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Tuesday, September 20, 2011

「外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄」する――退去強制令執行の実態

  わたしたち「仮放免者の会」の仲間であり、これまでこのブログに2度「意見書」を掲載させていただいた鈴木啓三ロベルトさんが、8月15日にブラジルに「帰国」しました。不本意ながらの帰国とのことです。
  鈴木さんが「帰国」前に寄せてくださった「意見書」を公開します。ウソをついてだます、脅迫する、外国人の人格や法的権利をふみにじる、そうした入管による帰国強要の実態の一端をかいまみることのできる内容です。ぜひ、お読みください。あわせて、鈴木さんの過去の「意見書」にもリンクをはっておきます。



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意見書

外国人人権保護団体
仮放免者の会:団体長殿
SYI:団体長殿

  私は、以前から何回か意見書を書かせて頂いて居ります鈴木啓三ロベルトと申します。何度も私の書いた意見書を公開して頂き心から感謝して居ります。誠に有り難うございました。
  この度自身の私的な都合により帰国せざるを得ない状況が発生し、本心ではありませんが帰国は已(や)むを得ない事と存じます。誠に身勝手ではありますがどうかお許し頂きたく存じます。皆様のご支援があるにも拘わらず帰国してしまう自分をどうか許して下さい。
  今回で入管のなかからの最後の意見書になると思います。ですが、どうか良くお読みになって頂きたく存じます。
  私は平成23年7月19日、帰国手続きに入って居ました。私は、何回かに渡り帰国する準備の為、何度か担当職員HC050と話し合いをしました。
  そのなかで私が何度も尋ねたのですが、「臨時旅券に DEPORTATION または強制退去に類似したものが書かれてしまうか、または、スタンプの様なものを捺されてしまうのか」と何度も尋ねましたところ、「それは絶対にありません」と担当が言ったのです。
  何故私がそこまで担当に訊ねたか、というのは、自分は自身の意志で帰国するだけでなく実費で帰国するからです。
  担当は「DEPORTATION または強制退去に類似したものは書かれませんし、またそれ等に類似したもののスタンプは絶対に捺されません」と断言しました。
  私は帰国するのは本意ではありませんが、担当の言う事を信じて臨時の旅券を待って居りました。
  そして先日8月4日、私の臨時旅券が届きました。
良く見てみたらポルトガル語でこう書かれて居りました。

「RAZÃO DE DEPORTACÃO」

  これを日本語に翻訳すると「強制退去による理由である」
  私の怒りは爆発しました。私はすぐに担当を呼び付け、これは何だと問い詰めましたが、担当は惚(とぼ)けて居ました。私は問い詰め続けましたが、何の進展もありませんでした。
  そこで私は「この旅券では帰国しません」と切り出したところ、担当が本性を現した。怒鳴りつけるように言ったのです。
「これはお前の最後のチャンスだ! これで帰らなかったらもう二度と帰れないぞ!」(これは HC050 の発言である)
  私はこの人のペットでも奴隷でもないので、怒りをこめて「黙れ!」と言ったのです。「しゃべるなら低い声で喋れ!」
  誠に信じ難い出来事である。法務省が管理する施設のなかで脅迫されるとは思いもしませんでした。私はそこでその職員に「あんたとでは話にならないのであんたの責任者を呼んできて」と言ったところ、担当は「ボスを呼んでも言われる事は同じだぞ!」と言ったので、私は「あんたの言う事などどうでもいい! 早くあんたの責任者を呼んで来い」と怒鳴ったところ、やっと責任者が現れた。ID番号 HC012 が部屋のなかに入って来ました。
  「どうかしましたか」と態(わざ)とらしい声と顔で虫唾が走りました。HC012はドアの向こうで全てを聞いていた筈(は)ずだからである。この入管の遣り方、誠に汚らわしい!
  私はその HC012 に問い詰めました。「お前ら何故嘘ばかり吐くんだ? そこに居るチケット担当(HC050)はパスポートに何も書かれないと言ったけど、どうなんだ?」
  HC012 は「これは強制退去手続きに則ってこうなりました」と言うだけでした……。もう話になりませんでした。その HC050 が責任者が来た途端、深刻な顔をして黙ってしまった……。
  説明も無く、反省も無く、謝罪も無く、何も無し!
  ただ時間だけが過ぎて行きました。極論から申し上げますと入管という組織は外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄して居るのです。誠に遺憾であり許し難い! 公務員としては言語道断! 法務省管轄内では有るまじき行為である!
  最初から本当の事を言ってもらったなら帰国しない事も考えたと思います。併(しか)し HC050 は私を巧みに騙して、そして仮放免申請と強制退去命令取り消し裁判を取り下げさせてから、こんな酷い仕打ちをしたのです。外国人を愚弄するのはもう止めて欲しいものです。
  私は8月15日に帰国しますが、自分自身で購入したチケットと自分の意志で帰国するにも拘わらず、パスポートには強制退去が書かれてしまって居るのです。他国ならばこれは自主退去に当たるので、パスポートには何も書かれません。こんな事をするのは日本国入管ぐらいと私は思って居ます。私と致しましては一生許すことはないと思います。
  最後になりますが、先日、同室に居られる中国国籍の趙星晨さんが職員 HC115 に「外人を苛めるのが大好き」と言われるのを私はこの目で見ました。3月4日 PM10:00頃でした。私は自分の耳を疑いました。しかし同室のラオス国籍のサイペンシーモンコンサオーさんも聞いて居りました。誠に信じ難いのですが、これが現在入管という組織の実情であります。
  この文書をお読みになられた皆様にお告げしますが、全て真実の告白でございます。
  今まで本当に有り難うございました。
以上
平成23年8月8日
収容者: 鈴木啓三ロベルト
Jailed: ROBERTO KEIZO SUZUKI
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【補足】

  鈴木さんが「意見書」の最後で報告している、職員による「外人を苛めるのが大好き」発言については、被害者である趙星晨さん自身の告発をすでにこのブログに掲載しております。

  この事件については、暴言をはいた職員 HC115 と上司が、趙さん本人に直接面会して謝罪し、HC115 が趙さんたちの収容されている 9Bブロックの担当をはずれたとのことです。東日本入管が HC115 の差別的暴言の事実をみとめ、これを問題と認識しているようであることは評価できます。しかし、この謝罪について、被害者である趙さんがどう考えているかということが、なにより重要です。近日中にこのブログで、趙さんにご自身の認識・意見を書いていただく予定です。

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  さて、鈴木啓三ロベルトさんについては、上にリンクした意見書で鈴木さんご本人が書かれているとおり、ある違法行為により実刑判決を受けて服役したことがあります。これを理由に、入管から在留許可を取り消され、退去強制令が発付されたわけです。
  もちろん、退去強制令の発付自体は、入管法(出入国管理及び難民認定法)にさだめられた手続きにのっとっておこなわれたものです。しかし、有罪判決を受け入れ、刑期をつとめあげたひとは、その違法行為について法的には決着ずみなのであって、行政によってこれ以上のペナルティを科されるのは、あきらかに不当です。
  入管はなにさまのつもりなのでしょうか? 裁判所のきめた刑罰をすでに終えたひとにたいし、さらに事実上の刑罰にひとしい退去強制を命じているのですから。これは裁判所や刑務所の役割と存在意義をすら否定しているようなものです。行政権の一部をになうにすぎないはずの入管が、司法を超越した存在としてふるまっていると言ってよいでしょう。

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  そして、この司法をすら超えた存在であるかのような入管の横暴ぶりは、有罪判決を理由とした退去強制令の発付(これは入国審査官の仕事)だけでなく、その執行(こちらは入国警備官の仕事)においても、みられます。
  まず、指摘しておきたいのは、鈴木さんが上の「意見書」で報告している入国警備官 HC050 のついたウソは、あきらかに意図的で自覚的なウソであるという点です。今回、鈴木さんは「帰国同意書」にサインし、自分の意思でブラジルに「帰国」したわけですが、退去強制令が発付された状態での「帰国」は、私費で「同意」にもとづいたものであっても、入管法上の「退去強制」にあたります。入国警備官たる HC050 がこのような基本的な事実を知らないなどということは、まず考えられません。 HC050 はそれを知っておきながら、鈴木さんに「帰国同意書」へのサインをさせるためにウソをついたのです。したがって、この「同意」は強制されたものと言えます。
  外国人にたいしてはウソをついてだましてもよいという、入国警備官のごうまんな差別意識にもおどろかずにはいられませんが、HC050 のウソがさらに問題と言えるのは、これが鈴木さんの正当な司法手続きを受ける権利を侵害するウソだという点です。
  鈴木さんは、退去強制令取消訴訟を提起しており、その裁判中でした。退去強制令そのものは、入管によって発付されるものであり、すなわち行政権の範疇にあります。こうして退去強制令を発付されたひとは、司法の場に異議を申し立てる権利があります。鈴木さんはその正当な権利の行使として、退去強制令を不服とし、これを取り消すための裁判を提起していたわけです。
  日本国憲法には「何人(なんびと)も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」(第32条)と書かれています。日本国憲法は、生存権などの重要な人権について「国民」の権利としていたりして、あいまいなのが難点ですが、裁判を受ける権利については「何人も」「奪われない」人権であると、明確に規定しております。
  東日本入管センターの入国警備官 HC050 はウソをつき、その結果、鈴木さんは裁判を取り下げました。入管は、憲法によって保障された「裁判を受ける権利」を不当に侵害したことになります。したがって、このたびの鈴木さんの帰国、入管側から言えば退去強制令の執行は、現行の法制度に照らしてさえ正当性がなく、入管による違法行為と言うべきです。
  法務省のサイトの「入国警備官採用試験」というページには、入国警備官の仕事が「日本の安全を守る重要な使命」だと紹介され、つぎのように書かれています。

  国際交流の活性化の中で,世界各国から多くの人々が日々我が国を訪れています。その目的はさまざまですが,中には観光などの目的を装って入国し,犯罪に走る外国人や、不法就労を行う外国人もいます。
  入国警備官は,これら法律に違反する外国人に対して厳正に対処し,日本の安全と国民生活を守り社会秩序を維持するという重要な使命を担っています。

   まるで、在留や就労の資格のない外国人の一部が「日本の安全と国民生活」「社会秩序」への脅威になっているかのような書きぶりですが、司法制度をふみにじり、平気でウソをつき、社会秩序を破壊しているのはいったいどちらでしょうか?

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  このように入管は、鈴木さんがおっしゃるように「外国人を収容し、嘘吐いてだまし、そして愚弄して」帰国へと追いこもうとします。
  ウソをつくということも、入管組織内では必要な手段とみなされているフシがあります。たとえば、日本国籍者や永住者との結婚を理由に在留資格を申請している外国人を帰国に追いこむために、その夫や妻に本人のネガティブな情報やウソをふきこむといった事例も、よく聞きます。「あなたの夫(妻)は浮気をしている」あるいは「財産めあてであなたに近づいた」など。そう言って、カップルをひき裂き、「帰国するしかない」と思わせようとするわけです。
  また、鈴木さんが報告しているように、収容者にたいする恐喝。複数の収容者・収容経験者たちが口をそろえて言うには「威圧的な態度をとる職員と、いっけんやさしそうな職員が、役割分担をして収容者を帰国させようと圧力をかけてくる」とのことです。
  これは、テレビの刑事ドラマでしばしば描かれている取り調べのやり口に似ていますね。まず、いかにも暴力的な若い刑事が容疑者をなぐったり、暴言をはいたりして、おどす。つぎに、温厚で年輩の刑事がカツ丼かなにかをもってきて「おふくろさんに心配かけるなよ」などと言って容疑者をおとしにかかる。この人のよさそうな年輩刑事は、やさしそうにみえても、それは容疑者に「自白」を強要するために暴力的な刑事と役割分担しているにすぎません。
  こういう安っぽくて下品な刑事ドラマと同様の手法を入管が採用していることは、鈴木さんの報告からもみてとることができます。一方では HC050 が「これで帰らなかったらもう二度と帰れないぞ!」などとどなり、恐喝する。他方で、HC012 がわざとらしい声と顔で「どうかしましたか?」などと言ってあらわれる。このように、こわもての職員とやさしそうな職員がチームをくんでいるという話は、他の収容者などからもしばしば指摘されます。
  ウソや暴言にくわえて、硬軟とりまぜた圧力。入管は組織的にこうした暴力をひとりひとりの収容者に日々くわえて、帰国への「同意」をさせようとします。これが退去強制の執行の実態にほかなりません。

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  鈴木さんは、「帰国」してブラジルですでにあたらしい生活をはじめています。しかし、日本の入管で見聞きしたさまざまな人権侵害・外国人差別の実態を公開し、告発していくつもりだとおっしゃっています。
  かれは、収容されているあいだも、国籍や立場のさまざまな他の収容者たちのための助力・助言を精力的におこない、それゆえ信望をあつめておりました。面会におとずれる支援者にたいしても、「自分のことよりも、ほかの罪のない外国人を入管がいじめていることが許せないし、支援してあげてください」といつもおっしゃっていました。
  鈴木さんは、いまも仮放免者の会の大切な仲間であります。外国人差別をなくすために今後とも鈴木さんと連携していきます。

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