東京入管の被収容者34名(Cブロック)が、7月25日と8月15日に、それぞれ長期収容の回避と処遇改善などを求めた連名での「上申書」を入管あてに提出しました。
東京入管の同じ収容区画(Cブロック)の被収容者からは、7月5日にも、同様の「上申書」が提出されていました。
東京入管は、3通の「上申書」について被収容者側の求めている回答をおこなっていません。下に掲載する「上申書」を読んでもらえれば分かるように、被収容者側の要求には、寝具のを天日干ししてほしいということや、戸外運動をさせてほしいといった健康・衛生にかかわるものも含まれています。こうした基本的な要求に対してすら回答をせずに無視しつづける(収容場内に「意見箱」を設置しているにもかかわらず!)という対応は、被収容者に対しては、ごく基本的な人権すら尊重する意思はないという東京入管の姿勢をあらわしているように思えてなりません。
半年あまり前の大阪での出来事ですが、1月19日に大阪入管の処遇部門の責任者のひとりであるYという職員が、被収容者には処遇の改善等を「要求する権利がない」との発言をしました。このような、職員、しかも責任ある立場の職員による、被収容者の基本的な人権を公然と否定する発言があったにもかかわらず、当時の大阪入管は謝罪も釈明もおこないませんでした。
くしくも、当時、大阪入管の局長であった伊東勝章氏は、いま東京入管の局長になっています。被収容者には要求する権利などない、だから「意見箱」に被収容者が意見を投じても、そんなものにいちいち答える義務などない、というのが現在の東京入管の姿勢だということなのでしょうか。東京入管は、上申書に対して、誠意をもって回答すべきです。
以下に、7月25日と8月15日にそれぞれ提出された「上申書」を掲載します。
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上 申 書
2016年7月25日
東京8入国管理局 品川局 御中
私たち、収容者より、施設環境の改善をいただくようにお願い申し上げます。
1.栄養補給「ビタミン剤」について
私たち、収容されているなかでの食事は、揚げものが多く占めています。長期間で栄養バランスがとれていない為、めまい、つかれやすくなり、血圧が下がり、顔色が悪くなり、津頭痛、便秘がちになります。今まで、私たちは施設内の「ビタミン剤」でなんとか、体調を管理していました。しかしながら、今月に入ってから、具体的な説明もなく、入管の一方的な都合で中止になってしまいました。どうか、私たちの体調もっと気にかけて、ビタミン剤を再提供して下さい。
2.昼食、夕食について
お弁当があまりにもひどすぎたため、「人間の食べ物じゃない」と何度もクレームがあったにもかかわらず、改善されていません。多くの人がほとんど食べずに出しているところをみていつも嘆いてしまいます。コロッケ、かき揚げなどの揚げものばかりではなく、肉、魚、野菜を増やして下さい。お願いします。
3.購入リストの増加、もしくは業者変更をお願いします。
予告、説明もなく、マヨネーズ、カップラーメンなど、多くのものが購入できなくなりました。「マヨネーズが欲しい」と果して、これはぜいたくとは言えるでしょう。しかし、収容者の私たちにとってはなくてはならないものの1つです。
収容者出所後、社会にとけこむように、英語、ワード、エクセルなどを教えるイギリスの入国管理局に思わず、敬意を払いました。その一方、世界有数の経済大国、日本の入国管理局では、日本語を教えるどころか、読みたい雑誌、勉強したい本すら購入できません。どうか購入できるように、もしくは業者の変更をお願いします。
4.映画がある為、金、土、日、3日間だけ、テレビを延長して下さい。
収容者の多くは日本の番組がわからないので、金、土、日曜日の映画が唯一の楽しみとなります。しかし残念ながら、いつも10時で電気が消え、映画の半分しかみれませんでした。私たちはこの3日間、部屋に収容される時間を18時間から19時間にしてもかまいませんが、どうかテレビを1時間だけ延長して下さい。
5.マットレスを天日干し、消毒して下さい。
今年3月に一度、天日干し以来、今日まで全然、天日干し、消毒していません。すでに臭いがするので、えいせい上にも問題があります。最低限で、1ヵ月に1回、天日干しで消毒するようにお願いします。
以上、改善をよろしくお願いします。
なお、返事がない場合が多いので、2週間以内にご返答をお願いします。
[以下、被収容者34名の署名――省略]
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上 申 書
2016年8月15日
東京入国管理局
局長 伊東 勝章 様
被収容者一同、以下の環境、情況に対する意見、改善をお願いしたく、Cブロック全員同意し、サインした上、提出させていただきます。
1.意見書、上申書の返信をお願いします。
私は今回の上申書を含め、計3通「視察委員会」「意見箱」に提出しました。しかし、最初の1通目(7月5日)から、返信も説明も何もありません。1ヶ月以上経過したにもかかわらず、お読みになられたかどうかすらわかりません。これでは、「意見箱」の意味が全くなく、ただの「ごみ箱」となってしまいます。私たちの意見を無視しないように3週間以内に返信いただくようにお願いいたします。
2.長期収容をやめてください。
被収容者の中で、半年以上はごく普通で、中には1年以上の人もいます。私たちは、収容中、多くの病気にかかり、常にストレスと戦っています。私たちの病気、体の不調は抗生物質で一時的に抑えられるかもしれませんが、精神な面では薬では抑えきれません。まして、1日24時間勤務の入局警備官による看守の元で生活すると、更にストレスが増え、自殺傾向が高まり、拘禁症の発症が加速します。長期収容のせいで、私たちの精神、体共に蝕まれています。また、必要以上の収容は国民の税金を無駄に使うのと同様であります。そのため、半年以上の収容を直ちに辞めるように、お願い致します。
3.仮放免の結果通知を1ヶ月以内に下さい。
現在仮放免結果が出るまでに約3ヶ月(90日)かかります。それに比べ、日本の裁判所で「仮釈放」の結果が3日以内となります。また、イギリス入国管理局も同様「仮放免」の結果が3日以内に出ます。日本はイギリスと比べ、30倍も遅くなっています。しかも90日間というのは非常に効率が悪く、非人道的であります。そのため一刻も早く改善、制度の見直しをいただくようにお願い致します。
4.戸外運動をさせて下さい。
「被収容者処遇規則」第二十八条、「収容者に毎日戸外運動をさせなければなりません。」今のところ、私たちはそういった処遇をまだ受けていません。戸外運動がなく、太陽のひかりが浴びられず私たちは、体だけではなく精神まで病みがちなのです。実際のところは、ほとんどの収容者が病気にかかり、毎日薬を飲んでいます。私たちの体、この収容現状を改善すべく、毎日30分以上戸外運動をもうけていただくようにお願い致します。
5.マットレスの消毒、天日干しをお願いします。
「被収容者処遇規則」第二十九条、「収容者に寝具などについて、充分清潔を保持しなければなりません。」との規則がありますが、前回の交換から、今日まで、すでに6ヶ月目になります。この間で寝汗、バイ菌、ダニがどれだけたまっているのかいうまでもありません。私たちの健康上のことを考えていただき、直ちに交換、消毒をして下さい。
6.理容道具について
被収容者の私たちの理容道具は「バリカン」のみでカットできるのは「ぼうず」一通りだけです。私たちはぼうず以外でかみをうすくしただけの人がほとんどですが、今のところそれが不可能です。被収容者は服役者ではありませんので、かみの毛をうすくすることができるように「理容バサミ」のかしだしも行って下さい。私たちは服役者ではありませんので、もう少し私たちの人権についてお考えくださいますようにお願いいたします。
7.まくらのさし入れを許可して下さい。
被収容者たちの中で、多くの人がかしだしのまくらがあわず、頭痛、肩こり、腰痛に苦しんでいます。まくらがあわず、体の痛みを訴える人にはシップが支給されます。それで一時的に体の痛みが緩和されますが、一枚約100円もするシップを毎日複数枚支給するならば、新しくまくらチェンジするか、個人用まくらを許可したほうが、私たちの体のためであり、税金の節約にもなります。どうか、真剣にご検討くださいますように、お願い致します。
8.通信文(手紙)の発信、着信について
私たちは家族、弁護士などより、いくら大事な手紙が送られて来ても、土、日、休日は届きません。理由をたずねても、「郵便局が休み」とかの答えとなります。本当にやすみかどうかは別として、私たちは一刻も早く、家族、弁護士から大事な手紙を読みたい気持ちをどうかお考えください。休日でも通常通りに手紙をお届け下さい。
9.テレビを1時間延長してください。
私たちの多くは日本の番組がわからず、金、土、日曜日の映画が唯一の楽しみと言っても過言ではありません。しかし、それにはんして、テレビが22時までのため、映画の半分しかみれませんでした。非常に残念な気持ちですが、どうが、テレビを1時間延長し、最後まで映画をみさせて下さい。
以上、9点の意見を上申させていただき、前向きにご検討、寛大に許可をいただきますようにお願い致します。
[以下、被収容者34名の署名――省略]