入管庁は、収容長期化問題への対策などを検討するとして、有識者などからなる「収容・送還に関する専門部会」を立ち上げました。この専門部会では、「当事者の声を聞いて! 法務省に申し入れ 収容・送還について」で述べたように、難民申請中の者の強制送還を可能にすることをふくめた、送還強化のための制度変更などが議論されていくとみられます。
難民申請者を強制送還することは、日本も加盟する難民条約に違反するのはもとより、現行の入管法(難民認定及び出入国管理に関する法律)でも禁止されています。難民条約との整合性をどう考えているのか知りませんが、入管庁が専門部会をつうじて難民申請者の強制送還を可能にする法改定をねらっているのはまちがいありません。部会での議論に注視しつつ、難民認定制度をいま以上に骨抜きにする法改悪に反対の声をあげていく必要があります。
さて、すでに入管当局は、現行法のもとでもきわめて脱法的なやり方で(というよりも、「違法」と言うべきだと私たちは考えますが)難民申請者を強制送還した例があります。入管施設に監禁して身体を拘束した状態で難民申請の却下を通知し、そのまま空港に連行して航空機にのせるというやりかたでの送還です。
ここで重要なのは、現行制度において、難民認定審査と退去強制業務の2つが、「入管」という1つの組織のなかでおこなわれているという点です。このため、入管は、ある人を強制送還する日時をまず決めたうえで、その日時の直前に難民申請の却下を本人に通知する、ということが可能です。つまり、難民不認定という入管がくだした行政処分に対して、裁判所にうったえて争うという時間をあたえずに強制送還してしまうという、いわば「裁判封じ」が入管にとって可能なのです。
これは、難民審査が、退去強制(強制送還)ふくめた出入国管理から独立しておらず、それどころか従属していると言うべき事態です。そしてこの手法での送還は、形式上は難民申請者を強制送還したことにはならない(難民申請を却下したあとに送還がおこなわれているので)かもしれませんが、行政処分を受ける者に保障されるべき裁判を受ける権利を奪うものであり、きわめて問題があります。
こうした難民申請者に対する「裁判封じ」の強制送還がおこなわれたのが、2014年12月のチャーター機を使った集団送還(スリランカ人26人とベトナム人6人)においてです。このときに送還されたスリランカ人のうち2名が原告となって、国に損害賠償をもとめる裁判をたたかっています(2017年10月19日提訴)。次回の弁論が、以下の日時・場所にておこなわれます。
場所:東京地方裁判所 522号法廷
これがおそらく結審となるとみこまれます。ご都合のつくかたは、ぜひ法廷にて傍聴をお願いします。
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前回弁論の傍聴を呼びかけた記事もあわせてごらんください。
- 【傍聴呼びかけ】スリランカ人強制送還国賠「裁判受ける権利を侵害」 - 仮放免者の会(PRAJ)(2019年9月26日)
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