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Monday, July 2, 2012

東日本入管センター被収容者48名より――処遇改善の「嘆願書」

  すでにお知らせしているとおり、7月9日に「在留カード反対 7月行動」をおこないます。つぎの月曜日です。
  日比谷公園の噴水まえに13:00に集合し、その後、デモ行進と法務省入管への申し入れをおこないます。みなさまのご参加をおまちしております。


  さて、6月に東日本入国管理センター(茨城県牛久市)の9Aブロック被収容者が、センターの所長あてに処遇改善の「嘆願書」を提出しております。この「嘆願書」は、いまおよそ50名いる9Aブロックの被収容者のほぼ全員(48名)が署名する大規模なものです。
  以下に「嘆願書」の全文を転載し、解説をくわえました。「嘆願書」の注(青字で書いたところ)は、当ブログの管理者によるものです。


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嘆願書

東日本入国管理センター所長殿へ

  私達は9Aブロックの収容者です。色々と聞き入れてもらいたい事が有り、皆に話をして嘆願書を書く事にしました。

一、電話機の台数を増やしてほしい。
  今、現在、9Aブロックでは電話機が4台しかなく、電話をする時に混雑率が凄く、現在9Aブロックは約50人収容されて居る所です。こんなに居て4台は少ないです。せめてもう2台、電話機を増やしてください。電話機の所にイスをおいて下さい。

二、「東日本入国管理センター被収容者処遇細則」の中で、第45条の執務時間外の電話について書いて有ります(*注1)
  私達の加速や保証人等は昼間は仕事をしている人達が多く、昼間に電話に出る事が出来ない人達です。今後どのように生活をするか等、仮放免の事等色々と話す事が有るのに執務時間外の電話をさせてくれません。入管の回答はいつも、時間内に出来るなど、真面目な検討をやってくれません。私達としては大事な話だと思うからお願いしているのに、本当に真面目な検討をやってくれないのはおかしな話です。なので真面目な検討をしてほしい。

三、一と二の総合で話しますとフリータイム(*注2)の時間を6時から9時まで、フリータイムを延ばしてほしい。
  フリータイムの時間を延ばしてもらえれば、電話もできるしストレス等も減るし問題が無くなります。
  とくに電話が出来るようになれば家族や保証人等とも話が出来るので仮放免等の手続き、話も進むのです。
  フリータイムの6時から9時まで延ばすにあたって毎日は無理なのは分かって居ますので一週間に2日のペースでよいのでよろしくお願いします。警備の都合も有ると思いますから、9A9Bブロックを土曜日、日曜日にやってもらい、ほかのブロックは違う日にやれば警備の都合も何とかなると思うので、フリータイムの真面目な検討を心からお願いします(*注3)。フリータイムが出来るのであれば、夜のクスリの時間がかさなりますが、部屋ごとに順番ごとに前に呼んでもらえれば早く終わるし、警備官も少しは手が空くし、別の事も出来ると思います。色々と問題が有りますが、今後の事を考えれば一歩足を出す事も私達の為にも成るし、入管のこれからの未来の警備や収容者達の良い方に進むと思い、私達はこれに署名、部屋番号等を書いて居ます。私達は入管とケンカをするつもりは無いし、過ごしやすい収容生活をしたいだけです。上記にも書いて居ますが長期収容をされていますとストレスが上がる事が有るので、フリータイムが出来れば落ちついて生活する事が出来ると思いますので、本当に誠によろしくお願いします。お手数だと思いますが真剣な検討をよろしくお願いします。

四、録画のビデオは夕方に面白いのをお願いします。
  昼間はそうじや洗濯等をやる事が多く、見る事が出来ません。昼は本当に色々とやらなければいけない事が多きのでよろしくお願いします。

※本当に色々と無理な事は書いて居るつもりは有りません。考えて出来ると思って私達は嘆願書を書いて居ますので、真剣な検討を心からお願いします。

  乱文乱筆となりますがどうかよろしくお願いします。

平成24年6月11日(月曜日)

(以下、署名者48名の部屋番号・国籍・名前――省略)
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*注1
「東日本入国管理センター被収容者処遇細則」(PDF)第45条は以下のとおり。
 
(執務時間外の電話による通信)
第45条  看守責任者は,執務時間外に被収容者から電話による通信許可の申出があった場合又は外部の者から被収容者に対し電話による通信許可の申出があった場合において,急速を要し,かつ,やむを得ない事情があると認めるときは,処遇部門首席に報告し,その指示を受けなければならない。

*注2  フリータイム
  東日本入管センターでは、現在9:00~12:00、13:00~16:30の時間帯をフリータイム(開放処遇)にしています。この時間帯以外は被収容者は居室にカギをかけてとじこめられ、電話をかけること、他の居室の被収容者との会話、洗濯、シャワーなどがゆるされていません。

*注3  「9A9Bブロックを土曜日、日曜日にやってもらい、ほかのブロックは違う日にやれば警備の都合も何とかなると思うので……」
  このくだりは、「嘆願書」を執筆・提出した9Aブロックの被収容者たちが、自分たちのブロックよりも他のブロックの被収容者の便宜を優先して改善することを要求する意図がこめられていると推察されます。
  東日本入管センターの収容所では、現在、12の寮(ブロック)が使用されており、ブロックごとに被収容者がわけられ収容されている。
9Aブロック被収容者がここでのべているのは、
保証人など外部のひとに電話するときに、平日の夜に電話できないことでたいへんな不便をしいられていること
だから、電話のできるフリータイムを夜間まで延長してほしいということ
つまり、まずは平日の夜に電話したいということが自分たちの切実な必要性としてあるのだけど、その平日夜の電話の許可は、同じようにこまっている他のブロックでまずは実現してもらってかまわない。
  ようするに、自分たち9Aブロックのフリータイムの延長は、便宜の向上が比較的小さいと言える土曜・日曜の夜にしてもらってかまわないということ、自分たちは9Aブロックにかぎらず東日本入管の被収容者「全体」の処遇改善をもとめているのだということを、言っているのだと推察できます。

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解説

  今回の9Aブロックの「嘆願書」を読んでまず印象深いのは、「嘆願書」が東日本入管センターにたいしくりかえし「真剣な検討」をもとめていることです。このブログでたびたび報告してきたように、入管の収容施設の被収容者たちは、これまでくりかえし連名での嘆願書や意見書を提出してきました。また、嘆願書・意見書のかたちをとらなくても、被収容者たちは処遇改善の要求や意見を職員たちに日々うったえてきました。

  ところが、入管側は被収容者たちを人間ではなくたんなる管理対象とみなし、かれら・かのじょらのうったえにたいし真剣にとりあおうとしてこなかった、ということ。そのことが、「嘆願書」でくりかえされる「真剣な検討をよろしくお願いします」の文言にあらわれているのだと言えます。

  しかし、どうでしょう?  入管側がたんに管理しとりしまるべき対象とみなし、実際にそうあつかっている被収容者たちは、ほんとうに管理しとりしまらなければならない対象なのでしょうか?  「嘆願書」の文面からわかるのは、他のブロックもふくめた被収容者全体の処遇をよりよいものにしようと意見を言う収容者たちの姿、それどころか、自分たちをとじこめ苦しめている入管の職員がもっと仕事をやりやすくなるように配慮すらしている被収容者たちの姿です。このひとたちに対し、高圧的・威圧的に管理・統制して自由をうばう必要がどこにあるのでしょうか?  このひとたちが、自分たち自身のことを民主的にまた自由にきめていくことができない存在だと決めつけることのできる理由がどこにあるのでしょうか?

  東日本入管センターに収容されているひとたちの多くは、収容が長期にわたっています。東京入管(東京・品川)や東京入管横浜支局などに収容されたものの、また虐待といって言いすぎでないほどの苛酷な収容にもかかわらず、帰国を選ばなかった/選べなかったひとたちが、茨城県の東日本入管に移収されてきます。

  帰国するとパートナーや子ども、友人たちと離ればなれになってしまうひとがおり、帰国すると殺害や監禁のおそれがある難民申請者がおり、またすでに出身国に生活基盤のないひとがおります。かれら・かのじょらがこの収容所に監禁され、自由をうばわれている理由は、ただたんに「在留資格がない」(入管が在留資格をみとめていない)ということにすぎません。たったそれだけの理由で、劣悪な収容所にとじこめたうえ、収容所内でも管理・統制の対象としてあつかってさらに自由をうばいとることが正当だと言えるのでしょうか?

  今回の9Aブロックの要求の中心は、フリータイムを延長してほしいという点にあると言ってよいとおもいます。短いフリータイム以外は、それぞれの居室にとじこめられて、保証人など外部のひとに電話することすらままならない。ここまでして、かれら・かのじょの行動の自由を制限する正当な理由がどこにあるのでしょう?

  くりかえしになりますが、東日本入管センターの被収容者の多くは、帰国を選ばなかった/選べなかったひとたちです。その多くは、退去強制令取消訴訟などの裁判や難民申請をすでにしているひと、あるいはその訴訟・申請をしようとしているひとたちです。裁判や難民申請をするためには、弁護士や支援者とのうちあわせや、みずから証拠書類をあつめたりといった作業が必要です。収容された身ではこれらのことがままならないので、多くのひとは仮放免許可の申請をしています。そのために、保証人などとの話しあいも必要です。

  入管は、まず、収容によって裁判や難民申請の準備を妨害しています。これは、公正な裁判を受ける権利、また難民申請の権利を侵害するものです。そのうえ、入管は、被収容者が電話できる時間帯をいちじるしく制限することで、仮放免許可の申請までも妨害しているわけです。

  「嘆願書」がくりかえしのべているように、東日本入管センターが9Aブロックの意見を「真剣に検討」し、誠実に回答することをもとめます。


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