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Wednesday, June 27, 2018

入管にとって長期収容の目的はなにか?


1.はじめに

 ひとつ前の記事で、大村入国管理センターに収容されている72名が連名で提出した要望書を紹介しました。


 この「要望書」では、入管施設における長期収容に関して、入管が公表しているパンフレットの文言、また、国連拷問禁止委員会の質問に対する日本政府の回答などが引用されています。また、「要望書」では、長期収容問題について、大村入管センターの被収容者たちの意見提示や要求に対して、入管側がどのように回答してきたのかということが、くわしく記録されています。

 今回のこの記事では、これらの資料にくわえ、法務省入国管理局長が入管センターおよび各地方局に出している通達の文書などを参照しながら、現在の収容長期化問題がどのようにして生じてきたのか、みていきたいと思います。

 収容長期化問題は、なによりもまず、それぞれの施設に収容されている人びとに対する人権侵害という観点から問題化しなければならないことは、言うまでもありません。入管施設における長期収容がなぜ問題なのかということについては、たとえば以下の記事などで述べてきました。


 今回の記事では少し角度をかえて、その収容長期化問題が、入管行政と現実のあいだの矛盾によって、あるいは入管行政そのもののはらんでいる矛盾によって生じていることを見ていきたいと思います。



2.収容長期化を回避するとした2010年法務省通達

 2009年から10年にかけて、現在と同様に長期収容と仮放免者の再収容が問題になっていました。収容が長期化するなか、東日本入国管理センターでは、2010年2月にブラジル人被収容者が、4月に韓国人被収容者が自殺するという事件がありました。また、3月には東京入管横浜支局から強制送還のために成田空港へと連行されたガーナ人男性が、職員による「制圧」の過程で死亡するという事件も起こりました。

 ところが入管の強制送還についてのこうした強硬方針は、被収容者たちの強力な抵抗をまねくことになりました。2010年の3月には西日本入管センター(2015年に閉鎖)で、5月には東日本入管センターで被収容者による大規模なハンガーストライキがおこなわれました。

 これらの事件が報道され、入管収容が社会問題化されるなかで、法務省入国管理局は、7月27日に「退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について」と題した通達を出しました。同月30日には、法務省入管はこの通達をふまえた同じ標題のプレスリリースを発表しています(注1)

 このプレスリリースで法務省入管は、「近年,種々の理由から,収容が長期化する被収容者が増加する傾向」にあることを認め、収容が長期化している被収容者について「入国者収容所長又は地方入国管理局主任審査官が,一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討すること」としました。その「検証・検討」の結果をふまえて、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこと」とするとしたのです。

 この後、入管の各収容施設において、あきらかに仮放免についての運用が変化しました。長期収容されていた人たちがつぎつぎと仮放免されていったのです。こうして収容を解かれた仮放免者が2010年10月に当事者団体として結成したのが、仮放免者の会です。

 仮放免者の会は、長期収容とともに再収容にも反対する取り組みをしてきました。会を結成した2010年は、収容されている仲間たちがつぎつぎと仮放免される一方で、せっかく仮放免されていた仲間たちが、難民申請の却下や行政訴訟の敗訴を契機につぎつぎと再収容されていきました。そうしたなかで、仮放免者の会は他の団体とも連携しながら、2011年2月に2.25デモ Stop “Re-Detention”! を、また同年4月には長期収容と再収容に反対する全国統一一斉面会をおこないました。

 こうした取り組みの過程で、東京入管は、それまでおこなっていた機械的な再収容をストップしました。従来、東京入管では、難民申請却下(難民不認定に対する異議申立棄却)や行政訴訟(退令取消訴訟等)の敗訴を契機として、機械的に(=例外なしに)仮放免者を再収容していました。この機械的な再収容は、2011年2月にいったんはおこなわれなくなりました。



3.退令仮放免者数の増加

 2010年から11年にかけて長期収容が社会問題化し、また仮放免者の再収容が大幅に減っていくなかで、以降、仮放免者数が増大していくことになります。下図のように、2009年に1336人だった退令仮放免者(退去強制令書を発付された仮放免者)は、2011年に2000人を超え、2013年以降は3000人台で推移するにいたっています。


 また、この間、法務省・入管当局は、収容の長期化について、これが回避すべき問題であるとの認識をくり返し公式に表明している点は重要です。たとえば、大村入管センター被収容者の「要望書」でも引用されている国連拷問禁止委員会への日本政府の回答は、その一例です。

 拷問禁止委員会の「申請が却下されたあるいは未決定の庇護申請者の収容の長さについての懸念に対処するためにとった措置につき説明されたい」との質問に対し、日本政府は2011年7月に以下のように回答しています。

 入管法上,難民認定申請中の者の送還は禁止されているところ,収容中の難民認定申請や,難民認定申請を繰り返し行う場合などにより,近年,収容が長期化する傾向にあることを踏まえて,2010年7月から,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過しても送還に至っていない被収容者については,仮放免の請求の有無にかかわらず,入国者収容所長又は主任審査官が一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討の上,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいることから,長期収容者は,減少傾向にある。

 国連機関に対する、この日本政府の回答が、さきにみた2010年7月の法務省入管による通達およびプレスリリースにもとづいたものであることは、あきらかでしょう。

 入管法上の収容の位置づけは、送還までの身柄の確保ということにすぎません (入管法第52条第5項)。したがって、収容期間が半年を超えたり、それどころか2年や3年超におよんだりすることを正当化できるような理屈は、入管当局にとってすら、見いだしようがないものなのです。




4.2015年通達と再収容・長期収容の急増

 入管当局は、収容の長期化は回避すべき問題であるという見解を公式には保持しています。それは、現在も変わりません。ただし、それはあくまでも表向き・公式上はそう表明しているということにすぎません。実際は、入管は仮放免申請の審査、また仮放免者の再収容に関して、運用を変化させました。

 2015年9月18日に法務省入管局長から「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題する通達が出されました。

 この通達は、長期収容はさまざまな問題を生じさせるとする見解は維持しつつも、退去強制令書を発付された仮放免者および被収容者に対してより厳しい対処をとることを通達したものです。通達は仮放免者について、次のように述べています。

 一方で、適正な仮放免の運用を担保するためには、今まで以上に仮放免中の動静を注視し、被退令仮放免者の生活状況等を常に把握する必要があり、仮放免許可条件違反、送還に支障がある事情の解消など仮放免理由の解消、不法就労事実の認知等、引き続き仮放免を継続することが適当でないことが判明した場合には、仮放免の取消し又は延長不許可として再収容し、仮放免の適正化を図るとともに、速やかな送還に向けて準備を進めることも必要です。

 ここで、法務省入管局長は、「仮放免中の動静を注視」するように指示していますが、これは要するに仮放免者の生活を監視せよということです。入国警備官が、仮放免者の届け出ている住居におもむいてその所在を確認したり、行動を監視したり、外出する仮放免者を尾行したり、といったことをするわけです。仮放免者に聞くと、とくに東京入管管内では、この時期から入管職員による「動静監視」が目に見えて強化されたようです。

 この2015年9月の通達が出て以降、仮放免者が再収容されるケースが次第に増えていきました。こうして頻繁におこなわれるようになった再収容がきわめて恣意的なものであることについては、以下の記事でくわしく述べたとおりです。


 通達が出た直後の10月1日から、全国の入管施設で一斉に、仮放免許可書に就労不可の記述を書き入れるようになりました。入管当局は、それまで仮放免者の就労について事実上黙認してきましたが、これを禁止するということを明示したわけです。以後、就労を理由とした再収容がおこなわれるようになりました。だれに危害をくわえているわけでもなく、自身や家族の生活のためにアルバイトに出かける仮放免者を、入管職員はわざわざ尾行して就労の事実をおさえ、「仮放免許可条件違反」であるとして再収容し始めたのです。

 また、上にリンクした記事でも述べたとおり、住居変更許可の申請が数日遅れたといった、以前であれば職員が口頭での注意にとどめていたような些末な「仮放免許可条件違反」を理由にした再収容も始まりました。

 さらに、難民申請の却下や行政訴訟の敗訴確定を契機とした再収容もひんぱんにおこなわれるようになりました。

 こうした一連の経緯からあきらかなのは、入管当局は、仮放免者数を減らしたいという明確な目的意識のもと、その手段として再収容をおこなっているということです。つまり、再収容によって仮放免者数を減らしたいということが入管の意図であって、就労や住所についての「仮放免許可条件違反」はそのための口実にすぎないのです。

 一方、この2015年通達は、仮放免の弾力的活用によって収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組むとした2010年7月の通達について「本通達をもって廃止」するとしています。

 こうして、入管は2015年通達をへて、再収容・長期収容を送還の手段として積極的にもちいる強硬方針へと運用を変化させました。



5.「仮放免者の逃亡・犯罪・就労」が問題?

 さて、大村入管センター被収容者による連名の「要望書」によると、大村の職員は「最近仮放免を得た者が逃亡したり、犯罪を犯したり、不法就労する者が沢山居るから、現在大村入管は仮放免を許可しなくなった」と説明しているとのことです。「仮放免を許可しなくなった」ということ、つまり入管が収容を長期化させている理由を、仮放免者の逃亡・犯罪・就労のためであるとしているのです。

 しかし、以上みてきたところからあきらかなように、この入管側の説明はウソと言ってよいものです。

 大村入管センターの複数の被収容者によると、2017年1月ごろから、重病人もしくは送還を受け入れて帰国準備を理由として認められた人以外には、仮放免で出所した人は1名だけだとのことです。難民申請をしていたり、あるいは家族が日本にいる等の理由で在留を希望しているひとの仮放免許可はほぼ皆無であるという状況が、1年以上にわたって続いているのです。つまり、犯罪歴のいっさいない人も、就労を理由に再収容されたのではない人も、仮放免が許可されずに長期間にわたり収容されているのです。

 東日本入管センターや東京入管、大阪入管においても、許可条件違反によって再収容された人、犯罪歴のある被収容者だけではなく、被収容者全体として収容期間が非常に長期化しています。仮放免者の逃亡・犯罪・就労を理由に仮放免審査を厳しくしているという入管の説明は、事実と照らし合わせて整合性を欠くものです。

 また、「逃亡」に関しては、こうした入管の説明は、原因と結果をすりかえています。入管局が求める定期的な出頭をせずに「逃亡」する仮放免者が増加しているから、仮放免審査が厳しくなっているのだと入管は説明しているようですが、事実はその逆です。再収容の増加と度を越した長期収容が、「逃亡」の増加を生んでいるのです。

 同様にして、許可条件に違反して就労する仮放免者がいるから仮放免審査を厳しくしているのだという説明も、意図的に事実を誤認させようとするものです。先述の2015年9月の法務省入管局長通達で再収容をふくむ強硬な方針が示され、これに応じて各入管局が再収容する基準を下げる運用を始めた、というのが順序です。つまり、従来であれば再収容しなかったケースを再収容するようになったということであって、それまで黙認していた仮放免者の就労や、以前はとりたてて問題視していなかった些末な「違反」(転居とその許可申請が前後した、といった「違反」)を、再収容すべき理由としてあらたにみいだしたということにすぎません。入管は許可条件違反がみられるから再収容をさかんにおこなうようになったのではありません。再収容件数を増加させるために、許可条件違反をきびしく問うようになった(=再収容の基準を変更した)のです。



6.「脅威」の創出

 大村センターの職員は、「入管が仮放免制度を厳しくしているのは、2020年のオリンピック・パラリンピックを控え日本政府は、より安全・安心社会を実現するためである」とも説明しているようです。他の施設に収容されている人からも、同様の説明を現場の職員から聞かされたという話を聞きます。

 収容が長期化していることについての、こうした治安にからめた説明は、現場の職員が勝手にしゃべっているというものではなく、法務省からの指示にもとづいているようです。2016年4月7日に、法務省入管局長は、入国者収容所長と地方入管局長にあてて、「安全・安心な社会の実現のための取組について」と題した通知をおこないます。

 この通知は、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックにふれたうえで、以下のように述べています。

安全・安心な社会の実現のためには,国内の安心を確保することが重要な要素となるところ,近年増加傾向にある不法残留者及び偽装滞在者(以下「不法滞在者等」という。)のほか,退去強制令書が発付されても送還を忌避する外国人(以下「送還忌避者」という。)など我が国社会に不安を与える外国人を大幅に縮減することは,円滑な出入国審査,厳格な水際対策,適正な難民認定審査などとともに,当局にとっての喫緊の課題となっています。

 この通知は、長期の収容や再収容について直接言及しているわけではありませんが、未摘発のいわゆる「不法滞在者」とともに、「送還忌避者」が「我が国社会に不安を与える外国人」と位置づけられている点に注意が必要です。「送還忌避者」とは、具体的には、退令仮放免者と、退去命令を受けながら在留を求めている被収容者を指します。こうした存在を、入管当局は「我が国社会」をおびやかす脅威であると決めつけ、「大幅に縮減する」べき対象と位置づけているのです。

 「送還忌避者」が送還を忌避しているのはたしかに事実でしょう。しかし、送還を忌避することと、「安全・安心な社会」をおびやかすということは、まったく次元の異なる話です。この両者を混同させて、あたかも「送還忌避者」が安全をおびやかす存在であるかのように言い立てるのは、差別的な偏見を煽動する行為であるというべきです。上の通知をとおしておこなわれているのは、差別的な偏見をあおることによって、ある社会的なカテゴリー(この場合は「送還忌避者」)を「脅威」に仕立て上げるということにほかなりません。

 このように、差別煽動を通して「脅威」を創出することは、国家がみずからの暴力を正当化しようとするさいの古典的な手法であります。国家機関みずからが、こうした差別的な偏見にまみれたプロパガンダによって、「送還忌避者」に対する長期収容・再収容を正当化しようとしているわけです。まさにこの事実が、長期収容・再収容の正当性のなさを示していると言えるのではないでしょうか。



7.収容長期化は入管にとってすら正当化できない

 以上みてきたように、入管は、一方では収容の長期化は回避すべき問題であるとの見解を保持しつつ、他方でとくに2015年以降、収容の長期化をおしすすめる運用を現実にはとってきました。

 入管法上、収容の目的は、送還が可能になるまでのあいだの身柄の確保にすぎません。送還の見込みがないのに収容するのは、いたずらに人を監禁して自由をうばい、無意味に苦痛を与えることにしかなりません。収容が長期化するという事態は、結果的に送還の見込みがないにもかかわらず収容を継続してしまっているということになりますから、その収容には正当性がないということを意味するのです。

 現に大村入管センターふくめ各地の入管施設において収容のいちじるしい長期化が生じているわけですが、入管当局にとって、長期収容の目的とはいったい何なのでしょうか? なぜ、入管は長期収容をおこなっているのでしょうか?

 入管当局は、東京オリンピック・パラリンピックにむけての治安対策であるかのように言いますが、端的に言ってこれがウソであることはすでにみてきたとおりです。仮放免者が仮放免許可条件に違反する就労などの行為をおこなうから仮放免審査が厳しくなっているのだといった説明も、すでに否定したとおりです。

 長期収容は、入管にとってすらその正当性を主張しうる根拠をみいだせないものなのです。その正当性を主張できないからこそ、仮放免者は「我が国社会に不安を与える外国人」であるなどというプロパガンダを発して、その拘禁を正当化しようとしているのでしょう。

 入管は収容が長期化している事実をできるだけ小さく見せようという、ごまかしすらおこなっています。長期収容問題を報じた『毎日新聞』の記事から引用します(注2)

法務省によると、17年12月19日時点で、全国の施設には1386人が収容され、長期収容者は36.8%の510人。16年末は収容者1133人のうち長期は313人で27.6%だった。

 ここで「長期収容」といわれているのは、6カ月以上の収容です。これについては後日、あらためて検証した記事を公開しますが、ここでの510人(36.8%)という数字は、収容期間が6カ月以上の被収容者を少なくみせようという意図のもと、特殊なしかたで算出された数字です。

 入管は複数の収容施設をもっており、その施設間での被収容者の「移収」をしばしばおこなっています。たとえば、ある被収容者が、東京入管に9ヵ月間収容されたあと、東日本入管センターに移収され、そこに2ヶ月間収容されているとします。この場合、この人は通算で11ヶ月間収容されていることになります。

 このように通算での収容期間で計算した場合、昨年末の時点で6カ月以上収容されている人が510人(36.8%)しかいないということは、面会等をつうじて私たちが各施設の被収容者たちから把握している実態からみて、ありえません。もっと大きな数字になるはずです。「510人(36.8%)」という法務省の発表している数字は、移収によって収容期間がキャンセルされる計算方法でみちびきだされたものと考えられます。つまり、さきにあげた通算で11ヶ月間収容されている人の例でいえば、移収後の「2ヶ月」だけが収容期間としてカウントされるような計算方法をとっているのだろうということです。この点は、後日あらためて検証したものを公表します。

 上の毎日新聞が報じているデータは、法務省がこれに先立って国会議員に報告している資料にのっているものとも同じものです。つまり、法務省は、収容長期化の実態について、新聞記者と国会に対し、問題を小さくみせようとして操作したデータを報告した、ということになります。こういったことからも、収容の長期化は、入管当局にとってすら、その実態をできるだけ隠しておきたい問題であり、正当化のしようのないものなのだということがわかります。



8.結語

 とりわけ2015年以降について、入管が収容長期化をおしすすめている目的は何なのか、という問いにもどりましょう。

 オリンピック・パラリンピックや治安対策といった論点は、本質ではありません。

 入管が長期収容、あるいは再収容をつうじておこなおうとしているのは、仮放免者をはじめとする「送還忌避者」を送還によって減らす、ということにほかなりません。長期間にわたって無期限に監禁することで心身を痛めつけ、在留を断念させて送還に追い込む、ということです。これこそが、入管が収容を長期化させている本当のねらいにほかなりません。

 このように身もふたもない、正当化のしようもない目的によって長期収容がおこなわれているからこそ、入管当局は、治安対策といったニセの論点を煙幕のように提示したり、収容の長期化を小さくみせるような操作をおこなったりしているのだと言えます。

 入管行政にたずさわっている人もふくめ、私たちに突きつけられている論点は、単純なものです。すなわち、長期収容・再収容によって他者の心身に打撃を与えるという暴力的な方法を、送還に同意させる手段としてもちいることについて、私たちはこれを許すのかどうか、ということです。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


《注》

注1 法務省入管によるプレスリリースの全文は以下のとおり。

退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について
法務省では,退去強制令書が発付されてから相当の期間収容が継続している被収容者について,今後,一定期間ごとにその仮放免の必要性,相当性を検証・検討し,個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用しつつ,より一層適正な退去強制手続の実施に努めていくこととしました。
 出入国管理及び難民認定法においては,退去強制令書が発付された者について,直ちに本邦外に送還することができないときは,送還のための身柄の確保及び在留活動を禁止することを目的として,送還可能のときまで収容することができるとされており,その一方で,身柄の拘束をいったん解く必要が生じた場合に備えて,仮放免制度が設けられています。
 その仮放免については,これまでも,各地方入国管理官署において適正な運用に努めてきましたが,近年,種々の理由から,収容が長期化する被収容者が増加する傾向にあります。
 そのため,今般,仮放免制度が設けられている趣旨にかんがみ,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過してもなお送還に至っていない被収容者については,仮放免申請の有無にかかわらず,入国者収容所長又は地方入国管理局主任審査官が,一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討することとしました。
 そして,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこととし,より一層の適正な退去強制手続の実施に努めてまいります。
平成22年7月30日    法務省入国管理局


注2 「入管施設:不法滞在、長期収容急増 国、「仮放免」抑制」 - 毎日新聞 2018年5月21日 07時00分(最終更新 5月21日 07時00分)

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