PRAJ (Provisional Release Association in Japan): Who We Are
in English
日本語(漢字かなまじり)
にほんご(ひらがな・カタカナ)


関東仮放免者の会「宣言」/賛助会員募集とカンパのおねがい

http://praj-praj.blogspot.jp/2013/12/blog-post.html


仮放免者の会 ホームページ

Sunday, December 27, 2015

12月10日、日本人・永住者などと結婚した仮放免者に在留特別許可を求める申入れ~夫婦を引き裂かないで!~



  長期収容にも耐えて仮放免となった仮放免者の中には、日本人や永住者などと結婚して日本で家庭を築いた者もいます。関東仮放免者の会の会員の中では約2割がこうした人たちです。

  長期収容によって本人は心身の衰弱に苦しめられました。苦しんだのは本人だけではありません。外で待つ日本人や永住者などの配偶者も、夫婦が引き裂かれた孤独感や不便さに耐え、かつ本人の衰弱を面会や電話などでよくわかって我が事として苦しんできました。さらに、配偶者はしばしば仮放免保証人であるので、仮放免申請のたびに市役所で住民票などを、また会社で在職証明などを請求しなければならず、特に会社からは不審に思われることもありました。子がいる家庭ならばなおさら大変でした。本来、夫婦二人で育てるべきところを一人に負担が集中し、かつ収容されている配偶者のために幼子を連れて面会に動き、仮放免申請のための書類集めもしてと、息つく暇もありませんでした。

  仮放免となっても夫婦の苦難は続きます。仮放免者は国民健康保険の加入が認められないので、病院に行くと高額な医療費がかかります。風邪をひいても虫歯でも、常に一万円単位で医療費が飛んでいきます。経済的に苦しい上に1~2カ月に一度は入管に出頭しなければなりません。東京都在住者は品川、神奈川県在住者は横浜の入管局ですが、埼玉・千葉・茨城・栃木・群馬・山梨・長野・新潟に住む仮放免者も同じ頻度で品川に行かなければなりません。東京でも西多摩在住の仮放免者、さらに北関東や甲信越在住の仮放免者となると交通費も大変です。また、仮放免者は、入管出頭時以外の他県移動時は「一時旅行許可」を入管から得なければなりません。特に県境の市町村に住む人は、ちょっとした用事で県をまたぐことがありますが、仮放免者はその都度、事前に入管局に一時旅行許可を得なければなりません。

  東京入管は、昨年10月以降、こうした結婚のケースの仮放免者宅を訪問調査してきました。その結果としては、主に子がいるケースで在留特別許可(注1)が出ました。私たちの会員やその友人などで、知る限りは30人ほどです。日本人と婚姻し、妻が出産年齢を過ぎているケースでは子がなくても在特が出ました。しかし、30人ほどではあまりに少なく、逆に不許可となった人たちが圧倒的に多数でした。

  今回、被退令(退去強制令書)発付者の再審査を扱う法務省入国管理局審判課に申し入れを行いました。

  申し入れた点は主に二点です。


  1. 夫婦の間に子がないケースも、安定した夫婦関係が認められれば在特を出すこと。妻が出産年齢であっても、夫が仮放免中であれば安心して妊娠・出産することができずにいる。
  2. 消極要素(注2)に過度にこだわらないこと。実際、長期収容にも仮放免生活にも耐える会員の多くは、偽装結婚歴があるなど単純なオーバーステイではない者が多く、帰国して上陸特別許可(注3)を得て戻ってくればよいではないかと入管から指導されても、短期に戻ってこれる見通しが立たない。それゆえ、長期収容、再収容にも耐え、仮放免期間の長期化にも耐えて日本で夫婦生活を継続せざるを得ない。こういった人たちを救済しなければ、同様のケースの仮放免者は増え、仮放免期間は長期化せざるを得ない。


  また、これは仮放免者全体に関係することですが、仮放免期間の長さについても考慮していただきたいと申し入れました。

  申し入れには当事者は遠慮してもらいたいとの事だったので、事務局の支援者と顧問弁護団の指宿弁護士とで申入れをおこないました。

  申し入れ中、当事者夫婦は法務省に向けて、「夫婦一緒の生活を認めてください!」「夫婦を引き裂かないで!」と書かれた横断幕を掲げ、必死の願いを訴えました。





注1)在留特別許可
退去強制手続きにおいて、退去強制対象者に該当するとの認定を受けた外国人は、口頭審理請求、ついで法務大臣に異議申出を行うことができますが、法務大臣は、異議申出に理由がないと判断した場合でも、一定の事由ないし事情が認められる場合には、在留特別許可をすることによってその外国人に在留資格を付与することができます。簡単に言えば、退去強制に理由がある場合であっても、法務大臣は事情を考慮して在留資格を特別に付与することができるという制度です。
制度上、在留特別許可は法務大臣名で付与されますが、実質的には法務省入国管理局の裁決委員会で審査されていました。しかし非正規滞在外国人数が増大する中、全国を八つのブロックに分けた地方入管局の局長に、退去強制令書発付処分を下すか在留特別許可を与えるかの権限が委譲されました。現在、非正規滞在外国人を見つけておこなわれる退去強制手続きでの結果は、地方入管局に委ねられています。しかし、すでに退去強制令書発付処分を受けた被退令発付者について、在留特別許可を出すかどうかの再審査の権限は現在も法務省入国管理局のみにあります。このため、仮放免者の会家族会では、今回、法務省入国管理局に審査基準を緩めるよう申入れをおこないました。



注2)消極要素
2009年7月、法務省入国管理局は「在留特別許可に係るガイドライン」の改訂版において、在留特別許可の許否判断にあたっての「積極要素」と「消極要素」を公表しています。



注3)上陸拒否期間と上陸特別許可

  1. 過去に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがない場合の上陸拒否期間は退去強制された日から5年(5年拒否)
  2. 過去に退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがある場合(「複数回退去強制」いわゆるリピーター)の上陸拒否期間は、退去強制された日から10年(10年拒否)
  3. 日本国または日本国以外の法令に違反して1年以上の懲役または禁錮等に処せられた場合等の上陸拒否期間は無期限(長期拒否)

これに対して、結婚しているなどの事情により上陸特別許可(上特)の制度があります。
今年3月、法務省入国管理局は「上陸を特別に許可された事例及び上陸を特別に許可されなかった事例について」を公表しました。
そこで例示されているのは、「配偶者が日本人の場合」の5年拒否で、夫婦間の子があるケースで約2年、子がないケースで約3年2月。入管法違反事由については明示されていません。

Sunday, December 13, 2015

【抗議声明】バングラデシュへのチャーター機送還について

2015年12月13日



  11月25日(木)、法務省はバングラデシュにチャーター機を使っての集団送還をおこないました。翌26日の法務省の発表によると、送還されたのはバングラデシュ人22名、23~53歳の男性だとのことです。

  法務省発表は、ジャパン・タイムズ、ロイターなどが報じています。



1.難民を送還、家族分離も

  仮放免者の会としては、本人の意思に反しての無理やりの送還そのものに反対していますが、2013年から法務省がはじめたチャーター機を使っての集団送還については、とりわけ強く反対してきました。集団送還おいては、獲得した予算を消化することが目的化し、チャーター機に乗せる人数をなりふりかまわずに、いわば「かき集める」ことがおこなわれるために、個々の被送還者の個別の事情はますますかえりみられなくなります。チャーター機での集団送還は、個別の送還以上に人権侵害がはなはだしいものになりがちなのです。

  今回の送還においても、日本人の配偶者、永住者の配偶者、また、やはり永住者の配偶者であってそのあいだに子のいるひとも送還されたことが、わたしたちの調査であきらかになっています。これらのケースでは、送還された本人はもとより、その妻や子も、送還によって夫や父親と引き離され、甚大な損害をこうむったことになります。

  また、私たちの調査では、今回も被送還者の多くが、難民審査の異議申し立て棄却を通知された後ただちに送還されたことも判明しています。これは、昨年12月のスリランカ・ベトナムへの集団送還でもみられたやり口で、きわめて問題の大きいものです。その問題性については、以下の記事の「1.法務省発表『難民認定を申請しているケースは含まれていない』について」でくわしく述べているので、そちらも参照してください。

  異議棄却後ただちに送還するというやり口が問題なのは、ひとつにはこれが裁判を受ける権利(日本国憲法第32条)を侵害するものである点です。入管は、今回の送還でも、昨年のスリランカ・ベトナムへの送還と同様、難民申請者の身体を拘束し、弁護士や支援者など外部との連絡をとれない監禁状態において異議申し立て棄却を通知し、行政訴訟を提起するいとまをあたえずに強制送還しています。難民として認定しないという決定は、法務省という、いち行政機関による行政処分にすぎません。不認定処分を受けた者は、当然、これを不服として裁判所にうったえる権利があります。法務省は、不認定処分を受けた人たちが訴訟をおこなうことのできない状態でこれを暴力的に送還することで、かれらの裁判を受ける権利を侵害しました。また、これは、行政機関である法務省による、司法・裁判所に対するいちじるしい軽視、独裁的とも呼ぶべき暴挙であるということも言えます。

  さらに、難民申請者とは、庇護を日本政府にもとめている人たちであって、棄却後であれ、これを送還するのは、かれらを送還先での迫害の危険にさらす行為です。難民認定審査において、難民であることの立証は申請者みずからがおこなわなければなりません。したがって、「難民不認定」とは、申請者がみずからの難民該当性を立証できなかったということにすぎません。難民申請者が審査者を説得できるだけの客観的な材料を示して自身の難民該当性を立証できなかったとしても、だからといって難民該当性や迫害の危険がないとは言えません。論理的に言って、難民申請に対する法務省の「不認定」という決定は、申請者の送還後の迫害の可能性を否定しうるものではまったくないのです。

  しかも、庇護希望者が自身の難民性を立証することの困難さ(迫害があって、あるいはそのおそれがある人が、これを立証するじゅうぶんな物的証拠を用意したうえで出国する、などということが想定できるでしょうか?)、くわえて日本の難民認定率の低さ(2014年度は5000人の申請者に対し、認定されたのはわずか11名です)も考慮しなければなりません。

  UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は、「……申請人の説明が信憑性を有すると思われるときは、反対の十分な理由(good reasons to the contrary)がない限り、申請人は灰色の利益(benefit of the doubt)を与えられるべきである」(『難民認定基準ハンドブック』 p.54の196.)としています。つまり、“疑わしきは申請人の利益に”という原則です。これに対して、日本政府は事実上、“疑わしきは認定しない”という姿勢で難民審査にのぞんでおり、このことが認定率のいちじるしい低さの一因になっているのはあきらかです。

  現状でのこのような難民審査の実態をふまえると、行政訴訟ができないように身体を拘束した状態で異議申し立て棄却の通知をおこない、ただちに送還するという、昨年12月にひきつづいて法務省がおこなった集団送還のやり口は、なおさら暴挙と言うよりほかありません。



2.「送還忌避者」とはなにか?

  2013年度に開始されたチャーター機をつかっての集団送還は、今回で4回目になります。
  • 2013年7月6日  フィリピン人75名を送還
  • 2013年12月8日  タイ人46名を送還
  • 2014年12月18日  スリランカ人26名とベトナム人6名を送還
  • 2015年11月25日  バングラデシュ人22名を送還

  これまで175名のひとが、チャーター機によって送還され、その生存や生活の基盤を暴力的に破壊されたことになります。送還されたひとだけでなく、その家族・親族や友人などもまた、かけがえのないものをうばわれた被害者といえます。

  さらに、法務省は、来年度予算の概算要求で「送還忌避者の専属輸送による送還経費」として9,300万円あまりを計上しています。法務省が2013年度および14年度においてチャーター機送還のための予算として獲得したのがそれぞれ3,000万円です(14年度は結果的にこの予算内に経費がおさまらず、1,000万円超過の4,000万円を支出したと法務省は発表しています)。法務省が、この3倍以上の予算の獲得をもくろみ、チャーター機を使ってのいっそう大規模な集団送還をたくらんでいることがわかります。

  法務省は、「送還忌避者」を送還するという名目で、今回のチャーター機送還をおこない、また今年度・来年度以降もこれを継続しようとしているわけですが、そもそもなぜ多数のこの「送還忌避者」が生じているのかという点が重要です。それは、入管政策をふくむ日本政府の外国人政策のゆがみがもたらしたものにほかなりません。

  法務省の言うところの「送還忌避者」が増大している事態は、仮放免者数の増大としてあらわれています。ここで言う仮放免者とは、入管から退去強制令書を発付されながらも、収容を解かれているひとを指します。法務省・入管の側からみると、送還対象であって、原則として送還までのあいだ収容所等に収容することになっているけれども、送還のめどが立たないために「一時的に」収容を解いている者、ということになります。

  全国でのこの仮放免者の人数は、増大しています。2009年7月段階での約1,250名から、2012年10月末段階で約2,600名へと増え、2013年末3000人を越えるにいたります。法務省の公表している最新のデータで3,400名超です(2014年末時点)。

  こうして増大した仮放免者の大多数は、難民申請をしていたり、あるいは日本に家族がいることや長期滞在ですでに日本にしか生活基盤がないために、帰国をこばんでいる人たちです。かれらの多くは、帰るに帰れない事情をかかえて日本での在留をもとめています。昨年末時点で3,400人を超えるにいたったこの仮放免者に、さらに収容中で送還をこばんでいる人をあわせたものが、法務省の言うところの「送還忌避者」の全体ということになります。



3.なぜ「送還忌避者」が増大しているのか?

「送還忌避者」が増大している要因のひとつは、さきにみたような難民認定率のいちじるしい低さ、また、難民申請者がなかなか在留資格をみとめられていないことにあります。

  そして、決定的な要因は、バブル期以来、日本政府がご都合主義的な外国人労働力導入策をとってきたことにあります。この点については、このブログでもくりかえし述べてきました。以下の記事などを参照してください。

  こんにちにいたるまで日本政府は、外国人労働者の受け入れについて「専門的な知識,技術,技能を有する外国人」に限定する政策を、表向きはとってきました。しかし、日本の社会・産業が、いわゆる非熟練労働の担い手としての外国人労働者に大きく依存してきたのは、周知のとおりです。政策においても、この建前に反する状況を追認する、あるいは後押しする措置を、日本政府はとってきたのです。

  ひとつには、非正規滞在の、あるいは短期滞在の資格で在留する外国人が就労することを、日本政府はあきらかに黙認してきたという事実があります。80年代後半から90年代にかけて、当時「3K」(キツイ、キタナイ、キケン)と呼ばれ、日本人の若い労働者が敬遠した職場の深刻な人手不足をうめたのは、これらの外国人労働者でした。かれらに対し、2003年12月、政府の犯罪対策閣僚会議は「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」のなかで、「今後5年間で半減させ」るとの方針を打ち出し、摘発強化に乗り出します。かれらを「不法滞在」状態におきながら安価な労働力として利用するそれまでの政策から、これを徹底的に摘発して追放する政策へと転換したものといえます。

  表向きは非熟練労働について外国人労働者を受け入れないという建前をかかげつつ、事実上、いわば裏口からこれを導入するという政策をとってきたことが、まず問題です。非専門的分野での労働者が必要だというならば、そのための在留資格をもうけたうえで正面から受け入れるべきでした。ところが、日本政府が選択した政策は、非公式的に非正規滞在外国人を労働力として導入しつつ、いざこれを「不要」とする政策判断に転じたときには(日本政府が「不法滞在者」の集中的摘発にのりだす2004年とは、派遣労働の自由化が製造業にもおよんだ年にあたります)、かれらが「不法滞在」状態にあることをよいことに、追い出しにかかる、というものであったわけです。

  2004年にはじまる「不法滞在者の半減5か年計画」、そして2009年の入管法改定を機にますます強引にすすめられた強制送還の執行(これは入管収容所の長期収容と再収容、頻発する無理やり送還としてあらわれ、2010年3月に送還中のガーナ人死亡事件、同年2月と4月に東日本入管センターで連続した被収容者の自殺事件を引き起こします)の結果、「不法滞在者」数は大幅に減ることになりました。この大幅減は、日本人の配偶者など一部の超過滞在者等への在留特別許可による滞在の合法化でもたらされた面もありますが、退去強制令書の発付処分を受けたひとの大半が、帰国あるいは送還に応じたことによっておもにもたらされたものです。

  ところが、こうして「不法滞在者」が減少するいっぽうで、法務省の言うところの「送還忌避者」が増大していくことになったのは、さきにみたとおりです。「送還忌避者」の増大は、現象としてみれば、帰国によって迫害のおそれのある難民や、日本にしかすでに生活基盤のないひとが送還に応じないことで生じているものでもありますが、本質的には、日本政府のご都合主義的な労働政策がまねいた問題と言うべきです。日本政府にしてみれば、一時的な「労働力」として導入するつもりであったのでしょうが、その導入された「労働力」はひとりひとり人間であって、長期にわたって暮らせば、その一定数は定住化がすすみ、「帰国」しようにもそうできなくなるのは当然なのです。



4.失政のツケを外国人に転嫁することはゆるされない

「専門的な知識,技術,技能を有する外国人」以外は労働者として受け入れないという原則を表向きにはかかげつつも、場当たり主義的にその抜け道をつくりだして事実上これを呼び込むという二枚舌政策を、日本政府はとってきました。日系人の「受け入れ」政策と、研修生・技能実習生制度もまた、その一環にあるといえます。

  このような、場当たり主義的、かつ外国人を手段としてのみあつかってその権利尊重をともなわない政策の蓄積が、「送還忌避者」の増大という事態として返ってきているのです。ところが、政府は、こうして自分たちがまねいた失策のツケを、ずうずうしくも外国人に転嫁しようとしています。法務省が、読売新聞などの御用記者に情報をリークして、実習先のむごい処遇にたえかねて逃げ出した技能実習生についてネガティブキャンペーンをおこなっていることは、以下の記事などでも指摘してきました。

  今回のバングラデシュへの集団送還においては私たちは同様の事例を確認していませんが、昨年のチャーター機送還では、「スリランカ・ベトナムへの集団送還について」の「3.人身取引の被害者も送還」で述べたとおり、人身取引被害者である元実習生2名を送還してその権利回復を妨害したという事例すらあります。この2人は、雇用主からの未払い賃金の回収、また、ブローカーからの損害金回収のために法的措置を準備しているところであったにもかかわらず、法務省によって本国に強制送還されてしまったのです。

  技能実習制度が、途上国への技術移転といった制度本来の趣旨からは完全に逸脱した、安価な労働力導入の手段として、日本政府そのものによって脱法的に運用されていることは、さきの記事でも指摘したとおりです。政府みずからが平然と法をふみにじっているのもまったくひどいものですが、実習生の転職の自由がうばわれている点で技能実習制度は実質的に奴隷制度とよぶべきものであって、そのうえ、人身取引の温床にすらなっている実態があるわけです。したがって、実習先から逃げ出した実習生たちの被害回復について、日本政府にも重大な責任があるはずです。ところが、法務省は、彼ら・彼女らについて、マスコミをつかってネガティブ・キャンペーンをしかけて世論誘導をもくろんだうえで、送還によって人身取引業者をアシストして問題隠蔽をはかるということすらやったのです。

  法務省のいう「送還忌避者」という言葉は、もっぱら「送還忌避者」のほうにのみ問題をみいだし、無理やりの送還を正当化しようとするものです。しかし、なぜかくも大勢の「送還忌避者」が生じているのかという背景を、日本政府の外国人政策の経緯からも考えるならば、「送還忌避者」に一方的に責任を転嫁するような一面的な見方はできないはずです。法務省は、送還翌日の報道発表で、今回の被送還者に「不法滞在期間」が27年間にもおよんだ人がふくまれていることをあきらかにしています。こうしたバブル期以来の長期滞在者を日本社会は「不法滞在」という無権利状態のまま利用してきたのだという事実、そしてすくなくとも集中的な摘発方針へと転じた2003年まではこれが黙認されてきたという事実を無視するわけにはいきません。そこには意図的な政策的不作為があったのです。



5.チャーター機による送還は中止すべき

  こうしてみたとき、チャーター機による送還、法務省のいう「送還忌避者の専属輸送による送還」に、正当化できる道理などないことはあきらかです。政府は、仮放免者をはじめとする「送還忌避者」にみずからの政策的なあやまちのツケを負わせるのを、やめるべきです。

  今回バングラデシュに22人を送還するのに法務省は3,500万円の予算をつかったと発表しています。正当性もなく、22人とその家族らの人生をめちゃくちゃにするのに、3,500万円もの国費をつぎこんだわけです。人権・人道の問題について金額で論評するのはふさわしくありませんが、法務省は、この巨額の支出の正当性について、非正規滞在者をふくむ納税者にどう説明するのでしょうか。

  法務省は、今回の送還について、記者会見をひらかず、記者へのレクチャーというかたちで発表をおこないました。あまり堂々と公表したくない事情でもあったのでしょうか。

  前回のスリランカ・ベトナムへの集団送還においては、法務省は記者会見をひらき、「人権に最大限配慮した」「日本に配偶者がいたり、難民認定を申請しているケースは含まれていない」と発表しました。この発表が、かぎりなくウソに近いものであることを、私たちは調査にもとづいて指摘しました。実際には、日本に配偶者と子がいるケースはふくまれていたのです。また、「難民認定を申請しているケースは含まれていない」についても、まったくの虚偽とはいえないものの、意図的に問題を隠蔽し、あるいは小さく見せようとする意図のあきらかな説明でした。

  この姑息なごまかしともいうべき法務省発表の問題については、さきにもリンクした「スリランカ・ベトナムへの集団送還について」でくわしく指摘しておりますので、参照してください。また、前回集団送還における法務省発表と異なる実態について、日弁連への人権救済申立てでも、前回の集団の実態についてあきらかにしています(申立人は、被送還者のうちの3名と、そのうち1名の妻、仮放免者の会の国籍・地域別リーダー8名。代理人は、仮放免者の会顧問弁護士の高橋ひろみ、駒井知会、指宿昭一)。

  今回は法務省は、記者会見すらひらかず、記者へのレクチャーにおいても、記者からの質問に「詳細は言えない」をくりかえすありさまで、家族分離のケースの有無についてもコメントなし、という内容のとぼしいものであったようです。前回の集団送還時のように「人権に最大限配慮した」などとふてぶてしく弁明する余地すら今回はなかったということなのでしょう。

  もはや「送還忌避者の専属輸送による送還」が人権への配慮と両立しえないことはあきらかでしょう。法務省には、今後のチャーター機による送還を中止すること、これまで送還された人から申請があった場合にすみやかに上陸特別許可をみとめることを求めます。

仮放免者の会

Monday, October 12, 2015

【告知】第6回大会



10月18日(日)、仮放免者の会の第6回大会をおこないます。
今年度の活動報告のほか、次年度の活動計画などについて話し合います。










仮放免者の会 第6回大会
6TH ANNUAL CONFERENCE


10月18日(日曜日) 12:30PM
Sunday October 18, 2015



集合: JR板橋駅 西口
しゅうごう: JRいたばしえき  にしぐち
Meeting Place: JR Itabashi Sta. West Exit


会場(かいじょう): ハイライフプラザいたばし
Venue: HIGH LIFE PLAZA ITABASHI



★一時旅行許可(いちじ りょこう きょか): 東京都板橋区(とうきょうと いたばしく)
★Application for permission for Trip "Tokyo, Itabashi ward"


連絡先
おおまち Omachi 090-3549-5890 / みやさこ Miyasako 090-6547-7628 /
Elizabeth(English available) 080-4163-1978

Saturday, September 26, 2015

【転載】2015.9.11 大阪入管一斉面会・抗議行動



  TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)のホームページより、以下、転載します。

  あわせて、大阪入管Bブロック被収容者25名が連名で局長あてに提出した「苦情申立願い」も掲載します。

  大阪での被収容者、仮放免者、支援者の取り組みに、今後ともご注目ください。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【転載】

2015.9.11 大阪入管一斉面会・抗議行動

  9月11日に大阪入国管理局(以下大阪入管)にて一斉面会と抗議行動を行いました。約20名の支援者と仮放免者で、面会とシュプレヒコールを通じて被収容者を励まし、大阪入管への抗議と申し入れを行いました。

  私たち支援者の外からのシュプレヒコールに応えるように、被収容者からは6階という高さにも関わらず大きな歓声が聞こえてきました。 「助けて!」「入管悪い!」という声もありました。

  それだけ声を上げざるを得ないほど、劣悪な処遇と、先の見えない収容に対する、収容場の中での不満と苦痛は大きいのだと思います。

  今後もTRYは当事者と一緒に、各支援団体の皆さんと連携しながら、大阪入管の劣悪な処遇改善へ向けて取り組んでいきます。ぜひ皆さんのご協力をよろしくお願いいたします。


  大阪入管収容場の状況と抗議内容は以下を参照ください。






当日の配布チラシ




























大阪入国管理局に対する申し入れ書


申し入れ書
2015年9月11日
大阪入国管理局局長 殿
申入れ団体
  WITH
  TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)
  難民支援コーディネーターズ関西
  難民支援団体 ピースバード

  貴局収容場では常時60名前後の被収容者を収容している。しかも西日本入国管理センターの閉鎖決定(今年9月閉鎖)に伴い、貴局収容場での被収容者の収容期間は長期化している。以前は、貴局収容場での収容期間は2、3か月であった。退去強制手続きを経て退令処分を受けても帰国を拒否し、収容が長期化する帰国忌避者は西日本入国管理センターに移収された。移収先の同センターは、支援者や被収容者の度重なる抗議と改善要求によって、レントゲンや歯科治療などの医療設備が整い、かつ外部の専門医に受診させるなど被収容者の健康、生命、安全を守る収容主体責任義務を自覚し、それを果たそうとしていたし、また支給食において貴局とは比較にならないほど充実していた。ちなみに同センターは、貴局収容場と同数の被収容者数が収容されていた2013年度には、月平均約15件の外部受診を実施している。それゆえ同センターが閉鎖決定されるまでは、貴局収容場は短期間の収容場としての役割を持って処遇改善に努力することもなく、帰国忌避者を西日本入国管理センターに移収していればよかった。しかし、同センターの閉鎖決定によって貴局収容場の役割は、帰国、あるいはセンター移収までの一時的収容施設から帰国忌避者を長期収容する施設へとその役割は変化した。にもかかわらず、この変化に適切に対応することなく短期収容でことたりた時期の処遇が続けられている。もちろん短期収容施設なら処遇が劣悪で良いと言っているのではない。貴局収容場の役割の変化に伴い被収容者自身が、自身の健康や生命を守るため、また人間として扱えという要求を持って処遇改善を強く求めるようになったということである。
  私達は、退令処分を受けた者の収容は、帰国させるための収容であり、送還が我々の仕事であるという入管の言い分は重々承知している。だが難民申請者や日本に家族がいる被収容者、さまざまな事情で帰国できない人たちが帰国を拒否している。その中には退令処分取り消し訴訟を起こしている人もいる。このような人達を長期収容し、「こんな待遇で収容されるのはもういやだ」と音をあげさせ、帰国を強要するような処遇は直ちに改めるよう申し入れる。
  日本も加盟する拷問等禁止条約において「「拷問」とは、身体的なものであるか精神的なものであるかを問わず人に重い苦痛を故意に与える行為」であると定義されている。被収容者は時間的、空間的感覚を奪われる密閉施設に拘禁され、入管の厳重な管理下で診療の自由を奪われ、食事の選択権も奪われている。その被収容者の人権を尊重するという収容主体責任義務を果たそうとせず、体調不良を訴えて医師への受診を何度も要求しても認めず、また腐りかけのキャベツの入った支給食の改善を訴えても改善しようとせず、今年8月には支給食に生きたゴキブリが混入していたこともあった。これらの事実から私達は、貴局は恣意的に被収容者の心身を痛めつけようしていると評価せざるを得ない。
  私達は、これまで貴局の自浄努力に期待し、何度も貴局収容場の医療や食事の改善を申し入れてきた。しかも医療問題については、東京入管、東日本入国管理センターにおいて昨年、一昨年と四人もの被収容者が適切な診療を受けられず死亡した事件を取り上げ、このような犠牲者を絶対出させないという支援者としての強い意志を示して改善を申し入れてきた。しかし、「適切にやっている」と決まりきった回答しかせず、一向に処遇改善の努力をしようとしない。
  日本社会は、貴局入管が被収容者の人権を侵害し、被収容者を非人間的に扱うことを決して認めることはない。1951年、出入国管理令が公布されたが、そのとき以来入管法第五章の「退去強制手続き」の基本は変わっていない。出入国管理令は、東西冷戦が厳しくなる政治情勢の中で日本の旧植民地出身者を対象に、政治的治安目的から作成されたがゆえに、入管は政治的治安組織としての体質を持って成長してきた。東西冷戦構造が崩壊して25年も経っているのに、いまだに国益のためなら何をしても許されるという体質を大阪入管は引きずっているのか。かつて大阪の日本人住民の中には大阪入管を「入管」とは呼ばず、あそこは朝鮮人の行くところだと蔑み、「朝鮮庁」と差別的に呼ぶ者もいた。このような被収容者に対する人種差別意識に大阪入管は凝り固まっているのか。
  だが一方で、私達は「開かれた入管」というスローガンを掲げ、入管行政は国民の理解なくして成立しないという認識に立ち努力してきた入管の歴史も知っている。貴局が、入管が日本社会との軋轢の中で、もまれ、学び、改革してきた歴史を逆行させ、古い体質に引き戻そうとしているとまでは思わない。しかし、貴局収容場の処遇は、あまりにもひど過ぎる。改めて貴局入管の自浄努力に期待し、以下質問と改善の申し入れを行う。

一、医療問題について
(1)ベトナム人被収容者が、結核の疑いが持たれるような微熱が数週間続いた。本来ならしかるべき医療機関を速やかに受診させるべきであるが、貴局はそれをしなかった。大阪入管局長は、収容場の管理責任者である。管理責任者として感染症の感染拡大を防ぐ責任があるか否かについて回答してもらいたい。
(2)胸にシコリが発生したブラジル人女性が乳がんではないかと心配している。なぜ乳がんの検診を受けさせず、放置しているのかについて回答してもらいたい。検診もせず、乳がんではないと入管が言い張っても女性の不安は消えないことは常識的にわかるはずである。
二、支給食の改善について
これまでとりわけ男性被収容者から支給食の量が少ないこと、またその質において腐ったキャベツが度々出される、さらに支給食にゴキブリが混入したことがあったとの訴えがある。業者に対し、支給食の質量を改善するよう強力に指導すること。
三、食品の差し入れを許可すること
貴局収容場において被収容者に差し入れできる品目を食品まで拡大すること。西日本入国管理センターでは無制限ではないが、果実や野菜類の差し入れも可能であった。また以前、貴局収容場においてもカップ麺等の差し入れを許可していた。収容場内で購入できる食品は、外部で購入する食品と比べて異常に高額である。また所持金のない被収容者は貴局収容場で食品の購入さえできないが、こうした被収容者に対し、支援者が食品の差し入れもできない状態にある。
四、面会時の録音を許可すること
面会立ち合い時に面会内容を無断で録音する職員がいる。入管側が録音するのであれば、録音している事実を被収容者と面会者に告示するとともに、面会者側にも面会内容を録音することを許可するべきである。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【Bブロック被収容者の連名要求書】


大阪入国管理局署長
苦情申立願い
  支給されている食事のメーン[メイン]のおかずが炭水化物ばっかりで(焼きそば、じゃがいも、コロッケ)または少ないです。食事のメーンとなる肉類が入っていませんので、栄養分が不十分で、このままでは私たちの健康によくないです。ちゃんとしたメーンのおかず(肉類)を業者に出して欲しい。もしくは今の業者よりもよい業者に変えて下さい。
  宜しくお願いいたします。
27-9-7
[以下、被収容者25名の署名(省略)]
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

関連リンク



Friday, September 25, 2015

【転載】チャーター機による難民強制送還反対決起・関西集会開催!! (プレスリリース)




当ブログでもすでに案内させてもらっていますが、10月3日に大阪で「憲法違反の難民申請者チャーター便送還を問う」関西集会が開催されます。



この集会の、マスコミ向けに配布しているプレスリリースを転載します。

なお、集会内容に一部変更があります。変更点については、TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)のページ、または、以下に転載するプレスリリースをご参照ください。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【転載】


マスコミ各位

2015年9月25日
「憲法違反の難民申請者チャーター便送還を問う」関西集会 実行委員会 


シリア難民だけではない、日本国内の難民にも光を!!
チャーター機による難民強制送還反対決起・関西集会開催!!


  2014年12月18日、法務省入国管理局がチャーターした航空便でスリランカ難民申請者が大量に強制送還されました。そのうち多くは難民として認めない入国管理局の最終処分が出た直後、うむを言わせずバスに乗せられ羽田空港まで無理矢理送られました。日本は1981年に難民条約に加盟しているにも関わらず、このような蛮行は許されてよいのでしょうか? 

  日本国憲法32条は、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない」。この条文によって入国管理局の難民不認定処分を保護を求める人は、処分の取り消しを求める裁判を受けることが出来るのです。しかしながら、保護すべき難民の裁判を受ける権利を無視して強制送還は強行されました。入国管理局は、自国での迫害の恐怖に怯え命からがら助けを日本に求めてきた多くの人の自国の迫害する可能性が高い「為政者」 に無条件で引き渡したのです。

  日本国憲法前文は、次のように私たちに語りかけます。「私たちは、全世界の国民が等しく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」日本国憲法違反のチャーター便による強制送還という難民政策の正当性や私たちに突き付けられた課題を考えていただきたく、本集会を開催いたします。 


開催日:2015年10月3日(土) 
時間:13時30分~16時00分 
場所:エル・おおさか(視聴覚室) 
参加費:1000円 
内容: ネットを介した強制送還された難民へのインタビュー 、解説
憲法違反についての解説、今後の取り組みについて
集会の最後には、写真アクション(日本でも難民を受け入れよう!というメッセージを世界に発信するため、バナーを用いた参加者全員での写真撮影)を行う予定です。

■連絡先■ 
主催:「憲法違反の難民申請者チャーター便送還を問う」実行委員会  
宣伝広報担当:TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)  
メール:try@try-together.com 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


関連

Thursday, September 17, 2015

9月9日、「仮放免者に在留資格を!」デモ報告




  9月9日(水)15時から、法務省入国管理局に対して仮放免者に在留資格の付与を求めるデモ行進と申入れをおこないました。翌10日には茨城県で堤防の決壊などの大災害をもたらした大雨の中でのデモですが、120人の参加を得て決行されました。



  当日、集合場所である日比谷公園(東京都千代田区)では、雨は降ったりやんだり、一時、やんだかと思えばまた強く降り出したりしていた。会員が住む関東全域が同様の状況であり、朝の内から、出身国別に選出されたリーダーや支援者のもとに、特に北関東エリアの会員から、「今日は電車がどうなるかわからないから行けない」と電話が次々と入ってきた。雨に濡れた体で、帰宅も困難になり風邪をひけば、国民健康保険に加入できず受診費用に事欠く仮放免者からしたら死活問題である。東京都以外に居住する会員は、デモに参加するため、東京入管、横浜入管に事前に申請して一時旅行許可を得て、自分達への在留資格を求めるこの日のデモを待ち望んでいたが、この悪天候では参加をあきらめざるを得ない。集合時刻の14時30分になっても、集まっているのは50人弱。主催者側としても、今日はこの程度の数でもしかたないかと話し合っていた。しかし、15時前にデモ出発地点である日比谷公園中幸門で隊列を組んでいると、次々と会員が合流してきた。さらに新橋駅近くから外堀通りと、道行く人たちに仮放免者問題(※)への理解を訴えて行進していると、遅れて来た仲間たちが合流してくる。最終的に、法務省を一周するころには参加者120名となっていた。うち、支援者30名ほど、会員90名ほどである。

  会員の参加者は東京や隣接県に住む人が多かったが、北関東から「今日は大事な日だから」「自分たちの事だから」と参加してくる会員もいた。長い収容生活で体調を崩し、やっと数日前に仮放免となった人も「筋肉が落ちていて最後まで歩けるか自信がないけどやってみる」と加わった。幼児を抱きかかえて行進する母子の仮放免者、雨合羽を着た児童の手を引き行進する家族連れの仮放免者、みんなで助け合いながら、声を限りに「長期収容やめろ」「再収容やめろ」「無理やり(送還)するな」「チャーター機(送還)するな」「難民にビザを」「家族にビザを」「仮放免者にビザを」などとシュプレヒコールを叫ぶ。

  会員の国籍は、アジア・アフリカ・ラテンアメリカ諸国にまたがり、在留理由は、難民であったり、家族結合であったり、長期滞在であったり様々。しかしみんなに一致しているのは、オーバーステイなどで入管法違反者となり、退去強制令書を発付され、長期収容に耐え、仮放免後の不自由な生活にも耐えてきていることである。理由はさまざまであるが、いずれも帰国できない事情を抱えているからこそ、長期収容にも耐えてきたのである。

  仮放免者に在留資格を求める私たちの主張に対して、入管職員から、「退去強制令書発付処分に服して帰国する人もいるのに、耐えたから在留資格をもらえるというのでは『耐え得』になるから」と言われたこともある。しかし、収容生活の過酷さは、現場の職員ならばよくわかっているはずである。密閉された狭い居室に多国籍の者たちが押し込まれ、病気になってもなかなか治療してもらえず、いつ出られるともしれない中、不安にさいなまれながら一日一日を過ごしていく。仮放免になっても、移動・就労の自由を奪われ、社会保障制度の枠外に置かれ、病院に行けないまま亡くなった仲間もいる。単なる処遇の運用の問題というよりも入管収容所という施設そのもの、そして仮放免者という立場そのものが、「耐え得」など狙えない、人権を無視されたものである。そういう年月を過ごしてきた会員たちが、積もり積もった万感の思いを込めて、コールを叫ぶ。


  デモ行進の前半、雨は小降りになり、やんだ時間もあったが、後半になるとまた土砂降り。そんな中、デモ隊は主目的である法務省に到着した。リーダーと支援者の代表が法務省入管に申入書を渡す。いやがうえにも、みんなの気持ちは最高潮に達する。雨に濡れる体が熱気を帯びて「ビザ!ビザ!ビザ!」の連呼。法務省を一周する間、苦しかった収容生活が思い起こされ、治療を受けられないまま亡くなっていた仲間が思い起こされ、憤りと在留資格への期待が入り混じるなか、コールをとどろかせた。


  そして、裁判所の角を左折し、日比谷公園霞門から入ってデモ行進を終了し、悪条件の中、多数の仲間が集まって目的を達成できたことを確認した。そして、次は10月18日の第6回大会での再会を確認して解散した。

  仙台の大学生が10名以上、支援で参加してくれ、支援者も30人と悪天候の割に多く集まった。支援者は日本人のほか、正規滞在の外国人、中には、自分も退令発付を受けて長期収容に苦しめられ、仮放免生活も送り、在留資格を得た仲間も参加してくれた。

  会員の参加者も、自分は行くにしても、この雨だから参加者は少ないだろうと予測していたところ、思いのほか多数の仲間が参加し、また支援者も多く、仮放免者の会の団結した力、またそれに対する支援者の力を感じ取ることができた。「雨で心配したけど、こんなに集まってよかった」「支援者がたくさんいて心強かった」「みんなにビザが出るまであきらめない」などなど、参加した会員の感想が寄せられている。

  メディアは、ロイター、週刊金曜日などが取材に来てくれたので、そちらの記事も読んでください。


  また、この日、法務省に提出した申入書は、以下の記事に掲載しています。













~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

※仮放免者問題の深刻化

  仮放免者は、難民申請や再審情願申立などで在留資格を求める手続きをしている。帰国できないために長期収容にも耐えるしかなく、仮放免後に、帰国できるように事情が変わった者は帰国するが、そうでなければいつまででも仮放免生活を耐え忍ぶしかない。しかし、在留資格がないため極めて不安定な生活状況におかれる。本人たちの人権のためにも、また社会的状況としても、仮放免と言うグレーな状況は最大限、避けるべきである。しかし、私たちが「仮放免問題の解決」を求めるのは、当事者一人ひとりの人権擁護のためであると同時に、「仮放免者数の増大と仮放免期間の長期化」という事象が近年、深刻化しているからである。

  2004年以降、警察も含めて全国的にオーバーステイなどの摘発が強化された(この摘発強化は、日本の入管行政・労働行政の方針転換、すなわち、それまで「不法滞在外国人」を脱法的に労働力として利用するものから、彼ら彼女らを摘発して追い出すかわりにこれを派遣労働者に置き換えていくという方針への転換として理解することができる。「仮放免者問題と強制送還について――この10年の入管行政をふりかえって」を参照)。それに連れて退去強制令書の発付件数も増えた。しかし、そのなかで、実は難民として日本に逃れて来ていた者、すでに日本人などと婚姻していた者、とっくに生活基盤を本国から日本に移していて帰国しても生活できない者などが、長期収容者として増大し、さらにそれらの者が、心身を極度に衰弱させ、仮放免となることにより、仮放免者が増大してきた。現在公表されている退令仮放免者総数で最も古い統計は、2006年末の631人であり、すでに大量摘発が始まり、被収容者数も仮放免者数も増大する中での数字である。これが2008年末には1,000人を超え、2011年末には2,000人を超え、2013年末には3,000人を超え、激増している。

  また、東海地区、関西地区とも協力して全国仮放免者の会として、2013年2月に全国一斉調査を行ったところ、仮放免期間について520名の回答を得た(「2013年仮放免者実態調査報告」を参照)。この数字は、当時の退令仮放免者の約5分の1である。仮放免期間について1年区切りで聞いたところ、1年未満が最も多く175人、1年以上が149人、2年以上が134人と多く、ここまでで全回答者の88%を占めた。3年以上は26人と急に少なくなり、最長は8年以上の5人であった。当時であっても5年以上が合計27人おり、信じがたい状況であったが、当時2年以上だった134名は次々と仮放免期間5年にさしかかっているところである。実際、関東で仮放免者の会を結成した2010年10月、この年に仮放免になった者を主体として結成大会をおこない、その後も、この層が運動を主力としてリードしてきた。帰国した者もいるし在留資格を得た者もいる。しかしそれらは極少数であり、大半の会員は仮放免生活を続けている。仮放免期間は1年であっても短いとは言えないが、5年を超過するなど誰がどう見ても異常な長期間である。会員ではないが、脳に直径8cmもの腫瘍ができながら病院に行くお金がなく、痛みをこらえながら死亡した仮放免者もいた。仮放免期間の長期化は、こうした悲劇をも再来させかねない。また、全国一斉調査において3年以上が極端に少なくなっていたのは、2009年から10年にかけて頻発していた再収容の影響もある。調査では、最後の仮放免許可からの期間を質問したが、一度目の仮放免許可からの期間を質問すれば、仮放免期間はもっと長いものとなったはずである。

  私たちが法務省入管に求めているのは、長期収容にも耐えざるを得なかった退令仮放免者には、人権擁護の観点から在留を認めてもらいたいということである。こうした退令仮放免者たちに順次在留を認めていくことは、現行の法制度下でも可能なはずである。法務省入管が、人権擁護あるいは人道上の観点に立って被退令発付者を在留特別許可によって救済してきた前例・実績も一定程度すでにある。退令仮放免者の在留を正規化していく以外に、この仮放免者問題を解決する道はない。

Wednesday, September 16, 2015

9.9法務省デモ「申入書」



「仮放免者に在留資格を!」 9.9法務省デモにて、以下の申入書を法務大臣および法務省入管局長あてに提出しました。

  9月9日におこなったデモについては、おってこのブログで報告します。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

申  入  書
2015年9月9日
法務大臣  殿  
法務省入国管理局長  殿
  我々、仮放免者の会は、どうしても帰国する事の出来ない仮放免者達に在留資格を付与するようあらためて強く申し入れる。仮放免者達は自身の難民性のため、自身が長年かけて築いてきた生活、人間関係、社会とのつながりを守るため、自身の病気の治療のため、愛する家族との生活のため等、それぞれの理由のために日本での生活を希望している。彼ら、彼女らにはどうしても帰国出来ない理由、断ち切りがたい絆が日本に存在する。これらの者達に入国管理局(以下、「入管」という。)が帰国を強制することは、当人たちにとって死刑にも等しい甚大な損害をもたらす場合がある。これら仮放免者に対し、最大限の人道上の配慮を持って在留資格を付与していくことを我々は申し入れる。

再収容、送還は仮放免者問題の解決策とはなりえないこと
  入管では2010年、3月及び5月の西日本・東日本両入国管理センターでの大規模ハンガーストライキ、2月及び4月の東日本入国管理センターでのブラジル人・韓国人被収容者の自殺、3月の国費無理矢理送還中におけるガーナ人男性の死亡といった事件が次々に起こった。また、2013年10月の東京入管におけるロヒンギャ男性を皮切りに、入管の収容所における死亡事件が頻発している(2014年3月の東日本入国管理センターにおけるイラン人男性とカメルーン人男性、同年11月の東京入管におけるスリランカ人男性)。この間現在に至るまで、被収容者によるハンストや退令仮放免者によるデモが繰り返し行われている。
  これらの事実は、どうしても帰国出来ない外国人に対し、入管が収容や再収容、送還といった暴力的方法をもって対処することの限界を明らかに示している。退令仮放免者らの多くは、どうしても帰国出来ない事情があるからこそ過酷な収容にも耐え、仮放免者となってからも人権上の著しい制約を受けつつ、なお本邦での在留を求めて生活している。仮放免者の送還に固執する入管が、際限なく再収容を繰り返すことは、退令仮放免者及びその家族の心身を無用に痛めつけるものであり、当事者の自殺といったような痛ましい犠牲を生み出すことにつながるのみで、問題の解決にはなりえない。入管行政からみても、非効率、不経済であろう。仮放免者の問題の解決には、彼ら、彼女らの本当に帰国出来ない理由を斟酌し、在留資格を付与していく以外の方法はない。
  難民不認定異議申立棄却や行政訴訟での敗訴確定を契機として行われる再収容や、行政訴訟の敗訴確定後、事情の変化等により再審情願を申し立てている者等に対して行われる再収容については、当人の帰国出来ない事情を十分に考慮した上、これを行わないよう強く申し入れる。再収容を行うにあたっては、細心の上にも細心の注意が払われるべきであり、入管法第55条1項規定の仮放免の取消によるものや、犯罪行為等の新たな退去強制事由によるもの以外の再収容は原則的に行わないでいただきたい。
  また、前述してきたようなどうしても帰国できない事情を抱えた者たちに対する強制送還は、刑罰にも比すべき重大な不利益処分である。難民申請者であれば文字通り生命への危機をもたらすものである。長期滞在者であれば長年にわたり築いてきた生活基盤を根こそぎにするものであり、送還先の本国において生活の手段がなく、生存すら困難な場合も少なくない。本邦に配偶者、子供等の家族がいる者に関しては、家族と暴力的に引き離され、長期間、場合によって永久に会うことの出来ないものもいるだろう。このように、強制送還は、時として死刑にも等しい苦しみを仮放免者達にもたらす。当会は、本人の意思に沿わない強制送還は個別、チャーター機によるものいずれもこれを行わないよう申し入れる。
  とりわけて当会は、チャーター機による集団送還にはいかなる場合も絶対に反対である。またすでにチャーター機送還は、その導入趣旨からして破綻していると言わざるを得ない。入管は、個別送還に比して安全かつ安価であるとして2013年度からチャーター機送還を開始した。チャーター機送還では、同国人を一定人数かき集めなければならないことから、個別送還事例に比しても人権侵害の度合いが高い送還ケースが出てきている。昨年12月のスリランカ人・ベトナム人同時送還においては、難民を送還し、かつ難民不認定処分異議申立棄却告知と共に収容し翌日のチャーター機で送還し、裁判を受ける権利を侵害した。また、夫婦・父子を分離するケースもあった。個別送還についても当会は反対だが、極めて深刻な人権侵害のケースを招くチャーター機送還についてはとりわけて強く反対し、これまでのチャーター機送還に抗議する。しかも、昨年12月のチャーター機送還では、一人当たり125万円という高額の送還経費となった。人権問題を金額の多寡で云々することはできないが、入管が自ら主張したチャーター機による集団送還の導入趣旨の「安価」という側面からは大きく逸脱して決行された。かつて集団密航者などを船舶を利用して集団送還した時代とは、あまりに国際的・社会的状況が変化し、非正規滞在者、とりわけて退令仮放免者の状況が変化している。当会としては、あくまで人権擁護の立場からチャーター機送還に反対するものであるが、入管として、総合的見地からチャーター機送還方針は取りやめていただきたい。

難民申請者について
  難民申請者については、現在日本では、難民認定に際して、認定基準においても申請者自身に課せられる立証責任においても、国際的基準からかけ離れた極めて厳しい運用がなされ、例年極めて低い認定率で推移してきている。これらは、国内外からの厳しい批判にさらされているところである。現在の運用は、帰国すれば生命の危険があり保護が必要な者達に保護を与えることを、実質的に拒否する実態となっている。日本の難民認定制度は、少なくともUNHCR難民認定基準ハンドブックの定める「灰色の利益」に鑑み、国際的基準に沿う形で運用を改善すべきである。仮放免者の中にも多くいる上記基準に該当するものに対しては、難民として認定することを求める。また迫害主体が政府ではない場合にも、UNHCR難民認定基準ハンドブックで定められているように政府がこれら迫害を容認している場合、あるいは効果的な保護を与えない、与えられない場合には、難民として認定する、あるいは人道的な配慮から在留を特別に許可する事でこれを救済するよう求める。
  近時、難民申請をしつつ就労する外国人を「偽装難民」と決めつけるがごとき報道が散見されるところである。入管は、このような「偽装難民」によって「真の難民の迅速な庇護に支障が生じる」とし、これへの対応と称して審査の簡素化や再申請等に関する各種の制約等の難民認定の厳格化策を打ち出し、これにより適正な難民保護を図っていく等と述べている。こうした厳格化はすべての難民申請者に関して及ぶものであるだけに、当会としても看過出来ない。
  そもそも、難民申請者が生存のため就労することは全く責められるべきことではないし、就労の意思を有することと難民であることが重なり合うことがあっても何ら不思議はない。既述のとおり、入管の難民認定制度は国際的基準とかけ離れたもので本来保護すべき者に適正に保護を与えているとはいいがたい。まずは、本来保護すべき者に然るべき保護を与えることが先決である。繰り返すがUNHCR難民認定基準ハンドブック、国際的基準に則って、難民認定、あるいは在留特別許可を付与していくことで適正な難民保護を図っていくべきである。
  さらに、実習先から「逃亡」し難民申請を行う技能実習生たちが、「偽装難民」としてことさらに問題視されている。しかし、技能実習制度そのものが、技術移転を通した国際貢献といった建前とは裏腹に、適正な賃金での雇用が困難となった業種に低賃金で働く労働力を導入するための制度となっていることはもはや明白である。以前から研修生・技能実習生制度は、外国人を安価な労働力として酷使し使い捨てにする現代の奴隷制度であるとして国内外からも大きな批判を浴びてきたものである。問題は明らかに「偽装難民」にではなく、こうした「偽装受け入れ」にある。このような欺瞞的で人権を無視した外国人政策をあらためることが肝要である。技能実習生制度は廃止し、然るべき在留資格を付与したうえで外国人を労働者として受け入れるべきである。自らの制度の欠陥を改めずして難民申請者自身にのみ責任を転嫁することは社会的公正、道理を著しく欠いている。

長期滞在者について
  1980年代後半からのバブル景気時、さらにはバブル崩壊後も余韻が残る数年間は、製造、建築・土木、廃棄物処理業等いわゆる3K職場(キツイ、キタナイ、キケン)と呼ばれた労働現場では、日本の若者がこれを忌避し、新規の就労は少なく、すでに就労している者は他の職場に転職して行った。特にバブル景気時には人手不足が深刻であり、仕事はいくらでもあるが労働者がいなくなって会社が潰れるという「労務倒産」も多発して社会問題化していた。この異常事態は、需要に供給がまったく追いつかないという状況を生み出しかねなかった。当時その労働者不足を埋め、日本の産業構造を底辺で支えた一翼が、非正規滞在の外国人労働者、あるいは短期滞在中に就労する外国人労働者であった。現実に外国人労働者が社会的生産力として力を発揮する中、さらなる、かつ正規の外国人労働者導入策として、1990年に改正入管法が施行された。そこでは主に中南米の100万人と言われた日系人社会をターゲットとして、その二世には「日本人の配偶者等」、すでに稼働年齢に達しつつあった三世には「定住者」の在留資格を付与することにした。同時に、外国人研修生を中小企業も活用できるように団体監理型受け入れが新設され、続く1993年改正入管法では技能実習制度(一年間)が設けられ、さらに1997年には技能実習期間が最大二年に延長された。
  正規滞在か非正規滞在かを問わず、日本の労働市場の需要に応えて外国から供給されたのが外国人労働者であり、入管法上はともかくとして、日本社会が受け入れたのである。日本の経済的繁栄がその血の滲むような労働の上に成り立っていたことを忘れてはならない。以前、入管職員はしばしば、「不法就労が日本の労働者の職場を奪う」と発言することがあった。それは明らかな事実誤認である。上述の通り、日本の労働者が抜けた穴を非正規滞在外国人と、日系人が埋めたのである。日本の労働者を駆逐したというならば、「時給300円の労働者」とも呼ばれて文字通り奴隷労働に置かれた研修生であろう。研修生制度においては、すでに本国でプロの技術を身に着けた若い労働者が、違法な低賃金状態で雇用され、それまでいた日本人労働者や正規滞在の外国人労働者を駆逐する例がしばしば見られた。
  一方、2003年10月の法務省入国管理局、東京入国管理局、東京都及び警視庁による「首都東京における不法滞在外国人対策の強化に関する共同宣言」、2003年12月の犯罪対策閣僚会議による「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」等により、国等は、非正規滞在外国人の労働力に依拠しないことを明確化した。少なくともそれ以前に入国し、結果として定住するに至った非正規滞在外国人、とりわけて退令仮放免者に在留資格を付与していく事は社会的公正という見地からも人道上の配慮からも重要である。
  我々仮放免者の会は、これら長期滞在の仮放免者については、彼ら、彼女らが日本の発展、繁栄を支えてきたことを率直に認め、職場で、地域社会で築いてきた人間関係等の豊かな社会関係を最大限考慮し、在留資格を付与していくことを求める。
  2020年東京オリンピック、パラリンピック開催に向け、労働力の不足を埋めるため、政府は技能実習生の拡充を決めた。国際貢献を建前とする技能実習生制度で労働者不足を補おうというのである。こうした政策は、バブル期の労働力不足を非正規滞在外国人、日系人、研修生などで補った当時の繰り返しであり、外国人を都合のいい労働力として利用したいだけ利用し、用が済んだらば帰ってもらうといったものである。このようなご都合主義的、偽装受け入れ的なやり方はもはや許されない。外国人労働者が必要ならば、技能実習生といった小手先の方法でなしに労働者として然るべき在留資格を付与したうえでこれを正面から受け入れるべきである。長期滞在の仮放免者に対しては、前述してきたようなバブル期の外国人政策の清算、社会的公正の観点からも在留資格を付与していくことを重ねて求める。
  長期滞在の仮放免者の中には、日本語能力も高く、日本での生活習慣にもなれ、日本社会にとけこんでいて、仕事にも習熟し稼働してきた労働現場において専門的な高い技術を習得している者もいる。こうした者達は長い経験の中で学んだ技術を、後進に伝え継承していくことができる。日本社会にとって非常に貴重な存在でもある。こうした仮放免者は日本社会を昔も今もそしてこれからも支えて来、支えてくれる存在であり、良き友人、仲間、家族でもありうる。彼ら、彼女らを正規化していくことは日本社会にとって有益であり、社会的公正にもかなう。
  また、仮放免者は特に医療の面において著しい排除を受けているが、仮放免期間の長期化に伴い、生命の危機のある疾病に罹患する者も増加していく。労働災害によって回復不能な障害を負った者もいる。これら重大な病気・ケガを抱えた長期滞在仮放免者に対しても、日本経済を底辺で支え続けてきたことを考慮し早期の在留資格付与を求める。

家族統合について
  仮放免者達の中には、日本人の配偶者もいれば、在留資格保持者の配偶者もおり、一家全員が仮放免者(異なる国籍を持つ在留資格を持たない男女が子をなした場合等)というケースも珍しくない。
  市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)の第23条2項には「婚姻をすることができる年齢の男女が婚姻をしかつ家族を形成する権利は、認められる。」とあり、同規約の第23条1項には「家族は、社会の自然かつ基礎的な単位であり、社会及び国による保護を受ける権利を有する。」とある。さらには「児童の権利に関する条約」の第3条1項は「児童に関するすべての措置をとるに当たっては、公的若しくは私的な社会福祉施設、裁判所、行政当局又は立法機関のいずれによって行われるものであっても、児童の最善の利益が主として考慮されるものとする。」と規定する。愛する家族と共に暮らす事、家族と引き離されたくないという気持は誰しもが持つ、当然かつ切なる想いである。日本に家族(配偶者、及びその子ほか扶養すべき者)がいる者については、上記国際条約の規定に則り、家族統合に十分に留意し、然るべく在留資格を付与していくことを申し入れる。未成年の仮放免者にもその他仮放免者と同様に医療、行動範囲の制限等、様々な制約、制限がある。これらは児童の健全な生育を著しく阻害するものとなっている。これら未成年者の仮放免者及びこれを扶養する親等に対しては、早期に在留資格を付与し救済することを求める。

結語
  我々、仮放免者の会は、前述してきたようにどうしても帰国できない理由のある退令仮放免者達に対して、再収容や強制送還ではなく、在留資格を付与していくよう求める。難民申請者に関しては難民認定制度の適切な運用が望まれる。在留特別許可をすべき積極要素として、配偶者、扶養すべき子供等、家族統合については最大限これを評価することはもちろんであるが、とりわけ長期滞在の項目について、前述してきたような10年、20年、30年と長期にわたり本邦で生活している者達のどうしても帰国できない事情を斟酌し、在特付与にあたり特に重視するよう申し入れる。また、重要な積極要素のあるものに関しては、本人の反省の度合い、家族統合等、退令発付後の期間、仮放免期間等、諸般の事情を考慮し、消極要素に関しては過度に重く見ることのないように申し入れる。
  仮放免期間の長期化と仮放免者の増大といういわば仮放免者問題は、これまで述べてきたように、労働市場の要請に応えるために採られた、ご都合主義的なゆがんだ外国人政策の果てに出現したものというべきである。しかし、経済的要請のみにかまけて、社会的公正や人権擁護が忘却されることがあってはならない。入管行政の執行と、どうしても帰国できない退令仮放免者達の苦しみ、要求のあいだに大きな溝があるとしても、これらを架橋すべく、日本政府、入管には外国人の人権保護の見地に立ち必要な対応をとることを求める。
以上
申し入れ団体    仮放免者の会

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

関連記事


Monday, September 7, 2015

会のホームページをつくりました/9・9法務省デモのプラカード画像



さきにお知らせしていましたとおり、9月9日(水)に「仮放免者に在留資格を!」 9.9法務省デモを開催します。



連絡先:
おおまち Omachi 090-3549-5890 / みやさこ Miyasako 090-6547-7628 / Elizabeth(English available) 080-4163-1978




◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆




さて、このブログとべつに、仮放免者の会のホームページをつくりました。

仮放免者の会  ホームページ



今後こちらも充実させていきますので、よろしくお願いします。

以下のページには、9.9法務省デモのプラカード用の画像を置いてあります。セブンイレブンのコピー機に番号を入力すると、印刷ができます。どうぞご利用ください。

http://praj-praj.jimdo.com/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%AA%9E-%E3%81%AB%E3%81%BB%E3%82%93%E3%81%94/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%89/

Saturday, September 5, 2015

8月30日付『読売新聞』に掲載された差別扇動記事について



  読売報道の問題についての連載が、第2回を掲載してからだいぶ間があいてしまっています。


  1. 【連載】「難民偽装問題」をめぐる読売報道の問題点(第1回)――偽装された関心としての「難民保護」
  2. 【連載】「難民偽装問題」をめぐる読売報道の問題点(第2回)――だれが技能実習制度を形骸化させているのか?


  連載は後日再開します。今回は、読売新聞に技能実習生といわゆる「難民偽装」をめぐってきわめて悪質な記事がまた掲載されていたので、その問題点を簡単に指摘します。

  問題の記事は、「外国人実習生厚遇求め逃亡」との見出しがつけられ、8月30日付の社会面に掲載されています。この記事も、上記の連載で私たちが批判してきた読売の一連の記事と同様、制度的・政策的な矛盾・問題点をあべこべに外国人に転嫁した差別的な記述にみちたものになっています。

◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆

  読売記事は以下のように要約できます(末尾に問題の記事を転載しておきますので、以下の要約や記事に対する批判が的確なものかどうか判断するさいの材料として、参照してください)。

(1)  実習先から「逃亡」した技能実習生が難民申請をする例があいついでいる。
(2)  (1)は、「より良い待遇」を求めての「偽装申請」とみられる。
(3)  難民申請にはパスポートが必要であり、「逃亡」した実習生がパスポートの返却を求めて労働組合を「利用」した例もある。
(4)  実習生があいついで「逃亡」したため人手不足で廃業した会社もある。

  (3)の、難民申請にパスポートが必要だとの読売記事の記述は、事実とことなります。読売がこの点で虚偽を書いていることの問題性については、あとで述べます。

  最初に、(1)(2)をめぐり、読売が「逃亡」という表現をもちい、またその実習生の「逃亡」は「厚遇」「より良い待遇」を求めてのものだとしている点について、検討してみましょう。

  読売記事は、ミャンマー人女性5人が「逃亡」するにいたった実習先の縫製会社の待遇について、「実習先に不満」との小見出しをつけてつぎのように書いています。

「毎日午前7時半から午後10時まで働かされた」「来日前は月10万円以上と聞いていた給与が8万円だった」。縫製会社で働いていたという女性たちは取材に対し、口々に不満を述べた。

  一見してひどい待遇であることがわかります。このような職場から脱しようとすることは、常識的な書き方をするならば、せいぜい「通常の待遇を求め」といったところでしょう。ところが、読売新聞は「厚遇求め逃亡」などと書くわけです。

  読売記事は、ミャンマー人実習生たちが超低賃金での過酷な長時間労働をしいられていたということはいっさい問題にしないかわりに、取材者への彼女たちのうったえについて「口々に不満を述べた」などというまとめ方をしています。読売の記者たちにとっては、日本人労働者と比較してあきらかに不当に劣悪な待遇で外国人が働かされていることは、なんの問題もない、いわば“当然のこと”であって、これに「不満を述べ」るのは“ナマイキだ”というわけなのでしょう。よくもまあ、外国人への蔑視・差別意識を紙面で臆面もなくたれながせるものです。

  私たちは上記の2の記事で、技能実習制度についてつぎのように指摘しました。

「高い賃金」などの、よりよい待遇を求めて「転職」するのは、通常の労使関係であれば、なんら責められるいわれのない、労働者としてあたりまえの行為であるはずだという点を、まずは確認しておきましょう。
  通常の労使関係においてはたんなる「転職」にすぎないことが、技能実習制度のもとでは、「逃げ出した」「逃亡」ということになってしまうのです。というのも、技能実習制度は、タテマエのうえでは、ここで読売が書いているとおり「途上国の支援を目的とした国の制度」であって、したがって実習生は、お金をかせぐために来たのではなく、技術等をまなびに来たのだということに、名目のうえではなっているからです。入管法上も、実習生は実習先以外で働くと、「資格外活動」とされて摘発の対象になります。
  このように、日本の政府や実習先である企業等は、実際には、実習生を低賃金の労働力として利用しておきながら、他方ではその労働が「実習である」というタテマエを都合よく持ち出すことで、実習生の労働者としての権利を否定し、実習先の職場に縛りつけることが可能になります。技能実習制度とは、通常の労使関係のいわば例外的な領域を作り出し、そこでの事実上の奴隷的拘束を「合法化」する装置といってよいでしょう。

  今回の読売記事がとりあげているミャンマー人実習生たちは、まさに「事実上の奴隷的拘束」を受けていると言ってよい事例です。さきに引用した彼女たちの待遇は、競争力のはたらく自由な労働市場においてはけっしてありえない水準のひどさであると、あきらかに言えるものです。労働者が雇用主・職場を選ぶことのできる環境、すなわち転職が可能な労使関係ならば、あのような劣悪な待遇ではたらきつづける労働者などいるはずがないのです。

  朝の7時半から夜の10時まで拘束されて月給8万円しか支払われないような職場ではたらきつづける労働者がもしいるとするならば、それはなんらかの理由で転職ができないからだろうと考えるのが自然です。そして事実、技能実習生はこの転職を制度的に禁じられているわけです。さらに、読売記事によると、彼女たちは実習先企業によって「パスポートを取り上げられ」ていたといいます。彼女たちは「逃亡」できないように、制度と雇用主によって二重に拘束されていたわけです。日本政府と実習先企業によって彼女たちが実態として奴隷の身分におかれていたと言っても、まったく誇張にはあたらないでしょう。

◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆

  読売は、このような明白な奴隷制として技能実習制度が運用・利用されている事実について目をつぶっているばかりか、外国人実習生のほうをあべこべに悪者あつかいした記事の書き方をしています。

  読売は「労組の『利用』相次ぐ」との見出しをつけて、「外国人技能実習制度での実習先から逃亡したミャンマー人女性5人が、東京都内の労働組合に相談して実習先にパスポート返還などを求め、日本での就労を希望して難民認定を申請していることがわかった」などと書いています。まるで、実習先からパスポートを取り返すことや、その手段として労組を「利用」することになにか問題でもあるかのように示唆する書きようです。

  また読売は、「5人は本国の政情不安などを理由に難民申請も行い、パスポートは申請に必要だった」とも書いています。この記述は、まったく見当はずれであるうえ、事実をねじまげたものです。

  難民申請にあたってパスポートが必要だという事実はありません。難民として庇護を希望する人のうち、本国政府から有効なパスポートの発行を受けたうえで難民申請できる人はかぎられているし、無国籍者などそもそもパスポートの発行を受けようのない人もいます。したがって、入管も、パスポートのある人には提示をもとめますが、提示できないからといって申請を受け付けないわけがないのです。

  そもそも、どうして5人のミャンマー人実習生が実習先からパスポートを取り返さなければならなかったのかというところに、新聞記者ならば問題意識をもたなければならないでしょう。読売の記者は、パスポートが難民申請に必要だからだと考えたようですが、これは見当違いもはなはだしいものです。実習先企業は、実習生が「逃亡」しないように、実習生にとって自分の身分を証明する大切な手段であるパスポートを取り上げるのです。本人の大切な持ち物を取り上げて逃げ出せなくなるようにするのは、典型的な奴隷主、人身取引業者、あるいはDV加害者の手法です。

  読売は、このパスポートを実習先企業が取り上げていたという事実にはなんの問題意識も示さないいっぽう、“難民申請に必要なパスポートを労組を「利用」してまで取り返そうとしている”という実習生に問題を転嫁するストーリーを読者に印象づけようとしています。

◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆

  さらに、読売は、実習先の企業が人手不足で廃業した例をあげ、ここでも外国人技能実習生に責任を転嫁しています。

  先月、団体交渉を突然申し入れられた愛知県の縫製会社の女性経営者は、「あちらが悪いことをしたんでしょう? こっちが訴えたいくらい」と憤る。
  13~14年、経営する2社でミャンマー人実習生7人を受け入れたが、ほどなく全員がいなくなった。人手不足で1社を廃業せざるを得なくなったという。
  団体交渉先の一つとなった千葉県の水産加工会社に実習生をあっせんした監理団体では昨年5月以降、地元企業にあっせんしたミャンマー人約60人のうち約40人が先月までに姿を消した。監理団体幹部は「最初から逃げ出すつもりで来日したとしか思えない。こんなことが続けば実習制度は成り立たなくなる」と嘆いた。

  縫製会社経営者や監理団体幹部の言葉は「……と憤る」「……と嘆いた」というかたちで紹介されており、さきにみた技能実習生の言葉が「口々に不満を述べた」とされていたのとあつかいのちがいがきわだっています。こういったところにも、外国人に対する記事執筆者の差別意識がみてとれます。

  さて、あらためて確認しておきますが、技能実習制度は、企業が不足した労働者をおぎなうための制度ではありません。厚生労働省の説明によれば、「技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力すること」がその制度本来の目的です。

  技能実習生がいなくなったから廃業に追い込まれたというのならば、それは制度本来の趣旨から逸脱する過剰な数の実習生を就業させていたということにほかなりません。いいかえるならば、この縫製会社は、もともと必要な労働力を正当な手段では確保できないのを、技能実習生に依存することでその廃業をまぬがれていたにすぎない、ということです。

  人手不足が深刻で市場原理からすれば立ち行かない産業に対し、その公共的な価値をかんがみて政策的に支援あるいは保護すべきだということは、もちろんありうるでしょう。しかし、その手段が問題です。技能実習制度をその趣旨からあきらかに逸脱したかたちで悪用し、事実上の奴隷制度をもうけて斜陽産業を延命させるのは、ゆるされることでありません。

  縫製会社が廃業に追い込まれたのは技能実習生が「逃亡」したからだとする読売の論調は、奴隷が言うことをきかないから奴隷制度が成り立たなくなると言っているようなものです。制度・政策から生じているのがあきらかな矛盾・問題を、その被害者と言うべき外国人実習生にデタラメに転嫁するのは、それ自体が外国人に対する差別の遂行であり、さらにこれを新聞の紙面においておこなえば、差別を読者にむけて扇動する行為でもあるともいえます。

  読売新聞社には、外国人に対する記者らの差別的体質をあらためる取り組みを強化し、また、独立した報道機関として、国の政策・制度を批判的に報道する責任をになってほしいとのぞみます。

以上




以下に、問題の読売記事を転載します。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

外国人実習生  厚遇求め逃亡
労組の「利用」相次ぐ
  外国人技能実習制度での実習先から逃亡したミャンマー人女性5人が、東京都内の労働組合に相談して実習先にパスポート返還などを求め、日本での就労を希望して難民認定を申請していることがわかった。現行制度では、難民申請さえすれば6か月後から就労が可能。入国管理当局は、実習生がより良い待遇を求めて実習先を逃亡し、偽装申請を行う動きが広がっているとみている。労組には他にも、逃亡した実習先からの相談が相次いでいる。

就労のための難民申請
■実習先に不満
「毎日午前7時半から午後10時まで働かされた」「来日前は月10万円以上と聞いていた給与が8万円だった」。縫製会社で働いていたという女性たちは取材に対し、口々に不満を述べた。
  5人は27歳から36歳のミャンマー人で、2013年末~今年2月に来日。岐阜、愛知、千葉の3県の縫製会社や水産加工会社で働いたが、約1か月から約1年で次々と逃亡し、在日外国人を支援するAPFS労働組合(東京都板橋区)に相談に訪れた。
  同労組は5人の労働環境を問題視して先月9日、実習先に、取り上げられたパスポートの返却や未払い賃金の支払いを求めて団体交渉を申し入れた。要求に応じた実習先もあるという。
  ただ、5人は本国の政情不安などを理由に難民申請も行い、パスポートは申請に必要だった。「私たちは難民」とする一方、「日本で稼ぎたい」とも話す。

■「誰にでも権利」
  難民認定制度は2010年に改定され、申請中の生活を支えるため、申請の6ヵ月後から就労が可能になった。申請が退けられても異議申し立てなどを繰り返せば働き続けられる。
  同労組は毎月10~15件の相談を扱うが、最近は難民申請中のミャンマー人の相談がほとんどだという。同労組幹部は「私たちは労働問題に対応する立場。中には難民と言えない人がいるのは確かだが、申請の権利は誰にでもある」と語る。
  ミャンマーでは少数民族ロヒンギャへの迫害が続くが、それ以外の国内情勢は改善しつつあると入管当局はみており、最近は難民認定されるケースはまれだ。先月の団体交渉が成功したことが口コミで広がったとみられ、同労組は今月末、別の実習先を逃亡したミャンマー人女性5人の相談も受けた。

■人手不足で廃業
  先月、団体交渉を突然申し入れられた愛知県の縫製会社の女性経営者は、「あちらが悪いことをしたんでしょう? こっちが訴えたいくらい」と憤る。
  13~14年、経営する2社でミャンマー人実習生7人を受け入れたが、ほどなく全員がいなくなった。人手不足で1社を廃業せざるを得なくなったという。
  団体交渉先の一つとなった千葉県の水産加工会社に実習生をあっせんした監理団体では昨年5月以降、地元企業にあっせんしたミャンマー人約60人のうち約40人が先月までに姿を消した。監理団体幹部は「最初から逃げ出すつもりで来日したとしか思えない。こんなことが続けば実習制度は成り立たなくなる」と嘆いた。

制度形骸化の恐れも
  難民申請は制度改正後に急増し、2009年の1388人から昨年は5000人にまで膨らんで、審査続きが滞る事態も招いている。一方、発展途上国への貢献を掲げる技能実習制度は、「低賃金で外国人に単純労働を強いている」との批判が強く、法務省によると昨年は4851人が逃亡した。逃亡しても難民申請すれば合法的に就労でき、実習生による難民申請は10年の45人から昨年は418人に増えた。
  本国のお墨付きを得たはずの実習生が、実習先を「入り口」にして入国すると、今度は難民だと主張して好待遇の職場に移っているのが実情で、このままでは技能実習制度の形骸化も進みかねない。難民問題に詳しい滝沢三郎・東洋英和女学院大教授は「国は、実習という建前で外国人労働者を確保する政策を改めるとともに、難民申請するだけで一律に就労が可能になる仕組みの見直しなどを急ぐべきだ」と指摘している。
(8月30日(日)付『読売新聞』社会面)

Monday, August 31, 2015

イスラム教徒の食事に豚肉が混入(東京入管横浜支局)


  いくつかマスコミ報道がなされていますが、東京入管横浜支局で8月12日、イスラム教徒であるCさん(パキスタン国籍)に、豚肉(ベーコン)の入った食事が出され、以降、Cさんは19日間にわたり入管の給食を拒否しています。

  この事件について、8月27日(木)に仮放免者の会として横浜支局にて申し入れをおこない、以下の申入書を提出しました(申入書原文では記載していた被収容者名を、「Cさん」として公開します)。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

申  入  書
2015.8.27.
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局横浜支局長  殿

関東仮放免者の会(PRAJ)神奈川
被収容者の抗議の拒食について
  8月26日現在、貴支局Bブロックに収容中のパキスタン国籍Cさんが、給食に豚肉が入っていたことをきっかけとして、2週間拒食を続けています。わたしたちが本人およびその家族、また同室の被収容者に聴き取りを行ったところでは、イスラム教徒であるCさんの給食は、豚肉抜きのものが別に提供されているはずでしたが、8月12日の夕食の際、Cさんは、豚肉を気が付かずに食べてしまいました[赤字部分につき、訂正あり。下に付けた文章を参照してください]。違和感を感じたため他の被収容者の食事を確認したところ、まったく同じものが入っていたので、Cさんが職員を呼んで確認してもらったところ、職員も豚肉が入っていることを認めました。Cさんはショックを受け、これまでも豚肉を知らないまま食べさせられてきたのではないか、という怒りもあり、抗議の意味をこめて、その後貴局から提供される給食を食べることを一切拒否しています。その結果、体重は、8月12日以前には67.1kgだったものが、8月21日には57kgと、10キロも減っています。わたしたちは、Cさんの健康状態の悪化を憂慮しています。
  ところが、Cさんのこの行動を知りながら、貴局が、ほとんど何もせずこれを放置し続けたことは、大きな問題であると私たちは考えます。私たちがCさんの拒食を知ったのは8月17日でしたが、8月19日に拒食開始後初めて面会した際、Cさんは、「一週間たつが、偉い人は一回も来ていない。すぐに偉い人に謝罪されていたら止めていた。もう一週間たつ。今から謝罪されてももう遅い」と言っていました。また、同じ時期、貴局の職員はCさんの妻に「本人が勝手に食べていないだけ」というようなことを言い、妻も大きなショックを受けています。必死の思いでの行動がほとんど無視されたことに対して、本人が強い憤りを持つことは、十分に理解できます。8月21日には、職員による何らかの謝罪があったということですが、これはあまりに遅すぎる対応であり、Cさんは、その後も抗議の拒食を続けています。
  こうした経緯を踏まえると、貴局が、今回起こった出来事の重大さを認識していないのではないかと思わざるを得ません。豚肉を食べる、というイスラム教徒にとって重要な宗教的な禁忌を犯させ、しかもそのことを軽視する、というのは、法務省令である「被収容者処遇規則」第二条(入国者収容所長及び地方入国管理局長(以下「所長等」という。)は、収容所等の保安上支障がない範囲内において、被収容者がその属する国の風俗習慣によつて行う生活様式を尊重しなければならない)の違反であるだけでなく、イスラム教徒であるCさんにとって大変な屈辱であり、重大な人権侵害です。2000年、インドネシアで、「味の素」の原料に豚肉が使用されている疑いがあるという噂が流れ、この問題はインドネシアで大きな社会問題となりました。こうした事例を上げるまでもなく、今回のことが重大な問題であるということは、容易にわかるはずです。Cさんによると、今回の給食に入っていた豚肉は、生まれて初めて食べてしまった豚肉です。そのショックの大きさは想像できるのではないでしょうか?
 また同時に、今回Cさんは、自分だけの尊厳がないがしろにされたことだけに怒っているのではありません。彼は他の被収容者の仲間のことを考え、収容所の劣悪な状況を改善するために行動してきました。Cさんもサインしている、8月5日に提出された(いまだに貴局からの返答すらない)要求書の中では、食事の劣悪さと、その改善が訴えられています。Cさんによると、彼が収容されてから、給食に髪の毛が入っていたことが5回もあったということです。そして、Cさんの夕食に豚肉が入っていた8月12日の昼食にも髪の毛が入っており、Cさんは昼食も食べていません。髪の毛が何度も混入するというようなありえない状況が放置され、何度訴えても改善されなかったこと、そうしたことも、Cさんの怒りの背景にはあります。
  Cさんは「いつもの入管職員の人たちは悪くない、謝ってくれたし私の体を心配してくれている」と普段接している担当職員たちをかばう発言も何度もしています。「他の収容者が、自分だけ食べるのが心苦しい、と言ってくれるので、この問題はイスラム教徒の自分だけの問題でみんなに迷惑を掛けたくないので、一人部屋に移してくれるように頼んだ」とも言っています。こうしたCさんの考え方の倫理性には心打たれます。私たちは、貴局に対し、以下を申し入れます。
(1) まずはCさんの健康に対して十分に留意し、そして、Cさんに対して改めて真摯に対応し、適切な対処を行うこと
(2) 食事の問題を含めて、8月12日付で私たちが申し入れた内容について速やかに対応すること。
(3) Cさんが、今回のこと、妻への入管のひどい対応のことなどを被収容者申出書に書いて提出しようとしたが、コピーをとらせないと言われ、出すのをやめて手元においている。Cさんに速やかにコピーをとらせること。
以上


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

  上の申入書で「Cさんは、豚肉を気が付かずに食べてしまいました」と述べましたが、事実は、Cさんがベーコンを口に入れたものの味に疑問を感じたため吐き出し、職員を呼んで確認したところ、職員が豚肉の混入した食事を出してしまったことを認めた、とのことです。しかし、以前にも横浜支局で同種のサラダが出ていたため、Cさんはそのたびに自分が豚肉を食べてしまっていたと認識しており、このことに大きなショックを受けているということです。以上、訂正いたします。

  さて、イスラム教徒の食事に宗教的な禁忌である豚肉を混入させ、これに気づかなかったという過失も重大ですが、横浜支局の事後対応もきわめて問題のあるものです。

  Cさんに豚肉入りの食事が出されたのが、8月12日(水)。横浜支局からCさんにようやく謝罪があったのが、10日近くも経過した21日(金)。この間、Cさんが摂食を拒否して抗議をつづけていたにもかかわらずです。

  豚肉を食べることがイスラム教徒にとってきわめて重要な宗教的な禁忌であることは、一般的によく知られていることでもあります。日々入管業務にたずさわりそのための研修も受けてきたはずの者ならばなおのこと、この重要性を認識していないとは、およそ考えられません。申入書で述べたように、ことの重要さは「容易にわかるはず」のことがらなのです。したがって、今回の横浜支局の対応の遅さ・ずさんさの背景には、イスラム教徒の慣習・文化に対する無理解・認識不足というよりも、組織としての横浜支局の差別的体質があるのではないかと考えざるをえません。退去強制の対象となっている外国人が相手ならば、どんなあつかいをしてもかまわない、という差別的な人権軽視の発想が根深くあるものと考えないかぎり、このずさんな対応は理解しがたいものです。

  横浜支局の事後対応のありようからは、その組織的な隠蔽体質もかいまみえます。今回の問題が明るみにでたのは、Cさんが自身の被害事実を私たちをつうじて報道機関につたえたことによるものです。横浜支局は事件から15日も経過した8月27日、報道各社からの取材を受けてようやく事件を公表した、というのが事件の報道にいたる経緯です。

  宗教的禁忌にふれる食事を出していたという問題の重大性をかんがみるならば、Cさん本人にすみやかに謝罪と説明をおこなうことはもとより、入管みずから事実経過を一般に公表したうえで、再発防止への取り組みを約束すべきであったはずです。入管には、イスラム教をふくめ食にかんする禁忌のある宗教を信仰する多数のひとびとが収容されているのであって、今回の問題は横浜支局にとどまらず、全国の入管の収容施設全体についてその給食の信頼性をゆるがす事件だからです。

  横浜支局は、原因究明をふまえた再発防止策をすみやかにCさんにつたえるとともに、その内容を公的にもあきらかにすべきです。Cさんの食事への豚肉の混入が、今回の件にかぎったことなのか、さかのぼって可能なかぎり調査し、その結果をCさん本人に誠意をもって説明することも必要です。

  Cさんは、8月30日現在も、入管の食事を拒否しています。25日か26日ごろに横浜支局はCさんを外部の病院に連れていき、以来、Cさんは医師の指示で出された栄養剤を飲んでいるものの、拒食をはじめた12日から20日になろうとしており、その健康状態が心配されます。横浜支局は、Cさんが摂食を再開できるよう、本人とご家族に誠意をもった説明をおこないすみやかに信用回復につとめるべきです。

  横浜支局については、申入書でもふれているとおり、被収容者が食事もふくめて処遇改善をもとめた要求書を連名で出しており、また、職員が被収容者の私物を勝手に破損するという事件も起きています。




こちらの記事も、あわせて参照してください。

Wednesday, August 26, 2015

東京入管横浜支局職員が被収容者の私物を損壊/被収容者による処遇改善の要求


  8月12日(水曜日)、東京入国管理局横浜支局にて申入れをおこないました。

  横浜入管では、7月上旬に、職員(入国警備官)が被収容者Aさんの私物を故意に損壊する事件がありました。また、8月5日には、被収容者から処遇の改善を要求する連名の要求書が出ています。

  これらを受け、仮放免者の会としても横浜支局にて、処遇の改善(開放処遇の時間延長、被収容者間の情報交換に対する不当な制限をやめること、医療・食事の改善)と、Aさんへの謝罪をもとめる申し入れをおこないました(申入書は、この記事の最後に掲載しています)。


◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆


  被収容者による要求書は、横浜支局のBブロックに収容されているうちのほぼ全員にあたる18名の連名で提出されています。かれらは、これまでも処遇について各人それぞれに意見をのべたり改善をもとめてきたりしてきたものの、いっこうに聞き入れられず、検討すらされないため、集団での要求書提出にいたったとのことです。

  要求書の原文(日本語ローマ字表記)と、これを漢字かなまじり表記にしたものを、以下に掲載します。


【原文】
YOKOHAMA IMMIGRATION NI NEGAI KOTO.
2015-8-5
1. YASUMI NO HI NO FREE TIME ASA 9:30AM KARA 11:30AM MADE TO 13:30
KARA 16:30PM MADE NEGAI MASU. YASUMI NO HI ZUTO HEA NAKA DE TSUTERESU
THAMARU TO IRONA SHITO URUSAI SHIMASU. ATO MINA SHOWER SURU JIKAN
DENWA SURU JIKAN TOBACCO SU JIKAN SENTAKU MONO SURU JIKAN TSUKU
NAKUTE, TAIHEN DESU.
2. MINA JA NAKUTE NAN NI GA SHITO FRIDAY TV NO JIKAN YORO 11:00PM MADE
NEGAI-O-SHI MASU NO DE NANNKA MOSHIROI BANGMI GA ARU NO DE DEGIRU NARA
FRIDAY TV NO JIKAN YORO 11:00PM MADE NEGAI DESU.
3. ATO IRONA SHITO GOHAN NO KOTO OSHIKU NAI TE YUTE MASU NO DE, SONO
KOTO DE MO SOKOSHI KHANGAETE MURAITAI DESU. YOROSHIKU NEGAI SHI MASU.


【漢字かなまじり表記】
横浜イミグレーション〔入管〕に願いこと
2015年8月5日
1. 休みの日のフリータイム、朝9:30AMから11:30AMまでと、13:30から16:30PMまで願います。休みの日、ずっと部屋のなかでストレスたまると、色んな人うるさくします〔補足:叫んだり、壁を叩いたりしてしまうこと〕。あと、みなシャワーする時間、電話する時間、タバコすう時間、洗濯物する時間少なくて、大変です。
2. みなじゃなくて、何人かの人、フライデー〔金曜日〕TVの時間、夜11:00PMまで願いをしますので、なんか面白い番組があるので、できるなら、フライデーTVの時間、夜11:00PMまで願いです。
3. あと、色んな人、ごはんのこと、おいしくない、て言ってますので、そのことでも少し考えてもらいたいです。よろしく願いします。


  要求の内容は、きわめてもっともなことがらです。

  入管の収容場は、本来、収容されたひとに苦痛をあたえるための施設ではありません。懲罰のための施設でもありません。入管法にさだめられた退去強制事由にかかわる審査のための収容、あるいは、退去強制令書が発付されたもののただちに送還を執行できない場合に送還可能のときまでの収容がみとめられているにすぎません。

  したがって、長時間せまい居室にとじこめて、運動もシャワーもできない状態で被収容者にいちじるしい不自由と苦痛をあたえてよい正当な理由など入管にありません。また、金曜の夜に映画を放映しているテレビを、途中で消して最後までみられなくするという、まるでいやがせのような措置も、認められるものでありません。

  これらの処遇の問題は、人員をふくめた施設の不備と、これを不備なままに放置してきた入管の怠慢によるものです。収容場が苦痛や懲罰をあたえることを目的とした施設(拷問施設)でないというならば、ただちに改善が検討され着手されなければならないものであるはずです。食事についても同様です。被収容者当事者からの要求・クレームが現にでているのですから、横浜支局は、支局としてこれをどう改善していくつもりなのか、すぐに改善できない部分については、なぜすぐできないのかを、被収容者全体に対して回答する義務があります。横浜支局が要求書に真摯に回答することをもとめます。


◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆


  さて、職員が被収容者の私物を破損した事件についてです。

  これは、Aさんが居室に貼ったチラシを、横浜支局の職員がAさんのシャワー中に無断で壁からはがし、くしゃくしゃにして持ち去ったというものです。警告もなしにです。あとで述べるように、チラシの内容が他の被収容者にとって好ましくないものであったとも考えられず、これを勝手にはがすという職員の行為に正当な理由があるとは考えられません。かりに、チラシをはがすという行為に正当性がみとめられるのだとしても、これをくしゃくしゃにして破損する行為にどんな正当性があるというのでしょうか。

  法務省入国管理局は、「出入国管理のしおり」と題されたパンフレット(リンク先PDF)を出しています。その4ページ目に、つぎのような記述があります。

正当な目的をもって来日しようとする人がスムーズに入国し安心して生活できるようにするとともに,日本での滞在を認めてはならないような外国人から日本国民の生命・安全や産業・国民生活上の利益を守ることも,また入管の仕事です。

  なにやらえらそうに「外国人から日本国民の生命・安全や産業・国民生活上の利益を守る」などと書いていますが、入管は、「日本での滞在を認めてはならない」とみなした外国人に対してであれば、監禁して虐待をくわえたり、その私物を無断で処分したりしてもよいということなのでしょうか。それも「入管の仕事」だというのでしょうか。

  私たちがこの職員による私物の破損について知ったのは、Aさん本人のうったえによってです。本来ならば、これは重大な不祥事であって、入管みずからがこの事実を公表して、再発防止につとめるのが筋でしょう。ところが、Aさんに対して、いまだに横浜支局としての謝罪すらなされていません。

  入管は、政府機関ですし、法務省下の組織なのですから、もうすこし法を尊重するという意識をもったほうがよいのではないでしょうか。

  ちなみに、横浜支局の職員がくしゃくしゃにして持ち去ったのは、Aさんに私たちが差し入れした“「仮放免者に在留資格を!」 9.9法務省デモ”の告知ビラでした。こちらデモのほうも、ご参加・ご協力のほど、よろしくお願いします。




◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆


  最後に、仮放免者の会として提出した申入書の全文を掲載します(申入書に記載した被収容者の名前と国籍は、以下ではふせてあります)。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

申 入 書 
2015.8.12
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東京入国管理局横浜支局長  殿
関東仮放免者の会(PRAJ)神奈川

1. フリータイムについて
  被収容者によると、横浜支局でのフリータイムは、平日は午前9:30-11:30と午後13:30-16:30ですが、土日は半分しかなく、土曜日は午前9:30-11:30のみ、日曜日は午後13:30-16:30のみです。この間の横浜支局での被収容者への聞き取りによると、フリータイムの短さ、特に土日のフリータイムが半日しかないことは、多くの被収容者に極めて大きなストレスとなっています。フリータイムについては、東京入国管理局、東日本入国管理センターでは、土日、祝日も午前午後と全日あります。被収容者たちは、他の収容施設と違ってなぜ横浜ではフリータイムが短いのか、と職員に再三問いかけていますが、これまでのところその理由は全く明らかにされていません。フリータイムの制限は、被収容者の行動の自由を著しく侵害するものです。横浜支局におけるフリータイム時間を延長すること、特に、土日のフリータイムについては、少なくとも他の収容施設と同様に、平日並みの午前・午後全日に変更することを、強く申し入れます。
2. 被収容者のブロック間情報交換の不当な制限について
  現在、横浜支局では、ブロック間で被収容者が手紙のやりとりをすることを禁じられていますが、これは通信の自由の侵害です。東京入国管理局、東日本入国管理センターでは被収容者がブロック間で自由に手紙のやりとりを行うことができます。横浜支局における、被収容者のブロック間情報交換の不当な制限をただちにやめるように申し入れます
3. 被収容者への医療の改善について
  被収容者からの聞き取りによると、現在の横浜支局での医師の定期診察は、短時間でかつ怠慢なものです。聴診器も持たず、顔を見ただけで決まりきった薬を出すだけ、といった診察では、被収容者への適切な医療が行われるとはとても思えません。被収容者への診察の改善と、病気の被収容者に対するすみやかな外部診療の許可、仮放免を行うように申し入れます。
4. 食事の改善、衛生管理の徹底について
  被収容者からは、「食事がまずい」「少ない」という多くの声が上がっています。また、髪の毛が入っていた、など、衛生管理に問題があることを疑わせる証言も聞いています。被収容者への食事の改善、衛生管理の徹底を申し入れます。
5. 被収容者の私物の職員による器物損壊について
  7月上旬、横浜Bブロックに収容中のD国籍Aさんが、チラシ(当会のデモのチラシ)を自室の壁に貼っていたところ、職員に断りなく剥がされ、くしゃくしゃにされて持ち去られるという事件が起こりました。その後チラシ自体は返却されたということですが、被収容者が掲示した物を、正当な理由なく、また事前の警告などなくいきなり剥がし、くしゃくしゃにする、というのはとんでもない行為です。剥がした職員によるAさんへの謝罪と、支局として、また入国管理局全体として、こうした人権侵害の再発を防止する取り組みを行うことを申し入れます。
以上
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【参考】

  横浜支局の職員が、おもわず壁からはがしてくしゃくしゃに丸めずにいられなかったのは、このチラシ(↓)です。


Friday, August 14, 2015

【転載】「憲法違反の難民申請者チャーター機送還を問う」10.3関西集会



大阪での集会の案内を転載します。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【転載】

「憲法違反の難民申請者チャーター機送還を問う」
10.3関西集会

◇2014年12月18日、政府が特別に用意した航空便(チャーター便)による難民申請者の大量強制送還が強行されました。そのうち多くは、難民として認めないという入国管理局の最終処分が出た直後にバスに乗せられ羽田まで送られました。

<裁判を受ける権利>
たとえ、入国管理局の不認定処分が出ても、保護を求める人は6ヵ月以内に処分の鳥飯を求める裁判を起こすことができます。この裁判によって入国管理局の決定が覆ったケースもあります。
私たちの憲法は、行政機関の決定を司法の場で争う権利を保障しています。
(第三十二条  何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。)
しかし、自国での迫害への今日から難民として日本の保護を求める者が、日本の法律の届かない国外、しかも恐怖の根源である出身国に無理やり送り返されるとしたら‥
それはもう迫害者の手に難民申請者を委ねることに他なりません。
<送還された人々の今>
送還された人のなかには自宅に帰ることができた人もいます。
しかし帰ることができず、離れた親戚の許に身を寄せたり、隠れ暮らす人もいます。
公然と市民生活を送ることは難しく、何人もの人が他国への出国の道を模索しています。
<残った人々そして私たち>
今回のチャーター便送還は、送還を免れ日本に残る難民、日本に家族や生活の根拠を築いた人々、送還された場合自国での生き延びることが困難な人々に「私たちは裁判を受ける権利がいつでも否定される」という大きな恐怖をもたらしました。
安全に暮らしたい、家族と暮らしたい、という人間的な願いにこの社会は背を向け続けるのか、ともに歩むのか。
「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」と私たちに語りかける憲法とともに私たちの課題を考えてみませんか。

日時  2015年10月3日(土)  13:30~16:00
場所  エル・おおさか(視聴覚室)
参加費  1000円

主催:「憲法違反の難民申請者チャーター機送還を問う」実行委員会
連絡先:TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会) try☆try-together.com(☆をアットマークに変えてください)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

会場地図






チラシ(画像)







関連

Wednesday, August 12, 2015

【告知】「仮放免者に在留資格を!」 9.9法務省デモ

VISA FOR US!
仮放免者に在留資格を!
法務省デモ
MARCH TO THE MINISTRY OF JUSTICE

2015年9月9日(水曜日) 2:30pm
Wednesday September 9  2015





集合: 日比谷公園  大噴水
Assemble: HIBIYA PARK Water Square





最寄り駅: 日比谷駅(東京メトロ) A14出口 / 有楽町駅(JR) 日比谷口改札
Station: HIBIYA St.(Tokyo Metro) Exit A14 / YURAKUCHO St.(JR) Hibiyaguchi Exit

一時旅行許可: 東京都千代田区
Application for permission for trip: “Tokyo, Chiyoda ward”


おおまち Omachi 090-3549-5890 / みやさこ Miyasako 090-6547-7628 / Elizabeth(English available) 080-4163-1978


◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆        ◇        ◆


  9月9日(水)に法務省にむけてデモをおこないます。

  2003年12月、政府の犯罪対策閣僚会議は「犯罪に強い社会の実現のための行動計画」を発表し、このなかで「不法滞在者」を5年で「半減」させるとの計画を打ち出しました。これは、非正規滞在外国人について、その滞在を事実上黙認したまま安価な労働力として利用するというバブル期以来の方針から、かれら・かのじょらを徹底的に摘発し、国外に追放しようとする方針へと転換するものでした(以上の経緯については、「仮放免者問題と強制送還について――この10年の入管行政をふりかえって」を参照してください)。

  結果的に、2004年時点で約25万人と推定されていた「不法滞在者」数は、5年後の2009年には約12万8千人~13万6千人(推定)まで減少します。法務省は、非正規滞在者の摘発・送還および在留特別許可による合法化によって、「不法滞在者の半減5か年計画」を達成したことになります。

  しかし、労働力等としてそれまで利用してきた非正規滞在者に対し、「あなたたちはもう用済みなので帰ってください」と言って使い捨てるかのようなご都合主義的な政策がゆきづまるのは必然でした。2010年には、収容された送還対象者3名が自殺し、また入国警備官による暴行をうけたガーナ人のスラジュさんが強制送還中に死亡する事件がありました。こうしたなかで、同年3月に西日本入管センター、5月に東日本入管センターで被収容者による集団ハンストが闘われ、おなじ年にそのハンスト参加者を中心に仮放免者の会が結成されました。

  以降、退去強制令書を発付されながらも、それぞれの事情で(難民であること、日本に家族がいること、滞在が長期にわたり日本にしか生活基盤がないことなどで)帰るに帰れない仮放免者・被収容者によって闘いが組織され、展開されてきました。こうした仮放免者らの在留にむけての闘いをまねいたのは、上に述べたような日本政府のご都合主義的な政策にほかなりません。

  この間、2009年7月の入管法改定時に約1,250名だった仮放免者数は、2012年10月末段階で約2,600名へと増え、2014年末で3,400名をこえるにいたりました。このように仮放免者数の増加が止まらないなか、法務省は、2013~2014年度にチャーター機送還を実施するなど、送還によって仮放免者数を減らす方針に依然として固執しているようにもみえます(チャーター機送還については、「【抗議声明】スリランカ・ベトナムへの集団送還について」を参照してください)。

  しかし、もはや送還という手段によっては仮放免者数を減らすことができないのはあきらかです。仮放免者は、就労がみとめられておらず、在留カードの発行を受けられないため国民健康保険等にも加入できずに高額の医療費がかかるために、病気があっても病院で治療を受けずにがまんしている人も多数います。3,400人以上の人を仮放免状態におきつづけ、その仮放免期間を長期化させているのは、人権・人道上、きわめて深刻な問題であるといわざるをえません。法務省は、すでに破たんしたことがあきらかな方針に固執するのではなく、仮放免者に在留資格をみとめ、その滞在を合法化するという方向でこの問題(仮放免者数の増加と仮放免期間の長期化)を早期に解決すべきです。

  9月9日のデモでは、法務省入国管理局に対し、「仮放免者に在留資格を!」とうったえます。ご参加・ご協力をおねがいします。

Monday, August 10, 2015

重傷者B氏に対する医療処遇問題について再度の申し入れ(東日本入管センターに対し)



  重傷を負ったB氏(フィリピン国籍)にたいする医療処遇問題に関して、7月31日(金)に東日本入国管理センター総務課にて再度の申し入れをし、申入書を差し入れました。前回の申し入れ(7月10日)については、以下の記事を参照してください。


  入管医療の構造的欠陥については、以下の記事も参照してください。



  以下、今回の申入書の全文です(申入書に記載した被収容者の名前と受診先の病院名は、匿名にしました)。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
申  入  書
2015年7月31日
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東日本入国管理センター所長  殿
仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
  私たちは、これまで数度にわたり本人その他の被収容者に聴き取りを行った結果、6月28日(日)にB氏が二段ベッドの梯子段から落下して脊椎損傷の傷害を負った件における貴センターの医療処遇に関して、以下の点において看過しえない問題があると考える。
1.負傷(6月28日(日)午前10時ころ)から24時間にわたり、診療を受けさせずに放置した点。
2.初診時(6月29日(月))、医師(A病院)が「1か月ほど入院したほうが良い」と言ったのにも関わらず、付き添いの入管職員が断っている点。
3.医師からは無理をするなと言われている(但しリハビリはするように言われている)のに、7月6日(月)に面会に呼ばれたとき、B氏のベッドから遠くに車イスを置き、そこまで歩かせている点。
4.上記3の点ともかかわるが、医療専門職の指導なしにB氏に「リハビリ」を行わせていると思しき点。言うまでもないが、時間・方法等についての医療専門職の適切な指導なしに患者が自己判断で「リハビリ」を行うことなどあり得ない。
5.B氏に対し、処遇職員が「あなたは骨は大丈夫、筋肉が痛んでいるだけでしょう」と実際に医師から下された診断と異なることを言った点。
6.B氏が痛み止めの薬(ジクロフェナクナトリウム)が強すぎて目まいがし、酔っぱらったような症状になって困っていることを訴えているのに、処遇職員が「我慢するしかないだろう、飲まないと痛くなるだろう」などと言い取り合わなかった点。
7.B氏は腰の痛み緩和のため温湿布を用いていたところ、7月11日(土)に朝昼併せて4枚用い、夜にさらにもう2枚使用させるよう処遇職員に求めると、一日4枚までと言われ使用を許されなかった点。なお、B氏は、貴センターの看護師から一日10枚まで使っていいと言われていた。そのことをB氏が言っても処遇職員はそんなことは聞いていないと言って結局使用を許さなかった。
8.初診時に医師が「2週間たってまだ痛んだらまた来てください」と伝えているにもかかわらず、2週間たってまだ痛みが引かないので病院に連れて行ってほしいとB氏が処遇職員に伝えても病院に連れて行かなかった点。
  上記の点のうち、1の点については、7月10日に既に申し入れた。
  2については、医師の診療行為に対する介入である点で、3,4,6,7,8については、傷病者に対する虐待ないし収容責任に基づき被収容者に適切な医療を施す義務の懈怠である点で、5,6,7,8については、医療の専門家としての資格も能力も持たない職員が勝手に医療判断を行っている点で、それぞれ重大な問題であると考える。
  これらの点は、既に私たちが貴センターの医療処遇における重大な問題として、何度も指摘してきているものである。したがって、上記の諸点は、これらの問題がなおも改善されないまま放置されてきていることを、如実に示すものであると私たちは考えている。
  したがって、私たちは、貴センターに対し、以上の点につき調査し、以後、このようなことの起こらないよう、医療処遇体制の早急な改善を行うことを求める。
以  上

Sunday, July 12, 2015

東日本入管センターが重傷者を放置――「日曜日なので病院に連れていくことはできない」???



  6月28日(日)、東日本入国管理センターで、収容されているフィリピン人のBさんが、二段ベッド上段から降りようとして梯子段から足を踏み外し、約1.6メートルの高さから落下しました。Bさんは背中(腰部)を強打し、脊椎の一部にひびが入り、またずれて曲がる重傷を負いました。

  ところが、同センターはBさんをすぐに病院に連れていくなどして診療を受けさせることなく、腰の激しい痛みに苦しむBさんをおよそ24時間放置しました。このときかけつけた職員は、「今日は日曜日なので病院に連れていくことはできない、明日まで待ってくれ」などと意味不明なことを述べたといいます。

  けが人を病院に連れていくのには、タクシーを呼ぶなり、場合によっては救急車の出動要請をするなり、さまざまな手段があるはずですが、東日本入管センターの職員たちはこれらを思いつかなかったのでしょうか。また、同センターの所長はじめ職員たちは、歩くことができないほどの重傷を負ったのが自分の家族や友人だった場合にも、「今日は日曜日なので病院に連れていくことはできない」などと言うのでしょうか。

  このような医療処遇上の義務懈怠(けたい)を非難し、あわせて休日における医療処遇体制の不備の改善を求める申し入れを同センター総務課に対しおこない、同時に申入書を差し入れました。

  内容は以下のとおりです(申入書に記載した被害者の実名は、イニシャル表記にかえました)。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

申  入  書
2015年7月10日
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東日本入国管理センター所長  殿
仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)

  私たちが本人及び同室又は同ブロックの被収容者に聴き取りを行ったところによれば、6月28日(日)午前10時ころ、貴センター9寮Bブロックにて収容されているB氏が二段ベッド上段から降りようとして梯子段の高さ1.6メートルほどの高さのステップで足を滑らせ、手でいずれかの箇所をつかんで体を保持することにも失敗し、そのまま背中から落下し、腰部を床に激しく衝突させ、また梯子段に右膝を打ち付けることによって腰部と右膝を負傷した。特に腰部の激しい痛みのため歩くことも出来なくなったB氏は、下段で寝ていた被収容者に頼んで処遇職員を呼んでもらい、職員にすぐに病院に連れて行ってくれるよう頼んだが、駆けつけた職員から、「今日は日曜日なので病院に連れていくことはできない、明日まで待ってくれ」と言われ、その言葉通り、翌日6月29日(月)の午前10時ころまで痛みに耐えてベッドに横になったまま待つことを余儀なくされた。医師の診断によれば、脊椎の一部がずれて曲がっており、またひびが入っているということであり、全治するまでどれほどの期間を要するかは医師にも分からないとのことであった。B氏は入院することなく、診察後は貴センターに返されている。B氏によれば、歩くことが全くできなくなったわけではないものの、腰の痛みが激しく、立って歩くことにより通常の生活を送ることは全く不可能になった。腰の痛みだけでなく、両足に痺れもある、とのことである。また、処方されている痛み止めの薬が強すぎるせいで目まいに悩まされており、服用した直後に左胸心臓の下あたりから左わき腹にかけて息もできないほどの強い痛みが生じたこともあった。
  事故当日、激痛で歩けないB氏に代わって、同ブロックの被収容者から私達に電話が来た。それは、事故の状況、B氏の容態、B氏が診療を要求して拒否されたことを私たちに伝え、早く病院に行けるようにしてほしいとの必死の要請の電話であった。
  私たちは、上記の経緯に強い遺憾の意を表明せざるを得ない。B氏のような重傷者を24時間医療を受けさせずに放置することは、被収容者の身体及び生命に関する人権への重大な侵害である。貴センターはB氏の移動の自由を奪って収容しているのであり、これにより自ら医師のもとを訪ねたり救急車を呼ぶことによって医療サービスを受けることができなくなっているB氏の身体の健康を保つ義務を負っているのである。この観点からすれば、貴センターはこの義務について重大な懈怠がある。
  そもそも、去年3月の貴センターにおける2人の被収容者の連続死亡事件、及び同11月の東京入国管理局における被収容者の死亡事件は、いずれも土曜日・日曜日に発生したものであった。医師不在時の急病者・重傷者の扱いは、被収容者の生命を預かる貴センターにとって喫緊の課題であったはずである。今回のB氏に対する処遇を通じ、貴センターがこの課題に何らの対応策を講じていないことが白日の下にさらけ出されてしまったと私たちは見ている。この観点からも、私たちは貴センターに対し、強い遺憾の意を表明するものである。
  可及的速やかに何らかの対策を講じ、被収容者及び私たちを含む一般市民に対し、その内容を明らかにしていただきたい。

以  上


Saturday, June 20, 2015

【転載】第33回 北関東医療相談会のご案内

  無料の医療相談会が、6月28日(日)に群馬県太田市でひらかれます(「NPO法人 北関東医療相談会」の主催です)。

  くわしくは、長澤(ながさわ)さん(TEL: 080-5544-7577)まで。会場までの交通費について、援助の必要なかたは電話で相談してくださいとのことです。

  リンク先に、日本語ほかの言語によるご案内(英語、韓国語、ポルトガル語、タガログ語、ベトナム語、タイ語、スペイン語)もあります。


第33回 北関東医療相談会のご案内
http://npo-amigos.org/#02

  以下、転載です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
  • ◆ 日時  2015年6月28日(日)12:00~14:30
  • ◆ 費用  無料 
  • ◆ 場所  太田公民館東別館 
  •        太田市東本町53-20 
  • ◆ 検査項目 胸部X線、血圧、血液検査、尿検査、問診
  •        身体測定、子宮頸癌検査
  • ◆ お問合せ先 080-5544-7577(長澤)19:00~22:00(毎日/予約可)
  • ◆ 注意事項
  •  ・検査前の食事を摂った時間を教えてください。
  •  ・時間を守ってください
  •  ・妊娠中の方、及び12歳以下の方はX線撮影を受けられません
  •  ・X線撮影を受ける方はTシャツを着てください。金具のついた服は避けてください。
  • ◆ その他  キッズルームあり。子ども預かります
  •        弁護士による無料法律相談あり
  • ◆ 結果説明会のお知らせ 
  •  ・日時  2015年7月19日(日)13:00~15:00
  •  ・場所  太田公民館東別館(こられない方は郵送可)
  •  ・連絡先 080-5544-7577(長澤)
  •  
  • ◆ 主催 NPO法人 北関東医療相談会
  • ◆ 協賛 群馬県健康づくり財団
  • ◆ 後援 群馬県・太田市・群馬県観光物産国際協会・群馬弁護士会
  •      カトリック群馬使徒職協議会及び栃木県使徒教職評議会
  •      赤い羽根・三井物産
  •      青年海外協力隊群馬県OB会
  •      上毛新聞

申し入れへの対応等について申し入れ(東日本入管センターに)

6月17日(水)、東日本入国管理センターに以下の申し入れをおこないました。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
申  入  書
2015年6月17日
法務大臣  殿
法務省入国管理局長  殿
東日本入国管理センター所長  殿
仮放免者の会(関東)
BOND(外国人労働者・難民と共に歩む会)
一、  被収容者家族・支援者と処遇部門との連絡について
  現在、東日本入国管理センターでは、被収容者の病気・医療をめぐって、窓口を総務課に一本化し、被収容者の家族や支援者が処遇部門と情報交換、質問、申入れなどできない運用となっている。このような運用のあり方について、私たちは大いに問題を感じており、その変更または復元を求めたい。
  東日本入国管理センターにおいて昨年3月末に起きた、イラン人男性及びカメルーン人男性の被収容者連続死亡事件は記憶に新しい。同事件は、医療その他の被収容者の処遇の劣悪なあり方、そして退令発付処分を受けた外国人に対する極めて残忍な長期収容の常態化といった、同センターの諸々の不備・怠慢、そして非道の帰結であることは疑いえない。この点については、既に過去数度の申し入れにおいて指摘してきたところであるが、法務省入国管理局自身が、同年11月20日の記者会見において、カメルーン人男性被収容者の死亡については医療態勢に問題があったことを認めている。当然ながら私たちは、もう一人の死者であるイラン人男性被収容者への対応が適切なものであったとする同記者会見における法務省入国管理局の見解を、到底容認しがたいものとしてとらえているが、少なくとも連続死亡事件の一部については入国管理局自身が医療態勢の不備を認めているのである。このことは重要である。
  いみじくもこの発表の2日後の11月22日に、今度は東京入国管理局にてスリランカ人男性の死亡事件が起きてしまったことに端的に表れているように、入国管理局による収容が深刻な不備を抱えていることは、もはや隠しようもない。被収容者とその家族や友人など被収容者に深いかかわりを持つ人たちはもちろんであろうが、私たち支援者もこのように頻繁に死亡者を出すような収容のあり方に、甚だしい憤りと悲しみ、不安を感じている。先に長期収容の問題に触れたように、私たちはまずもって収容そのもの及びその長期化自体の非道を非難するものではあるが、同時に、多数の人たちの収容を行う入国管理局には収容を適切に行う責任があり、入国管理局は医療をはじめとした処遇を健全化すべきであることもまた当然のことである。
  以上のような認識を前提に、私たちは、東日本入国管理センター処遇部門が、必要なときには、被収容者家族その他の近しい者及び支援者からの問い合わせ、申し入れに直接に応じることができるよう、運用を変更ないし復元をすることを求める。これは、何よりもまず被収容者の身を案ずる家族等や支援者の切実な思いから出る要求ではあるが、入国管理局が収容責任の観点から上記のような問題に真摯に対応しようとするならば、この求めに応じることは決して無意味ではないはずである。



二、  面会の以前の状況への復元
  現在、面会において、同ブロックの被収容者2名までしか認められていない。①同時に面会できる被収容者数を5名までに戻すこと、②2010年8月まで認められていた3寮5名までの同時面会できるよう運用を戻すことの2点を申し入れる。
以  上

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【関連記事】

1.東日本センターでの被収容者連続死亡事件について


2.東京入管でのスリランカ人死亡事件について



3.入管医療の構造的欠陥について




Saturday, May 30, 2015

【連載】「難民偽装問題」をめぐる読売報道の問題点(第2回)――だれが技能実習制度を形骸化させているのか?

「難民偽装問題」をめぐる読売報道の問題点(第1回)――偽装された関心としての「難民保護」のつづきです。)


1.はじめに

  前回記事では、難民認定制度のいわゆる「偽装申請」問題に関する読売新聞による一連の報道が、一面的かつ支離滅裂であり、また、国の政策がもたらしている問題の責任を「偽装難民」(と読売が決めつける外国人)に一方的に転嫁するものであることを、指摘しました。

「一面的」であるというのは、読売報道が、日本政府の難民保護の実情・実績についての検証をまったく欠いたまま、あきらかに入管当局のリークと思われる情報に無批判にもとづき、その意向に忠実にそった報道・主張をおこなっている点です。

  同時にこれが「支離滅裂」としか評しようがなかったのは、読売報道が「救済されるべき難民の保護の遅れ」を危惧しているかのようにいっぽうでは言いながら、実際問題として難民認定のわくをますますせばめ、また、難民申請者の生活をいっそう困窮化させることにつながる制度変更をすすめようとする論調をとっていることについてです。難民認定制度・難民保護政策をいま以上に骨抜きにするような制度変更を主張しておきながら、その口実に「救済されるべき難民の保護」をかかげるのですから、その支離滅裂さはほとんど悪ふざけにしかみえないほどです。

  毎年の難民認定数のきわだった少なさなどにあらわれているように、日本には難民保護政策の不在と言ってもよいような現状があります。よく知られているこうした現状を、読売は意図的にふれずに無視しているのか、あるいは、取材をおこたったために知らないのか、いずれかです。いずれにしても、一連の記事を執筆した読売取材陣に、「救済されるべき難民の保護」についての真剣な関心などないのはあきらかです。読売は、自分たちが大事だと思ってもいない難民保護ということを、ご都合主義的にみずからの主張の大義名分にかかげてみせるわけです。不誠実きわまる姿勢だと思います。報道人としての仕事にすこしはまじめに取り組んでほしいものです。




2.技能実習制度を「形骸化」させているのは「偽装難民」なのか?

  今回は、読売の「偽装難民」報道が、日本の政策的・制度的な矛盾を、外国人に一方的に責任転嫁したものであることを、その技能実習制度についての記述にみていきます。(以下、[a]~[s]の記号は、前回記事につけた一連の読売報道の記事一覧にもとづいています)。

「窮地の難民認定制度  改正で申請急増  就労目的で悪用か」との見出しのつけられた2月8日の[h]記事は、難民認定制度と技能実習制度の両制度をゆるがすものとして「偽装申請」を問題にしたものです。

  日本の難民認定制度が外国人に悪用されている偽装申請問題は、制度の大きなゆがみを浮かび上がらせた。外国人技能実習生による偽装まで横行する現状を前に、法務省は制度の見直しを迫られている。
(中略)
  申請者の急増は審査期間の長期化を招いており、昨年の統計で平均6.3か月。異議申し立てすれば、さらに平均2年5か月かかる。就労目的の外国人にとっては都合のいい状況だが、認定基準を満たす難民の救済に遅れが出ている。
  外国人技能実習制度で来日した実習生が逃亡し、難民申請したケースも相次ぎ判明。実習生による申請は10年の45件から、14年(1~11月)は391件に増えた。難民認定制度のゆがみは、実習制度の形骸化にもつながりかねない。

  こうした文脈で、難民認定制度の「悪用」、あるいは技能実習制度の「形骸化」といった言葉が出てくることは、これらの制度の運用実態を多少なりとも知っている者からすると、強い違和感をおぼえずにはいられません。

  このうち、難民認定制度については、前回記事でのべたとおりです。読売は「難民認定制度のゆがみ」などと言って、あたかも「偽装申請」によってはじめてこれがゆがめられつつあるかのように書いています。しかし、読売の言うところの「ゆがみ」が生じる以前の難民認定制度がどう機能していたと言うのでしょうか。読売はこれについていっさい沈黙をきめこんでいます。2013年の1年間に難民認定されたのはわずか6人であったといった現実をふまえるとき、「認定基準を満たす難民の救済に遅れが出ている」などという文言は、たちのわるい冗談にしかみえません。

「実習制度の形骸化にもつながりかねない」についても同様です。技能実習制度は、日本政府自身こそがその形骸化を率先してすすめてきた経緯があり、いまさら「形骸化」しうるほどの実質など残っていません。

厚生労働省は、技能実習制度の「目的」をつぎのように説明しています(技能実習制度 |厚生労働省)。

  技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。

  こうした公式のタテマエとはうらはらに、技能実習制度が農業・漁業・建設業・製造業などの分野において人手不足をおぎなう手段としてもちいられてきた実態は、よく知られています。さらに、各紙報道によると、政府は現在、被災地の復興や東京オリンピック関連施設の建設に必要とされる労働者や、社会の高齢化がすすみ人手不足の深刻な介護労働者を、技能実習制度をつかって導入する方針であると伝えられています。政府はいまや、人手不足対策として技能実習制度を利用することを隠そうとすらしていません。本来の趣旨である開発途上国への技術等の移転という目的からは完全に逸脱した制度運用を公然と打ち出しているわけです。技能実習制度を「形骸化」させているというのなら、まずは政府によるこのような脱法的とも言うべき政策をこそ批判すべきでしょう。

  日本政府は、外国人労働者の受け入れを「専門的な知識,技術,技能を有する外国人」に限定し、公式には、いわゆる非熟練労働者のそれについては認めてきませんでした。しかし、次回記事でみるように、政府は80年代のバブル期以来、公式には否定している非熟練労働者の導入を、脱法的な手法をもちいてくりかえしおこなってきました。

  技能実習制度もまた、そうした脱法的手段のひとつとして理解すべきものです。実際のところ、途上国への技術移転といった制度本来の趣旨など、だれひとりとして真に受ける者のいないような名目でしかありません。実態としては政・財・官ぐるみでの非公式的な外国人労働者導入の手段として利用されてきたのが技能実習制度なのです。

  もっとも、読売の取材陣は、こうした実態を認識していないというわけではありません。

  一連の「難民偽装」をめぐる記事のうち、[i]~[m]の5回の連載においては、いわゆる「偽装申請」の背景に、低賃金の労働力を求める企業やそのニーズにこたえる人材派遣会社の存在を指摘し、「国は、外国人労働者を正面から受け入れる仕組みを整えてほしい」との人材派遣会社社長の声を紹介しています([k]記事)。また、「外国人労働者は急増する一方で、労働環境を守る仕組みは追いついていない。特に、(略)実習生を巡る状況は深刻だ」と指摘したうえで、滝沢三郎氏のつぎのコメントを紹介してもいます。「日本は表向き、『移民や単純労働者は入れない』と言いながら、実習生などの形で低賃金の労働者を確保してきた。このような『偽装政策』が続く限り、実習制度や難民認定制度の乱用は避けられない」([l]記事)。

  こういった実態を認識しているならば、技能実習制度は、滝沢氏が「偽装政策」と呼ぶ日本の政策によってすでに「乱用」されている、と言うほかありません(注1)。ところが、読売は一連の報道で、制度が本来の趣旨から逸脱している責任を、あくまでも外国人の「偽装申請」者の側に一方的に転嫁する論調に執着しています。読売の議論は、外国人労働力導入のありかたについて、従来の制度・政策を批判的に見直そうという方向にはすすみません。かわりに、難民審査のプロセスのほうを変えようという話に、それも、入管が難民申請を「速やかに退け」て退去強制手続きに入ることを容易にするような方向へとこれを改変しようという話に、論点がすりかえられるのです。

  読売がやっているのは、あきらかに政府が主犯として「形骸化」させている制度について、その「形骸化」の責任をでたらめに外国人に押しつけようというものです。しかも、政策の矛盾について読売は知らないわけではないわけですから、外国人を標的にした差別煽動を意図的におこなっているということになります。




3.現代の奴隷制としての技能実習制度

  いわゆる「偽装申請」問題に関して、読売の報道姿勢は奇妙なものです。読売は「難民認定制度のゆがみ」と言い、また、「実習制度の形骸化」と言います。いわば既存の制度がゆらぐということについては、関心をよせているようにもみえなくはありません。しかしそのいっぽうで、既存の制度のなかで外国人がどのようにあつかわれてきたかということについて、読売の記者の問題意識はきわめて希薄なのです。

  一連の記事の執筆者たちが口先では「救済されるべき難民の保護」などと述べておきながら、実際のところ、難民の保護にはまったく関心をはらっていないという点は、前回記事でみてきたとおりです。かれらは「難民認定制度のゆがみ」とやらを憂慮してみせるくせに、その制度が難民を保護するものとしてどう機能している(あるいは、機能していない)のかという事実には、具体的な関心をいっさい示さないのです。

  結局のところ、読売記事が述べているのは、“難民を保護するための制度が、難民を保護するための制度として機能不全におちいりつつあり、難民が保護されなくなってしまう”というようなことではないのです。読売の執筆者たちにとって、難民保護など、なんの関心もない問題なのですから。かれらが言っていることは、ようするに“制度を悪用する不届きな外国人が気に入らない”というミもフタもない話にすぎません。というのも、前回記事でみたとおり、制度のこれまでの運用実績や現在の実態、「悪用」によって生じている具体的な被害などが、読売報道において検証されることはないのですから。「難民認定制度のゆがみ」などと読売が言うのは、事実による裏づけのない、ご都合主義的なあとづけの理屈にすぎないのです。

  技能実習制度についての読売の記述も同様です。もっともらしく「制度の形骸化」と言いますが、そう言う読売こそ「形骸化」した議論をしています。政府による「実習制度の形骸化」とも言うべき実態を読売は知りながら、あえてこれを問題にしないのですから、読売にとって、制度の本来の趣旨など、これがいかに軽んじられようが、どうでもよい問題なのでしょう。そして、「実習制度の形骸化」について、読売は、政府の責任は不問にふすかわりに、外国人をその“犯人”に仕立て上げて追及することは忘れないのです。読売が気に入らないのは、「実習制度の形骸化」そのものではなく、技能実習生が「逃亡」すること、また「逃亡」した技能実習生が難民申請することなのです。

  さて、この点について、記事にそくして具体的に検証していきます。

  一連の『読売』の記事を読んでおどろかずにいられない点のひとつは、技能実習生が奴隷的な状況に事実上おかれていることを問題にしていないのみならず、これを追認する記述さえいくつもみられることです。

  たとえば、「難民偽装で『賃金3倍』  逃亡後に転職  人手不足  企業も依存」との見出しのつけられた[d]記事。

  途上国の支援を目的とした国の制度で来日した外国人実習生の一部が、高い賃金を求めて難民認定の偽装申請に走っている実態が明らかになった。外国人ブローカーを介した難民の偽装問題。実習先から逃げ出したネパール人たちは、人材派遣会社を通じて工場に「転職」していた。

  なんという悪意にみちた書き方でしょう。「高い賃金を求めて」「転職」したのが、まるでなにか悪いことをしたかのような書きぶりです。

「高い賃金」などの、よりよい待遇を求めて「転職」するのは、通常の労使関係であれば、なんら責められるいわれのない、労働者としてあたりまえの行為であるはずだという点を、まずは確認しておきましょう。

  通常の労使関係においてはたんなる「転職」にすぎないことが、技能実習制度のもとでは、「逃げ出した」「逃亡」ということになってしまうのです。というのも、技能実習制度は、タテマエのうえでは、ここで読売が書いているとおり「途上国の支援を目的とした国の制度」であって、したがって実習生は、お金をかせぐために来たのではなく、技術等をまなびに来たのだということに、名目のうえではなっているからです。入管法上も、実習生は実習先以外で働くと、「資格外活動」とされて摘発の対象になります。

  このように、日本の政府や実習先である企業等は、実際には、実習生を低賃金の労働力として利用しておきながら、他方ではその労働が「実習である」というタテマエを都合よく持ち出すことで、実習生の労働者としての権利を否定し、実習先の職場に縛りつけることが可能になります。技能実習制度とは、通常の労使関係のいわば例外的な領域を作り出し、そこでの事実上の奴隷的拘束を「合法化」する装置といってよいでしょう(注2)

  上に引用した読売の記述は、まさにこのご都合主義的な手法を正確になぞったものです。自分自身がないがしろにしているタテマエを、実習生に対する事実上の奴隷的拘束の現実を正当化する、あるいはこの現実に知らんぷりをするためだけに都合よく持ち出してくる、という恥知らずな手法です。

途上国の支援を目的とした国の制度で来日した外国人実習生の一部が、高い賃金を求めて難民認定の偽装申請に走っている」と読売は言っています。まさにこの制度の趣旨に完全に反する脱法行為を日本は政府主導で推し進めているわけですが、読売はこれについては「途上国の支援を目的とした制度で外国人実習生を来日させた国が、低賃金労働力を求めて偽装政策に走っている」とは書きません。そのかわりに、「外国人実習生の一部」を非難する文脈でのみ、技能実習制度は「途上国の支援を目的とした国の制度」であるというタテマエを、唐突かつ都合よく持ち出すのです。こうして、労働者が「高い賃金を求めて」「転職」したという、それ自体は非難する理由などどこにもない、ありふれた行為が、あたかも重大な悪事ででもあるかのように読者に印象づけられるわけです。

「難民偽装で『賃金3倍』」という見出しもひどいものです。なんの話をしているのかと記事本文を読んでみると、ネパール人女性の「実習先以外で働きたくて難民申請した。実習先でもらえたお金は月5万円。今は3倍に増えて幸せ。借金も返せるようになった」という発言が紹介されています。

  問題意識が完全に転倒しているとしか評しようがありません。記事の見出しにすべきなのは、「賃金3倍」のほうではなく、このネパール人実習生が「実習先でもらえたお金は月5万円」にすぎなかったという事実、また彼女が「逃亡」せずに「実習」を続けていたのでは返せないほどの借金を負っていたという事実(注3)のほうでしょう。月5万円しか賃金を払わない職場から15万円の職場に移ったのが「逃亡」だと非難されるべきだと言うのなら、それは奴隷制度を容認・正当化するにひとしいことです。

  こうした記事の書きぶりには、執筆した記者の、また、情報を記者にリークして記事を書かせている入管官僚の、外国人に対するぬきがたい差別意識がみてとれます。外国人が実質的な奴隷としてあつかわれていても、これをそういう事実としてみることのできない認知のゆがみ、あるいは、相手が外国人ならば労働者としてではなく奴隷に対するようなあつかいをしてもよいのだという価値観。技能実習制度をめぐる読売の記述にあらわれているのは、こうした人種差別的な認識・価値観にほかなりません。




4.「就労目的で悪用」――制度・政策の矛盾を外国人に転嫁するレトリック

  さて、今回最初に引用した[h]記事の見出しを思い出しておきましょう。それは、「窮地の難民認定制度  改正で申請急増  就労目的で悪用か」というものでした。ここには、以下の3つの前提があることを指摘できます。第1に、年間5,000件の難民申請には、「偽装申請」とそうでない申請があり、「偽装申請」した者は難民に該当しないはずだという前提。第2に、「就労目的」とみられる申請は「偽装申請」であるはずだという前提。第3に、「偽装」でない申請者は「就労目的」ではないはずだという前提。

  3つのいずれも、こう単純に言えるようなものではなく、それぞれ批判的に問い直す余地のおおいにある命題です。

  まず、ある人の難民申請が「就労目的」にみえるということが、その人の申請が「偽装」であるということを意味するわけではない、という点を確認しておきます。

  難民弁護団連絡会議が指摘しているとおり、「たとえその者に難民該当性がある場合であっても、問題となっている事象が申請者にとってあまりに日常的過ぎるために本人が気づいていない場合や、本国での迫害を理由として貧困においやられている場合などがあり、結果として、日本にどうして来たのかと問われれば、『働きにきた』という回答になることもあり得ます」。

「就労目的」とみられる申請が「偽装」とはかぎらないし、ましてや「就労目的」とみなされるからといってその申請者が難民に該当しないと言える根拠などないのです。「就労目的」とみられるかどうかということを、「偽装申請」かそうでないかという判断、さらには、難民に該当するかいなかという判断にむすびつけることそのものが、乱暴な議論といえます。難民該当性は、個々の難民申請者がその出身国・出身地域においておかれた状況を、個別にていねいに審査することによってのみ評価できることがらです。そこに、申請が「就労目的」なのかそうでないのかという詮索をさしはさむのは、審査に予断をもちこむことであって、公正な難民認定審査の観点からひかえなければなりません。

  たしかに、難民として認定され庇護される必要を自身で感じていない人が、もっぱら「就労目的」で難民申請をするということがあるならば、それは難民認定制度の趣旨から逸脱した行為であるとは言えるでしょう。しかし、就労という行為そのものは、なんら非難されるようなものではありません。「就労目的」の難民申請によってであれ、就労資格を得たうえでの外国人の就労そのものは合法です。就労資格のない場合であっても、たんにその就労が「違反」であるということにすぎません。「不法就労」は、被害者が存在しないどころか、むしろ、その労働によって社会的な富がうみだされ、また納税によって公共の福祉に寄与するものと言うことさえできます。この点で、不法化された就労は、合法的な就労となんらかわりのない社会的に有益な行為と言えるのではないでしょうか(注4)

  就労という行為そのものには非難すべきまともな根拠などないからこそ、読売は、「就労目的」の「偽装申請」が「難民認定制度のゆがみ」をもたらしつつあるなどという、デタラメかつこじつけの理屈を持ち出しているのでしょう。「難民認定制度のゆがみ」を憂慮しているかのような読売の議論が、真剣なものではまったくなく、また事実を根拠としたものでもないということは、すでにみてきたとおりです。就労をみとめるべきでない(と読売が考える)外国人が「就労している」という事実について、外国人を攻撃するためだけに、読売はご都合主義的に難民保護という観点を持ち出しているにすぎません。

  こうした読売の論調は、外国人労働力の導入・利用をめぐる日本の制度・政策がもたらしている問題の原因を、一方的に外国人労働者の側に転嫁しようとするものです。読売は、「難民偽装で『賃金3倍』」などという悪意にみちた見出しにみられるように、外国人が日本で就労することそのものに否定的なレッテルをはる悪質な印象操作をくり返しています。そのうえで、「就労目的」なる奇怪な用語をひねりだして、もっぱら外国人労働者の側の意思、外国人労働者の受け取っている(と読売が想定する)利益へと、読者の注意をひきつけます。もちろん、かれらが、日本で働こうという意思をもち、またその利益を期待して、日本にやってくるのは事実です。しかし、読売は、もう一方の当事者である、かれらを日本に呼びこみ、利用する側の目的と利益については、まったくふれていないわけではないものの、ほとんどこれを問題にしません。こうして、呼び込んでいる側の責任を問わずにその主体性を消去することで、呼び込まれた側(外国人)への一方的な責任転嫁が容易になるのです。まるで、外国人が、勝手に望んで日本にやってきて、その望みどおりに勝手に利益をえて、その過程で日本の制度を勝手に悪用して形骸化させているかのように。まるであたかも、外国人が日本の法秩序をゆるがせる加害者であり、日本国と日本人はその被害者であるかのような、まったく実態とはさかさまな構図がえがかれるのです。

  読売は、ミャンマー人実習生33人が茨城県内の実習先から1年以内にあいついで「逃亡」した事例について報じ、「実習制度が来日の『手段』として[ミャンマー人実習生に]利用された可能性がある」などと書いています([g]記事)。これは、あべこべな責任転嫁と言うべきです。この記述においては、実習制度が、労働者を来日させる手段として、むしろ日本政府と日本の受け入れ企業等によって利用されているのだという現実は、まるでなかったことにされます。ミャンマー人労働者を呼び込んでいる者たちの目的と利益は消されるいっぽうで、みずからの目的と利害関心にしたがって日本の制度を悪用している外国人技能実習生というイメージが強調されるわけです。

  かくして、日本の国内産業が外国人労働者を必要としており、日本側がこれを導入するために法制度の抜け道を利用している、また抜け道を作り出しているという現実は、読売報道において「外国人が就労目的で法制度を悪用している」というストーリーにすりかえられます。

  では、読売が執拗に追及している難民認定の「偽装申請」問題とは、いったいなんだったのでしょうか。これもまた、外国人労働力を脱法的に導入してきた日本の制度・政策の矛盾がまねいたものにすぎないのです。次回記事ではこの点を、80年代のバブル期以来、日本政府が外国人労働者をどのようにあつかい利用してきたのかという経緯にもふれつつ、みていきます。




《注》

1.読売新聞は、外国人介護職についての「技能実習制度の活用は疑問だ」と題された社説(2月12日付朝刊)において、「技能実習制度は発展途上国の人たちに日本の技術を伝える制度だ」としたうえで、「労働力確保を目的とするのは、制度の趣旨にそぐわない」とのこれ自体は筋のとおった批判をおこなっています。技能実習制度をつかっての介護分野への外国人受け入れを厚生労働省が検討していることを批判したこの社説は、しかし、「介護サービスの質が低下」することを憂慮したものであって、外国人技能実習生の権利や安全がきちんと守られるのかという観点からの批判ではありません。読売が、外国人技能実習制度の運用実態についてこれが制度本来の趣旨から逸脱していることを問題にするのは、もっぱら“外国人受け入れが日本社会・日本人に否定的な影響をおよぼす”可能性を危惧する文脈にかぎられています。労働者の導入を「技能実習」であると偽装する制度・政策のために、技能実習生が「奴隷」と言ってまったく言い過ぎではないような従属的な地位に置かれている事例は、実習生・元実習生をすこし取材すれば、いくつも出てくるはずです。読売の取材者たちがこれに気づいていないわけがないのです。ところが、こうした事実について「制度の趣旨にそぐわない」とのかれらの批判意識は、なぜか眠りこんだように働かなくなってしまうようなのです。


2.技能実習制度について、日本弁護士連合会(日弁連)は、「理念と実態の乖離,受入れ機関を特定された在留資格であることなどによる奴隷的状態にも至りうる支配従属関係といった,外国人研修・技能実習制度の本質的問題点」が制度改正によっては解消できないものであることを指摘し、その廃止を提言しています。
  この日弁連の提言は、実習生の人権擁護の観点から技能実習制度の本質的な欠陥を詳細かつ網羅的に指摘しており、その全文を一読することをおすすめします。


3.渡日時に送り出し機関等から多額の保証金・手数料要求され、これを支払うために農地を担保にするなどして膨大な借金をしてきた技能実習生の事例は多数あります。技能実習制度は、こうした人身取引とも言うべき事案の温床にもなっています。


4.「不法就労」が問題なのは、不法化された就労に従事する外国人労働者にとって、不安定かつ不利な就労をしいられることが多いという点にこそあります。外国人労働者、とりわけ就労資格のない労働者は、その法的な身分ゆえに、賃金が安くおさえられがちであり、また、不当あるいは不法な労働環境、雇用主による違法なハラスメントや暴力をがまんしているケースが多々あります。