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Monday, December 31, 2018

【傍聴呼びかけ】大阪入管暴行事件(第4回口頭弁論)


 大阪入管の職員が「制圧」と称してトルコ人被収容者に集団で暴行をくわえて、右肩を骨折させた事件。その国家賠償請求訴訟の第4回口頭弁論が、つぎの日時と場所で開かれます。

 日時:2019年1月18日(金) 午前11:30~
 場所:大阪地方裁判所809号法廷(→地図

 被害者で原告のMさんも出廷します。
 都合のつくかたは、傍聴をおねがいします。

 裁判のあとに、報告集会を予定しております。






◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


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Wednesday, December 26, 2018

大阪入管への申し入れとキャンドルアクション

 前回記事で告知していた「12・25大阪入管前キャンドルアクション」をおこないました。

 大阪入管前には、被収容者の友人やパートナー、支援者など、およそ35人が集まり、ペンライトなどを持って、長期収容や医療問題といった人権侵害に抗議の声をあげました。収容場となっている入管の7階と8階からは、「メリークリスマス」「ありがとう」とこたえる声があがりました。

 25日は、キャンドルアクションに先だって、大阪入管に対し4団体で申し入れをおこないました。

 大阪入管では、12月3日から13日まで被収容者による集団でのハンガーストライキがおこなわれていました。以下の申入書は、こうした被収容者たちの要求を受けて、支援者として大阪入管への抗議と改善要求をおこなったものです。



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            申 入 書
2018年12月25日

大阪入国管理局
  建山宜行局長 殿

WITH(西日本入管センターを考える会)
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
仮放免者の会
難民支援コーディネーターズ・関西

               
下記につき申し入れます。
一、長期被収容者、及び体調不良者の仮放免について
 この間、貴局に対し、再三再四長期被収容者、及び体調不良者を仮放免するよう申し入れて来た。外界と処断され人間の時間的、空間的感覚を奪う密閉施設、貴庁収容場への長期収容は被収容者の心身を痛め付ける。既に精神科医に受診するなどの被収容者も出てきている。収容は、被収容者の心身を痛め付けるためではない。退令者の収容は、送還のためであり、送還の目処も立たない長期被収容者は仮放免制度を運用し、仮放免すべきである。
 この間、貴局は、トルコ人の肩、ペルー人の腕を制圧と称して骨折させた。しかもペルー人には約12時間の間、後ろ手錠を嵌めたまま保護房(懲罰房)に拘禁するという拷問、虐待の犯罪行為をした。今年、6月17日~18日にかけて約24時間、A1の6人部屋に17人もの被収容者を居室の電源を切って監禁した。電源を切られ、クーラーの利かない蒸し暑い部屋に、また食事の際に出されるスープやミソ汁をお湯を沸かして飲むことが出来ず、手洗い用の水道水しか飲むことのできない状態にして17名をすし詰め監禁した。しかも6月18日午前7時58分に起きた大阪の地震に対して、被収容者がドアを開けろと抗議しても解錠はしなかった。その後、各居室に被収容者を戻したが、33日間、各部屋に施錠拘禁し、1日シャワー15分、運動時間15分のみ解錠するという集団隔離処分を続けた。さらに貴局の被収容者に対する隔離処分は、その人数に比して異常なほど多い。日本も加入する拷問禁止条約には「『拷問』とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為」とあるが、貴局がしていることは、被収容者に「重い苦痛を故意に与える行為」そのものである。
 このように貴入管収容場において、制圧と称した暴行、職権を濫用した拷問、虐待、嫌がらせ行為が横行している。とりわけF前局長就任から違法な制圧や職権濫用行為がより強まったが、それらを命じられ、実行行為を行なわざるを得ない末端の入国警備官がF局長就任以降10人ほど途中退職している。このように無理な送還執行行為を法務省入管、貴局上層部が入国警備官に強いていることが、数々の暴行、職権濫用等の違法行為を収容現場で引き起こすと共に、若い入国警備官を退職に追い込んでいる。スラジュさん事件の教訓を活かし、これ以上、上層部は、末端職員に「無理」をさせてはならないことを厳重に申し伝えた上で、以下要求する。
①まず1年を越える長期被収容者を仮放免すること、及び高血圧症や心臓疾患などの持病があり収容継続が危険な被収容者、収容による精神疾患者を即刻仮放免すること。
②法務省入管局の退令仮放免者削減方針のもと法務省入管局から少々無理をしてでも送還せよという指示が出され、それを「忠実」に執行した結果として上述した暴行や職権濫用が行なわれているとしか解せないが、この点について回答してもらいたい。

二、医療問題、及び安全衛生問題について
 医療は、周知のように人間が生きていくにおいて最後の砦であるが、被収容者は入管によって診療の自由を奪われている。奪っている入管には、被収容者に対し、処遇規則に明記されているように適切な診療をほどこす義務がある。自由の身なら期待した診療を受けられなければ病院を変えることで解決できるし、またそうする。しかし、被収容者には、病院や医師を自己の自由意志で選択できない。食事の選択権も著しく制限されている。それゆえ被収容者の自由を奪い、収容施設に拘禁している入管には、被収容者の安全や健康を守る収容主体者としての高度な責任義務がある。

 安全衛生問題について
①男性ブロックにおいて髭剃りの使い回しが行なわれていたこと。
  *6月17日、18日監禁事件等による被収容者の抗議、及びその後の度重なる抗議要求によって解決済み。
②ダニの発生による思われる湿疹の発生-各ブロック居室の定期的消毒が行なわれていないこと。
③職員が居る部屋の換気扇は業者に頼んで掃除をしているが、被収容者の居室等の換気扇の掃除をしておらず埃だらけになっていたこと。*解決済み。
④給食業者の弁当箱の洗浄不足で、夏になるとご飯が臭くなるという苦情に対し、貴局はご飯が臭いという異常を知りながら何ら対応しなかったこと。被収容者が、保健所に通報し、保健所職員が給食業者に調査にはいり、洗浄不足を現認し、給食業者に改善指導した。
 これらの問題が起こる背景には、被収容者を人間として扱っていないという外国人差別があると言わざるを得ない。入管の収容権は、被収容者の人権を守ることを前提に与えられており、この前提を守れないようなら即刻被収容者全員を仮放免すべきである。

 医師の問題について-入管医との契約を直ちに解約することを求める。
 現入管医は、被収容者に悪意を持って診療していると言わざるを得ない。入管医は、Aブロックのイラン人に対し、1年間毎日座薬を投与した(その1年の半年は1日二回座薬を投与された)。イラン人は、緊急入院し、腸に穴が開いていることが発覚し、入院治療することとなった。入管医は、薬の使用に対する知識があって投薬をし続けたのであり、これは悪意を持った薬の投与であり、犯罪である。またBブロックの中国人が急性精巣炎に罹り、異常な痛さを訴えても「我慢していれば治る」と専門医に受診させようとしなかった。さらに、血圧を測る際、カフ(腕に巻きつける袋状のベルト)を裏表反対にして腕に巻いて測ろうとして、看護師に注意されたり、あるいはねじれたまま巻いて血圧を測ったり、医師としての能力を失っている。
 このような医者に被収容者の命や健康を預けることはできないし、現医師を雇用しつづけるなら大阪入管局長の法的責任は免れない。
 入管医との契約を直ちに解約することを求める。

 
三、飲食物の差し入れを許可すること、及び支給食の改善
 この点も再三要求している。以前、全国の地方入管局では飲食物の差し入れは認めていない、大阪入管だけ認める訳にはいかないという回答があった。東日本、大村の各入国者収容所では飲食物の差し入れは許可されており、また西日本入国管理センターでも同様に許可されていた。それに対し、なぜ大阪入管では差し入れが許可されないのかという被収容者からの疑問と飲食物の差し入れ許可の強い要求がある。この間、貴局から飲食物の差し入れ不許可についての、合理的説明は一切ない。合理的説明をしないまま公権力が、不許可をつらぬことは、業者との癒着等を疑われるだけである。
 改めて、飲食物の差し入れを許可するよう求める。
 被収容者の強い要求と闘いによって、今年度から被収容者の支給食が1人当たり1日824円から1200円に引き上げられた。しかし、日によって支給食量が異常に少ないことがある。その点について改善するよう被収容者から貴局に要求が出されていることを認識しているはずである。
給食業者に対し、強力に改善指導するよう要請する。
以 上

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Friday, December 14, 2018

【転載】12・25大阪入管前キャンドルアクション


被収容者を励ます
12・25キャンドルアクション

今年もやります。声、交わそう!
ペンライトやケミカルライトなど、灯りを持って集まろう!

2018年 12月25日(火)
18:00~

大阪入国管理局前集合(→MAP
大阪市営地下鉄中央線「コスモスクエア駅」下車 徒歩3分

主催・共催:TRY、WITH、難民支援コーディネーターズ関西
連絡先:try★try-together.com (★をアットマークにかえてください)

Monday, December 10, 2018

大阪入管で12月3日より10人超がハンスト


1.大阪入管でもハンスト

 マスコミ等でも報じられましたが、11月20日から東日本入国管理センターで、長期収容に抗議するハンガーストライキがおこなわれました。

 東日本センターでのハンストは、12月6日には全員が摂食を再開し、収束しました。

 いっぽう、大阪入管でも、被収容者によるハンガーストライキがおこなわれています。 12名が参加して12月3日にはじまったハンストは、9日の夕方時点でもほぼ全員が継続しています。



2.ハンストのきっかけと背景

 大阪での集団ハンストのきっかけとなったのは、被収容者Mさんに対する入管側の対応でした。以下は、Mさんをはじめとする複数の被収容者による面会での証言にもとづくものです。

 Mさんは30代の男性。胃腸の疾患のため、11月中旬に病院に搬送され、10日間あまり入院しました。腸と胃の接合部分あたりに穴があいているということで、入院中は栄養をほぼもっぱら点滴で摂取し、退院の前日になってようやくおかゆなどを少量食べることができたという状態でした。医師からは、退院後もあぶらっこい食事はさけるようにとの指示があったそうです。

 11月26日にMさんは退院し、大阪入管に戻りました。ところが、12月3日、大阪入管がMさんに出した昼食は、他の被収容者と同じメニューで、おかずにとてもあぶらっけの多い肉料理が入っていたため、Mさんはおどろいて「これはあかんですよね?」と職員に言い、弁当箱ごと差し戻しました。職員は、「そうですね」と言って給食の内容がMさんの病気に配慮したものではなかったことを認め、謝罪はしたそうです。ところが、かわりの食事を用意してくださいというMさんの当然の要求に対しては「それはできません」と拒否し、ミスの原因についての説明もいっさいしなかったとのことです。

 Mさんに対するこうした大阪入管の対応に、Mさんだけでなく、おなじAブロックの他の被収容者たちも怒り、12名が3日から抗議のハンストを開始しました。

 こうして集団でのハンストへと抗議が拡大した背景には、これまでにも大阪入管では、2度にわたってイスラム教徒の給食のおかずに豚肉が混入する事件があったほか、給食に異物が混入する事例がたびたびあったということがあります。

 とくに、豚肉混入は深刻な問題で、複数のイスラム教徒の被収容者は、「入管の食事は信用できない」と言ってパンと牛乳以外の食事は拒否するようになって1年以上になります。

 抗議が広がっているのには、このように被収容者の宗教や健康に配慮する最低限の責任すらはたしてこなかったという入管に対する不信感が、背景としてあります。



3.ハンストをとおしての要求

 6日(木)に、ハンスト参加者が連名で、食品の差し入れを認めるよう求める要求書を入管側に提出しました。大阪入管は、家族や支援者など外部からの食品の差し入れをいっさい認めていません。したがって、入管の提供する食事を安心して口にできない被収容者にとって、食べられるものがないのです。10日間以上もの入院を終えたばかりのMさんも、ハンストに参加していますが、それは入管の食事を信用できないからでもあります。

 7日(金)には、Mさんをのぞくハンスト参加者11名が連名で、Mさんを仮放免せよという要求書を入管に提出しました。Mさんの病状に対する大阪入管の対応は、配慮がたんに「不十分」だというレベルの問題ではありません。食事について医師の指示があったにもかかわらず、これに従わず、Mさんの病状をますます悪化させかねない食事を出したのです。このようなデタラメな対応をしておいて、収容継続など許されるはずもありません。



4.ハンストへの大阪入管の対応の問題

 7日(金)にハンスト参加者に面会して話を聞いたところでは、大阪入管側は、ハンスト参加者に対して、なんらヒアリングなどもしていなければ、その健康状態を把握しようともしていないとのことでした。

 ハンスト参加者は収容期間が1年をこえて体調の悪い人も多く、Mさんふくめ病人もいます。ハンストが長期化すれば、その健康状態が心配されます。大阪入管は、人を拘束している以上、当然ながらその健康に配慮し、必要に応じて医療を受けさせる責任があります。被収容者がハンストをとおして何に抗議しているのか、また各人の健康状態はどうなのか、聞き取りすらせず、放置しているという現状では、大阪入管はみずからの責任をはたしているとは言えないし、いたずらにハンストの長期化をまねきかねない対応と言わざるをえません。

 このたびの集団ハンストは、大阪入管の対応のまずさがきっかけとなって起こったのは明白です。大阪入管は、まずはハンスト参加者の話をきちんと聞くべきですし、参加者個々人の健康状態を聞き取りして必要ならば診察を受けさせるなどの対応をとるべきです。




抗議先:大阪入国管理局 総務課
 電話 06-4703-2100
 ファクシミリ 06-4703-2262



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Sunday, November 25, 2018

【抗議集中の呼びかけ】続報・牛久の入管でのハンスト:「申入書には回答しない」と所長


 前回の記事で報告しましたとおり、東日本入国管理センターでは、被収容者30名あまりが20日(火)よりハンガーストライキを開始しました。以下の記事では、ハンストをおこなっているブロックのうち1Aブロックの被収容者たちの連名での「申入書」も紹介しております。

 25日(日)現在でもハンストは継続中であると参加者より連絡がありました。ハンストはすでに6日目にはいっており、参加者の健康状態が心配です。

 ところが、センター側は、1Aブロックの被収容者に対し、「申入書には回答しない」との意向を職員から伝えてきたそうです。申入書はすでに所長にわたっているものの、所長判断として回答するつもりはないというのが、センター側の意向だのことです。

 食事を拒否して自身の生命を危険にさらしてまで抗議をおこなっているにもかかわらず、その要求に対して回答すらしないというのは、入管側が被収容者を人間あつかいしていないことを示しているとしか言いようがありません。また、こうした被収容者を愚弄した姿勢を入管がとることで、いたずらにハンストを長引かせて、ますます被収容者の健康を危険にさらすことにもなりかねません。

 1Aブロック被収容者の申入書に誠意をもって回答するよう、東日本入管センターに対し、電話やファクシミリ等で抗議を集中していただくようお願いします。

東日本入国管理センター 総務課
 電話:029-875-1291
 ファクシミリ:029-830-9010

Thursday, November 22, 2018

【抗議呼びかけ・拡散希望】牛久の入管で30名超がハンスト:長期収容への抗議


 東日本入国管理センターの被収容者が、11月20日(火)よりハンガーストライキを開始しました。

 当会事務局のスタッフが、被収容者たちに面会して調査したところ、21日現在、3ブロック(1A, 2B, 3A)で合計33名がハンガーストライキを継続していることがわかりました。ハンストを通じての入管に対する要求内容は、長期収容を回避せよというものだということです。

 このうち、1Aブロックのハンスト参加者が提出した「申入書」を以下に公開します。



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申 入 書
平成30年11月20日
法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿
1A寮一同
 私達は、長い事当センターに収容されているものです。以前から当センターに仮放免の運用等の改善を求める色んな要求書を提出させてもらったが、それに対する当センターからの全面否定の回答でした。
 最近、私達は当センターからのいたずら(同じブロックの収容者仲間を些細な事でひきさかれたりや送還の見込みの立たない人を出所させなかったり等)や誤魔化し(医療放置や仮っ放免の許否の説明を拒んだり等)、理不尽、不適切とずさんな処遇運用等にはもう耐えられません!
 本来なら、本申入書の内容をもっと具体的に書くべきですが、これ以上書いても無意味であり又、当センターは以前からの私たちの色んな要求書により私たち収容者の趣旨を把握しているはずです。
 そもそも当センターは長期収容の可能な施設ではない事言うまでもないです。
 よって、収容長期化の回避かつ仮放免の運用に対する何らかの改善を強く求めたいた為、ここに申入をします。
以上

[1Aブロック22名(国籍はそれぞれ、ブラジル、イラン、スリランカ、フィリピン、中国、ミャンマー、ベトナム、ペルー、ガーナ、ナイジェリア)の署名――省略]
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 私たち仮放免者の会としては、東日本入管センターに対して、電話などで抗議・意見提示をしていただくよう、みなさまに呼びかけます。

抗議・意見提示先
東日本入国管理センター 総務課
 電話:029-875-1291
 ファクシミリ:029-830-9010

抗議・意見提示の例
  • ハンスト参加者の要求に対して、入管として検討して誠実に回答すること。
  • ハンスト参加者に対して懲罰的な隔離処分をおこなうなど、弾圧をしないこと。
  • 6ヶ月をこえるような長期収容は、被収容者の心身を破壊する人権・人道上ゆるされない行為である。
  • 国連拷問委員会等に日本政府が公約しているとおり、仮放免制度を弾力的に活用して長期収容を回避すること。


 情報提供を希望される報道関係者のかたは、以下のメールアドレスまでご連絡ください。

 junkie_slip999☆yahoo.co.jp (☆をアットマーク(@)にかえてください)


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

 東日本入管センターをふくむ、全国の入管施設の収容長期化については、参議院議員の福島みずほさんが法務省に請求して開示させた資料が公開されています。常軌を逸した長期収容の実態が、統計資料からうかがうことができます。


 収容長期化問題については、このブログでもいくつか記事を掲載しております。長期収容がなぜ問題だと言えるのか、また、収容長期化の実態とその生じた背景と歴史的経緯はどういうものなのか、述べていますので、こちらも参考にしてください。


 また、東日本入管センターでは、最近2年ほどの期間でくぎっても、2017年3月にはベトナム人被収容者を医療ネグレクトによって死なせた事件があり、2018年4月には前日に仮放免申請不許可を知らされたインド人被収容者が自殺する事件があり、これを受けて被収容者による大規模なハンガーストライキもありました。その過程で、被収容者たち自身による声明や入管当局に対する要求書なども多数出されてきました。

 私たちがこのブログなどを通じて紹介できているのは、そのうちの一部にすぎませんが、被収容者当事者たち自身がどのように声をあげてきたのか、具体的に広く知ってもらいたいと思います。



Saturday, November 3, 2018

【傍聴の呼びかけ】大阪入管暴行事件(第3回口頭弁論)


 昨年7月に大阪入管の職員ら複数名が、被収容者だったMさんに集団で暴行をくわえて骨折させた事件の国賠訴訟。次回は以下の日時と場所でおこなわれます。

第3回口頭弁論
 日時:11月7日(水) 午後1:30~
 場所:大阪地方裁判所810号法廷(→地図


 原告のMさんも出廷します。
 
 都合のつくかたは、ぜひ傍聴して、この事件に注目しているということ、また被収容者への暴力をゆるさないという意思を示していきましょう。

 公判後には、Mさんや原告の弁護士も出席して報告集会をおこないます。こちらもぜひご参加ください。




◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


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Wednesday, October 17, 2018

入管のいう「治安への懸念」とはなにか?――収容長期化問題をめぐって


(1)はじめに

 8月25日付の『読売新聞』(朝刊)に「入管に強制収容 長期化 治安対策 『仮放免』厳しく」と題された記事が掲載されました。おもに法務省幹部に取材した記事であり、収容長期化問題について、入管当局がどのように世論に印象づけたいのかをみるうえで参考になる記事です。

 この読売の記事には、つぎのように法務省幹部の発言が紹介されています。

 法務省幹部の一人は「国は長期収容を望んでおらず、本人が帰国に応じれば問題は解決する」とする一方、「帰国を拒んだ場合は、治安への影響から安易に仮放免を認めるわけにはいかず、長期化に対する改善策は見当たらないのが現状だ」と話している。

 この法務省幹部の発言は、一応は長期収容を「問題」であると認めたものではあります(注1)。しかし、その収容長期化の責任については、この法務省幹部は被収容者側に転嫁しています。収容が長期化するのは、国も望んでおらず、本人が帰らないせいである、と。

 もう1点、法務省幹部の発言のなかで注目すべきなのは、「治安の影響」のために仮放免できないのだとしていることです。読売の記事は、冒頭でつぎのようにも書いています。

 不法滞在などで入国管理局の収容施設に強制収容される外国人の収容期間が長期化している。背景には、収容者が施設外で生活できる「仮放免」制度を法務省が厳格に運用していることがある。先の見えない生活に絶望した自殺者も出ているが、治安への懸念もあり、解決策はみいだせていない。

 読売記事によれば、「治安への懸念」のために入管は仮放免を抑制しており、そのことが収容長期化の背景にあるのだといいます。しかし、これは認識として正しいものなのでしょうか。また、かりにそれが事実なのだとしても、「治安への懸念」を理由にして仮放免を抑制することには、重大な問題があるのではないでしょうか。こういったところを、今回この記事では考えていきたいと思います。



(2)送還の強化では収容長期化問題は解決できない

 従来から、読売新聞は、入管問題について、法務省入国管理局の広報と言ってよいような記事をしばしば掲載してきました。入管制度や難民認定制度、あるいはその運用にかんする読売の報道は、入管官僚の意向をくみ取って無批判に紹介するものがほとんどです(注2)。したがって、読売の記事は、当局への批判的な視点をまるで欠いているという点で報道としては物足りないものですが、法務省入国管理局がどのように世論に働きかけてこれを誘導していきたいと考えているのかを研究・分析するうえで、なかなか有用なのです。

 今回の読売の記事も、法務省幹部の意向にほぼそって書かれたものとみてよいでしょう。この読売記事は、収容長期化の要因として、つぎの4点をあげています。

  1. 本人が送還をこばむから。
  2. 母国の政府がパスポートの発給をこばむこともあるから。
  3. 難民認定申請をくりかえす被収容者が多いから。(難民申請者は手続きが終了するまで送還が停止される。)
  4. 仮放免者が犯罪にかかわるケースがあるため。

 4については、のちほど検討します。

 1~3は、入管にとって、仮放免しない(あるいは、仮放免できない)理由にはなりません。本人が送還に同意せず、かつ送還先の相手国政府が本人の同意なしでの旅券発給はしないということであれば、これは当分のあいだ入管にとって送還の見込みがないということです。難民申請している被収容者についても、同様です。送還できる見込みのたたないような人を、いたずらに長期間にわたって収容し続けることは、その被収容者に苦痛をあたえ、その心身の健康を破壊するということ以外のなんの効果も意味もないのです。

 なお、難民認定申請をくりかえす被収容者が多いということについて、法務省は、それが送還業務をとどこおらせ、収容長期化をまねく要因になっているかのように言いますが、このような見方はあまりに表面的にすぎます。

 よく知られているように、日本は他の難民条約加盟国とくらべて、その難民認定数・認定率とも、きわだって低く、人道上の配慮として在留を認められる難民申請者もきわめて少数です。難民の受け入れ・庇護についての現行のこうした消極的な運用が、帰国すれば危険にさらされるおそれのある被収容者にとって難民認定申請をくりかえさざるをえない状況をつくっているのだと言うべきです。法務省・入管当局が、在留を認めるべき人びとのうち、ごく一部にしか在留を認めておらず、その人たちの送還に固執しているということ。このことが、入管収容施設をいっぱいにして送還業務をどどこおらせ、また、収容の超長期化と言うべき現状をまねく大きな原因となっているのです。

 ともかく、現に収容が長期にわたっている人が増え続けているという現状は、入管が送還の見込みの立たない人の収容継続に固執しているということを示しています。9月23日付で朝日新聞はつぎのように報じています(注3)

 16年末に収容されていた1133人中、6カ月以上の「長期収容者」は313人(約28%)だったが、17年末は1351人中576人(約43%)と人数、割合がともに増加。今年に入ってからも急増し、7月末時点で1309人中709人(約54%)だった。収容が5年を超える人もいる。

 入管は送還するために収容をおこなっているわけですから、ある人の収容が長期化しているということは、入管がそのかん、この被収容者を送還することができなかったということを意味します。送還の見込みのたたない人を長期にわたって収容し、拘束し続けることは、人権・人道の面で非常の問題がありますから、「仮放免」というかたちでこの人たちを出所させ、拘束を解くための制度があります。こうした収容長期化を回避する手段がありながら、法務省・入管当局がこれを十分に活用してこなかった結果、「長期収容者」の急増という現状をまねいているわけです。

 従来、法務省は、仮放免を弾力的に活用することによって長期収容を回避するということを、国会答弁や報道発表でくりかえし表明してきましたし、それは日本政府が国際的に公約してきたことでもあります(注4)。法務省がこれまで表明してきたことからみても、収容長期化は法務省が解決すべき責任を負った問題なのです。「国は長期収容を望んでおらず、本人が帰国に応じれば問題は解決する」などと言って被収容者側に責任を転嫁してすむ問題ではありません。

 読売の紹介する法務省幹部の発言を言葉どおりに受け取るならば、長期収容は問題であり、また一刻も早くこれを解消するように取り組むべきなのは、法務省にとっても異論のないところでしょう。同時に、送還によってこの長期収容問題を解決・解消できないこともあきらかです。とすれば、長期収容を回避するためには、仮放免を活用していくということは不可欠であるはずです。



(3)「治安対策」としての仮放免抑制?

 では、「治安への影響から安易に仮放免を認めるわけにはいかず、長期化に対する改善策は見当たらない」という、冒頭にみた法務省幹部の説明について、検討してしていきましょう。

 この説明は、あとでみるように、実際に法務省がおこなっている運用からみて、つじつまがあわないものです。収容が長期化している人のなかにはたしかに刑事事件の前歴・前科のある人もいます。しかし、そうした人たちだけではなく、刑事事件の前歴・前科のまったくない人びともまた、長期にわたり収容されているからです。入管が仮放免審査を厳しくしているのは、「治安への懸念」とは別の理由があってのことだと考えるほかありません。この点については、あとで述べます。

 ここではさきに、「治安への懸念」を理由にして仮放免を抑制し、収容を長引かせることは正当化できるのかというところを、考えてみます。

 まず、「治安への懸念」という言葉によって、具体的にどういった事態が想定されているのでしょうか。

 「治安」という語には、つねに厄介なあいまいさがつきまといます。超過滞在(オーバーステイ)や入国するさいに正規の手続きをとらなかったといった行為は、入管法に違反するとはいえ、それ自体で被害者を発生させるわけではありません。被害者は存在しないけれども、ルールに違反しているということそのものが、法秩序をいくらかゆるがしているという点で、「治安」の悪化をまねいているのだと、極論すれば言えないこともないかもしれません。しかし、そうした意味での「治安への懸念」を理由にして、人間を6ヶ月以上、あるいは2年、3年ものあいだ収容して身体を拘束し続けることに、いくらなんでも正当性は認められないでしょう。

 読売の記事では、「仮放免者による薬物や傷害などの事件も相次ぐ。中には殺人や強盗などの凶悪犯罪に関与したケースもあったという」と述べられています。この部分は、法務省幹部が読売の記者に語った内容とみてまちがいないでしょう。したがって、法務省が「治安への懸念」ということで想定しているのは、仮放免された人が犯罪をおかすおそれがあるということだと解釈できます。

 とすると、法務省は、“長期収容は問題だが、仮放免された人が犯罪をおかすおそれがあるから”という理屈で、仮放免を抑制し収容を長期化させているということなります。この「犯罪をおかすおそれがある」という理由で拘束をつづけるのは、予防拘禁というべきであって不当です。仮放免者が犯罪をおかしたという事例があるからといって、その当人以外を拘束しつづけるのは、非正規滞在外国人や仮放免者をいわば「犯罪の温床」とみなすような差別主義的な思考を前提としており、けっして容認できません。

 さらにこうした「治安対策」を理由として収容を継続するのは、入管法(出入国管理及び難民認定法)における「収容」の位置づけからも逸脱しています。

「入国警備官は、第三項本文の場合において、退去強制を受ける者を直ちに本邦外に送還することができないときは、送還可能のときまで、その者を入国者収容所、収容場その他法務大臣又はその委任を受けた主任審査官が指定する場所に収容することができる」
「出入国管理及び難民認定法」第52条第5項

 入管法における「収容」は、「送還可能のときまで」のいわゆる“身柄”の確保のために入管に権限として与えられたものにすぎません。入管法は、違反行為に対する懲罰や制裁の権限を入管に与えているわけではありません。この点をふまえると、5月29日の上川陽子法務大臣(当時)の記者会見での発言は非常に問題のあるものと言わざるをえません。以下の法務大臣発言は、収容における人権侵害問題について仮放免を積極的に認めることがその解決になると考えるかという記者質問に対してなされた回答です。

 全国の入管収容施設に現に収容されている者は,在留資格を有しないなど法律上の在留要件を満たさず,あるいは刑法上の罪を犯したことにより,我が国での在留が好ましくないと判断された者であり,我が国から出身国に向けて速やかに送還することで収容を終わらせることが肝要であると考えています。
 特に,昨年中に退去強制手続を受けた1万3千人余りのうち470名は,刑事罰を科された者であって,その放免は社会にとって決して好ましいものではなく,一刻も早い送還を期すべきであり,出身国政府とも交渉を行うなど,速やかな送還に努めているところです。
法務省:法務大臣閣議後記者会見の概要-2018年5月29日

 問題なのは、上川氏が「刑事罰を科された者」について「その放免は社会にとって決して好ましいものではな」い、と述べている点です。刑事罰を科されたうえで入管に収容されているのは、すでに刑期を終えて刑務所などを出所した人です。「刑事罰を科された者」を「その放免は社会にとって決して好ましいものではな」いという理由で入管が拘束しつづけるのは、入管法上の収容の目的を完全に逸脱しており、収容権の濫用と言うべきです。

 そもそも、「刑事罰を科された者」の放免が社会にとって好ましくないと言うのであれば、刑務所などの矯正施設は何のためにあり、刑務官や保護司らは何のために仕事をしているのでしょうか。さきの上川発言は、罪をおかした人たちの矯正や更生にむけての指導をおこない、その社会復帰を支援するという、法務省の監督のもと取り組まれている職務・事業の意義を、法務大臣がみずから否定したものと言えます。

 入管は、仮放免をきわめて厳しく抑制しており、そのことが収容の超長期化という現状をまねいています。その仮放免の抑制が、「治安への懸念」を理由とするものなのだとすれば、それは、入管法の「収容」の目的から逸脱していることはもとより、罪を犯していない人、あるいは犯した罪についてすでに刑事罰を科された人を、いわば「予防拘禁」するということであって、けっして正当化できるものではありません。



(4)仮放免抑制のほんとうの目的はなにか?

 「治安への懸念」を理由にして収容を長引かせることは正当化できない、ということを述べてきました。

 では、入管が仮放免を現在きわめて厳しく抑制している理由は、実際のところ何なのでしょうか。最初にみたとおり、読売記事に登場する法務省幹部は、長期収容は国として望ましくないと考えているが、治安への影響から安易に仮放免を認めるわけにもいかないのだということを述べていました。しかし、仮放免についての実際の運用をみてみると、この法務省幹部の説明とどうもくいちがっているのです。

 「治安対策」として仮放免を厳しくしているのだとすれば、犯罪歴のない人の収容に長期化傾向はみられないはずです。ところが、実際の各収容施設の運用をみると、そうはなっていないのです。

 私たち仮放免者の会でも、多数の会員が再収容されており、その収容が長期化しています。以下では、刑事罰を受けたこともなければ、仮放免中にも刑事事件に関与しなかった会員が長期収容されている事例をいくつか紹介します。

 「入管にとって長期収容の目的はなにか?」でくわしく述べたとおり、2015年9月に法務省入管局長から「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題する通達が出されました。この通達をきっかけにして、東京入管をはじめ各地方入管局は再収容をひんぱんにおこなうようになりました。そのなかで難民審査での不認定処分確定が通知されて再収容されるケースも増えました。

 Aさんは、南アジア出身の難民申請者の男性(30歳代)です。永住者の資格をもつ、国籍の異なる配偶者とのあいだに2人の子ども(3歳と4歳)がいます。Aさんは、難民不認定に対して異議申し立てをおこなっていましたが、2016年2月にその棄却を通知されて再収容されました。現在、大村入管センターに収容されており、収容期間は2年8ヶ月におよびます。

 東アジア出身の女性であるBさん(40代)も難民不認定に対する異議申し立てを棄却されて再収容されました。2017年5月から東京入管に収容されており、収容期間は1年5ヶ月におよんでいます。

 行政訴訟の敗訴が確定して再収容されるケースも増えています。Cさんは、東アジア出身の40代の女性で、日本人の夫がいます。退去強制令書発付処分に対する取消訴訟をおこなっていましたが、その敗訴が確定し、2016年11月に東京入管に再収容されました。収容期間が2年になろうとしていますが、夫を残して帰国するわけにはいかないと過酷な長期収容にたえています。

 先の通達の出た2015年の秋以降は、以前であれば入管が再収容していなかったようなケースでの再収容も目立つようになりました。仮放免者には、入管の許可した住居(指定住居)に住むことや、就労しないことなどが、その許可条件として科されています。この条件への違反を理由とした再収容が増えたのです。

 Dさんは、東南アジア出身の50代男性で、現在東日本入管センターに収容されています。1年半をこえる長期収容ののち2015年8月に仮放免されましたが、そのわずか5ヶ月後の2016年1月に再収容されました。指定住居に住んでいなかったという理由です。たしかにDさんは仮放免の許可条件に違反しましたが、入管の指示にしたがって出頭しており、「逃亡」したわけではありません。再収容後の収容期間だけで、2年9ヶ月になろうとしています。

 Eさんは、西アジア出身の40代男性です。やはり指定住居に住んでいなかったとして再収容され、東日本入管センターに収容されています。Eさんの場合、河川氾濫の影響でアパートが浸水して住めなくなっため、引っ越しをしました。引っ越ししたあとに、これを入管に報告しましたが、転居の許可を事前にうけなかったという理由で2016年3月に再収容。収容期間は2年7ヶ月になります。

 東南アジア出身の40代の女性であるFさんは、就労したという理由で東京入管に再収容されました。今年9月にようやく仮放免されましたが、このとき収容期間は2年5ヶ月をこえていました。自分の生活のささやかな足しにするためにアルバイトをしたことで、これほど長い期間、監禁されて心身の不調に苦しみ、人生の貴重な時間をうばわれたのです。

 南アジア出身の40代男性Gさんも、就労を理由に2016年12月に再収容されました。収容期間はすでに1年10ヶ月。東日本入管センターに収容されており、いまだ仮放免されていません。

 もちろん、さきに述べたように、刑事罰を科されたことのある人であっても、長期収容に正当性はありません。しかし、ここに紹介した7人は、来日後、刑事事件に一度も関与したことのない人たちです。7人の例をとおしてわかるのは、「治安への懸念」から仮放免に慎重にならざるをえず、収容長期化をまねいてしまっているのだという法務省幹部の説明が、事実にまったく反するということです。入管各施設の運用をみれば、犯罪歴があるかないかにかかわらず現に収容が長期化しているのです。これは「治安への影響」を考慮した結果とは考えられないのです。

 では、仮放免を厳しく制限していることが「治安対策」のためではないのだとしたら、入管はなんの目的で収容を長期化させているのでしょうか。入管における収容は、つねに送還のための手段です。送還をこばむ人を監禁してその自由をうばい、心身に苦痛を与えて自分から帰国するよう追い込むためでしょう。法務省幹部は「国は長期収容を望んでおらず」などと言っているようですが、しらじらしいにもほどがあります。日本への在留の意思をくじき、送還に「同意」させるための手段として、法務省は収容の長期化をわざとすすめているのではありませんか。仮放免についての現行の運用のしかたをみれば、そうとしか理解のしようがないのです。

 これは、他者の意思を変更させるために、他者の心身に打撃をくわえるという手段を法務省が選んでいるということにほかなりません。いわば拷問を職務遂行の手段としているのです。これを法務大臣や法務省幹部がありのままに認めることはさすがにはばかられるのでしょう。だから「治安への懸念」があるのだという口実を世論むけに出しているのだということでしょう。



(5)結語

 さて、このように「治安」への「脅威」を誇張ないし創出するのは、国家機関がみずからの暴力を正当化しようとするさいにたびたびもちいてきたプロパガンダの手法でもあります。

 このブログでもたびたびふれてきましたが、法務省は2004年から08年までを「不法滞在者の半減5か年計画」と位置づけ、入管と警察が共同して非正規滞在外国人の集中摘発に乗り出します(注5)。この集中摘発が開始される前年、2003年の10月に、法務省入管、東京入管、東京都、警視庁の4者が、「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」を出しています。おなじ年の12月には、政府の犯罪対策閣僚会議が「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」というものを発表しました。いずれも、非正規滞在外国人の存在を「犯罪の温床」ときめつけ、その摘発・排除を正当化しようとするものでした。

 これら2つの文書にふれて、当ブログではかつてつぎのように述べました。

 このように、法務省をはじめとする当局は、「不法滞在者」があたかも犯罪の温床であるかのような偏見にみちた印象づけをおこないました。そうして在留資格のない外国人住民に対する「国民」の不安と恐怖、さらには憎悪を煽りかきたてることで、その暴力的排除(摘発と国外追放)を正当化しようとしたわけです。ある属性(この場合、外国人であることや在留資格がないこと)と凶悪犯罪を結びつけて語ること自体が差別の扇動と言うべきですが、政府と法務省、さらに東京都は、こうした差別扇動を組織的におこなうことによって、みずからの暴力に「国民」による理解と支持をとりつけようとしてきたと言えるでしょう。
仮放免者問題と強制送還について――この10年の入管行政をふりかえって - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年3月4日)

 こんにちにおいても、法務省は収容長期化問題をめぐって、非正規滞在外国人たちがまるで「治安」をおびやかす脅威であるかのような偏見にみちた印象づけをこころみていることを、本稿ではみてきました。しかし、こうして「治安への懸念」ということを口実にしながら国がなにをしようとしているのか、そのねらいを批判的にみきわめていくことが必要だと思います。




◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


《注》

1.収容が長期化することは問題であるとする姿勢は、じつは法務省が一貫して表明してきたことではあります。法務省は、長期収容は望ましくないという建前のなかで、収容長期化を実態よりも小さくごまかしてみせる統計資料を国会議員に提出していたこともあります。以下の記事を参照してください。


2.入管当局の広報としか言いようのない記事を掲載してきた読売新聞の報道姿勢については、以下の3つの記事で批判してきました。


3.不法滞在の外国人、収容が長期化 半年以上が700人超:朝日新聞デジタル(2018年9月23日05時06分)


4.以下の記事で引用した2010年7月の法務省入国管理局によるプレスリリース「退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について」、および国連拷問禁止委員会の質問に対する日本政府の回答(2011年7月)を参照。


5.2004年から08年にかけての集中摘発の結果、「不法残留者数」はこの5年間でおよそ半減するにいたります。その大多数は送還され出国したわけですけれども、他方でこの徹底的な摘発は、それぞれの事情で帰国しようにも帰国できない非正規滞在外国人の存在をあぶりだす結果にもなりました。帰るに帰れない事情をかかえた人びとについて、法務省はその一部の在留を合法化する措置をとりましたが、一方でその大多数に対しては在留を認めずに送還に固執しつづけています。このことが、こんにちの収容長期化問題を生んでいるのです。そうした歴史的経緯については、以下の2つの記事などでくわしく述べていますので、参照してください。



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関連記事(長期収容と再収容の問題について)

Wednesday, September 19, 2018

【傍聴報告】大阪入管暴行事件(第2回公判)


 大阪入管の職員らがトルコ人被収容者(当時)に集団で暴行をくわえ、右肩を骨折する負傷をおわせた事件の民事訴訟(国家賠償請求訴訟)。

 9月12日(水)15時より、大阪地裁にて、第2回の公判が開かれました。被害者で原告のMさんも出廷しておりました。

 今回は、原告の訴状に対する被告(国側)の反論がおこなわれました。「反論」とはいっても、やりとりは基本的に書面でおこなわれます。なので、書面の形式的なことがらについての質問と次回の日程調整ぐらいで今回は終わるのではないかと予想しながら、傍聴席につきました。

 ところが、公判は思いのほか刺激的なものでした。裁判官から、原告・被告双方の書面について、つっこんだ質問がいくつか出されたからです。これら質問の内容からは、裁判官が、双方の主張をていねいに読みこんだうえで公判にのぞんでいるとの印象を受けることができました。公判がすすみ最終的に、公正な正義にかなった判断がくだされることを期待したいと思います。

 次回の公判は以下の日時と場所で開かれます。可能な方はぜひ傍聴に足をはこんでください。また、注目、情報拡散をお願いいたします。

 日時:11月7日(水) 13:30~
 場所:大阪地方裁判所 810号法廷


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関連記事

Saturday, September 8, 2018

【傍聴の呼びかけ】大阪入管暴行事件(第2回公判)


 大阪入管の職員らの暴行により、トルコ人被収容者(当時)が右上腕部を骨折する負傷を負った事件。被害者のMさんが国を相手どって賠償金をもとめて提起した裁判の第2回公判が、ひらかれます。

 日時:9月12日(水) 15:00~
 場所:大阪地方裁判所 810号法廷

 今回の公判では、原告の訴状に対する被告(国側)の反論がおこなわれる予定です。

 公判のあとには、原告Mさんや弁護士も出席して報告集会もあります。

 裁判を傍聴して、入管による暴行・人権侵害を許さないという意志表示をしていきましょう。


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Friday, September 7, 2018

【転載】「日本政府・入管は内外公約を守れ」9.18院内集会

 9月18日に、「長期収容に反対する全国ネットワーク」の主催で院内集会がひらかれます。案内を転載します。


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「日本政府・入管は内外公約を守れ」9.18院内集会

日時:9月18日(火) 午後2時~4時  場所:参議院議員会館 B103

 私たちは、入国管理局各施設に収容されている外国人や難民に面会している団体・個人です。学生が中心となり、学校の夏休みである7・8月に全国実態調査を行いました。


〈 院内集会の趣旨 〉

一、長期収容をできるだけ回避するという内外公約を守れ
 この2年間、入国者収容所各センター及び各地方入管局収容場での仮放免許可が下りづらくなり、収容期間が2年以上、3年以上の被収容者が激増しています。この長期被収容者の中には難民申請者や裁判中の人たちも多く含まれています。
 法務大臣はたびたび「仮放免の弾力的な運用により,収容の長期化をできるだけ回避する」旨の国会答弁をしています。また日本政府は国連の拷問禁止委員会の質問に対し、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいる」と報告しています。


二、日本人、及び在留資格のある外国人の配偶者に在留特別許可を
 さらにこのかん、日本人の配偶者や在留資格のある外国人の配偶者の在留特別許可が下りないケースが異常に増大しています。改定入管法が2009年7月に成立しましたが、その際、衆参両議院で在留特別許可の基準の透明化を求める付帯決議がなされました。付帯決議の趣旨は、救済すべき事案を透明化し、在留特別許可を与えるべきであるということです。しかし、付帯決議の趣旨に反し、在留特別許可の基準の運用において、この2年余りの間に厳しくなり、日本人の配偶者や在留資格のある外国人の配偶者が収容されたり、在留特別許可が下りないケースが増大しています。


 以上の二点において、独自の実態調査に基づき、院内集会を開催します。政府は、来年度より、入管局を入管庁に格上げする方針を決定しましたが、「より厳しくなるのではないか」と在留特別許可を求める配偶者を持つ日本人から不安の声が上がっています。
 議員の皆さんに、院内集会に参加して頂き、この深刻な問題を知り、政治家としての役割を果たして頂きたいと思っています。


報告者

  • 各収容施設での実態調査に動いた各地の大学生・高校生からの報告
  • 被収容者の配偶者、仮放免者と配偶者のご夫婦
  • 指宿昭一弁護士


主催:「長期収容に反対する全国ネットワーク」

Monday, September 3, 2018

長期収容の実態――大村入管センターを事例に


(1)「収容の長期化をできるだけ回避する」(法務省の公式見解)

 入管施設の長期収容について、このブログでも以下の記事などで問題にしてきました。

  1. 入管施設の収容長期化問題について――被収容者「嘆願書」によせて - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年2月28日)
  2. 入管にとって長期収容の目的はなにか? - 仮放免者の会(PRAJ)(2018年6月27日)

 1の記事は、「長期収容」とはなにか、また、それがなぜ問題なのか、概説したものです。

 2は、2015年9月の法務省入管局長による通達を契機にして収容長期化が顕著になってきた経緯をおさえつつ、収容長期化などにあらわれている強硬方針を入管当局がどのような目的意識のもとに進めてきたのか、批判的に分析しました。

 1の記事で述べたように、私たちは6ヶ月をこえる収容を「長期収容」と呼んで問題にしてきました。入所時には健康だった人の多くが、収容期間6ヶ月をこえるころまでに高血圧や頭痛、不眠、胃腸の不調など、拘禁反応と思われる症状を発症するからです。入管施設での面会活動を通して私たちが把握するところでは、6ヶ月以上の長期収容により何らかの形で健康を害していない人は例外的と言っていい状況があります。

 入管施設での収容は、無期限収容です。収容の期限の定めがなく、したがって被収容者にとっては、いつ出所できるかわからないということです。また、国籍国へ送還されれば迫害などの危険のある人、あるいは家族や生活基盤をすでに日本にきずいている人にとって、いつ無理やりに送還されるかもしれないというおそれをいだきながら施設に監禁されるということは、大変なストレスです。こうした極度のストレスのもと、長期間にわたって収容を続けるということは、それ自体が深刻な人権侵害です。

 2の記事にみたように、法務省・入管当局自身も、報道発表や国連機関への説明、各入管地方局等への通達などを通じて、収容の長期化は「できるだけ回避する」べき問題であるとの認識をくりかえし表明してはいます。ところが、入管当局は、こうした公式の見解とはうらはらに、近年、収容を長期化させてきたのです。

 今回の記事では、その長期収容の実態の一端を、いくつかの統計データを参照しながら、あきらかにしていきたいと思います。

 2の記事でもすこしふれましたが、法務省は、長期収容の実態を小さくみせるような操作をした統計資料を国会議員に提出しています。問題を矮小化しようとする法務省のこうしたゴマカシに対しては、各施設に収容されている当事者たちのなかからも怒りの声があがっています。大村入国管理センターの被収容者たちは、法務省がごまかすならば自分たちで調査をおこなうと言って、みずから実態調査をおこなっています。そうした調査資料なども使いながら、この記事では、長期収容問題の実態の一端を示していきたいと思います。



(2)収容長期化問題を小さくみせる仕掛け(法務省データのごまかし)

 下の画像は、法務省が昨年、国会議員の質問に対して回答した文書にのっている表です(クリックで拡大します)。タイトルのとおり、昨年12月時点での「収容期間別総被収容者数」の収容施設ごとの数字がまとめられています。


 この表によると、2017年12月19日時点で、全国の収容施設には1386人が収容されていました。6ヶ月以上を長期収容とした場合、全国の施設で510人(36.8%)が長期収容ということになります。

 ところが、この表には重大なゴマカシがあります。表の右下に、「※各収容施設における収容期間を計上」との注釈がつけてあります。入管の収容問題について一定の知識がないかぎり、これだけを読んでも、その意味するところはピンとこないでしょう。しかし、ここに収容長期化の実態を小さくみせる仕掛けがあるのです。

 入管は複数の収容施設をもっており、その施設間での被収容者の「移収」をしばしばおこなっています。たとえば、ある被収容者が、東京入管に9ヵ月間収容されたあと、東日本入管センターに移収され、そこに2ヶ月間収容されているとします。この場合、この人は通算で11ヶ月間収容されていることになります。ところが、「各収容施設における収容期間を計上」するという、入管がおこなった計算方法にかかると、この人の収容期間はたった2ヶ月間だけだということになってしまいます。つまり、被収容者をべつの施設に「移収」することで、その被収容者の収容期間をゼロにリセットすることが可能な計算方法なのです。


 ところで、上の法務省の公表している収容施設ごとのデータのうち、大村入国管理センターについては、これと比較するのに格好のデータがあります。大村センターの被収容者たちは、2017年11月24日付で、96名の連名で「上申書」と題された文書を同センター所長に提出しています(→右の画像。クリックで拡大)。長期収容が日本政府の国際公約に反することを指摘し、仮放免によって収容長期化を回避するように求める内容です。


 この「上申書」には、96名の被収容者の署名がなされ、このうち94名についてそれぞれ通算での収容期間が記されています。法務省は11月末日時点での大村の被収容者数を101名としていますので、ほぼ全員の収容期間が「上申書」から判明したわけです。この「上申書」の日付は11月24日。いっぽう、法務省の統計資料は12月19日時点のデータですから、1ヶ月ほどの時期のずれはあり、その間の入所・出所が多少はあるでしょうが、両者のデータのもとになっている被収容者はほぼ重なっているとみなしてもよいでしょう。

 では、両者を比較した表と図をみてみましょう。


 上のグラフが法務省の出したデータ。通算での収容期間を計上した下のグラフと比べてみてください。「各収容施設における収容期間を計上する」という法務省のやり方によって、いかに収容長期化問題を実態よりも小さく見せることができるものなのか、わかります。実際には全体の80%近くいる6ヵ月以上の被収容者を、50%強と小さく見せることができるのです。また、1年半以上の被収容者は実際は30%をこえているのに、法務省のデータでは10%未満にまでおさえられています。

 収容の長期化が問題なのは、なによりも人権・人道上の理由からであって、それが被収容者の心身を破壊するものだからです。その点で重要なのは、通算での収容期間です。被収容者が別の施設に移収されるたびに収容期間がゼロにリセットされるような算出方法では、収容長期化が被収容者の心身におよぼす影響を考えるうえで意味がありません。

 入管がわざわざこのような方法で算出したデータを国会議員に提出したところには、収容長期化の実態をかくし、問題をできるだけ小さく見せたいとの意図が働いていたと考えざるをえません。



(3)被収容者たち自身による実態調査

 上の法務省のデータにごまかしがあることは、大村入管センターの被収容者たちにとって一目瞭然でした。周囲を見渡せば3人に1人はいる収容期間1年半以上の被収容者が、法務省の統計では10%にもみたないということになっているのですから。先のみえない長期間にわたる収容に日々苦しんでいる被収容者たちが、こうしたゴマカシに怒るのも当然です。

 そういうわけで、大村入管の被収容者たちは、自分たちの手で被収容者の実態調査をおこなうことにしたそうです。その調査データを以下に紹介していきます。

 まずは、収容期間別被収容者数です。さきほど、被収容者による連名「上申書」から計上した2017年11月時点でのデータをみました。大村の被収容者たちは、2018年8月時点での被収容者90名の収容期間を調査しています。両者のデータを比較してみます。



 このおよそ10ヶ月のあいだに、収容の長期化がいっそうすすんだことがみてとれます。

 2018年8月現在、被調査者90名のうち、収容期間が1年をこえている人は、66人(73%)です。全体の半数弱(43名)が1年半以上です。そして、じつに3人に1人(30人)が2年超というすさまじさです。

 国籍別の被収容者数は、以下のとおりです。


 ほかに、アフガニスタン、バングラデシュ、カナダ、カンボジア、イギリス、ラオス、タイ、トルコ、ウガンダ、スペインが1名ずつです。

 年齢構成はつぎのようになっています。



 つぎは、被収容者の日本での滞在年数です。


 大村センターは、正式名称を「入国者収容所大村入国管理センター」といいます。「入国者収容所」という名称からは、日本での滞在歴の浅い人が多く収容されているようなイメージを持たれるかもしれません。しかし、被調査者90名のうち29名、じつに3人に1人の滞在期間が20年をこえています。帰国しようにも帰国できない、したがって長期収容にもたえざるをえない人たちのなかには、日本での滞在期間が長く、すでに日本にしか生活基盤がないという人も多くふくまれるのです。

 最後に、日本での在留を希望する理由です。被調査者90名が、「家族」「難民」「その他」の3つの選択肢から自身の在留の理由を答えています(複数回答あり)。

なお、大村入管センターは、現在、男性のみを収容しています。



(4)結語

 以上、大村の被収容者自身による調査データから、収容長期化問題の深刻さの一端をうかがうことができたのではないかと思います。

 大村の被収容者には、大阪・名古屋・東京などの地方入管局から移収されてきた人が多くいます。この「移収」によって収容期間をゼロにするという計算方法によって、法務省が収容長期化の実態を小さくみせるゴマカシをおこなっていたことは、先にみたとおりです。

 しかし、収容長期化問題の隠蔽は、こうした統計データのゴマカシによるものには限りません。関東・近畿などの大都市圏から離れたところにおかれた大村入管センターは、その立地ゆえに収容の長期化や処遇が比較的問題化されにくいということがいえます。関東・近畿の施設にくらべ、報道される機会も少ないし、議員が視察に行くということも少ないのです。

 いわば監視の目のとどきにくい大村センターに、大阪・名古屋・東京の被収容者を「移収」するということが、入管当局にとって、収容の長期化が問題化され批判されることを回避するという効果をもつのです。入管は、2015年からこの大村への移収をさかんにおこなうようになりました。大阪府茨木市にあった西日本入国管理センターが同年9月に閉鎖されたことにより、西日本の長期収容施設が大村収容所しかなくなったことが、移収の増えたきっかけではあります。さらに、冒頭にあげた2の記事にみたように、2015年9月の法務省入管局長通達を受けて、全国の各施設において収容の長期化がすすめられてきました。大村センターでも、仮放免の許可が非常に出にくくなっています。その結果、2014年10月末時点で20名だった大村センターの被収容者数は急激に増え、現在では100名前後で推移するほどにふくらんでいます。

 大村の被収容者たちは、さきに述べたとおり、法務省の統計データのゴマカシに憤慨して自分たち自身の手で実態調査に着手しました。大村での収容の実態を日本社会にうったえるための調査です。かれらは、調査データを、当会のみならず、全国の報道関係者、複数の国会議員らにも送っているとのことです。大村についても、メディアの報道、国会議員等による視察は必要ですし、被収容者たち自身、それを望んでいます。大村入管センターの収容の実態についても、ぜひ注目・関心をむけていただくようお願いします。

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Monday, July 30, 2018

【傍聴報告】大阪入管職員による暴行事件(第1回口頭弁論)


 7月27日(金)、大阪入管職員による暴行事件について、国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が開かれました。大阪地裁の809号法廷には、約30人が傍聴に集まりました。

 この日は、入管職員による集団暴行の被害者であり、原告であるMさんが出廷し、意見陳述をおこないました。Mさんは、ちょうど2日前の25日に仮放免を許可されて大阪入管を出所したばかり。2015年1月に入国をみとめられず、以来じつに3年半にもわたって入管に収容されていたことになります。

 Mさんは、意見陳述を「残念なことに大好きな国である日本の政府を訴えることになりました」との言葉ではじめ、大阪入管に収容されているあいだに職員から暴力を受けて右肩を骨折したこと、リハビリの治療を大阪入管から許可されず受けられなかったこと、このために右肩に不自由になってしまったことなどを訴えました。

 また、Mさんは、「裁判で賠償金をもらっても健康な身体は戻らない」「残りの人生を大阪入管に奪われた」としつつ、「これから外国人に入管職員が暴力をしないように判決をお願いします。こんな思いをすることがないようにしてください」と述べて意見陳述をしめくくりました。

 さて、5月29日の提訴から約2ヶ月たってむかえたこの日の公判ですが、訴状に対する国側の具体的な反論はなされず、次回の期日に持ち越されることとなりました。

 公判後は、弁護団も出席して、支援者ら傍聴した人たちが参加して報告集会をおこないました。

 次回の公判は以下の日時と場所で開かれます。次回以降も、傍聴と注目、情報拡散をお願いいたします。

 日時:9月12日(水) 15:00~
 場所:大阪地方裁判所 810号法廷



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 第1回口頭弁論については、以下、報道も出ております。



 この暴行事件についての当ブログ記事としては、以下を参照してください。



Sunday, July 8, 2018

大村入管センターから届いた絵



 画像は、大村入国管理センターに収容されている方が描いた絵です(クリックすると大きくなります)。5月に、この絵の作者から公開してほしいと託されたものです。

 さまざまな問題がマスメディアで報道され、日本社会で関心を集めていますが、入管施設における収容の問題にも関心をむけてほしいとの意図をこめて描いた絵だということです。

 現在(とりわけ2016年以降)、各地の入管収容施設で、収容の長期化が深刻な問題になっています。

 長期収容問題のひとつのあらわれとして、被収容者による集団ハンガーストライキがそれぞれの入管施設で続発しています。2016年6月から7月にかけて大阪入管で、2017年5月には東京入管で、集団ハンストがありました。2018年になってからは、被収容者の自殺事件を契機とするかたちで、東日本入管センターにて、4月に120人超が参加する史上最大規模のハンストがあったところです。

 各施設でのハンストとその経過については、以下の記事でそれぞれリンクしている記事等を参照してください。


 長崎にある大村入管センターにおいても、収容長期化は深刻です。被収容者が入管当局に対し、長期収容の回避をもとめる要望書を連名でくり返し提出するという事態になっており、また、先月には九州弁護士会連合会が収容長期化を問題にする理事長声明を出しています。


 入管による「収容」とは何か、また、その「収容」の長期化がなぜ問題なのか、ということについては、たとえば以下の記事で述べたとおりです。


 昨今の収容長期化が顕著になったのは、「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題された2015年9月の法務省入管局長による通達が出されて以降です。この通達には、長期収容と再収容をつうじて非常に強硬に送還をおこなっていこうという入管の現在の方針があらわれています。法務省・入管当局がこの強硬方針にいたった経緯は、以下の記事で述べております。


 この記事でみたとおり、法務省は、仮放免者をふくむ「送還忌避者」を「大幅に縮減する」という目的で、長期収容と再収容をおこなっています。2015年9月ごろから、法務省は入管の各入管局・入管センターに対し、収容を長引かせ、また仮放免者の再収容を積極的におこなうように指示をしています。難民審査や行政訴訟中のため当面送還の見込みのない人びとも、長期間にわたり収容を解かれていません。というか、送還の見込みがないにもかかわらず収容を継続するからこそ、現在の収容長期化という問題が起きるのです。

 前掲の記事で分析しましたように、この現在の長期収容・再収容は、あきらかに、帰国強要の手段としておこなわれているものだといえます。つまり、長期収容・再収容によって、被収容者および仮放免者の心身を痛めつけて、日本への在留を断念させ、送還に応じさせよういうことを、法務省は自覚的におこなっているわけです。他者の意思に働きかけ、自分の思うような行動を他者にとらせるために、拘禁症状を発症するほどの長期間にわたり他者の身体を拘束しつづけ、精神的な圧力をくわえているのです。

 他者の意思と行動をコントロールをするための手段として、心身に苦痛を与えるということ。これは、まぎれもなく拷問と呼ぶべき行為です。先日紹介した被収容者からの手紙は、「私達は、今ここ東日本入国管理センターで入管による拷問を受けています」と書き出されていました。この「拷問」という表現は、誇張でもなければ、比喩でもありません。


 長期収容、そしてくり返しの収容は、法務省という国の機関がおこなっている拷問にほかならず、けっしてゆるされることではありません。

Tuesday, July 3, 2018

【傍聴の呼びかけ】大阪入管職員による暴行事件(第1回口頭弁論)


 大阪入国管理局に収容されたトルコ国籍のMさんが、昨年7月に同局の職員らの暴行で右上腕部を骨折した事件。

 Mさんが国に対し賠償をもとめて訴訟を起こしたことは、多くのメディアで報道されました。裁判所が証拠保全した大阪入管の監視カメラの映像が、いくつかのテレビニュースで放送されました。映像には、職員たちが無抵抗のMさんをうつぶせに転倒させ、その右腕をひねりあげるなどの暴行をくわえている様子がうつっていました。

 7月27日に、Mさんが原告となった国家賠償請求訴訟の第1回口頭弁論が、ひらかれます。ぜひ傍聴して、人権侵害と差別を許さないという意志を示しましょう。




日時・場所
2018年7月27日(金)13時15分~
大阪地方裁判所 本館809号法廷
集合:12時45分に大阪地裁正面入口付近

終了後には、弁護団も参加しての報告集会を予定しています。

お問い合わせ
TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
メールアドレス:try★try-together.com (★をアットマークにかえてください)






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暴行事件の経緯とその問題性については、以下の記事を参照してください。

大阪入管の収容長期化と処遇問題については、以下記事をごらんください。

Wednesday, June 27, 2018

入管にとって長期収容の目的はなにか?


1.はじめに

 ひとつ前の記事で、大村入国管理センターに収容されている72名が連名で提出した要望書を紹介しました。


 この「要望書」では、入管施設における長期収容に関して、入管が公表しているパンフレットの文言、また、国連拷問禁止委員会の質問に対する日本政府の回答などが引用されています。また、「要望書」では、長期収容問題について、大村入管センターの被収容者たちの意見提示や要求に対して、入管側がどのように回答してきたのかということが、くわしく記録されています。

 今回のこの記事では、これらの資料にくわえ、法務省入国管理局長が入管センターおよび各地方局に出している通達の文書などを参照しながら、現在の収容長期化問題がどのようにして生じてきたのか、みていきたいと思います。

 収容長期化問題は、なによりもまず、それぞれの施設に収容されている人びとに対する人権侵害という観点から問題化しなければならないことは、言うまでもありません。入管施設における長期収容がなぜ問題なのかということについては、たとえば以下の記事などで述べてきました。


 今回の記事では少し角度をかえて、その収容長期化問題が、入管行政と現実のあいだの矛盾によって、あるいは入管行政そのもののはらんでいる矛盾によって生じていることを見ていきたいと思います。



2.収容長期化を回避するとした2010年法務省通達

 2009年から10年にかけて、現在と同様に長期収容と仮放免者の再収容が問題になっていました。収容が長期化するなか、東日本入国管理センターでは、2010年2月にブラジル人被収容者が、4月に韓国人被収容者が自殺するという事件がありました。また、3月には東京入管横浜支局から強制送還のために成田空港へと連行されたガーナ人男性が、職員による「制圧」の過程で死亡するという事件も起こりました。

 ところが入管の強制送還についてのこうした強硬方針は、被収容者たちの強力な抵抗をまねくことになりました。2010年の3月には西日本入管センター(2015年に閉鎖)で、5月には東日本入管センターで被収容者による大規模なハンガーストライキがおこなわれました。

 これらの事件が報道され、入管収容が社会問題化されるなかで、法務省入国管理局は、7月27日に「退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について」と題した通達を出しました。同月30日には、法務省入管はこの通達をふまえた同じ標題のプレスリリースを発表しています(注1)

 このプレスリリースで法務省入管は、「近年,種々の理由から,収容が長期化する被収容者が増加する傾向」にあることを認め、収容が長期化している被収容者について「入国者収容所長又は地方入国管理局主任審査官が,一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討すること」としました。その「検証・検討」の結果をふまえて、「被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこと」とするとしたのです。

 この後、入管の各収容施設において、あきらかに仮放免についての運用が変化しました。長期収容されていた人たちがつぎつぎと仮放免されていったのです。こうして収容を解かれた仮放免者が2010年10月に当事者団体として結成したのが、仮放免者の会です。

 仮放免者の会は、長期収容とともに再収容にも反対する取り組みをしてきました。会を結成した2010年は、収容されている仲間たちがつぎつぎと仮放免される一方で、せっかく仮放免されていた仲間たちが、難民申請の却下や行政訴訟の敗訴を契機につぎつぎと再収容されていきました。そうしたなかで、仮放免者の会は他の団体とも連携しながら、2011年2月に2.25デモ Stop “Re-Detention”! を、また同年4月には長期収容と再収容に反対する全国統一一斉面会をおこないました。

 こうした取り組みの過程で、東京入管は、それまでおこなっていた機械的な再収容をストップしました。従来、東京入管では、難民申請却下(難民不認定に対する異議申立棄却)や行政訴訟(退令取消訴訟等)の敗訴を契機として、機械的に(=例外なしに)仮放免者を再収容していました。この機械的な再収容は、2011年2月にいったんはおこなわれなくなりました。



3.退令仮放免者数の増加

 2010年から11年にかけて長期収容が社会問題化し、また仮放免者の再収容が大幅に減っていくなかで、以降、仮放免者数が増大していくことになります。下図のように、2009年に1336人だった退令仮放免者(退去強制令書を発付された仮放免者)は、2011年に2000人を超え、2013年以降は3000人台で推移するにいたっています。


 また、この間、法務省・入管当局は、収容の長期化について、これが回避すべき問題であるとの認識をくり返し公式に表明している点は重要です。たとえば、大村入管センター被収容者の「要望書」でも引用されている国連拷問禁止委員会への日本政府の回答は、その一例です。

 拷問禁止委員会の「申請が却下されたあるいは未決定の庇護申請者の収容の長さについての懸念に対処するためにとった措置につき説明されたい」との質問に対し、日本政府は2011年7月に以下のように回答しています。

 入管法上,難民認定申請中の者の送還は禁止されているところ,収容中の難民認定申請や,難民認定申請を繰り返し行う場合などにより,近年,収容が長期化する傾向にあることを踏まえて,2010年7月から,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過しても送還に至っていない被収容者については,仮放免の請求の有無にかかわらず,入国者収容所長又は主任審査官が一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討の上,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し,収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいることから,長期収容者は,減少傾向にある。

 国連機関に対する、この日本政府の回答が、さきにみた2010年7月の法務省入管による通達およびプレスリリースにもとづいたものであることは、あきらかでしょう。

 入管法上の収容の位置づけは、送還までの身柄の確保ということにすぎません (入管法第52条第5項)。したがって、収容期間が半年を超えたり、それどころか2年や3年超におよんだりすることを正当化できるような理屈は、入管当局にとってすら、見いだしようがないものなのです。




4.2015年通達と再収容・長期収容の急増

 入管当局は、収容の長期化は回避すべき問題であるという見解を公式には保持しています。それは、現在も変わりません。ただし、それはあくまでも表向き・公式上はそう表明しているということにすぎません。実際は、入管は仮放免申請の審査、また仮放免者の再収容に関して、運用を変化させました。

 2015年9月18日に法務省入管局長から「退去強制令書により収容する者の仮放免措置に係る運用と動静監視について」と題する通達が出されました。

 この通達は、長期収容はさまざまな問題を生じさせるとする見解は維持しつつも、退去強制令書を発付された仮放免者および被収容者に対してより厳しい対処をとることを通達したものです。通達は仮放免者について、次のように述べています。

 一方で、適正な仮放免の運用を担保するためには、今まで以上に仮放免中の動静を注視し、被退令仮放免者の生活状況等を常に把握する必要があり、仮放免許可条件違反、送還に支障がある事情の解消など仮放免理由の解消、不法就労事実の認知等、引き続き仮放免を継続することが適当でないことが判明した場合には、仮放免の取消し又は延長不許可として再収容し、仮放免の適正化を図るとともに、速やかな送還に向けて準備を進めることも必要です。

 ここで、法務省入管局長は、「仮放免中の動静を注視」するように指示していますが、これは要するに仮放免者の生活を監視せよということです。入国警備官が、仮放免者の届け出ている住居におもむいてその所在を確認したり、行動を監視したり、外出する仮放免者を尾行したり、といったことをするわけです。仮放免者に聞くと、とくに東京入管管内では、この時期から入管職員による「動静監視」が目に見えて強化されたようです。

 この2015年9月の通達が出て以降、仮放免者が再収容されるケースが次第に増えていきました。こうして頻繁におこなわれるようになった再収容がきわめて恣意的なものであることについては、以下の記事でくわしく述べたとおりです。


 通達が出た直後の10月1日から、全国の入管施設で一斉に、仮放免許可書に就労不可の記述を書き入れるようになりました。入管当局は、それまで仮放免者の就労について事実上黙認してきましたが、これを禁止するということを明示したわけです。以後、就労を理由とした再収容がおこなわれるようになりました。だれに危害をくわえているわけでもなく、自身や家族の生活のためにアルバイトに出かける仮放免者を、入管職員はわざわざ尾行して就労の事実をおさえ、「仮放免許可条件違反」であるとして再収容し始めたのです。

 また、上にリンクした記事でも述べたとおり、住居変更許可の申請が数日遅れたといった、以前であれば職員が口頭での注意にとどめていたような些末な「仮放免許可条件違反」を理由にした再収容も始まりました。

 さらに、難民申請の却下や行政訴訟の敗訴確定を契機とした再収容もひんぱんにおこなわれるようになりました。

 こうした一連の経緯からあきらかなのは、入管当局は、仮放免者数を減らしたいという明確な目的意識のもと、その手段として再収容をおこなっているということです。つまり、再収容によって仮放免者数を減らしたいということが入管の意図であって、就労や住所についての「仮放免許可条件違反」はそのための口実にすぎないのです。

 一方、この2015年通達は、仮放免の弾力的活用によって収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組むとした2010年7月の通達について「本通達をもって廃止」するとしています。

 こうして、入管は2015年通達をへて、再収容・長期収容を送還の手段として積極的にもちいる強硬方針へと運用を変化させました。



5.「仮放免者の逃亡・犯罪・就労」が問題?

 さて、大村入管センター被収容者による連名の「要望書」によると、大村の職員は「最近仮放免を得た者が逃亡したり、犯罪を犯したり、不法就労する者が沢山居るから、現在大村入管は仮放免を許可しなくなった」と説明しているとのことです。「仮放免を許可しなくなった」ということ、つまり入管が収容を長期化させている理由を、仮放免者の逃亡・犯罪・就労のためであるとしているのです。

 しかし、以上みてきたところからあきらかなように、この入管側の説明はウソと言ってよいものです。

 大村入管センターの複数の被収容者によると、2017年1月ごろから、重病人もしくは送還を受け入れて帰国準備を理由として認められた人以外には、仮放免で出所した人は1名だけだとのことです。難民申請をしていたり、あるいは家族が日本にいる等の理由で在留を希望しているひとの仮放免許可はほぼ皆無であるという状況が、1年以上にわたって続いているのです。つまり、犯罪歴のいっさいない人も、就労を理由に再収容されたのではない人も、仮放免が許可されずに長期間にわたり収容されているのです。

 東日本入管センターや東京入管、大阪入管においても、許可条件違反によって再収容された人、犯罪歴のある被収容者だけではなく、被収容者全体として収容期間が非常に長期化しています。仮放免者の逃亡・犯罪・就労を理由に仮放免審査を厳しくしているという入管の説明は、事実と照らし合わせて整合性を欠くものです。

 また、「逃亡」に関しては、こうした入管の説明は、原因と結果をすりかえています。入管局が求める定期的な出頭をせずに「逃亡」する仮放免者が増加しているから、仮放免審査が厳しくなっているのだと入管は説明しているようですが、事実はその逆です。再収容の増加と度を越した長期収容が、「逃亡」の増加を生んでいるのです。

 同様にして、許可条件に違反して就労する仮放免者がいるから仮放免審査を厳しくしているのだという説明も、意図的に事実を誤認させようとするものです。先述の2015年9月の法務省入管局長通達で再収容をふくむ強硬な方針が示され、これに応じて各入管局が再収容する基準を下げる運用を始めた、というのが順序です。つまり、従来であれば再収容しなかったケースを再収容するようになったということであって、それまで黙認していた仮放免者の就労や、以前はとりたてて問題視していなかった些末な「違反」(転居とその許可申請が前後した、といった「違反」)を、再収容すべき理由としてあらたにみいだしたということにすぎません。入管は許可条件違反がみられるから再収容をさかんにおこなうようになったのではありません。再収容件数を増加させるために、許可条件違反をきびしく問うようになった(=再収容の基準を変更した)のです。



6.「脅威」の創出

 大村センターの職員は、「入管が仮放免制度を厳しくしているのは、2020年のオリンピック・パラリンピックを控え日本政府は、より安全・安心社会を実現するためである」とも説明しているようです。他の施設に収容されている人からも、同様の説明を現場の職員から聞かされたという話を聞きます。

 収容が長期化していることについての、こうした治安にからめた説明は、現場の職員が勝手にしゃべっているというものではなく、法務省からの指示にもとづいているようです。2016年4月7日に、法務省入管局長は、入国者収容所長と地方入管局長にあてて、「安全・安心な社会の実現のための取組について」と題した通知をおこないます。

 この通知は、2020年開催予定の東京オリンピック・パラリンピックにふれたうえで、以下のように述べています。

安全・安心な社会の実現のためには,国内の安心を確保することが重要な要素となるところ,近年増加傾向にある不法残留者及び偽装滞在者(以下「不法滞在者等」という。)のほか,退去強制令書が発付されても送還を忌避する外国人(以下「送還忌避者」という。)など我が国社会に不安を与える外国人を大幅に縮減することは,円滑な出入国審査,厳格な水際対策,適正な難民認定審査などとともに,当局にとっての喫緊の課題となっています。

 この通知は、長期の収容や再収容について直接言及しているわけではありませんが、未摘発のいわゆる「不法滞在者」とともに、「送還忌避者」が「我が国社会に不安を与える外国人」と位置づけられている点に注意が必要です。「送還忌避者」とは、具体的には、退令仮放免者と、退去命令を受けながら在留を求めている被収容者を指します。こうした存在を、入管当局は「我が国社会」をおびやかす脅威であると決めつけ、「大幅に縮減する」べき対象と位置づけているのです。

 「送還忌避者」が送還を忌避しているのはたしかに事実でしょう。しかし、送還を忌避することと、「安全・安心な社会」をおびやかすということは、まったく次元の異なる話です。この両者を混同させて、あたかも「送還忌避者」が安全をおびやかす存在であるかのように言い立てるのは、差別的な偏見を煽動する行為であるというべきです。上の通知をとおしておこなわれているのは、差別的な偏見をあおることによって、ある社会的なカテゴリー(この場合は「送還忌避者」)を「脅威」に仕立て上げるということにほかなりません。

 このように、差別煽動を通して「脅威」を創出することは、国家がみずからの暴力を正当化しようとするさいの古典的な手法であります。国家機関みずからが、こうした差別的な偏見にまみれたプロパガンダによって、「送還忌避者」に対する長期収容・再収容を正当化しようとしているわけです。まさにこの事実が、長期収容・再収容の正当性のなさを示していると言えるのではないでしょうか。



7.収容長期化は入管にとってすら正当化できない

 以上みてきたように、入管は、一方では収容の長期化は回避すべき問題であるとの見解を保持しつつ、他方でとくに2015年以降、収容の長期化をおしすすめる運用を現実にはとってきました。

 入管法上、収容の目的は、送還が可能になるまでのあいだの身柄の確保にすぎません。送還の見込みがないのに収容するのは、いたずらに人を監禁して自由をうばい、無意味に苦痛を与えることにしかなりません。収容が長期化するという事態は、結果的に送還の見込みがないにもかかわらず収容を継続してしまっているということになりますから、その収容には正当性がないということを意味するのです。

 現に大村入管センターふくめ各地の入管施設において収容のいちじるしい長期化が生じているわけですが、入管当局にとって、長期収容の目的とはいったい何なのでしょうか? なぜ、入管は長期収容をおこなっているのでしょうか?

 入管当局は、東京オリンピック・パラリンピックにむけての治安対策であるかのように言いますが、端的に言ってこれがウソであることはすでにみてきたとおりです。仮放免者が仮放免許可条件に違反する就労などの行為をおこなうから仮放免審査が厳しくなっているのだといった説明も、すでに否定したとおりです。

 長期収容は、入管にとってすらその正当性を主張しうる根拠をみいだせないものなのです。その正当性を主張できないからこそ、仮放免者は「我が国社会に不安を与える外国人」であるなどというプロパガンダを発して、その拘禁を正当化しようとしているのでしょう。

 入管は収容が長期化している事実をできるだけ小さく見せようという、ごまかしすらおこなっています。長期収容問題を報じた『毎日新聞』の記事から引用します(注2)

法務省によると、17年12月19日時点で、全国の施設には1386人が収容され、長期収容者は36.8%の510人。16年末は収容者1133人のうち長期は313人で27.6%だった。

 ここで「長期収容」といわれているのは、6カ月以上の収容です。これについては後日、あらためて検証した記事を公開しますが、ここでの510人(36.8%)という数字は、収容期間が6カ月以上の被収容者を少なくみせようという意図のもと、特殊なしかたで算出された数字です。

 入管は複数の収容施設をもっており、その施設間での被収容者の「移収」をしばしばおこなっています。たとえば、ある被収容者が、東京入管に9ヵ月間収容されたあと、東日本入管センターに移収され、そこに2ヶ月間収容されているとします。この場合、この人は通算で11ヶ月間収容されていることになります。

 このように通算での収容期間で計算した場合、昨年末の時点で6カ月以上収容されている人が510人(36.8%)しかいないということは、面会等をつうじて私たちが各施設の被収容者たちから把握している実態からみて、ありえません。もっと大きな数字になるはずです。「510人(36.8%)」という法務省の発表している数字は、移収によって収容期間がキャンセルされる計算方法でみちびきだされたものと考えられます。つまり、さきにあげた通算で11ヶ月間収容されている人の例でいえば、移収後の「2ヶ月」だけが収容期間としてカウントされるような計算方法をとっているのだろうということです。この点は、後日あらためて検証したものを公表します。

 上の毎日新聞が報じているデータは、法務省がこれに先立って国会議員に報告している資料にのっているものとも同じものです。つまり、法務省は、収容長期化の実態について、新聞記者と国会に対し、問題を小さくみせようとして操作したデータを報告した、ということになります。こういったことからも、収容の長期化は、入管当局にとってすら、その実態をできるだけ隠しておきたい問題であり、正当化のしようのないものなのだということがわかります。



8.結語

 とりわけ2015年以降について、入管が収容長期化をおしすすめている目的は何なのか、という問いにもどりましょう。

 オリンピック・パラリンピックや治安対策といった論点は、本質ではありません。

 入管が長期収容、あるいは再収容をつうじておこなおうとしているのは、仮放免者をはじめとする「送還忌避者」を送還によって減らす、ということにほかなりません。長期間にわたって無期限に監禁することで心身を痛めつけ、在留を断念させて送還に追い込む、ということです。これこそが、入管が収容を長期化させている本当のねらいにほかなりません。

 このように身もふたもない、正当化のしようもない目的によって長期収容がおこなわれているからこそ、入管当局は、治安対策といったニセの論点を煙幕のように提示したり、収容の長期化を小さくみせるような操作をおこなったりしているのだと言えます。

 入管行政にたずさわっている人もふくめ、私たちに突きつけられている論点は、単純なものです。すなわち、長期収容・再収容によって他者の心身に打撃を与えるという暴力的な方法を、送還に同意させる手段としてもちいることについて、私たちはこれを許すのかどうか、ということです。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


《注》

注1 法務省入管によるプレスリリースの全文は以下のとおり。

退去強制令書により収容する者の仮放免に関する検証等について
法務省では,退去強制令書が発付されてから相当の期間収容が継続している被収容者について,今後,一定期間ごとにその仮放免の必要性,相当性を検証・検討し,個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用しつつ,より一層適正な退去強制手続の実施に努めていくこととしました。
 出入国管理及び難民認定法においては,退去強制令書が発付された者について,直ちに本邦外に送還することができないときは,送還のための身柄の確保及び在留活動を禁止することを目的として,送還可能のときまで収容することができるとされており,その一方で,身柄の拘束をいったん解く必要が生じた場合に備えて,仮放免制度が設けられています。
 その仮放免については,これまでも,各地方入国管理官署において適正な運用に努めてきましたが,近年,種々の理由から,収容が長期化する被収容者が増加する傾向にあります。
 そのため,今般,仮放免制度が設けられている趣旨にかんがみ,退去強制令書が発付された後,相当の期間を経過してもなお送還に至っていない被収容者については,仮放免申請の有無にかかわらず,入国者収容所長又は地方入国管理局主任審査官が,一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討することとしました。
 そして,その結果を踏まえ,被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用することにより,収容長期化をできるだけ回避するよう取り組むこととし,より一層の適正な退去強制手続の実施に努めてまいります。
平成22年7月30日    法務省入国管理局


注2 「入管施設:不法滞在、長期収容急増 国、「仮放免」抑制」 - 毎日新聞 2018年5月21日 07時00分(最終更新 5月21日 07時00分)

Tuesday, June 26, 2018

大村入管被収容者から仮放免を求める「要望書」

 各地の入管の収容施設において、収容の長期化が問題になっています。

 長崎県大村市にある大村入国管理センターでも、収容が長期化しており、被収容者から同センターあてに再三にわたって連名での要求書が出されていることは、以下の記事で紹介したとおりです。




 被収容者たちによると、大村センターでの仮放免審査は昨年の春ごろから極端に厳しくなっており、以来、数人の重病人をのぞいては、難民申請者など日本での在留を望んでいるひとの仮放免許可は1名にしか出ていないとのことです。

 大村センターでの収容長期化問題については、6月21日に九州弁護士会連合会が理事長声明を出しています。




 大村の被収容者たちは、5月1日に72名の連名で長期収容に抗議する「要望書」を提出しました。この「要望書」の全文を、以下に掲載します(「要望書」本文では、「4月20日」との日付が付されていますが、5月1日に収容所内に設置された意見箱に投函したとのことです)。

 なお、以下のリンク先の記事では、この「要望書」にもふれながら、とくに2015年以降に顕著になった全国の入管施設における長期収容問題がどのようにして生じてきたのか、また、入管のそのねらいは何なのか、解説しました。こちらもあわせてごらんください。





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平成30年4月20日

入国者収容所大村入国管理センター所長殿

全ブロックの被収容者

要 望 書

 この度、所長様には、大村入国管理センターに所長として就任になされましたこと、おめでとうございます。お目に掛かったこともございませんのに一筆差し上げる失礼をご容赦下さい。

 さて、被収容者に対する収容期間が長期的に継続されていること、いわゆる収容長期化に伴い、現在収容所内における被収容者の生活の環境改善の需要が高まっています。取り分け、この外界と完全に隔離された密閉環境の下での長期収容生活ですから、日々私達の心身に付き纏われるストレスは、大変過酷で本当に耐え難いものです。そのお蔭で現在、1年以上の長期収容者の殆どは、次々と拘禁症状を発症しています。主に、目まいや食欲不振や不眠などといった症状が典型的ですが、中には、バセドウ病という専門的かつ長期の治療が必要になる程、重病を発症している者も居ます。長期収容・拘禁の過酷なストレスによって持病のある者には、その症状が悪化し新たな病気が発症することに繋がります。長期収容・拘禁のみならず24時間体制の下で監禁・監視されることによって、月日と共に私達の心身が衰弱され、元々はとても健康だった人間であっても、どんどん病気になり苦しい、辛い長期収容生活が強いられているのは現状です。この収容所において、私たちが病気になったところで、たとえ薬が与えられても、治療を受けても、この収容・拘禁状態が継続されているままのでは、どんな薬でも効き目がありません。つまり、収容・拘禁される状態のままでは、治療には意味がないのです。この観点からも一日も早く長期収容の中止や仮放免制度の緩和が必要です。

 さらに、近年大村入管も含めて日本全国の入管収容施設で被収容者が病死している事件が多数起こっていることも考慮すれば、大村入管には、医療体制を含め、入管運用方針そのもの全体の改善も必要になります。言うまでもない話ですが、現在貴センターにおいて身柄が拘束されている100名以上の私たちの中には、収容期間が2年から3年の者は、大半を占めており、その中、収容期間が3年半を越えている者も居るのです。それにも拘らず、私たちの仮放免請求に対する許否の判断基準が大変厳しく設けていて、昨年(2017年)では、仮放免が許可されたケースは、殆どありません。このような事態は、拷問や人権侵害とも言うべき異常なものでありながら未だに続いており、改善される目処が立っていません。上記のように、これまで貴センターが行なって来たその運用方針は、この上なく非人道的なものであるとして、私たちは納得できません。一刻も早く改善して頂きたいと望んでおります。

 長々しい文書になってしまいますが、この異常事態・この現状を早めに改善して頂くためにも下記の事実に基づいた記述をご参考になって頂きたいと思います。



1.「収容中の被収容者については、仮放免の請求の有無にかかわらず、入国者収容所長又は主任審査官が一定期間ごとにその仮放免の必要性や相当性を検証・検討の上、その結果を踏まえ、被収容者の個々の事情に応じて仮放免を弾力的に活用し、収容の長期化をできるだけ回避するよう取り組んでいる」。上記1の内容は、これまで法務省入国管理局が毎年ごとにパンフレット等を用いて一般世間に対し、声明を出している、そのパンフレット等から引用したものです。

2.「入管法では、退去強制令書の発付を受けた外国人を直ちに送還できないときは、その外国人の身柄の拘束を一時的に解く仮放免という制度を規定しており、被収容者等から仮放免の申請があった場合には、被収容者の情状及び仮放免の申請の理由となる証拠並びにその者の性格・資産等を考慮し、その許否を決定することとされている」。

3.「入管法上、退去強制手続きは外国人の身柄を拘束し進めることとされているところ、退去強制令書を発付された者で長期に渡っても送還できない場合や収容期間の長短を問わず、年齢、健康状態、その他の人道上配慮を要する場合には、個々の事案に応じて仮放免制度を弾力的に運用し、一次身柄を解く措置をとっており、収容が長期間に渡らないように配慮している」。上記の2と3の内容は、これまで日本政府が拷問禁止委員会の質問に対し、回答した資料等から引用したものです。

 このように、これまで日本政府は、国民や拷問禁止委員会や国際社会に対し、退去強制令書の発付を受けた外国人については、入管収容施設等において、長期に渡っても送還できない場合には、仮放免と言う制度を弾力的に活用し、収容の長期化をできるだけ回避します。又、仮放免の請求の有無にかかわらず、入国者収容所長、又は主任審査官が一定期間ごとに被収容者のその仮放免の必要性や相当性を検証・検討して頂けることや人道的な配慮・措置などをとっています、などなどと情報を公開しています。

 しかし、現下において、大村入国管理センターの運用方針は、上記1ないし2の日本政府が説明した内容とは完全に逆のものになっています。政府の言ってることと入管のやってることは、全く違うものになっています。貴センターの私たちに対する扱い方は、どうなっているのですか。

 本年2月に私たち全ブロックの被収容者は、連名で要望書を提出し、大村入国管理センターに対して、これまで日本政府のこうした公式見解と現下の入管の仮放免許可実務と全く異なることを指摘し、話し合いを求めました。そして、3月15日に3Aブロックをはじめ全ブロックで説明会が開かれました。ご参考になって頂ければと、以下に当時の説明内容をまとめて来ました。

「これまで大村入管は、被収容者から仮放免の申請があった際には、その申請の理由を総合的に考慮の上、結果を下している。それは昔も今も同じやり方でやって来ている。しかし、最近仮放免を得た者が逃亡したり、犯罪を犯したり、不法就労する者が沢山居るから、現在大村入管は仮放免を許可しなくなった。実は、大村入管も常に他の入管と情報交換しています。例えば、東京入管や牛久入管や名古屋入管などで今もなお、仮放免が許可されているケースがあるという事実は、確かであるが、しかし、他の入管では、収容者数が多いため、仮放免を出しているのであり、一方、大村入管においては、収容者数が少ないため、仮放免を出す必要はない。又、基本的に入管というのは、同じ組織であり、どこの入管でどういうケースが仮放免されているのかも、当然我々大村入管は把握している。続けて、病気のある被収容者については、被収容者が入管の中で病気を発症した場合には、まず医者に診断してもらい、その結果を踏まえて仮放免を許可するか否か総合的に判断している。被収容者が病気がある、あるいは、入管収容施設の中で病気を発症したからといって、必ず仮放免の対象となるものではない。つまり、病気は、仮放免審査の一つの要素にすぎない。又、色んな種類があるため、一概には言えないが人道的な配慮が必要かどうかも審査の一つの要素として仮放免を判断している」。

 これでは、私たちは納得できません。どう理解すれば良いのでしょうか。

 まず、入管法上、退去強制の手続きは、退去強制令書(退令)の発付を受けた外国人の身柄を拘束し、進めることと規定されている。しかし、入管法上では、退令の発付を受けた者で入管収容施設等において、長期に渡っても送還することが不可能な場合に備えて一時的にその者の身柄の拘束を解くという仮放免の制度も設けられている。というふうに分析しておきます。

 この点において、貴センターにご理解して頂きたいのは、私たちには、確かに退令の発付を受けましたが、しかし、現在長期収容されている私たちの殆どは、退令に対する取消し訴訟裁判を行なっており、これと同時に退去強制手続の執行停止という部分も裁判官に認められています。退令の取消し訴訟裁判というのは、もし最高裁まで訴訟を継続させる場合では、その期間が4年又は5年に及ぶことも珍しくありません。入管は法律に則って被収容者の収容期間の長短を問わず一定期間ごとに仮放免の必要性や相当性を検証・検討して頂けるか否かは、別においといても構いませんが、まずご理解して頂きたいのは、私たちがまだ退令の取消し訴訟裁判を行ない続けている以上は退去強制手続の執行停止部分の効力が継続されていることになっています。この退去強制手続きに対する執行停止部分の効力がある以上、被退去強制対象者の身柄を強制的に送還することは、法律上では、基本的に不可能であります。従って入管は、裁判を行なっている被収容者で、なおかつ退去強制手続きの執行停止部分が認められている者の身柄を入管収容施設に長期間収容・拘禁させているのは、何の意味もないであることは、十分に考えられます。このような収容は、企画外の収容でしょうか、悪戯の収容でしょうか、それとも収容権の濫用でしょうか。私たちからすれば、どちらにも当たると考えております。

 さらに言えば、一年間で被収容者一人当たりの生活費・医療費・諸々の費用は、少なくとも70万円以上掛かると計算すれば、毎年、日本全国の各入管収容施設に、国庫から支出される経費は、莫大なものであることが分かります。そういう意味では、このような意味不明・悪戯の長期収容は、日本国民の税金を只只無駄遣いしているだけであることをご理解して頂きたいのです。これまで長期収容・拘禁されて来た者の殆どは、それぞれのケースは異なるものの、皆絶対に帰国することの出来ないという相当の理由・事情を抱えていて入管側もそれを承知した上で送還に踏み切れず、仕方なく、長期収容させているものであり、国民の税金を無駄遣いせざるを得ない状況にあります。そして、この先もこうした状況を継続させれば、さらなる税金の無駄遣いがエスカレートすることになると言えるのではないでしょうか。

 続けて、大村入管は、他の入管で収容者数が多いから仮放免が許可されているだけであって、一方大村入管において収容者数が少ないから仮放免を許可する必要はないとしています。この点について、どうしても道理にかなった説明であるとは思えません。入管法上、仮放免という制度が存在している以上、入国管理センターとしては、法律に則ってその仮放免制度を弾力的に活用し、長期収容を回避すべきであると私たちは考えておりますが、若しや、貴センターは、施設運営のために最低限の収容者数を確保しているのでしょうか。若し、本当にそうであれば、私たち被収容者一人ひとりは、貴センターにとっては、ビジネスの一つの商品として利用されていることになっている、というふうに考えなければなりません。如何なる弁解であろうと、少なからず私たちにとっては、貴センターが施設運用のために、皆、利用されているという印象が強く与えられています。本当にこの点の説明については、非常に残念に思います。又、大村入管は、人道的な配慮や措置などをとっていると言いながら他の仮放免者が仮放免者が逃亡したり、犯罪を犯したり、要するに仮放免の規則を順守しない者が多数存在するなどという理由から、現在私たちの仮放免請求に対して、一切認めず、むやみに長期収容・拘禁を継続させている、しかも被収容者の殆どは、仮放免許可というもの自体、一度も受けたことがない、また、仮放免許可されたものの入管は適切な理由もなく、好都合であれば何らかの難癖を付けては再収容させている。この様なやり方・扱い方は、不当・不公平なものであると言わざるを得ない。仮放免の規則を順守して生活して行かなければならないのは、当然ですが、しかし、どれだけ他人が仮放免の規則を順守しなかったとはいえ、法律上、私たちには、他人の犯した過ちに対して、その責任を負わなければならないという義務が存在するとは思えません。よって、これまで大村入管の行なって来たその運用方針、そのやり方というのは、不適切なものであり、むしろ、人道に反した行為であり、人権侵害に当たる行為であると言わなければならない。大村入管のこうした被収容者の私たちに対する悪質極まりない扱い方は、人道上看過できるものとは到底言えません。又、度々、大村入管の職員さんらが口を揃えては、「入管が仮放免制度を厳しくしているのは、2020年のオリンピック・パラリンピックを控え日本政府は、より安全・安心社会を実現するためである」などと私たちに説明しています。しかし、オリンピック・パラリンピックは、私たちに何が関係あるというのでしょうか。入管のこのようなやり方は、果して日本社会にとって本当に良いものであったのか、そしてこのままのやり方を続けることによって弊害が生じることはないのか、又、悪影響や不利益を負う人間は本当に誰も居ないのでしょうか。そもそも、オリンピック・パラリンピックというのは、国際交流・平和のために開かれる催しであると私たちは思います。では、何故、その平和のために罪のない、犯罪者でもない、日本政府の庇護を求めている難民認定申請者である私たちの身柄が拘束され入管収容施設に無期限の収容・拘禁という罰を受けることによって人生の大切な時間が奪われ、命まで犠牲にされなければならないのでしょうか。それだけではありません。私たちの中には、日本に配偶者・家族・幼い子供が居る者も多く、今もなお、私たちの社会復帰を待ってくれています。そうすると貴職らが言うより安全・安心社会作りやオリンピック・パラリンピックと言うもののために、犠牲・弊害を受けるのは私たち自身だけでなく、私たちのことを待ってくれている家族の方にも影響を及ぼしていることになります。幼い子供には、親が居なければ、教育に支障を来たしますし、子供にとって最善の利益や親からの教育機会が奪われるようなことは、絶対に許されるものではありません。強制送還によって家族の崩壊や家族と分離させるような行為も許せれません。これまで入管のやって来たことは、日本社会にとって利益になったかどうかはともかく、目前に確認できるのは、私たちが入管収容施設において、長期収容・拘禁されることによって、心身が衰弱され、次々に病気を発症しているのは、前述の通りです。しかし、入管は、残念ながら、被収容者が重病を患っているのが分かっているのにも拘わらず仮放免を一切許可せず、適切な治療を受けさせないことから、これまで多くの被収容者が病死しています。中には、長期の収容・拘禁による過酷なストレスに耐えられず、又、幾度もの仮放免請求が却下されることから精神に重大な打撃を与えることとなり、最終的には、被収容者が精神的に追い詰められてしまい、自殺を図り、命を失ってしまった事例も多数存在しています。本年4月13日に牛久入管で起こったインド人男性の自殺死亡事件も一つの悲惨な事例であるとして指摘したいところです。一体、入管は人の命は何だと思っているのですか。入管は、私たちが収容施設の中で何人が死んでも構わないと私たちの身柄を拘束・拘禁し続けているつもりなんでしょうか。入管はよく不法滞在者だの外国人だのと文句ばかり言っているようですが、この世の中は、外国人と日本人しか居ないじゃないでしょうか。例えば不法滞在者であれ、不法就労者であれ、その者の身柄を拘束し、入管の収容施設に入れて無期限の収容・拘禁という罰を与えてはいけません。その者の人生や命を軽視・無視してはいけません。どうか、ご理解して頂けないでしょうか。このままでは、もっと多くの死者が出てしまう恐れがあります。私たち被収容者全員は、これ以上黙ってはいられません。我慢も限界を越えている状態です。私たちには、確かに退令が発付されていますが、しかし私たちには、どうしても帰国してはならない、というそれなりの理由がありますので、命を掛けても、こうして日本に残ることを選択している訳です。長期収容が多数の死亡事件を生み出す原因になっているような事態になっているので、この現状、この異常事態を一刻も早く改善されるべきであることは、論を俟たないところです。どうか私たちの事情についてもう一度深慮して頂き、その上で現状のこの異常事態を改善して下さること、私たち被収容者一同、伏してお願い申しあげます。

 本年4月から、大村入国管理センターには、更迭[人事異動?]があり、所長も新しく入れ替わっていることなど、私たちは承知しております。そこで、これから大村入管の運用方針・ポリシーというものは、どう変わっていくのか、どのようなものになるのか、又今後私たちの人生はどのように扱われるつもりなのかなどについて、是非明らかにされたいところです。改めて話し合いの場を設けて頂き私たちに納得が行くような説明・回答を出して下さるようお願いしたいと思います。なお今回のこの要望書に付きましては、ご返事・ご回答をが行なわれる際には、書面をもって回答して頂きたいです。

 貴センターには、日々大変ご多忙とは存じますが、この要望書を回収後、2週間以内に返事して下さい。何卒宜しくお願い致します。
別紙にて、全ブロックの被収容者の署名・国籍・収容期間を記載しております。又、私たちは、別紙に記載されている自分の個人情報については、仮放免者の会や支援者の団体やメディアや国会議員さんに自分の個人情報を提供し、公開されることに同意します。

以上

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