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Saturday, December 22, 2012

東日本入管センターの不当な検閲について改善を申し入れました

  昨日(12月21日)、仮放免者の会(関東)として、東日本入国管理センターに申し入れをおこないました。

  入管の収容施設は、被収容者の外部との通信を検閲していますが、その検閲においてとりわけ不当と言える3点について指摘し、改善を申し入れました。

  ひとつは、被収容者が弁護士と訴訟等のうちあわせのためにかわす書面の検閲です。入管の行政処分の取り消しなどを提起ないし準備している被収容者は多くいます。そうした入管の処分についてあらそう裁判での弁護士との通信を、裁判のもう一方の当事者である入管が検閲するのは、あきらかに不当です。

  第2に、検閲にともなう処分(書面の一部抹消や発信の保留・禁止など)が、その理由・根拠を明示することなく、恣意的におこなわれていることを問題にし、改善を求めました。

  第3に、上記検閲にともなう処分が、被収容者にたいして懲罰的・制裁的におこなわれている点を指摘し、改善を求めました。

  以下、申入書の全文です。


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申  入  書

2012年12月21日
東日本入国管理センター所長 殿
仮放免者の会(関東)


  日本国憲法第二十一条第二項は、「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」として、検閲の禁止と通信の秘密を規定しております。言うまでもなく、東日本入国管理センターは政府機関として、被収容者の通信の秘密を尊重する義務を憲法により課せられております。
  被収容者処遇規則第三十七条第一項は、被収容者が発信する通信文の検閲について、「収容所等の保安上支障があると認める部分があるとき」の通信文の訂正・まつ消の指示、または領置について規定しています。また、同第二項は、被収容者が受信する通信文の検閲について、「収容所等の保安上支障があると認める部分があるとき」の削除・まつ消または領置について規定しています。
  このように被収容者処遇規則は、通信文の検閲の権限を所長等に与えてはおりますが、憲法第二十一条第二項で保障された通信の秘密にかんがみ、検閲とこれにともなう削除・領置等の処置は必要最小限のものにとどめなければならないと考えます。
  ところが、東日本入国管理センターにおいて、職務上の必要を逸脱した、また恣意的な検閲等行為の濫用が行われているように見受けられます。

1.被収容者が弁護士から受け取る通信文について、その内容を見せるよう職員から強要されたとの証言を、複数の被収容者から得ております。
  被収容者のなかには、退去強制令書発付処分取消訴訟などの訴訟を提起中、あるいは準備中の者が多くおります。訴訟の一方の当事者にもなる入管の職員が、これらの者と弁護士のあいだでかわされる通信文を検閲するのは、日本国憲法第二十一条第二項に保障された通信の秘密の侵害にあたるのみならず、裁判の公平性をさまたげ、被収容者の利益を不当にそこなわせるものであって、とうてい容認できません。
  さらに、これは入管の収容関係において適用される法律ではありませんが、「刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律」135条2項1号は、「未決拘禁者が弁護人等から受ける信書」について、同条1項に定める「検査は、これらの信書に該当することを確認するために必要な限度において行うものとする」と規定しています。同規定は、人権に対する重大な侵害となる刑罰権行使を争う刑事裁判において国家と直接対峙する被告人の特殊な地位にかんがみ、刑事弁護に関する弁護人との通信について、特に厚く通信の秘密を保護したものと解されます。ならば、退去強制という、ある意味で刑罰にも劣らない不利益をもたらす国家入管行政上の処分を訴訟において争う被収容者についても、同様の趣旨から訴訟代理人弁護士との通信の秘密は厚く保護されなければならないところです。まして、刑事手続と異なり、退去強制手続においては、訴訟の相手方と収容施設を管轄する主体が同じ入国管理局なのですから、通信の秘密はさらに厳格に保護されなければならないと考えます。このような意味において、なおさら貴職らが行っている検閲は許容しがたいものです。

2.検閲等の行為において、貴職らは「保安上の理由」「保安上の問題」を根拠にしますが、通信文のどの内容がどういう理由でそれにあたるのか、具体的かつ明示的な説明が十分になされているとは言えません。これが明示されなければ、通信文のいかなる記述についても「保安上の問題」を理由にした削除やその指示等の措置が可能になり、つまりは貴職らの恣意的な運用、職権の濫用が可能になってしまいます。具体的になにが「保安上の問題」にあたるのかのガイドラインを被収容者にも提示すること、および、通信文の削除やその指示にあたって「保安上の理由」とはその場合なにか当該の被収容者に十分に説明することが必要と考えます。
  なお、第三者の「個人情報」が記載されていることをもって、郵送や宅下げによる通信文の発信が許可されなかったという事例が、東日本入国管理センターにおいて生じております。たとえば、貴職らへの被収容者の連名の要求書・嘆願書に署名があることをもって、宅下げを認めないという措置がおこなわれています。また、ある被収容者が他の被収容者の東日本入国管理センターで受けた不当な扱いについて書いた通信文が、名前等の本人を特定しうる記述をしていないにもかかわらず、発信にあたりまつ消を指示された例もあります。
  もとより、通信文に記載された情報が第三者のプライバシー権を侵害しているかどうかは、通信文の発信者とそこに個人情報を記載された第三者のあいだの問題であって、貴センターが判断すべきことでもなければ、貴センターが削除・まつ消等の指示や発信を不許可にすることの根拠にもなりえません。被収容者処遇規則にのっとっても、これら処分はあくまでも「当該通信文の内容に収容所等の保安上支障があると認める部分があるとき」に貴職らに認められた権限にすぎません。

3.被収容者が発信した文書がインターネット上に公開されたのをもって、貴職は公開された文書の「修正」を要求し、「修正」が確認されるまでは当該被収容者のその後の発信を「保留」するという事例がありました。これは、貴センターが検閲をし一度は発信を許可した文書について、事後的にその内容を理由に当該被収容者に対し懲罰・制裁をおこなったものと解することができます。こうした事後的な懲罰・制裁措置は、被収容者処遇規則等で規定された権限を逸脱したものであり、また被収容者の言論活動を不当に妨害するものであって、容認できません。

  以上をふまえまして、以下、申し入れます。

  1. 被収容者が弁護士から受け取る通信文、また被収容者が弁護士に発信する通信文を検閲しないこと。
  2. 検閲およびこれにともなう処分については、「収容所等の保安上支障がある」とはどのような内容を指すのか、被収容者全体に具体的にガイドラインを明示すること。また、被収容者が通信文を発信するにあたり、削除の指示等の検閲にともなう処分をおこなう場合、どの記述がどのような理由で「収容所等の保安上支障がある」と判断したのか、当該被収容者に明確に説明すること。
  3. 被収容者の言論・表現の自由を尊重し、被収容者に対する通信の禁止・制限の処分をを懲罰的・制裁的にもちいないこと。
以  上