PRAJ (Provisional Release Association in Japan): Who We Are
in English
日本語(漢字かなまじり)
にほんご(ひらがな・カタカナ)


関東仮放免者の会「宣言」/賛助会員募集とカンパのおねがい

http://praj-praj.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html


仮放免者の会 ホームページ

Tuesday, June 17, 2025

地獄の幕開けとなる「不法滞在者ゼロプラン」 改悪入管法施行1年に対する反対声明

  6月10日、2023年に国会で可決・成立した改悪入管法が施行されてから1年がたちました。

 これに先立つ5月23日、法務大臣記者会見にて、入管庁の「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」なるものが発表されました。


「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」について | 出入国在留管理庁(2025年5月23日)


 この「ゼロプラン」とは、「退去強制が確定した外国人」について、無理やりの送還の強化などもっぱら国外への排除によって、2030年末までの半減を目指すというものです。

 私たち仮放免者の会は、さまざまな事情で帰国できない仮放免者当事者の組織であり、2010年以来、在留資格の付与を求めて闘ってきました。送還によって仮放免者らを徹底的に排除しようという改悪入管法、またこれにもとづいて策定された「ゼロプラン」には反対していきます。

 私たちも構成団体として参加している入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合として反対声明を出したところです。これを以下に転載します。


◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆  ◆ 


地獄の幕開けとなる「不法滞在者ゼロプラン」
改悪入管法施行1年に対する反対声明

 

2025年6月10日
入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合
代表 指宿 昭一


 これまでになく広範な世論の反対の声を押し切って成立した2024年施行改悪入管法は、1年が経過します。改悪入管法の施行以降、入管収容施設の現場では次々と問題が起こっている中で、出入国在留管理庁(以下、「入管」という。)は、2025年5月23日に、「国民の安心・安全のための不法滞在者ゼロプラン」(以下、「ゼロプラン」という。)を発表しました。これは、「退去強制が確定した外国人数」を2030年末までに半減を目指すことを目標に、「難民認定申請の審査の迅速化」や「護送官付き国費送還の促進」などの方針を打ち出したものです。

 2024年施行改悪入管法は、①自国に送還されれば命の危険がある難民申請者の強制送還を可能にする送還停止効の例外規定、②監理措置制度によって収容を解いた外国人に対する監視と管理の強化、③送還拒否に対する罰則規定などを定め、入管にますます強大な権限と権力を与えました。この「ゼロプラン」こそ、改悪入管法の最大の目的であり、2015年~2018年の法務省省入管内部通達によって起こった各収容所施設での地獄が新たな形で再現されようとしています。


 2024年施行によって運用が開始された監理措置制度は、家族などを監理人にして収容を解かれる人がいる一方で、監理人を見つけられない人々は収容解除の可能性を断たれ、絶望感から次々にハンガーストライキを試みています。監理措置制度が、監理人を見つけられない被収容者をハンガーストライキに追い込んでいるのです。支援者が把握しているだけでもすでに10人以上がハンガーストライキ後に仮放免されています。2018年から2019年にかけて、牛久入管センター、大村入管センターで起こった悲劇的事態が、施行開始からわずか1年で再現しつつあります。

 現在、入管は被収容者から「仮放免」の出口を狭め、長期収容に追い込み、送還のプレッシャーをかける形で監理措置制度を運用しています。入管は、現在のところは、監理人に生活支援状況などの報告を求めていません。この制度が持続可能なものであるかのようにマスコミや国会議員、世論に誤解させるためです。しかし、この制度が収容を解いた人を帰国に追い込むための管理強化を目的にしているという本質を見落とすわけにはいきません。


 上述した「ゼロプラン」の対象となる「退去強制が確定した外国人」や、監理人を見つけられない被収容者とは、大部分が「送還忌避者」と入管の規定する人です。入管は、もっぱら送還の促進によって減らしていこうという方針をとってきました。この「送還一本やり」と呼ぶべき方針の強硬化が、改悪入管法と「ゼロプラン」なのです。

 2023年に改悪入管法案が国会で審議されていた当時、難民審査参与員への事件の振り分けが不適正であることが分かり、「申請者に難民がほとんどいない」という難民審査参与員の発言の信ぴょう性が揺らぎました。さらに、ウィシュマさん事件後に入管の医療体制の改善が進んでいるという報告が大阪入管酩酊医師事件を隠ぺいしていたことが発覚して崩れ、これまで隠匿されていた入管の不都合な真実が暴露され、立法事実が崩壊しました。

 改悪入管法が、隠されてきた情報が次から次へと明らかになりながらも審議が打ち切られ、送還忌避者数の増減や送還ノルマの問題等の重要な立法事実が不明瞭なままに強行採決されたことが、もはや忘れ去られています。


 そもそも「送還忌避者」が、過酷な長期収容を経て、また無権利状態と言える仮放免での生活を強いられてもなお帰国を拒まざるをえないのは、自国に帰れば命の危険がある難民申請者、あるいは家族が引き裂かれる配偶者、生活基盤がもはや出身国にはないなど、それぞれ帰国できない深刻な理由があるからです。そうした人々に対して、入管は自由を奪い精神的肉体的な苦痛を与えることで帰国を強要する目的で、収容を長期化させてきたのです。入管は従来からこうした人権侵害をともなう犯罪的手法によって送還を促進しようとしてきたのであって、それでも帰国しない人を「送還忌避者」と呼んでいるのです。  国際法や国際基準からかけ離れ、極めて狭い範囲でしか日本での在留を認めず、徹底的に送還によって排除しようという入管の方針は、実現不可能であることがすでに明らかです。

 「ゼロプラン」を、過去の惨劇を繰り返す地獄の幕開けにさせないためには、入管を送還一本やりの方針から転換させなければなりません。つまり、入管が「送還忌避者」を、もっぱら送還によって排除しようとしている現在の方針を断念し、より広範にその在留を正規化していくことで問題を解決していこうという方向に転換するよう、私たち市民が連帯して働きかけることです。入管の制度運用を変えさせる、あるいは正常化させる闘いが、改悪入管法下ではいっそう必要になります。


 この「ゼロプラン」について、入管は「昨今、ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど国民の間で不安が高まっている状況を受け、そのような外国人の速やかな送還が強く求められていた」と広報しています。昨今の悪質なヘイト言論・ヘイト報道を根拠に「ルールを守らない外国人に係る報道がなされる」という極めて抽象的な言葉を用いて、「国民の間で不安が高まっている状況」と扇動し、まるでそのような外国人を「駆除」する対象かのように想起させる「ゼロプラン」という名称を掲げて、その正当性を呼びかけています。

 過去の日本は、アジア諸国の人々に対して残虐な植民地侵略と支配を行い、内地においても、植民地の人々を差別し、管理・抑圧してきた歴史があります。1923年関東大震災において、朝鮮人が放火、投毒、暴動、略奪等を行ったという流言(デマ)によって関東一円で朝鮮人が大量虐殺されたという惨劇を起こしましたが、この流言の源流には「不逞鮮人」というヘイト・スピーチがありました。戦後80年経った2025年にあっても、入管はウィシュマさんという痛ましい犠牲を生み出しながら、民族差別、人権の無視、命の尊厳を踏みにじる「ゼロプラン」によって戦後入管体制の本質を露わにして、強化しようとしています。


 入管の民族差別・人権侵害と闘う全国市民連合は、2024年施行改悪入管法から約一年で「ゼロプラン」という強硬方針を打ち出した入管に対し、強い抗議と危機意識を表明します。地獄の幕開けを食い止め、入管行政が送還一本やり方針から脱却し、在留を認められるべき人たちが在留資格を得て安心して暮らしていけるようになるために、私たちは今まで以上に、難民などの当事者、そして全国各地で展開された入管法改悪反対アクションを共に闘った様々な分野の支援団体、市民、学生、専門家と手を取り合い、入管の人権侵害と闘っていきます。連帯して共に取り組みましょう。


No comments:

Post a Comment