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Friday, November 20, 2020

【傍聴呼びかけ】11/25 ペルー人Bさんの国賠訴訟 第2回口頭弁論(大阪入管暴行事件)


 2017年におきた大阪入管職員による被収容者に対する2つの暴行事件。このうち、トルコ人Mさんが国に賠償を求めていた裁判は、9月29日に大阪地裁にて和解が成立しました。和解の条件は、大阪入管局長がMさんに謝罪し、同局に収容されている人の人権を尊重した処遇につとめることを確認すること、また国がMさんに和解金を支払うことなどです。


制圧行為による骨折等について入管が謝罪!再発防止も約束! - 暁法律事務所【大阪】(2020年10月2日)


 もうひとつの大阪入管での暴行事件は、Mさんの事件から5ヶ月後の2017年12月におきました。Bさん(ペルー国籍)が、大阪入管の職員たちから14時間以上にわたって後ろ手錠により拘束され、その間、トイレに行くことも食事をとることも許されず、また、後ろ手錠をつけた状態で右腕をねじりあげられ、骨折させられたという事件です。


 事件の詳細については、以下を参照してください。


大阪入管暴行事件で和解成立 / 大阪入管でのもうひとつの暴行事件裁判にも注目を! - 仮放免者の会(PRAJ)(2020年10月3日)


 この2つめの暴行事件は、被害者のBさんが国に賠償金の支払いを求める裁判が現在おこなわれています。提訴は今年の2月でしたが、新型コロナウイルスの影響で弁論が延期されており、先月の7日にようやく第1回の弁論がひらかれたところです。


 前回の弁論は、コロナ対策として14席に減らされた傍聴席が満席となり、法廷に入れないかたが数名いました。原告のBさん本人と、弁護団の大森景一弁護士による意見陳述がおこなわれました(意見陳述の全文は、この記事の末尾に掲載しております)。


 Bさんは、入管の職員たち自分を動物のようにあつかい、「拷問のようだった」としつつ、入管のなかでほかの人も「同じような目にあいました」と指摘しました。Bさんは意見陳述の最後を「入管の担当さんは外国人に暴力をしないでください。虐待をしないでください。外国人に動物みたいなあつかいをしないでください」という言葉で結んでいます。


 大森弁護士も、先日和解の成立した同じ大阪入管でのMさんの事件のほか、東日本入管センターや東京入管でも被収容者が暴力的に制圧されたと訴えている同種の事案があいついでいることを指摘しています。そのうえで、裁判所が「もし仮にB氏に対する行為を適法と判断するようなことがあれば、このような行為は今後も繰り返され、さらにエスカレートしていきかねません」と述べました。この裁判がBさんの損害の回復にとどまらず、入管施設に収容される外国人たちの今後にも影響を与える重要な意義をもつのだということだと思います。


 「制圧」と称しての被収容者への暴行事件のあいついでいる入管の体質がこの裁判で問われるのはもちろんですが、そうした外国人への入管職員の暴力行為をゆるすのかという点で、日本の裁判所、ひいては日本社会のあり方もまた問われているのだと思います。


 Bさんの裁判の第2回の口頭弁論は、以下の日時と場所でひらかれます。ご都合のつくかたは、傍聴をお願いします。


日時:11月25日(水) 10時30分

場所:大阪地方裁判所 1006号法廷(→地図



 以下、原告のBさん、および大森景一弁護士の意見陳述の全文を掲載します(人名をイニシャル表記にするなど、原文を一部加工しております)。



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【Bさんの意見陳述】


意見陳述


わたしは、ペルーこくせきの、


Bです。


このさいばんで、わたしが、のぞんでいることは、


にゅうかんには、ほんとうのことを、いってもらいたいです。


ぜんぶ、びでおかめらに、うつつています。


しょうこが、のこっています。




にゅうかんの、たんとうさんは、わたしに、


げんどをこえて、ばつを、あたえました。


わたしは、くびを、しめられたり、


うしろでに、てじょうを、かけられました。


よなか、ずっと、てじょうをかけられたままでした。


それで、どうやって、トイレにいけるのでしょうか。


ごうもんのようでした。


せいしんてきにも、ごうもんでした。


わたしは、どうぶつみたいでした。




たんとうさんが、わたしを、ゆかに、うつぶせに、おさえつけているとき、


たんとうさんの、じょうしのひとが、


ちがう たんとうさんに、あいずを おくっていました。


そのとき、かめらを、とっているので、


かめらにうつらないように、


しょうこに のこらないように、


じょうしのひとが、あいずをおくって、


ちがう たんとうさんが、わたしを、つよく、おさえつけたり、


しめつけてきました。


わたしは「いたい いたい」といいました。


たんとうさんどうしで、こえをださずに、


あいずを、おくりあっていました。


たんとうさんは、みんなで、がいこくじんに、


うしろでに、てじょうをかけて、


ぎゃくたいをするれんしゅうをしています。




わたしのまえにも、にゅうかんのなかで、ほかのひとが、


おなじような、めに、あいました。


うしろでに、てじょうを、かけられたひとが、いました。


そのひとは、たんとうさんに、ぼうりょくをされて、


けがをさせられました。


にゅうかんのたんとうさんは、がいこくじんに、


ぼうりょくをしないでください。


ぎゃくたいをしないでください。


がいこくじんに、どうぶつみたいな、あっかいを、


しないでください。




2020年10月7日



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【大森弁護士の意見陳述】


令和2年(ワ)第1555号国家賠償請求事件

原告 B

被告 国


原告代理人意見隙述


2020年10月7日

大阪地方裁判所第17民事部 合議2F係 御中

原告訴訟代理人弁護士 大森景一



 1971年、アメリカ、スタンフォード大学の地下室で、心理学者フィリップ・ジンバルドー(Philip Zimbardo) によって、ある実験がおこなわれました。

 ジンバルドー教授は、学生21人を2つのグループに分けました。そして、一方を看守役に、一方を囚人役として、役割を与えて生活させました。すると、看守役は、指示されていなかったにもかかわらず、囚人役に対して徐々に権力的に振る舞うようになり、反抗する囚人役に対してトイレ掃除・独房監禁・断眠などの罰を与えるようになり、さらには禁止されていた暴力を振るうまでに至りました。看守役も、つい数日前までは、囚人役と同じ、普通の学生だったのにです。


 この実験が示唆するように、何も介入しなければ、権力関係はエスカレートしてしまう危険があるのです。入国管理局における収容についても同じような危険があるのではないでしょうか。


 日本の入国管理局においても、収容者に対する人権侵害事件は後を絶ちません。先日、大阪入国管理局rおけるM氏に対する暴行事件について、国が責任を認める和解が成立しました。この事案には、本件と同じ入管職員が関与していました。また、大阪入管以外でも、同種の事案が相次いでいます。現在、東日本入国管理センターに収容されていた、X人男性、東京入国管理局に収容されていたプラジル人男性やコンゴ人女性なども、入管職員に暴力的に制圧されたと訴えています。


 本件でも、ここにいるB氏が入管職員から暴力的な制圧を受けました。そして、B氏は、保護室に収容され、後ろ手に手錠をさせられた状態で放置されました。一晩中、14時間以上にわたってです。しかも、B氏は、その間、手錠を砲認するという名目で、朝まで1時間ごとにたたき起こされ、睡眠を取ることすらままならない状態におかれました。


 制圧行為と傷害結果との因果関係は、主要な争点ではありません。その後におこなわれた行為こそが主要な争点なのです。


 国は、保護室における対応は戒具の使用要領に従ったものであり、問題はない、と主張しています。確かに、戒具の使用要頒においては、「1時間に1回以上、手首、腰部等の緊縛部位について異常の有無を確認する」こととされています。しかし、この裁判で間われているのは、そのような法務省通達への当てはめの問題ではありません。


 日本国憲法においては基本的人権の保障がうたわれています。憲法36条は公務員による拷間を明確に禁止しています。憲法のほか、日本も批準している自由権規約や拷問等禁止条約、そして国連決議である国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラ・ルール)などの法規範も存在しています。この裁判では、B氏が受けた扱いが、これらに照らして許される行為なのか、その点こそが問われているのです。


 私が、海外に住んでいる人に日本の末決勾留や入管収容の実情を話すと、皆、驚きます。彼らは言います。「私たちが生きているのは中世じゃない。本当に日本でそんなことがおこなわれているのか。」と。


 好ましくない者、問題のある者に対して、どのような対応をするかという点には、人権感覚が如実に表れます。今回のB氏は、確かに模範的な行動をしていたわけではありません。入管からすれば、反抗的な被収容者であったでしょう。しかし、だからといって、このような状態に被収容者をおくことが、はたして許されてよいのでしょうか。


 この裁判の結果は、日本の裁判所が、どのような人権感覚を有しているかを示すとになります。そして、もし仮にB氏に対する行為を適法と判断するようなことがあれば、このような行為は今後も繰り返され、さらにエスカレートしていきかねません。この国がどのような国であることを望むのか、それを考えていただきたい。


 この裁判では、このようなことを念頭に、審理していただきたいと思います。


以上



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Saturday, November 14, 2020

東日本入管センターに、拒食者などの早期仮放免を申し入れました


 11月6日(金)、東日本入国管理センター総務課に口頭での申入れをおこないました。


 世界的に新型コロナウイルスの感染拡大が深刻になるなか、3月から5月ごろにかけては入管の各収容施設は仮放免許可を積極的に活用し、その結果、どの施設でも被収容者数は大きく減少するにいたりました。入管庁が5月1日に公表したタスクフォースによる「入管施設における新型コロナウイルス感染症対策マニュアル」においても、密集回避などのために仮放免を積極的に活用することが方針として打ち出されています。


 ところが、6月ごろになると、前月までは仮放免が許可されていたようなケースでも不許可があいつぐようになり、現状、深刻な体調不良のある人の一部しか仮放免されないという、コロナ禍以前の状況に逆戻りしてしまっています。収容期間がもともと長くなっていた人たちも、こうして仮放免が許可されずに依然として施設にとどまることになっています。長期収容問題はコロナ禍の現在にあっても、まったく解決にむかっていないのです。


 東日本入管センターでも、長期間心身の状態の悪化がますます深刻になっている被収容者が多くいます。今回の申し入れでは、第1に、私たちが面会したなかで、ハンストもしくは体が食べ物を受けつけなくなっている(食べても吐いてしまうなど)ために、長期間食事をとっていない4名の被収容者について、早期に仮放免するよう求めました。この4名は、いずれも母国での危険や日本にしか生活基盤がないなど帰国できないきわめて深刻な事情のある人たちで、にもかかわらず2年半から4年7か月という常軌を逸した長期間収容が続いている人たちです。とくにこの4名の被収容者について、生命尊重の観点から健康状態も考慮してなるべく早期に仮放免してほしいということを申し入れました。


 第2に、拒食している被収容者について人権を尊重した対応をすることを求めました。私たちはハンストをおこなっている人からの面会での聞き取りで、シャワーを5日間許されなかった、また運動場に出ることを許可されていないということを聞きました。この人は、4日に訪問した新聞記者との面会の直前、突然職員からシャワーをあびるようすすめられたとのことです。したがって、それまでのシャワー禁止の措置は、たとえば転倒の危険があるからといった安全上の理由からのものではなく、懲罰的な目的でおこなわれていたとしか考えられません。


 シャワーが被収容者の衛生上、また健康維持や精神的ストレスの軽減のうえで必要なのはもちろんですし、1日50分の運動時間も、収容生活において日の光をあびることのできる貴重な時間です。ハンストが被収容者の心身に危険なのは確かですが、懲罰的に入浴や運動の機会をうばってこれをやめさせようとするのは問題です。


 また、ハンスト者に対する職員らによる暴言の事実が被収容者から報告されていることを指摘し、ハンスト者および拒食症的な症状で食事のとれなくなっている人たちに対して、人権を尊重した対応をするよう申し入れました。


◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇


 早期仮放免を6日に申し入れた4名のうち1名は、その後11日にぶじ仮放免されました。心身の衰弱がいちじるしく、生命の危険すら心配せざるをえないような状態の人だったので、収容を解かれたことにひとまず安堵することができました。


 いっぽうで、東日本入管センターには、いまもおよそ100名の人が長期間収容されたままでいます。


 10日には、牛久警察署が同センターに収容されている人を建造物損壊の容疑で逮捕したという報道もありました。報道によると、この人は、センターの診療待合室で自身の糞尿を天井や壁などにまきちらしたのだといいます。


 逮捕される前に私たちはこのかたと同センターで面会しましたが、4年以上にもわたって入管施設に収容されていた人です。超長期の収容によるストレスにくわえ、このかたは、センターに勤務する医者から暴言を受けたことをきっかけにして、極度の食欲不振におちいっていました。体が食べ物を受けつけない拒食症のような症状がでて、4か月ほど食事をほとんどとれない状態が続いているとのことでした。このような状態になるきっかけとなった医者の暴言とは、「薬も食べ物も日本人の税金だ。あなたたちのために使うのはムダだ。気にくわないなら出て行け」というものだったそうです。患者の利益を第一にするという医療従事者としての責任をなげうった、ゆるしがたい発言です。このような外国人への差別主義と敵意をかくそうともしない人間が、患者の生命にかかわる医療行為に従事しているということは、見過ごせません。そして、この医者の行為は、長期収容によって被収容者を出国に追い込むという、心身を破壊する虐待を手段としている現在の入管の退去強制業務のやり口を忠実に体現するものでもあります。


 逮捕された人に報道されているような行為があったのが事実だとしても、そこまでの状態に被収容者を追い込んでいる入管の長期収容、その虐待・拷問とも言うべき実態こそが問われなければならないはずです。



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