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Thursday, April 30, 2020

被収容者全員を解放し、すべての仮放免者に在留資格を!(入管庁に申し入れ)


 本日、出入国在留管理庁(入管庁)に対し、関東・東海・関西の6団体で申入書を提出しました。

 申し入れは、入管施設に収容されている人全員を解放すること、および、すべての仮放免者に在留資格を付与することを求めるものです。

 入管収容施設では、職員らをとおして被収容者への新型コロナウイルスの感染の発生する可能性が否定できません。そうなった場合に多くの犠牲者が出るのは目に見えて明らかです。

 また、収容を解かれても、仮放免者は、働く権利をうばわれ、社会保障から排除されています。このような仮放免状態で、コロナウイルスが蔓延する危機の進行する社会に放置しつづけることは、ゆるされるものではありません。

 このような理由から、上記2点(収容施設からの解放と在留資格の付与)を入管庁長官あてで申し入れました。

 なお、入管施設の被収容者や仮放免者たちがこのコロナ禍のなかで直面している生命の危機や生活上の困難は、たんにウイルスによってのみ生じているものではありません。入管がこれまで送還業務において外国人たちをどうあつかってきたのか、ということも同時に問わなければなりません。以下、そうした観点もこめての申入書となっています。ひきつづき、ご注目のほど、お願いします。


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申 入 書

2020年4月30日

出入国在留管理庁
 佐々木 聖子 長官殿

 以下につき申入れます。

一、貴庁の収容場、及び収容所(各センター)の被収容者全員を直ちに仮放免、もしくは在留資格を付与して放免すること。

二、退去強制手続き中につき、在留特別許可を求めるものには全て在留特別許可を付与すること。及び退去強制令書が発付されている全ての仮放免者に1年以上の在留資格を付与すること。


 申入れの理由について

(1)貴庁の収容場、及び収容所(東日本入国管理センター、大村入国管理センター)の被収容者は、お互い濃厚接触が避けられない環境で換気の悪い密閉施設に拘禁されている。しかも、被収容者は十分な医療を受けられず、油物を中心とする栄養バランスの悪い支給食等の劣悪な処遇下にある。このような処遇下において、人間の時間的空間的感覚を奪う密閉施設に長期間収容され、心身ともに疲弊し、多くの被収容者はうつ病を患い薬漬け状態にある。さらに、高血圧症、糖尿病、心臓疾患、呼吸器疾患等の基礎疾患を有する被収容者も多数いる。

 このような貴庁の収容施設での被収容者の新型コロナウイルス患者の発生は、集団感染と重症化を引き起こし、多くの犠牲者が出るのは目に見えて明らかである。それゆえ被収容者の中に、新型コロナウイルスの感染者を発生させることは、絶対避けなければならない。

 摘発、再収容を止めている現在において、被収容者への感染源となるのは、主に貴庁職員(主に処遇部門の職員)、ガードマン、支給食業者などとなるが、これら職員等に対し、PCR検査を行っていない。仮にPCR検査をして陰性だったとしても次の日に感染することもあり得る。しかも感染を恐れ職員との社会的距離を求める被収容者の部屋の中に職員が入ってきて毎日点呼をする、大阪入管においては支援者の要請を無視し、大阪入管局長判断として被収容者と職員が三密状態で面会するよう職権を用いて強要する(4月27日からは弁護士・領事以外は面会禁止となる)、さらには制裁目的の隔離処分をした際には、多数の職員が被収容者と濃厚接触して連行するなど、被収容者を感染から防御する措置を行おうという意志も行動も貴庁には感じられない。

 こうした貴庁のずさんな対応に対し、すでに多くの被収容者から不安や貴庁に対する抗議の声が支援者に寄せられている。

 私たちは非常に憂慮している。貴庁収容施設内において新型コロナウイルスの感染が拡大してからでは遅い。被収容者の人命を守るためにも直ちに仮放免、あるいは在留資格を付与して放免する措置を講じることを強く求める。


(2)仮放免者は、働く権利を奪われ、健康保険等の社会保障制度から排除されている。生存権を奪われた仮放免状態で新型コロナウイルスが蔓延する危機が進行する社会に放置しておくことは人道上許されるものではない。緊急避難措置として、全ての仮放免者に対し、1年以上の在留資格を付与することを求める。その中において、帰国希望以外のものには、在留特別許可の基準を大胆に緩和し、永続的に日本在留を認めるよう求める。

 貴庁は、2016年4月ころから退令仮放免者を減らすという方針のもとに、極力仮放免しない方針に転換し、その一方で在留特別許可の基準を厳しくし、帰国忌避者を増大させた。その結果、長期被収容者が激増し、被収容者と貴庁職員との対立を増長させ、収容場、収容所においては数々の職員による暴行事件を多発させた。大村入国管理センターにおいては、仮放免を求めて完全絶食をするナイジェリア人を外部病院に搬送することなく、餓死させる事件も起こした。

 また、この間、日本国籍者や在留資格を有する幼い子どもからも親を奪い再収容した。貴庁がこの間やってきたことは、①仮放免しない、②仮放免者を再収容する、③在留特別許可の基準を厳しくし在留特別許可件数を激減させる、④難民在特を激減させることである。こうして以前なら在留特別許可を得て救済されていた人さえ、新型コロナウイルスが蔓延しつつある日本社会に、在留資格のないまま(働くことも健康保険に加入することもできないまま)放置されている。

 公衆衛生の危機のさなかに、仮放免者を放置すべきではない。日本人配偶者、永住者・定住者の在留資格のある配偶者、日本に子どもや家族がいる仮放免者、難民申請者、日本に生活基盤のある長期滞在の仮放免者などについては在留特別許可を大胆に緩和し、在留資格を付与し救済するよう求める。また帰国希望であっても新型コロナウイルスによって帰国できないものは、帰国できるまでの間、特定活動の在留資格を付与し、救済するよう求める。
 
以 上


全国仮放免者の会
WITH(西日本入管センターを考える会)
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
難民支援コーディネーターズ・関西
START(外国人労働者・難民と共に歩む会)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)

Thursday, March 26, 2020

なぜ入管で収容が長期化するのか?――「送還忌避者」をめぐる考察(第1回)


1.はじめに

 入管施設の収容長期化問題が社会的に注目されるなか、入管から国外退去を命じられ*1ながらも、帰るに帰れない事情をかかえる外国人の存在が知られるようになってきました。「帰るに帰れない」事情は、個々人によってさまざまです。国籍国に帰れば身の危険が予想されるという人もいれば、家族が日本にいるために帰国できないという人もいます。長期間にわたって日本で生活してきて出身国にはすでに生活基盤がないという人もいます。

 退去を命じられて入管施設で長期間収容されるということが、いかに過酷な経験なのかということについては、近年多くの報道もなされ、広く知られるようになりました。収容期限の定めがなくいつ出所できるともわからない不安、劣悪な医療、拘禁によるストレスと身体の不調(高血圧、不眠、頭痛など)、懲罰的な隔離処分や「制圧」と称しての職員による暴行などなど。このような「過酷」という言葉ですら足りないほどの入管施設の実態を報道などで知った人は、退去を拒否している外国人に対して、しばしばつぎのような問いを投げかけたくなるのではないでしょうか。

「国に帰れない理由は何ですか?」「どうして日本に残りたいのですか?」「そもそも、なぜ日本に来たのですか?」

 退去を拒否している人たちのそれぞれの事情を問い、理解しようとすることは大事でしょう。しかし、こうして外国人に向かって問うのと逆向きに、「日本の政府と社会が外国人をどうあつかってきたのか?」ということもまた問う必要があるのではないでしょうか。現在「不法滞在」状態にある外国人たちが日本にやって来て、ここで暮らすようになったのは、たんにその人たちひとりひとりの意思の結果ではあるとは言えません。それは日本社会が外国人を必要とし呼び込んできたことの結果でもあるからです。そうして外国人たちを呼び込んできた過程には、当然ながら入管政策も深くかかわってきました。

 あとでみるように、退去強制処分が出ているけれども国外退去を拒否している外国人は、現在、3,000人以上います。法務大臣や入管庁はこれを「送還忌避者」と呼び*2、収容長期化の原因だとしています。つまり、収容長期化は、国外退去すべき外国人たちが退去せずに送還を拒否しているために生じている問題だと主張しているわけです。

 しかし、私たちの見方はこれとちがいます。入管当局が「送還忌避者」と呼ぶところの外国人が数千人規模で存在するにいたった背景には、労働力不足から外国人を日本の政府と社会が呼び入れて来た歴史があります。近年、技能実習生制度の問題点も社会的に暴かれてきていますが、外国人労働者を利用しようとするだけの政策のツケが、現在の「送還忌避者」の増大をまねいているのです。「送還忌避者」がいつから、どのようにして増大するようになったのか。そこに入管政策がどのように関わってきたのかということを、今回から4回のシリーズ記事で問うていきたいと思います。

 第1回の今回は、現在、入管当局が「送還忌避者」をどのように位置づけ、またどんな姿勢で収容長期化と「送還忌避」の問題にのぞもうとしているのか、という点をおさえておきます。



2.収容長期化問題と「送還忌避者」

 2-1 長期収容への批判の高まり

 入管施設における収容の長期化に対し、世論の批判が高まっています。こんにち「送還忌避者」という言葉が法務大臣や入管庁によって積極的にもちいられるようになったのは、収容長期化への世論の批判から防御しようとする文脈においてです。

 まずは、収容長期化がどのようにして報道などで問題とされるようになったのか、ということを簡単にふりかえっておきましょう。

 収容期間の長期化傾向が顕著になるのは、施設によって若干のちがいがありましたが、2016年ごろ以降です。退去を命じられた外国人について、入管は施設に収容するのを原則としていますが、一時的に収容を解いて施設から出所させる「仮放免」という制度があります*3。この仮放免の許可*4が極端に認められにくくなったのが、施設によって時期のずれはあるものの2016年前後です。仮放免許可がこの時期に出にくくなった契機や背景については、次回以降の記事でくわしくみていきますが、それぞれの事情で帰国をこばんでいる人が仮放免されなくなることで、長期間にわたって施設に収容されている被収容者が増えていったわけです。

 こうして収容長期化の傾向が顕著になるなかで、各施設で被収容者たちによる抗議の声があがります。16年2月と7月に大阪入管、17年5月に東京入管、18年4月に茨城県牛久市にある東日本入管センターでそれぞれ被収容者による集団ハンガーストライキ(ハンスト)がおこなわれました。こうして被収容者自身が抗議の声をあげたことが多くのメディアで報道され、「密室」とも言うべき入管収容施設への社会的な関心が高まりました。

 この間、被収容者が死亡するという事件も各施設で起こっています。17年3月に東日本入管センターに収容されていたベトナム人がくも膜下出血で死亡。18年4月には同じ東日本センターでインド人被収容者が自殺。19年6月には大村入管センターでナイジェリア人被収容者が長期収容に抗議して食事を拒否したすえに餓死するという事件も起こりました。

 被収容者たち自身によるハンストなどの抗議にくわえ、あいついで被収容者の死亡事件が起きたことで、医療問題をはじめとする入管施設の処遇の実状や長期収容の問題がマスメディアなどで大きく報じられるようになりました。こうして、入管収容施設の実態が広く知られるようになると、市民による被収容者支援や入管への抗議の動きも広がり、SNSなどでも入管の収容・送還のあり方が活発に批判されるようになりました。



 2-2 収容長期化は「送還忌避者」のせいなのか?

 こうして収容の長期化への世論の批判が高まるなか、入管庁(出入国在留管理庁)は2019年10月、有識者らによる「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げ、収容長期化を防止する方策などを検討することになりました。

 入管庁によって収容の長期化が深刻な問題として認識されているようだということ、そして、その防止策の検討がなされようとしていること自体は、歓迎すべきことです。

 しかし、この専門部会での議論のしかたには、いくつか大きな問題があるようにみえます。ひとつは、収容と送還に関して当事者というべき被収容者や仮放免者の声を聞かずに議論が進められようとしていることです。過酷な長期収容に耐えてまで送還を拒否している当事者たちには、それぞれ帰るに帰れない事情があります。専門部会の委員各氏には、そうした事情を当事者たちから直接に聞く機会をもうけてほしいという趣旨で、11月25日に仮放免者の会として入管庁に申し入れをおこないました*5

 もう1点、危惧せざるをえないのは、この専門部会での議論が、収容の長期化をもたらしている原因と責任について一面的な前提にもとづいてすすめられていくのではないかということです。たとえば、山下貴司法務大臣(当時)は、専門部会の立ち上げに先だってつぎのように発言しています。

 退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、様々な理由で送還を忌避する者がおり、それらの存在が、迅速な送還に対する大きな障害となっているばかりでなく、収容の長期化の大きな要因となっております。
(2019年10月1日法務大臣記者会見)*6

 「送還を忌避する者」という言葉が使われていますが、つまり法務大臣は、収容が長期化するのは送還を拒む者のせいだと言っているわけです。

 収容長期化問題について入管当局がこの間主張している論理は、きわめてシンプルで、ある意味「わかりやすい」ものです。すなわち、入管施設に収容されているのは退去強制令書の発付を受け国外退去すべき人たちであって、この人たちが送還にすみやかに応じず国外退去を拒否しているために収容が長期化しているのだというものです。収容が長期化するのは帰らない外国人がわるい、なぜなら退去命令にしたがって帰国すればすぐにでも施設から出所できるのだから、というのがこの問題についての入管の理屈なのです。

 しかし、この「わかりやすい」説明においては、日本政府の責任はいっさい問われることがありません。国籍国には帰ろうにも帰れないとして送還を拒否している人たちがそれなりの厚みをもって存在している背景には、日本政府の入管政策、外国人労働者をめぐる政策、難民庇護のあり方が関係しているはずです。そうした日本政府のあり方が問われないまま、収容が長期化するのは退去強制に応じない外国人がわるいなどと「送還忌避者」の側にのみ一方的に責任を負わせるような議論でよいのでしょうか?

 もし、法務大臣・入管庁が言うように、収容長期化の原因と責任がもっぱら「送還忌避者」の側にのみあるのだと考えるならば、この問題を解決・解消するには、強制送還をより強力に進めるべきで、そのための法改正・制度変更が必要だという議論になるでしょう。じっさい、入管庁は「収容・送還に関する専門部会」の議論をそうした方向に誘導しようとしているふしがあります。*7

 しかし、「不法滞在」状態になって退去強制処分を受けている外国人のうち、送還を拒否して「送還忌避者」となった人が数千人規模で存在しているという現状は、たんに個々の「不法滞在者」「送還忌避者」にその原因や責任を帰せばすむという問題ではありません。この点については、次回以降の記事で論じていきます。



3.従来の入管政策を批判的にふりかえること

 3-1 3,000人超の「送還忌避者」

 収容長期化の原因とされる「送還忌避者」ですが、では入管当局はこれをどう定義しているのでしょうか? また、その人数はどのぐらいにのぼるのでしょうか。

 「送還忌避者」の定義については、これをただした福島みずほ参議院議員の質問趣意書に対し、政府は昨年12月13日付の答弁書で以下のように答えています。*8

 お尋ねの「送還忌避者」については、法令上の用語ではないが、出入国管理の実務上、退去強制令書の発付を受けたにもかかわらず、自らの意思に基づいて、法律上又は事実上の作為・不作為により本邦からの退去を拒んでいる者を指して用いている。

 では、この「送還忌避者」はどのぐらいの数にのぼるのでしょうか?

 入管庁は昨年10月1日に公表した資料で*9、その集計方法をあきらかにしていませんが、6月末時点で退去強制令書の発付を受けた被収容者1147名のうち858人が送還を忌避しているとしています。

 一方、入管庁資料は、おなじく退去強制令書の発付を受けているものの、現在は収容を解かれ仮放免されている人(退令仮放免者)の人数を2,302人としています。この退令仮放免者のうち大多数は、さきの「送還忌避者」の定義にあてはまる人たちと考えてよいものです*10

 とすると、現状で「送還忌避者」は、収容中と仮放免中の人数を合計して現状で3,000人超といったところになるでしょう。



 3-2 「送還忌避者」に対する強硬方針はすでに破綻している

 入管当局は、数千人規模にふくらんでいる「送還忌避者」に対して、これを強制送還によって縮減していこうという方針に固執しています。次回以降の記事でくわしくみていくように、2016年以降、入管は、非正規滞在者の在留をみとめてその滞在を正規化する在留特別許可の基準を厳しくするいっぽうで、長期収容と退令仮放免者の再収容によって「送還忌避者」を国外にたたき出そうというきわめて強硬な方針をとってきました。

 ところが、現状800人以上が各地の収容施設で国外退去を拒んでおり、さらに2,300人が退令仮放免者として施設の外で暮らしています。収容中の800人をさらなる長期収容の継続で退去に追い込み、そのことで生じた収容施設の空きに仮放免者を順次再収容していく。そうやって2,000人をこえる退令仮放免者を退去させるまで、いったい何年かかることでしょう?

 2016年以降の4年あまりのあいだに、自殺や拒食による餓死をふくめ入管施設で3人もの被収容者が命をうしないました。各地の施設で長期収容への抗議のハンストがあいつぎ、被収容者の自殺未遂・自傷行為がひんぱんに起こっています。入管が現行の強硬方針を手放さないかぎり、さらに多くの血が流れることになるでしょう。被収容者の死亡事件は今後もくりかえされ、おびただしい数の人が先の見えない監禁生活のなかで心身を病むことになるでしょう。

 現に今も、病気やけがのある被収容者たちは、ろくな治療を受けられないままいつ終わるとも知れない監禁下で苦しんでいます。入管は、普段はさんざん仮放免許可を出ししぶっておいて、被収容者がガンや脳梗塞といった生命にかかわるリスクのきわめて高い病気にかかったとみるや今度はあわてて仮放免をして収容所から放り出すといったことを、これまでしばしば行ってきました。高額な治療費を負担することをきらってのことと思われますが、虐待的な入管収容により病んだ結果、放り出されて仮放免者となった人たちは、治療できるあてもなく途方にくれることになります。仮放免者は社会保険制度から排除されるなど無権利状態にあり、医療費も全額負担しなければなりません。最悪のケースとして、なすすべなくそのまま命を失う人も出てきます。入管が方針を改めなければ、こうしたことは今後も確実に起こりつづけるのです。

 現実的にみて、長期収容をつづけることで「送還忌避者」を縮減していくという方針はすでに破綻しています。今後5年か10年、あるいはもっと多くの年月をかけてさらに犠牲者を出し続けたとしても、3,000人をこえた「送還忌避」の被収容者および退令仮放免者の人数をゼロに近いところまで減らすことはできません。あるいは、政策決定に関わる者の一部ないし大部分は、無責任にも、内心それでも構わないと考えているのかもしれません。いずれにせよ、それのもたらす結果は明らかです。破綻のあきらかな方針に入管当局が今後も固執し続ければ、病死や自殺などの犠牲が積みあがっていくだけです。それはほとんど「虐殺」ともいうべき最悪の結果であり、絶対に起きてはならないことです。

 さきにみたように、「送還忌避者」の存在が収容長期化の原因であるというのが入管当局の主張です。「送還忌避者」の存在が「迅速な送還に対する大きな障害」なのだ、と。なるほど、「送還忌避者」が増大しているという現状は、送還業務がとどこおっていることを示しているのでしょう。しかし、そもそもその「送還忌避者」が数千人規模にふくらむまでになったのはなぜなのでしょうか? どのような入管政策の結果として、こうした状況がもたらされているのでしょうか?

 収容の長期化への世論の批判が高まるなか、政府はその責任を「送還忌避者」に転嫁しようとしています。そうして政府がこれまでの政策の問題点をみずから検証することをおこたるならば、現実的に問題解決につながる可能性のないばかりか、最悪の結果を招く可能性の高い強硬方針に今後も固執するしかなくなります。

 従来の政策を批判的にふりかえり、送還と収容、さらには退去強制の対象となっている長期滞在者や難民に関する政策を転換させるのか。それとも、「迅速な送還に対する大きな障害」と入管が位置づける「送還忌避者」を長期収容と再収容によって国外退去に追い込むという非現実的かつ非人道的な方針にあくまでも固執して、今後とも何人もの人間を死に追いやっていくのか。いま重要な岐路に私たちは立っているのだと言えます。



◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

【注】

*1: 法的に厳密にいうと、「(退去強制手続を経て)退去強制令書(の)発付(処分)を受けた」となりますが、長いので(入管職員や法務大臣など以外で)こういう言い方をする人はあまりいません。略して「退去強制」「退去強制処分」とか「退令」「退令発付」「退令処分」とか言われたり、やや不正確ですが、「強制送還」「強制退去」「(国外)退去命令」などという語が使われることも多いです。「退去強制を受けた」「退去を命じられた」等も同じ意味で使われています。ちなみに、上陸手続において上陸許可等が認められず退去を命じられることを指す「退去命令」という用語があり、これは「退去強制令書発付処分」とは制度的に区別されますが、非常にまぎらわしいです。

*2: 私たちが把握しているかぎり、入管当局が最初に「送還忌避者」という言葉をおおやけに使いだしたのは、2013年度予算の概算要求においてです。法務省は、「送還忌避者の専属輸送による送還経費」、つまりはチャーター機をもちいた集団送還のための経費として、およそ3000万円を要求し、国会の承認をえて、これを獲得しています。以後、法務省は、この名目でチャーター機での送還経費を獲得してきました。

*3: 退去強制手続上おこなわれる収容には、「収容令書」を受けた場合と「退去強制令書」を受けた場合の二通りがあり、それを受けて「仮放免」にもいわゆる「収令仮放免」と「退令仮放免」の二種類があります。ここでいう「仮放免」は、後者です。

*4: どういう場合に仮放免が許可されるのかについては、入管は「個別の事案ごとに諸般の事情を総合的に勘案して判断されるものであり,許否に係る基準はない」(入管庁「仮放免許否判断に係る考慮事項」より)とだけ述べ、基準を明らかにしようとしません。したがって仮放免許可事例の実態からいうしかありませんが、収容が長期間にわたったこと、病気の治療・療養や行政訴訟の準備の必要性、あるいは難民申請者が難民であることの立証作業をする必要があるなどの事情が、仮放免許可を求める理由として重く見られていたようです。

*5: 当事者の声を聞いて! 法務省に申し入れ 収容・送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2019年11月29日)

*6: 法務省:法務大臣閣議後記者会見の概要

*7: 「収容・送還に関する専門部会」は、昨年10月から今年2月にかけて7回の会合を開いています。法務省のウェブサイトに掲載されている「開催状況」によると、専門部会では、送還を「忌避」する者に刑罰を科すことや、難民申請者を送還しやすくするための難民認定制度の改変などを議論しているようです。
 また、10月21日に開かれた第1回会合で、入管庁は「送還忌避者の実態について」と題された資料を委員たちに配布しました。この資料のなかに、仮放免者が「殺人未遂事件」の「加害者」になったとの記述がありますが、これは虚偽の事実であったことがあきらかになっています。
入管庁が仮放免者による「殺人未遂事件」をでっちあげ 資料捏造問題 - 仮放免者の会(PRAJ)(2019年12月1日)
 入管庁は、こうして資料を捏造してまで「送還忌避者」があたかも日本社会にとって危険な存在であるかのような印象づけをおこなおうとしたわけです。入管庁が、強制送還をより強力に進めるための制度変更へと専門部会での議論を誘導しようという意図をもっているのはあきらかでしょう。

*8: 第200回国会 外国人の収容および「送還忌避」に関する質問(2019年12月2日) - 福島みずほ OFFICIAL SITE(2019年12月25日)
 外国人の収容および「送還忌避」に関する質問主意書:参議院

*9: 法務省:送還忌避者の実態について

*10: 退令仮放免者であるということは、仮放免許可を受けるまで一定の期間、送還をこばんできたという場合がほとんどだからです。みずからの意思で国外退去をこばんでいるわけではなく、外的な要因によって退去が不可能になっている仮放免者、あるいは帰国準備のための必要性から仮放免を許可されている人は「送還忌避者」の定義に当てはまりませんが、こうした人たちは退令仮放免者のうちの数パーセントにすぎないと思われます。


 
                 

Saturday, March 21, 2020

【延期のお知らせ】「収容・送還専門部会」に関する記者勉強会(3月27日)は延期します

 3月27日(金)に予定していた下記の記者勉強会は、コロナウイルス感染防止の観点から、延期することとします。延期のお知らせが直前になってしまい、ご迷惑をおかけします。
 あらためての開催につきましては、決まりしだい告知させていただきますので、よろしくお願いいたします。
(3月26日 21時52分更新)




 「収容・送還問題を考える弁護士の会」「仮放免者の会」の共催で記者勉強会をおこないます。

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「収容・送還専門部会」に関する記者勉強会のご案内
最新情報の提供と質疑応答を行います!


「収容・送還問題を考える弁護士の会」・「仮放免者の会」 共催

弁護士 高橋 済 (台東協同法律事務所)
TEL 03-3834-5831FAX 03-3834-5833

弁護士 指宿昭一 (暁法律事務所)
TEL 03-6427-5902FAX 03-6427-5903

弁護士 駒井 知会 (マイルストーン総合法律事務所)
TEL 03-5790-9886FAX 03-3467-5585



日時) 2020年3月27日(金)18時~20
場所)〒100-0013 東京都千代田区霞が関1丁目13号 
弁護士会館5階508号室(ABC
報告者) 「考える弁護士の会」弁護士・「仮放免者の会」  (撮影可能)

勉強会の趣旨)
201910月より、第7次政策懇談会「収容・送還に関する専門部会」が開催されており、当初、2020年3月までに改正案の意見をまとめる異例の審議スケジュールが組まれていましたが、3月現在、意見(報告書)がまとめられていない状況です。しかし、当初の見立て通り、送還忌避罪の創設や難民申請者の早期送還を実施するという方向性に変わりはなく、そのような内容の結論の報告書となることは、これまでの議論内容からも容易に推察されるところです。他にも、仮放免された者による逃亡等の行為に対する罰則等の創設、メディア・支援者・研究者等からの批判が止まない無期限収容、全件収容主義などの現行の運用を維持すること、被収容者に対するペナルティーの設置などが議論されていることが公開されている議事録概要などからうかがわれます。

難民認定や在留資格を求める難民認定申請者を巡り、今年に入って勝訴判決の報が続く一方で、今月10日にはスリランカに44名の集団送還が実施されております。また、収容施設内での被収容者の実態は更に凄惨を極めております。

今回の勉強会では、収容・送還に関する専門部会での議論の問題点、収容・送還の最新の実態や関連裁判例の動向などにつき、これまでの勉強会で十分に時間をお取りできなかった質疑応答の時間を主体として、会場全体で議論しながら情報を共有させていただきたいと思います。                          

以上




◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


関連ページ





Saturday, March 14, 2020

入管庁が難民申請者ふくむスリランカ人44名を集団送還


 3月10日(火)、入管庁はスリランカ人44名を強制送還しました。仮放免者の会として、これに抗議の意思を示したいと思います。

 11日に法務省が報道関係者むけに発表したところによると、10日にスリランカに送還されたのは20~60歳代の44名(うち女性3名)、約4,000万円の経費がかかったということです。



被送還者数確保の目的化

 チャーター機をもちいての集団強制送還は、2013年に開始されて以来、今回で8回目です。私たちは、本人の意思に反しての無理やりの送還そのものに反対ですが、このチャーター機での集団送還についてはとくに批判し問題にしてきました。チャーター機での送還では、個別の無理やり送還にもまして、きわめて深刻な人権侵害がおこりやすいからです。

 チャーター機での集団送還は、従来からおこなわれてきた個別の送還と比較してコスト面での利点があるとして導入された経緯があります。つまり、一般の乗客も乗る航空機に被送還者を搭乗させる個別送還よりも、政府が借り上げた航空機に数十人から100人ほどの被送還者を乗せて一度に送還する集団送還のほうが、ひとりあたりの送還費用は安くすむはずだというわけです。

 しかし、以下の記事で指摘したように、この方式の送還は、法務省の当初想定したようなコスト抑制効果はあがらないいっぽうで、なりふりかまわず送還対象者をいわば「かき集める」ということがおこなわれてきました。


 たとえば、配偶者や子どもが日本にいる人など、人道的な見地から在留を認めることを検討する余地のおおいにあるような人たちがチャーター機で送還され、家族がばらばらになるといった事例を、私たちは調査にもとづいて指摘してきました。



裁判を受ける機会をうばう難民申請者の送還

 チャーター機での送還において、難民申請者については、入管は裁判の機会をうばってまで送還してきました。難民不認定処分について法務大臣に審査請求(異議申し立て)をおこなっている人に対して、その棄却を通知してただちに強制送還してしまうという手法での送還です。

 今回の集団送還においても、難民申請していた人がこうした手法で多数送還されたようです。東京入管などの被収容者に聞き取りしたところ、難民申請していた人が送還前日の9日に難民審査について話があるなどと居室から呼び出され、そのまま送還されてしまったというケースを多数確認できました。難民申請の却下を通知されてただちに空港まで連行されて送還されてしまったのだと考えられます。

 当然ながら、難民申請者は行政処分である難民不認定処分に対して、不服であれば裁判にうったえる権利があります。難民として認定しないという処分が裁判で取り消されたという事例も少なくありません。入管が、みずから出した難民不認定の処分について、難民申請者の訴訟を封じるようなかたちで強制送還をおこなったことは、断じて容認できません。

 上記の手法で2014年に強制送還されたスリランカ人が、裁判を受ける権利を侵害されたとして、国に損害賠償を求めた訴訟もおこなわれています。


 残念ながら、この訴訟は2月27日に東京地裁にて原告敗訴の判決がありましたが、控訴審にて今後あらそわれることになります。こちらの訴訟の推移もひきつづき注目していきたいと思います。



被送還者の安否

 今回の集団送還では、難民申請して日本政府に庇護を求めていた人が多数送還されました。その暴挙に怒りをおぼえるとともに、送還された人たちの安否が心配されます。私たちとしても、連絡のとれる被送還者から、送還後の状況、また、どのようなしかたで送還がおこなわれたのかを調査したいと思います。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇



関連記事(これまで7回のチャーター機送還について)
  1. 入管による一斉無理やり送還に抗議します - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年7月6日)
  2. チャーター機によるタイ人一斉送還に抗議する申入書 - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年12月25日)
  3. 【抗議声明】スリランカ・ベトナムへの集団送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2014年12月30日)
  4. 【抗議声明】バングラデシュへのチャーター機送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2015年12月13日)
  5. 【抗議声明】スリランカへのチャーター機送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2016年9月30日)
  6. 【記者会見のお知らせ】内外で排外主義への危機感が高まる中、入国管理局がチャーター機を使用してタイ人を集団送還 - 仮放免者の会(PRAJ)(2017年2月21日)
  7. 【抗議声明】ベトナムへのチャーター機での集団送還について - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年3月6日)


Wednesday, February 26, 2020

2月27日(木)判決言い渡し - スリランカ人強制送還国賠(東京地裁)


 2014年12月にチャーター機で集団送還されたスリランカ人のうち2名が、国を訴えた裁判の判決が言い渡されます。都合のつくかたは、ぜひ傍聴をお願いします。

日時:2020年2月27日(木曜)、13:10
場所:東京地方裁判所 705法廷


 また、判決後に以下の要領で弁護団らの記者会見をおこないます。


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スリランカ人等一斉強制送還による裁判を受ける権利侵害に対する国家賠償請求訴訟判決報告会見
弁護士 指宿  昭一
(暁法律事務所)
電話03-6427-5902、ファックス03-6427-5903

判決   27日13時10分 東京地方裁判所705法廷
記者会見 2月27月()1  司法記者クラブ
会見者  弁護団・支援者(仮放免者の会事務局)、原告のスカイプによる出席を検討中
     撮影などOK
担当部:東京地方裁判所民事第43部合議C
原告 スリランカ人2名
被告 国

 必要があれば、事前に訴状などの資料を提供します。

1 チャーター便送還の概要
20141218日、スリランカ国籍の26名とベトナム国籍の6名、計32名の非正規滞在者がチャーター便によって強制送還された。同送還の被送還者には,少なくとも難民認定申請を行っていた者が複数名含まれていた。
2 証拠保全手続きにおいて、強制送還手続の状況を録画したビデオが開示された。「殺される」などと言って泣き叫ぶ原告の映像がある(記者会見において公開)。
3 送還されたスリランカ人のうち2名が原告となり、19日に、裁判を受ける権利の侵害等を理由に国に合計1000万円の賠償を請求する訴訟を提起した。
4 なお、本件強制送還については、日弁連が、2019924日付で法務大臣に対して警告を出している(2015年度第33号人権救済申立事件)。

以上
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関連記事


Sunday, February 16, 2020

ハンスト抗議者の再収容をやめるよう申し入れ、東日本入管センターに(2月5日)


1.ハンスト抗議者への懲罰的な再収容

 これまで数多くの報道もなされ、このブログでも報告してきたとおり、茨城県牛久市にある入管施設、東日本入国管理センターでは昨年5月より長期収容に抗議しての被収容者たちのハンガーストライキ(ハンスト)が断続的におこなわれてきました。昨年6月に長崎にある大村入管センターで食事を拒否していたナイジェリア人被収容者が餓死するという事件があり、これ以降、東日本と大村の両センターでは、ハンストで体調の悪化した被収容者を「仮放免」という制度で出所させる措置をとるようになりました。ところが、こうしていったん仮放免された人を、入管は2週間といった異例の短期間で再収容していることも、報道等が出ているとおりです。

 2週間だけ仮放免して再収容するという、この入管のやりかたは、前例のないきわめて奇妙なものです。しかも、抗議のハンストをおこなった人については、仮放免中の居住地がどこであるかにかかわらず、出所した元の施設に再収容するというこれもまた異例なやり方を入管はとっています。たとえば大村センターから出所した人は、仮放免中の住所が関東地方であっても、東京入管で拘束しながらもそこで収容せず、わざわざ飛行機にのせて長崎の同センターまで移送して再収容しているのです。たんに再収容するだけならば東京入管でもよいものを、わざわざ護送する職員のぶんもふくめて航空券代をかけて長崎まで移送しているわけです。

 こうした入管のやりかたに対しては、抗議者本人および周囲の被収容者を威圧・恫喝する見せしめのためのものだとして、被収容者たちの抗議をさらにまねくことにもなっています。短期間の仮放免後に再収容されても、またハンストを再開するひとも少なくないのです。

 2人のイラン人、マジドさん(52歳)とサファリさん(51歳)(※注)は「ハンスト→2週間の仮放免→再収容」を3回くりかえし、現在、3たび東日本センターに収容されています。マジドさんは1月16日、サファリさんは同21日に東京入管に出頭したところ仮放免期間更新を許可されずに収容され、その日のうちに東日本センターに移収されました。

 ふたりとも、くりかえしのハンストのため、心身ともに衰弱しています。私たちは、 2月5日(水)にマジドさん、サファリさんに面会して体調などを聞いたうえで、東日本入管センター総務課に、ふたりを再収容前提ではない仮放免をするよう口頭で申し入れをおこないました。



2.マジドさんとサファリさんの健康状態

 5日に面会したさい、マジドさんは車いすを押されて面会室にやって来ました。腰から左足にかけてしびれがあり、その部分の感覚もあまりないのだといいます。医師の診察を求める申出書を入管に提出したが、まだ受診にはいたっていません。

 マジドさんは、昨年6月上旬、この時点で収容期間が2年4か月という超長期におよんでおり、これに抗議してハンストを開始。7月9日に仮放免されたものの、2週間後に再収容。ふたたびハンストをして、10月16日に仮放免されますが、同28日に再々収容。またハンストをおこない、12月26日に仮放免され、翌1月16日にまたまた収容されて現在にいたります。食欲はあまりないが少し食べているということで、今はハンストを停止しています。

 くりかえし3度ものハンストをしたあとでは、ハンストをやめても体調がなかなかもどらないということで、表情や顔色にも深く疲労し衰弱した様子がうかがえましたし、自力での歩行が困難であるマジドさんが収容にたえられる状態とはおもえません。

 サファリさんも、マジドさん同様、ハンストをして3度(昨年7月と10月、今年1月)仮放免されましたが、いずれも2週間ほどの短期間で再収容されています。昨年12月ごろから、固形物を食べようとすると嘔吐するようになり、現在もコーンスープと栄養ドリンクといった流動物がかろうじてとれる状態です。仮放免中にうつ病と診断されており、またうつ病に起因する拒食症との診断もされています。

 サファリさんは面会室で腕をまくって左前腕を見せてくれました。固いもので引っかいたような細長い傷が複数走っていました。自分で傷つけたと思われるものの、本人はその記憶がないのだといいます。2月2日の夜中に居室で自分のひたいを壁にぶつける行為をくり返していたのはおぼえているが、その後の記憶がなく、翌日目が覚めてから、腕の傷に気がついたとのことです。記憶がとんでいるのは、サファリさんが相当に強力な睡眠薬など向精神薬を処方されて服用しており、その副作用ではないかと思われます。これほど強い作用のある向精神薬を必要とし、本人の記憶がとんでいるあいだに自傷行為をしてしまうのは、収容可能な心身の状態とは言えないでしょう。



3.医療態勢の不備

 サファリさんは、3度目の2週間仮放免ののち1月21日に収容された東日本センターで精神科医の診察を受け、1週間点滴による栄養補給をするように指示されました。診察の翌日の24日(金)から点滴治療が開始されましたが、つぎの25日(土)と26日(金)はセンターに医師や看護師が不在であるという理由で点滴がされませんでした。点滴での栄養補給が必要だと医師が判断した患者が、2日間これを受けられずに放置されたわけです。サファリさんについて、その病状に対応する医療態勢が東日本入管センターには欠けているのであり、この点でも収容を継続できる状態ではないと言うべきでしょう。

 マジドさんは、うえに述べた腰から左足にかけてのしびれの症状について、医師の診察を求める申出書を入管に提出しましたが、それから4日以上経過した5日(水)の時点でまだ受診にはいたっていませんでした。自力での歩行が困難で移動に車いすを必要とする状態になってすら、すぐに診療を受けられずに何日も放置される。マジドさんの健康状態からみても、東日本センターが医療態勢の面でこれに対応する能力を欠いているのはあきらかです。



4.なんのための収容か?

 マジドさんとサファリさんの収容は、入管業務の観点から言ってもまったく無意味に身体を拘束してその自由をうばうものと言えます。

 入管の収容は、送還のための身体拘束を目的にしたものです((「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項)。したがって、送還の見込みがたたないひとを収容し続けるのは、入管の退去強制業務の観点からしても意味がありません。

 マジドさんの場合、2017年2月に入管施設に収容され、その直後に難民認定申請して以来、いまだ難民調査官からのインタビューもおこなわれず、審査は進んでいません。難民審査中は、入管法で送還が禁じられています。したがって、マジドさんは、3年ものあいだ送還不可能なことがあきらかな状態で、収容され続けていることになります。しかも、現在一次段階にある難民審査においてかりに難民として認めないという決定が出ても、この決定に対してマジドさんは法務大臣に審査請求をおこなうことができます。審査はまだまだ時間がかかることが見込まれます。

 サファリさんも、昨年8月に難民申請し、まだインタビューも実施されておらず、審査はまだ一次段階。建前上は送還を目的とした収容でありながら、送還は不可能です。なんのために収容されているのか、わけがわからないのです。

 なお、難民であることの立証は難民申請者みずからがおこなわなければなりません。外部との通信が困難で行動のいちじるしく制約された施設に難民申請者を入管が長期間収容するのは、この立証作業を妨害するものと言えます。

 また、マジドさんとサファリさんに関しては、長期でなくても、そもそも収容して身体を拘束することに意味があるのか、はなはだ疑問です。マジドさんサファリさんとも2010年から16年まで、仮放免されていました。ふたりとも6年間の仮放免中は、東京入管に求められたとおりに1~2か月ごとの出頭に応じてきました。昨年7月以降、ハンストをおこなって2週間ほどの仮放免で出所した際も、再収容されることは十分に予想されましたが、マジドさんもサファリさんも3度にわたって出頭して収容されたわけです。

 さきに述べたとおり、送還のための身体拘束(法務省らの用語では「身柄の確保」といいます)が入管法上の収容の目的です。つまり、「送還までのあいだ逃げないように拘束しておく」ための収容です。ところが、マジドさんやサファリさんに関しては、「逃亡のおそれ」があるとはとうてい言いがたいわけです。しかも、入管にとって、当面送還できないこともはっきりしています。

 このように、マジドさんとサファリさんの健康状態が悪化していることにくわえ、ふたりを収容しつづけているのは、入管が法律によって与えられている収容の権限を逸脱したもので、心身をいたぶることを目的としているとしか考えられないとして、再収容を前提としない通常の仮放免を早期にするよう、東日本入国管理センターに申し入れました。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 アムネスティ日本が、法務大臣と収容・送還に関する専門部会に対し、以下3点を要請する署名をつのっています。

  1. 抗議活動を行う収容者を仮放免で釈放し、短期間の後に再収容するのはやめること
  2. ノン・ルフールマンの原則をいかなる場合でも遵守すること
  3. 出入国管理上の収容は送還の準備に必要な短期間に限るよう、収容期間に上限を設けること

 賛同される方は、リンク先から署名をお願いします。期間は3月31日までとのことです。




◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


※注
 マジドさんについては、当ブログの以下の4つの記事で「Aさん」として紹介したことがあります。マジドさん本人から名前を公表してもよいとの承諾をえて、今回記事で本名で表記します。サファリさんについて、本人の承諾のもと、本名で表記します。



Saturday, February 15, 2020

【傍聴呼びかけ】大阪入管暴行事件 原告Mさんら証人尋問 2/28(金)大阪地裁


 2017年7月に起きた、大阪入管の職員らによる暴行事件。被害者Mさんの国家賠償請求訴訟はついに証人尋問がおこなわれます。

◎場所:大阪地方裁判所809号法廷(→地図
◎日時:2020年2月28日(金)
 10:00~ 原告Mさんの証人尋問
 14:00~ 原告側の医師の証人尋問

 午前中にMさんの尋問がおこなわれます。休憩をはさんで14時からは、Mさんを診察して裁判所に意見書を提出するなど、この裁判に協力してくださっている医師が、原告側の証人として出廷します。

 この裁判で最大のやま場となります。おそらくこの日で結審となり、つぎの期日で判決が言い渡されることになると見込まれます。

 ご都合のつくかたは、可能な時間帯で、ぜひぜひ傍聴をお願いします。


 事件の詳細については、以下をごらんください。



 以下は、前回の傍聴呼びかけの記事です。