東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の被収容者による連名要求書を4通、公開します。それぞれ、2月10日、3月5日、4月21日、4月25日に8Aブロックの被収容者が所長あてに連名で提出したものです。
要求書は、心身を破壊する長期収容をやめること、また劣悪な医療処遇の改善などをおもに求めています。医療について要求書が問題にしているのは、診察にいたるまで時間がかかりすぎる(申請してから数週間から1ヵ月以上もかかる)ことや、職員(入国警備官)が病人について「様子をみる」などと称して勝手な医療判断をおこない、医師や医療機関につなぐという職務をおこたっていること、各人の病気におうじた治療や病因の精査がおこなわれず鎮痛剤や精神安定剤を場当たり的に投与するのみであることなどです。
これらの要求書は、人間を収容する資格を完全に欠いているとしか言いようのない、東日本入管センターのずさんな医療処遇の実態を具体的に伝えております。法務省・入管当局はこうした収容施設での人権侵害を温存してきており、その結果、収容中あるいは出所後まもなく命を落とす人も少なくありません。マスコミ報道などで問題化された死亡事件だけにかぎっても、2013年以降に4件もあります(「入管収容施設の医療問題について――ロイター記事の紹介とリンク集」のリンク先のページなどを参照してください)。ただし、この4名は、この間に入管がその収容施設の劣悪な処遇によって死に追いやった犠牲者の「一部」と言うべきです。
いっぽうで、これまで各地の入管収容施設では、被収容者たちが、自身や仲間の命を守るために団結して闘ってきたという事実もあります。8Aブロックによる一連の要求書も、その闘いの歴史のなかに位置づけられるものです。3月5日と4月21日提出の要求書は、それぞれ重病人の名前をあげて、早期に出所させるよう8Aブロック被収容者が連名で一致して入管側に要求したものです(ここであげられた2名の重病の被収容者は、この後、仮放免を許可されてすでに出所しました)。
こうした仲間の被収容者たちによる強力な抗議をふくめた働きかけのおかげで、ぎりぎりのところで入管に殺されずにすんだ、少なくない数の被収容者が存在するであろうことは、確実です。それは、入管側からみれば、被収容者たちが抗議してくれたおかげで「殺さずにすんだ」ということにほかなりません。
入管は、被収容者の抗議、とくに集団的(かつ非暴力的)な抗議に対して、しばしば暴力的な制圧をもってこれにこたえてきました。しかし被収容者たちによる抗議がなければ入管はもっと多くの被収容者を死にいたらしめてきただろうということは、まちがいありません。東日本入管センターや東京入管、大阪入管など収容施設の歴代の所長・局長をはじめとする幹部のみなさんは、そのあたりを正しく認識し、自分たちの自発的意思と能力によっては被収容者たちに必要な医療を提供してその生命と健康を守る努力をしてこなかったこと(また、「被収容者が死なないようにつとめる」という、本来はみずからが果たさなければならなかったはずの仕事を被収容者たちに肩代わりさせてきたこと)を大いに恥じるべきです。
以下に、8Aブロック被収容者による4通の要求書を掲載します。
[ ]内は、引用者による注釈・補足などです。掲載にあたって誤字・脱字などを改めたところがあります。本文中で実名で表記されていた人名は「Aさん」「Bさん」と匿名表記にあらためました。
同じ東日本センターの1Bブロック被収容者が4月8日にやはり連名で提出した要求書、また、1Bと8A両ブロックの要求書提出を受けて仮放免者の会(関東)としても同センターに申し入れをおこないました。こちらもあわせてごらんください。
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【2月10日付 8A要求書】
所長へ。
こんにちは。収容施設に収容されている収容者たちのここから元気で出られるように診察のこと、病気のこと、医療のこと、ちゃんとやってもらいたいです。みなさん法律に従っていろいろ考えてやっていると思います。それでももっとやらなければならないことがいっぱいあります。
1.診察のこと。
皆さんは病気になった時はいつでも病院行って診察を受けることができますが、ここで収容されている収容者たちは何一つできません。
診察を受けるためにアプリケーション[注:申請書]書いて何週間も待たなければならない。待つ間に痛み止めしかありません。できるだけ診察を早めに受けたいです。
皆さん血液検査の時は前日に検査を受けたい人からサインをもらって次の日に朝一番に先生が来て一人一人呼び出してすぐやっています。それと同じようにやればできると思います。収容者たちが皆一斉にアプリケーション書いてるわけでないんだから、一日で20-30人アプリケーション書いても十分に診察することができると思います。医者の仕事は何なんですか。病人を診るのは仕事でしょう。何週間待たせれば気がすむんですか。
2.病気のこと。
いつだれがどんな病気になるか誰にも分かりません。いつか誰かが病気で死ぬかもしれません。だから診察を早めにちゃんと受け[させ]てもらいたいです。何週間後にようやく診察を受けた時には治っているように見えるんですが本当はどんな病気がどんな進化しているかわかりません。早く診察を受けてその病気に合う薬を出してもらいたいです。何でもかんでも痛み止めじゃ大変苦しいです。痛み止め飲んで何一つ治りません。このままじゃここにいる人たち病気になるだけです。
あとは薬の説明書がほしい。外の病院はちゃんと説明書がついて来ますが、入管の薬はついて来ないです。これはなぜですか。薬の名前書いた紙一枚もらっています。それで何の薬を飲んでいるかが分かりません。信用できません。もうちょっとちゃんとやってもらいたいです。
3.医療のこと。
診察を早めにうけることでその病気に合う薬を飲むことで早く治すことができると思います。どんな重い病気か、診察を受けないと分かりません。それでその病人の病気が自分たちの手に負えないようになるとすぐ仮放免で出るようにしています。
その人は外に出てどうやって治療しますか。仮放免で出て仕事もできない。保険にも入れない。どうやって治療しますか。
皆さんは何もしてくれないでしょう。ここから出たらあなたたちには関係ないからどうでもいいでしょうね。
あなたたちにもあなたの帰りを待っている家族、子どもたちもいるはず。それと同じようにここから元気に出て来る日待つ家族、子供がいる人たちいっぱいいます。
だからこそ皆が元気に出られるようにちゃんとやってもらいたいです。
よろしくお願いします。
8Aブロックみなさん28・2・10
[被収容者39名の署名――(省略)]
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【3月5日付 8A要求書】
所長へ。
こんにちは。Aさんのことをお願いしたいです。
彼の病気のこと、収容されてから病気になって今は歩くこともできないので、できれば彼を早めに出所させてもらいたいです。ここ東日本入国管理センターの医療では彼の病気を治療することが多分できないと思います。なぜなら病気になってから何か月経っていますが何一つ変わってません。色々な薬、鎮痛剤飲んでいるんですが何一つ治ってません。治るより悪化しています。色々な薬、鎮痛剤のせいで(6-7種類の薬)今胃が痛むようになりました。本当に大変苦しいです。
私達には何もできません。彼のために手紙を出しています。
彼は仮放免の申請を申出しているんですが、一日でも早く出所させて欲しい。ブロック8A皆さんの希望です。
よろしくお願いします。
28・3・5
[被収容者36名の署名――(省略)]
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【4月21日付 8A要求書】
東日本入国管理センター所長殿。
こんにちは。Bさんのことをお願いしたいです。
彼は病気で大変苦しんでいます。できれば彼を早めに出所させてもらうことを私達が強く希望しています。私達彼の病気のことをあまり知りませんでした。以上病気あること、薬を飲んでいることを知っていましたが、そこまで重症と思いませんでした。それである日のできごとで(2015・4・3)私達が彼の病気の症状と病気で苦しんでいることを知ることになりました。その日の午前中に彼が体調不良を訴え担当さんに報告し、担当さんたちが彼を車椅子に乗せて連れて行きましたが、ただブロックから出して担当さんたちの事務室の前に行ってそこで2人の担当さんが対応していました。強い安定剤飲んでもらって肩に毛布をかけて背にマッサージしていました。もう一人の担当さんが話をかけている様子が本当に馬鹿みたいに見えました。彼は日本語、英語が話せません。何を話しているかを分かりませんが、どうやって通じ合っているかを理解できませんでした。通訳出来る人がいるのに[注:8AブロックにBさんと同じ言語を話す被収容者が当時いた]本当にひどいです。貴方たちと同じ人間です。やるべきことをちゃんとやってほしい。
それで私達一人の担当さん呼び出して話を聞いてみました。何で救急車を呼ばないのですかと聞きました。担当さんが今ちょっと様子を見ていますと答えました。もう一回聞きました。もし担当さんたちの誰かが体調不良を訴えた時はすぐ救急車を呼びますよねと聞きました。担当さんが「はい」と答えました。収容されている私達は貴方たちと同じ人間です。動物ではありません、人間と同じ扱いしてほしい。もしその様子を見ている間にその人が死んだらどうなるんですか。入管は責任を取りますか。その人の家族はどうなるんですか。彼は牛久に来てから深夜の時間に今までに20何回も同じことを、体調不良を訴えていますが何もしてくれないです。強い安定剤を飲ませてマッサージをして部屋にもどすだけです。このままだと彼はいつ死んでもおかしくない状況であります。入管のやり方は本当にひどすぎると私達が感じています。私達には何もできません。みんなで話し合って手紙を出しています。だから彼のために早く出所させてほしいと私達が強く希望しています。よろしくお願いします。
8Aブロック皆さんより。28・4・21[被収容者43名の署名――(省略)]
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【4月25日付 8A要求書】
東日本入国管理センター所長殿。
要 求 書
こんにちは。ここは東日本入国管理センターに収容されている収容者たち私達はあなたたちと同じ人間であることを忘れないで欲しい。世界人権宣言の第一条、第二条、第三条、第五条、第六条、第七条などなど世界人権宣言に公布していますが、人権のこと何一つ守っていません。私達は動物ではありません。あなたたちと同じ人間です。人間と同じ扱いして欲しいと改善を強く希望しています。
1.仮放免について。
東日本入国管理センターに収容されている外国人私たちは一人一人がそれぞれの理由で帰国できない、帰国しない、日本に長い年住んでいる、家族が日本にいる、妻、子供が日本に住んでいるなどなどの理由で日本に残りたい気持ちでいっぱいです。それでも入管は収容されている私たちを長期間収容しています。私たちは収容施設の収容生活が本当に大変苦しいです。一番大変なのは病気になっている人たちです。だから私たちは普通の生活がしたいです。そのために仮放免の申請を提出しています。私たちは仮放免の申請を提出するためには不許可ではなく、許可を得るために多くの方々の努力を得て仮放免の申請を提出していますが、不許可になったときはなぜ不許可になった理由を何一つ教えてくれません。私たちと仮放免に係わる多くの方々が不愉快に思っています。なぜ教えてくれない[のか]今一意味が分かりません。
それは私たちの問題であります。何がだいじょうぶ何がだめ、それを個人個人にきちんと教えることを望んでいます。それでもし配偶者日本人の場合は[入管は]速やかに手続きを進めて4-5ヵ月(もっと早いかもしれない)[で]出所させています。
これはなぜですか。日本人なら人間、日本人じゃない外国人なら人間じゃないですか。入管にとっては私たち外国人は何に見えるんですか。私たちはあなたたちとおなじ人間であります。
仮放免許可申請書には、
などなどの種類を多くの方々の努力を得て仮放免の申請を提出していますが、結果の報告が2ヶ月ぐらい待たせるのは長すぎると思っています。70日過ぎて結果が出る人も結構います。たしかにいろいろな審査、確認することがいっぱいあると思います。それでも一日でも早く2ヶ月ならその2ヶ月以内に必ず結果を報告して欲しいと希望しています。収容施設に収容されている私たちは何でこんな長期間に収容されないといけないんですか。収容されてから一年過ぎている人は結構います。
- 申請理由
- 身元保証人作成の身元保証書
- 身元保証人の住民票
- 身元保証人の納税及び収入に関する証明書
- 身元保証人の資産関係に関する証明書
- 許可後の予定住居、関係者の連絡先
私たちは容疑者ではありません
ここは刑務所ではありません
ここはあくまで一時的収容する単なる施設であります
それでも入管は収容されている外国人私たちに対しこの収容施設は
などの条約、規則を無視し、私たちを帰国させるための長期間収容し、体力的に精神的に追い込むための収容施設であります。
- 世界人権宣言の条約
- 難民の地位に関する条約
- 被収容者処遇規則
私たちはただ家族と、妻、子供たちといっしょに普通の生活がしたいです。
収容施設の生活が本当に大変苦しいです。いつ病気になっていつ死ぬか分かりません。
だから仮放免の申請を提出しています。
2.医療と治療について。
収容施設に収容されている私たちには一番大切なことは健康でいられること元気にここから出られることと思います。私たちはあなたたちと同じ人間であることを絶対に忘れれないで欲しい。あなたちにもあなたの帰りを待っている家族と夫、妻、子供がいるはず。それと同じように収容されている私たちにも、健康で元気に出てくる日を待っている家族と、妻、子供がいる人たちがいます。それなのに入管の医療体制が不十分であること。前回も診察、病気、医療ついて要求書を提出してます。その提出の回答は
今後も外部病院連行や看護師による健康相談を実施するなど充実した医療の提供に努めます。と言っているんですが何も変わっていません。何も感じる所がありません。何に努力しているんですか。まったく分かりません。この中に病気になった人たちは大変苦しんでいます。入管は収容することができているならそれなりに面倒をきちんと見るべきと思います。被収容者処遇規則の第二条1,2、第八条などなど色んな規則がありますが、その規則を自分たちでちゃんと守って規則どおりにやって欲しい。
病気になった人たちには何一つ治療を行ってません。病気が色々ありますが、みなさんにだいたい同じ薬を処方しています。痛み止め、鎮痛剤、安定剤、不眠剤など、この薬を誰でももらうことができます。
頭が痛い、よるねむれない、など担当さんに言えばすぐ持ってきます。
それでかぜ薬をもらう時はアプリケーションを書かないといけない。
先週のことかぜ薬をお願いしたらせき止めもってきました。かぜ薬がないと[言って]何日も同じせき止めをもって来ました。それでアプリケーション書いてくださいとようやくもらうことができました。ちょっと前までは普通にもらうことができてました。今はだめです。なぜだろう。痛み止め、鎮痛剤、安定剤を飲んでも何一つ治療になりません。何一つ治りません。治るより病気がどんどん悪化しています。
薬が効かなくなると量を増やすだけ、薬が強くなるだけです。それで自分たちの手に負えなくなると入管の方から早く仮放免の申請を提出してくださいと言って来る。なぜならここ収容施設の中に死んだら大変なことになるから仮放免で出所させるようにしています。その人たちは出所後は仕事することができない、保険にも入れない。どうやって治療しますか。入管の収容施設に収容されたから病気になりました。入管の長期収容したせいで病気になりました。入管はここから出所させたら何も関係ないからどうでもいいと思っているでしょう。
今月の出来ごと。一人が体調不良を訴え担当さんに報告し、担当さんたちは彼を車椅子に乗せて連れて行きました。連れて行った場所が私たちにも見える事務室の前で対応していました。それで何で救急車を呼ばないんですかと聞くと担当さんが様子を見ていますと答えました。だからあなたは医者じゃないんだから何の様子を見ているんですか、あなたその様子を見ている間にその人が死んだらどうするんですか。死んだあとは救急車を呼んでも意味がありません。動物ならその辺であなを掘って埋めれば終わりなんですが、私たちは人間です。担当さんたちも当たり前のことができないんです。何のために制服を着て給料もらっているんですか。やらなければならないことがいっぱいあります。やるべきことをきちんとやって欲しい。
最後に医療、治療、仮放免について全ての改善を強く希望しています。
[中略]
8Aブロックより。
28・4・25
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