3月29日と30日に、東日本入国管理センターの被収容者2名があいついで死亡しました。この件について、4月3日、関東仮放免者の会とBOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)の2団体連名で申し入れをおこないました。
2人が亡くなった原因については、今後、徹底的な検証がおこなわれ、再発防止策がこうじられなければなりませんが、現時点での同センター側の対応は、司法解剖すら行われていない時点で広報担当が報道関係者に「処遇についての問題は無かった」(4月1日付け『茨城新聞』朝刊)とコメントするなど不誠実きわまるもので、真剣に原因究明をおこなう意思を欠いているものと言わざるをえません。私たちは、今回の申し入れにおいて、とくにこの点に抗議し、同センターの閉鎖にふみこんだ要求をおこないました。
また、みなさまにも、とくに東日本入国管理センターに対して抗議・意見提示をおこなうよう呼びかけます。2人の死についてこのままろくに検証作業がおこなわれないようでは、また第三、第四の犠牲者が出かねないものと心配されます。抗議先は、この記事の末尾にしるしてあります。
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申 入 書
2014年4月3日
法務大臣 殿
法務省入国管理局長 殿
東日本入国管理センター所長 殿
仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
本年3月29日(土)にイラン人男性のSさん、翌30日(日)にカメルーン人男性のWさんと、東日本入国管理センター(以下「センター」という)被収容者が相次いで亡くなった。
昨年10月14日には、その5日前に東京入国管理局(以下「東京局」という)に再収容されたばかりのミャンマー(ビルマ)人男性で本国政府から国籍を認められないロヒンギャ難民のAnwar Hussinさん(以下「フセインさん」という)が再収容によるショックからと思われる「動脈瘤破裂によるくも膜下出血」で亡くなったばかりである。その後、センターにおいても診療申出や外部受診申出について許可までの期間が短くなってきたともセンター被収容者から聞いていた。フセインさん死亡事件を受けて診療問題について重視してきたはずのセンターにおいて、なぜこのような死亡事件が相次いだのであろうか。また先月には2Bブロック収容のネパール人女性が結核排菌のため隔離入院し、センターにおいてはますます診療問題について慎重に扱わざるを得ない状況のなかで今回の事態が発生した。
私たちはこれまでも、6ヶ月を越える被退令収容者は明らかに心身の健康を維持する限度を越えた長期収容となっており仮放免すること、またセンター診療室での診療と外部受診において医療状況を改善することを申入れてきた。そもそもセンターは被退令発付者が帰国するまでの一時的収容施設として開設されており、退令取消訴訟原告や難民申請者などを長期に渡って収容できる施設ではない。また一方、収容する以上は被収容者の生命、安全、健康を守る収容主体責任がある。
今回の二名の相次ぐ死亡事件からするとセンターは収容主体責任を果たしておらず、被退令発付者を収容する資格はないと考えざるを得ない。
その思いを強くするのは、今回の事件を受けてのセンターの見解によってなおさらである。新聞報道によれば、センターは二人の死亡事件について「現時点で処遇について問題は無かった」とコメントしている。一人の人命も尊く他に代えがたいものであり、それが二人もが不帰の人となったのである。原因を真摯に追求し、再発など無いよう最善を尽くすのが最低限のセンターの責任ではないか。司法解剖も終わっておらず、死因についての特定もできていない段階で、「処遇についての問題は無かった」などとコメントするとは信じがたい。さらに、一昨日、センター総務課に、再発防止のための検証を申入れに行ったところ、対応した総務係長は広報文書を何度も読み上げるだけの不誠実な対応に終始した。Sさんが喉に食べ物を詰まらせたことについての今後の原因追究を求めた私たちに対し、総務係長はあろうことか「それ(食べ物をのどに詰まらせて窒息死すること)はあることでしょう」と何度も繰り返し発言した。あたかも偶発的事件であってセンターには責任が無いと言わんがばかりの対応である。33才の若者が食物を喉に詰まらせて死に至ることが一般的に「あること」とは考えられない。それは特別な事情があって初めて発生する事件ではないだろうか。一般的ではないことを一般化することにより、死因も特定されていない中でまずは組織的に責任逃れを図ろうとしているとしか理解できない。センターは二名の死亡について全く真摯に受け止めておらず、なんら収容主体責任を果たす意思はないと判断せざるを得ない。
その上でも、以下、申し入れる。
一、収容主体責任を負わないセンターを閉鎖すること。そもそもセンターが立地する茨城県は、住民に対して医師が不足している。そのためもあってこの2年間、常勤医をいくら募集しても応募がない。派遣医が交代勤務して急場をしのいでいるが、いつ常勤医を採用できるとも知れない。外部受診を受け入れてくれる病院も少ない。一方、東京局は東京都港区に位置し、医療機関へのアクセスの便は良い。密閉空間に監禁的に拘束する外国人収容施設では持病がある者は症状が悪化し、健康なものも拘禁反応から心身の健康を害される。しかし外国人収容施設は病院ではないので、たとえ常勤医を採用できたとしても1日24時間、各診療科に対応することはできない。医療機関へのアクセスの容易さは外国人収容施設の必須の条件である。財政難の現在、センターの移転・新設は難しくとも、東京局収容場は閉鎖中のブロックもあり、収容人員に余裕がある。センターを閉鎖するのでなければ東京局収容場を分割してセンターを移すことを求める。以前は西日本入国管理センターに茨木分室として大阪入管収容場が併設されていた。同一の建物に地方局とセンターが同居することはこの前例もあることであり不可能とは思われない。
二、今回の相次いだ死亡事件について、原因を徹底して検証すること。センター被収容者は、次は自分が死ぬ番かと怖れている。Sさんは官給食摂食中に意識不明になったことから官給食に不信をもち、その摂食に抵抗感を示すセンター被収容者まで出てきている。亡くなった二人と共に生活していた9A・9Bブロックの被収容者はセンターの対応に怒り心頭である。重篤な状態と知っていて放置したセンターに対して、「入管が殺した」という意見も多数出ている。実際、私たちもこのままでは次の犠牲者がいつでるかと不安に駆られている。再発を防止するためには、今回の事件の原因を徹底して究明するしかない。「問題は無かった」「あることでしょう」ですませるならば、明日にも第三の犠牲者が出るのではないかと心配せざるを得ない。
三、亡くなった二名の埋葬・葬儀など、遺族の意向を尊重し、必要な経費はすべて国庫から支給すること。
四、死亡事件を検証したのち、センター被収容者に最大限、死亡原因と今後の対応策を報告すること。また支援者に対しても可能なかぎり最大限、死亡原因と今後の対応策を報告すること。
以 上
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抗議先
東日本入国管理センター 総務課
tel: 029-875-1291
fax: 029-830-9010
〒300-1288 茨城県牛久市久野町1766-1
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