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Thursday, July 25, 2013

【転載】「日本社会が負うべきつけの精算」(『日経新聞』より)

  1ヶ月あまり前の記事ですが、『日本経済新聞』(以下、『日経』)が、非常に的確で公平な記事を掲載しているので、これを転載します。

  『日経』は、5月31日に仮放免者の会と「仮放免者に在留資格を!」弁護団が共同でおこなった「第1回仮放免者一斉再審申立」も取材しており、このときの記者会見でのやりとりも記事に反映されております。

  記事は、人道的な観点だけでなく、権利侵害という観点から仮放免者問題に焦点をあてており、また、「不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた日本社会」の側の責任も問う内容となっております。

  いっぽう、法務省はもっぱら非正規滞在外国人の側の「不法」を問い、「不法」なのだから退去強制を命じるのは法にもとづいた措置であり、あるいは反対に人道上の理由から在留特別許可を与えて滞在を合法化するとしても、それは法務大臣の裁量の問題であるというような主張をつねにしてきました。

  しかし、まさしく『日経』の記事が問うているように、「不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた」のはだれなのか。また、日本社会や日本の産業界が「不法就労者」を利用するためにも、それは法務省・入管当局の関与(「不法」に対する摘発をゆるめたり「厳格化」したりといったこともふくめ)なしには不可能なのであって、入管行政もまたこの仮放免者問題において責任を問われるべき立場にあるのではないか。

  そういったことを、私たちも、このブログもふくめてこれまで問題にしてきたところです。

  7月6日には、法務省は専用チャーター機をつかってフィリピン人75人を強制送還しました。


  送還された人の多くは、長期にわたり日本で生活してきた人たちであり、まさしく日本社会が「不法就労者と知りつつ利用し」てきた人たちであるわけです。そうした「日本社会が負うべきつけの精算」をあべこべにも非正規滞在外国人の側に一方的に負わせたのが、今回の一斉送還であると言うことができ、その不当性はあきらかです。

  以下、転載します。


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新時代の入国管理⑦
人道配慮、見えぬ線引き

  不法入国や不法残留で退去強制(強制送還)処分が確定したものの、母国の事情や日本人家族との関係などから帰国できず、なお在留資格を求め日本社会で暮らす外国人がいる。収容先の入国管理施設からの仮放免中で、就労はできず健康保険適用もない。

  その数は昨年末で約2600人。うち21人が5月末、法務大臣に対し審査のやり直りを求め一斉に申し立てをした。

  テレビドラマ「おしん」に共感し来日して23年、仕事中の事故で障害を負ったイラン人男性もいる。支援する指宿昭一弁護士らは「真面目に暮らしており、放置しているのは人道上許されない。あきらめて帰国させようとしているのではないか。当事者の実情を理解していない」と指摘する。

  入国審査官の退去強制手続きの過程で判明した事情によっては、法務大臣から人道上の配慮による在留資格が与えられる場合がある。在留特別許可だ。2004年に治安対策から推定25万人の不法滞在者を5年で半減させる計画が打ち出されたが、その間の特別許可は計5万人弱に及ぶ。計画は「合法化」への切り替えで達成している面もある。

  日本人の国際結婚はここ数年は低下傾向だが、なお結婚全体の4%前後。特別許可も日本人や永住者との結婚関係の場合が多くを占める。不法残留の外国人夫婦でも子供が成長していると教育の観点から認める例もある。

  法務省は在留特別許可を分かりやすくし、出頭を促すためにも「ガイドライン」や事例を公表してきた。ただ「基準ではない。あくまで国の裁量」(入国管理局審判課)という立場で司法もこれを容認している。

  一般に駆け込み結婚は認められにくく、不出頭は不利になる。外国人専門の川本祐一弁護士は「長年同居してきた事実婚夫婦が自主的に出頭しても不許可が多い中で、同居の実績がないのに、摘発された不法滞在外国人と永住者のカップルが許可されることもある。判断が外から理解できない」と指摘する。

  「言い分が本当に理解してもらえたのか」。当事者や支援者らにも検証ができにくい。10年には出国を拒んだガーナ人男性が強制送還の護送中に死亡。護送送還が中断し、長期収容者と仮放免者が増加した事情がある。今年に入り護送による強制送還は再開されている。しかし不法就労者と知りつつ利用しようとしてきた日本社会が負うべきつけの精算は済んでいない。

『日本経済新聞』(夕刊) 2013年6月17日(月曜日)




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