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Sunday, February 16, 2020

ハンスト抗議者の再収容をやめるよう申し入れ、東日本入管センターに(2月5日)


1.ハンスト抗議者への懲罰的な再収容

 これまで数多くの報道もなされ、このブログでも報告してきたとおり、茨城県牛久市にある入管施設、東日本入国管理センターでは昨年5月より長期収容に抗議しての被収容者たちのハンガーストライキ(ハンスト)が断続的におこなわれてきました。昨年6月に長崎にある大村入管センターで食事を拒否していたナイジェリア人被収容者が餓死するという事件があり、これ以降、東日本と大村の両センターでは、ハンストで体調の悪化した被収容者を「仮放免」という制度で出所させる措置をとるようになりました。ところが、こうしていったん仮放免された人を、入管は2週間といった異例の短期間で再収容していることも、報道等が出ているとおりです。

 2週間だけ仮放免して再収容するという、この入管のやりかたは、前例のないきわめて奇妙なものです。しかも、抗議のハンストをおこなった人については、仮放免中の居住地がどこであるかにかかわらず、出所した元の施設に再収容するというこれもまた異例なやり方を入管はとっています。たとえば大村センターから出所した人は、仮放免中の住所が関東地方であっても、東京入管で拘束しながらもそこで収容せず、わざわざ飛行機にのせて長崎の同センターまで移送して再収容しているのです。たんに再収容するだけならば東京入管でもよいものを、わざわざ護送する職員のぶんもふくめて航空券代をかけて長崎まで移送しているわけです。

 こうした入管のやりかたに対しては、抗議者本人および周囲の被収容者を威圧・恫喝する見せしめのためのものだとして、被収容者たちの抗議をさらにまねくことにもなっています。短期間の仮放免後に再収容されても、またハンストを再開するひとも少なくないのです。

 2人のイラン人、マジドさん(52歳)とサファリさん(51歳)(※注)は「ハンスト→2週間の仮放免→再収容」を3回くりかえし、現在、3たび東日本センターに収容されています。マジドさんは1月16日、サファリさんは同21日に東京入管に出頭したところ仮放免期間更新を許可されずに収容され、その日のうちに東日本センターに移収されました。

 ふたりとも、くりかえしのハンストのため、心身ともに衰弱しています。私たちは、 2月5日(水)にマジドさん、サファリさんに面会して体調などを聞いたうえで、東日本入管センター総務課に、ふたりを再収容前提ではない仮放免をするよう口頭で申し入れをおこないました。



2.マジドさんとサファリさんの健康状態

 5日に面会したさい、マジドさんは車いすを押されて面会室にやって来ました。腰から左足にかけてしびれがあり、その部分の感覚もあまりないのだといいます。医師の診察を求める申出書を入管に提出したが、まだ受診にはいたっていません。

 マジドさんは、昨年6月上旬、この時点で収容期間が2年4か月という超長期におよんでおり、これに抗議してハンストを開始。7月9日に仮放免されたものの、2週間後に再収容。ふたたびハンストをして、10月16日に仮放免されますが、同28日に再々収容。またハンストをおこない、12月26日に仮放免され、翌1月16日にまたまた収容されて現在にいたります。食欲はあまりないが少し食べているということで、今はハンストを停止しています。

 くりかえし3度ものハンストをしたあとでは、ハンストをやめても体調がなかなかもどらないということで、表情や顔色にも深く疲労し衰弱した様子がうかがえましたし、自力での歩行が困難であるマジドさんが収容にたえられる状態とはおもえません。

 サファリさんも、マジドさん同様、ハンストをして3度(昨年7月と10月、今年1月)仮放免されましたが、いずれも2週間ほどの短期間で再収容されています。昨年12月ごろから、固形物を食べようとすると嘔吐するようになり、現在もコーンスープと栄養ドリンクといった流動物がかろうじてとれる状態です。仮放免中にうつ病と診断されており、またうつ病に起因する拒食症との診断もされています。

 サファリさんは面会室で腕をまくって左前腕を見せてくれました。固いもので引っかいたような細長い傷が複数走っていました。自分で傷つけたと思われるものの、本人はその記憶がないのだといいます。2月2日の夜中に居室で自分のひたいを壁にぶつける行為をくり返していたのはおぼえているが、その後の記憶がなく、翌日目が覚めてから、腕の傷に気がついたとのことです。記憶がとんでいるのは、サファリさんが相当に強力な睡眠薬など向精神薬を処方されて服用しており、その副作用ではないかと思われます。これほど強い作用のある向精神薬を必要とし、本人の記憶がとんでいるあいだに自傷行為をしてしまうのは、収容可能な心身の状態とは言えないでしょう。



3.医療態勢の不備

 サファリさんは、3度目の2週間仮放免ののち1月21日に収容された東日本センターで精神科医の診察を受け、1週間点滴による栄養補給をするように指示されました。診察の翌日の24日(金)から点滴治療が開始されましたが、つぎの25日(土)と26日(金)はセンターに医師や看護師が不在であるという理由で点滴がされませんでした。点滴での栄養補給が必要だと医師が判断した患者が、2日間これを受けられずに放置されたわけです。サファリさんについて、その病状に対応する医療態勢が東日本入管センターには欠けているのであり、この点でも収容を継続できる状態ではないと言うべきでしょう。

 マジドさんは、うえに述べた腰から左足にかけてのしびれの症状について、医師の診察を求める申出書を入管に提出しましたが、それから4日以上経過した5日(水)の時点でまだ受診にはいたっていませんでした。自力での歩行が困難で移動に車いすを必要とする状態になってすら、すぐに診療を受けられずに何日も放置される。マジドさんの健康状態からみても、東日本センターが医療態勢の面でこれに対応する能力を欠いているのはあきらかです。



4.なんのための収容か?

 マジドさんとサファリさんの収容は、入管業務の観点から言ってもまったく無意味に身体を拘束してその自由をうばうものと言えます。

 入管の収容は、送還のための身体拘束を目的にしたものです((「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項)。したがって、送還の見込みがたたないひとを収容し続けるのは、入管の退去強制業務の観点からしても意味がありません。

 マジドさんの場合、2017年2月に入管施設に収容され、その直後に難民認定申請して以来、いまだ難民調査官からのインタビューもおこなわれず、審査は進んでいません。難民審査中は、入管法で送還が禁じられています。したがって、マジドさんは、3年ものあいだ送還不可能なことがあきらかな状態で、収容され続けていることになります。しかも、現在一次段階にある難民審査においてかりに難民として認めないという決定が出ても、この決定に対してマジドさんは法務大臣に審査請求をおこなうことができます。審査はまだまだ時間がかかることが見込まれます。

 サファリさんも、昨年8月に難民申請し、まだインタビューも実施されておらず、審査はまだ一次段階。建前上は送還を目的とした収容でありながら、送還は不可能です。なんのために収容されているのか、わけがわからないのです。

 なお、難民であることの立証は難民申請者みずからがおこなわなければなりません。外部との通信が困難で行動のいちじるしく制約された施設に難民申請者を入管が長期間収容するのは、この立証作業を妨害するものと言えます。

 また、マジドさんとサファリさんに関しては、長期でなくても、そもそも収容して身体を拘束することに意味があるのか、はなはだ疑問です。マジドさんサファリさんとも2010年から16年まで、仮放免されていました。ふたりとも6年間の仮放免中は、東京入管に求められたとおりに1~2か月ごとの出頭に応じてきました。昨年7月以降、ハンストをおこなって2週間ほどの仮放免で出所した際も、再収容されることは十分に予想されましたが、マジドさんもサファリさんも3度にわたって出頭して収容されたわけです。

 さきに述べたとおり、送還のための身体拘束(法務省らの用語では「身柄の確保」といいます)が入管法上の収容の目的です。つまり、「送還までのあいだ逃げないように拘束しておく」ための収容です。ところが、マジドさんやサファリさんに関しては、「逃亡のおそれ」があるとはとうてい言いがたいわけです。しかも、入管にとって、当面送還できないこともはっきりしています。

 このように、マジドさんとサファリさんの健康状態が悪化していることにくわえ、ふたりを収容しつづけているのは、入管が法律によって与えられている収容の権限を逸脱したもので、心身をいたぶることを目的としているとしか考えられないとして、再収容を前提としない通常の仮放免を早期にするよう、東日本入国管理センターに申し入れました。


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 アムネスティ日本が、法務大臣と収容・送還に関する専門部会に対し、以下3点を要請する署名をつのっています。

  1. 抗議活動を行う収容者を仮放免で釈放し、短期間の後に再収容するのはやめること
  2. ノン・ルフールマンの原則をいかなる場合でも遵守すること
  3. 出入国管理上の収容は送還の準備に必要な短期間に限るよう、収容期間に上限を設けること

 賛同される方は、リンク先から署名をお願いします。期間は3月31日までとのことです。




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※注
 マジドさんについては、当ブログの以下の4つの記事で「Aさん」として紹介したことがあります。マジドさん本人から名前を公表してもよいとの承諾をえて、今回記事で本名で表記します。サファリさんについて、本人の承諾のもと、本名で表記します。



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