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Thursday, February 18, 2016

大阪入管のハンスト、2月15日に解除







  大阪入管の被収容者が、2月10日(水)から集団ハンガーストライキをおこなっていましたが、15日(月)の昼食より全員が食事を再開し、ハンストは解除されました。

  被収容者側が求めていた処遇の改善や長期収容の回避について、けっきょく大阪入管からの回答はありませんでした。しかし、いくつかの報道が出るなど、大阪入管収容場の苛烈な人権侵害状況が一般に知られるところともなりました。15日の朝までハンストを続けていた6人の話し合いの結果、この点で一定の成果は得られたと判断し、今回はハンストを解除することにしたということです。

  12日の大阪入管前での抗議行動、また同じ日の面会行動に参加してくださったみなさま、電話などで入管に抗議をおこなってくださったみなさま、ありがとうございました。


◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆


  なお、大阪入管は、要求書について被収容者側には回答しませんでしたが、『大阪日日新聞』(2月14付け)等によると、報道関係者からの取材に対して、「いずれ[の要求]も合理的理由が認められないか、法的に実現し得ない」と説明しているようです。この「説明」は、人を馬鹿にするにもほどがあるというべきものです。

  たとえば、診療や定期健診を受けたいという要求について、さすがに「法的に実現し得ない」とはいくら大阪入管でも言わないでしょうから、これは「合理的理由が認められない」ということになるのでしょう。半年や1年をこえて監禁的に収容されている人がいるなかで(3年超という女性もいます!)、定期健診を実施してほしいという要求は、十分に「合理的理由」のあるものではないのでしょうか?  また、体調不良者について診療を受けたいという要求に「合理的理由」があるかどうか判断するためには、医者がこのひとを診なければならないはずですが、大阪入管が診察を認めずこばんでいるからこそ、このような要求が出てこざるをえないのです。

  こう考えると、大阪入管の「いずれ[の要求]も合理的理由が認められないか、法的に実現し得ない」との記者への説明は、理解しがたいものです。要求書をまともに読んでいないのか、あるいは、そもそも診療等を被収容者たちが要求することそのものについて、入管側がまじめに取りあう「合理的理由」を認めていないということなのか、どちらかとしか考えられません。いずれにしても、入管の記者へのこの「説明」はふざけきっているとしか評しようのない回答です。

  前々回の記事で述べたように、大阪入管の職員が「(改善を)要求する権利はない」と発言したことが、今回のハンスト決行の契機のひとつとしてありました。おなじ報道によると、大阪入管は取材に対して「職員の発言の事実はない」と否定しているようです。

  私たちは、3人の被収容者それぞれから、この発言がたしかにあったことを裏付ける証言をえていますし、証言をしたのはいずれも日本語に堪能な人たちでもあって、職員の発言を3人が3人ともおなじように誤解して受け取るとは、とうてい考えられません。いっぽう、大阪入管側は、「(改善を)要求する権利はない」との職員による発言を聞いたとしている被収容者への聞き取りなどは、おこなっていません。もっぱら職員側への調査のみで「職員の発言の事実はない」と取材にはこたえているわけです。

  しかし、「職員の発言の事実」があったかどうかは、もはや、ある意味、あまり大きな問題ではなくなりました。大阪入管は、定期健診や体調不良者の診察を求めることすら「合理的理由が認められない」と記者に対して言っているわけですから。基本的人権にかかわることすら被収容者に「要求する権利はない」というのが、事実上、大阪入国管理局(伊東勝章局長)の局としての見解であることが、あきらかになったのです。

  ハンスト開始後も、大阪入管は、被収容者との対話にはいっさい応じることなく、「リーダー」とみなしたFさんを、たんに「リーダー」とみなしたという一点の理由のみで4日間以上にわたって懲罰房に監禁するなど、暴力的な制圧に終始しました。対話の要求(それも、あくまでも非暴力的な手段での呼びかけと言うべきものです)に対して暴力で答える、というのが入管による「応答」であり「回答」であったのです。

  さて、「(改善を)要求する権利はない」と発言した職員は、おなじ場でもうひとつ、問題発言をしています。以下、前々回の記事から抜粋します。

  おなじ職員は、収容期間が長期化している理由について「あなたたちをすぐに出してたら、他の人も帰らなくなる」とも発言したといいます。被収容者の多くは、難民申請の審査中であったり、行政訴訟をおこなっていたりで、その結果次第では在留資格をみとめられることもあります。入管にとって当面は送還可能な見込みはないわけです。職員のこの発言は、送還の見込みの立たないひとに対し、長期収容によってその心身をいためつけて帰国へと追い込もうという入管側の意図を、臆面もなくみずからさらけ出したものです。

 “長期収容や再収容を帰国強要の手段としてもちいる”という入管の手口の延長線上にあるものとして、今回の大阪入管の対応を理解する必要があります。この点で、「あなたたちをすぐに出してたら、他の人も帰らなくなる」という発言についても、たんにこの職員個人の問題にはとどまらないとも言えます。肉体的・精神的な拷問によって帰国へと追い込む、というのが、現在の“入管のやり方”にほかならないのです。

  その意味で、入管の収容施設は、虐待によって帰国を強要しようとする入管側と、どうしても帰国できない被収容者とのあいだに、たえまなく闘争が生じている場所と言えます。ハンストが解除されても、こうした闘争・対立がやむわけではありません。

  収容施設の外にいる私たちとして、長期収容・再収容、また劣悪な処遇を手段とする帰国強要をゆるしてはいけないと考えます。今後とも、ご支援・ご注目をよろしくお願いいたします。

Sunday, February 14, 2016

大阪入管被収容者ハンストの状況(2月12日現在)

1.27人がハンスト継続中

  2月10日(水)に開始された大阪入管ハンストについて、その後の状況です。12日(金)に、TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)、WITH、難民支援コーディネーターズ関西、仮放免者の会の4団体ほかの支援者が、被収容者との面会をつうじて調査しました。



  すでにお伝えしたとおり、被収容者のハンストに対し、大阪入管側は、「リーダー」とみなしたFさんを「懲罰房」に隔離し、またハンストへの参加・非参加にかかわらず、男性被収容者全員の開放処遇を停止して、それぞれの居室へと閉じ込めました。Fさんについては完全に外部との接触を断ち、支援者との面会も禁止。Fさん以外の男性被収容者全員については、面会以外の電話等の通信手段をうばいました。この措置は、10日の午後から11日まで続けられました。

  ハンスト3日目をむかえた12日(金)午前の時点でのハンスト参加者は、Bブロックが開始時の21名から6名増えて27名です。もう一方のAブロックは、のちに述べる経緯などがあって、ハンストを解除、開始時23名だった参加者の全員が摂食を再開しました。

  大阪入管側は、ハンストを解除したAブロックに対しては、12日午前より開放処遇を通常通りの運用(9:30~11:30, 13:30~16:30)に戻しました。

  しかし、ハンストを継続しているBブロックに対しては、午前中に1時間だけ開放処遇にして電話やシャワーなどができるようにしましたが、午後からは施錠した居室に閉じ込めています。

  「リーダー」とみなされて10日に「懲罰房」に隔離されたFさんは、依然として「懲罰」を受けているようで、Bブロックの居室には戻っていません。この日も、大阪入管は「保安上の理由で」などと称して支援者との面会を許可しませんでした。

  Bブロックでは、Fさんとはべつのもう1名(Mさん)が、職員たちによって居室から連れ去られたとの情報もあります。Mさんは、脳梗塞のリスクがあるひとで、昨年10月中旬に右半身の麻痺とろれつがまわらないなどの症状が出て倒れ、大阪入管から病院に救急搬送されたひとです。さいわい症状は一過性で、後遺症はのこりませんでしたが、病院からもどったあとも一時的に右半身が動かなくなったり、激しい頭痛、高血圧といった症状をうったえています。Mさん本人や支援者が、大阪入管に対してくりかえし診療を求めていますが、救急搬送後の4ヵ月間、医者による診察を一度も受けていません。Mさんは、この日、処遇に関して強く抗議をしていたようです。連れ去られた状況を目撃した他の被収容者によると、足元がふらふらの状態のMさんを職員たちは引きずるようにして連れ去ったとのことです。Mさんがどこに連れ去られたのか、確認できていませんが、病院ではなく懲罰房なのだとすれば、人命軽視もはなはだしいです。



2.入管の暴力による制圧と切り崩し工作

  前回記事で全文掲載した被収容者による要求書で指摘されているように、医療ネグレクトをはじめ、大阪入管収容場の人権侵害状況はきわめて劣悪なものです。診療をもとめても拒否され、「病院に行かせて、痛い」と言ってドアを叩いただけで、大阪入管はこれに懲罰をくわえるありさまです。

  大阪入管の収容場は、外界とは「さかさまな世界」です。1月19日に職員が吐いた「[被収容者には]要求する権利はない。入管のルールに従わなければならない」との暴言は、たんに職員個人の失言にとどまるものではなく、大阪入管という組織全体のありようを正確に示したものであるとも言えます。「入管のルール」とは“被収容者は服従せよ”ということであって、大阪入管では被収容者が要求をおこなうこと自体が「ルール違反」とされるのです。つまり、大阪入管がいう「入管のルール」とは、私たちが「暴力的支配」と呼んでいるものにほかなりません。

  被収容者たちは、診療などの要請をそれぞれ個別におこなってきましたし、連名で要求書を提出するのも今回がはじめてではありません。支援者・支援団体も、2014年度以来、医療をはじめとした処遇の改善などを、再三にわたって申入れてきました。しかし、被収容者の連名要求書にも、支援者の申し入れに対しても、大阪入管は局としての回答を一度たりともしてこないまま現在にいたるのです。「入管のルール」とは、“被収容者はだまって入管の言うことを聞け”ということなのだと考えれば、大阪入管のこうした姿勢はよく理解できます。

  こうして大阪入管がずうずうしくも「ルール」と称する暴力によって被収容者の「要求する権利」を否定しおさえつけてきたのに対して、被収容者側はハンガーストライキというあくまでも非暴力的な手段によって意思表示をはじめました。ところが、さきに述べたように、大阪入管は対話で応じるのではなく、暴力をもってこれに応答しました。

  さらに、集団でのハンガーストライキを切り崩すために、卑劣な工作もおこないました。Aブロックのハンスト参加者には、近々帰国予定のひとがいました。このひとが、電話をかけられずに困っているということに目をつけた入管は、かれの友人に対し「あなたがご飯を食べたら、かれが電話をかけられるようにしてあげる」と持ちかけたといいます。

  このような手段をもちいて、入管はハンストを切り崩しにかかり、Aブロックでは最後までハンストを続けていた2人も、12日(金)の朝、ハンストを解除しました。このうちひとりは、「これ以上2人だけでつづけても、ほかの人全員が部屋から出られず、電話もかけられないのはかわいそうだ」と考えて解除するとの判断をしたと、面会で支援者に語りました。



3.支援者による激励行動

  12日は、大阪入管前で12時30分からと13時15分のからの2回、支援者ら20人で被収容者への激励と入管への抗議の行動をおこないました。呼びかけに応じて集まったみなさま、電話などで個別に大阪入管へ抗議をしてくださったみなさま、ありがとうございます。

  入管前の歩道から「みんな、がんばれ」「入管は拷問をやめろ」「病人を病院に連れていけ」「懲罰房の仲間を返せ」「入管は人殺しをやめろ」などと声をあげると、7階の収容場から呼びかけにこたえて「ありがとう」「入管わるい」「人間あつかいしろ」「助けて」「殺さないで」といった大きな声がひびきました。

  このあと、あつまった行動参加者で被収容者たちに面会してきました。ハンストを継続しているBブロックの被収容者は、懲罰房に入れられた仲間のことをみんなが心配していると話しました。かれが戻ってくるまで、あきらめるわけにはいかない、と。



追記)
  右の画像は、1月19日に「要求する権利はない」と発言した職員の似顔絵です。発言を聞いた被収容者のひとりによると、このとき職員は首からさげた、名前もしくは職員ナンバーを記したプレートを裏返しにして見えなくしていたそうです。そのため、私たちもこの発言をした職員がまだ特定しきれておらず、大阪入管内でそれなりの地位にある職員であるようだということ以上はわかっていません。

  入管職員は、公権力を行使する立場にあり、これを行使する権限は法的に与えられたものであるわけです。ところが、このように被収容者の基本的人権を公然と否定する暴言を吐いても、それがどの職員の発言なのかすら明らかにされないというのも、おかしな話です。








Thursday, February 11, 2016

大阪入管に収容された44人がハンスト――「死んでからだと遅いです」と訴え

(本記事公開時において、ハンスト参加者数を確定するのが困難だったため「約40名」「40名超」などとお伝えしていましたが、記事本文およびタイトルで参加人数を「44名」と修正しました。2月11日21時05分)

  マスコミ報道もすでに出ていますが、2月10日(水)、大阪入管の被収容者44人が、ハンガーストライキを開始しました。


  大阪入管側は、これに対し、暴力的な弾圧をはかっています。



1  ハンストにいたった経緯――医療ネグレクト、収容長期化、職員の暴言

  ハンガーストライキをおこなっているのは、大阪入管のAブロックおよびBブロックに収容されている男性44人です。

  両ブロックの被収容者は、ストライキにさきだち、大阪入管に対して医療等の処遇改善と長期収容の回避などをもとめていました。Bブロックは1月6日、Aブロックは1月22日に、それぞれ2週間の回答期限をつけて、要求書を提出していました。要求書の全文は、この記事の末尾に掲載していますので、ごらんください。

  ところが、大阪入管側は、局としての回答をせず、それどころか職員が被収容者の基本的人権を否定する発言をおこないました。

  1月19日に、大阪入管の職員はBブロックの代表者に対し「ここにいるみんなは、デポテーション・オーダー[退去強制令書]が出ている。国に帰らなければならないのだから、要求する権利はない。入管のルールに従わなければならない」との趣旨の発言をしました。

  大阪入管の職員は「権利はない」などとは言っていないとして、この発言があった事実を否認しています。しかし、複数の被収容者の証言は一致しており、入管側がウソをついて隠蔽をはかっているのはあきらかです。

  Aブロックの要求書が述べているとおり、被収容者は「入管によって身柄を拘束され、自由に病院まで行くことも出来ませんし、他の収容者が病気やケガに苦しんでいても病院に連れていくことも出来ません」。医療や食事、物品の使用などについて、大阪入管は被収容者の自由を制限しているのですから、被収容者からの要求があれば、その制限を課す正当性・妥当性があるのかどうか検討し、誠実に回答をおこない対話に応じる義務があるのは当然です。被収容者の要求する権利そのものを否定した大阪入管職員の発言は、人間を収容している者の最低限の義務・責任を放棄し、被収容者の基本的人権を否定するものです。このような発言をおこなう職員に処罰をおこなわないのであれば、大阪入管には人を収容する資格がないと言うべきです。

  おなじ職員は、収容期間が長期化している理由について「あなたたちをすぐに出してたら、他の人も帰らなくなる」とも発言したといいます。被収容者の多くは、難民申請の審査中であったり、行政訴訟をおこなっていたりで、その結果次第では在留資格をみとめられることもあります。入管にとって当面は送還可能な見込みはないわけです。職員のこの発言は、送還の見込みの立たないひとに対し、長期収容によってその心身をいためつけて帰国へと追い込もうという入管側の意図を、臆面もなくみずからさらけ出したものです。

  さらに、2月5日(金)には、Aブロックに収容された男性が居室のドアを叩いて病院での診療をもとめたところ、大阪入管はこのひとを「懲罰房」(入管は被収容者への懲罰の権限を認められていないので公式には「保護室」と呼ばれる部屋であるが、事実上の懲罰目的に使用されている部屋であって、被収容者たちも「懲罰房」と呼んでいる)へと隔離しました。かれは、「病院に行かせて。痛い、痛い」と言ってドアを叩いたものの、物品を壊してもなければ、職員の身体にも触れなかったと、複数の目撃した被収容者が支援者に証言しています。大阪入管は、身体の痛みを訴えて診療を求めた被収容者に対し、医療上の処置をとる義務をおこたったばかりか、これに事実上の懲罰をくわえるという信じがたい行動をとったわけです。

  帰国強要のための拷問施設であることを、大阪入管はこのように隠そうとすらしておらず、被収容者の要求に対しても対話を拒否する姿勢をとっていることが、今回のハンストの背景にあります。



2  ハンストへの暴力的な弾圧

  ハンストは、非暴力的な抗議・抵抗の手段です。しかも今回のハンストには、これまで一貫して対話・交渉を拒否してきた大阪入管に対する被収容者側からの対話の呼びかけとも言えるものです。ところが、大阪入管側は、これに対して暴力による弾圧をはじめています。

  10日の朝食からA, B両ブロックでハンストが開始されると、大阪入管はBブロックのガーナ人男性Fさんを「リーダーだから」との理由で「懲罰房」に隔離しました。午後1時に支援者がFさんとの面会を申請すると、大阪入管は「保安上の問題がある」「収容場内の秩序をたもつため」との理由で、これを不許可にしました。食事を断つことがなぜ「保安上の問題」があり、また懲罰の理由になるのか、まったく理解しがたいですが、入管はFさんを、監視カメラによって24時間見張られ、他の被収容者や支援者等との会話・通信を完全に断たれた、便器と壁しかない「懲罰房」に監禁しているのです。

  また、大阪入管は、10日の午後より、A, B両ブロックの全被収容者(ハンストに参加していないひともふくむ)の開放処遇を停止し、2~4人の雑居する居室に施錠して閉じ込めています。これによって、50名超のA, B両ブロック被収容者は、電話、手紙を出すこと、シャワー、洗濯、運動の禁じられた状態におかれています。家族・弁護士・支援者など外部に被収容者みずから連絡することはできず、外部からおとずれる面会者を待つ以外には通信の手段が完全に断たれているのです。入管側は、被収容者に対し、この措置を翌11日まではつづけると告げているそうです。


3.大阪入管への抗議、注目をおねがいします

  2月12日(金)には、大阪入管前にて、TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)、WITH、難民支援コーディネーターズ関西の3支援団体共催で、ハンスト参加者の激励と大阪入管への抗議の行動をおこないます。お近くのかたは、13時に大阪入管にぜひお集まりください。大阪入管は、大阪市営地下鉄「コスモスクエア駅」近くです(→地図)。

  また、情報拡散および大阪入管への抗議にご協力ください。

【抗議先】
  大阪入国管理局総務課
  06-4703-2100
  06-4703-2262(FAX)

  なお、報道関係者のみなさまなど、この件について取材されたいかたは、仮放免者の会・永井(090-2910-6490)までご連絡ください。

  最後に、A, B各ブロックの被収容者たちが提出していた要求書を掲載します。



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【Bブロック要求書】

平成28年1月6日
大阪入管申出願
私たちはBブロックで収容されている人達です。
いくつか入管に改善してもらいたいことがあります。
①医務
今まで何人もの人も見てきましたけどすぐに対応してくれませんでした。
死んでからだと遅いです。健康が一番です。
現在イランの人で(Aさん)がじゅうどの頭の病気で収容されており入管が全然対応してくれません。もう一人イランの人で(Bさん)は扁桃腺がすごく腫れていて食事をする時には我慢しながら食事をしています。後中国の人で(Cさん)は高血圧と胃炎で薬をもらっていますが全然よくなりません。
②健康診断
長期間にわたって収容されているにもかかわらず全然健康診断がありません。
③弁当
毎回インスタントのおかずばっかりで本当に健康的に不安です。
ごはんのクオリティがあんまりにも酷すぎます。
(中には弁当を食べた後に吐き気する人もいます)
④差し入れ
ここの中は購入はできますが、日用品や食べ物が高すぎます。
中にはお金をあんまり持っていない人もいます。本当に大変です。外からの差し入れを許可をお願いします。
⑤運動所
何十人もいるのに運動所が小さすぎます。ここが長期収容になったなら、それなりに考えてもらいたいのです。
⑥ドアの開閉時間について
朝9:30~11:30、昼13:30~16:30、土曜日は朝だったり昼間だったりします。どうして毎回ドアを閉めるのですか。私達は動物ではありません、人間です。
⑦電話のことについて
夜、部屋での電話はもっと時間を増やすか部屋に電話機を設置して欲しいです。
自動販売機の横に電話機3つありますが利用する時はとなりで散髪する人や喋る人も居るので雑音が耳に入り、なかなか会話することが出来ません。電話ボックスを設置してもらえればとてもありがたいです。
⑧ボランティアとの面会
以前の面会は30分だったのですけど、今は15分です。
15分だと話したいことがその15分って言うプレッシャーに話したいこともわすれてしまいます。会話をすることが出来ません。
⑨提案箱について
前回提案箱に食事のことで手紙を入れましたが返事がありませんでした。
⑩チケットについて
自分たちが帰る時になったらどうして入管があんまりにも高すぎる設定をするのか私たちには納得が出来ません。
以前にペルーの人で最初は24万って言われていてその2日後には40万って言われました。なぜ外からチケットの購入が出来ないのですか。
⑪各入管のことついて
各所に入管はありますがどうしてそんなにルールが違うか理解が出来ません。(例  長崎、東京は仮放免の許可が1年以内に出るのにどうしてここはそんなに長いのですか。できればその理由を教えていただきたいです)
⑫仮放免について
長期間にわたって収容されていることが精神的にも体力的にもとても大変です。ストレスや病気の原因になります。
ここから出て男、父、夫として一日でも早く社会復帰をしたいです。
最後にみな一同心を一つにして頑張って行きたいと思いますのでどうか一つ宜しくお願い致します。
[以下、被収容者25名の署名(省略)]



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【Aブロック要求書】

平成28年01月22日
大阪府大阪市住之江区南港北一丁目29番53号
大阪入国管理局内  7階Aブロック内長期収容者
要  求  書
  私達は大阪入国管理国収容場7階内Aブロックの収容者です。私達はみんなで話し合いのうえ、強く要求することを決めました。なお、私は日本語を書けるからという事で、代表して書かせていただきます。
  私達は、日系人、日本人配偶者、難民、家族の生活などさまざまな事情によって特別在留許可の申請、難民申請や退去強制令書の取消訴訟等などの理由によって収容されている者です。Aブロック内においては長い者で1年1か月以上の長期間にわたって収容されている者もいて、現在大阪入国管理局内において医療関係に関する何の知識も資格も持っていない素人の職員による身勝手な判断や、大阪入国管理局内での勤務している医者による不十分な診断又は病状にあった適切な診査をせずに薬を出すことによって、私達の病状は相当悪化しており、事実最悪の事態になっております。具体的には、私たちの体調不良や病気になった時にかくブロックにいる担当職員に申し出をし、医務診察をしてもらうことになっていますが、かくブロックにいる入国警備官又は看護婦などといった医療関係に関する何の資格も持っていない素人の職員の判断でわけのわからない薬を飲ませるだけでなく、適切な治療をしてもらえないのが現在の状況です。
  大阪入国管理局に収容させられている以上は、私達の健康状態や病気に関して適切な治療をさせる義務や責任が法的に大阪入国管理局にあることは言うまでもないことなのですが、現時点で大阪入国管理局側はその義務をはたしていません。
  被収容者処遇規則第30条1項が「所長等(入国者収容所長及び地方入国管理局長)は、被収容者がり病し、又は負傷したときは、医師の診療を受けさせ、病状により適当な措置を講じなければならない。」と規定していることからも明らかなのにもかかわらず、医務診療申出時に警備官に病状は何であろうと皆に同じ痛み止めをあたえるだけで、適切な治療をしてもらえないのが現在の状況です。
  重い病気をわずらっている人がこのAブロックだけでも大人数です。わずかながら紹介させていただきます。
  まず一人目は、イラン国籍のAさんです。このAさんのばあい、うつ病、巻き爪や食事に出る肉やごはん、みそ汁を食べると気分が悪くなり、吐き気やアレルギー、耳から出血といった病状が起こることから、何回も医務診察申出をしても見てもらえず、食事に出る肉やパン、みそ汁やバターを食べることが出来ないことから、食事をベジタリアンにと、そしてごはんを食パンに変更願申出をしても、変えてもらえないというのが現状況です。
  二人目は、イギリス国籍のBさんです。この方のばあいは、うつ病を持っており、医務診察申出を2回ほどしても、入管に勤務している医者は診察をする必要が無いと入国警備官を通じて伝えられ、イギリスの領事館に面会に来ていただいた時にその旨を相談したら、後日入管に勤務している医者に見てもらい、うつ病のことを説明し、薬を出されました。二週間ほど出された薬を飲んで見て、看護婦に「薬はどうですか」と質問され「あんまり効かない」ことを説明したら、看護婦に「よい薬が必要だったら、イギリスに帰れば沢山あるよ」と言われました。しかし、イギリス国籍のこの方にはどうしても帰れない理由があり、現在の状態が続く可能性が高いことを考えると不安や不眠症で生活が困難なため、精神科医による診察を受けたい旨を入管に勤務している医者に相談したら「考える」と言われ、後2回診察をしたら「精神科による診察は必要が無い」と言われ、「今出されている薬を飲み続けるか止めるしか方法が無い」と言われました。
  次にこの方は収容される4ヵ月~5ヵ月前に胃潰瘍になっていたため、診察に行った時に「胃カメラによる検査を6ヵ月後にもう一度する必要があります」と言われていた事を収容されてから入管の医者に相談をしても「必要が無い」と言われるだけです。
  三人目は、ブラジル国籍のCさんです。この方は両方の足が巻き爪になっており、何回も、医者による診察を申出ても、看護婦にしか見てもらえず、頭痛用として入管においてある薬を出すことしか出来ないと言われます。この方は外で医者診察を行ったときにはすでに陥入爪によって皮膚が傷つけられており、感染を引き起こしていたため、抗生物質を飲み、その後に変形した爪を正常な形に戻す施術を行わなければいけない旨を説明され、抗生物質を飲んでいる間に入管に収容されることになり、治療を中断され、今では歩くにも困難で、痛みのせいで夜眠ることも出来ていません。
  四人目は、トルコ国籍のDさんです。この方は以前睾丸の痛みにより手術を行っており、収容されてからまた強い痛みを感じるようになり、入管に勤務している医者に診察してもらっても「何でもない」からと言われ、頭痛用の薬しか出してもらえません。この方は強い痛みのせいでトイレで大便時にしゃがむことも出来ず、強い痛みのせいで夜眠ることも出来ていません。
  五人目は、ベトナム国籍のEさんです。この方は収容されてから顔に淡褐や暗褐の斑点が出来、目にも出来物が出来、その旨を入管の医者に説明しても、入管ににきび用としておいてある薬を塗ることしか出来ないと看護婦に伝えられました。当然ながら、その薬が効かないことを申出ても、何もしてもらえません。
  人間が疾病を治癒させるために適切な治療を受けることが出来る権利は、人間の尊厳から発する最も根本的な権利であり、憲法25条の生存権の自由権的側面として保障されている根本的な人権を大阪入国管理局によって侵されていることは一切許しません。
  医師法第20条「医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付し、自ら出産に立ち会わないで出生証明書若しくは死産証書を交付し、又は自ら検案をしないで検案書を交付してはならない。但し、診療中の患者が受診後二十四時間以内に死亡した場合に交付する死亡診断書については、この限りでない。」
  私達は入管によって身柄を拘束され、自由に病院まで行くことも出来ませんし、他の収容者が病気やケガに苦しんでいても病院に連れていくことも出来ません。したがって、収容者のうったえがあれば、すみやかに診療を受けさせることは、収容主体である入管の義務であって、それが出来ないならば、収容を止めるべきです。
  私達は健康のためにも、待ってくれている家族などのためにも、長期収容をやめ、医療に関する問題に目を向け、徹底的に改善するよう、強く求めます。収容をするのであれば、それなりに私達の命に関わる事に対しての、もっと強い責任をもって務めていただきたいです。
  私達一同は外で待っている家族などのもとへ、健康な状態で共に生きる権利がありますし、私達には国には帰らない、帰れない理由があります。「帰って当たり前」という入管の一方的な考えでは、私達への「人権侵害」になります。

  入国警備官に言われた言葉の例をあげようと思います。
医務診察申出願時に、
(質)何故多くのばあい、医者による診察願を申出しても、医者に見てもらえないですか。
(答)これが入管のやりかたであって、診察をするかどうかはボスが決める。(O-138番札担当)。
  私達は先の見えない長期収容から来る過度のストレス、拘禁病、不眠症、自律神経失調症、その他の病気に悩まされています。このような事から、以下の13点を強く要求しますので、これらの事を考慮し、2週間以内ご返答をよろしくお願い致します。

  1. 入管施設への入所が合計6ヵ月経過している者の仮放免の許可。
  2. 精神的又は身体的の理由で通院が必要と認められる者は入所期間に関係なく仮放免を許可。
  3. 保証金の金額を本人や身元保証人、引受人の金銭状況を考慮し、本人等の希望を重視。
  4. 仮放免申請後、おおむね1ヵ月以内に結論を出す。
  5. 在留資格の交付。
  6. 飲料や食品の差し入れ許可(外国産含む)、
  7. 毎回弁当に出るインスタント食品を手作り物へと替えること。
  8. 健康診断を定期的に行うこと。
  9. 何十人も収容されているのに運動所が小さすぎます。ここが長期収容になったなら、それなりに考えてもらいたいです。
  10. ドアの開閉時間が短すぎます。私達は動物ではなく、気持ちを持った人間です。
  11. 夜、部屋での電話時間を増やすか部屋に電話機を設置して下さい。後自動販売機の横に電話機が3つありますが、利用時にとなりで散髪する人や喋る人も居るので雑音が入るため、会話が出来ません。電話ボックスを設置して下さい。
  12. CDプレイヤーの差し入れ許可をお願いします。
  13. 以前はボランティアとの面会時間は30分だったのに、今は15分です。以前と同じよう、ボランティアとの面会時間を30分へと戻して下さい。
以上の事を全て改善するよう強く要求致します。
[以下、被収容者27名の署名(省略)]


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Sunday, December 27, 2015

12月10日、日本人・永住者などと結婚した仮放免者に在留特別許可を求める申入れ~夫婦を引き裂かないで!~



  長期収容にも耐えて仮放免となった仮放免者の中には、日本人や永住者などと結婚して日本で家庭を築いた者もいます。関東仮放免者の会の会員の中では約2割がこうした人たちです。

  長期収容によって本人は心身の衰弱に苦しめられました。苦しんだのは本人だけではありません。外で待つ日本人や永住者などの配偶者も、夫婦が引き裂かれた孤独感や不便さに耐え、かつ本人の衰弱を面会や電話などでよくわかって我が事として苦しんできました。さらに、配偶者はしばしば仮放免保証人であるので、仮放免申請のたびに市役所で住民票などを、また会社で在職証明などを請求しなければならず、特に会社からは不審に思われることもありました。子がいる家庭ならばなおさら大変でした。本来、夫婦二人で育てるべきところを一人に負担が集中し、かつ収容されている配偶者のために幼子を連れて面会に動き、仮放免申請のための書類集めもしてと、息つく暇もありませんでした。

  仮放免となっても夫婦の苦難は続きます。仮放免者は国民健康保険の加入が認められないので、病院に行くと高額な医療費がかかります。風邪をひいても虫歯でも、常に一万円単位で医療費が飛んでいきます。経済的に苦しい上に1~2カ月に一度は入管に出頭しなければなりません。東京都在住者は品川、神奈川県在住者は横浜の入管局ですが、埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・山梨・長野・新潟に住む仮放免者も同じ頻度で品川に行かなければなりません。東京でも西多摩在住の仮放免者、さらに北関東や甲信越在住の仮放免者となると交通費も大変です。また、仮放免者は、入管出頭時以外の他県移動時は「一時旅行許可」を入管から得なければなりません。特に県境の市町村に住む人は、ちょっとした用事で県をまたぐことがありますが、仮放免者はその都度、事前に入管局に一時旅行許可を得なければなりません。

  東京入管は、昨年10月以降、こうした結婚のケースの仮放免者宅を訪問調査してきました。その結果としては、主に子がいるケースで在留特別許可(注1)が出ました。私たちの会員やその友人などで、知る限りは30人ほどです。日本人と婚姻し、妻が出産年齢を過ぎているケースでは子がなくても在特が出ました。しかし、30人ほどではあまりに少なく、逆に不許可となった人たちが圧倒的に多数でした。

  今回、被退令(退去強制令書)発付者の再審査を扱う法務省入国管理局審判課に申し入れを行いました。

  申し入れた点は主に二点です。


  1. 夫婦の間に子がないケースも、安定した夫婦関係が認められれば在特を出すこと。妻が出産年齢であっても、夫が仮放免中であれば安心して妊娠・出産することができずにいる。
  2. 消極要素(注2)に過度にこだわらないこと。実際、長期収容にも仮放免生活にも耐える会員の多くは、偽装結婚歴があるなど単純なオーバーステイではない者が多く、帰国して上陸特別許可(注3)を得て戻ってくればよいではないかと入管から指導されても、短期に戻ってこれる見通しが立たない。それゆえ、長期収容、再収容にも耐え、仮放免期間の長期化にも耐えて日本で夫婦生活を継続せざるを得ない。こういった人たちを救済しなければ、同様のケースの仮放免者は増え、仮放免期間は長期化せざるを得ない。


  また、これは仮放免者全体に関係することですが、仮放免期間の長さについても考慮していただきたいと申し入れました。

  申し入れには当事者は遠慮してもらいたいとの事だったので、事務局の支援者と顧問弁護団の指宿弁護士とで申入れをおこないました。

  申し入れ中、当事者夫婦は法務省に向けて、「夫婦一緒の生活を認めてください!」「夫婦を引き裂かないで!」と書かれた横断幕を掲げ、必死の願いを訴えました。





注1)在留特別許可
退去強制手続きにおいて、退去強制対象者に該当するとの認定を受けた外国人は、口頭審理請求、ついで法務大臣に異議申出を行うことができますが、法務大臣は、異議申出に理由がないと判断した場合でも、一定の事由ないし事情が認められる場合には、在留特別許可をすることによってその外国人に在留資格を付与することができます。簡単に言えば、退去強制に理由がある場合であっても、法務大臣は事情を考慮して在留資格を特別に付与することができるという制度です。
制度上、在留特別許可は法務大臣名で付与されますが、実質的には法務省入国管理局の裁決委員会で審査されていました。しかし非正規滞在外国人数が増大する中、全国を八つのブロックに分けた地方入管局の局長に、退去強制令書発付処分を下すか在留特別許可を与えるかの権限が委譲されました。現在、非正規滞在外国人を見つけておこなわれる退去強制手続きでの結果は、地方入管局に委ねられています。しかし、すでに退去強制令書発付処分を受けた被退令発付者について、在留特別許可を出すかどうかの再審査の権限は現在も法務省入国管理局のみにあります。このため、仮放免者の会家族会では、今回、法務省入国管理局に審査基準を緩めるよう申入れをおこないました。



注2)消極要素
2009年7月、法務省入国管理局は「在留特別許可に係るガイドライン」の改訂版において、在留特別許可の許否判断にあたっての「積極要素」と「消極要素」を公表しています。



注3)上陸拒否期間と上陸特別許可

  1. 過去に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがない場合の上陸拒否期間は退去強制された日から5年(5年拒否)
  2. 過去に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがある場合(「複数回退去強制」いわゆるリピーター)の上陸拒否期間は、退去強制された日から10年(10年拒否)
  3. 日本国または日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役または禁錮等に処せられた場合等の上陸拒否期間は無期限(長期拒否)

これに対して、結婚しているなどの事情により上陸特別許可(上特)の制度があります。
今年3月、法務省入国管理局は「上陸を特別に許可された事例及び上陸を特別に許可されなかった事例について」を公表しました。
そこで例示されているのは、「配偶者が日本人の場合」の5年拒否で、夫婦間の子があるケースで約2年、子がないケースで約3年2月。入管法違反事由については明示されていません。

Sunday, December 13, 2015

【抗議声明】バングラデシュへのチャーター機送還について

2015年12月13日



  11月25日(木)、法務省はバングラデシュにチャーター機を使っての集団送還をおこないました。翌26日の法務省の発表によると、送還されたのはバングラデシュ人22名、23~53歳の男性だとのことです。

  法務省発表は、ジャパン・タイムズ、ロイターなどが報じています。



1.難民を送還、家族分離も

  仮放免者の会としては、本人の意思に反しての無理やりの送還そのものに反対していますが、2013年から法務省がはじめたチャーター機を使っての集団送還については、とりわけ強く反対してきました。集団送還おいては、獲得した予算を消化することが目的化し、チャーター機に乗せる人数をなりふりかまわずに、いわば「かき集める」ことがおこなわれるために、個々の被送還者の個別の事情はますますかえりみられなくなります。チャーター機での集団送還は、個別の送還以上に人権侵害がはなはだしいものになりがちなのです。

  今回の送還においても、日本人の配偶者、永住者の配偶者、また、やはり永住者の配偶者であってそのあいだに子のいるひとも送還されたことが、わたしたちの調査であきらかになっています。これらのケースでは、送還された本人はもとより、その妻や子も、送還によって夫や父親と引き離され、甚大な損害をこうむったことになります。

  また、私たちの調査では、今回も被送還者の多くが、難民審査の異議申し立て棄却を通知された後ただちに送還されたことも判明しています。これは、昨年12月のスリランカ・ベトナムへの集団送還でもみられたやり口で、きわめて問題の大きいものです。その問題性については、以下の記事の「1.法務省発表『難民認定を申請しているケースは含まれていない』について」でくわしく述べているので、そちらも参照してください。

  異議棄却後ただちに送還するというやり口が問題なのは、ひとつにはこれが裁判を受ける権利(日本国憲法第32条)を侵害するものである点です。入管は、今回の送還でも、昨年のスリランカ・ベトナムへの送還と同様、難民申請者の身体を拘束し、弁護士や支援者など外部との連絡をとれない監禁状態において異議申し立て棄却を通知し、行政訴訟を提起するいとまをあたえずに強制送還しています。難民として認定しないという決定は、法務省という、いち行政機関による行政処分にすぎません。不認定処分を受けた者は、当然、これを不服として裁判所にうったえる権利があります。法務省は、不認定処分を受けた人たちが訴訟をおこなうことのできない状態でこれを暴力的に送還することで、かれらの裁判を受ける権利を侵害しました。また、これは、行政機関である法務省による、司法・裁判所に対するいちじるしい軽視、独裁的とも呼ぶべき暴挙であるということも言えます。

  さらに、難民申請者とは、庇護を日本政府にもとめている人たちであって、棄却後であれ、これを送還するのは、かれらを送還先での迫害の危険にさらす行為です。難民認定審査において、難民であることの立証は申請者みずからがおこなわなければなりません。したがって、「難民不認定」とは、申請者がみずからの難民該当性を立証できなかったということにすぎません。難民申請者が審査者を説得できるだけの客観的な材料を示して自身の難民該当性を立証できなかったとしても、だからといって難民該当性や迫害の危険がないとは言えません。論理的に言って、難民申請に対する法務省の「不認定」という決定は、申請者の送還後の迫害の可能性を否定しうるものではまったくないのです。

  しかも、庇護希望者が自身の難民性を立証することの困難さ(迫害があって、あるいはそのおそれがある人が、これを立証するじゅうぶんな物的証拠を用意したうえで出国する、などということが想定できるでしょうか?)、くわえて日本の難民認定率の低さ(2014年度は5000人の申請者に対し、認定されたのはわずか11名です)も考慮しなければなりません。

  UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、「……申請人の説明が信憑性を有すると思われるときは、反対の十分な理由(good reasons to the contrary)がない限り、申請人は灰色の利益(benefit of the doubt)を与えられるべきである」(『難民認定基準ハンドブック』 p.54の196.)としています。つまり、“疑わしきは申請人の利益に”という原則です。これに対して、日本政府は事実上、“疑わしきは認定しない”という姿勢で難民審査にのぞんでおり、このことが認定率のいちじるしい低さの一因になっているのはあきらかです。

  現状でのこのような難民審査の実態をふまえると、行政訴訟ができないように身体を拘束した状態で異議申し立て棄却の通知をおこない、ただちに送還するという、昨年12月にひきつづいて法務省がおこなった集団送還のやり口は、なおさら暴挙と言うよりほかありません。



2.「送還忌避者」とはなにか?

  2013年度に開始されたチャーター機をつかっての集団送還は、今回で4回目になります。
  • 2013年7月6日  フィリピン人75名を送還
  • 2013年12月8日  タイ人46名を送還
  • 2014年12月18日  スリランカ人26名とベトナム人6名を送還
  • 2015年11月25日  バングラデシュ人22名を送還

  これまで175名のひとが、チャーター機によって送還され、その生存や生活の基盤を暴力的に破壊されたことになります。送還されたひとだけでなく、その家族・親族や友人などもまた、かけがえのないものをうばわれた被害者といえます。

  さらに、法務省は、来年度予算の概算要求で「送還忌避者の専属輸送による送還経費」として9,300万円あまりを計上しています。法務省が2013年度および14年度においてチャーター機送還のための予算として獲得したのがそれぞれ3,000万円です(14年度は結果的にこの予算内に経費がおさまらず、1,000万円超過の4,000万円を支出したと法務省は発表しています)。法務省が、この3倍以上の予算の獲得をもくろみ、チャーター機を使ってのいっそう大規模な集団送還をたくらんでいることがわかります。

  法務省は、「送還忌避者」を送還するという名目で、今回のチャーター機送還をおこない、また今年度・来年度以降もこれを継続しようとしているわけですが、そもそもなぜ多数のこの「送還忌避者」が生じているのかという点が重要です。それは、入管政策をふくむ日本政府の外国人政策のゆがみがもたらしたものにほかなりません。

  法務省の言うところの「送還忌避者」が増大している事態は、仮放免者数の増大としてあらわれています。ここで言う仮放免者とは、入管から退去強制令書を発付されながらも、収容を解かれているひとを指します。法務省・入管の側からみると、送還対象であって、原則として送還までのあいだ収容所等に収容することになっているけれども、送還のめどが立たないために「一時的に」収容を解いている者、ということになります。

  全国でのこの仮放免者の人数は、増大しています。2009年7月段階での約1,250名から、2012年10月末段階で約2,600名へと増え、2013年末3000人を越えるにいたります。法務省の公表している最新のデータで3,400名超です(2014年末時点)。

  こうして増大した仮放免者の大多数は、難民申請をしていたり、あるいは日本に家族がいることや長期滞在ですでに日本にしか生活基盤がないために、帰国をこばんでいる人たちです。かれらの多くは、帰るに帰れない事情をかかえて日本での在留をもとめています。昨年末時点で3,400人を超えるにいたったこの仮放免者に、さらに収容中で送還をこばんでいる人をあわせたものが、法務省の言うところの「送還忌避者」の全体ということになります。



3.なぜ「送還忌避者」が増大しているのか?

「送還忌避者」が増大している要因のひとつは、さきにみたような難民認定率のいちじるしい低さ、また、難民申請者がなかなか在留資格をみとめられていないことにあります。

  そして、決定的な要因は、バブル期以来、日本政府がご都合主義的な外国人労働力導入策をとってきたことにあります。この点については、このブログでもくりかえし述べてきました。以下の記事などを参照してください。

  こんにちにいたるまで日本政府は、外国人労働者の受け入れについて「専門的な知識,技術,技能を有する外国人」に限定する政策を、表向きはとってきました。しかし、日本の社会・産業が、いわゆる非熟練労働の担い手としての外国人労働者に大きく依存してきたのは、周知のとおりです。政策においても、この建前に反する状況を追認する、あるいは後押しする措置を、日本政府はとってきたのです。

  ひとつには、非正規滞在の、あるいは短期滞在の資格で在留する外国人が就労することを、日本政府はあきらかに黙認してきたという事実があります。80年代後半から90年代にかけて、当時「3K」(キツイ、キタナイ、キケン)と呼ばれ、日本人の若い労働者が敬遠した職場の深刻な人手不足をうめたのは、これらの外国人労働者でした。かれらに対し、2003年12月、政府の犯罪対策閣僚会議は「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」のなかで、「今後5年間で半減させ」るとの方針を打ち出し、摘発強化に乗り出します。かれらを「不法滞在」状態におきながら安価な労働力として利用するそれまでの政策から、これを徹底的に摘発して追放する政策へと転換したものといえます。

  表向きは非熟練労働について外国人労働者を受け入れないという建前をかかげつつ、事実上、いわば裏口からこれを導入するという政策をとってきたことが、まず問題です。非専門的分野での労働者が必要だというならば、そのための在留資格をもうけたうえで正面から受け入れるべきでした。ところが、日本政府が選択した政策は、非公式的に非正規滞在外国人を労働力として導入しつつ、いざこれを「不要」とする政策判断に転じたときには(日本政府が「不法滞在者」の集中的摘発にのりだす2004年とは、派遣労働の自由化が製造業にもおよんだ年にあたります)、かれらが「不法滞在」状態にあることをよいことに、追い出しにかかる、というものであったわけです。

  2004年にはじまる「不法滞在者の半減5か年計画」、そして2009年の入管法改定を機にますます強引にすすめられた強制送還の執行(これは入管収容所の長期収容と再収容、頻発する無理やり送還としてあらわれ、2010年3月に送還中のガーナ人死亡事件、同年2月と4月に東日本入管センターで連続した被収容者の自殺事件を引き起こします)の結果、「不法滞在者」数は大幅に減ることになりました。この大幅減は、日本人の配偶者など一部の超過滞在者等への在留特別許可による滞在の合法化でもたらされた面もありますが、退去強制令書の発付処分を受けたひとの大半が、帰国あるいは送還に応じたことによっておもにもたらされたものです。

  ところが、こうして「不法滞在者」が減少するいっぽうで、法務省の言うところの「送還忌避者」が増大していくことになったのは、さきにみたとおりです。「送還忌避者」の増大は、現象としてみれば、帰国によって迫害のおそれのある難民や、日本にしかすでに生活基盤のないひとが送還に応じないことで生じているものでもありますが、本質的には、日本政府のご都合主義的な労働政策がまねいた問題と言うべきです。日本政府にしてみれば、一時的な「労働力」として導入するつもりであったのでしょうが、その導入された「労働力」はひとりひとり人間であって、長期にわたって暮らせば、その一定数は定住化がすすみ、「帰国」しようにもそうできなくなるのは当然なのです。



4.失政のツケを外国人に転嫁することはゆるされない

「専門的な知識,技術,技能を有する外国人」以外は労働者として受け入れないという原則を表向きにはかかげつつも、場当たり主義的にその抜け道をつくりだして事実上これを呼び込むという二枚舌政策を、日本政府はとってきました。日系人の「受け入れ」政策と、研修生・技能実習生制度もまた、その一環にあるといえます。

  このような、場当たり主義的、かつ外国人を手段としてのみあつかってその権利尊重をともなわない政策の蓄積が、「送還忌避者」の増大という事態として返ってきているのです。ところが、政府は、こうして自分たちがまねいた失策のツケを、ずうずうしくも外国人に転嫁しようとしています。法務省が、読売新聞などの御用記者に情報をリークして、実習先のむごい処遇にたえかねて逃げ出した技能実習生についてネガティブキャンペーンをおこなっていることは、以下の記事などでも指摘してきました。

  今回のバングラデシュへの集団送還においては私たちは同様の事例を確認していませんが、昨年のチャーター機送還では、「スリランカ・ベトナムへの集団送還について」の「3.人身取引の被害者も送還」で述べたとおり、人身取引被害者である元実習生2名を送還してその権利回復を妨害したという事例すらあります。この2人は、雇用主からの未払い賃金の回収、また、ブローカーからの損害金回収のために法的措置を準備しているところであったにもかかわらず、法務省によって本国に強制送還されてしまったのです。

  技能実習制度が、途上国への技術移転といった制度本来の趣旨からは完全に逸脱した、安価な労働力導入の手段として、日本政府そのものによって脱法的に運用されていることは、さきの記事でも指摘したとおりです。政府みずからが平然と法をふみにじっているのもまったくひどいものですが、実習生の転職の自由がうばわれている点で技能実習制度は実質的に奴隷制度とよぶべきものであって、そのうえ、人身取引の温床にすらなっている実態があるわけです。したがって、実習先から逃げ出した実習生たちの被害回復について、日本政府にも重大な責任があるはずです。ところが、法務省は、彼ら・彼女らについて、マスコミをつかってネガティブ・キャンペーンをしかけて世論誘導をもくろんだうえで、送還によって人身取引業者をアシストして問題隠蔽をはかるということすらやったのです。

  法務省のいう「送還忌避者」という言葉は、もっぱら「送還忌避者」のほうにのみ問題をみいだし、無理やりの送還を正当化しようとするものです。しかし、なぜかくも大勢の「送還忌避者」が生じているのかという背景を、日本政府の外国人政策の経緯からも考えるならば、「送還忌避者」に一方的に責任を転嫁するような一面的な見方はできないはずです。法務省は、送還翌日の報道発表で、今回の被送還者に「不法滞在期間」が27年間にもおよんだ人がふくまれていることをあきらかにしています。こうしたバブル期以来の長期滞在者を日本社会は「不法滞在」という無権利状態のまま利用してきたのだという事実、そしてすくなくとも集中的な摘発方針へと転じた2003年まではこれが黙認されてきたという事実を無視するわけにはいきません。そこには意図的な政策的不作為があったのです。



5.チャーター機による送還は中止すべき

  こうしてみたとき、チャーター機による送還、法務省のいう「送還忌避者の専属輸送による送還」に、正当化できる道理などないことはあきらかです。政府は、仮放免者をはじめとする「送還忌避者」にみずからの政策的なあやまちのツケを負わせるのを、やめるべきです。

  今回バングラデシュに22人を送還するのに法務省は3,500万円の予算をつかったと発表しています。正当性もなく、22人とその家族らの人生をめちゃくちゃにするのに、3,500万円もの国費をつぎこんだわけです。人権・人道の問題について金額で論評するのはふさわしくありませんが、法務省は、この巨額の支出の正当性について、非正規滞在者をふくむ納税者にどう説明するのでしょうか。

  法務省は、今回の送還について、記者会見をひらかず、記者へのレクチャーというかたちで発表をおこないました。あまり堂々と公表したくない事情でもあったのでしょうか。

  前回のスリランカ・ベトナムへの集団送還においては、法務省は記者会見をひらき、「人権に最大限配慮した」「日本に配偶者がいたり、難民認定を申請しているケースは含まれていない」と発表しました。この発表が、かぎりなくウソに近いものであることを、私たちは調査にもとづいて指摘しました。実際には、日本に配偶者と子がいるケースはふくまれていたのです。また、「難民認定を申請しているケースは含まれていない」についても、まったくの虚偽とはいえないものの、意図的に問題を隠蔽し、あるいは小さく見せようとする意図のあきらかな説明でした。

  この姑息なごまかしともいうべき法務省発表の問題については、さきにもリンクした「スリランカ・ベトナムへの集団送還について」でくわしく指摘しておりますので、参照してください。また、前回集団送還における法務省発表と異なる実態について、日弁連への人権救済申立てでも、前回の集団の実態についてあきらかにしています(申立人は、被送還者のうちの3名と、そのうち1名の妻、仮放免者の会の国籍・地域別リーダー8名。代理人は、仮放免者の会顧問弁護士の高橋ひろみ、駒井知会、指宿昭一)。

  今回は法務省は、記者会見すらひらかず、記者へのレクチャーにおいても、記者からの質問に「詳細は言えない」をくりかえすありさまで、家族分離のケースの有無についてもコメントなし、という内容のとぼしいものであったようです。前回の集団送還時のように「人権に最大限配慮した」などとふてぶてしく弁明する余地すら今回はなかったということなのでしょう。

  もはや「送還忌避者の専属輸送による送還」が人権への配慮と両立しえないことはあきらかでしょう。法務省には、今後のチャーター機による送還を中止すること、これまで送還された人から申請があった場合にすみやかに上陸特別許可をみとめることを求めます。

仮放免者の会

Monday, October 12, 2015

【告知】第6回大会



10月18日(日)、仮放免者の会の第6回大会をおこないます。
今年度の活動報告のほか、次年度の活動計画などについて話し合います。










仮放免者の会 第6回大会
6TH ANNUAL CONFERENCE


10月18日(日曜日) 12:30PM
Sunday October 18, 2015



集合: JR板橋駅 西口
しゅうごう: JRいたばしえき  にしぐち
Meeting Place: JR Itabashi Sta. West Exit


会場(かいじょう): ハイライフプラザいたばし
Venue: HIGH LIFE PLAZA ITABASHI



★一時旅行許可(いちじ りょこう きょか): 東京都板橋区(とうきょうと いたばしく)
★Application for permission for Trip "Tokyo, Itabashi ward"


連絡先
おおまち Omachi 090-3549-5890 / みやさこ Miyasako 090-6547-7628 /
Elizabeth(English available) 080-4163-1978

Saturday, September 26, 2015

【転載】2015.9.11 大阪入管一斉面会・抗議行動



  TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)のホームページより、以下、転載します。

  あわせて、大阪入管Bブロック被収容者25名が連名で局長あてに提出した「苦情申立願い」も掲載します。

  大阪での被収容者、仮放免者、支援者の取り組みに、今後ともご注目ください。


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【転載】

2015.9.11 大阪入管一斉面会・抗議行動

  9月11日に大阪入国管理局(以下大阪入管)にて一斉面会と抗議行動を行いました。約20名の支援者と仮放免者で、面会とシュプレヒコールを通じて被収容者を励まし、大阪入管への抗議と申し入れを行いました。

  私たち支援者の外からのシュプレヒコールに応えるように、被収容者からは6階という高さにも関わらず大きな歓声が聞こえてきました。 「助けて!」「入管悪い!」という声もありました。

  それだけ声を上げざるを得ないほど、劣悪な処遇と、先の見えない収容に対する、収容場の中での不満と苦痛は大きいのだと思います。

  今後もTRYは当事者と一緒に、各支援団体の皆さんと連携しながら、大阪入管の劣悪な処遇改善へ向けて取り組んでいきます。ぜひ皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。


  大阪入管収容場の状況と抗議内容は以下を参照ください。






当日の配布チラシ




























大阪入国管理局に対する申し入れ書


申し入れ書
2015年9月11日
大阪入国管理局局長 殿
申入れ団体
  WITH
  TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
  難民支援コーディネーターズ関西
  難民支援団体 ピースバード

  貴局収容場では常時60名前後の被収容者を収容している。しかも西日本入国管理センターの閉鎖決定(今年9月閉鎖)に伴い、貴局収容場での被収容者の収容期間は長期化している。以前は、貴局収容場での収容期間は2、3か月であった。退去強制手続きを経て退令処分を受けても帰国を拒否し、収容が長期化する帰国忌避者は西日本入国管理センターに移収された。移収先の同センターは、支援者や被収容者の度重なる抗議と改善要求によって、レントゲンや歯科治療などの医療設備が整い、かつ外部の専門医に受診させるなど被収容者の健康、生命、安全を守る収容主体責任義務を自覚し、それを果たそうとしていたし、また支給食において貴局とは比較にならないほど充実していた。ちなみに同センターは、貴局収容場と同数の被収容者数が収容されていた2013年度には、月平均約15件の外部受診を実施している。それゆえ同センターが閉鎖決定されるまでは、貴局収容場は短期間の収容場としての役割を持って処遇改善に努力することもなく、帰国忌避者を西日本入国管理センターに移収していればよかった。しかし、同センターの閉鎖決定によって貴局収容場の役割は、帰国、あるいはセンター移収までの一時的収容施設から帰国忌避者を長期収容する施設へとその役割は変化した。にもかかわらず、この変化に適切に対応することなく短期収容でことたりた時期の処遇が続けられている。もちろん短期収容施設なら処遇が劣悪で良いと言っているのではない。貴局収容場の役割の変化に伴い被収容者自身が、自身の健康や生命を守るため、また人間として扱えという要求を持って処遇改善を強く求めるようになったということである。
  私達は、退令処分を受けた者の収容は、帰国させるための収容であり、送還が我々の仕事であるという入管の言い分は重々承知している。だが難民申請者や日本に家族がいる被収容者、さまざまな事情で帰国できない人たちが帰国を拒否している。その中には退令処分取り消し訴訟を起こしている人もいる。このような人達を長期収容し、「こんな待遇で収容されるのはもういやだ」と音をあげさせ、帰国を強要するような処遇は直ちに改めるよう申し入れる。
  日本も加盟する拷問等禁止条約において「「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為」であると定義されている。被収容者は時間的、空間的感覚を奪われる密閉施設に拘禁され、入管の厳重な管理下で診療の自由を奪われ、食事の選択権も奪われている。その被収容者の人権を尊重するという収容主体責任義務を果たそうとせず、体調不良を訴えて医師への受診を何度も要求しても認めず、また腐りかけのキャベツの入った支給食の改善を訴えても改善しようとせず、今年8月には支給食に生きたゴキブリが混入していたこともあった。これらの事実から私達は、貴局は恣意的に被収容者の心身を痛めつけようしていると評価せざるを得ない。
  私達は、これまで貴局の自浄努力に期待し、何度も貴局収容場の医療や食事の改善を申し入れてきた。しかも医療問題については、東京入管、東日本入国管理センターにおいて昨年、一昨年と四人もの被収容者が適切な診療を受けられず死亡した事件を取り上げ、このような犠牲者を絶対出させないという支援者としての強い意志を示して改善を申し入れてきた。しかし、「適切にやっている」と決まりきった回答しかせず、一向に処遇改善の努力をしようとしない。
  日本社会は、貴局入管が被収容者の人権を侵害し、被収容者を非人間的に扱うことを決して認めることはない。1951年、出入国管理令が公布されたが、そのとき以来入管法第五章の「退去強制手続き」の基本は変わっていない。出入国管理令は、東西冷戦が厳しくなる政治情勢の中で日本の旧植民地出身者を対象に、政治的治安目的から作成されたがゆえに、入管は政治的治安組織としての体質を持って成長してきた。東西冷戦構造が崩壊して25年も経っているのに、いまだに国益のためなら何をしても許されるという体質を大阪入管は引きずっているのか。かつて大阪の日本人住民の中には大阪入管を「入管」とは呼ばず、あそこは朝鮮人の行くところだと蔑み、「朝鮮庁」と差別的に呼ぶ者もいた。このような被収容者に対する人種差別意識に大阪入管は凝り固まっているのか。
  だが一方で、私達は「開かれた入管」というスローガンを掲げ、入管行政は国民の理解なくして成立しないという認識に立ち努力してきた入管の歴史も知っている。貴局が、入管が日本社会との軋轢の中で、もまれ、学び、改革してきた歴史を逆行させ、古い体質に引き戻そうとしているとまでは思わない。しかし、貴局収容場の処遇は、あまりにもひど過ぎる。改めて貴局入管の自浄努力に期待し、以下質問と改善の申し入れを行う。

一、医療問題について
(1)ベトナム人被収容者が、結核の疑いが持たれるような微熱が数週間続いた。本来ならしかるべき医療機関を速やかに受診させるべきであるが、貴局はそれをしなかった。大阪入管局長は、収容場の管理責任者である。管理責任者として感染症の感染拡大を防ぐ責任があるか否かについて回答してもらいたい。
(2)胸にシコリが発生したブラジル人女性が乳がんではないかと心配している。なぜ乳がんの検診を受けさせず、放置しているのかについて回答してもらいたい。検診もせず、乳がんではないと入管が言い張っても女性の不安は消えないことは常識的にわかるはずである。
二、支給食の改善について
これまでとりわけ男性被収容者から支給食の量が少ないこと、またその質において腐ったキャベツが度々出される、さらに支給食にゴキブリが混入したことがあったとの訴えがある。業者に対し、支給食の質量を改善するよう強力に指導すること。
三、食品の差し入れを許可すること
貴局収容場において被収容者に差し入れできる品目を食品まで拡大すること。西日本入国管理センターでは無制限ではないが、果実や野菜類の差し入れも可能であった。また以前、貴局収容場においてもカップ麺等の差し入れを許可していた。収容場内で購入できる食品は、外部で購入する食品と比べて異常に高額である。また所持金のない被収容者は貴局収容場で食品の購入さえできないが、こうした被収容者に対し、支援者が食品の差し入れもできない状態にある。
四、面会時の録音を許可すること
面会立ち合い時に面会内容を無断で録音する職員がいる。入管側が録音するのであれば、録音している事実を被収容者と面会者に告示するとともに、面会者側にも面会内容を録音することを許可するべきである。


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【Bブロック被収容者の連名要求書】


大阪入国管理局署長
苦情申立願い
  支給されている食事のメーン[メイン]のおかずが炭水化物ばっかりで(焼きそば、じゃがいも、コロッケ)または少ないです。食事のメーンとなる肉類が入っていませんので、栄養分が不十分で、このままでは私たちの健康によくないです。ちゃんとしたメーンのおかず(肉類)を業者に出して欲しい。もしくは今の業者よりもよい業者に変えて下さい。
  宜しくお願いいたします。
27-9-7
[以下、被収容者25名の署名(省略)]
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