長等は、当該期限にかかわらず、隔離の必要がなくなつたときは、直ちにその隔離を中止しなければならない。
  一  逃走、暴行、器物損壊その他刑罰法令に触れる行為をすること。
  二  職員の職務執行に反抗し、又はこれを妨害すること。
  三  自殺又は自損すること。
2  前項に規定する場合において、所長等の命令を受けるいとまがないときは、入国警備官は、自ら当該被収容者を他の被収容者から隔離することができる。
3  入国警備官は、前項の規定による隔離を行つたときは、速やかに所長等に報告しなければならない。

「隔離言渡書」は、Aさんに対する2度の隔離処分について、その適用条文は第18条第1項第2号であるとしている。つまり、Aさんの行為が、「職員の職務執行に反抗し、又はこれを妨害すること」にあたるとしている。また、「隔離言渡書」は2回の隔離いずれについても、Aさんが「職員の職務執行に反抗した」ことを「隔離理由」としている。

  収容場内の秩序と被収容者および職員の安全を守るために、被収容者の「反抗」に対する実力行使が一定程度みとめられるべきなのだとしても、そうした権限が無制限・無条件にみとめられるものではないはずである。被収容者が職員にたんに「反抗」したという事実、あるいは職員が被収容者の行為を「反抗」とみなしたという事実のみによって、隔離という被収容者の身体への暴力行為が正当かつ必要なものとみとめられるとは、とうてい考えられないからである。

  Aさんは、2度の隔離処分のいずれにおいても、これに先立って職員に対する物理的な暴力をいっさいふるっていないし、また、物理的暴力が予想されると判断しうる言動もおこなっていない。「隔離言渡書」の「隔離理由」にも、Aさんが「大声」を出したこと、職員の職務執行に「反抗」したこと等についての記載はあっても、隔離が必要とみとめられる理由は書かれていない。

  したがって、貴局によるAさんに対する2度の隔離処分は、Aさん本人への威圧・威嚇と他の被収容者への見せしめ、ひいてはAさんを含む被収容者全体を萎縮させ屈服・服従させることを目的とした懲罰的・制裁的行為であると考えるよりほかない。この疑念は、1回目の隔離において職員が「懲罰だ」との発言をおこなった事実、また、2回目の隔離においては、物理的な暴力をいっさいふるっていないAさんひとりを独居房に連行するのに約20人もの職員を動員している事実によって、いっそう強くいだかざるをえないものである。

  入国警備官は、法令によって被収容者を収容してその身体を拘束し、また、被収容者に対して違反行為の中止を命じ、従わない場合は制止・隔離等の措置をおこなう権限をあたえられている。いわば、法令によって一定の物理的暴力をふるう権限がみとめられているのである。こうした強い立場にある入国警備官に対し、被収容者はその物理的暴力がただちに違法行為にあたるとみなされるのであって、言うならば武装した警備官に丸腰同然で対峙しているようなものである。したがって、入国警備官が実力行使の権限をふるうにあったっては、慎重のうえにも慎重さがもとめられるのである。

  収容場の処遇等について抗議するにあたって、Aさんが大声を出したり、私物を居室外に出して帰室を拒否する姿勢を示していたとしても、それらはあくまでも非暴力的な手段による抗議である。また、先にとおり、「被収容者処遇規則」は、「懲罰」目的での隔離の権限を入国警備官にみとめていない。

  2度にわたるこのたびの隔離処分は、非暴力的なAさんの抗議に対して物理的な暴力をもちいて制圧におよんだものであって、過剰な対応である。また、あきらかに懲罰・制裁を目的とした行為であり、そこに正当性はない。



2  Bさんのケース

  Bさんは2014年8月6日に入所し、同9月ごろから膀胱の痛み、足のむくみ、残尿感の症状が出ている。同11月以来、右足のひざの裏にしびれがあり、右足をひざから曲げるのが困難な状態である。投薬治療のほか、看護師の指示のとおり、食事において塩分摂取をひかえているが、症状は改善していない。12月の初旬には、イスに座るのが困難なほどの膀胱付近の強い痛みをうったえている。同20日ごろには、膀胱に針を刺しているような痛みがあったとうったえている。


2-1  医師抜きでの診療行為

  Bさんは、再三、診療の申し出をおこなっているが、上記の症状についての診察は11月14日の1回のみである。

  医師による診察に先立ち、9月24日に看護師がBさんに面会をおこなっている。看護師は「問診」と尿検査をおこない、Bさんに対し、塩分摂取をひかえるようにとの指示をおこなっている。個人情報開示請求により開示された「診療記録」には、看護師のものと思われる筆跡で血圧測定値・尿検査結果・体重測定値が記録され、さらに以下の記載がある。

むくみの原因は、塩分摂取↑↑が大きいと説明。
1wk減塩食、スープ、みそ汁抜きにて経過観察。
むくみ消退しなければ診療へ。
問診時、本人『ラーメン食べたことない』

  以上の「診療記録」の記載内容から、貴局の医療の問題をいくつか指摘できる。

  第1に、看護師が事実上の診療行為をおこなっていることである。医師抜きで看護師によって「問診」がおこなわれ、検査等の結果が解釈され、患者に対して症状の原因の「説明」がなされ、さらに当面の治療方針(食事療法)が決定されている。

  第2に問題なのは、看護師が「むくみ消退しなければ診療へ」として、医師による診療の可否・要不要を判断していることである。これによって、患者本人が医師に自身の症状を説明し、自身の意思で診察を受ける権利が侵害されている。診療が必要かどうかは、患者が決めることであって、看護師が勝手に決めてよいことではない。

  このように、医師の診察なしに事実上の診療行為がおこなわれることは、誤った判断のもと医療がおこなわれたり、また、患者が深刻な病気にかかっている場合にその発見が遅れたりといった危険がある。患者の心理的な不安も大きい。


2-2  患者の利益を考慮しない医師

  上記の看護師による「問診」があった日から51日経過した11月14日に、ようやくBさんに対して医師による診察がおこなわれた。Bさんによると、このとき、医師は問診のほか尿検査をおこない、「腎臓はわるくない」「太っているからそれが原因」としたうえで、「出てから自分で病院に行かないといけない」「ここでは[治療は]できない」と発言したとのことである。

  医師からBさんの症状について原因は説明されていない。「太っているからそれが原因」というだけでは、一般的すぎて原因の説明にはまったくなっていない。「太っている」人の大多数は、同様の症状が生じていないからである。

  原因がわからず、必要な治療手段が講じられないのであれば、医師は適切な診療機関・専門医を紹介し、患者をこれにつなぐべきである。医師が最優先に考えるべきなのは、患者の健康上の利益であって、入国管理局側の退去強制執行等の業務上の都合ではないからである。局内での診療でできることに限界があるならば、医師は入管に対して外部診療を進言すべきであるし、なんらかの事情で外部受診すら困難だというのであれば、仮放免等によって出所させるよう入管に意見すべきなのである。

  ところが、医師は「出てから自分で病院に行かないといけない」「ここでは[治療は]できない」などと言って、Bさんがいま必要とする治療を受けられるようとりはからう責任を放棄し、それどころか、そうした治療の中断した現状をあきらめて甘受するよう患者にうながすことさえしている。もはや、医師というよりも入管業務の下働きとでも言うべき行為で、医師としての適性・資質を強く疑わざるをえない。


2-3  医療放置と無診療投薬

  上記の症状に関して、11月14日の診察時にサワダロン錠200mgが貴局診療室より処方されている。Bさんがこのとき受け取った「あなたのお薬リスト」によると、このとき処方されたのは14日分である。ところが、以後、一度も医師の診察がなくこの薬の投薬が続いていると、Bさんは証言している(2015年1月16日現在)。これは、この間、医師の診察なしに投薬継続の判断がなされているということである。

  Bさんは、くりかえし外部診療の申出書を提出している。最近では、2014年12月12日に申出書を出し、同16日に不許可の告知がなされた。不許可告知をおこなった職員は、「何もできない、病院に連れていかない」との発言をおこなったという。

  同22日にBさんがまた外部診療の申出書を出したところ、職員はこれを受け取る際に「書いても意味はない、変わらない」と発言したとのことである。さらに、このとき同職員はBさんに対し「これ以上、治療はできません」と述べたうえで、病名を「前立腺肥大」であると告知したという。

  病名の告知が、医師の診察時になされず(すくなくとも、Bさんが理解できるかたちでの告知はなされていない)、診察から1ヶ月以上経過してから、医療従事者ではない職員によってなされたという事実は、どう理解したらよいのだろうか。11月の診察時に「前立腺肥大」との診断がすでになされていたのだとすれば、医師がBさんにこれを説明することをおこたったということである。11月の診察時にまだこの診断がなされていなかったのだとするならば、(その後、診察はおこなわれていないわけだから)医師は直接の診察をおこなうことなく、職員または看護師からの報告のみをもとに診断をくだしたことになる。

  さらに、泌尿器科の診察・検査なしに、「前立腺肥大」との診断がなされていることも不可解である。旭化成ファーマ株式会社のウェブサイトの「前立腺肥大症の検査と治療」と題されたページ( https://www.asahikasei-pharma.co.jp/health/prostate/inspection.html )によると、「必ず行う検査」として、以下7つの検査項目があげられている。

【1】自覚症状の評価、【2】直腸内指診、【3】尿検査、【4】尿流測定、【5】残尿測定、【6】血清PSA(前立腺特異抗原)測定、【7】前立腺超音波検査


  このうち、Bさんは少なくとも【2】【4】【5】【6】【7】の5項目の検査を受けていない。「前立腺肥大」との診断を確定するにあたって必要な診察・検査が十分になされたとは、とうてい思えない。それとも、職員が告知した「前立腺肥大」との診断は、確定された診断ではなく、「その疑いがある」ということなのだろうか。いずれにしても、泌尿器科での診察・検査は不可欠であり、これをおこたっている貴局は、診療の必要な患者を放置し続けているものと言わざるをえない。

  貴局は、Bさんに対し、「前立腺肥大」という病名を職員を通じて伝えたのみで、その診断の詳細・根拠・必要とされる治療などの説明をいっさいおこなっていない。そのうえ、今以上の治療をおこなわないむね宣告している。これらの行為は、体調不良を訴え、診療をもとめる被収容者に対し、病状についての医学的評価を具体的に伝えることなく、現在にいたるまで症状の改善のみられない投薬以外には、なんら診察も治療もおこなう意思がないと宣告しているにひとしく、身体的・精神的な拷問をくわえているのと変わらない。



3  Cさんのケース

  Cさんは、2014年8月27日に入所。入所前から、胸焼け、吐き気、激しい胃痛の症状になやまされ、治療を受ける予定であった。しかし、大阪入管に収容された後、貴局が本人の外部診療機関での受診の申出を拒否し続けているために、本人の望む治療を受けられていない。症状がひどいときには、胃の中をバンドで引っ張られているような感覚がし、1日に4回はいたこともあったという。嘔吐したときに、職員が写真を撮りに来るが「ちゃんと[上に]伝えておきます」と言うのみで、この症状について外部診療機関での受診は1度も認められていない。局内での受診もこれまで2回のみである。投薬による治療はなされているが、症状は改善していないと本人は言う。


3-1  「手術が必要」な患者を放置
  Cさんは、上記の症状をうったえ、9月ごろに貴局の診療室で医師による診察を受けている。Cさんによると、このとき医師は問診をおこない、またCさんをベッドに寝かせ、腹部等の触診をおこなった。医師はCさんに対し「これは薬ではなおらへん」「ここではむり、治らない」「なおそうと思ったら手術が必要」と述べたが、病名や病状、原因の説明はまったくおこなわなかったという。

  まず、重要な問題は、医師は「ここではむり、治らない」と判断したにもかかわらず、医師は外部の専門医を受診させるなど、患者の治療・治癒に必要な手段を講ずることをみずから放棄している点である。患者に最善の医療を提供する、あるいは患者がそれを受けられるように適切な専門医・診療機関につなぐという、医療従事者としての責任を公然と放り投げているのである。

  また、この医師は、Cさんに対し病状の深刻さをほのめかすのみで、原因や病状について具体的な説明をおこなっていない。患者にとって、一応の診察を受けながらも、自身の病状についての医学的評価を知らされずに放置されるのは、当然ながら大変に不安なものである。医師がこうしたことに想像がおよばないのであれば、医師としての資質・適性にいちじるしく欠けると言わざるをえないし、これを意識しながら患者をこのような状態に置いているのであれば、その仕打ちは意図的な虐待と言うべきものである。


3-2  診察もせずに詐病あつかい

  胸焼けや胃痛の症状について2回目の診療は、12月9日である。このとき、医師はCさんの話を聞くこともせずに、一方的に詐病と決めつけた。

  Cさんによると、医師は、Cさんが診療室に入るなり、一言を発する間をあたえずに以下のようにまくしたてたという。「胃が悪いのに体重が増えた」「きみはもう半年で10kg増えていますね。これは医学的にありえない」「I'm professional」。さらに医師は、Cさんがたびたび嘔吐していることについても、「吐こうと思ったら[口に手をつっこむなどすれば]だれでも吐ける」と、Cさんが詐病をおこなっていると決めつける発言をしたという。

  医師がCさんは詐病だと判断するなら、9月の診察での「これは薬ではなおらへん」「なおそうと思ったら手術が必要」などの発言はなんだったのか。いいかげんな出まかせをしゃべっていたのか、誤診であったのか、いずれかである。

  12月9日の診察において、医師は触診や検査はおろか、Cさんの話を聞いてすらいない。体重が増えているということのみを根拠に、Cさんが体調不良をいつわっているとしているのである。Cさんと面会してきたわれわれ支援者には、かれが苦痛を訴えているのがウソだとは思えないが、かりに詐病が疑われるのだとしても、医師がまずなすべきなのは、診察をすることであろう。医者としてプロフェッショナルだとの自負があるならば、患者の話を聞き、必要に応じて検査などをしたうえで、もし健康面で深刻視すべき状態にないことがあきらかならば、そのことをていねいに説明して患者の不安をとりのぞくようつとめるべきである。問診すらせずに、患者にむかって頭ごなしに詐病だと決めつけるような者は、医師として不適格である。



4  まとめ

  以上をふまえ、以下、申し入れる。

(1)上で事例にあげた3名(Aさん、Bさん、Cさん)について、早急に外部診療機関で受診させること。これができないのであれば、早急に仮放免等により出所させ、本人が自分で受診できるようにすること。

(2)上にあげた事例について調査をおこない、私たちの指摘した事実関係に誤りや調査で確認できないた事項等があれば、文書もしくは口頭にて説明されたい。説明そのものをいっさい拒否するのであれば、貴局は本申入書が述べた事実関係について異議がないものとみなす。

(3)医療問題をはじめ被収容者の処遇について、貴局とわれわれ支援者側とのあいだで協議・意見交換の場をもつことを求める。



申し入れ団体
WITH(西日本入管センターを考える会)
強制送還と人権を考えるネットワーク
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民支援コーディネーターズ・関西
難民支援団体ピースバード



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  転載は以上です。
  支援団体の申入書に対して大阪入管からは、2月6日に、口頭で局としての以下のような回答がありました。


  • 医療等の処遇に対する問題があれば、被収容者本人が申し出る仕組みがある。申し出のための用紙も用意している。
  • 収容場にもうけられた意見箱に投書することで、担当の職員に見られないかたちで申し出ることもできるし、また、男性の職員に見られたくないということであれば、女性の職員が対応する仕組みもある。
  • さらに第三者機関である入国者収容所等視察委員会の調査もあり、実際に委員が被収容者に自由に意見を聞き取りし、その報告・勧告をもとに処遇を改善してもいる。
  • これらの仕組みの中で、処遇はしっかりやってる。特定の支援者・支援団体の申し入れに回答したり、協議・意見交換の場をもったりすることはしない。


  ところが、こうしたもろもろの仕組みが十分に機能していない、あるいは仕組みそのものが十分でないからこそ、被収容者たちは面会などをとおして支援者たちに対し、申入書に述べられているような問題をうったえていると言えるのではないでしょうか。

  大阪入管の収容場の医療は、切迫した危険な状況にあるといえます。大阪近郊にお住まいのかたで、不定期にでも大阪入管(大阪市住之江区)まで足をはこべるかたは、収容された人との面会活動に参加していただければと思います(面会申請できる時間は平日の9:00~16:00まで)。この、外部からの目が届きにくい施設に収容された人々と、外にいる者がもっとつながりをつくっていくことが必要です。問い合わせは、以下までおねがいします。

問い合わせ先
  ながい(仮放免者の会)  電話:090-2910-6490



【関連】
  関東でも面会活動への参加者をつのっています。

  昨年11月にも、支援団体が大阪入管に申し入れをおこなっています。

Thursday, January 29, 2015

医療問題の抜本的改革をもとめる緊急申し入れ(東日本入管センターに)

  東日本入管センターの医療問題等について、1月28日に、仮放免者の会(関東)とBOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)の連名で、申し入れをおこないました。

  同センターでは、昨年3月末に被収容者2名があいついで亡くなるという事件がありました。


  このあいついだ死亡事件を受けて、法務省は昨年11月に報道発表をおこない、カメルーン人Wさんの死亡については医療態勢の問題を認めたものの、イラン人Sさんへのセンターの対応については適切だったとの評価を発表しました。

  しかし、この連続死亡事件についての法務省による検証・教訓化が十分なものだったとは、とうてい言えません。11月20日の法務省発表のわずか2日後の22日に、東京入国管理局でスリランカ人男性が胸にはげしい痛みをうったえたものの診療を認められずに放置され、亡くなりました。

  今回の申し入れでは、東日本センターでのSさん・Wさんの死亡の経緯をあらためて問題にするとともに、診療問題の抜本的改革と、長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者へのすみやかな仮放免をもとめました。

  以下、28日に提出した申入書の全文です。



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申  入  書
2015年1月28日
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東日本入国管理センター所長  殿
仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
一、  診療(医療)問題の抜本的改革
  昨年3月末の東日本入国管理センターでの連続死亡事件について、昨年11月20日、法務省入国管理局は記者会見をおこなった。記者会見では、イラン人男性については対応は適切だった、カメルーン人男性については医療態勢に問題があり、診療を受けていたら助かった可能性は否定できないと発表した。

  イラン人・Sさんへの対応が適切だったとの評価について、私たちは到底容認できない。33歳の若者が、官給食を喉に詰まらせて窒息死するなど通常、考えられない。Sさんは東京入管横浜支局から通算で1年2ヶ月に及ぶ長期収容であり、精神安定剤など大量の薬を服用していた。収容場、収容所における収容は拘禁的収容であり、被収容者は拘禁反応に苦しめられる。私たちは、9寮Bブロック201の同室者や彼をよく知る同ブロックの被収容者たちから、Sさんが官給食を普通に咀嚼・嚥下できず、無理して丸飲みしたり、水を口に含んで流し込むようにしていたりだったと聞いている。また、Sさんは薬を飲んだ後、ふらふらしていたとか、ろれつが回らなくなっていたとも聞いている。私たちは、Sさんは、長期収容と、劣悪な医療処遇の犠牲者であると認識している。
  カメルーン人・Wさん死亡については、法務省入管は医療態勢の問題があることを認めた。Wさんの容態悪化の経緯について、同じ9寮Aブロックの被収容者たちから聞き取りしたところ、人によって証言に違いがあったが、遅くとも亡くなる3週間前には居室に閉じこもり、明らかな衰弱が認められる状態であったと思われる。Wさん自身は、他の被収容者に自分は糖尿病であると話していた。また3月27日(木)の午前中、目が見えなくなり、歩くことができなくなったWさんの容態悪化に、同ブロックの被収容者たちは、このままではWさんが死亡すると危機感を持ち、即時の受診を求めた。昼食時間の正午になっても彼らは居室に戻らずWさんの即時の受診を求め、12時半ころに、職員が「病院に連れていく」と言ってWさんを連れ出した。法務省入管の説明によれば、Wさんは16日に脚の痛みを訴えたが、医師の診察は27日だったとの事だが、同ブロック被収容者から聞いたところでは、脚の痛みという範囲ではなく、糖尿病への治療が何もおこなわれず、また官給食も他の被収容者と同じ物が支給されており、糖尿病の進行が疑われる。少なくとも27日の午前から正午過ぎにかけて同ブロックの被収容者たちが要求したものは、脚の痛みに限定した診療ではない。
  なぜ東日本センターは、27日に至るまでWさんを受診させなかったのか、また27日以降にしてもなぜWさんの諸症状に対する総合的な診察を受けなせなかったのか。28日にはWさんは知人と面会しているが、その時は、Wさんは職員に両脇を抱えられて面会室に入って来、極度に衰弱した状態だったと聞いている。27日以降に限定して考えても、28日、29日と、一日一日、死へと向かうWさんを救急搬送していれば、30日の死亡は回避できたかもしれない。
  27日にWさんが受診していたことからもわかるように、問題は、常勤医が存在するかどうかにあるのではない。貴職らが被収容者の生命と健康に責任を持つのかどうかである。
  昨年7月24日にも私たちは申入れをおこなったが、貴職らが、被収容者の多くは長期収容となっており、日本での継続的治療が想定されるという事実を承認し、「良質かつ適切な医療」(医療法第一条の四)を施せるよう、抜本的な診療問題改革をおこなわれるよう、改めて申し入れる。

二、  長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者への速やかな仮放免
  長期収容者、再収容者、重病・慢性疾患患者への仮放免は、これまでも繰り返し申入れてきた。この一年強の間に、東京入国管理局、東日本センターで四人もの死亡者を出しており、今後の医療処遇の改善を図るにしても、出せる者は早期に出所させ、まずは被収容者総数を減少させていただきたい。東日本センターにおいては、昨年9月期は、被収者総数が230人前後で推移していた。その時期にあっても、被収容者が診療申出をしてから受診するまで2週間から4週間ほどかかっていた。新たな症状が発症した場合は初診として速やかな診察がされるケースもあったが、そのような速やかな診察はまれであった。
  私たちは長期収容、再収容について人権侵害としてこれまでも反対してきたが、本日の申入れにおいては、次なる犠牲者を出さないための緊急性を持っての申入れである。昨年3月末、すなわち年度末において、なぜ連続死亡事件が発生したのか、私たちとしてはあれこれと想像してみるしかない。そこでの検証と検証結果の公表を貴職らが真摯におこなわない以上、また今年度末にも悲劇が繰り返されるのではないかと私たちは危惧せざるを得ない。
  被収容者は持病が悪化し、拘禁反応を発症しており、誰もが病人だと言っても過言ではない。現在の東日本センターの組織体制、予算の範囲において死者を出さない状況を作るためには、被収者総数=患者数を減らすしかないと考える。
  仮放免許否審査にあたっては、昨年7月24日にも申入れた通り、地方局収容場からの退令収容期間を通算で収容期間として計上して審査していただきたい。
以  上

Sunday, January 25, 2015

暖房時間・電話可能な時間の延長をもとめる連名意見書(東日本入管センター被収容者から)

  東日本入国管理センター被収容者40名が、1月15日と17日に、同センター所長あてに、処遇改善をもとめた申出書を提出しました。

  2通の申出書は、いずれも8Aブロックの被収容者の連名によるもので、それぞれ、暖房の入る時間帯の延長、夜間の電話できる時間帯の延長を要求しております。

  どちらの要求も、申出書の文面を読んでいただければわかるとおり、切実なものです。と同時に、自分の判断で必要なときに暖房を入れるとか、都合のよい時間に電話をかけるとか、そういった被収容者のごくごく基本的な自由すら入管はうばっているのだということも、あらためて認識させられます。

  入管は被収容者に対して、こうして専制的な統治・管理をおこなっているわけですが、いっぽうの被収容者たちは、申出書を提出するにあたり、討議をとおして全体の要求をとりまとめ、その結果として40名の署名のもとこれを提出しているのです。つまり、被収容者による申出書の提出は、入管の圧政のもとでの民主的な自治の取り組みとしても理解できるものなのです。

  ところで、先月の記事「東京入管でスリランカ人被収容者が死亡――くりかえされる医療放置による死亡事件」で述べたとおり、入管は1年あまりのあいだに、4人もの被収容者を医療ネグレクトにより病死させております(「4人」というのは、収容中の死亡に限定した場合であって、ほかに出所直後に病死している人も複数名います)。そのうち、2名は東日本入管センターの被収容者でした(「【抗議のよびかけ】東日本入管センターで被収容者2名があいついで死亡」)。

  2014年3月30日に同センターが死亡させたカメルーン人Wさんが収容されていた9Aブロックの仲間たちは、急激に体調悪化して歩くのも困難になっていたWさんを心配し、センターに対してかれを外部の病院に連れて行くよう、文書や口頭でくりかえし要求していました。Wさんが亡くなる3日前の27日の午前には、9Aの被収容者たちは職員に「[Wさんが]もう死にそうだ。待てない」とうったえ、みんなで帰室拒否をおこないました。にもかかわらず、センター側はWさんを病院に搬送せず、死亡というとりかえしのつかない事態をまねいたのでした。

  2013年10月に東京入管に収容されていたロヒンギャ難民フセインさんが死亡させられた事件も、おなじです。痙攣(けいれん)し嘔吐しているフセインさんの状況を同室の仲間たちはただちに職員に報告し、医者をすぐに呼ぶこと、また病院に搬送することを要求しました。ところが、東京入管はフセインさんを50分近くものあいだ放置したのです(「急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書」)。

  入管収容施設であいついでいる死亡事件について、入管の管理責任がきびしく問われるべきなのはもちろんです。が、同時に、入管が被収容者たちの自由・自治を軽視し、これをいちじるしく制限していることが、死亡事件の頻発という事態をまねいているのだということも、指摘しておかなければなりません。

  Wさんの9Aブロックの仲間たちは、その自由が制約されてなければ、Wさんを早期に病院に連れて行ったはずです。また、フセインさんの同室の仲間たちも、もしその自由があったならば、フセインさんが倒れたあと、ただちに電話をかけて救急車を呼んだことでしょう。50分ものあいだ、ただ様子をみているとか、上司の判断・命令を待っているなどということは、けっしてなかったはずです。言うならば、入管は、助けることのできる仲間たちの自由をうばい、かれらが仲間を助けようとするのを邪魔したのです。

  4人の命は、入管が被収容者たちの相互の助け合いをさまたげ、自治の能力・権利を抑圧するなかで、うばわれました。

  そしてまた、こうも言えるでしょう。入管の専制的な管理・統治に対する、被収容者たちの自治的な取り組みと抵抗がなかったならば、もっと多くの命がうばわれていただろう、と。じっさい、被収容者たちが協力して要求した結果として、入管が重病人の受診を許可したケースは多数あり、また処遇等の改善がみられた部分もあります。東日本センターの歴代所長などは、本来、収容所に足をむけて寝られないはずなのです。

  以下に紹介する、このたびの8Aブロック40人による申出書も、そうした自治的な取り組みとしてあるのであって、センターはこれを軽視すべきではありません。要求に真摯に向き合い、誠意をもって回答するようもとめます。

  なお、当ブログがこれまで紹介してきた、被収容者による申出書・意見書は、つぎのリンクでまとめて表示することができます。






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所長宛
申出書
平成27年1月15日
  私達8A BLOCKは、ここでの生活が少しでも緩和されればと思い書かせて頂きました。
  私達8A BLOCKのみんなは、最近かぜが多くいます。そこで以前カゼ薬がほしいという願い事きました。
  現在は、朝のAM:7:00~PM:10:00まで暖房が付いていますが、それ以外はものすごく寒くもう少し暖房の時間を伸ばしてほしいと思い書きました。特に朝はすごく寒い時季なのでよろしくお願い致します。
  暖房の時間が少しでも増えればカゼを引く人数が減ると思います。
  下記のものはみなこの意見賛成する者です。
[省略――8Aブロック40名の署名(13の国籍・民族:ブラジル、カメルーン、スリランカ、ガーナ、ベトナム、フィリピン、クルド、ネパール、バングラデシュ、中国、イラン、インド、インドネシア)]


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所長宛
申出書
平成27年1月17日
  私達8A BLOCKは皆、夜の電話は今現在、3日に一回と2日に一回の週で電話を回したり借りたりしていますが、日本時間と海外では時間が全くことなり、家族と話せない人達がたくさんいる状況です。日本での家族、友人いる人達も夜のPM7:00~9:00の2時間では多くの人達が帰宅時間(仕事関係)で9:00以降が多く、9:00まででは、つながらない人達がたくさんいます。 
  この中(入管)では、自分の家族、友人に話す時間がとても大事な時間なのでもうすこし時間を増してほしいです。どうか、よろしくお願い致します。 
  下記の者は、この意見賛成する者です。

[省略――8Aブロック40名の署名(13の国籍・民族:ブラジル、カメルーン、スリランカ、ガーナ、ベトナム、フィリピン、クルド、ネパール、バングラデシュ、中国、イラン、インド、インドネシア)]