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わたしたちは3月11日(金曜)の東日本大震災での被収容者の状況を調べるため、3月14日(月曜)、東京入管(品川)と東日本入管センター(茨城・牛久)に行きました。
東京入管では、朝から夕方まで、再入国許可の手続きにきたひとたちの長蛇の列が建物の外の歩道にまであふれていました。地震と原発事故の危険からのがれるために出国しようとする、在留資格のある外国人たちの列です。
いっぽうで、入管には難民認定の申請者やオーバーステイの人たちなど、在留資格のないひとたちが収容されています。被収容者たちとの面会をとおして、地震発生時に東京入管、東日本入管センターとも、被収容者の安全と人権を考えているとはとうてい思えない、きわめて問題のある対処をしていたことがわかりまし た。
茨城県の東日本入管センターでは、11日15時まえの地震のショックで3人の被収容者がたおれたそうです。この日は医者がいなく、看護師が AED(自動体外式除細動器)をつかって、3人を救助したとのこと。
このような深刻な状況にもかかわらず、入管職員は被収容者たちを共用スペースから各部屋に閉じこめ、鍵をかけたそうです。パニックになった人々もいました が、職員は「心配ない」「心配ない」と言って、全員が部屋のドアを叩くまで鍵は開けなかったとのこと。
東京入管でも、同様の対処がなされたようです。東京入管においては、ケガ人等がでたとの事実は把握しておりませんが、被収容者たちはみな、地震のゆれにひじょうな恐怖を感じたと言っています。東京入管は、東京湾の埋め立て地に建てられた建物です。また、収容場は8から11階にあるので、いざというときの避難がむずかしいという不安もあるでしょう。
ところが、職員は被収容者たちに部屋にもどるよう命令したそうです。当然、これにつよく抗議した被収容者たちが多数いましたが、15時から16時のあいだには部屋に閉じこめられ鍵をかけられたとのこと。さらに、収容されたブロックによっては、職員からの地震についての説明すらなかったといいます。
こうした入管側の対処は、考えられるあらゆる対処のなかで、最悪のものといえます。 緊急の避難の必要が予想されるときに、入管はわざわざその避難経路をたつという「対処」をとったわけです。こうした危険な状況で密室にかぎをかけて閉じこめられることの恐怖と精神的なストレスもそうとうなものです。また、もし建物の一部がくずれるなどして救出が必要になったばあいに、鍵をかけることが救出作業のさまたげになるのはあきらかです。
そして、11日だけでなく、いまも午前と午後の「フリータイム」と呼ばれる時間帯以外は、被収容者たちは鍵つきの各部屋に閉じこめられており、共用スペー スにすら出られません。
入管が被収容者の安全と人権をすこしでも考えているならば、けっしてこのような危険な処置をとらないはずです。入管は、被収容者たちを管理し統制すること しか考えていないとしかおもえません。
わたしたちが面会した収容者たちが心配していたのは、ご自分たちの安全だけではありません。すでにみんな東北・関東が地震でおおきな被害を受けていることや、福島の原発がトラブルをおこしていることを知っています。東京入管では、日本から脱出しようとする人たちの列が建物の外まであふれているのが収容場の 窓から見おろせるとのこと。被収容者たちは、被災地や原発の近くに住んでいる家族や友人らのことをとても心配しています。
ところが、11日の地震発生時には、入管側は電話をひとり5分に制限したり、ブロックによっては「家族に電話をさせてほしい」という要求を拒絶したりしたそうです。
被収容者をこのような危険にさらし、精神的な不安をもたらしている入管の震災時の対処をあらためることをもとめるため、わたしたちは東日本入管センターと東京入管に申し入れをおこないました(申入書はこの記事の末尾にのせております)。
東京入管への申し入れでは、処遇部門面会担当責任者の Yさんらと話をしました。
わたしたちが「処遇規則第16条に基づいて保安計画を立て、訓練を実施しているのか?」と聞くと、Yさんは「ちゃんとマニュアルを作っているし訓練もしている」とこたえました。
「では、地震後に各部屋に被収容者を戻らせて鍵をかけたのはマニュアル通りなのか?」と聞くと、Yさんは「保安上の業務については答えられない」などと逃げまわり、マニュアルの内容についての質問にたいし、いっさいの回答を拒否しました。
話の流れからして、被収容者が「フリータイム」で共用スペースに出ているあいだに地震(あるいは非常事態)が発生した場合、房に戻して施錠するとマニュアルにあるとしか解釈できません。Yさんは、「マニュアル」の存在をみとめており、その「マニュアル」のもとで実際にとられた対処が、被収容者の証言では「房に戻して施錠する」だったわけですから。
ここでもまた、法務省と入管に被収容者の安全確保や人権尊重という発想などハナから存在しないこと、被収容者を管理・統制の対象としてしかみていないことを、確信せざるをえません。
法務省が入管法にもとづいて出している省令「被収容者処遇規則」の第17条では、入国管理センター所長や入国管理局局長の権限として、災害時における被収容者の一時解放をみとめています。つまり、入管には、現場の判断として被収容者を「一時解放」して安全なところに避難させるという選択肢があったことになります。すくなくとも、地震の危険が小さくなるまでは、部屋の鍵をあけておくという処置だってありえたはずです。ところが、今回の地震で入管がじっさいにとった対応は、「逃げられないように鍵をかけて閉じこめる」という最悪のものだったわけです。
したがって、今回の件について、法務省はもちろんのこと、現場の入国管理センターおよび入国管理局にも重大な責任があることを指摘しなければなりません。 わたしたちの申し入れや抗議などに対応する入管の職員は、いつも「自分たちは入管法にもとづいて適正にやっている」「処遇規則にのっとっている」とくりかえすばかりで、ろくな回答をかえしてきません。しかし、その「処遇規則」に照らしてさえ、この震災下での入管の対処はひじょうに問題のあるものです。
しかも、東京入管処遇部門の Yさんが事実上みとめたとおり、大地震あるいは緊急事態が発生したら鍵をかけて閉じこめるという「マニュアル」が存在するのだとすれば、入管を監督する法務大臣・法務省の責任も問われなければなりません。
「仮放免者の会」が14日に提出した「緊急申入書」を以下にのせておきます。
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緊 急 申 入 書
2011年3月14日東日本入国管理センター所長 殿
東京入国管理局長 殿
仮放免者の会
今月11日に発生した東北地方太平洋沖地震とそれに続く事態は「大震災」とも呼ばれる極めて甚大な被害を生み出しました。東日本センター・東京局におかれ ましても混乱の中に週末を迎えられ、今後の事態の進展に備えご多忙の事と拝察いたします。
昨年9月に関西に居住する仮放免者たちを中心に「仮放免者の会」が結成され、続いて関東に居住する私たちは10月に「仮放免者の会」を結成しました。関東 の仮放免者の会では、結成後、二回に渡って法務大臣・法務省入管局長・東京入管局長あてに、仮放免者への在留資格の付与と難民手続きや行政訴訟の結果を もっての再収容をしないよう申入れを行いました。東日本センターに対しては初めての申入れになりますが、本来は長期収容者・重病者・未成年者などに対して 仮放免を速やかに許可していただけるよう、また以前のように3寮5名までの同時面会、仮放免者も日本人や正規滞在者と同じ面会条件に戻していただけるよう 申入れようと検討していました。
私たちと貴センター・貴局とは立場が異なりますので、今後もさまざまな軋轢は生じると思います。しかし、現在生起している非常事態において、私たちは仮放 免された者の事よりも収容されている仲間たちの事を第一に考えざるを得ません。これまでの申入れ事項を脇に置いても、被収容者への適切な対処を切にお願い するところです。
東日本太平洋側での余震や連動して頻発する各地での地震が続き、さらに福島原発の事故も含め、予断を許さない状況にあります。そうした状況にあっても、貴センター・貴局収容場内の被収容者は身体を拘束されており、それぞれの安全確保、さらには生命の維持においても貴センター・貴局の処置に委ねられるところ です。被収容者の安全と生命を守っていただくこと、また非常時に置かれた被収容者の状態にご配慮いただき最大限の便宜を図っていただくことを切望し、以下 の緊急申入れを行います。
記
- 一、 被収容者処遇規則第十七条に定められた避難や一時解放の可能性も含めて、被収容者の安全、さらには生命を守るために万全の準備と対処をしていただきたい。 これは、非常災害時の判断の遅れや対処の滞りが、貴センター・貴局それぞれに収容された数百名ずつの生命をみすみす死に追いやる危険性すらあるからです。 そのような非常災害が起こらないことを私たちとしても念願するところですが、少なくとも関東地方においては入国管理局設置以降最大の震災の渦中にあるな か、被収容者処遇規則第一条(目的)に記された「人権を尊重」する観点から迅速かつ適切な準備と対処をお願いします。
- 一、震災が沈静化するまでの期間、一日中開放処遇としていただきたい。少なくとも各房の扉に鍵をかけず、緊急時に被収容者が共用スペースに出られ るようにしていただきたい。現在に至るも地震は頻発しています。さらに福島原発事故などの予期せぬ災害も発生しています。被収容者は、各房に閉鎖処遇されることに強い危機感を感じておりストレスは高進しています。パニック状態に陥った被収容者もいると聞きましたが、誰もがその一歩手前の状態にあると思われます。また関東・東北地方に家族やフィアンセなどのいる被収容者は家族の被災状況や生活状況について心配が募っています。家族の側でも被収容者の置かれている状況について不安を感じています。被収容者、その家族の双方の精神状態を少しでも改善するため、最大限、通信の自由を認めていただきたいところです。
- 一、関東・東北地方の家族やフィアンセなどのいる被収容者、重病者、歩行困難者について、即刻、仮放免許可を出していただきたい。関東・東北地方 に家族などがいる者は、上記項目にも書いた状況から非常にストレスが高進します。これは本人だけの問題ではすまず、各房・各ブロックの周囲の被収容者にも 悪影響を与え、他者のストレスも増して悪循環となります。また重病者は震災のなかで病状の悪化、さらには治療を継続でるかどうかも懸念されます。歩行困難者は、万が一の場合、本人自身が逃げ遅れる危険性があると同時に、貴センター・貴局による避難や一時解放時の誘導にも支障となると思われます。
以 上
関連リンク
国際緊急救助活動や援助を受けながら、一方で津波や原発事故が重なった緊急事態での非人間的対応に怒りを感じます。
ReplyDeleteこうした状況下だけに収容者を凶悪犯罪者扱いせず、まともな対応が必要だと考えます。
活動、頑張ってください。
収容者は凶悪でも凶暴でもなく、普通の人間です。今回の地震のような事態に至っても更に残酷な仕打ち、日本の、弱い立場の外国人に対するやり方に怒りを感じると同時に大変恥ずべきことだと思います。
ReplyDelete日本人のようにある程度地震に心の準備があるわけでなく、閉鎖された立場で大地震を経験しなければならなかった収容者の皆さん、さぞ辛かったと思います。
支援活動、がんばってください。
コメント、ありがとうございます。
ReplyDeleteまた、あたたかい応援感謝いたします。
Windさま
平時から被収容者をまるで「凶悪犯罪者」であるかのようにあつかってきた入管の体質が、こうした「緊急事態」に最悪のかたちで出てしまったということだと、考えております。入管が被収容者に対し人間としてのまともな対応をするよう、今後とも要求していきます。
Kumikoさま
おっしゃるとおりで、私たちが面会した人たちも、はじめて経験する大きな揺れにたいへんな恐怖をあじわったと言ってました。今後とも入管に対する監視をつよめていきたいと思っておりますので、ご注目のほどよろしくお願いいたします。
外国人に対する入管の区悪と区暴な仕打ちは酷すぎると思いますが。しかしこんな対応は単に外国人だけに限っているとは思いません。今回の原子力事故では利益ばかりを優先に考えている東電、政府、マスコミ連中(言わば資本化)の区悪と区暴な政治体制が丸出しになって来たと言えます。多くの人々の命と健康と自然を危機にさらしている悪質な体制に対して怒りを現して当然です。中東と来たアフリカの人々と同じようにです!こんな運動こそ入管体制の変化に繋がると思います。ともかくも黙っては居られません。
ReplyDelete凶悪凶暴のは入管だけではありません。凶悪凶暴なのは、官僚、上司の責任を追究出来ない凶悪凶暴な政治体制です。日本人は慣れています。
ReplyDeleteInteresting thoughts, I really enjoyed your blog
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