ロイターの報道は、おもに2014年11月の東京入管でのニクラスさん死亡事件の経緯と背景を追いながら、日本の入管収容施設がかかえる構造的な医療問題にせまったものです。先月の大阪入管での被収容者ハンストにもふれています。
記事は、英語版と日本語版で、それぞれ長いものと短いものが1つずつ、合計4記事あります。綿密な取材にもとづいていることが一読してわかる力作です。ぜひ、ごらんください。
- Special Report - Toll mounts in Japan's detention centres as foreigners seek asylum
- Death, drugs and detention in Japan's immigration system
- 特別リポート:ニクラスはなぜ死んだか、入管収容所の現実
- アングル:トラブル絶えない入管収容所、海外からも厳しい視線
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ほかに入管収容施設の医療問題にかんする記事等を紹介しておきます。
仮放免者の会としては、入管であいついでいる死亡事件は、偶発的な「事故」ではなく、入管の収容のあり方がまねいた必然的な結果、起こるべきして起こった結果であるととらえています。医者ではない職員が診療の必要・不要を判断している、また、医師の独立性が確保されていないという根本的な欠陥を是正しないかぎり、今後また死亡事件がいつ起きても不思議ではないと考えます。
ロイターも報じているとおり、入管の収容施設では2013年10月から14年11月までの1年あまりのあいだに4人の被収容者が死亡しています。ところが、4人ものひとをつぎつぎと死にいたらしめた東京入国管理局、および東日本入国管理センターでは、局長・所長をはじめ、だれひとりとして責任を問われて処分を受けた者はいません。おどろくべきことです。
以下に紹介するのは、2013年10月14日のフセインさん死亡事件(東京入管)、2014年3月29日と30日のイラン人・カメルーン人連続死亡事件(東日本入管センター)、同年11月22日のニクルスさん死亡事件(東京入管)についての記事、弁護士会による声明等です。この間の死亡者4人とは、収容中の死亡にかぎった人数です。さらに、収容中に心身を痛めつけられ、入管に診療を拒否されていたひとが、施設を出所後に病死しているケースも存在します。こうしたケースをあわせて考えるならば、同じ期間内に「入管が殺した」と言うべき人数は、4人にはとどまらないはずだという点も、強調しておきたいです。
フセインさん死亡事件について
- 「医者は食事中なので呼べない」東京入管の被収容者が死亡 - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年10月16日)
- ロヒンギャ男性がくも膜下出血で――入管収容直後に急死 - 週刊金曜日(2013年10月25日号)
- 急死した被収容者に対する東京入管の医療放置などについての申入書 - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年10月26日)
- 医療放置は「日常的に行なわれている」――東京入管被収容者による「要望書」 - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年10月26日)
- フセインさん死亡事件について、ジャパンタイムズが報道 - 仮放免者の会(PRAJ)(2013年11月20日)
イラン人・カメルーン人連続死亡事件について
- 【抗議のよびかけ】東日本入管センターで被収容者2名があいついで死亡 - 仮放免者の会(PRAJ)(2014年4月4日)
- 東日本入国管理センターにおける2件の被収容者死亡事件に関する会長声明 - 東京弁護士会(2014年04月23日)
- 入管施設収容中の外国人の相次ぐ死亡に関する会長声明(PDF) - 茨城県弁護士会(2014年4月24日)
- 東日本入国管理センター被収容者の連続死亡事件に関する真相解明とその公表 及び 被収容者の死亡事件発生防止策(入管医療の改善・長期収容停止)を即刻講じることを求める理事長声明 - 関東弁護士会連合会(2014年5月1日)
- 被収容者の死亡事件の原因究明及び再発防止策を求める会長声明 - 千葉県弁護士会(2014年5月12日)
- 東日本入国管理センターにおける被収容者死亡事件に関し,早急かつ具体的に医療体制の充実を求めるとともに,収容についての入管行政見直しを求める会長声明 - 横浜弁護士会(2014年5月13日)
- 東日本入国管理センターにおける被収容者2名の死亡事件に関する会長声明(PDF) - 群馬弁護士会(2014年5月28日)
- 元被収容者が死亡――東日本入管センターに診療の抜本的改革等を申し入れ - 仮放免者の会(PRAJ)(2014年7月26日)
- 東日本入国管理センター被収容者の連続死亡事件に関する決議 - 関東弁護士会連合会(2014年9月26日)
ニクラスさん死亡事件について
- Sri Lankan man dies at Shinagawa detention center | The Japan Times(2014年12月1日)
- スリランカ人男性が東京入管で死亡~入管行政の根深い外国人差別の体質 - レイバーネット(2014年12月1日)
- 東京入管で、胸の痛みを訴え、診察を受けられなかったスリランカ人が死亡 | 暁法律事務所(2014年12月2日)
- 東京入管でスリランカ人被収容者が死亡――くりかえされる医療放置による死亡事件 - 仮放免者の会(PRAJ)(2014年12月4日)
- 東京入国管理局における被収容者死亡事件に関する会長声明 - 東京弁護士会(2014年12月4日)
- 日本弁護士連合会│Japan Federation of Bar Associations:Statement Regarding the Death of a Detainee at the Tokyo Regional Immigration Bureau(2014年12月4日)
- RAFIQ 2014年11月に起きた東京入管でのスリランカ人男性死亡事件について(2014年12月)
- 東京入国管理局における被収容者の死亡事件に関する会長声明 - 日本弁護士連合会(2015年1月14日)
- 東京入国管理局における被収容者死亡事件の再発防止を求める会長声明 - 千葉県弁護士会(2015年1月22日)
- ニクルスさん死亡事件、チャーター機送還、再収容、妊婦の収容などについて申入書(2月19日) - 仮放免者の会(PRAJ)(2015年3月8日)
ロイターの報道でもふれられていた、先日の大阪入管での被収容者ハンストについての記事を最後に紹介しておきます。
- Detainees launch hunger strike over conditions at Osaka immigration detention center | The Japan Times(FEB 10, 2016)
- 医療改善要求に「権利ない」 大阪入管収容者40人がハンスト - 産経WEST(2016.2.10 22:44)
- 大阪入管に収容された44人がハンスト――「死んでからだと遅いです」と訴え - 仮放免者の会(PRAJ)(2016年2月11日)
- 2016年2月10日 大阪入管収容場で男性被収容者44名がハンガーストライキに突入 - TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)(2016年2月12日)
- 大阪入管被収容者ハンストの状況(2月12日現在) - 仮放免者の会(PRAJ)(2016年2月14日)
- 2016年2月12日 大阪入管収容場ハンスト3日目26名が継続 支援者で応援行動を行う - TRY(外国人労働者・難民と共に歩む会)(2016年2月13日)
- 大阪入管のハンスト、2月15日に解除 - 仮放免者の会(PRAJ)(2016年2月18日)
- 大阪入管の劣悪な医療に抗議――収容者がハンスト決行 - 週刊金曜日(2016年2月19日号)
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