トルコ人Mさんに対する暴行事件は和解成立
大阪入管に収容されていたトルコ国籍のMさん(現在は仮放免)が、職員たちの暴行によって右腕を骨折する負傷をおわされた事件。Mさんが損害賠償をもとめて国を訴えていた裁判は、9月29日、Mさんと国のあいだで和解が成立しました。
和解の内容としては、被告である大阪入管局長が原告のMさんに謝罪するとともに、同局に収容されている人の人権を尊重した処遇につとめることを確認するというものです。また、国がMさんに和解金300万円を支払うということでも双方が合意にいたりました。
詳細については、以下の弁護団声明をごらんください。
- 制圧行為による骨折等について入管が謝罪!再発防止も約束! - 暁法律事務所【大阪】(2020年10月2日)
Mさんは、自分がされたように入管職員が外国人に暴力をふるうことは今後ないようにしてほしいということを、法廷での意見陳述ふくめ、一貫してうったえてきました。その点で、このたびの和解は意義の大きいものと言えます。
事件のおきた2017年7月から3年超、2018年5月の提訴から2年4か月が経過しました。長期間にわたる困難な裁判をたたかいぬいたMさんの奮闘はもとより、たくさんの人がこの裁判をつうじて入管収容の問題に関心をよせ注視していたことが、この意義の大きい和解につながったものと思われます。しかし、大阪入管が約束したとおりに被収容者の人権を重視した処遇につとめるのかどうか、今後とも注視していくことが必要です。
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もうひとつの暴行事件
さて、大阪入管については、上記のMさんの事件のほかに、職員によるもうひとつの暴行事件があります。こちらも、被害者のペルー人男性(「Bさん」とします)が国に賠償をもとめる訴えを大阪地裁にしております。Bさんが提訴したのは2月でしたが、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になったために弁論が延期となっていましたが、第1回口頭弁論期日が以下の日時と場所でひらかれます。都合のつくかたは、傍聴をお願いします。
日時:10月7日(水) 13時30分
場所:大阪地方裁判所 1006号法廷(→地図)
Bさん事件の概要
訴状などによると、事件の概要は以下のとおりです。
Bさん(ペルー国籍の40歳代の男性)が裁判で国に賠償を求めている事件は、2017年12月20日から翌21日にかけて起きました。
20日の昼ごろ、大阪入管で複数の被収容者が官給食の内容について職員に抗議をしていました。このときに、職員5名が居室に入ってきて、Bさんふくむ3人の被収容者に対し、別室で話がしたいと言って連れ出そうとしました。Bさんは、話すことはないからと拒絶。すると、数名の職員が腕などをおさえつけたので、Bさんが職員の手をふりほどこうとしたところ、職員は緊急隔離を告知。8名の職員がBさんの体をかかえあげて別室(入所手続室)に連行しました。職員らは、Bさんに後ろ手錠をかけ、12時30分ごろに「保護室」とよばれる部屋に連行し、隔離しました。
なお、Bさんはあばれたりはしておらず、しかも保護室に施錠されてひとり閉じ込められたわけですから、職員に危害をくわえるおそれはまったくありませんでした。もちろん、「逃亡」などくわだてようもない状態です。したがって、手錠などの戒具を使用する必要性はまったくありませんでした。ましてや、はなはだしい苦痛をともなう後ろ手錠をしなければない理由がどこにあったのでしょうか。
20分ほどたった13時49分に後ろ手錠はいったんはずされますが、夜になってふたたひ職員たちはBさんを後ろ手錠で拘束して、今度はその状態で14時間半以上にわたって放置するという、拷問としか言いようのない行為をおこないました。
21時ごろ、Bさんが職員たちに大声で水とトイレットペーパーを求めました。トイレットペーパーのやりとりをめぐって職員たちが保護室に入り、Bさんをうつぶせにしておさえつけ、21時11分ごろに後ろ手錠をかけました。翌日の11時49分ごろまで、Bさんは後ろ手錠をかけられた状態で保護室で拘束されたままでした。この14時間半以上のあいだ、Bさんはトイレで用を足すことはゆるされず、食事もとれず、水を飲みたいときは職員をよんでコップを持ってもらってこれに口をつけて飲むしかないという状態でした。この間、職員は、およそ1時間ごとの間隔をあけて保護室に入ってきて、Bさんを立ち上がらせるなどして後ろ手錠を確認するので、ねむろうにもねむれません(午前4時30分ごろ、Bさんは職員に対し「なんでねむらせないんだ?」と抗議しています)。
とびらにカギのかかった保護室に隔離され、職員に危害をくわえることも、「逃亡」することもおよそ不可能なBさんに対して、入管職員たちが長時間にわたりこのように苦痛をあたえ、尊厳をうばう行為をおこなう意図はいったいなんでしょうか。これらの行為は、Bさんを屈服させて入管の言うことを聞かせるという目的でおこなわれたと考えるほかなりません。
さらに、この後ろ手錠による拘束の14時間のあいだに、大阪入管の職員たちはBさんに暴行をくわえて負傷までさせています。
12月21日の午前0時すぎ、Bさんが保護室のとびらを足でけると、職員5名が部屋に入ってきて、Bさんをうつぶせ状態にしておさえつけ、後ろ手錠にされている右腕をねじるようにひっぱりあげました。すでに後ろ手錠に拘束されているBさんに対してこのような行為をするのは、Bさんを痛めつけ屈服させることを目的にしたものとしか考えられません。この暴行の結果、Bさんは左上腕骨幹部骨折の負傷をおいました。
大阪入管職員による暴行・傷害、また手錠をかけ長時間放置したこと等について、Bさんは216万円の損害賠償をもとめています。大阪地裁でひらかれるこのBさんの裁判に、都合のつくかたはぜひ足をはこんで傍聴していただくよう呼びかけるとともに、裁判の今後の推移にご注目のほどよろしくお願いします。
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