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Monday, June 3, 2013

同意なく一度に6本の抜歯/骨折を70日以上も放置(東日本入管センター)


  5月28日、東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の医療処遇をめぐって、申し入れをおこないました。

  東日本入国管理センターの医療体制は「破綻している」と言っても言いすぎではない状況にあります。申入書では、本人の同意なく一度に6本の歯を歯科医に抜かれてしまった事例、また足の骨にひびが入った人が70日ものあいだ事実上放置されたという事例をつうじて、センターの医療体制が現在の収容人数にみあったものになっているのか、問うております。

  申入書ではセンター側に回答をもとめていますが、センターから「回答はしない」との連絡が5月31日にありました。

  なお、センターの処遇については、4月22日、被収容者たちから、医療面もふくめて改善要求が出されており、センター側の回答を待っているところです。こちらについても、あわせてご注目ください。


  以下、今回提出した申入書です(被収容者のお名前と国籍はふせて公開します)。

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申  入  書


2013年5月28日

東日本入国管理センター所長 川村修行殿

仮放免者の会(関東)



  貴センターの医療に関する処遇の劣悪さについては、被収容者はもとより、弁護士会や、私どもをふくむNGOなどからの、たびかさなる批判と改善要求が出されてきたことは、貴職もご存じのこととおもいます。ところが、いまだ、被収容者たちのあいだからは、重病・重傷にもかかわらず、まともな診療を受けられずに放置されているという訴えがあとをたちません。
  貴センターなりに医療処遇改善の努力を続けているだろうことは否定しません。しかし、予算・人員・設備の面で、400名近い被収容者数にみあうだけの医療体制が貴センターにはそなわっていないのが現状のように見受けられます。以下にあげる2件の事例は、貴センターが医療処遇の面で、もはや破綻しているといっても言いすぎではない実態を浮き彫りにしています。


事例1
  A国籍のGさんは、1月30日、貴センター内での歯科治療において、一度に6本の歯を抜かれ、現在も痛みのために満足に食事をできない状態にあります。
  この歯科医の処置およびその前後の貴センターの対応として、まず問題なのは、一度の治療で6本もの歯を抜くという歯科医による処置が、Gさんの同意なくおこなわれた点です。たしかに、彼女は、抜歯手術がおこなわれる3週間前の診療において、歯科医から抜歯をおこなうとの方針を説明され、これには同意していたと言います。ところが、彼女は事前には「1本か2本抜く」ものとしか認識しておらず、一度に6本もの歯を抜かれて「びっくりした」と証言しております。
  1回の手術で6本の抜歯をおこなうことについては、歯科医から事前に説明があった可能性もありますが、患者につたわっておらず、結果的に、インフォームド・コンセントはなかったと言えます。当日の診療時には、職員がGさんに対する医師の説明をさえぎって、診療を待っている患者がほかにもいるので手術に早くとりかかるよう医師にうながしたとの証言もあります。
  抜歯は、敗血症ショックによって死にいたる危険性もある外科手術です。とくに、免疫力の低下した状態では敗血症のリスクが高まるため、風邪気味、睡眠不足、過労気味、発熱時の場合、手術を避けるべきだとされています。Gさんは手術時において、収容期間が1年3ヶ月の長期におよんでおり、体調が万全とは言えない状態でした。Gさん自身、手術前からよく眠れない状態が続いていたといいます。
  ところが、歯科医からは、手術にともなうリスクの内容と大きさ、また、そのリスクに対しどのような対処をとりうるのか、といった説明はなく、それどころか、どの歯を何本抜くのかという手術内容の最低限の説明すらなされないまま、抜歯という外科手術がおこなわれたわけです。これは、医療というよりも、傷害と言うべき行為です。
  さらに、手術後の貴センターの対応も、非常に問題です。Gさんは、1度に6本もの歯を抜かれてしまったため、食べ物を満足にかめず、食事に支障をきたしている現状です。ところが、貴センター職員は、入れ歯の代金に80,000円かかる、それも自費で負担するようにと彼女に言ったとのことです。
  Gさんからすると、1回の診療での抜歯は1本か2本だけと認識していましたから、一度に6本の歯をうしなうというのは想定していなかった事態です。また、事前には歯科医から、入れ歯の代金は分割で支払うことも可能だと説明されていたにもかかわらず、一括で支払うよう要求され、話がちがうと困惑しています。80,000円という金額は、彼女がすぐに用意できる金額ではなく、入れ歯がないために現在も苦痛と不便を強いられています。


事例2
  B国籍のSさんは、2月14日に運動時間に足をケガしました。同日、貴センター内での診療を受けましたが、医者の診察は文字どおり「みただけ」で、骨の状態なども調べず、鎮痛剤を出すのみの処置だったといいます。
  その後、Sさんは職員に痛みを訴えましたが、「ちょっと待って」と言われるばかりで、いっこうに診療を受けられないため、3月15日に診療申出書を提出しました。ところが、Sさんがようやく診療を受けられたのは、4月3日のことです。このとき、レントゲン撮影をおこない、右足の親指の先にヒビがはいっていることがわかりました。ところが、この日の診療でも、応急処置がおこなわれたのみで、その後も4月26日の診療までなんの処置もなく放置され、しかたがないので自分で包帯を巻いていたといいます。
  このように、Sさんは、痛みを訴えていたにもかかわらず骨折が発覚するまで50日ちかくを要し、さらに次の診療まで20日間以上も放置されたことになります。
  このSさんのケースからあきらかなのは、貴センターの外科医療の体制が破綻しているという事態にほかなりません。あとでふたたび触れるように、貴センターの複数の被収容者からは、外科医の診療のある日は月に1日しかないとの証言を得ています。現在約400人を収容している貴センターにあって、これはいちじるしく不足しているものと言わざるをえません。
  収容所内での診療が不足しているならば、早急に外部の診療機関で診療できるようにする必要がありますが、Sさんに対してはそれすらなされていません。


  以上、貴センターが医療処遇の面で、現在の収容人数を維持するのに必要な体制にはほど遠いことを示す事例をあげてきました。しかも、GさんとSさんのケースは、氷山の一角であり、また、医療処遇の劣悪さについての訴えは、歯科と外科にとどまりません。
  以下は、複数の被収容者らからの聞き取りによって私たちが把握している、貴センターの医療体制の現状です。

(1)歯科医の診療は、週に1日(午後のみ)。1日の診療数は15名程度で、1人の患者にかける時間は、抜歯以外の処置では5~10分程度。また、それぞれの患者は治療の間隔が、3週間から4週間あいてしまう。
(2)外科医の診療は月に1日。
(3)皮膚科医の診療も月に1日。痔を診る医者(肛門科?)の診療も月に1日。
(4)内科医の診療は週に2日。
(5)精神科医の診療日は月に2回。これと別にカウンセラーが週に1回来ている。
(6)収容のストレスのため生理不順等の被収容者が多数いるが、婦人科医の診療日はなし。

  (1)について、これでは歯科の治療を継続的におこなうことは事実上不可能と言えるでしょう。一度に6本の抜歯をおこなうといった、通常では考えられないような性急な処置がとられたのも、患者数に対して診療体制がまったく追いついていないという状況のためではないでしょうか。
  (2)の外科医の診療についても、先にみたような、骨折した患者が70日間以上も事実上放置されるといった事態が生じるのも必然的と言えるでしょう。もっとも、たとえ収容所内での外科診療が現状の状態であっても、外科医不在時にけが人を迅速に外部の診療機関に連れていく体制が十分にととのっているならば、大きな問題は生じないかもしれません。しかし、先の事例2のような事態が実際に生じているのは、必要な外部診療を実施するための人員がまったく足りていないことを示しています。
  外部診療のための体制の不備は、外科にかぎらず、所内の診療では対応できないあらゆる病人・けが人の生命と健康を危険にさらすことになっています。最近でも、重病者の外部診療を要求しての被収容者による集団での申出書提出や帰室拒否等による抗議が頻発していることは、貴職らもご存じのとおりです。
  また、事例1のように、患者本人への十分な説明がおこなわれないまま、同意のない医療行為がおこなわれていることも、きわめて深刻な問題です。患者の身体にとりかえしのつかない影響をおよぼすこともありうる手術や投薬においては、リスクもふくめて治療方針をきちんと説明したうえで、患者本人の選択と同意にもとづいて治療をおこなうべきことは、言うまでもありません。貴センターには、日本語での意思疎通が得意ではない被収容者も多数いるわけですから、医師の説明を患者につたえられる能力をもつ通訳を同席させるなど、インフォームド・コンセントが十分におこなわれるための条件を整備することも、欠かせないはずです。


  以上、述べてきましたように、貴センターの医療処遇は、つぎの3点において、現在の被収容者数にみあった体制にないと考えざるをえません。

(a)所内での診療を担当する医師が不足していること。
(b)予算・人員いずれかの深刻な不足により、外部診療が十分になされていないこと。
(c)時間的また通訳等の人的な不足から、最低限のインフォームド・コンセントすらなされないまま、患者を危険にさらす医療行為がおこなわれていること。

  以上3点につき、まず、貴職が現状をどのように認識・評価しているのか、ご回答ください。また、貴職が問題があると認識・評価している点につき、具体的にどのように改善していくのか、その方法と計画をご回答ください。


以  上

 
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