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Wednesday, October 17, 2018

入管のいう「治安への懸念」とはなにか?――収容長期化問題をめぐって


(1)はじめに

 8月25日付の『読売新聞』(朝刊)に「入管に強制収容 長期化 治安対策 『仮放免』厳しく」と題された記事が掲載されました。おもに法務省幹部に取材した記事であり、収容長期化問題について、入管当局がどのように世論に印象づけたいのかをみるうえで参考になる記事です。

 この読売の記事には、つぎのように法務省幹部の発言が紹介されています。

 法務省幹部の一人は「国は長期収容を望んでおらず、本人が帰国に応じれば問題は解決する」とする一方、「帰国を拒んだ場合は、治安への影響から安易に仮放免を認めるわけにはいかず、長期化に対する改善策は見当たらないのが現状だ」と話している。

 この法務省幹部の発言は、一応は長期収容を「問題」であると認めたものではあります(注1)。しかし、その収容長期化の責任については、この法務省幹部は被収容者側に転嫁しています。収容が長期化するのは、国も望んでおらず、本人が帰らないせいである、と。

 もう1点、法務省幹部の発言のなかで注目すべきなのは、「治安の影響」のために仮放免できないのだとしていることです。読売の記事は、冒頭でつぎのようにも書いています。

 不法滞在などで入国管理局の収容施設に強制収容される外国人の収容期間が長期化している。背景には、収容者が施設外で生活できる「仮放免」制度を法務省が厳格に運用していることがある。先の見えない生活に絶望した自殺者も出ているが、治安への懸念もあり、解決策はみいだせていない。

 読売記事によれば、「治安への懸念」のために入管は仮放免を抑制しており、そのことが収容長期化の背景にあるのだといいます。しかし、これは認識として正しいものなのでしょうか。また、かりにそれが事実なのだとしても、「治安への懸念」を理由にして仮放免を抑制することには、重大な問題があるのではないでしょうか。こういったところを、今回この記事では考えていきたいと思います。



(2)送還の強化では収容長期化問題は解決できない

 従来から、読売新聞は、入管問題について、法務省入国管理局の広報と言ってよいような記事をしばしば掲載してきました。入管制度や難民認定制度、あるいはその運用にかんする読売の報道は、入管官僚の意向をくみ取って無批判に紹介するものがほとんどです(注2)。したがって、読売の記事は、当局への批判的な視点をまるで欠いているという点で報道としては物足りないものですが、法務省入国管理局がどのように世論に働きかけてこれを誘導していきたいと考えているのかを研究・分析するうえで、なかなか有用なのです。

 今回の読売の記事も、法務省幹部の意向にほぼそって書かれたものとみてよいでしょう。この読売記事は、収容長期化の要因として、つぎの4点をあげています。

  1. 本人が送還をこばむから。
  2. 母国の政府がパスポートの発給をこばむこともあるから。
  3. 難民認定申請をくりかえす被収容者が多いから。(難民申請者は手続きが終了するまで送還が停止される。)
  4. 仮放免者が犯罪にかかわるケースがあるため。

 4については、のちほど検討します。

 1~3は、入管にとって、仮放免しない(あるいは、仮放免できない)理由にはなりません。本人が送還に同意せず、かつ送還先の相手国政府が本人の同意なしでの旅券発給はしないということであれば、これは当分のあいだ入管にとって送還の見込みがないということです。難民申請している被収容者についても、同様です。送還できる見込みのたたないような人を、いたずらに長期間にわたって収容し続けることは、その被収容者に苦痛をあたえ、その心身の健康を破壊するということ以外のなんの効果も意味もないのです。

 なお、難民認定申請をくりかえす被収容者が多いということについて、法務省は、それが送還業務をとどこおらせ、収容長期化をまねく要因になっているかのように言いますが、このような見方はあまりに表面的にすぎます。

 よく知られているように、日本は他の難民条約加盟国とくらべて、その難民認定数・認定率とも、きわだって低く、人道上の配慮として在留を認められる難民申請者もきわめて少数です。難民の受け入れ・庇護についての現行のこうした消極的な運用が、帰国すれば危険にさらされるおそれのある被収容者にとって難民認定申請をくりかえさざるをえない状況をつくっているのだと言うべきです。法務省・入管当局が、在留を認めるべき人びとのうち、ごく一部にしか在留を認めておらず、その人たちの送還に固執しているということ。このことが、入管収容施設をいっぱいにして送還業務をどどこおらせ、また、収容の超長期化と言うべき現状をまねく大きな原因となっているのです。

 ともかく、現に収容が長期にわたっている人が増え続けているという現状は、入管が送還の見込みの立たない人の収容継続に固執しているということを示しています。9月23日付で朝日新聞はつぎのように報じています(注3)

 16年末に収容されていた1133人中、6カ月以上の「長期収容者」は313人(約28%)だったが、17年末は1351人中576人(約43%)と人数、割合がともに増加。今年に入ってからも急増し、7月末時点で1309人中709人(約54%)だった。収容が5年を超える人もいる。

 入管は送還するために収容をおこなっているわけですから、ある人の収容が長期化しているということは、入管がそのかん、この被収容者を送還することができなかったということを意味します。送還の見込みのたたない人を長期にわたって収容し、拘束し続けることは、人権・人道の面で非常の問題がありますから、「仮放免」というかたちでこの人たちを出所させ、拘束を解くための制度があります。こうした収容長期化を回避する手段がありながら、法務省・入管当局がこれを十分に活用してこなかった結果、「長期収容者」の急増という現状をまねいているわけです。

 従来、法務省は、仮放免を弾力的に活用することによって長期収容を回避するということを、国会答弁や報道発表でくりかえし表明してきましたし、それは日本政府が国際的に公約してきたことでもあります(注4)。法務省がこれまで表明してきたことからみても、収容長期化は法務省が解決すべき責任を負った問題なのです。「国は長期収容を望んでおらず、本人が帰国に応じれば問題は解決する」などと言って被収容者側に責任を転嫁してすむ問題ではありません。

 読売の紹介する法務省幹部の発言を言葉どおりに受け取るならば、長期収容は問題であり、また一刻も早くこれを解消するように取り組むべきなのは、法務省にとっても異論のないところでしょう。同時に、送還によってこの長期収容問題を解決・解消できないこともあきらかです。とすれば、長期収容を回避するためには、仮放免を活用していくということは不可欠であるはずです。



(3)「治安対策」としての仮放免抑制?

 では、「治安への影響から安易に仮放免を認めるわけにはいかず、長期化に対する改善策は見当たらない」という、冒頭にみた法務省幹部の説明について、検討してしていきましょう。

 この説明は、あとでみるように、実際に法務省がおこなっている運用からみて、つじつまがあわないものです。収容が長期化している人のなかにはたしかに刑事事件の前歴・前科のある人もいます。しかし、そうした人たちだけではなく、刑事事件の前歴・前科のまったくない人びともまた、長期にわたり収容されているからです。入管が仮放免審査を厳しくしているのは、「治安への懸念」とは別の理由があってのことだと考えるほかありません。この点については、あとで述べます。

 ここではさきに、「治安への懸念」を理由にして仮放免を抑制し、収容を長引かせることは正当化できるのかというところを、考えてみます。

 まず、「治安への懸念」という言葉によって、具体的にどういった事態が想定されているのでしょうか。

 「治安」という語には、つねに厄介なあいまいさがつきまといます。超過滞在(オーバーステイ)や入国するさいに正規の手続きをとらなかったといった行為は、入管法に違反するとはいえ、それ自体で被害者を発生させるわけではありません。被害者は存在しないけれども、ルールに違反しているということそのものが、法秩序をいくらかゆるがしているという点で、「治安」の悪化をまねいているのだと、極論すれば言えないこともないかもしれません。しかし、そうした意味での「治安への懸念」を理由にして、人間を6ヶ月以上、あるいは2年、3年ものあいだ収容して身体を拘束し続けることに、いくらなんでも正当性は認められないでしょう。

 読売の記事では、「仮放免者による薬物や傷害などの事件も相次ぐ。中には殺人や強盗などの凶悪犯罪に関与したケースもあったという」と述べられています。この部分は、法務省幹部が読売の記者に語った内容とみてまちがいないでしょう。したがって、法務省が「治安への懸念」ということで想定しているのは、仮放免された人が犯罪をおかすおそれがあるということだと解釈できます。

 とすると、法務省は、“長期収容は問題だが、仮放免された人が犯罪をおかすおそれがあるから”という理屈で、仮放免を抑制し収容を長期化させているということなります。この「犯罪をおかすおそれがある」という理由で拘束をつづけるのは、予防拘禁というべきであって不当です。仮放免者が犯罪をおかしたという事例があるからといって、その当人以外を拘束しつづけるのは、非正規滞在外国人や仮放免者をいわば「犯罪の温床」とみなすような差別主義的な思考を前提としており、けっして容認できません。

 さらにこうした「治安対策」を理由として収容を継続するのは、入管法(出入国管理及び難民認定法)における「収容」の位置づけからも逸脱しています。

「入国警備官は、第三項本文の場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる」
「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項

 入管法における「収容」は、「送還可能のときまで」のいわゆる“身柄”の確保のために入管に権限として与えられたものにすぎません。入管法は、違反行為に対する懲罰や制裁の権限を入管に与えているわけではありません。この点をふまえると、5月29日の上川陽子法務大臣(当時)の記者会見での発言は非常に問題のあるものと言わざるをえません。以下の法務大臣発言は、収容における人権侵害問題について仮放免を積極的に認めることがその解決になると考えるかという記者質問に対してなされた回答です。

 全国の入管収容施設に現に収容されている者は,在留資格を有しないなど法律上の在留要件を満たさず,あるいは刑法上の罪を犯したことにより,我が国での在留が好ましくないと判断された者であり,我が国から出身国に向けて速やかに送還することで収容を終わらせることが肝要であると考えています。
 特に,昨年中に退去強制手続を受けた1万3千人余りのうち470名は,刑事罰を科された者であって,その放免は社会にとって決して好ましいものではなく,一刻も早い送還を期すべきであり,出身国政府とも交渉を行うなど,速やかな送還に努めているところです。
法務省:法務大臣閣議後記者会見の概要-2018年5月29日

 問題なのは、上川氏が「刑事罰を科された者」について「その放免は社会にとって決して好ましいものではな」い、と述べている点です。刑事罰を科されたうえで入管に収容されているのは、すでに刑期を終えて刑務所などを出所した人です。「刑事罰を科された者」を「その放免は社会にとって決して好ましいものではな」いという理由で入管が拘束しつづけるのは、入管法上の収容の目的を完全に逸脱しており、収容権の濫用と言うべきです。

 そもそも、「刑事罰を科された者」の放免が社会にとって好ましくないと言うのであれば、刑務所などの矯正施設は何のためにあり、刑務官や保護司らは何のために仕事をしているのでしょうか。さきの上川発言は、罪をおかした人たちの矯正や更生にむけての指導をおこない、その社会復帰を支援するという、法務省の監督のもと取り組まれている職務・事業の意義を、法務大臣がみずから否定したものと言えます。

 入管は、仮放免をきわめて厳しく抑制しており、そのことが収容の超長期化という現状をまねいています。その仮放免の抑制が、「治安への懸念」を理由とするものなのだとすれば、それは、入管法の「収容」の目的から逸脱していることはもとより、罪を犯していない人、あるいは犯した罪についてすでに刑事罰を科された人を、いわば「予防拘禁」するということであって、けっして正当化できるものではありません。



(4)仮放免抑制のほんとうの目的はなにか?

 「治安への懸念」を理由にして収容を長引かせることは正当化できない、ということを述べてきました。

 では、入管が仮放免を現在きわめて厳しく抑制している理由は、実際のところ何なのでしょうか。最初にみたとおり、読売記事に登場する法務省幹部は、長期収容は国として望ましくないと考えているが、治安への影響から安易に仮放免を認めるわけにもいかないのだということを述べていました。しかし、仮放免についての実際の運用をみてみると、この法務省幹部の説明とどうもくいちがっているのです。

 「治安対策」として仮放免を厳しくしているのだとすれば、犯罪歴のない人の収容に長期化傾向はみられないはずです。ところが、実際の各収容施設の運用をみると、そうはなっていないのです。

 私たち仮放免者の会でも、多数の会員が再収容されており、その収容が長期化しています。以下では、刑事罰を受けたこともなければ、仮放免中にも刑事事件に関与しなかった会員が長期収容されている事例をいくつか紹介します。

 「入管にとって長期収容の目的はなにか?」でくわしく述べたとおり、2015年9月に法務省入管局長から「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題する通達が出されました。この通達をきっかけにして、東京入管をはじめ各地方入管局は再収容をひんぱんにおこなうようになりました。そのなかで難民審査での不認定処分確定が通知されて再収容されるケースも増えました。

 Aさんは、南アジア出身の難民申請者の男性(30歳代)です。永住者の資格をもつ、国籍の異なる配偶者とのあいだに2人の子ども(3歳と4歳)がいます。Aさんは、難民不認定に対して異議申し立てをおこなっていましたが、2016年2月にその棄却を通知されて再収容されました。現在、大村入管センターに収容されており、収容期間は2年8ヶ月におよびます。

 東アジア出身の女性であるBさん(40代)も難民不認定に対する異議申し立てを棄却されて再収容されました。2017年5月から東京入管に収容されており、収容期間は1年5ヶ月におよんでいます。

 行政訴訟の敗訴が確定して再収容されるケースも増えています。Cさんは、東アジア出身の40代の女性で、日本人の夫がいます。退去強制令書発付処分に対する取消訴訟をおこなっていましたが、その敗訴が確定し、2016年11月に東京入管に再収容されました。収容期間が2年になろうとしていますが、夫を残して帰国するわけにはいかないと過酷な長期収容にたえています。

 先の通達の出た2015年の秋以降は、以前であれば入管が再収容していなかったようなケースでの再収容も目立つようになりました。仮放免者には、入管の許可した住居(指定住居)に住むことや、就労しないことなどが、その許可条件として科されています。この条件への違反を理由とした再収容が増えたのです。

 Dさんは、東南アジア出身の50代男性で、現在東日本入管センターに収容されています。1年半をこえる長期収容ののち2015年8月に仮放免されましたが、そのわずか5ヶ月後の2016年1月に再収容されました。指定住居に住んでいなかったという理由です。たしかにDさんは仮放免の許可条件に違反しましたが、入管の指示にしたがって出頭しており、「逃亡」したわけではありません。再収容後の収容期間だけで、2年9ヶ月になろうとしています。

 Eさんは、西アジア出身の40代男性です。やはり指定住居に住んでいなかったとして再収容され、東日本入管センターに収容されています。Eさんの場合、河川氾濫の影響でアパートが浸水して住めなくなっため、引っ越しをしました。引っ越ししたあとに、これを入管に報告しましたが、転居の許可を事前にうけなかったという理由で2016年3月に再収容。収容期間は2年7ヶ月になります。

 東南アジア出身の40代の女性であるFさんは、就労したという理由で東京入管に再収容されました。今年9月にようやく仮放免されましたが、このとき収容期間は2年5ヶ月をこえていました。自分の生活のささやかな足しにするためにアルバイトをしたことで、これほど長い期間、監禁されて心身の不調に苦しみ、人生の貴重な時間をうばわれたのです。

 南アジア出身の40代男性Gさんも、就労を理由に2016年12月に再収容されました。収容期間はすでに1年10ヶ月。東日本入管センターに収容されており、いまだ仮放免されていません。

 もちろん、さきに述べたように、刑事罰を科されたことのある人であっても、長期収容に正当性はありません。しかし、ここに紹介した7人は、来日後、刑事事件に一度も関与したことのない人たちです。7人の例をとおしてわかるのは、「治安への懸念」から仮放免に慎重にならざるをえず、収容長期化をまねいてしまっているのだという法務省幹部の説明が、事実にまったく反するということです。入管各施設の運用をみれば、犯罪歴があるかないかにかかわらず現に収容が長期化しているのです。これは「治安への影響」を考慮した結果とは考えられないのです。

 では、仮放免を厳しく制限していることが「治安対策」のためではないのだとしたら、入管はなんの目的で収容を長期化させているのでしょうか。入管における収容は、つねに送還のための手段です。送還をこばむ人を監禁してその自由をうばい、心身に苦痛を与えて自分から帰国するよう追い込むためでしょう。法務省幹部は「国は長期収容を望んでおらず」などと言っているようですが、しらじらしいにもほどがあります。日本への在留の意思をくじき、送還に「同意」させるための手段として、法務省は収容の長期化をわざとすすめているのではありませんか。仮放免についての現行の運用のしかたをみれば、そうとしか理解のしようがないのです。

 これは、他者の意思を変更させるために、他者の心身に打撃をくわえるという手段を法務省が選んでいるということにほかなりません。いわば拷問を職務遂行の手段としているのです。これを法務大臣や法務省幹部がありのままに認めることはさすがにはばかられるのでしょう。だから「治安への懸念」があるのだという口実を世論むけに出しているのだということでしょう。



(5)結語

 さて、このように「治安」への「脅威」を誇張ないし創出するのは、国家機関がみずからの暴力を正当化しようとするさいにたびたびもちいてきたプロパガンダの手法でもあります。

 このブログでもたびたびふれてきましたが、法務省は2004年から08年までを「不法滞在者の半減5か年計画」と位置づけ、入管と警察が共同して非正規滞在外国人の集中摘発に乗り出します(注5)。この集中摘発が開始される前年、2003年の10月に、法務省入管、東京入管、東京都、警視庁の4者が、「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」を出しています。おなじ年の12月には、政府の犯罪対策閣僚会議が「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」というものを発表しました。いずれも、非正規滞在外国人の存在を「犯罪の温床」ときめつけ、その摘発・排除を正当化しようとするものでした。

 これら2つの文書にふれて、当ブログではかつてつぎのように述べました。

 このように、法務省をはじめとする当局は、「不法滞在者」があたかも犯罪の温床であるかのような偏見にみちた印象づけをおこないました。そうして在留資格のない外国人住民に対する「国民」の不安と恐怖、さらには憎悪を煽りかきたてることで、その暴力的排除(摘発と国外追放)を正当化しようとしたわけです。ある属性(この場合、外国人であることや在留資格がないこと)と凶悪犯罪を結びつけて語ること自体が差別の扇動と言うべきですが、政府と法務省、さらに東京都は、こうした差別扇動を組織的におこなうことによって、みずからの暴力に「国民」による理解と支持をとりつけようとしてきたと言えるでしょう。
仮放免者問題と強制送還について――この10年の入管行政をふりかえって - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年3月4日)

 こんにちにおいても、法務省は収容長期化問題をめぐって、非正規滞在外国人たちがまるで「治安」をおびやかす脅威であるかのような偏見にみちた印象づけをこころみていることを、本稿ではみてきました。しかし、こうして「治安への懸念」ということを口実にしながら国がなにをしようとしているのか、そのねらいを批判的にみきわめていくことが必要だと思います。




◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


《注》

1.収容が長期化することは問題であるとする姿勢は、じつは法務省が一貫して表明してきたことではあります。法務省は、長期収容は望ましくないという建前のなかで、収容長期化を実態よりも小さくごまかしてみせる統計資料を国会議員に提出していたこともあります。以下の記事を参照してください。


2.入管当局の広報としか言いようのない記事を掲載してきた読売新聞の報道姿勢については、以下の3つの記事で批判してきました。


3.不法滞在の外国人、収容が長期化 半年以上が700人超:朝日新聞デジタル(2018年9月23日05時06分)


4.以下の記事で引用した2010年7月の法務省入国管理局によるプレスリリース「退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について」、および国連拷問禁止委員会の質問に対する日本政府の回答(2011年7月)を参照。


5.2004年から08年にかけての集中摘発の結果、「不法残留者数」はこの5年間でおよそ半減するにいたります。その大多数は送還され出国したわけですけれども、他方でこの徹底的な摘発は、それぞれの事情で帰国しようにも帰国できない非正規滞在外国人の存在をあぶりだす結果にもなりました。帰るに帰れない事情をかかえた人びとについて、法務省はその一部の在留を合法化する措置をとりましたが、一方でその大多数に対しては在留を認めずに送還に固執しつづけています。このことが、こんにちの収容長期化問題を生んでいるのです。そうした歴史的経緯については、以下の2つの記事などでくわしく述べていますので、参照してください。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


関連記事(長期収容と再収容の問題について)

Wednesday, September 19, 2018

【傍聴報告】大阪入管暴行事件(第2回公判)


 大阪入管の職員らがトルコ人被収容者(当時)に集団で暴行をくわえ、右肩を骨折する負傷をおわせた事件の民事訴訟(国家賠償請求訴訟)。

 9月12日(水)15時より、大阪地裁にて、第2回の公判が開かれました。被害者で原告のMさんも出廷しておりました。

 今回は、原告の訴状に対する被告(国側)の反論がおこなわれました。「反論」とはいっても、やりとりは基本的に書面でおこなわれます。なので、書面の形式的なことがらについての質問と次回の日程調整ぐらいで今回は終わるのではないかと予想しながら、傍聴席につきました。

 ところが、公判は思いのほか刺激的なものでした。裁判官から、原告・被告双方の書面について、つっこんだ質問がいくつか出されたからです。これら質問の内容からは、裁判官が、双方の主張をていねいに読みこんだうえで公判にのぞんでいるとの印象を受けることができました。公判がすすみ最終的に、公正な正義にかなった判断がくだされることを期待したいと思います。

 次回の公判は以下の日時と場所で開かれます。可能な方はぜひ傍聴に足をはこんでください。また、注目、情報拡散をお願いいたします。

 日時:11月7日(水) 13:30~
 場所:大阪地方裁判所 810号法廷


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関連記事

Saturday, September 8, 2018

【傍聴の呼びかけ】大阪入管暴行事件(第2回公判)


 大阪入管の職員らの暴行により、トルコ人被収容者(当時)が右上腕部を骨折する負傷を負った事件。被害者のMさんが国を相手どって賠償金をもとめて提起した裁判の第2回公判が、ひらかれます。

 日時:9月12日(水) 15:00~
 場所:大阪地方裁判所 810号法廷

 今回の公判では、原告の訴状に対する被告(国側)の反論がおこなわれる予定です。

 公判のあとには、原告Mさんや弁護士も出席して報告集会もあります。

 裁判を傍聴して、入管による暴行・人権侵害を許さないという意志表示をしていきましょう。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


関連記事



Friday, September 7, 2018

【転載】「日本政府・入管は内外公約を守れ」9.18院内集会

 9月18日に、「長期収容に反対する全国ネットワーク」の主催で院内集会がひらかれます。案内を転載します。


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「日本政府・入管は内外公約を守れ」9.18院内集会

日時:9月18日(火) 午後2時~4時  場所:参議院議員会館 B103

 私たちは、入国管理局各施設に収容されている外国人や難民に面会している団体・個人です。学生が中心となり、学校の夏休みである7・8月に全国実態調査を行いました。


〈 院内集会の趣旨 〉

一、長期収容をできるだけ回避するという内外公約を守れ
 この2年間、入国者収容所各センター及び各地方入管局収容場での仮放免許可が下りづらくなり、収容期間が2年以上、3年以上の被収容者が激増しています。この長期被収容者の中には難民申請者や裁判中の人たちも多く含まれています。
 法務大臣はたびたび「仮放免の弾力的な運用により,収容の長期化をできるだけ回避する」旨の国会答弁をしています。また日本政府は国連の拷問禁止委員会の質問に対し、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいる」と報告しています。


二、日本人、及び在留資格のある外国人の配偶者に在留特別許可を
 さらにこのかん、日本人の配偶者や在留資格のある外国人の配偶者の在留特別許可が下りないケースが異常に増大しています。改定入管法が2009年7月に成立しましたが、その際、衆参両議院で在留特別許可の基準の透明化を求める付帯決議がなされました。付帯決議の趣旨は、救済すべき事案を透明化し、在留特別許可を与えるべきであるということです。しかし、付帯決議の趣旨に反し、在留特別許可の基準の運用において、この2年余りの間に厳しくなり、日本人の配偶者や在留資格のある外国人の配偶者が収容されたり、在留特別許可が下りないケースが増大しています。


 以上の二点において、独自の実態調査に基づき、院内集会を開催します。政府は、来年度より、入管局を入管庁に格上げする方針を決定しましたが、「より厳しくなるのではないか」と在留特別許可を求める配偶者を持つ日本人から不安の声が上がっています。
 議員の皆さんに、院内集会に参加して頂き、この深刻な問題を知り、政治家としての役割を果たして頂きたいと思っています。


報告者

  • 各収容施設での実態調査に動いた各地の大学生・高校生からの報告
  • 被収容者の配偶者、仮放免者と配偶者のご夫婦
  • 指宿昭一弁護士


主催:「長期収容に反対する全国ネットワーク」

Monday, September 3, 2018

長期収容の実態――大村入管センターを事例に


(1)「収容の長期化をできるだけ回避する」(法務省の公式見解)

 入管施設の長期収容について、このブログでも以下の記事などで問題にしてきました。

  1. 入管施設の収容長期化問題について――被収容者「嘆願書」によせて - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年2月28日)
  2. 入管にとって長期収容の目的はなにか? - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年6月27日)

 1の記事は、「長期収容」とはなにか、また、それがなぜ問題なのか、概説したものです。

 2は、2015年9月の法務省入管局長による通達を契機にして収容長期化が顕著になってきた経緯をおさえつつ、収容長期化などにあらわれている強硬方針を入管当局がどのような目的意識のもとに進めてきたのか、批判的に分析しました。

 1の記事で述べたように、私たちは6ヶ月をこえる収容を「長期収容」と呼んで問題にしてきました。入所時には健康だった人の多くが、収容期間6ヶ月をこえるころまでに高血圧や頭痛、不眠、胃腸の不調など、拘禁反応と思われる症状を発症するからです。入管施設での面会活動を通して私たちが把握するところでは、6ヶ月以上の長期収容により何らかの形で健康を害していない人は例外的と言っていい状況があります。

 入管施設での収容は、無期限収容です。収容の期限の定めがなく、したがって被収容者にとっては、いつ出所できるかわからないということです。また、国籍国へ送還されれば迫害などの危険のある人、あるいは家族や生活基盤をすでに日本にきずいている人にとって、いつ無理やりに送還されるかもしれないというおそれをいだきながら施設に監禁されるということは、大変なストレスです。こうした極度のストレスのもと、長期間にわたって収容を続けるということは、それ自体が深刻な人権侵害です。

 2の記事にみたように、法務省・入管当局自身も、報道発表や国連機関への説明、各入管地方局等への通達などを通じて、収容の長期化は「できるだけ回避する」べき問題であるとの認識をくりかえし表明してはいます。ところが、入管当局は、こうした公式の見解とはうらはらに、近年、収容を長期化させてきたのです。

 今回の記事では、その長期収容の実態の一端を、いくつかの統計データを参照しながら、あきらかにしていきたいと思います。

 2の記事でもすこしふれましたが、法務省は、長期収容の実態を小さくみせるような操作をした統計資料を国会議員に提出しています。問題を矮小化しようとする法務省のこうしたゴマカシに対しては、各施設に収容されている当事者たちのなかからも怒りの声があがっています。大村入国管理センターの被収容者たちは、法務省がごまかすならば自分たちで調査をおこなうと言って、みずから実態調査をおこなっています。そうした調査資料なども使いながら、この記事では、長期収容問題の実態の一端を示していきたいと思います。



(2)収容長期化問題を小さくみせる仕掛け(法務省データのごまかし)

 下の画像は、法務省が昨年、国会議員の質問に対して回答した文書にのっている表です(クリックで拡大します)。タイトルのとおり、昨年12月時点での「収容期間別総被収容者数」の収容施設ごとの数字がまとめられています。


 この表によると、2017年12月19日時点で、全国の収容施設には1386人が収容されていました。6ヶ月以上を長期収容とした場合、全国の施設で510人(36.8%)が長期収容ということになります。

 ところが、この表には重大なゴマカシがあります。表の右下に、「※各収容施設における収容期間を計上」との注釈がつけてあります。入管の収容問題について一定の知識がないかぎり、これだけを読んでも、その意味するところはピンとこないでしょう。しかし、ここに収容長期化の実態を小さくみせる仕掛けがあるのです。

 入管は複数の収容施設をもっており、その施設間での被収容者の「移収」をしばしばおこなっています。たとえば、ある被収容者が、東京入管に9ヵ月間収容されたあと、東日本入管センターに移収され、そこに2ヶ月間収容されているとします。この場合、この人は通算で11ヶ月間収容されていることになります。ところが、「各収容施設における収容期間を計上」するという、入管がおこなった計算方法にかかると、この人の収容期間はたった2ヶ月間だけだということになってしまいます。つまり、被収容者をべつの施設に「移収」することで、その被収容者の収容期間をゼロにリセットすることが可能な計算方法なのです。


 ところで、上の法務省の公表している収容施設ごとのデータのうち、大村入国管理センターについては、これと比較するのに格好のデータがあります。大村センターの被収容者たちは、2017年11月24日付で、96名の連名で「上申書」と題された文書を同センター所長に提出しています(→右の画像。クリックで拡大)。長期収容が日本政府の国際公約に反することを指摘し、仮放免によって収容長期化を回避するように求める内容です。


 この「上申書」には、96名の被収容者の署名がなされ、このうち94名についてそれぞれ通算での収容期間が記されています。法務省は11月末日時点での大村の被収容者数を101名としていますので、ほぼ全員の収容期間が「上申書」から判明したわけです。この「上申書」の日付は11月24日。いっぽう、法務省の統計資料は12月19日時点のデータですから、1ヶ月ほどの時期のずれはあり、その間の入所・出所が多少はあるでしょうが、両者のデータのもとになっている被収容者はほぼ重なっているとみなしてもよいでしょう。

 では、両者を比較した表と図をみてみましょう。


 上のグラフが法務省の出したデータ。通算での収容期間を計上した下のグラフと比べてみてください。「各収容施設における収容期間を計上する」という法務省のやり方によって、いかに収容長期化問題を実態よりも小さく見せることができるものなのか、わかります。実際には全体の80%近くいる6ヵ月以上の被収容者を、50%強と小さく見せることができるのです。また、1年半以上の被収容者は実際は30%をこえているのに、法務省のデータでは10%未満にまでおさえられています。

 収容の長期化が問題なのは、なによりも人権・人道上の理由からであって、それが被収容者の心身を破壊するものだからです。その点で重要なのは、通算での収容期間です。被収容者が別の施設に移収されるたびに収容期間がゼロにリセットされるような算出方法では、収容長期化が被収容者の心身におよぼす影響を考えるうえで意味がありません。

 入管がわざわざこのような方法で算出したデータを国会議員に提出したところには、収容長期化の実態をかくし、問題をできるだけ小さく見せたいとの意図が働いていたと考えざるをえません。



(3)被収容者たち自身による実態調査

 上の法務省のデータにごまかしがあることは、大村入管センターの被収容者たちにとって一目瞭然でした。周囲を見渡せば3人に1人はいる収容期間1年半以上の被収容者が、法務省の統計では10%にもみたないということになっているのですから。先のみえない長期間にわたる収容に日々苦しんでいる被収容者たちが、こうしたゴマカシに怒るのも当然です。

 そういうわけで、大村入管の被収容者たちは、自分たちの手で被収容者の実態調査をおこなうことにしたそうです。その調査データを以下に紹介していきます。

 まずは、収容期間別被収容者数です。さきほど、被収容者による連名「上申書」から計上した2017年11月時点でのデータをみました。大村の被収容者たちは、2018年8月時点での被収容者90名の収容期間を調査しています。両者のデータを比較してみます。



 このおよそ10ヶ月のあいだに、収容の長期化がいっそうすすんだことがみてとれます。

 2018年8月現在、被調査者90名のうち、収容期間が1年をこえている人は、66人(73%)です。全体の半数弱(43名)が1年半以上です。そして、じつに3人に1人(30人)が2年超というすさまじさです。

 国籍別の被収容者数は、以下のとおりです。


 ほかに、アフガニスタン、バングラデシュ、カナダ、カンボジア、イギリス、ラオス、タイ、トルコ、ウガンダ、スペインが1名ずつです。

 年齢構成はつぎのようになっています。



 つぎは、被収容者の日本での滞在年数です。


 大村センターは、正式名称を「入国者収容所大村入国管理センター」といいます。「入国者収容所」という名称からは、日本での滞在歴の浅い人が多く収容されているようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、被調査者90名のうち29名、じつに3人に1人の滞在期間が20年をこえています。帰国しようにも帰国できない、したがって長期収容にもたえざるをえない人たちのなかには、日本での滞在期間が長く、すでに日本にしか生活基盤がないという人も多くふくまれるのです。

 最後に、日本での在留を希望する理由です。被調査者90名が、「家族」「難民」「その他」の3つの選択肢から自身の在留の理由を答えています(複数回答あり)。

なお、大村入管センターは、現在、男性のみを収容しています。



(4)結語

 以上、大村の被収容者自身による調査データから、収容長期化問題の深刻さの一端をうかがうことができたのではないかと思います。

 大村の被収容者には、大阪・名古屋・東京などの地方入管局から移収されてきた人が多くいます。この「移収」によって収容期間をゼロにするという計算方法によって、法務省が収容長期化の実態を小さくみせるゴマカシをおこなっていたことは、先にみたとおりです。

 しかし、収容長期化問題の隠蔽は、こうした統計データのゴマカシによるものには限りません。関東・近畿などの大都市圏から離れたところにおかれた大村入管センターは、その立地ゆえに収容の長期化や処遇が比較的問題化されにくいということがいえます。関東・近畿の施設にくらべ、報道される機会も少ないし、議員が視察に行くということも少ないのです。

 いわば監視の目のとどきにくい大村センターに、大阪・名古屋・東京の被収容者を「移収」するということが、入管当局にとって、収容の長期化が問題化され批判されることを回避するという効果をもつのです。入管は、2015年からこの大村への移収をさかんにおこなうようになりました。大阪府茨木市にあった西日本入国管理センターが同年9月に閉鎖されたことにより、西日本の長期収容施設が大村収容所しかなくなったことが、移収の増えたきっかけではあります。さらに、冒頭にあげた2の記事にみたように、2015年9月の法務省入管局長通達を受けて、全国の各施設において収容の長期化がすすめられてきました。大村センターでも、仮放免の許可が非常に出にくくなっています。その結果、2014年10月末時点で20名だった大村センターの被収容者数は急激に増え、現在では100名前後で推移するほどにふくらんでいます。

 大村の被収容者たちは、さきに述べたとおり、法務省の統計データのゴマカシに憤慨して自分たち自身の手で実態調査に着手しました。大村での収容の実態を日本社会にうったえるための調査です。かれらは、調査データを、当会のみならず、全国の報道関係者、複数の国会議員らにも送っているとのことです。大村についても、メディアの報道、国会議員等による視察は必要ですし、被収容者たち自身、それを望んでいます。大村入管センターの収容の実態についても、ぜひ注目・関心をむけていただくようお願いします。

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関連記事



Monday, July 30, 2018

【傍聴報告】大阪入管職員による暴行事件(第1回口頭弁論)


 7月27日(金)、大阪入管職員による暴行事件について、国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が開かれました。大阪地裁の809号法廷には、約30人が傍聴に集まりました。

 この日は、入管職員による集団暴行の被害者であり、原告であるMさんが出廷し、意見陳述をおこないました。Mさんは、ちょうど2日前の25日に仮放免を許可されて大阪入管を出所したばかり。2015年1月に入国をみとめられず、以来じつに3年半にもわたって入管に収容されていたことになります。

 Mさんは、意見陳述を「残念なことに大好きな国である日本の政府を訴えることになりました」との言葉ではじめ、大阪入管に収容されているあいだに職員から暴力を受けて右肩を骨折したこと、リハビリの治療を大阪入管から許可されず受けられなかったこと、このために右肩に不自由になってしまったことなどを訴えました。

 また、Mさんは、「裁判で賠償金をもらっても健康な身体は戻らない」「残りの人生を大阪入管に奪われた」としつつ、「これから外国人に入管職員が暴力をしないように判決をお願いします。こんな思いをすることがないようにしてください」と述べて意見陳述をしめくくりました。

 さて、5月29日の提訴から約2ヶ月たってむかえたこの日の公判ですが、訴状に対する国側の具体的な反論はなされず、次回の期日に持ち越されることとなりました。

 公判後は、弁護団も出席して、支援者ら傍聴した人たちが参加して報告集会をおこないました。

 次回の公判は以下の日時と場所で開かれます。次回以降も、傍聴と注目、情報拡散をお願いいたします。

 日時:9月12日(水) 15:00~
 場所:大阪地方裁判所 810号法廷



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 第1回口頭弁論については、以下、報道も出ております。



 この暴行事件についての当ブログ記事としては、以下を参照してください。



Sunday, July 8, 2018

大村入管センターから届いた絵



 画像は、大村入国管理センターに収容されている方が描いた絵です(クリックすると大きくなります)。5月に、この絵の作者から公開してほしいと託されたものです。

 さまざまな問題がマスメディアで報道され、日本社会で関心を集めていますが、入管施設における収容の問題にも関心をむけてほしいとの意図をこめて描いた絵だということです。

 現在(とりわけ2016年以降)、各地の入管収容施設で、収容の長期化が深刻な問題になっています。

 長期収容問題のひとつのあらわれとして、被収容者による集団ハンガーストライキがそれぞれの入管施設で続発しています。2016年6月から7月にかけて大阪入管で、2017年5月には東京入管で、集団ハンストがありました。2018年になってからは、被収容者の自殺事件を契機とするかたちで、東日本入管センターにて、4月に120人超が参加する史上最大規模のハンストがあったところです。

 各施設でのハンストとその経過については、以下の記事でそれぞれリンクしている記事等を参照してください。


 長崎にある大村入管センターにおいても、収容長期化は深刻です。被収容者が入管当局に対し、長期収容の回避をもとめる要望書を連名でくり返し提出するという事態になっており、また、先月には九州弁護士会連合会が収容長期化を問題にする理事長声明を出しています。


 入管による「収容」とは何か、また、その「収容」の長期化がなぜ問題なのか、ということについては、たとえば以下の記事で述べたとおりです。


 昨今の収容長期化が顕著になったのは、「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題された2015年9月の法務省入管局長による通達が出されて以降です。この通達には、長期収容と再収容をつうじて非常に強硬に送還をおこなっていこうという入管の現在の方針があらわれています。法務省・入管当局がこの強硬方針にいたった経緯は、以下の記事で述べております。


 この記事でみたとおり、法務省は、仮放免者をふくむ「送還忌避者」を「大幅に縮減する」という目的で、長期収容と再収容をおこなっています。2015年9月ごろから、法務省は入管の各入管局・入管センターに対し、収容を長引かせ、また仮放免者の再収容を積極的におこなうように指示をしています。難民審査や行政訴訟中のため当面送還の見込みのない人びとも、長期間にわたり収容を解かれていません。というか、送還の見込みがないにもかかわらず収容を継続するからこそ、現在の収容長期化という問題が起きるのです。

 前掲の記事で分析しましたように、この現在の長期収容・再収容は、あきらかに、帰国強要の手段としておこなわれているものだといえます。つまり、長期収容・再収容によって、被収容者および仮放免者の心身を痛めつけて、日本への在留を断念させ、送還に応じさせよういうことを、法務省は自覚的におこなっているわけです。他者の意思に働きかけ、自分の思うような行動を他者にとらせるために、拘禁症状を発症するほどの長期間にわたり他者の身体を拘束しつづけ、精神的な圧力をくわえているのです。

 他者の意思と行動をコントロールをするための手段として、心身に苦痛を与えるということ。これは、まぎれもなく拷問と呼ぶべき行為です。先日紹介した被収容者からの手紙は、「私達は、今ここ東日本入国管理センターで入管による拷問を受けています」と書き出されていました。この「拷問」という表現は、誇張でもなければ、比喩でもありません。


 長期収容、そしてくり返しの収容は、法務省という国の機関がおこなっている拷問にほかならず、けっしてゆるされることではありません。