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Sunday, December 1, 2019

入管庁が仮放免者による「殺人未遂事件」をでっちあげ 資料捏造問題

 出入国在留管理庁(入管庁)が、入管施設に収容している外国人について虚偽の事実を掲載した資料を公表していたことがわかりました。石橋通宏参議院議員が11月28日の国会質疑(厚生労働委員会)であきらかにしました。

 問題となっているのは、「送還忌避者の実態について」と題された資料で、10月1日の法務大臣記者会見において記者に配布され、法務省のウェブサイトにも公開されていたものです。この資料は、「送還忌避被収容者の実態」「被退令仮放免者の実態」といった項目からなり、送還を拒否している人の難民申請の状況、過去の犯罪歴などについての情報をのせています。

 石橋議員が追及したのは、この資料の5ページ、「送還忌避者の実態②~被退令仮放免者が関与した社会的耳目を集めた事件~」にあげられている「事例4」です。



 資料は「警察官殺人未遂事件」となっていますが、これは虚偽です。

 私たちは、ここで「警察官殺人未遂事件」の「加害者」とされている方が現在入管施設に収容されているCさんであることを、資料に記された事件発生年月・場所などから特定し、ご本人と面会して話を聞くことができました。たしかにCさんは殺人未遂・銃刀法違反・公務執行妨害の容疑で逮捕されていますが、殺人未遂については起訴にもいたらず、公務執行妨害については無罪、銃刀法違反についてのみ有罪・執行猶予という判決が確定しています。

 つまり、この事例において、「殺人未遂事件」という事実はありませんし、被害者の存在しない銃刀法違反についてCさんを「加害者」と呼ぶのもまったく不適切です。

 さて、石橋議員の追及に対して、宮﨑政久法務大臣政務官は、資料の問題の箇所は、捜査機関から入管当局になされた通報にもとづいて(つまり、Cさんが逮捕・勾留された時点での情報をもとに)書かれたということを述べています。刑事裁判開始前に資料は作成されており、その後の確定した判決結果の確認をこころみることはしていなかったのだ、と。そのうえで政務官は、事実を歪曲したり、犯罪事実を誇張する意図はなかったとしています。

 しかし、入管庁が資料の作成・公表にあたって、確定した判決の内容(銃刀法違反のみで有罪)を確認していなかったとはとうてい考えられません。

 逮捕から半年後の2018年2月に判決が言い渡され、Cさんの身体は検察から入管局へと引き渡されます。このとき以来、Cさんは入管施設に収容されており、資料が公表された2019年10月においても、入管によって身体を拘束されていました。入管庁がみずからの施設で身体を拘束しているCさんについて、確定した判決の内容を知らず、逮捕当時の容疑のひとつであった「殺人未遂」では起訴すらされていなかった事実を知らなかったわけがないのです。

 とすると、石橋議員が指摘するように、入管庁は、仮放免者が悪いことをしているかのような誘導・宣伝をするために、虚偽の事実を書き込んだ資料を公表したと考えるほかありません。

 かりに、ありえないことですが、百歩ゆずって入管庁の職員が、確定した判決の内容を知らずにこの資料を作成したのだと仮定しましょう。そうだとしても、裁判開始前のまだ捜査中の段階で「殺人未遂」の容疑がかけられていたという事実をもって、まるで仮放免者が凶悪事件の「加害者」となったかのように宣伝する資料を作成するなど、決定的に人権意識を欠いたきわめて悪質な行為であって、けっして容認できるものではありません。

 前回の記事で述べたように、現在、入管庁は「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げ、いま以上に強引な送還を可能にする制度変更を議論しようとしています。当事者である被収容者・仮放免者の声を聞く機会をもうけることなしにです。

 専門部会の第1回会合(10月21日)では、この「送還忌避者の実態について」が入管庁より部会のメンバーに配布されたということです。送還をこばんでいる人びとについて、虚偽の事実によってネガティブな印象をはりつけようとする資料をもとに議論がすすめられるのは許されることではありません。入管庁の配布した資料の捏造があきらかになったことについて、専門部会の部会長と委員諸氏がどのように対応するのか、注視していきたいと思います。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 石橋議員による質疑の動画は、以下のリンク先でみれます。

参議院インターネット審議中継
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=5524#4481.4
(1:52:15ごろから入管庁資料についての質疑がはじまります)

 入管庁資料「送還忌避者の実態について」は、法務省サイトの以下リンク先でPDFファイルで公開されていましたが、28日の石橋議員の質問のあと、その日のうちに削除されたもようです。

法務省:送還忌避者の実態について
http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri09_00053.html

 法務省が理由の説明なしで資料を削除したことは、問題追及をさけるための隠蔽を意図したものとみなさざるをえません。入管庁が事実を捏造した資料を作成・公表したという事実は重く、問題の資料「送還忌避者の実態について」は広く批判的に検証される必要があると考え、参照できるように以下のリンク先からコピーをダウンロードできるようにしておきます。

https://bit.ly/2q1PHT5

 なお、一見して分かるように、この資料では、「送還忌避者」がいかに法に従わず、凶悪な犯罪を行い、円滑な行政の運用を妨げる存在であるか、といったことがこれでもかと強調されています。法務省がこの資料を公開した意図はあきらかだと言っていいでしょう。

 このたび発覚したのは、あたかも「送還忌避者」が日本社会にとって危険な存在であるかのように喧伝するこの資料において、法務省が虚偽の事実をでっちあげることすらしていたということであって、これは行政機関としての信頼を失墜させるきわめて重大な問題です。法務省・入管庁は、世論を誘導するために事実を捏造した資料をばらまくようなことをしたわけです。それでいて外国人に対しては「偽造旅券はダメ」だとか「申告内容に虚偽が含まれていたから在留資格を取り消します」だとかどの口で言えるのでしょうか?

 法務省は、虚偽の資料が作成・公表されるにいたった経緯を徹底的に調査するとともに、責任者を厳正に処分すべきです。


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